JP3988880B2 - 溶融金属めっき浴の浮遊ドロス処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属めっき浴の浮遊ドロスの処理方法及び装置に係り、浮遊ドロスに含まれるめっき金属の分離とめっき浴への還流及びドロスの浴外排出を効率よく行ない得るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属めっきの連続操業は、図7に示すように、鋼帯(被めっき板材)(S)をスナウト(1)からめっき浴(2)に導入し、シンクロール(3)、サポートロール(4)等を介して浴中を通過させることにより行なわれ、めっき浴上で鋼帯表面のめっき付着量を調節するワイピングノズル(5)によるワイピングガスの吹き付けが行なわれる。溶融めっき操業の進行に伴って、めっき浴面(2F)にはドロスと称される浮遊物(6)が生成する。これは溶融めっき浴の金属酸化物や、鋼板(S)から溶出する鉄分とめっき浴成分とが反応して生成した金属酸化物等からなり、溶融亜鉛めっき浴では、亜鉛の酸化物(ZnO)、及びめっき浴成分であるアルミニウムと鋼帯の鉄分の反応生成物(例えばFe2Al5)等が生成し、めっき浴面に浮遊する。
【0003】
浮遊ドロス(6)は粘稠な流動物であり、鋼板(S)表面に付着して製品のめっき品質を損なう原因となるので、これを汲み出して浴外に排出することを要する。浮遊ドロスの排出作業は、柄杓またはポンプを使用して行なわれるが、汲み出されたドロスには多量のめっき金属が含まれているので、そのまま排出したのでは、めっき金属の無駄な消費となる。このため浮遊ドロスの浴外への排出及びめっき金属の回収に関して、次のような処理方法及び装置が知られている。
【0004】
(a)ドロス収容ケース(底面に孔径1-50mm以上の開孔が分散形成されている)をめっき浴の上方に設置しておき、めっき浴面から汲み上げた浮遊ドロスを入れる。収容ケースに入れたドロスを加熱又は保熱し、めっき金属分をドロスから分離させ底面の開孔を通してめっき浴へ滴下させ、ケース内に残留したドロスは浴外に排出する(特許文献1)
【0005】
(b) 側面に切欠窓とフィルタ及び電熱ヒーターを設けた箱体(上部は開放)をウインチ装置で降下させて、切欠窓がめっき浴面レベル位置となるように浸漬し、浮遊ドロスを切欠窓から箱体内に掻き入れる。ついで箱体をウインチ装置で若干引上げ、切欠窓がめっき浴面よりやや上になるようにしたうえ、箱体内のドロスが固化しないように電熱ヒーターで加熱してドロスとめっき金属とを分離させる。分離しためっき金属はフィルタを通してめっき浴に還流させ、ドロスは柄杓で箱体から汲み取って排出する。ドロスを排出した後、箱体をウインチ装置で降下させ、上記操作を繰り返す(特許文献2)
【0006】
(c) 浮遊ドロスを収容する箱体(底面に開口を分散形成すると共に、該開口の開閉を行なう底板部材が設けられている)をめっき浴に浸漬し、浮遊ドロスを箱体内に掻き入れた後、箱体の底面の開口を底板部材で閉じ、アルミニウムを投入してドロスの流動性を高め、ドロスとめっき金属を比重分離する。めっき金属が分離されたドロスは箱体から汲み上げて浴外に排出し、箱体内に残っためっき金属は、底面の開口を通してめっき浴に流出させる(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10-330858号公報(p.2段落[0008],図1)
【特許文献2】
特開平2-159353号公報(p.2右上欄下3行-左下欄13行,p.3左上欄6行-左下欄1行,図1-3)
【特許文献3】
特開平11-293441号公報(p.2段落[0010][0011]p.3段落[0021]-[0023],図1-3)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記a法では、めっき浴面から汲み上げてケース内に収容したドロスが固化し易く、実機に適用するに際しては、ドロスとめっき金属の比重分離に必要な流動状態を保持するのに多大の給熱が必要となり、熱エネルギーコストの負担が大きい。b法は、浮遊ドロスが収容される箱体を昇降駆動するウインチ装置を必要とし、装置構成が複雑化するため、スペースが限られた溶融金属めっき浴に適用する際の制約が大きく、また箱体の昇降駆動(箱体の高さ位置調節)を反復実施するという処理操作の煩瑣を余儀なくされ、かつ装置のメンテナンスの負担も大きい。またc法においても、ドロスが収容される箱体の開口を開閉するための装置を必要とすると共に、その開閉操作を反復するという煩瑣を余儀なくされる。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、複雑な装置構成を必要とせず、簡易な処理操作により、浮遊ドロスからのめっき金属の回収・めっき浴への還流と浮遊ドロスの浴外排出を効率よく実施し得るようにした浮遊ドロスの処理方法及び処理装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融金属めっき浴の浮遊ドロス処理方法は、
下部開口端をめっき浴中に浸漬し、上部開口端はめっき浴面の上に突出させて設置された、上部から下部にかけて水平断面積が増加する傾斜形状を有する中空筒体であるドロス収容枠体に、めっき浴面から汲み上げた浮遊ドロスを投入してドロス収容枠体内に堆積させ、堆積したドロスに含まれるめっき金属を比重差によりドロス中を降下させてめっき浴中へ移行させる一方、めっき金属が分離されたドロスを上部開口端から排出することを特徴としている。
【0011】
本発明の浮遊ドロス処理装置は、
めっき浴面から汲み上げられる浮遊ドロスを収容するための上部から下部にかけて水平断面積が増加する傾斜形状を有する中空筒体であるドロス収容枠体が、下部開口端はめっき浴中に浸漬し、上部開口端はめっき浴面の上に突出してめっき浴に設置されていると共に、ドロス収容枠体内のドロス堆積層を上面から加熱するための上部開口端に臨む加熱装置が配置され、ドロス収容枠体内のドロスに含まれるめっき金属はドロスとの比重差によりドロス中を降下してめっき浴へ移行し、めっき金属が分離されたドロスは上部開口端から排出するように構成されている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明について図面を参照して具体的に説明する。
図1は、連続溶融金属めっき浴にドロス収容枠体(10)及び加熱装置(20)を設置して本発明による浮遊ドロス処理を行なう例を示している。
ドロス収容枠体(10)は、下側部をめっき浴中に浸漬してめっき浴に設置され、上部はめっき浴面の外に突出している。図2[1][2]に示すように、浮遊ドロス(6)を柄杓(7)等でめっき浴面から汲み上げ、ドロス収容枠体(10)内に収容していけば、収容量の増加に伴い、ドロス重量とめっき浴の浮力のバランスとして、めっき浴面を押し下げながら堆積し、堆積層(60)として保持される。
【0013】
上記のようにドロス収容枠体(10)に浮遊ドロスを堆積し、流動状態に保持して一定時間放置すると、ドロスに含まれためっき金属は、ドロスとの比重差によりドロス堆積層(60)中を下降して抽出され、めっき浴(2)へ還流する。ドロス堆積層(60)をめっき金属の比重分離に必要な流動状態に保持することは容易である。これは、ドロス堆積層(60)の下面(めっき浴に接触している)からめっき浴による加熱・保熱作用を受けると共に、ドロス収容枠体(10)の側面(めっき浴に囲まれている)を介してめっき浴からの伝導伝熱による加熱・保熱作用を受けることによる。ドロス収容枠体(10)の頂部付近(めっき浴面から突出している)のドロス堆積層(60)は、めっき浴中に浸漬している部分と異なって周囲に加熱・保熱の熱源がないので、放熱により固化するような場合は、加熱装置(20)でドロス収容枠体(10)の上部開口端からドロス堆積層の上面を加熱すれば,容易に流動状態に維持することができる。
【0014】
ドロス収容枠体(10)のドロス堆積層(60)を一定時間放置してめっき金属を比重分離した後、上部開口からドロスを掻き出して浴外に排出する。ドロス堆積層(60)は、層厚方向の上の部分ほど早くめっき金属が除去された状態となるので、時間経過を見計らいながら、少量ずつ上部開口から掻き出すようにしてもよい。なお、めっき金属の比重分離が進むにつれ、ドロス堆積層(60)の見掛けの比重が小さくなると共に、めっき浴面(2F)の上に浮き出るドロス堆積層(60)の突出高さが高くなり、このことはドロス収容枠体(10)からのドロス掻き出し作業に好都合である。
【0015】
ドロス収容枠体(10)の筒長(L10)及び浸漬深さ(B10)(図3)は、堆積したドロスを安定に保持することができ、下部開口端(10B)から外へ溢れ出ることがないように、ドロスの比重を考慮して適宜設定される。実験によれば、浸漬深さ(B10)は約40cm以上であれば十分であり、具体例を挙げると、筒長(L10)を約50〜65cmとし、浸漬深さ(B10)約40〜50cm(めっき浴面からの突出高さA10:約10〜15cm)に設定して良好な処理作業性を確保することができる。
【0016】
ドロス収容枠体(10)の筒形状は、円形や楕円形状等の丸筒形状、正方形,長方形,その他の多角形状を有する角筒形状などであり、開口形状は任意である。ドロス収容枠体(10)の開口サイズは、浮遊ドロスの汲み入れ及び処理後の掻き出し作業性等を考慮して設計され、例えば、丸筒体では、上端開口径:約300〜600mm、矩形の角筒体では、上端開口辺長さ:200〜700mm×200〜700mm、とする例が挙げられる。
【0017】
また、ドロス収容枠体(10)として、筒体の開口サイズ(水平断面積)を上部から下部にかけて漸増させた傾斜形状を有する筒体が使用される。図4は、矩形状角筒体に傾斜形状を付与した例を示している(同図[1]:正面図,[2]:平面図)。このような傾斜形状とすることにより、ドロス収容枠体(10)に収容されたドロス堆積層(60)の上面(浴外雰囲気に露出した放熱面である)の面積を大きくせずに、ドロスの収容量を増やし(又は収容量を減らさずに筒長を短くでき)、更にドロス分離層の高さも高くなり分離効率も向上する。傾斜角(垂直面に対する)は例えば20〜45゜に設定される。
【0018】
上記図4では、矩形状角筒体の2つの長辺および2つの短辺の各側面を傾斜させているが、4辺のうち1辺ないし3辺を傾斜面としてもよく、その傾斜形状は適用されるめっき浴槽における制約(関連設備の配置との関係等)の具体的条件を考慮して適宜設計すればよい。丸筒体(円形,楕円形)についても、例えば図5(同図[1]:正面図,[2]:平面図)のように傾斜形状とすることにより上記と同様の効果を得ることができる。なお、図4,図5では、浮遊ドロスの汲み入れ及び処理後のドロス排出の作業性を考慮して、めっき浴面より下に位置する部分(B)のみを傾斜形状とし、めっき浴面の上に突出する上端部(A)は直筒(ストレート形状)としているが、作業性に支障が内場合は上端縁から下端縁に到る全長に亘って傾斜形状として構わない。
【0019】
ドロス収容枠体(10)の形成材料は、めっき浴に対する耐食性を有し、熱伝導性の高いものが好ましいが、例えば溶融亜鉛系めっき浴では、ステンレス鋼(SUS316L等)で十分であり、溶融アルミニウム系めっき浴に対しては、合金工具鋼(SKD61等)で十分である。
【0020】
加熱装置(20)は、バーナや電熱ヒーター等が適宜使用される。図1ではバーナ(21)を配置した例を示している。バーナーを使用する場合は、ドロス収容枠体(10)の上部開口からドロス堆積層(60)の上にバーナーを臨ませてドロス堆積層の表面をフレームであぶることにより、速やかに溶融させドロス処理を効率的に進めることができ、また装置構成も電熱ヒーター等に比し簡素でメンテナンスも容易である。バーナ(21)を設置する場合は、ドロス収容枠体(10)へのドロス収容及び処理後の排出作業の邪魔にならないように、図1における矢符X及び鎖線で示すように、ドロス収容枠体(10)の直上位置から退去し得るように適宜の進退移動機構を設けるとよい。
【0021】
ドロス収容枠体(10)に浮遊ドロス(6)を収容するための汲み上げ及びめっき金属が分離された後のドロス収容枠体(10)からのドロス排出作業は柄杓(8)を用いて作業者が行なってもよく、またドロスポンプを使用して行なうこともできる。図6は、ドロス搬送ダクト(9)の吸い込み口(91)をめっき浴面(2F)に臨ませると共に、吐出口(92)をドロス収容枠体(10)の上部開口に臨ませてドロスポンプ(8)によりめっき浴面上の浮遊ドロス(6)をドロス収容枠体(10)内に収容する例を示している。めっき金属を分離除去した後のドロス収容枠体(10)からドロス堆積層(60)を排出する作業についても、適宜の搬出装置を設けて機械化すれば、ドロス処理作業者は、ポンプ吸い込み口(91)(図6)に浮遊ドロスを掻き寄せるだけでよいことになり、浮遊ドロス処理の作業性が大きく高められる。
【0022】
【実施例】
連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、図1のようにめっき浴に設置したドロス収容枠体(10)に、めっき浴から浮遊ドロスを汲み上げて所定量を収容し、上部開口端からバーナーでドロス堆積層(60)の上面の適時加熱を施して一定時間放置した後、ドロス収容枠体からドロスを掻き出し、浴外に排出する。めっき浴面の浮遊ドロス生成状況に応じて上記処理を適宜反復実施した。
【0023】
【0024】
上記浮遊ドロス処理により、浮遊ドロスからのめっき金属の回収(めっき浴への還流)が効率よく行なわれ、めっき金属の浴外排出によるロスは、従来の約50%以下に減少した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、製品めっき鋼板の品質低下を抑制するためにめっき浴面の浮遊ドロスを除去する作業において、浮遊ドロスをドロス収容枠体に汲み取って一定時間放置するという極めて簡単な処理操作でドロスからめっき金属を効率よくめっき浴へ還流することができ、めっき金属の無駄な消費が回避される。
本発明は、中空筒体であるドロス収容枠体とドロス収容枠体内のドロス堆積層に熱補給する加熱装置を設置するだけで実施することができ、装置構成が著しく簡素であり、設備費及びメンテナンスの負担が少なく実用性に優れている。また、装置構成が簡素であるため浮遊ドロスの汲み取り及び排出作業を機械化することも容易であり、浮遊ドロスの汲み取り(ドロス収容枠体への収容)にドロスポンプ、処理後のドロスの浴外排出(ドロス収容枠体からの取出し)に専用の搬出装置を使用すれば、作業者は浮遊ドロスをポンプ吸込み口に掻き寄せるだけですみ、作業性を格段に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す正面図である。
【図2】ドロス収容枠体内の浮遊ドロスの堆積状態を示す断面説明図である。
【図3】 ドロス収容枠体の筒長とめっき浴中浸漬深さの説明図である。
【図4】ドロス収容枠体の形状例を示す図([1]:正面図,[2]:平面図)である。
【図5】ドロス収容枠体の他の形状例を示す図([1]:正面図,[2]:平面図)である。
【図6】ドロスポンプによる浮遊ドロスの汲み取り(ドロス収容枠体への収容)を示す模式的説明図である。
【図7】連続溶融金属めっき浴の装置構成を示す正面説明図である。
【符号の説明】
1:スナウト
2:めっき浴 2F:めっき浴面
3:シンクロール
4:サポートロール
5:ワイピングノズル
6:浮遊ドロス 60:ドロス堆積層
7:柄杓
8:ポンプ
9:ダクト
10:ドロス収容枠体 10B:下部開口端
20:加熱装置
21:バーナ
S:鋼帯(被めっき材)
Claims (2)
- 下部開口端をめっき浴中に浸漬し、上部開口端はめっき浴面の上に突出させて設置された、上部から下部にかけて水平断面積が増加する傾斜形状を有する中空筒体であるドロス収容枠体に、めっき浴面から汲み上げた浮遊ドロスを投入してドロス収容枠体内に堆積させ、堆積したドロスに含まれるめっき金属を比重差によりドロス中を降下させてめっき浴中へ移行させる一方、めっき金属が分離されたドロスを上部開口端から排出することを特徴とする溶融金属めっき浴の浮遊ドロス処理方法。
- めっき浴面から汲み上げられる浮遊ドロスを収容するための上部から下部にかけて水平断面積が増加する傾斜形状を有する中空筒体であるドロス収容枠体が、下部開口端はめっき浴中に浸漬し、上部開口端はめっき浴面の上に突出してめっき浴に設置されていると共に、ドロス収容枠体内のドロス堆積層を上面から加熱するための上部開口端に臨む加熱装置が配置され、ドロス収容枠体内のドロスに含まれるめっき金属はドロスとの比重差によりドロス中を降下してめっき浴へ移行し、めっき金属が分離されたドロスは上部開口端から排出される溶融金属めっき浴の浮遊ドロス処理装置。
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