JP3989080B2 - 電気絶縁油の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉱油又は鉱油と長鎖アルキルベンゼンの混合物を基油とする電気絶縁油の製造方法に係わり、特に天然酸化剤供給源として、水素化脱ろう処理した油を用いる電気絶縁油の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁油は変圧器、高圧ケーブル、高圧遮断器、コンデンサー等の高圧電気機器に充填され、使用されている。これらの高圧電気機器は、屋外の高所などのように保守が難しい場所で長期間連続使用されるのが普通である。このため、電気絶縁油には長期に渡って耐酸化性、電気特性及び耐金属腐食性を持続することが要求される。
【0003】
さらに経済的に大容量送電を行なうために、50万ボルト〜100万ボルトの超高圧送電技術が導入されるに従い、流動帯電の問題が重要視され始めている。これは電気絶縁油の循環量が増加するにつれ電荷の分離が発生する現象である。流動帯電が大きくなると、放電による絶縁破壊に至ることがある。この流動帯電現象は、電気絶縁油の誘電正接(tanδ、JIS C 2101に規定の方法で測定される。以下同じ。)の経時変化に於ける極大値出現として観測される。これは、酸化によって油中に発生する導電性成分が原因の一つとされている。このためtanδの経時変化に於ける極大値(以下、必要により「tanδmax.」という。)が小さい或いは極大値を有しない電気絶縁油が望まれている。
【0004】
しかしながら、酸化安定性の向上とtanδmax.の抑制は相反する現象であり、両者を十分に満足させるのは困難であった。例えば、アイアンドイーシープロダクト リサーチ アンド ディベロップメント(I&EC Product Research & Development)誌、第6巻61頁(1967)には、油中の硫黄分及び窒素分を徹底除去し、一方少量の多環芳香族炭化水素を含むホワイトオイルがtanδmax.出現の防止になると述べているが、酸化安定性及び水素ガス吸収性は十分でない。
【0005】
本発明者は、先にこの両者を両立させた電気絶縁油を特開平6−325622号公報に開示した。この電気絶縁油は、
(1)全窒素分15ppm以下、スルフィド型硫黄分10ppm以下、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分10〜35%の第1の精製鉱油
(2)ラフィネート収率を所定の条件で溶剤抽出し、全硫黄分0.5〜2.0重量%、スルフィド型硫黄分0.2〜0.9重量%とした第2の精製鉱油
を主成分とし、上記(1)と(2)とを99.5:0.5〜91.0:9.0の割合で混合し、次いで固体吸着剤処理したものである。最終組成は、塩基性窒素分1ppm以下、非塩基性窒素分15ppm以下、スルフィド型硫黄分50〜200ppm及びテトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分10〜35重量%である。しかし、この製造方法による電気絶縁油は優れた性能を示すものの、溶剤脱ろう処理により製造するため、操作が煩雑である。
【0006】
トランス油は、寒冷地で使用することを考慮する必要があるため、低温流動性が要求される。例えば、JIS C2320 1種2号油の流動点は−27.5℃以下、IEC 296 ClassIIの流動点は−45℃以下と規定されている。低温流動性を確保するため、従来はワックス含有量の少ないナフテン系原油を原料として使用していた。しかし、ナフテン系原油は産地が限定され、枯渇化しており、コスト的にも不利である。このため、パラフィン系原油を使用することになるが、この場合は予めワックス除去すなわち脱ろうが必要である。脱ろう法としては、メチルエチルケトン/トルエン等の溶剤に希釈して冷却し、析出したワックスを濾過除去する溶剤脱ろう法と形状選択性のゼオライト触媒によりワックスを分解除去する水素化脱ろう法が行われている。
【0007】
溶剤脱ろう法では、冷却や溶剤の除去に多量のエネルギーを必要とする。また、通常の処理では流動点が−20℃以下のものを得ることは困難である。このため、これ以下のものを得ようとすると、冷却温度を大幅に低下させる必要があるばかりでなく、特殊な操作を必要とした。また、溶剤脱ろう処理後の鉱油は着色していることが多いために、この色を除去するための活性白土処理が必要であった。活性白土処理では使用後の活性白土の再生が困難であり、産業廃棄物をして廃棄することになる。これらのことから、簡単な工程でかつ低コストで脱ろうできる水素化脱ろう法が注目されている。
【0008】
水素化脱ろう法による絶縁油の製造では、例えば特開昭54−22413号公報に、232〜566℃の留分を溶剤抽出処理してラフィネートを得、これを260〜358℃で水素化脱ろうし、さらに218〜316℃で水素化精製処理を行なう方法が記載されている。しかしながら、この明細書中には358℃よりも高い温度で水素化脱ろう処理を行うと、酸化安定性が規格に適合できないと記載されており、この方法で生産した電気絶縁油は、酸化安定性とtanδmax.の抑制を両立させることは困難と思われる。
【0009】
本発明者等は、水素化脱ろう−水素化精製処理で得られた油(本発明でいうところの第1の精製鉱油に相当)に、溶剤精製−溶剤脱ろう処理した油を添加することにより、酸化安定性とtanδmax.の抑制を両立させた電気絶縁油を特開平9−279160号公報に開示した。しかし、溶剤脱ろう処理後には、通常、活性白土の吸着処理が必要となる。従来の方法に比較して使用量は大幅に低下しているものの、使用後の白土処理の問題を残していた。
【0010】
前記溶剤脱ろう処理に代えて水素化脱ろう処理を行えば、白土処理の問題は全て解決する。しかし、水素化脱ろう処理では、前述の特開昭54−22413号公報に記載があるように、電気絶縁油の酸化安定性の確保が困難となることが予想された。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決した電気絶縁油の製造方法を提供することを目的とする。具体的には、(a)水素化脱ろう処理条件を探索することで、従来の溶剤脱ろう処理油と同等の性状を有する油を製造すること、(b)この油を、水素化脱ろう−水素化精製処理した第1の精製鉱油に添加し、酸価安定性とtanδmax.の抑制を両立可能な電気絶縁油の製造方法を提供すること、(c)より流動点の低い電気絶縁油を得るため、水素化脱ろう−水素化精製処理後に分留処理した第1の精製鉱油を用い、これに前記(a)の油を添加して酸価安定性とtanδmax.の抑制を両立可能な電気絶縁油の製造方法を提供すること、にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、溶剤脱ろう処理に代えて水素化脱ろう処理による第2の精製鉱油の製造方法について鋭意検討を進めた。その結果、予想に反して340〜420℃の範囲で水素化脱ろう処理を行ったものが、溶剤脱ろう処理油と同等の性能を有することを見出した。そして、(a)水素化脱ろう−水素化精製処理した第1の精製鉱油に、水素化脱ろう処理した第2の精製鉱油を配合する方法、(b)水素化精製−水素化脱ろう−色相改良処理行なった第1の精製鉱油に、水素化脱ろう処理を行なった第2の精製鉱油を配合する方法、により所期の性能を満足する電気絶縁油を製造できることを見出した。
【0013】
さらに、第1の精製鉱油として、水素化脱ろう−水素化精製処理、或は水素化精製−水素化脱ろう−色相改良処理を行なった後の80%留出点までの留分を用い、これに前記第2の精製鉱油を添加しても所期の性能を満足する電気絶縁油を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
これらの方法で得られる電気絶縁油は、酸化安定性、tanδmax.等の特性が従来の溶剤脱ろう処理による電気絶縁油と比較して遜色ない。この結果は、前記特開昭54−22413号公報等の公知文献からは全く予想できなかったことである。また、溶剤脱ろう処理を行わないため、活性白土処理が不要である。さらに、水素化脱ろう温度を358℃以上はもちろん430℃まで上昇させても良好な酸化安定性を確保できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の電気絶縁油は、下記(1)又は(2)の方法により製造できる。
【0016】
(1)下記(a)〜(c)により、電気絶縁油を製造する方法。
【0017】
(a)下記(i)〜(ii)により第1の精製鉱油を製造する工程。
(i)原油から蒸留分離した沸点範囲250〜500℃の鉱油留分を、ゼオライト触媒を用いて、温度350℃〜430℃の範囲で水素化脱ろうする。
(ii)水素化精製触媒を用いて、温度320℃〜380℃の範囲で水素化処理することにより、下記条件を満足する精製鉱油を製造する。
0<スルフィド型硫黄分≦50ppm
0<全硫黄分≦0.01重量%
0<全窒素分≦15ppm
【0018】
(b)原油から蒸留分離した沸点範囲220〜700℃の鉱油留分を、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率50〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行い、続いてゼオライト触媒を用いて、温度340〜420℃の範囲で水素化脱ろうすることにより、第2の精製鉱油を製造する工程。
【0019】
(c)前記(a)で得られた第1の精製鉱油と前記(b)で得られた第2の精製鉱油を、99.5:0.5〜91.0:9.0(重量比)の割合で混合する工程。
【0020】
前記(a)の工程の後に、必要に応じて芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なってもよい。また、水素化脱ろう条件を厳しくすることなく、流動点の低い第1の精製鉱油を得たい場合は、前記(a)(i)或は(a)(ii)の後に、80%留出点までの中軽質留分を分離する。さらに、必要に応じて、前記電気絶縁油100重量部に対して、長鎖アルキルベンゼンを10〜40重量部混合することもできる。長鎖アルキルベンゼンは電気絶縁油として公知のものであり、具体的には炭素数9〜36の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたアルキルベンゼンが好ましい。
【0021】
(2)下記(a)〜(c)の工程により、電気絶縁油を製造する方法。
【0022】
(a)下記(i)〜(iii)により第1の精製鉱油を製造する工程。
(i)原油から蒸留分離した沸点範囲250〜500℃の鉱油留分を、水素化精製触媒を用いて、温度320℃〜380℃の範囲で下記条件を満足するように水素化処理する。
0<スルフィド型硫黄分≦50ppm
0<全硫黄分≦0.01重量%
0<全窒素分≦15ppm
(ii)ゼオライト触媒を用いて、温度300℃〜430℃の範囲で水素化脱ろうする。
(iii)水素化精製触媒を用いて温度250〜350℃の条件で色相改良処理を行なう。
【0023】
(b)原油から蒸留分離した沸点範囲220〜700℃の鉱油留分を、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率50〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行い、続いてゼオライト触媒を用いて、温度340〜420℃の範囲で水素化脱ろうすることにより、第2の精製鉱油を製造する工程。
【0024】
(c)前記(a)で得られた第1の精製鉱油と前記(b)で得られた第2の精製鉱油を、99.5:0.5〜91.0:9.0(重量比)の割合で混合する工程。
【0025】
前記(a)の工程の後に、必要に応じて芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なってもよい。また、水素化脱ろう条件を厳しくすることなく、流動点の低い第1の精製鉱油を得たい場合は、前記(a)(ii)或は(a)(iii)の後に、80%留出点までの中軽質留分を分離する。さらに、必要に応じて、前記電気絶縁油100重量部に対して、長鎖アルキルベンゼンを10〜40重量部混合することもできる。長鎖アルキルベンゼンは電気絶縁油として公知のものであり、具体的には炭素数9〜36の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたアルキルベンゼンが好ましい。
【0026】
以下、本発明の電気絶縁油の製造方法について具体的に説明する。
【0027】
出発原料
第1の鉱油留分
出発原料である第1の鉱油留分は、原油から蒸留分離した沸点範囲250〜500℃(常圧換算)の留分であり、粘度約5〜20mm2/s(40℃)の潤滑油留分が好ましく用いられる。
【0028】
第2の鉱油留分
また出発原料である第2の鉱油留分としては、原油から蒸留分離した沸点範囲220〜700℃の鉱油留分が用いられる。即ち、該第2の鉱油留分は、前記第1の鉱油留分と同じものであってもよいし、それより沸点範囲が広いものを用いてもよい。具体的には、例えば中東系原油を常圧蒸留、減圧蒸留して分離された留分が一般に使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
鉱油留分には、一般に全硫黄分が1.0〜2.5重量%、全窒素分が200〜500ppm、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分が10〜35重量%程度存在するが、水素化精製処理を苛酷に行なうといずれも減少する傾向にある。しかしながら、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分は水素化精製処理によって、もともと存在していた成分が他の化合物に変化して減少する一方、新たに生成する成分がある。これは、水素化精製処理の条件に左右される。
【0030】
第1の精製鉱油の製造
上記第1の鉱油留分を、ゼオライト系触媒を用いて温度350〜430℃で水素化脱ろうする。水素化脱ろう触媒としては、ペンタシル型ゼオライト、フェリエライト、モルデナイト等のゼオライトであって、シリカアルミナ比が20〜500程度のものを主成分とし、これに結合剤を加えて成形したものが好適に使用できる。水素化脱ろう処理の条件は種々の条件が影響するため一概に決めることはできないが、通常は、温度が350〜430℃好ましくは350〜400℃、水素分圧が3.0×106〜1.5×107Pa(ゲージ圧で約30〜150kgf/cm2)より好ましくは6.0×106〜9.8×106Pa(ゲージ圧で約60〜100kgf/cm2)、液空間速度(LHSV)が0.2〜4.0h-1、水素/オイル容量比が300〜3000l/l好ましくは500〜1500l/lの範囲である。最終的に、所定の流動点を満足するように条件を選択する。
【0031】
続いて、脱ろう処理後の鉱油留分をそのまま、蒸留分離した沸点範囲250〜500℃(常圧換算)の留分、或は沸点が240℃以上で80%留出点までの留分を、水素化精製触媒を用いて温度320〜380℃の範囲で水素化処理する。装置が、水素化脱ろう処理と水素化精製処理を続けて行えるようになっているのであれば、水素化脱ろう処理後の鉱油をそのまま水素化精製処理するのが好ましい。これは、水素化脱ろう処理後に蒸留操作を挿入すると、熱処理による着色が問題となることがあるためである。また、水素化精製処理後の鉱油が、下記条件を満足するように処理条件を設定する。このようにしないと、最終製品である電気絶縁油の特性が所期の範囲から外れる場合がある。
0<スルフィド型硫黄分≦50ppm
0<全硫黄分≦0.01重量%
0<全窒素分≦15ppm
【0032】
処理後の精製鉱油は、そのまま電気絶縁油の基油として使用できる。しかし、より低流動点の基油を得たい場合は、沸点が240℃以上で80%留出点、好ましくは70%留出点、より好ましくは66%留出点までの留分を分留して第1の精製鉱油とすることもできる。この場合、水素化脱ろう処理後に分留操作を行い、続いて水素化精製処理を行うことも可能である。
【0033】
さらに、必要により前記水素化処理後に芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なう。
【0034】
水素化精製触媒としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ等の担体に、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン等の金属の1種又は2種以上を担持した触媒が用いられる。水素化精製処理の条件は種々の条件が影響するため一概に決めることはできないが、通常は、温度が320〜380℃、水素圧力が4.5×106〜1.2×107Pa(ゲージ圧で約45〜120kgf/cm2)より好ましくは6.0×106〜9.9×106Pa(ゲージ圧で約60〜100kgf/cm2)、液空間速度(LHSV)が0.2〜2.0h-1である。更に脱硫率が好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、脱窒素率が好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、かつ分解率が5%以下となるように条件設定する。さらに前述したように、全窒素分が15ppm以下、全硫黄分が0.01重量%以下、スルフィド型硫黄分が50ppm以下、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分が10〜35重量%の組成となるように条件設定する。
【0035】
上記水素化脱ろう処理と水素化精製処理は、処理手順を逆にすることもできる。特に、鉱油留分中の窒素分が極端に多く水素化脱ろう処理触媒の活性が低下し易い場合は、逆にするのが好ましい。こうすることで、触媒再生処理回数を低減できる。また、このようにすると水素化精製により窒素分濃度が低下するため、触媒活性低下が起こり難くなる。このため、水素化脱ろう温度を下げることができ、温度条件は300〜430℃好ましくは300〜400℃となる。しかし、水素化脱ろう処理後の鉱油は色相が悪化するため、色相改良処理が必要となる。色相改良処理の条件であるが、水素化精製触媒を用いて温度250〜350℃の条件で色相改良処理を行なう。この精製鉱油は、必要であれば前述の処理と同様に、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なう。
以上の処理で、第1の精製鉱油を製造することができる。
【0036】
第2の精製鉱油の製造
上記第2の鉱油留分を、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤、例えばフルフラール、N−メチル−2−ピロリドン、フェノール等の溶剤により、溶剤抽出精製を行なうことにより、ラフィネート油を回収して、全硫黄分が0.5〜2.0重量%、スルフィド型硫黄分が0.2〜0.9重量%の組成を有する第2の精製鉱油を製造する。ラフィネート収率は50〜90容量%、好ましくは60〜80容量%の条件とする。具体的には前記第2の鉱油留分100容量部に対して溶剤50〜300容量部を使用し、40〜90℃の範囲で抽出する。
続いて、ゼオライト系触媒を用いて温度340〜420℃で水素化脱ろうする。水素化脱ろう触媒としては、前述と同様のペンタシル型ゼオライト、フェリエライト、モルデナイト等のゼオライトであって、シリカアルミナ比が20〜500程度のものを主成分とし、これに結合剤を加えて成形したものが好適に使用できる。水素化脱ろう処理の条件は種々の条件が影響するため一概に決めることはできないが、通常は、温度が340〜420℃好ましくは345〜400℃、水素分圧が3.0×106〜1.5×107Pa(ゲージ圧で約30〜150kgf/cm2)より好ましくは6.0×106〜9.8×106Pa(ゲージ圧で約60〜100kgf/cm2)、液空間速度(LHSV)が0.2〜2.0h-1、水素/オイル容量比が300〜3000l/l好ましくは500〜1500l/lの範囲である。最終的に、第2の精製鉱油中に含まれる全硫黄分、全スルフィド型硫黄分濃度が所定の範囲に納まるように条件を選択する。
【0037】
ゼオライト触媒には、脱硫反応に対して触媒活性を示す金属成分の含有量が少ないものを選択する必要がある。特に、ニッケルは触媒全量基準で0.4質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、コバルトは触媒全量基準で0.6質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、モリブデンは触媒全量基準で1質量%以下好ましくは0.6質量%以下であることが必要である。ニッケルが0.4質量%以上、或はコバルトが0.6質量%以上、或はモリブデンが1質量%を超えると、脱硫反応が進行し、第2の精製鉱油中の全硫黄分、全スルフィド型硫黄分濃度が不足する場合がある。また、モリブデンとニッケル或はモリブデンとコバルトが共存する場合は、脱硫活性が大幅に高まるため、このような触媒を使用することは避けなければならない。
【0038】
続いて、脱ろう処理後の鉱油留分をそのまま、あるいは蒸留分離した沸点範囲220〜700℃(常圧換算)の留分を、水素化精製触媒を用い、極めて温和な条件で水素化精製処理を行う。処理温度は150〜250℃、好ましくは180〜220℃、脱硫率は、30%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは5%以下となるように条件設定をする。この処理は、主に色相改善が目的であり、また、電気絶縁油全体における第2の精製鉱油の配合量は、0.5〜9.0重量%或いはこれ以下である。従って、色相が問題にならない場合は省略してもよい。装置が、水素化脱ろう処理と水素化精製処理を続けて行えるようになっているのであれば、水素化脱ろう処理後の鉱油をそのまま水素化精製処理するのが好ましい。これは、水素化脱ろう処理後に蒸留操作を挿入すると、熱処理による着色が問題となることがあるためである。
【0039】
以上の処理で得られる第2の精製鉱油は、全硫黄分が0.5〜2.0重量%、スルフィド型硫黄分が0.2〜0.9重量%の組成を有する。
【0040】
第1の精製鉱油と第2の精製鉱油の混合
次いで前記第1の精製鉱油と前記第2の精製鉱油を、99.5:0.5〜91.0:9.0(重量比)の割合、好ましくは99.5:0.5〜92.0:8.0(重量比)の割合、より好ましくは99.0:1.0〜93.0〜7.0(重量比)の割合で混合する。即ち、前記第2の精製鉱油はできるだけ少なく混合した方が好ましい。しかし、第2の精製鉱油が混合鉱油(混合油)に対して0.5重量%未満では、スルフィド型硫黄化合物の濃度が不足するため酸化安定性向上の効果が発現しなくなることがある。また、9重量%を越えて含有すると、得られる電気絶縁油のtanδmax.が増大したり、酸化安定性が低下するため好ましくない。この混合油は、水分やゴミを除くため、脱水処理と濾過処理を行なった後製品となる。
【0041】
さらに、長鎖のアルキルベンゼンを配合する場合は、10〜40重量部を混合する。この場合、電気絶縁油に含まれる成分が、下記の範囲に納るように、前記第1の精製鉱油と前記第2の精製鉱油と前記長鎖アルキルベンゼンの混合割合に留意する必要がある。
【0042】
本発明の電気絶縁油に含まれる成分であるが、塩基性窒素分は1ppm以下、非塩基性窒素分が15ppm以下、スルフィド型硫黄分が50〜150ppm、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分が10〜35重量%の範囲である。中東系の原油から製造したものは、この範囲に納るものがほとんどである。しかし、原油の種類によっては、上記成分が所定の濃度範囲から外れる場合がある。そのような場合は、合成或いは天然の添加剤を添加し、所定濃度に納るようにすればよい。
【0043】
非塩基性窒素分は酸化安定性の向上に有効であり、酸価を0.6mgKOH/g以下(JIS C2320に規定する品質)に維持するために、若干量存在するのが好ましい。しかし、同時にtanδmax.の増大原因物質でもあるため、15ppm以下である必要があり、好ましくは10ppm以下、更には7ppm以下に制御することが好ましい。
【0044】
塩基性窒素分は容易に酸化され、酸化安定性を低下させる。このため、1ppm以下、好ましくはゼロとなるように制御する必要がある。
【0045】
スルフィド型硫黄分は、酸化安定性の向上に必要であり50ppm以上、好ましくは60ppm以上含有することが好ましい。しかし、スルフィド型硫黄分が必要以上に増加すると、tanδmax.を増大させてしまう。電気絶縁油のtanδmax.は、流動帯電による絶縁破壊を防止するため0.5%以下、好ましくは0.3%以下にすべきである。これを満足するためにスルフィド型硫黄分は、200ppm以下、好ましくは150ppm以下に制御すべきである。
【0046】
さらに、スルフィド型硫黄分の酸化安定性効果を高めるために、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分を10〜35重量%、好ましくは13〜35重量%、より更に好ましくは15〜30重量%を含有させるのが必要である。また、電気絶縁油が具備しなければならない耐コロナ性、即ち水素ガス吸収性を確保するためにもテトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分が適当量必要であり、10重量%以上、好ましくは15重量%以上含有させる必要がある。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の実施例に基づき、本発明の内容について更に詳細に説明すると共に本発明の効果を例証する。なおかかる実施例によって本発明が何ら制限されないことはもとよりである。
始めに、成分の分析方法及び電気絶縁油の試験方法について説明する。
【0048】
(分析方法)
全窒素分 JIS K 2609(1980)「原油及び石油製品窒素分析試験方法」に規定の方法で測定される値であり、有機窒素化合物として油中に含有される窒素分の総量をいう。
【0049】
塩基性窒素分 米国UOP社試験法(UOP Method)No.313−70「Nitrogen Bases in Petroleum Distillates by Color Indicator Titration」で規定される方法で測定される値である。この測定法は試料油を氷酢酸に溶解し、内部指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、氷酢酸中で過塩素酸によって滴定する方法である。
【0050】
非塩基性窒素分 前記全窒素分及び塩基性窒素分から次式によって求められる。
非塩基性窒素分=全窒素分−塩基性窒素分
全窒素分は、もともと原油中に天然に存在するもののほか、水素化精製工程での核水添、脱アルキル等で変成された有機窒素化合物の構成元素であり、潤滑油留分中の窒素化合物としては、キノリン、アクリジン、インドール、ピロール、カルバゾール等とその誘導体が代表的である。
【0051】
全硫黄分 油中に存在する有機硫黄化合物を構成する硫黄分の総量である。かかる有機硫黄化合物にはスルフィド類、チオフェン類等が包含される。全硫黄分はJIS K 2541に規定する方法で測定される。
【0052】
スルフィド型硫黄分 下記一般式(i)又は(ii)で示される有機硫黄化合物を構成している硫黄の総量である。即ち、鉱油中にもともと存在していたもの、水素化処理中にチオフェン型有機硫黄化合物が核水素化されて生成したもの、あるいは新たに添加されたもののいずれでもよい。
【0053】
一般式(i) R1−S−R2
(式中、R1、R2は炭素数10〜15のアルキル基又は芳香族炭化水素基を表わす。)
【0054】
一般式(ii)
【化1】
Figure 0003989080
(式中、R3、R4は水素原子又はアルキル基を表わす。)
【0055】
本発明でいうスルフィド型硫黄分とは、以下に説明する方法により分離・定量される値である。
【0056】
通常使用される薄層クロマトグラフィー用の薄層板(例えばガラス板上に0.25mm程度の厚さにシリカゲルを塗布したもの)に塩化パラジウムの0.5wt%の塩酸酸性のアセトン−水混合液を噴霧し、風乾後に試料油の2〜4μlをスポット点着し、四塩化炭素液により点着位置より約10cm展開させた後、クロロホルム/メタノール(容積比9/1)混合液で更に約5cm展開する。この操作によりスルフィド型硫黄化合物は、炭化水素及び他の有機硫黄化合物と分離し黄色の発色スポットを示す。
【0057】
該発色スポット部にデンシトメーター(例えば島津製作所2波長クロマトスキャナーCS−910型)で380nmの可視光を当て、吸光度を求める。
試料油を測定する際にスルフィド濃度既知の試料を同時に展開し、同様の測定を行なう。これにより試料中に含有されるスルフィド型硫黄分が定量される。
【0058】
テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分 下記一般式(iii)で示される化合物の総量である。
一般式(iii)
【0059】
【化2】
Figure 0003989080
(式中、R5、R6は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わす。)
【0060】
本発明においては、テトラリン及び又はインダン系芳香族炭化水素分含有量はアナリティカル ケミストリィ(Analytical Chemistry)誌、第44巻、915頁(1972)に記載の方法により、単環芳香族炭化水素分を分取し、次いでフィールドイオン化質量分析計により定量される値である。
【0061】
(電気絶縁油の試験方法)
酸化安定性:JIS C 2101−1993「電気絶縁油試験方法」の 「17.酸化安定性試験」に記載の方法で、全酸価(mgKOH/g)及びスラッジの定量(質量%)を行なった。
【0062】
誘電正接、体積抵抗率:JIS C 2101−1993「電気絶縁油試験方法」の 「23.誘電正接試験」及び「24.体積抵抗率試験」に記載の方法で、誘電正接(%)及び体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0063】
tanδmax.(%):石油学会製品部会絶縁油分科会技術資料(1985年3月)に記載の方法により測定した。
【0064】
(実施例1) 第1図に示す工程に基き、電気絶縁油Aを製造した。
第1の鉱油留分
アラビアライト原油から常法によって、常圧蒸留と減圧蒸留で分離した粘度9.0mm2/s(40℃)の潤滑油留分(全硫黄分2.54重量%、全窒素分255ppm)を得た。
【0065】
第1の精製鉱油の製造
前記第1の鉱油留分を以下の条件で水素化脱ろうした後、直ちに水素化精製処理し、得られた処理油の240℃以下の留分をカットして表1に示す第1の精製鉱油を得た。
【0066】
水素化脱ろう
触媒としてペンタシル型ゼオライト(シリカアルミナ比450)を用い、水素圧力8.9×106Pa(ゲージ圧で約90kgf/cm2)、温度359℃、液空間速度(LHSV)2.0h-1の処理条件で水素化脱ろうした。得られた処理油を分離することなく、そのまま水素化精製処理に用いた。
【0067】
水素化精製
シリカアルミナ担体にニッケル1.0重量%、モリブデン12.0重量%を担持した触媒を用い、水素圧力8.9×106Pa(ゲージ圧で約90kgf/cm2)、温度350℃、液空間速度(LHSV)0.6h-1の条件で処理した。脱硫率は99%、脱窒素率は99%であった。ストリッピングで軽質分を留出させた結果、水素化脱ろうと水素化精製全体の分解率は17%(水素化精製の分解率は2%)であった。
【0068】
第2の鉱油留分
アラビアライト原油から常法によって、常圧蒸留と減圧蒸留で分離した粘度35.1mm2/s(40℃)の潤滑油留分(全硫黄分2.35質量%、全窒素分600ppm)を得た。
【0069】
第2の精製鉱油の製造
上記第2の鉱油留分を回転円板式抽出器で原料基油100容量部当りフルフラール250容量部を70℃で接触させ、収率70%でラフィネートを得た。その後、以下の条件で水素化脱ろうした後、直ちに温和な条件で水素化精製処理し、得られた処理油の240℃以下の留分をカットして表1に示す第2の精製鉱油を得た。
【0070】
水素化脱ろう
触媒としてペンタシル型ゼオライト(シリカアルミナ比450;触媒中のニッケル、コバルト及びモリブデン濃度は測定下限以下)を用い、水素圧力8.9×106Pa(ゲージ圧で約90kgf/cm2)、温度352℃、液空間速度(LHSV)1.0h-1の処理条件で水素化脱ろうした。得られた処理油を分離することなく、そのまま水素化精製処理に用いた。
【0071】
水素化精製
シリカアルミナ担体にニッケル1.0重量%、モリブデン12.0重量%を担持した触媒を用い、水素圧力8.9×106Pa(ゲージ圧で約90kgf/cm2)、温度190℃、液空間速度(LHSV)0.6h-1の条件で処理した。脱硫率は1.5%、脱窒素率は2.0%であった。
【0072】
電気絶縁油Aの製造
上記の方法で得られた第1の精製鉱油と第2の精製鉱油を96:4(重量比)の割合で混合し、アルミナ系吸着剤(ネオビード;水澤化学工業(株)製)で脱水した後、濾紙((株)三美テックス製 オイルフィルタエレメント)を用いて濾過し、電気絶縁油Aを得た。
【0073】
この電気絶縁油Aの性状を表1に示すが、下記の従来の方法による比較例1と同等の性能である。本発明によって製造した電気絶縁油は、優れた性能を示すことが明らかとなった。
【0074】
(実施例2)
実施例1の第1の精製鉱油を製造する工程において、水素化精製処理後に240℃以下の留分をカットし、66%留出点までの留分を分留して第5の精製鉱油を得た。この第5の精製鉱油と、実施例1の第2の精製鉱油を実施例1と同様に混合して電気絶縁油Bを製造した。この電気絶縁油Bの性状を表1に示すが、下記の従来の方法による比較例1と同等の性能であるばかりでなく、流動点が極めて低く、寒冷地向け電気絶縁油として優れた性能を示すことが明らかとなった。
【0075】
(比較例1) 第2図に示す工程に基き、電気絶縁油Cを製造した。
第3の鉱油留分
第3の精製鉱油の製造
前記第1の鉱油留分を以下の条件で水素化精製処理し、表1に示す第3の精製鉱油を得た。
【0076】
水素化精製
アルミナ担体にニッケル1.0重量%、モリブデン12.0重量%を担持した触媒を用い、水素圧力8.9×106Pa(ゲージ圧で約90kgf/cm2)、温度370℃、液空間速度(LHSV)1.0h-1の条件で処理した。脱硫率は99%、脱窒素率は97%、分解率は2%であった。
【0077】
第4の精製鉱油の製造
上記第1の鉱油留分を回転円板式抽出器で原料基油100容量部当りフルフラール250容量部を70℃で接触させ、収率70%でラフィネートを得た。その性状を表1に示す。
【0078】
電気絶縁油Cの製造
上記第3の精製鉱油と第4の精製鉱油を98:2(重量比)の割合で混合し、これにメチルエチルケトン/トルエン混合溶媒(容量比1/1)を容量比で2.6倍量添加して、−32.5℃に冷却した後、濾過した。これに、活性白土を1.5質量%添加し、60℃で20分撹拌した後濾別した。その後前記アルミナ系吸着剤で脱水した後、前記濾紙を用いて濾過し、電気絶縁油Cを得た。この電気絶縁油Cの性状を表1に示す。
【0079】
(参考例)
比較のために市販の電気絶縁油油を入手し、その性状を調べた。結果を表1に示す。誘電正接、体積抵抗率は良好であるが、tanδmax.値は好ましくない結果であった。
【0080】
【表1】
Figure 0003989080
【0081】
【表2】
Figure 0003989080
【0082】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の方法で製造した電気絶縁油は、従来の溶剤脱ろう法を用いて製造した電気絶縁油が有する優れた酸化安定性と電気特性を維持できる。また、従来の方法に比較して、工程が簡略化されるため生産性が大幅に向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電気絶縁油の製造方法の一例を示すフロー図
【図2】 従来の溶剤脱ろう法による電気絶縁油の製造方法の一例を示すフロー図

Claims (8)

  1. 下記(a)〜(c)の工程により、電気絶縁油を製造することを特徴とする電気絶縁油の製造方法。
    (a)下記(i)〜(ii)により第1の精製鉱油を製造する工程。
    (i)原油から蒸留分離した沸点範囲250〜500℃の鉱油留分を、ゼオライト触媒を用いて、温度350℃〜430℃の範囲で水素化脱ろうする。
    (ii)水素化精製触媒を用いて、温度320℃〜380℃の範囲で水素化処理することにより、下記条件を満足する精製鉱油を製造する。
    0<スルフィド型硫黄分≦50ppm
    0<全硫黄分≦0.01重量%
    0<全窒素分≦15ppm
    (b)原油から蒸留分離した沸点範囲220〜700℃の鉱油留分を、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率50〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行い、続いてゼオライト触媒を用いて、温度340〜420℃の範囲で水素化脱ろう処理を行い、第2の精製鉱油を製造する工程。
    (c)前記(a)で得られた第1の精製鉱油と前記(b)で得られた第2の精製鉱油を、99.5:0.5〜91.0:9.0(重量比)の割合で混合する工程。
  2. 前記(a)の工程の後に、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なうことを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁油の製造方法。
  3. 前記(a)(i)或は(a)(ii)の後に、80%留出点までの中軽質留分を分離することを特徴とする請求項1、2いずれか一つの請求項に記載の電気絶縁油の製造方法。
  4. 前記電気絶縁油100重量部に対して、長鎖アルキルベンゼンを10〜40重量部混合することを特徴とする請求項1〜3いずれか一つの請求項に記載の電気絶縁油の製造方法。
  5. 下記(a)〜(c)の工程により、電気絶縁油を製造することを特徴とする電気絶縁油の製造方法。
    (a)下記(i)〜(iii)により第1の精製鉱油を製造する工程。
    (i)原油から蒸留分離した沸点範囲250〜500℃の鉱油留分を、水素化精製触媒を用いて、温度320℃〜380℃の範囲で下記条件を満足するように水素化処理する。
    0<スルフィド型硫黄分≦50ppm
    0<全硫黄分≦0.01重量%
    0<全窒素分≦15ppm
    (ii)ゼオライト触媒を用いて、温度300℃〜430℃の範囲で水素化脱ろうする。
    (iii)水素化精製触媒を用いて温度250〜350℃の条件で色相改良処理を行なう。
    (b)原油から蒸留分離した沸点範囲220〜700℃の鉱油留分を、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率50〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行い、続いてゼオライト触媒を用いて、温度340〜420℃の範囲で水素化脱ろうすることにより、第2の精製鉱油を製造する工程。
    (c)前記(a)で得られた第1の精製鉱油と前記(b)で得られた第2の精製鉱油を、99.5:0.5〜91.0:9.0(重量比)の割合で混合する工程
  6. 前記(a)の工程の後に、芳香族炭化水素を選択的に抽出する溶剤により、ラフィネート収率60〜90容量%の条件で溶剤抽出精製を行なうことを特徴とする請求項に記載の電気絶縁油の製造方法。
  7. 前記(a)(ii)或は(a)(iii)の後に、80%留出点までの中軽質留分を分離することを特徴とする請求項5、6いずれか一つの請求項に記載の電気絶縁油の製造方法。
  8. 前記電気絶縁油100重量部に対して、長鎖アルキルベンゼンを10〜40重量部混合することを特徴とする請求項5〜7いずれか一つの請求項に記載の電気絶縁油の製造方法。
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