JP3991398B2 - 誘電率異方性値が負の液晶性化合物、この液晶性化合物を含有する液晶組成物、及びこの液晶組成物を用いた液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主として液晶表示素子、例えば垂直配向方式、IPS=インプレインスイッチング、TFT=薄膜トランジスタ、TN=捻れネマティック、又はSTN=超捻れネマティック等の各種表示方式、とりわけ垂直配向方式及びIPS用の液晶組成物に好適な諸物性を発現せしめる新規な液晶性化合物、及びこれを用いた好適な諸物性を有する液晶組成物、並びにこの液晶組成物を用いた液晶表示素子に関する。なお、本願において、液晶性化合物なる用語は、液晶相を示す化合物および液晶相を示さないが液晶組成物の構成成分として有用である化合物の総称として用いられる。
【0002】
【背景技術】
従来、様々な液晶表示方式が提案されてきた。それらの一例として、次のような表示方式が挙げられる(液晶の最新技術、工業調査会編(1983))。誘電率異方性値が正の液晶組成物を利用する方式として、TN、STN、又はTNをベースにしたAM=能動マトリックス(TFT又はMIM=金属・絶縁膜・金属等)等の方式がある。また、誘電率異方性値が負の液晶組成物を利用する方式として、ECB=電界制御複屈折効果(HAN=ハイブリッド分子配列又はDAP=垂直分子配列等)、DS=動的散乱、GH=ゲストホスト、又はPC=相転移等の方式がある。
これらの方式の内、現在実用化されているものの主流は誘電率異方性値が正の液晶組成物を利用する方式である。これに比べると、誘電率異方性値が負の液晶組成物を利用する方式については、実用化の程度が遅れている。このことと関連して、誘電率異方性値が負の液晶組成物やこれに用いる化合物自体の開発も、誘電率異方性値が正の液晶組成物やこれに用いる化合物の開発と比較すると、十分ではない状況にある。
【0003】
このような状況の中、最近特に、液晶表示の欠点の一つである視角の狭さを改善するための試みが盛んに行われるようになってきた。その方式の一つが、IPSである(R.Kiefer et al, JAPAN DISPLAY'92,547(1992)、M.Oh-e et al, ASIA DISPLAY'95,577(1995)、特表平5−505247号公報、特開平7−128647号公報等)。IPSの特徴の一つは、従来の液晶パネルでは上下の基板上にそれぞれ電極が設けられていたのに対し、本方式の液晶パネルでは片側の基板上にのみくし歯形電極を設けられている点である。そして本方式のもう一つの特徴は、誘電率異方性値の正負に関係無く、液晶組成物を利用できる点である。
また、視角の狭さを改善するための試みのもう一つの例として、液晶分子の垂直配向を利用して視角の改善を図った方式が挙げられる(特開平2−176625号公報等)。本方式の特徴の一つは、誘電率異方性が負の液晶組成物を使用することである。
このような背景から、誘電率異方性値が負である液晶性化合物並びに液晶組成物が強く要望されるようになってきた。
【0004】
ところで、全ての表示方式において、用いられる液晶組成物は、適切な誘電率異方性値のみならず、その他の特性、例えば屈折率異方性値(△n)、弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)の値等の諸物性値も最適な値に調整する必要があり、更にまた液晶相が適当な温度範囲にあること、及び低温に於いても低粘度であること等が要求される。
従来より公知の液晶性化合物の中で、単独でこれらの条件を全て満たす化合物はなかった。従って、通常液晶相として使用することができる組成物を得るためには、数種類から二十数種類の液晶相を有する化合物及び必要により更に数種類の液晶相を有しない化合物を混合して調製されている。従って、個々の液晶性化合物は、他の液晶性化合物との相溶性が良好なこと、低温環境下での使用の要求から低温域での相溶性が良好であること等の特性も要求されている。
【0005】
しかしながら、前記の通り従来の表示方式は誘電率異方性値が正である液晶性化合物を含有する液晶組成物を用いたものが主流であったため、誘電率異方性値が負である化合物や組成物についてはその開発が十分であるとは言えず、このため従来の液晶性化合物や組成物はこのように多様化する方式やそれに伴う様々な特性への対応が不十分であった。例えば、
・誘電率異方性値が負であっても、その絶対値が小さい、
・弾性定数が大きいため駆動電圧を下げることができない、
・相溶性が悪いので多量に用いることができない、
・屈折率異方性値の自由な設定が困難である、
・粘度が大きい、
・化学的・物理的安定性が悪い
等と言う問題があった。
【0006】
本発明以前に知られていた誘電率異方性値が負である液晶性化合物の一例として、2,3−ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶性化合物が挙げられる(特開昭57−114532)。しかし、それらの化合物の負の誘電率異方性値の絶対値は必ずしも十分には大きくなく、又小さな弾性定数、相溶性、屈折率異方性値の自由度、低い粘度、化学的・物理的安定性等の特性も必ずしも全て満足できるものではなく、さらなる改善が求められていた。
また、ここでは2,3−ジフルオロフェニレン骨格を有する化合物の負の誘電率異方性値の絶対値を大きくするための試みは十分には行われていなかった。特に、2,3−ジフルオロフェニレン骨格の5位や6位を電子供与性基で置換して本発明の液晶性化合物へ誘導する発想は今まで存在しなかった。このように、本発明の化合物は先行技術からは容易に着想できないものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特開平2−176625号公報に記載されているような垂直配向方式、IPS、ECB(HAN又はDAP等)、DS、GH又はPC等、誘電率異方性値が負である化合物や組成物を用いる各種表示方式に使用できるのみならず、TN、STN、又はTNをベースにしたAM(TFT又はMIM)等、誘電率異方性値が正である化合物や組成物を用いる各種表示方式用の液晶組成物の諸特性の調整にも使用することが出来る、前記の問題点を解決した新規な液晶性化合物、これを含有する液晶組成物及び該液晶組成物を用いて作成した液晶表示素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明者らは上記課題の解決のため鋭意研究の結果、請求項1〜2に記載の化合物が絶対値の大きな負の誘電率異方性値を有するのみならず、適切な屈折率異方性値を有し、弾性定数が小さく、相溶性がよく、粘度が低く、化学的・物理的安定性が高いこと、請求項1〜2に記載の化合物を液晶組成物中に用いることで、弾性定数が小さく、誘電率異方性値及び屈折率異方性値の適切な設定ができ、粘度が低く、化学的・物理的安定性に優れた液晶組成物、とりわけ絶対値の大きな負の誘電率異方性値を有する液晶組成物が得られること、及び該組成物を用いて液晶表示素子が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記の〔1〕〜〔12〕の構成を有する。
〔1〕骨格構造中に一般式(1)で表される構造を有する液晶性化合物。
【0010】
【化8】
【0011】
(式中、W1及びW2は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又は水素原子を表し、前記のアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−C≡C−、ジアルキルシリレン基、モノアルキルシリレン基、シリレン基又はビニレン基で置換されていてもよいが、W1及びW2の少なくとも一方は水素原子以外を表し、また、この化合物を構成する各原子はその同位体で置換されていてもよい。)
【0012】
〔2〕 一般式(2)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、R1及びY1は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアン酸基、イソシアノ基又はイソチオシアン酸基を表し、前記のアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−C≡C−、ジアルキルシリレン基、モノアルキルシリレン基、シリレン基又はビニレン基で置換されていてもよく、又これらのアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよく、又これらのアルキル基は光学活性であってもよく、X1、X2、X3及びX4は各々独立して単結合、−(CH2)2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH2)4−、−(CH2)3O−、−O(CH2)3−、−CH=CHCH2CH2−、−CH2CH=CHCH2−、−CH2CH2CH=CH−、−CH=CHCH=CH−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−CF=CF−、−CH2CF2−、−CF2CH2−、−(CF2)2−、−(CF2)4−、−(CH2)2COO−、−OCO(CH2)2−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH=CHC≡C−又は−C≡CCH=CH−を表し、
【0015】
環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5は各々独立してトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、ビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、又は下記一般式(1)で表される基であり、これら環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5の内少なくとも1個は一般式(1)で表される基であり、これらの環を構成する炭素原子は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、環上の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく、
【0016】
【化10】
【0017】
(式中、W1及びW2は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又は水素原子を表し、前記のアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−C≡C−、ジアルキルシリレン基、モノアルキルシリレン基、シリレン基又はビニレン基で置換されていてもよいが、W1及びW2の少なくとも一方は水素原子以外を表す。)a1、a2、a3、a4及びa5は各々独立して0又は1を表すが、
a1+a2+a3+a4+a5≧1であり、
また、この化合物を構成する各原子はその同位体で置換されていてもよい。)で表される第〔1〕項に記載の液晶性化合物。
【0018】
〔3〕 第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の液晶性化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする、少なくとも2成分からなる液晶組成物。
〔4〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
【0019】
【化11】
【0020】
(式中、R2は炭素数1〜10のアルキル基を表し、このアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子又は−CH=CH−で置換されていてもよく、また、このアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、Y2はフッ素原子、塩素原子、−OCF3、−OCF2H、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF2CF2H又は−OCF2CFHCF3を表し、L1及びL2は各々独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Z1及びZ2は各々独立して−(CH2)2−、−(CH2)4−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−又は単結合を表し、環Bはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、環Cはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、また、これらの化合物を構成する原子はその同位体で置換されていてもよい。)
【0021】
〔5〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
【0022】
【化12】
【0023】
(式中、R3及びR4は各々独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、このアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子又は−CH=CH−で置換されていてもよく、また、このアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、Y3はシアノ基又は−C≡C−CNを表し、環Eはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル又はピリミジン−2,5−ジイルを表し、環Gはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、環Hはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル又は1,4−フェニレンを表し、Z3は−(CH2)2−、−COO−又は単結合を表し、L3、L4及びL5は各々独立して水素原子又はフッ素原子を表し、b、c及びdは各々独立して0又は1を表し、また、これらの化合物を構成する原子はその同位体で置換されていてもよい。)
【0024】
〔6〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
【0025】
【化13】
【0026】
(式中、R5及びR6は各々独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、このアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子又は−CH=CH−で置換されていてもよく、また、このアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、環I、環J及び環Kは各々独立して、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、又は水素原子原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、Z4及びZ5は各々独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH2)2−、−CH=CH−又は単結合を表し、また、これらの化合物を構成する原子はその同位体で置換されていてもよい。)
【0027】
〔7〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(11)、(12)及び(13)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
【0028】
【化14】
【0029】
(式中、R7及びR8は各々独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、このアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子又は−CH=CH−で置換されていてもよく、また、このアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、環P及び環Qは各々独立して、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル又は1,4−フェニレンを表し、L6及びL7は各々独立して水素原子又はフッ素原子を表すが同時に水素原子を表すことはなく、Z6及びZ7は各々独立して、−(CH2)2−、−COO−又は単結合を表し、また、これらの化合物を構成する原子はその同位体で置換されていてもよい。)
【0030】
〔8〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(11)、(12)及び(13)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
〔9〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
【0031】
〔10〕 第一成分として、第〔1〕〜〔2〕項の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第四成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
〔11〕 第〔3〕〜〔10〕項の何れか1項に記載の液晶組成物に加えて、さらに1種類以上の光学活性化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。
〔12〕 第〔3〕〜〔11〕項の何れか1項に記載の液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子。
【0032】
第〔7〕項及び第〔8〕項の発明は、N型(Δεが負)の液晶組成物に関する発明である。N型の液晶組成物は、例えば特開平2−176625号公報に記載されているような垂直配向方式や、IPS等、種々の表示方式で駆動できる。
また、第〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔9〕及び〔10〕項の発明はP型(Δεが正)の液晶組成物に関する発明であるが、このようなP型液晶組成物の成分としてN型の化合物を使用することもできる。このことによって、誘電率異方性値を液晶組成物の使用目的に応じて自由に設定できるのみならず、その他の特性、例えば液晶組成物の屈折率異方性値や弾性定数のコントロール等も可能となる。
骨格構造中に一般式(1)に表した構造を有する本発明の化合物の好ましい態様を以下に表す。
【0033】
【化15】
【0034】
骨格構造中に一般式(1)で表される構造を有する本発明の化合物のW1及びW2は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又は水素原子を表し、前記のアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−C≡C−、ジアルキルシリレン基、モノアルキルシリレン基、シリレン基又はビニレン基で置換されていてもよく、又これらのアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよい。
骨格構造中に一般式(1)で表される構造を有する化合物のW1及びW2の位置のアルキル基として、具体的には、炭素原子及び水素原子のみから構成される飽和アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0035】
W1及びW2の例としてより具体的には、以下の基及び原子を示すことができる。 −CH3、−C2H5、−C3H7、−C4H9、−C5H11、−C6H13、−C7H15、−C8H17、−C9H19、−C10H21、−OCH3、−OC2H5、−OC3H7、−OC4H9、−OC5H11、−OC6H13、−OC7H15、−OC8H17、−OC9H19、−OC10H21、
【0036】
−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH=CHC2H5、−CH=CHC3H7、−CH=CHC4H9、−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC2H5、−CH2CH=CHC3H7、−CH2CH=CHC4H9、−(CH2)2CH=CHCH3、−(CH2)2CH=CHC2H5、−(CH2)2CH=CHC3H7、−(CH2)2CH=CHC4H9、−CH2CH=CH2、−(CH2)2CH=CH2、−(CH2)3CH=CH2、−(CH2)4CH=CH2、−(CH2)5CH=CH2、−CH=CHCH=CH2、−CH=CHCH2CH=CH2、−CH=CH(CH2)2CH=CH2、−CH=CH(CH2)3CH=CH2、−CH2CH=CH(CH2)2CH=CH2、−(CH2)2CH=CH(CH2)2CH=CH2、
【0037】
−OCH2CH=CHCH3、−OCH2CH=CHC2H5、−OCH2CH=CHC3H7、−OCH2CH=CHC4H9、−O(CH2)2CH=CHCH3、−O(CH2)2CH=CHC2H5、−O(CH2)2CH=CHC3H7、−O(CH2)2CH=CHC4H9、−OCH2CH=CH2、−O(CH2)2CH=CH2、−O(CH2)3CH=CH2、−O(CH2)4CH=CH2、−O(CH2)5CH=CH2、−OCH2CH=CH(CH2)2CH=CH2、−O(CH2)2CH=CH(CH2)2CH=CH2、
【0038】
−C≡CH、−C≡CCH3、−C≡CC2H5、−C≡CC3H7、−C≡CC4H9、−CH2C≡CH、−CH2C≡CCH3、−CH2C≡CC2H5、−CH2C≡CC3H7、−CH2C≡CC4H9、−(CH2)2C≡CH、−(CH2)2C≡CCH3、−(CH2)2C≡CC2H5、−(CH2)2C≡CC3H7、−(CH2)2C≡CC4H9、−(CH2)3C≡CH、−(CH2)3C≡CCH3、−(CH2)3C≡CC2H5、−(CH2)3C≡CC3H7、−(CH2)3C≡CC4H9、
【0039】
−OCH2C≡CH、−OCH2C≡CCH3、−OCH2C≡CC2H5、−OCH2C≡CC3H7、−OCH2C≡CC4H9、−O(CH2)2C≡CH、−O(CH2)2C≡CCH3、−O(CH2)2C≡CC2H5、−O(CH2)2C≡CC3H7、−O(CH2)2C≡CC4H9、−O(CH2)3C≡CH、−O(CH2)3C≡CCH3、−O(CH2)3C≡CC2H5、−O(CH2)3C≡CC3H7、−O(CH2)3C≡CC4H9、
【0040】
−CH2OCH3、−CH2OC2H5、−CH2OC3H7、−CH2OC4H9、−CH2OC5H11、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2OC2H5、−(CH2)2OC3H7、−(CH2)2OC4H9、−(CH2)2OC5H11、−(CH2)3OCH3、−(CH2)3OC2H5、−(CH2)3OC3H7、−(CH2)3OC4H9、−(CH2)3OC5H11、−(CH2)4OCH3、
【0041】
−OCH2OCH3、−OCH2OC2H5、−OCH2OC3H7、−OCH2OC4H9、−OCH2OC5H11、−O(CH2)2OCH3、−O(CH2)2OC2H5、−O(CH2)2OC3H7、−O(CH2)2OC4H9、−O(CH2)2OC5H11、−O(CH2)3OCH3、−O(CH2)3OC2H5、−O(CH2)3OC3H7、−O(CH2)3OC4H9、−O(CH2)3OC5H11、−O(CH2)4OCH3、
【0042】
−OCOCH3、−OCOC2H5、−OCOC3H7、−OCOC5H11、−OCOC7H15、及び水素原子。
【0043】
骨格構造中に一般式(1)で表される構造を有する化合物の化学的・物理的安定性に特に注目する場合、W1及びW2は、炭素原子及び水素原子のみから構成される飽和アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は水素原子等であることが好ましい。
【0044】
骨格構造中に一般式(1)で表される構造を有する化合物の負の誘電率異方性値の絶対値をより大きくしたい場合、W1及びW2は、炭素原子及び水素原子のみから構成される飽和アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基等、電子供与性の置換基であることが好ましい。
【0045】
一般式(2)で表される本発明の化合物の好ましい態様を以下に示す。
一般式(2)で表される化合物のR1及びY1は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアン酸基、イソシアノ基又はイソチオシアン酸基を表し、前記のアルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−C≡C−、ジアルキルシリレン基、モノアルキルシリレン基、シリレン基又はビニレン基で置換されていてもよく、又これらのアルキル基中の1個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよく、又これらのアルキル基は光学活性であってもよい。
【0046】
一般式(2)においてR1及びY1で表されるアルキル基として、具体的には、炭素原子と水素原子のみから構成される飽和アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルケニルオキシ基、ハロアルケニルオキシ基、アルキニル基、ハロアルキニル基、アルキニルオキシ基、ハロアルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、ハロアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、ハロアルコキシアルコキシ基、アルカノイル基、ハロアルカノイル基、アルカノイルオキシ基、ハロアルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0047】
R1及びY1の例としてより具体的には、以下の基又は原子を示すことができる。
−CH3、−C2H5、−C3H7、−C4H9、−C5H11、−C6H13、−C7H15、−C8H17、−C9H19、−C10H21、−CFH2、−CF2H、−CF3、−CH2CH2F、−CH2CHF2、−CH2CF3、−CF2CH3、−CF2CF2H、−CFHCF3、−CF2CF3、−(CH2)2CH2F、−(CH2)2CHF2、−(CH2)2CF3、−CH2CF2CH3、−CH2CF2CF3、−CF2C2H5、−C3F7、−CF2CFHCF3、−(CH2)3CH2F、−(CH2)4CH2F、−(CH2)5CH2F、−CF2C3H7、−CH2CF2C2H5、−(CH2)2CF2CH3、−CF2C4H9、−CH2CF2CH3、−(CH2)2CF2C2H5、−(CH2)3CF2CH3、
【0048】
−OCH3、−OC2H5、−OC3H7、−OC4H9、−OC5H11、−OC6H13、−OC7H15、−OC8H17、−OC9H19、−OC10H21、−OCFH2、−OCF2H、−OCF3、−OCH2CH2F、−OCH2CHF2、−OCH2CF3、−OCF2CH3、−OCF2CF2H、−OCFHCF3、−OCF2CF3、−O(CH2)2CH2F、−O(CH2)2CHF2、−O(CH2)2CF3、−OCH2CF2CH3、−OCH2CF2CF3、−OCF2C2H5、−OC3F7、−OCF2CFHCF3、−O(CH2)3CH2F、−O(CH2)4CH2F、−O(CH2)5CH2F、−OCF2C3H7、−OCH2CF2C2H5、−O(CH2)2CF2CH3、−OCF2C4H9、−OCH2CF2CH3、−O(CH2)2CF2C2H5、−O(CH2)3CF2CH3、
【0049】
−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH=CHC2H5、−CH=CHC3H7、−CH=CHC4H9、−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC2H5、−CH2CH=CHC3H7、−CH2CH=CHC4H9、−(CH2)2CH=CHCH3、−(CH2)2CH=CHC2H5、−(CH2)2CH=CHC3H7、−(CH2)2CH=CHC4H9、−CH2CH=CH2、−(CH2)2CH=CH2、−(CH2)3CH=CH2、−(CH2)4CH=CH2、−(CH2)5CH=CH2、−CH=CHCH=CH2、−CH=CHCH2CH=CH2、−CH=CH(CH2)2CH=CH2、−CH=CH(CH2)3CH=CH2、−CH2CH=CH(CH2)2CH=CH2、−(CH2)2CH=CH(CH2)2CH=CH2、
【0050】
−CF=CF2、−CH=CF2、−CH=CHF、−CH2CF=CF2、−CH2CH=CFH、−(CH2)2CH=CF2、−(CH2)2CH=CHF、−(CH2)3CH=CF2、−(CH2)3CH=CHF、−(CH2)4CH=CF2、−(CH2)4CH=CHF、−(CH2)5CH=CF2、−(CH2)5CH=CHF、−CH=CHCH2CH2F、−CH=CHCH2CH2Cl、−CH=CHCH2CHF2、−CH=CHCH2CF3、−CH=CH(CH2)2CH2F、−CH=CH(CH2)2CHF2、−CH=CH(CH2)2CF3、−CH=CH(CH2)3CH2F、−CH=CH(CH2)3CHF2、−CH=CH(CH2)3CF3、−CH=CH(CH2)4CH2F、−CH=CH(CH2)4CHF2、−CH=CH(CH2)4CF3、−CH2CH=CH(CH2)2CH2F、−CH2CH=CHCH2CH2F、−(CH2)2CH=CH(CH2)2CH2F、−(CH2)2CH=CHCH2CH2F、−CH=CHCH2CH=CF2、−CH=CH(CH2)2CH=CF2、−CH=CH(CH2)2CF=CF2、−CH=CH(CH2)3CHFCH3、
【0051】
−OCH2CH=CHCH3、−OCH2CH=CHC2H5、−OCH2CH=CHC3H7、−OCH2CH=CHC4H9、−O(CH2)2CH=CHCH3、−O(CH2)2CH=CHC2H5、−O(CH2)2CH=CHC3H7、−O(CH2)2CH=CHC4H9、−OCH2CH=CH2、−O(CH2)2CH=CH2、−O(CH2)3CH=CH2、−O(CH2)4CH=CH2、−O(CH2)5CH=CH2、−OCH2CH=CH(CH2)2CH=CH2、−O(CH2)2CH=CH(CH2)2CH=CH2、
【0052】
−OCH2CF=CF2、−OCH2CH=CF2、−OCH2CF=CHF、−O(CH2)2CH=CF2、−O(CH2)2CH=CHF、−O(CH2)3CH=CF2、−O(CH2)3CH=CHF、−O(CH2)4CH=CF2、−O(CH2)4CH=CHF、−O(CH2)5CH=CF2、−O(CH2)5CH=CHF、−OCH2CH=CHCH2CH2F、−O(CH2)2CH=CH(CH2)2CH2F、−O(CH2)2CH=CHCH2CH2F、
【0053】
−C≡CH、−C≡CCH3、−C≡CC2H5、−C≡CC3H7、−C≡CC4H9、−CH2C≡CH、−CH2C≡CCH3、−CH2C≡CC2H5、−CH2C≡CC3H7、−CH2C≡CC4H9、−(CH2)2C≡CH、−(CH2)2C≡CCH3、−(CH2)2C≡CC2H5、−(CH2)2C≡CC3H7、−(CH2)2C≡CC4H9、−(CH2)3C≡CH、−(CH2)3C≡CCH3、−(CH2)3C≡CC2H5、−(CH2)3C≡CC3H7、−(CH2)3C≡CC4H9、
−C≡CCF3、−C≡CC2F5、−C≡CC3F7、−CH2C≡CCF3、−(CH2)2C≡CCF3、
【0054】
−OCH2C≡CH、−OCH2C≡CCH3、−OCH2C≡CC2H5、−OCH2C≡CC3H7、−OCH2C≡CC4H9、−O(CH2)2C≡CH、−O(CH2)2C≡CCH3、−O(CH2)2C≡CC2H5、−O(CH2)2C≡CC3H7、−O(CH2)2C≡CC4H9、−O(CH2)3C≡CH、−O(CH2)3C≡CCH3、−O(CH2)3C≡CC2H5、−O(CH2)3C≡CC3H7、−O(CH2)3C≡CC4H9、
【0055】
−OCH2C≡CCF3、−O(CH2)2C≡CCF3、
−CH2OCH3、−CH2OC2H5、−CH2OC3H7、−CH2OC4H9、−CH2OC5H11、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2OC2H5、−(CH2)2OC3H7、−(CH2)2OC4H9、−(CH2)2OC5H11、−(CH2)3OCH3、−(CH2)3OC2H5、−(CH2)3OC3H7、−(CH2)3OC4H9、−(CH2)3OC5H11、−(CH2)4OCH3、
【0056】
−CF2OCH3、−CF2OC2H5、−CF2OC3H7、−CF2OC4H9、−CF2OC5H11、−CH2OCF3、−CH2OC2F5、
−OCH2OCH3、−OCH2OC2H5、−OCH2OC3H7、−OCH2OC4H9、−OCH2OC5H11、−O(CH2)2OCH3、−O(CH2)2OC2H5、−O(CH2)2OC3H7、−O(CH2)2OC4H9、−O(CH2)2OC5H11、−O(CH2)3OCH3、−O(CH2)3OC2H5、−O(CH2)3OC3H7、−O(CH2)3OC4H9、−O(CH2)3OC5H11、−O(CH2)4OCH3、
【0057】
−OCH2OCF3、−OCH2OC2F5、−COCF3、−COCHF2、−COC2F5、−COC3F7、−COCH2CF3、−OCOCH3、−OCOC2H5、−OCOC3H7、−OCOC5H11、−OCOC7H15、−OCOCF3、−OCOCHF2、−OCOC2F5、−OCOC3F7、−OCOCH2CF3、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC3H7、−COOC4H9、−COOC5H11、−COOCH(CH3)C6H13、−COOCH2F、−COOCH2CF3、−COO(CH2)2CF3、−COO(CH2)3CF3、−COO(CH2)4CH2F、
【0058】
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアン酸基、イソシアノ基、及びイソチオシアン酸基。
【0059】
一般式(2)で表される化合物の化学的・物理的安定性に特に注目する場合、R1及びY1は、炭素原子と水素原子のみから構成される飽和アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルコキシアルキル基、ハロアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、ハロアルコキシアルコキシ基、アルカノイル基、ハロアルカノイル基、アルカノイルオキシ基、ハロアルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロアルコキシカルボニル基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアン酸基又はイソシアノ基等であることが好ましい。
【0060】
一般式(2)で表される化合物の負の誘電率異方性値の絶対値をより大きくしたい場合、R1及びY1は、炭素原子と水素原子のみから構成される飽和アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は水素原子等の低極性の置換基であることが好ましい。
【0061】
一般式(2)で表される化合物のX1、X2、X3及びX4は、単結合、−(CH2)2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH2)4−、−(CH2)3O−、−O(CH2)3−、−CH=CHCH2CH2−、−CH2CH=CHCH2−、−CH2CH2CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−CF=CF−、−CH2CF2−、−CF2CH2−、−(CF2)2−、−(CF2)4−、−(CH2)2COO−、−OCO(CH2)2−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH=CHC≡C−、又は−C≡CCH=CH−である。
【0062】
一般式(2)で表される化合物の化学的・物理的安定性に特に注目する場合、X1、X2、X3及びX4は、単結合、−(CH2)2−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH2)4−、−(CH2)3O−、−O(CH2)3−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2CF2−、−CF2CH2−、−(CF2)2−、−(CF2)4−、−(CH2)2COO−、又は−OCO(CH2)2−であることが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5の内、最低限一つは一般式(1)
【0063】
【化16】
【0064】
で表される環であるが、その他の好ましい環としては、ビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、及び1,4−フェニレンが挙げられ、これらの環を構成する炭素原子は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、環上の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい。
【0065】
具体的には、1−シアノ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2,2−ジフルオロ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2−フルオロシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、2,2−ジクロロビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、及び2,3−ジフルオロベンゼン−1,4−ジイルが挙げられる。
さらに、環上の水素原子がフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていてもよい環として、以下に示す環が挙げられる。
ビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピラジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジチアン−2,5−ジイル又は1,3−オキサチアン−2,5−ジイル、及びビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1,4−ジイル。
【0066】
一般式(2)で表される化合物の化学的・物理的安定性に特に注目する場合、環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5に好ましい環は、一般式(1)
【0067】
【化17】
【0068】
で表される環であるが、それ以外で、環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5に好ましい環として、以下に示す環が挙げられる。
1−シアノ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2,2−ジフルオロ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2−フルオロシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、2,2−ジクロロビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、及び2,3−ジフルオロベンゼン−1,4−ジイル。
環上の水素原子がフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていてもよい環として以下に示す環が挙げられる。
ビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1、3−ジチアン−2,5−ジイル、及び1,3−オキサチアン−2,5−ジイル。
【0069】
一般式(2)で表される化合物の負の誘電率異方性値の絶対値をより大きくしたい場合、環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5に好ましい環は、一般式(1)
【0070】
【化18】
【0071】
で表される環であるが、それ以外で、環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5に好ましい環として以下に示す環が挙げられる。
1−シアノ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2,2−ジフルオロ−トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、2−フルオロシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、2,2−ジクロロビシクロ〔1.1.1〕ペンタン−1,3−ジイル、及び2,3−ジフルオロベンゼン−1,4−ジイル。
環上の水素原子がフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていてもよい環として以下に示す環が挙げられる。
トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、及びテトラヒドロピラン−2,5−ジイル。
【0072】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は絶対値の大きな負の誘電率異方性値を有する。このため、本発明の化合物を主として用いることにより、誘電率異方性値が負の液晶組成物を調整することができる。この液晶組成物は、とりわけ特開平2−176625号公報に記載されているような垂直配向方式や、IPS等をはじめとする、誘電率異方性値が負の液晶組成物を使用する素子の作成に有用なものである。また、他の液晶化合物や組成物に本発明の化合物を混合使用することで、誘電率異方性値の適切な設定を行うことができるため、他の液晶性化合物や組成物の適用範囲を広げることができる。
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は小さい弾性定数を有し、また、該定数の温度依存性も小さい。したがって、本発明の化合物を使用することで駆動電圧の低い新規液晶組成物を調整することができる。
【0073】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は他の液晶性化合物との良好な相溶性を有している。このため、本発明の化合物を液晶組成物に配合したとき、化合物の析出などの問題が起こり難い。また本発明の化合物を液晶組成物に多量に配合することができ、その結果本発明の化合物の有する優れた特性を液晶組成物に強く反映させることができる。
【0074】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は、W1、W2、R1、Y1、X1、X2、X3、X4、環A1、環A2、環A3、環A4、環A5、a1、a2、a3、a4及びa5を適切に選択することで所望の大きさの屈折率異方性値を得ることができる。より詳しく説明すれば、環A1、環A2、環A3、環A4及び環A5 を適切に選択することで屈折率異方性値を調整することができる。即ち、特に高い屈折率異方性値を必要とする場合は、芳香族環等の共鳴構造を持つ部位を多く含む環を選択すればよい。低い屈折率異方性値を必要とする場合はトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル環等の共鳴構造を持たない部位を多く含む環を選択すればよい。
屈折率異方性値を自由に選択することで、液晶パネルの設計の自由度が大きくなる。
【0075】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は何れも低い粘性を有し、液晶組成物に多量に使用しても、液晶組成物全体の粘度を著しく上昇させることはない。また、粘度の温度依存性、特に低温での温度依存性が極めて小さい。この優れた粘性を有する液晶性化合物を使用することで高速応答性を有する液晶組成物を調整することができる。
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は何れも化学的・物理的に安定で、これを使用した液晶組成物の比抵抗値、電圧保持率は高い。紫外線、加熱といった外的要因に対する安定性が高く実用液晶組成物の構成要素として十分な化学的・物理的安定性を持つ。
【0076】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は環の数を適切に選択することでその相転移温度を調整することができる。即ち、特に高い透明点を必要とする場合には4環以上の化合物を、中庸な透明点を必要とする場合は3環の化合物を、特に低い透明点を必要とするときは2環の化合物を選択すればよい。
更に詳しく説明すれば、請求項2に記載の本発明の化合物は、一般式(2)のa1、a2、a3、a4及びa5を適切に選択することでその相転移温度を調整することができる。即ち、特に高い透明点を必要とする場合にはa1+a2+a3+a4+a5≧4である4環以上の化合物を、中庸な透明点を必要とする場合はa1+a2+a3+a4+a5=3である3環の化合物を、特に低い透明点を必要とするときはa1+a2+a3+a4+a5=2である2環の化合物を選択すればよい。
【0077】
このように、請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は、電気光学表示材料として好適な諸物性を有する。本発明の化合物を使用することで良好な特性を持つ新規液晶組成物を調整することができる。また、用途に応じてその構造を適切に設計することにより、目的の特性を持つ液晶性化合物、それを用いた液晶組成物や表示素子を得ることもできる。
例えば、本発明の化合物は大きな負の誘電率異方性値を表すことを特徴とするが、誘電率異方性値が負の液晶組成物のみに使用することができるにとどまらず、正の誘電率異方性値を持つ組成物に添加してその誘電率異方性値や、その他の特性を調整することもできる。
より詳しく説明すれば、本発明の化合物やこれを用いた液晶組成物は誘電率異方性値が負である化合物や組成物を用いる各種表示方式(例えば、特開平2−176625号公報に記載されているような垂直配向方式、IPS、ECB(HAN又はDAP等)、DS、GH又はPC等)、とりわけ特開平2−176625号公報に記載されているような垂直配向方式や、IPSに使用できる。しかし、それらの方式に使用できるのみならず、誘電率異方性値が正である化合物や組成物を用いる各種表示方式(例えば、TN、STN、又はTNをベースにしたAM(TFT又はMIM)等)用の液晶組成物の諸特性(例えば、誘電率異方性値、弾性定数、屈折率異方性値、粘度、又は化学的・物理的安定性)の改善や調整にも使用することができる。
【0078】
以下、本発明の液晶組成物に関して説明する。本発明に係る液晶組成物は、請求項1〜2の何れかに記載の化合物の少なくとも1種以上を0.1〜99.9重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
更に詳しくは、本発明で提供される液晶組成物は、請求項1〜2の何れかに記載の化合物を少なくとも1種含有する第一成分に加え、液晶組成物の目的に応じて一般式(3)〜(13)で表される化合物群から選択される化合物を適当な割合で混合することにより完成する。
本発明の液晶組成物に用いられる一般式(3)〜(5)で表される化合物として、好ましくは以下の化合物を挙げることができる。
(R2及びY2は前記と同一の意味を表す。)
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
【化21】
【0082】
一般式(3)〜(5)で表される化合物は誘電率異方性値が正の化合物であり、熱的安定性や化学的安定性が非常に優れており、電圧保持率の高い、あるいは比抵抗値の大きいといった高信頼性が要求されるTFT用の液晶組成物を調製する場合には、特に好ましい化合物である。
TFT用の液晶組成物を調整する場合、一般式(3)〜(5)で表される化合物の使用量は、液晶組成物の全重量に対して0.1〜99.9重量%の範囲で使用できるが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また、一般式(8)〜(10)で表される化合物を、粘度調整の目的で更に含有してもよい。
STN又はTN用の液晶組成物を調製する場合も一般式(3)〜(5)で表される化合物を使用することができる。その場合50重量%以下の使用量が好ましい。
【0083】
本発明の液晶組成物に用いられる一般式(6)〜(7)で表される化合物として、好ましくは以下の化合物を挙げることができる。
(R3、Y3及びR4は前記と同一の意味を表す。)
【0084】
【化22】
【0085】
【化23】
【0086】
一般式(6)〜(7)で表される化合物は誘電率異方性値が正でその値が大きく、特に液晶組成物のしきい値電圧を小さくする目的で使用される。また、屈折率異方性値の調整、透明点を高くする等のネマチックレンジを広げる目的にも使用される。さらに、STN又はTN用の液晶組成物のV−T曲線の急峻性を改良する目的にも使用される。
【0087】
一般式(6)〜(7)で表される化合物は、特にSTN及びTN用の液晶組成物を調製する場合に好ましい化合物である。
一般式(6)〜(7)で表される化合物の使用量を増加させると、液晶組成物のしきい値電圧が小さくなり、粘度が上昇する。したがって、液晶組成物の粘度が要求特性を満足する限り、多量に使用した方が低電圧駆動できるので有利である。一般式(6)〜(7)で表される化合物の使用量は、STN又はTN用の液晶組成物を調整する場合には0.1〜99.9重量%の範囲で使用できるが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。
【0088】
本発明の液晶組成物に用いられる一般式(8)〜(10)で表される化合物として好ましくは以下の化合物を挙げることができる。
(R5及びR6は前記と同一の意味を表す。)
【0089】
【化24】
【0090】
一般式(8)〜(10)で表される化合物は、誘電率異方性の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。一般式(8)で表される化合物は主として粘度調整又は屈折率異方性値の調整の目的で使用される。また、一般式(9)及び(10)で表される化合物は透明点を高くする等のネマチックレンジを広げる目的又は屈折率異方性値の調整の目的で使用される。
一般式(8)〜(10)で表される化合物の使用量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が大きくなり、粘度が小さくなる。従って、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満足している限り、多量に使用することが望ましい。一般式(8)〜(10)で表される化合物の使用量は、TFT用の液晶組成物を調製する場合には、好ましくは40重量%、より好ましくは35重量%以下である。また、STN又はTN用の液晶組成物を調整する場合には、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0091】
本発明の液晶組成物で用いられる一般式(11)〜(13)で表される化合物として好ましくは以下の化合物を挙げることができる。
(R7及びR8は前記と同一の意味を表す。)
【0092】
【化25】
【0093】
一般式(11)〜(13)で表される化合物は、本発明の請求項1又は請求項2に記載の化合物と同様、誘電率異方性の値が負の化合物であり、N型の液晶組成物のベースやP型の液晶組成物の誘電率異方性の制御に用いられる。その他の用途として、一般式(11)で表される化合物は2環化合物であり、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整又は屈折率異方性値の調整の目的で使用される。一般式(12)で表される化合物は透明点を高くする等のネマチックレンジを広げる目的又は屈折率異方性値の調整の目的で使用される。一般式(13)で表される化合物はネマチックレンジを広げる目的の他、しきい値電圧を小さくする目的及び屈折率異方性値を大きくする目的で使用される。
【0094】
一般式(11)〜(13)で表される化合物は主としてN型の液晶組成物に使用され、その使用量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が小さくなるが、粘度が大きくなる。従って、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満足している限り、少量使用することが望ましい。しかしながら負の誘電率異方性の絶対値が5以下であるので、40重量%より少なくなると低電圧駆動が出来なくなる場合がある。一般式(11)〜(13)で表される化合物の使用量は、N型のTFT用の液晶組成物を調製する場合には40重量%以上が好ましく、より好ましくは50〜95重量%である。また、弾性定数をコントロールし、液晶組成物の電圧−透過率曲線(V−Tカーブ)を制御する目的で、一般式(11)〜(13)で表される化合物をP型の組成物に混合する場合もある。この場合の一般式(11)〜(13)で表される化合物使用量は30重量%以下が好ましい。
【0095】
また、本発明の液晶組成物には、OCB(Optically Compensated Birefringence)用液晶組成物等の特別な場合を除き、通常、液晶組成物のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれ(reverse twist)を防ぐ目的で、光学活性化合物を添加する。
本発明は、このような目的で使用される公知の光学活性化合物が何れも使用できるが、好ましい化合物として以下の光学活性化合物を挙げることができる。
【0096】
【化26】
【0097】
本発明の液晶組成物では、通常、これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチは、TFT用及びTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(Bistable TN)用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で、2種以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0098】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、及びテトラジン系等の二色性色素を添加してGH用の液晶組成物としても使用できる。あるいは、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を作製したポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)に代表されるポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)用の液晶組成物としても使用できる。その他、DS用の液晶組成物としても使用できる。
【0099】
本発明の液晶組成物は、慣用な方法で調製される。一般には、種々の成分を高い温度で互いに溶解させる方法がとられている。
【0100】
請求項1又は請求項2に記載の本発明の化合物は公知の有機合成化学的手法により容易に製造できる。その製造方法の一例を反応式1に示す。
【0101】
【化27】
【0102】
以下に、上記の合成経路について説明する。
式1の化合物は、四塩化銅二リチウムの存在下、臭化メチルマグネシウムと反応させて、式2の化合物へと誘導される。
式2の化合物はsec-ブチルリチウムと反応させ、次いで4−n−ペンチルシクロヘキサノンと反応させて、式3の化合物へと誘導される。
式3の化合物は酸を作用させて式4の化合物へと誘導される。
式4の化合物はパラジウムカーボンの存在下接触還元して式5の化合物へと誘導される。
式5の化合物はsec-ブチルリチウムと反応させ、次いで沃素と反応させて式6の化合物へと誘導される。
式6の化合物はパラジウム(0)化合物及び炭酸カリウムの存在下、4−プロピルフェニル硼酸と反応させて式7の化合物へと誘導される。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明の化合物の製造法及び使用例について更に詳細に説明する。なお、本発明は実施例により何等制限を受けるものではない。実施例の説明において、Nは規定濃度(グラム当量/l)、Mはモル濃度(mol/l)を表し、液晶性化合物のΔε(誘電率異方性値)は、下記の母液晶A85wt%と当該化合物15wt%とからなる組成物からの外挿値(25℃において測定)を表し、Δn(屈折率異方性値)は、下記の母液晶B85wt%と当該化合物15wt%とからなる組成物の実測値(25℃において測定)を表す。相転移温度は25℃から等方相まで加熱・冷却したときの相変化を目視で観察し測定した。CNは結晶からネマチック相への転移点を、NIはネマチック相から等方相への転移点を、CIは結晶相から直接等方相へと相変化する場合の転移点を、それぞれ℃で表す。なお、括弧内に示した転移点は、温度を降下させる場合に観察された転移点である。
母液晶Aの組成
【0104】
【化28】
【0105】
上記の一般式で表され、両末端のアルキル基(R9、R10)が異なる5種類のエステル化合物を、下記の割合で混合し母液晶Aとした。
【0106】
母液晶Bの組成
【0107】
【化29】
【0108】
上記の一般式で表され、末端のアルキル基(R11、R12)が異なる4種類の化合物を、下記の割合で混合し母液晶Bとした。
【0109】
実施例1
2−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−(4−n−プロピルフェニル)トルエン(7)の合成
第1段
3,4−ジフルオロトルエン(2)の合成
3,4−ジフルオロブロモベンゼン(1)(193.0g、1.0mol)、四塩化銅二リチウム(11.0g、0.05mol)及びTHF(テトラヒドロフラン)(800ml)の混合物を−10℃に冷却し、同温度に保ちながら3.0Mの臭化メチルマグネシウムのジエチルエーテル溶液(500ml、1.5mol)を滴下した後、10℃で5時間攪拌した。反応終了後、冷却下1Nの希塩酸(500ml)を滴下し、ジエチルエーテル(1.3L)で抽出した。得られた有機層を水(800ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を減圧蒸留で精製して、3,4−ジフルオロトルエン(2)(83.3g、0.65mol;収率65%)を得た。
MS/128(M+)
【0110】
第2段
2−(1−ヒドロキシ−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(3)の合成
第1段で得られた3,4−ジフルオロトルエン(2)(83.3g、0.65mol)をTHF(300ml)に溶解した溶液に、−78℃で1.56Mのsec−ブチルリチウムのヘキサン溶液(420ml、0.66mol)を30分で滴下し、そのまま1時間攪拌した。同温度で、反応液に4−n−ペンチルシクロヘキサノン(109.2g、0.65mol)のTHF(300ml)溶液を30分で滴下し、その後徐々に昇温し0℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に1Nの希塩酸(500ml)を加え、次いでジエチルエーテル(1000ml)で抽出した。得られた有機層を水(1000ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去して、2−(1−ヒドロキシ−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(3)を含む混合物を得た。
【0111】
第3段
2−(4−n−ペンチルシクロヘキサ−1−エニル)−3,4−ジフルオロトルエン(4)の合成
第2段で得られた2−(1−ヒドロキシ−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(3)を含む混合物、パラトルエンスルホン酸(0.95g、0.005mol)及びトルエン(250ml)の混合物を、水を留去させながら2時間加熱環流した。反応終了後、室温まで冷却し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液(250ml)を加え、次いでトルエン(300ml)で抽出した。得られた有機層を水(300ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン)で精製して、2−(4−n−ペンチルシクロヘキサ−1−エニル)−3,4−ジフルオロトルエン(4)(24.5g、0.088mol;2からの収率13%)を得た。
MS/278(M+)
【0112】
第4段
2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(5)の合成
第3段で得られた2−(4−n−ペンチルシクロヘキサ−1−エニル)−3,4−ジフルオロトルエン(4)(24.5g、0.088mol)、パラジウムカーボン(1.2g)及びエタノール(100ml)の混合物を攪拌下、常温、常圧で8時間水素添加した。反応終了後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、減圧下で濾液から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン)で精製して、2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(5)(19.9g、0.071mol、収率81%)を得た。
MS/280(M+)
【0113】
第5段:2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−ヨードトルエン(6)の合成
第4段で得られた2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロトルエン(5)(19.9g、0.071mol)をTHF(80ml)に溶解した溶液に、−78℃で1.56Mのsec−ブチルリチウムのヘキサン溶液(46ml、0.072mol)を30分で滴下し、そのまま1時間攪拌した。同温度で反応液に沃素(19.8g、0.078mol)のTHF(10ml)溶液を滴下し、その後徐々に昇温し10℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応液に1Nの希塩酸(50ml)を加え、次いでジエチルエーテル(80ml)で抽出した。得られた有機層を水(80ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン)で精製して、2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−ヨードトルエン(6)(23.9g、0.059mol;収率83%)を得た。
MS/406(M+)
【0114】
第6段
2−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−(4−n−プロピルフェニル)トルエン(7)の合成
第5段で得られた2−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−ヨードトルエン(6)(23.9g、0.059mol)、4−n−プロピルフェニル硼酸(10.7g、0.065mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.5g、0.003mol)、炭酸カリウム(33.1g、0.24mol)及び組成比(トルエン:エタノール:水=7:7:0.5)の混合溶媒(200ml)からなる混合物を4時間加熱還流させた。反応終了後、水(120ml)を加え、次いでトルエン(200ml)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン)、次いで再結晶(溶媒:ヘプタン/トルエン)で精製して、2−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)−3,4−ジフルオロ−5−(4−n−プロピルフェニル)トルエン(7)(2.8g、0.007mol;収率12%)を得た。
MS/399(M+)、Δε=−1.7、Δn=0.143。
【0115】
実施例1の方法に準じて、以下の化合物を合成することができる。
【0116】
【化30】
【0117】
【化31】
【0118】
【化32】
【0119】
【化33】
【0120】
【化34】
【0121】
【化35】
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、低粘性で、かつ絶対値の大きな負の誘電率異方性値を持ち、制御された光学異方性値、高い比抵抗値及び高い電圧保持率を有し、熱や紫外線照射に対しても安定である液晶性化合物、これを含有する液晶組成物及び該液晶組成物を用いて作成した液晶表示素子を提供することが可能となった。
Claims (12)
- 一般式(2)
- 前記一般式(2)において、R 1 及びY 1 は各々独立して炭素数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基を表し、X 1 、X 2 、X 3 及びX 4 は各々独立して単結合、−(CH 2 ) 2 −、−CH=CH−、−OCO−、−OCH 2 −、−OCF 2 −を表し、環A 1 、環A 2 、環A 3 、環A 4 及び環A 5 は各々独立してトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサ−1−エン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、又は下記一般式(1 ' )で表される基であり、これら環A 1 、環A 2 、環A 3 、環A 4 及び環A 5 の内少なくとも1個は一般式(1 ' )で表される基であり、これら環上の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、
- 請求項1〜2の何れか1項に記載の液晶性化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする、少なくとも2成分からなる液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、一般式(11)、(12)及び(13)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(11)、(12)及び(13)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 第一成分として、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物を少なくとも1種類含有し、第二成分として、前記一般式(3)、(4)及び(5)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第三成分として、前記一般式(6)及び(7)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有し、第四成分として、前記一般式(8)、(9)及び(10)からなる化合物群から選択される化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする液晶組成物。
- 請求項3〜10の何れか1項に記載の液晶組成物に加えて、さらに1種類以上の光学活性化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。
- 請求項3〜11の何れか1項に記載の液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子。
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