JP3989275B2 - 油圧式テンショナリフタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関において、伝動機構に使用されるチェーン、ベルト等の無端伝動帯に張力を付与するテンショナの油圧式テンショナリフタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関において、伝動機構に使用される無端伝動帯、例えばチェーンに適度な張力を付与するために、油圧式テンショナリフタが使用されている。この油圧式テンショナリフタでは、テンショナバネにより付勢されてチェーンに張力を付与するプランジャとテンショナボディとの間に油室が形成され、油室には逆止弁を介して圧油が供給される。そして、走行しているチェーンに緩みが生じると、テンショナバネの弾発力によりプランジャがテンショナボディから進出すると共に、油室に圧油が流入して、チェーンに張力を付与する。一方、チェーンが緊張して、プランジャを後退させる方向の荷重がチェーンからプランジャに作用すると、油室内の圧油がプランジャの後退を抑止して、チェーンの振動を抑制する。
【0003】
ところで、内燃機関の停止時には、テンショナリフタの油室への圧油の供給が停止するため、時間の経過と共に、油室内の圧油はプランジャとテンショナボディとの摺動部等の僅かな隙間から徐々にリークして、油室内に空気が侵入する。したがって、内燃機関の始動時に、圧油で満たされていない油室へ圧油を供給するときには、油室内の空気を速やかに排出することが、テンショナリフタの制振機能を早期に発揮させるうえで好ましい。
【0004】
そこで、例えば特開2000−240744号公報に開示された油圧式テンショナ(テンショナリフタに相当)では、プランジャとの間で高圧油室を形成するハウジング(テンショナボディに相当)に、高圧油室上方に連通するオリフィスが形成されたオリフィス部材が設けられる。そして、プランジャ用バネ(テンショナバネに相当)によりハウジングの外部に突出するように付勢されるプランジャが、チェーンから後退する方向に衝撃、荷重等を受けて、高圧油室内の油圧が上昇すると、高圧油室内のエアや油がオリフィスを通じてリークして、チェーン等からプランジャへの衝撃が緩和される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来技術では、オリフィスは高圧油室上方に連通するため、高圧油室内に侵入した空気は、内燃機関の始動時に高圧油室に供給された圧油により高圧油室から排出されると考えられ、これによれば、高圧油室は速やかに圧油で満たされる。しかしながら、高圧油室は、常時、オリフィスを介して高圧油室外と連通しているため、空気排出後も油が高圧油室からオリフィスを通じて流出するため、充填時間が長くなる。しかも、チェーンが緩んでプランジャが急速に進出する場合には、圧油の粘性および高圧油室への給油速度との関係から、高圧油室が瞬間的に負圧になることがあり、そのような場合には、オリフィスを通じて外気が高圧油室に侵入する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1ないし請求項7記載の発明は、空気が存在する状態にある油室への圧油の充填時間を短縮して、制振機能を十分に発揮することができる油圧式テンショナリフタを提供することを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、空気抜き弁を備えるテンショナリフタをコンパクト化することを目的とし、請求項3記載の発明は、さらに、空気抜き弁を備えるテンショナリフタのコストを削減すると共に、そのレイアウトの自由度を大きくすることを目的とし、請求項4記載の発明は、さらに、油室から排出される油成分を含んだ空気が外部に排出されることによる内燃機関の潤滑油の消費を減少させ、しかも環境の汚染防止に寄与することを目的とし、請求項5記載の発明は、さらに、排出される空気を内燃機関の内部空間に導く場合に、テンショナリフタのレイアウトの自由度を大きくすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、収納孔が形成されたテンショナボディと、前記収納孔に摺動可能に嵌合されて前記テンショナボディとの間で油室を形成するプランジャと、前記プランジャを進出方向に付勢するテンショナバネと、前記油室への圧油の流入を許容する一方で前記油室からの圧油の流出を阻止する制御弁と、前記油室内の空気を前記油室外に排出する空気抜き機構とを備え、前記収納孔から進出する前記プランジャにより伝動機構の無端伝動帯に張力を付与する油圧式テンショナリフタにおいて、前記空気抜き機構は、入口が前記油室の最上部に位置して前記油室内の空気を前記油室外に導く排出路を開閉する1つの弁体と、該弁体が着座可能な第1弁座および第2弁座と、前記弁体を前記第1弁座に着座するように付勢する弁バネとを備える空気抜き弁を備え、該空気抜き弁は、前記弁体が前記弁バネの弾発力に抗して前記第1弁座から離座すると共に前記第2弁座に着座していないことにより前記油室内の空気の前記油室外への排出を許容する一方で、前記弁体が前記第1弁座に着座することにより前記油室外から前記油室内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有すると共に、前記弁体が前記第1弁座から離座していると共に前記第2弁座に着座することにより前記油室内の圧油の前記油室外への排出を阻止する油圧式テンショナリフタである。
【0008】
これにより、空気が存在する油室内に圧油が供給される際、該空気は開弁する空気抜き弁を通って油室外に排出される一方、油室に供給された圧油は、空気抜き弁により油室外への排出が阻止される。また、プランジャが急速に進出して油室内の油圧が瞬間的に負圧になる場合には、油室外から油室への空気の侵入が、空気抜き弁により阻止される。
【0009】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、空気抜き機構は、油室内の空気を油室外に導く排出路を開閉する弁体を有する空気抜き弁を備え、空気抜き弁は、油室内の空気の油室外への排出を許容する一方で油室外から油室内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有すると共に、油室内の圧油の油室外への排出を阻止することにより、空気が存在する油室内に圧油が供給される際、空気抜き弁により、空気は油室外に排出される一方、油室に供給された圧油は油室外に排出されないので、油室への圧油の充填時間が短縮されて、早期に、テンショナリフタの制振機能を十分に発揮することができて、無端伝動帯の振動に起因する騒音の発生を抑制できる。また、無端伝動帯に緩みが生じてプランジャの急速な進出により油室が瞬間的に負圧となる場合にも、油室外から油室への空気の侵入が空気抜き弁により阻止されるので、テンショナリフタの制振機能が低下することがない。さらに、テンショナリフタは、プランジャを収納孔に押し込みながら内燃機関等の機器に組み付けられることから、テンショナリフタが空気抜き弁を備えることにより、空気抜き弁を開弁させて油室内の空気を迅速に排出しつつプランジャを収納孔に押し込むことが可能になるので、テンショナリフタの機器への組付けが容易になる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記空気抜き弁は、前記テンショナボディに内蔵されたものである。
【0011】
これにより、この請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、空気抜き弁がテンショナボディに内蔵されることにより、空気抜き弁を備えるテンショナリフタをコンパクトにすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記空気抜き弁は、前記テンショナボディの外部に配置されて前記テンショナボディに着脱自在に取り付けられたものである。
【0013】
これにより、取付部の構造を共通化することで、空気抜き弁を収納する余裕がないテンショナリフタを含め、異なる機種のテンショナリフタに対して同一仕様の空気抜き弁の適用が可能になる。また、テンショナボディに対する空気抜き弁の取付け方向の自由度が大きくなる。
【0014】
この結果、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、空気抜き弁は、テンショナボディの外部に配置されてテンショナボディに着脱自在に取り付けられたことにより、空気抜き弁を汎用部品とすることができるので、空気抜き弁を備えるテンショナリフタのコストを削減でき、さらに空気抜き弁の取付け方向の自由度が大きくなるので、テンショナリフタの周囲に配置される他の部品との干渉を回避することが容易になり、テンショナリフタのレイアウトの自由度が大きくなる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記油室に流入する圧油は内燃機関の潤滑油であり、前記排出路の出口は前記内燃機関の内部空間に連通されるものである。
【0016】
これにより、油室から排出された油成分を含んだ空気は、内燃機関の内部空間に排出されて、排出路を通じて外気中に排出されることがない。
この結果、請求項4記載の発明によれば、引用された請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、油室に流入する圧油は内燃機関の潤滑油であり、排出路の出口は内燃機関の内部空間に連通されることにより、油室から排出された油成分を含んだ空気が外気中に排出されないので、内燃機関の潤滑油の消費を減少させ、しかも環境の汚染防止に寄与できる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記排出路の出口は、前記空気抜き弁に接続された導管を介して前記内部空間に連通されるものである。
【0018】
これにより、油室から排出された油成分を含んだ空気は、テンショナリフタが設けられる位置に拘わらず、導管を介して内燃機関の内部空間に導かれる。
この結果、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、油室から排出された空気は導管を介して内部空間に導かれるので、テンショナリフタのレイアウトの自由度が大きくなる。
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記弁バネのセット荷重は、前記油室内の空気の空気圧力が前記弁体に作用するときに、前記弁体が前記第1弁座から離れて開弁し、前記空気圧力よりも大きい圧力であって、前記油室に供給された圧油の油圧が前記弁体に作用するときに、前記弁体が前記第2弁座に着座して閉弁する値に設定されるものである。
請求項7記載の発明は、請求項1または請求項6記載の油圧式テンショナリフタにおいて、前記空気抜き弁は、該空気抜き弁の弁ボディに摺動可能に嵌合されて前記弁体に当接する弁ガイドを備え、前記弁バネは前記弁ガイドを介して前記弁体を付勢し、前記弁ガイドは、前記第2弁座を有する弁座形成部の孔に挿入可能とされる挿通部を有し、前記挿通部と前記弁座形成部との間には、前記排出路を構成する隙間が形成されるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図9を参照して説明する。
図1〜図6は本発明の第1実施例を示す。図1は、本発明の油圧式テンショナリフタ20が動弁装置の伝動機構を構成するタイミングチェーン8のテンショナに使用されたDOHC型の内燃機関の要部断面図である。内燃機関は、クランクケース(図示されず)の上端に、水平面に対して傾斜するシリンダ軸線を持つシリンダを有するシリンダブロック1が結合され、さらにシリンダブロック1に、シリンダヘッド2とヘッドカバー3とがこの順で重ねられる。
【0020】
前記クランクケースとシリンダブロック1とにより形成されるクランク室内には、前記クランクケースとシリンダブロック1との間に保持された主軸受に回転可能に支持されるクランク軸4が収納され、シリンダヘッド2とヘッドカバー3とにより形成される動弁室内には、シリンダヘッド2に回転可能に支持される1対のカム軸5が収納される。
【0021】
1対のカム軸5は、前記伝動機構を介して伝達されるクランク軸4の動力により、クランク軸4の1/2の回転数で回転駆動される。該伝動機構は、クランク軸4に結合された駆動スプロケット6と、各カム軸5に結合された被動スプロケット7と、それら駆動スプロケット6および被動スプロケット7に架け渡された可撓性の無端伝動帯であるタイミングチェーン8とを備える。そして、前記伝動機構は、前記クランクケース、シリンダブロック1、シリンダヘッド2およびヘッドカバー3から構成される機関本体と、該機関本体の側面に結合される伝動カバー(図示されず)とにより形成される伝動室9内に収納される。
【0022】
タイミングチェーン8の弛緩側には、走行中のタイミングチェーン8に適度の張力を付与するテンショナ10が接触し、タイミングチェーン8の緊張側には、チェーンガイド11が接触する。テンショナ10は、一端がシリンダブロック1に枢支されてタイミングチェーン8の外周側に接触するテンショナスリッパ12と、シリンダヘッド2に固定されてテンショナスリッパ12の他端寄りを押圧して、テンショナスリッパ12をタイミングチェーン8に押し付ける押付け力を発生する油圧式テンショナリフタ20とを備える。
【0023】
図2〜図4を併せて参照すると、テンショナリフタ20は、円柱状の有底の収納孔23が形成されると共にシリンダヘッド2に形成された取付座2aに、後述する第1ボディ21のボス部21aに形成された1対の挿通孔21bに挿通されるボルトにより固定されるテンショナボディBと、収納孔23の開口端から先端部が突出する状態で収納孔23に摺動可能に嵌合されるプランジャ24と、収納孔23内でテンショナボディBとプランジャ24との間に形成されて、後述する制御弁を介して供給された圧油で満たされる油室25と、油室25内でかつプランジャ24の内側に収納された状態でテンショナボディBとプランジャ24との間に配置されて、円筒状のプランジャ24を軸線方向Aで収納孔23から進出する方向に付勢する円筒状の圧縮コイルバネからなるテンショナバネ26と、油室25への圧油の流入を許容する一方で油室25からの圧油の流出を阻止する制御弁である逆止弁Cと、油室25内の油圧を油室25外に排出するリリーフ弁Rと、油室25内の空気を油室25外に排出する空気抜き機構とを備える。
【0024】
テンショナボディBは、収納孔23を構成するための円柱状の貫通孔21cが形成された第1ボディ21と、収納孔23の底部を構成して有底の収納孔23を形成するために貫通孔21cの一方の開口端を閉塞するプラグからなる第2ボディ22とから構成される。第1ボディ21には、前記機関本体に設けられる機関側の給油路13(図1参照)に取付座2aの座面にて接続されるテンショナ側の給油路27が形成される。給油路13は、シリンダヘッド2およびシリンダブロック1に形成された油路で構成され、クランク軸4の動力で駆動されるオイルポンプに連通する。それゆえ、このオイルポンプは内燃機関の運転および停止に対応して運転および停止される油圧源を構成すると共に、該オイルポンプから吐出された高圧の圧油は、潤滑油として内燃機関の各潤滑個所に供給される一方、給油路13,27,34を通って油室25に供給される。
【0025】
第2ボディ22は、貫通孔21cの外側で径方向外方に延びるフランジ部22a(図4参照)と、貫通孔21c内に該貫通孔21cの軸線と同軸に嵌合される段付きの円柱状の筒状部22bとが一体成形された部材である。フランジ部22aには、第2ボディ22を第1ボディ21に固定するための1対のボルト28が挿通される。筒状部22bは、貫通孔21cに油密に嵌合される大径部22cと、大径部22cよりも小径の小径部22dと、大径部22cと小径部22dとがつながる部分であって収納孔23の底部を形成する底壁を構成する段部22eとが一体成形された部材である。
【0026】
さらに、第2ボディ22には、内燃機関の運転時に、給油路13,27から油室25への圧油の供給量を制御する逆止弁Cが設けられる。逆止弁Cは、第2ボディ22自体からなる弁ボディ30と、弁ボディ30の小径部22dに収納されて弁ボディ30の弁座30aに着座可能な球状の弁体31と、弁ボディ30の先端部側から圧入されて小径部22dに固定されるバネ受け32と、弁体31とバネ受け32との間に配置されて、弁体31が弁座30aに着座するように弁体31を閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネからなる弁バネ33と、弁ボディ30に形成されて給油路27と油室25とを連通すると共に、弁体31により開閉されるテンショナ側の給油路34とを備える。それゆえ、逆止弁Cは、一体化された1つのユニット部品として第1ボディ21に組み付けられている。
【0027】
弁バネ33を収納する凹部32aが形成されて該弁バネ33を保持すると共に案内するバネ受け32には、凹部32aから先端部に向かって延びて弁体31の背圧を減少させる油路32bが形成される。また、給油路34は、弁体31よりも上流側の入口路34aと、弁体31よりも下流側の出口路34bとからなり、入口路34aと給油路27とは弁体31よりも上流側の油路を構成する。そして、入口路34aは、大径部22cの、軸線方向Aに離隔して配置された1対の環状のシール部材29の間の外周面にて給油路27に接続され、出口路34bは、互いに直交する直径方向に延びて小径部22dの外周面にて油室25に開放する。
【0028】
テンショナバネ26の一端部および最大後退位置にあるプランジャ24が当接する段部22eは、バネ受けを構成すると共に、軸線方向Aに往復動するプランジャ24の最大後退位置を規定するストッパを構成する。一端部が第2ボディ22に当接し、他端部がプランジャ24に当接するテンショナバネ26は、小径部22dとプランジャ24との径方向での間に、それぞれ径方向の僅かな隙間を介して配置される。このため、小径部22dは、テンショナバネ26の内径よりも僅か小さい外径を有し、テンショナバネ26を案内して、その座屈を防止するバネガイドともなっている。
【0029】
さらに、小径部22dの軸線方向Aでの長さは、プランジャ24の軸線方向Aでの全移動範囲において、小径部22dおよび小径部22dの先端部から突出するバネ受け32が、プランジャ24と軸線方向Aで重なるように、すなわちプランジャ24の内側に収まるように設定されている。そして、このバネ受け32の外径は、小径部22dの外径よりもやや小さい程度とされて、バネ受け32が油室25内で比較的大きな体積を占めるようにされている。
【0030】
テンショナバネ26の弾発力および油室25の油圧によりテンショナスリッパ12をタイミングチェーン8に押し付けるプランジャ24は、収納孔23に嵌合する両端が開放した円筒状の基体部材38と、基体部材38の先端部からその内側に圧入されて、基体部材38に一体に固定され、かつ基体部材38の開口端を閉塞する先端部材39とから構成される。また、第1ボディ21には、プランジャ24の基体部材38の外周面に形成された軸線方向Aに延びる溝38aに係合するネジ37が螺合される。そして、このネジ37は、溝38aに係合することでプランジャ24の回動を阻止する回止め部材を構成する。
【0031】
先端部材39は、テンショナバネ26の内側に、テンショナバネ26の内径よりも僅かに小さい外径を有して収まるように配置されてテンショナバネ26を案内するバネガイド部39aと、基体部材38への圧入部である円筒状の嵌合部39bと、テンショナスリッパ12に当接する当接面39dを有すると共に前記最大後退位置で第1ボディ21から突出した位置を占める当接部39cとを有する。嵌合部39bの端部には、テンショナバネ26の他端部が当接することから、先端部材39はテンショナバネ26のバネ受けともなっている。
【0032】
そして、この第1実施例では、先端部材39はリリーフ弁Rである。具体的には、リリーフ弁Rは、後述するバネ受け42の嵌合部39bの内側に圧入されて嵌合部39bから逆止弁Cに向かって軸線方向Aに突出してバネガイド部39aを有する弁ボディ40と、弁ボディ40に収納されて弁ボディ40の弁座40aに着座可能な弁体41と、嵌合部39bおよび当接部39cを有するバネ受け42と弁体41との間に配置されて、弁体41が弁座40aに着座するように弁体41を閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネからなる弁バネ43と、弁ボディ40、弁体41およびバネ受け42に形成されて、油室25と伝動室9とを連通すると共に弁体41により開閉される排出路44とを備える。それゆえ、リリーフ弁Rは、一体化された1つのユニット部品としてプランジャ24に組み付けられている。ここで、伝動室9は、テンショナリフタ20の外部であり、内燃機関の内部空間でもある。
【0033】
小径部22dの外径とほぼ等しい外径を有する弁ボディ40は、プランジャ24が前記最大後退位置を占めるとき、バネ受け32に対して軸線方向Aでの僅かな隙間を介して対向する。弁体41は、弁座40aに着座する球状部材からなる開閉部41aと、該開閉部41aが圧入されて固定された円柱状の弁ガイド41bとから構成される。弁ガイド41bには切欠部が形成されて、該切欠部と弁ボディ40との間に入口路44aから流入する圧油が流通する油路44c(図5参照)が形成される。
【0034】
また、排出路44は、弁体41よりも上流側の入口路44aと、弁体41よりも下流側の出口路44bとからなる。入口路44aは、軸線方向Aでバネ受け32aに対向する面に開口して油室25に直接開放する。出口路44bは、油路44cと、弁ボディ40とバネ受け42とに跨って形成された弁バネ43の収納室44dと、バネ受け42に形成されて、当接部39cの外面に開口して伝動室9に直接開放する油路44eとから構成される。
【0035】
弁体41の開弁圧を決める弁バネ43のセット荷重は、タイミングチェーン8が緊張して、タイミングチェーン8から、プランジャ24を後退させる荷重がテンショナスリッパ12を介してプランジャ24に作用したとき、テンショナ10およびタイミングチェーン8の所要の耐久性を確保する観点から設定された許容値を超える過大な油圧が油室25内に発生したときに、弁体41が弁座40aから離れて排出路44を開き、出口路44bを通じて伝動室9内に油室25内の圧油を排出するように設定される。
【0036】
また、図2,図3に示されるように、プランジャ24が前記最大後退位置を占めるとき、逆止弁Cおよびリリーフ弁Rは、前述のように軸線方向Aでの僅かな隙間を介して対向し、しかもテンショナバネ26の僅か内側に位置することで、油室25の容積を極力減少させるための容積調整部材として機能する。
【0037】
図1,図2,図6を参照すると、前記空気抜き機構は、第1ボディ21に、貫通孔21cと平行な軸線を持ち、かつ第1ボディ21の同じ側に開口するように形成された円柱状の収納孔21d内に収納されて第1ボディ21に内蔵された空気抜き弁Pと、テンショナリフタ20に形成されて、空気抜き弁Pの弁体により開閉される排出路50とを備える。排出路50は、空気抜き弁Pを挟んで第1ボディ21に形成される流入路50aおよび流出路50bを有する。流入路50aは、油室25の最上部に位置する入口50a1を有し、流出路50bの出口50b1は、取付座2aに形成されて伝動室9内に開放する排出路14に取付座2aの座面にて接続されて、排出路14を介して伝動室9に連通する。
【0038】
収納孔21dの開口端部に油密にねじ込まれるプラグ45により、収納孔21d内で固定される空気抜き弁Pは、プラグ45に当接する第1弁ボディ51と、第1弁ボディ51に当接する第2弁ボディ52と、第1弁ボディ51と第2弁ボディ52との当接部に収納されて、第1弁ボディ51の第1弁座51aおよび第2弁ボディ52の第2弁座52aに着座可能な球状の1つの弁体53と、第2弁ボディ52に形成された収納孔52bに摺動可能に嵌合されて弁体53に当接する弁ガイド54と、第2弁ボディ52に圧入されて固定されるバネ受け55と、弁ガイド54とバネ受け55との間に配置されて、弁ガイド54を介して弁体53を第1弁座51aに着座する(図6(A)参照)ように弁体53を閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネからなる弁バネ56と、第1弁ボディ51に形成されて流入路50aに接続される入口路50cおよび第2弁ボディ52と弁ガイド54とバネ受け55とに形成されて流出路50bに接続される出口路50dからなる弁内排出路とを備える。
【0039】
弁体53は、油室25に圧油が供給されてプランジャ24が進出位置を占めるとき(図1参照)、流入路50aおよび入口路50cを通って油室25から流入する圧油の油圧により、弁バネ56の弾発力に抗して第2弁座52aに着座可能である。そのため、弁バネ56のセット荷重は、逆止弁Cを通って油室25に供給された圧油により流入路50aおよび入口路50cに押し出された油室25内の空気の空気圧力(以下、「開弁圧力」という。)が弁体53に作用するときに、弁体53が第1弁座51aから離れて開弁し(図6(B)参照)、該空気圧力よりも大きい圧力であって、油室25に供給された圧油の油圧(以下、「閉弁圧力」という。)が弁体53に作用するときに、弁体53が第2弁座52aに着座して閉弁する(図1,図6(C)参照)ような値に設定される。そして、このように油圧が弁体53に作用するときには、空気よりもはるかに高い密度および粘度を有する圧油が弁体53に衝突することにより、弁体53は即座に第2弁座52aに着座する。なお、この第1実施例では、実験結果から、弁バネ56のセット荷重を逆止弁Cの弁バネ33のセット荷重と同じ値にすることで、油室25からの空気の排出特性および圧油の流出阻止特性に関して好ましい結果が得られることが判明している。
【0040】
それゆえ、開弁圧力より小さい圧力および閉弁圧力以上の圧力では、排出路50は弁体53により閉じられた状態にあり、それ以外の圧力では、弁体53は第1弁座51aおよび第2弁座52aから離れており(図6(B)参照)、排出路50は弁体53により開かれた状態にある。
【0041】
さらに、弁体53は弁バネ56により常時閉弁方向に付勢されているため、伝動室9内の空気が出口路50dを通って入口路50c、流入路50aさらには油室25に侵入すること、すなわち排出路50での空気の逆流は、弁体53により阻止される。それゆえ、空気抜き弁Pは、弁体 53 が弁バネ 53 の弾発力に抗して第1弁座 51a から離座すると共に第2弁座 52a に着座していないことにより油室25内の空気の伝動室9への排出を許容する一方で、弁体 53 が第1弁座 51a に着座することにより伝動室9から油室25内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有する弁である。また、空気抜き弁Pは、弁体 53 が第1弁座 51 aから離座していると共に第2弁座 52a に着座することにより油室 25 内の圧油の伝動室9への排出を阻止する。
【0042】
段付きの円筒状部材である弁ガイド54は、第2弁ボディ52の収納孔52bの壁面に全外周面で摺接可能な大径の摺動部54aと、第2弁座52aを有する弁座形成部52cの孔に挿入可能とされる小径の挿通部54bとを有する。挿通部54bと弁座形成部52c との間には、挿通部54bの径方向外方に周方向に渡る隙間50eが形成され、該隙間50eは、挿通部54bに形成された径方向の流路50fを介して、弁ガイド54の中空部50gに連通する。そして、中空部50gは、収納孔52bおよびバネ受け55に形成された流路50hを介して流出路50bに連通する。それゆえ、出口路50dは、隙間50e、流路50f、中空部50g、収納孔52bおよび流路50hから構成される。
【0043】
そして、流入路50aと、入口路50cおよび出口路50 dから構成される前記弁内排出路と、流出路50bとにより、テンショナリフタ20に形成される排出路50が構成される。
【0044】
次に、前述のように構成された第1実施例の作用および効果について説明する。
油室25が圧油で満たされている内燃機関の運転中は、走行しているタイミングチェーン8に緩みが生じると、テンショナバネ26の弾発力によりプランジャ24が収納孔23から進出すると共に、油室25内の油圧が低下するため逆止弁Cが開弁して給油路13,27,34を通って油室25に圧油が流入し、タイミングチェーン8に張力を付与する。一方、タイミングチェーン8が緊張して、プランジャ24を後退させる荷重がタイミングチェーン8からプランジャ24に作用すると、油室25内の圧油がプランジャ24の後退を抑止して、タイミングチェーン8の振動を抑制し、該振動に起因する騒音の発生を抑制する。
【0045】
ところで、内燃機関の停止時には、油室25には圧油が供給されないため、時間の経過と共に油室25内の圧油は、プランジャ24とテンショナボディBとの摺動部等の、テンショナリフタ20の微小な隙間からから徐々にリークして、油室25内の油量が減少すると共に油室25内に空気が侵入する。
【0046】
このように油室25が圧油で満たされていない状態から、内燃機関が始動されて、オイルポンプが作動すると、オイルポンプから吐出された高圧の圧油は、給油路13,27,34および逆止弁Cを通って、油量が減少し、空気が滞留した状態にある油室25に供給される。
【0047】
ここで、前記空気抜き機構は、油室25内の空気を伝動室9に導く排出路50を開閉する弁体53を有する空気抜き弁Pを備え、空気抜き弁Pは、油室25内の空気の伝動室9への排出を許容する一方で伝動室9から油室25内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有すると共に、油室25内の圧油の伝動室9への排出を阻止することにより、空気が存在する油室25内に圧油が供給される際、空気抜き弁Pにより、油室25内の空気は、油室25の最上部に開放する流入路50aを経て伝動室9に排出される一方、油室25に供給された圧油は伝動室9に排出されないので、油室25への圧油の充填時間が短縮されて、早期に、テンショナリフタ20の制振機能を十分に発揮することができて、タイミングチェーン8の振動に起因する騒音の発生を抑制できる。また、タイミングチェーン8に緩みが生じてプランジャ24の急速な進出により、圧油の粘性および高圧油室25への給油速度との関係から、油室25が瞬間的に負圧となる場合にも、伝動室9から油室25への空気の侵入が空気抜き弁Pにより阻止されるので、テンショナリフタ20の制振機能が低下することがない。さらに、テンショナリフタ20は、テンショナバネ26の弾発力に抗してプランジャ24を収納孔23に押し込みながら内燃機関に組み付けられることから、テンショナリフタ20が空気抜き弁Pを備えることにより、空気抜き弁Pを開弁させて油室25内の空気を迅速に排出しつつプランジャ24を収納孔23に押し込むことが可能になるので、テンショナリフタ20の内燃機関への組付けが容易になる。
【0048】
空気抜き弁PがテンショナボディBに内蔵されることにより、空気抜き弁Pを備えるテンショナリフタ20をコンパクトにすることができる。しかも、空気抜き弁Pが収納される収納孔21dは、逆止弁Cが組み込まれる貫通孔21cと平行な軸線を有すると共に、第1ボディ21の同じ側に開口することにより、空気抜き弁Pおよび逆止弁Cを同一の方向から第1ボディ21に組み付けることができるので、この点でもテンショナリフタ20の組付性が向上する。
【0049】
空気抜き弁Pにより開閉される排出路50の出口50b1は、排出路14を介して内燃機関の伝動室9に連通されることにより、内燃機関の潤滑油からなる圧油が供給される油室25から排出された油成分を含んだ空気は、伝動室9に排出されて、外気中に排出されないので、内燃機関の潤滑油の消費を減少させ、しかも環境の汚染防止に寄与できる。そのうえ、流出路50bの出口50b1は、伝動室9に開放するテンショナリフタ20が取り付けられる取付座2aの座面にて接続されることにより、油室25からの空気を伝動室9に排出するための配管が不要となるので、テンショナリフタ20の周囲の配置される部品のレイアウトのコンパクト化に寄与できる。
【0050】
油室25内には、プランジャ24を構成する先端部材39の一部であって、油室25内でかつプランジャ24の内側に配置されたテンショナバネ26の内側に収まってテンショナバネ26を案内するバネガイド部39aが存する。このバネガイド部39aは、テンショナバネ26を案内するためにテンショナバネ26の内径よりも僅か小さい外径を有し、したがってその体積を大きくすることができるため、油室25の容積を効果的に減少させることができるので、油室25を圧油で満たすための充填時間が短縮されて、テンショナリフタ20の制振特性を早期に発揮させることができ、タイミングチェーン8の振動に起因する騒音の発生を抑制できる。また、バネガイド部39aは、プランジャ24の構成部材である先端部材39を利用して構成されるので、部品点数を増加させることなく、テンショナバネ26の案内を行うことができる。
【0051】
また、逆止弁Cの弁ボディ30(第2ボディ22)の一部である小径部22dは、プランジャ24の全移動範囲内でプランジャ24の内側に収まることにより、プランジャ24の移動範囲全体に渡って延びているので、小径部22dの体積を大きくすることができて、逆止弁Cにより油室25の容積を効果的に減少させることができる。その結果、油室25への圧油の充填時間が一層短縮されて、テンショナリフタ20の制振機能をより早期に発揮させることができ、タイミングチェーン8の振動に起因する騒音の発生を一層抑制できる。そして、好ましくは、小径部22dが、テンショナバネ26の内径よりも僅か小さい外径を有して、テンショナバネ26のバネガイドを兼ねることにより、さらにプランジャ24が前記最大後退位置を占めるとき、逆止弁Cおよび先端部材39であるリリーフ弁Rが僅かな隙間を介して対向することにより、油室25の容積を極力減少させて、油室25への圧油の充填時間を極力短縮することができる。
【0052】
リリーフ弁Rは、油室25に直接開放する入口路44aとテンショナリフタ20の外部である伝動室9に直接開放する出口路44bとを有することにより、リリーフ弁Rの入口路44aが油室25に直接臨み、その出口路44bが伝動室9に直接臨むため、リリーフ弁Rと油室25および伝動室9とを接続する油路を形成する必要がないので、テンショナリフタ20がコンパクトになる。また、リリーフ弁Rがユニット部品としてプランジャ24に組み付けられることにより、リリーフ弁Rの組付けが容易になるので、テンショナリフタ20の組立性が向上する。
【0053】
さらに、プランジャ24を構成する先端部材39はプランジャ24に組み付けられたリリーフ弁Rであることにより、先端部材39自体がリリーフ弁Rとなるうえ、リリーフ弁Rの一部がテンショナバネ26の内側に収まるので、リリーフ弁Rが組み付けられたプランジャ24が軸線方向Aで一層コンパクトになる。
【0054】
逆止弁Cは、テンショナボディBを構成する第2ボディ22から構成されることにより、第2ボディ22自体が逆止弁Cであるので、テンショナリフタ20をコンパクトにすることができる。しかも、逆止弁Cは、一体化された1つのユニット部品としてテンショナボディBを構成する第1ボディ21に組み付けられることにより、第1ボディ21への逆止弁Cの組付けが容易になるので、テンショナリフタ20の組立性が向上する。
【0055】
次に、図6を援用しつつ、図7〜図9を参照して、本発明の第2実施例を説明する。この第2実施例は、第1実施例とは、油圧式テンショナリフタのテンショナボディ、空気抜き機構が主として相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施例の部材と同一の部材または対応する部材については、同一の符号を使用した。
【0056】
テンショナボディB1は第1,第2ボディ211,221から構成され、第1ボディ211に対してフランジ部221aに挿通されるボルト35により固定される第2ボディ221には、圧油を逆止弁C1の入口路に供給するための給油路36aを形成する油管36が継手を介して接続されるネジ孔からなる接続部221fが形成される。
【0057】
図6,図7,図9を参照すると、空気抜き弁P1は、第1ボディ211に内蔵されることなく、テンショナボディB1の外部に配置されて第1ボディ211にねじ込まれることにより、第1ボディ211に着脱自在に取り付けられる。具体的には、空気抜き弁P1は、第1ボディ211のネジ孔211cにねじ込まれて空気抜き弁P1を第1ボディ211に取り付けるための取付部51bを有する第1弁ボディ51と、第1弁ボディ51のネジ孔51cにねじ込まれて第1ボディ211に当接する先端部52dを有する第2弁ボディ52と、第1弁ボディ51と第2弁ボディ52との当接部に収納されて、第1弁ボディ51の第1弁座51aおよび第2弁ボディ52の第2弁座52aに着座可能な球状の弁体53と、第2弁ボディ52に形成された収納孔52bに摺動可能に嵌合されて弁体53に当接する弁ガイド54と、第2弁ボディ52のネジ孔52eにねじ込まれてバネ受けを兼ねる管継手57と、弁ガイド54と管継手57との間に配置されて、弁ガイド54を介して弁体53を第1弁座51aに着座する(図6(A)参照)ように弁体53を閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネからなる弁バネ56と、第1弁ボディ51に形成されて第1ボディ211の流入路50aに接続される入口路50cおよび第2ボディ221と弁ガイド54と管継手57とに形成されて、後述する排出路58aに接続される出口路50dからなる弁内排出路とを備える。
【0058】
ここで、弁体53、弁ガイド54および弁バネ56、さらには第2弁ボディ52に設けられて第2弁座52aを有する弁座形成部52cも、第1実施例のそれらと同様である。したがって、空気抜き弁P1は、油室25内の空気の伝動室9への排出を許容する一方で伝動室9から油室25内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有する弁である。
【0059】
図6,図9に示されるように、弁ガイド54の挿通部54bと弁座形成部52cとの間の隙間50e、挿通部54bに形成された径方向の油路50f、弁ガイド54の中空部50gおよび収納孔52bは、管継手57の流路50kを介して、排出路58a(図7参照)に連通する。それゆえ、出口路50dは、隙間50e、流路50f、中空部50g、収納孔52bおよび流路50kから構成される。そして、流入路50aと、入口路50cおよび出口路50dから構成される前記弁内排出路とにより、テンショナリフタ201に形成される排出路50が構成される。
【0060】
第1ボディ211に形成された流入路50aは、油室25の最上部に開放する入口50a1を有し、管継手57に形成された流路50kの出口50b1は、一端部が管継手57に接続されて、他端部がヘッドカバー3の管継手部3aに接続される導管であるホース58(図7参照)により形成される排出路58aを介して伝動室9に連通される。
【0061】
この第2実施例によれば、空気抜き弁P1がテンショナボディB1に内蔵される点に関連する作用および効果を除いて、第1実施例と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。
【0062】
空気抜き弁P1は、第1ボディ211の外部に配置されて該第1ボディ211に着脱自在に取り付けられることにより、空気抜き弁P1の取付部51bの構造を共通化して、空気抜き弁P1を汎用部品とすることができるので、空気抜き弁P1を収納する余裕がないテンショナリフタを含め、異なる機種のテンショナリフタに対して同一仕様の空気抜き弁P1の適用が可能になり、空気抜き弁P1を備えるテンショナリフタ201のコストを削減できる。さらに、空気抜き弁P1の取付け方向の自由度が大きくなるので、テンショナリフタ201の周囲に配置される他の部品との干渉を回避することが容易になり、テンショナリフタ201のレイアウトの自由度が大きくなる。
【0063】
空気抜き弁P1により開閉される排出路50の出口50b1は、外気中に排出されることなく、排出路58aを介して伝動室9に連通されることにより、油室25から排出された油成分を含んだ空気は、テンショナリフタ201が固定される位置に拘わらず、ホース58を介して伝動室9に導かれるので、テンショナリフタ201のレイアウトの自由度が大きくなる。
【0064】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
第1実施例では、リリーフ弁Rはプランジャ24に組み付けられたが、リリーフ弁Rの入口路44aが油室25に直接開放し、その出口路44bがテンショナリフタ20の伝動室9に直接開放するように、リリーフ弁Rが第1ボディ21に組み付けられてもよい。
【0065】
第1,第2実施例では、無端伝動帯は、チェーンであったが、ベルトであってもよく、さらに伝動機構は、カム軸5を駆動する代わりに、オイルポンプやその他の補機を駆動するためのものであってもよい。また、テンショナリフタ20,201を備えるテンショナは、内燃機関以外の機器に使用される伝動機構の無端伝動帯のテンショナであってもよく、さらにテンショナリフタ20,201が組み付けられる部材は、シリンダヘッド2以外の内燃機関の構成部材または前記機器の構成部材であってもよい。
【0066】
第2実施例では、排出路50は、ホース58を介して伝動室9に連通されたが、ホース58を内燃機関の吸気系に設けられるエアクリーナに接続して、排出路50を該エアクリーナのクリーンサイドに連通させることもできる。これによっても、油室25から排出された空気に含まれる油成分は、内燃機関の内部空間であるエアクリーナに排出されるので、第1実施例と同様に、潤滑油の消費を減少することができ、しかも環境の汚染防止に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示し、本発明に係る油圧式テンショナリフタが動弁装置の伝動機構を構成するタイミングチェーンのテンショナに使用されたDOHC型の内燃機関の要部断面図である。
【図2】図4のほぼII−II線断面図である。
【図3】図4のほぼIII−III線断面図である。
【図4】図1のテンショナリフタのIV矢視図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2の空気抜き弁の要部拡大図であり、(A)は、弁体が第1弁座に着座している状態を示し、(B)は、弁体が第1弁座および第2弁座から離れている状態を示し、(C)は、弁体が第2弁座に着座している状態を示す。
【図7】本発明の第2実施例を示し、第1実施例の図1に相当する断面図である。
【図8】図7の油圧式テンショナリフタの、第1実施例の図3に相当する断面図である。
【図9】図7の油圧式テンショナリフタのプランジャの軸線方向と直交する平面での空気抜き弁の断面図である。
1…シリンダブロック、2…シリンダヘッド、3…ヘッドカバー、4…クランク軸、5…カム軸、6,7…スプロケット、8…タイミングチェーン、9…伝動室、10…テンショナ、11…チェーンガイド、12…テンショナスリッパ、13…給油路、14…排出路、
20,201…テンショナリフタ、21,211…第1ボディ、22,221…第2ボディ、23…収納孔、24…プランジャ、25…油室、26…テンショナバネ、27…給油路、28…ボルト、29…シール部材
30…弁ボディ、31…弁体、32…バネ受け、33…弁バネ、34…給油路、35…ボルト、36…油管、37…ネジ
38…基体部材、39,…先端部材、39a…バネガイド部、40…弁ボディ、41…弁体、42…バネ受け、43…弁バネ、44…排出路、44a…入口路、44b…出口路、45…プラグ、
50…排出路、50a1…入口、51…第1弁ボディ、52…第2弁ボディ、53…弁体、54…弁ガイド、55…バネ受け、56…弁バネ、57…管継手、58…ホース、
B,B1…テンショナボディ、C,C1…逆止弁、R…リリーフ弁、A…軸線方向、P,P1…空気抜き弁。
Claims (7)
- 収納孔が形成されたテンショナボディと、前記収納孔に摺動可能に嵌合されて前記テンショナボディとの間で油室を形成するプランジャと、前記プランジャを進出方向に付勢するテンショナバネと、前記油室への圧油の流入を許容する一方で前記油室からの圧油の流出を阻止する制御弁と、前記油室内の空気を前記油室外に排出する空気抜き機構とを備え、前記収納孔から進出する前記プランジャにより伝動機構の無端伝動帯に張力を付与する油圧式テンショナリフタにおいて、
前記空気抜き機構は、入口が前記油室の最上部に位置して前記油室内の空気を前記油室外に導く排出路を開閉する1つの弁体と、該弁体が着座可能な第1弁座および第2弁座と、前記弁体を前記第1弁座に着座するように付勢する弁バネとを備える空気抜き弁を備え、
該空気抜き弁は、前記弁体が前記弁バネの弾発力に抗して前記第1弁座から離座すると共に前記第2弁座に着座していないことにより前記油室内の空気の前記油室外への排出を許容する一方で、前記弁体が前記第1弁座に着座することにより前記油室外から前記油室内への空気の侵入を阻止する逆止弁機能を有すると共に、前記弁体が前記第1弁座から離座していると共に前記第2弁座に着座することにより前記油室内の圧油の前記油室外への排出を阻止することを特徴とする油圧式テンショナリフタ。 - 前記空気抜き弁は、前記テンショナボディに内蔵されたことを特徴とする請求項1記載の油圧式テンショナリフタ。
- 前記空気抜き弁は、前記テンショナボディの外部に配置されて前記テンショナボディに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の油圧式テンショナリフタ。
- 前記油室に流入する圧油は内燃機関の潤滑油であり、前記排出路の出口は前記内燃機関の内部空間に連通されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の油圧式テンショナリフタ。
- 前記排出路の出口は、前記空気抜き弁に接続された導管を介して前記内部空間に連通されることを特徴とする請求項4記載の油圧式テンショナリフタ。
- 前記弁バネのセット荷重は、前記油室内の空気の空気圧力が前記弁体に作用するときに、前記弁体が前記第1弁座から離れて開弁し、前記空気圧力よりも大きい圧力であって、前記油室に供給された圧油の油圧が前記弁体に作用するときに、前記弁体が前記第2弁座に着座して閉弁する値に設定されることを特徴とする請求項1記載の油圧式テンショナリフタ。
- 前記空気抜き弁は、該空気抜き弁の弁ボディに摺動可能に嵌合されて前記弁体に当接する弁ガイドを備え、
前記弁バネは前記弁ガイドを介して前記弁体を付勢し、
前記弁ガイドは、前記第2弁座を有する弁座形成部の孔に挿入可能とされる挿通部を有し、
前記挿通部と前記弁座形成部との間には、前記排出路を構成する隙間が形成されることを特徴とする請求項1または請求項6記載の油圧式テンショナリフタ。
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