JP3988807B2 - 工業用織物の接合部 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経糸が金属製である工業用織物の接合部に関する。
特には、経糸が複数本の素糸を撚り合わせて形成した撚り線構造である工業用織物をコンベアベルトとして使用するために無端状に接合した接合部に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、金属製の織物は優れた剛性、耐熱性等の特性を生かし、不織布の乾燥や熱処理用、建材製造用、塩ビ発泡シートの支持ベルト等の各種搬送用コンベアベルト等に広く使用されている。
織物を構成する糸としては断面円形状や四角形状の単線等の線材が使用されることが多いが、コンベア装置のロール径が小さい場合のように、ベルトが大きく屈曲させられる場合には、経糸に金属の単線を使用したベルトではすぐに屈曲疲労によって切断してしまうため、経糸に撚り線を使用して柔軟性を高め、曲率半径を大きくして耐屈曲疲労を向上させる対策がなされている。
そして、これらの織物を無端状に接合する方法としては、両端部にループを形成してこれらのループを組み合わせ、その共通孔に芯線を挿通して接合する方法が多く採用されている。
これらの方法は、接合用の芯線を抜き取ることにより自由に無端状や有端状に形成することが可能であるため、機械に取り付ける際に有端状の状態で機械のロール間に掛け渡してその場で無端状に形成することができ、機械への取り付けが非常に容易である。
例えば機械に取り付けられている古い使用済みの工業用織物を有端状にし、その一端に新しい工業用織物の一端を接合し、機械を作動させることにより工業用織物を機械のロール間を移動させて掛け渡し、1周して全体にかけわたった時点で古い工業用織物を取り外し、新しい工業用織物を無端状に形成して取り付ける。
ループを形成する方法としては、ループ形成用の糸を使用して工業用織物端部にかがり込むとともにループを形成させる、一般的にかがりレーシングと称されている方法や端部に螺旋状体を取り付ける方法が採用されている。
プラスチック製の織物の場合は、織物本体の糸を折り返してループを形成する方法も多く採用されているが、金属製の織物の場合にはその剛性の高さによりループ形成が困難であり、またこの方法は手間がかかるということもあって採用されていない。
ところが、上記のかがりレーシングや端部に螺旋状体を取り付ける方法は、ループ形成用の糸や螺旋状体が表裏面に突出してしまうため、接合部と普通部の間に段差が発生し、接合部が局部摩耗して早期に切断するという問題があった。
また、工業用織物とは全く異なる別体の糸や螺旋状体を取り付けることになるため、接合部の構造が普通部と全く異なり、平滑性や通気性に違いが生じ、ループ形成用の糸や螺旋状体が直接搬送物に接して搬送物にマークを発生させたり、脱水用や乾燥用工業用織物の場合には脱水ムラや乾燥ムラが発生したりする問題があった。
また、別体の糸や螺旋状体を取り付けることにより接合部の柔軟性が損なわれ耐屈曲疲労性が低下する問題もあった。
また、上記方法は端部の緯糸がほつれてくるのを防止するために織物の端末の経糸端部と緯糸とを銀ろうなどで固定させた後にループ形成用の糸でループの形成を行なっていたため二度手間となっていたのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の接合部の問題点に鑑み、自由に無端状や有端状に形成することが可能なループ形成による接合部であるにもかかわらず、非常に簡単に接合部の構造を普通部と段差が生じることなく平滑性や通気性もほぼ同等に形成可能な接合部を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 経糸が金属製である有端状の工業用織物の両端部に接合用ループを形成し、両端の接合用ループを互いに組み合わせて形成した接合用ループの共通孔に芯線を挿通して接合する工業用織物の接合部において、接合用ループが、工業用織物の両端部の緯糸を数本取り除いて形成した経糸のみからなる部分の隣接する2本の経糸の先端部分、を溶接して一体化されて形成されていることを特徴とする工業用織物の接合部。
2. 織物を構成する経糸が金属製の複数本の素糸を撚り合わせて形成した撚り線である、1項に記載された工業用織物の接合部。
3. 両端の接合用ループの組み合わせが、両端のループを交互に相手側ループ間に挿入した組み合わせである、1項または2項に記載された工業用織物の接合部。」
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される織物の種類としては少なくとも経糸が金属製であればその他は特に限定されるわけではなく、経糸材質としてはステンレスやブロンズ等の各種金属材が使用でき、構造としても単線や撚り線等の各種構造が使用できる。緯糸は全く限定されることなく、金属線やポリエステルやポリアミドの合成樹脂製の糸であってもよい。
例えば、ステンレス製の撚り線の経糸とポリエステルモノフィラメント緯糸を折り合わせた織物等の異種の材質を組み合わせた網でもよい。
また、織組織も平織、各種綾織、朱子織りの一重織や、多重織の組織も使用できて特に限定されない。
【0006】
また、本発明で経糸とは溶接してループを形成する糸を意味するものであり、織機上や使用時の経糸に限定するものではない。
本発明の特徴は、接合用ループを、工業用織物の両端部の緯糸を数本取り除いて経糸のみのからなる部分を形成し、隣接する2本の経糸の経糸のみからなる部分の先端部を溶接することによって形成したことである。
従来のかがりレーシングや端部に螺旋状体を取り付けることはなく、本来存在していた織物を構成する経糸をそのまま利用して隣り合う2本の経糸の先端部を溶接してループを形成するだけなので普通部と類似構造とすることができ、ループ形成用の糸や螺旋状体が表裏面に突出することがなく、接合部と普通部の間に段差が発生せず、表面構造や通気等も普通部とほぼ同等とすることができる。
従って、接合部が局部摩耗して早期に切断してしまうという問題や、ループ形成用の糸や螺旋状体が直接搬送物に接して搬送物にマークを発生させたり、脱水用や乾燥用工業用織物の場合にも脱水ムラや乾燥ムラが発生したりする問題がない。
また、接合部の柔軟性も損なわれることがなく、耐屈曲疲労性が低下する問題もない。
【0007】
また、これに限定されるわけではないが、経糸のみとした部分の普通部と同様の曲がり形状をそのまま残すと接合部の構造を普通部とより近くすることができ好ましい。
さらに、経糸のみとした部分の経糸の長さや溶接部分を調節することにより、ループの長さを、両端を接合したときに端部の緯糸と芯線のピッチを普通部の緯糸ピッチと同じになるように形成すると接合部の緯糸密度を普通部と同じにすることができ好適である。
さらに、芯線が挿通される部分、すなわち両端のループが組み合わされて共通孔が形成される部分は、当然両端の経糸が重複して存在する部分となるため、経糸密度は普通部の2倍となるが、その部分のループを形成している隣り合う2本の経糸を上下に重なるように形成すると平面上の経糸密度を普通部と同じにすることができ好適である。
【0008】
また、本発明の接合部は経糸が撚り線の織物に特に好適に実施できる。
経糸が撚り線であると溶接部の溶接玉を小さくでき普通部の線径とほぼ同等とすることができるのである。以下その理由を説明する。
経糸を溶接させる場合には、突き合わせ方向にある程度の力を加えておいて溶融し加圧一体化させなくてはならないために、押しつぶされる状態になって溶接部の線径はどうしても玉状に太くなる。
すなわち、加圧一体化させているために溶接部の経糸は圧縮されて長さが短くなり、短縮された部分の経糸が余分な溶融金属となって溶接部に玉状の溶融玉を形成する。
しかし、経糸を複数本の細い線径の素糸を撚り合わせた撚り線とすると、素糸間に微細空間が形成されている線であるため、溶融させて一体化させると微細空間がなくなり線径が細くなって体積が減少すると同時に本来余分となる溶融金属が細くなった線径部分に供給され、溶接部の線径を普通部の線径とほぼ同線径となすとともに、大きな溶接玉の生成を防止することができる。
また、溶接する経糸を撚り線とすると織物本体が経糸方向に柔軟となり耐屈曲疲労性が非常に良好となるため、本発明の接合部の優れた耐屈曲疲労性の効果を良好に発揮させることができる。
なお、本発明では溶接方法は特に限定されることなく、公知の色々な溶接方法が採用可能であるが、ろう材等を使用せずに経糸自体を直接溶融させて溶接する方法が、溶接接合部が全て同金属となり電位差が生じることがなく、電食によって溶接部が切断することがないため好適である。
【0009】
【実施例】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例の接合部用ループの説明図であって、経糸のみからなる部分の先端部部分を接触させたところを示す。
まず端部の緯糸、すなわち緯糸8より端部側に存在していた緯糸を取り除いて経糸のみからなる部分7を形成する。本実施例では2本の緯糸を取り除いた。
そして隣接する2本の経糸の経糸のみからなる部分7を曲げて先端部分を接触させる。本実施例では図面に示す通り、経糸1と経糸2、経糸3と経糸4、経糸5と経糸6の、経糸のみからなる部分7が曲げられて先端部分が接触している。
次に上記接触している先端部分を溶接して一体化させる。
【0010】
図2が、経糸5と経糸6の溶接後を示す平面図である。
経糸5と経糸6の先端部が溶接され一体化した部分が溶接部9である。
経糸5と経糸6の先端部が溶接一体化されたことによって、接合用ループ10が形成されている。必要に応じてペンチ等でループの形状を整える。
【0011】
図3は、図2の側面図である。
接合用ループ10が形成されていることがよく理解できる。また、織物本体の経糸を利用し、別体の糸等を利用することがないので、接合用ループが表裏面に突出することがない。
さらに本実施例では、図面からよくわかるように接合用ループが形成されている部分の経糸に、普通部と同等の曲がり形状を残存させているため、より接合用ループ部の構造が普通部と近似構造となり、表面構造、平滑性を普通部とほぼ同等とすることができる。
【0012】
また、本実施例では図4に示すように、図2および図3に示した接合用ループのループを形成している経糸5、6の先端部の重なりを織物としてみた場合の上下に重なるように形成した。図2および図3に示した接合用ループのループを形成している経糸5、6をペンチ等によって挾んで捩りを加えることにより形成する。
上記のように経糸を上下に重なるように形成すると、接合部の平面上の経糸密度、平面空間率を普通部と同じにすることができ好適である。
【0013】
図5は、本実施例の接合部を用いて接合したところを示す平面図である。
両端部に形成された接合用ループが組み合わされて、組み合わされることによって形成された接合用ループの共通孔に芯線11が挿通されて接合部14が形成されている。
図面下側端部の接合用ループは、経糸1と経糸2、経糸3と経糸4、経糸5と経糸6によって形成され、図面上側端部の接合用ループは、経糸2と経糸3、経糸4と経糸5、経糸6と隣接する経糸(図示せず)によって形成されている。
上側端部の余った経糸1は端部の緯糸12と溶接部13で溶接止めされほつれ防止がなされている。
本実施例のように、両端の接合用ループを経糸1本ずらして組み合わせて形成し、巾方向端部の余った経糸は上記のように溶接止めすると、巾方向端部にズレが生じず直線的に形成することができ好ましい。勿論反対側巾方向端部の余った経糸も同様に溶接止めするとよい。
【0014】
また、本実施例では図4で説明したように、接合用ループのループを形成している経糸の先端部の重なりを織物からみて上下に重なるように形成したため、本来両端のループが組み合わされて2倍の経糸密度になっている部分が、平面上普通部と同密度に形成でき、平面空間を同等にでき通気性等の差異も非常に小さくできることがよく理解できる。
図6は、図5のI−I′線で切断した側面図である。両端の接合用ループが組み合わされて形成された共通孔15に芯線11が挿通され両端が接合されていることがわかる。
また、本実施例では接合用ループの長さを、両端を接合したときに端部の緯糸8および12と芯線11のピッチとを普通部の緯糸ピッチと同じくなるように形成し、接合部の緯糸密度を普通部と同じに形成した。
経糸のみとした部分の経糸の長さおよび溶接部分の長さを調節することにより、ループの長さつまり端部の緯糸からループ内側までの長さを決定する。
本実施例では、接合用ループが形成されている部分の経糸に、普通部と同等の曲がり形状を残存させ、端部の緯糸8または12の次に存在していた緯糸部分、図6では芯線が挿通されている部分、の際まで溶接し、芯線の線径を緯糸と同線径とすることにより上記構成とした。
緯糸密度、経糸の曲がり形状、芯線の線径を普通部と同等に形成したため、芯線が普通部の緯糸と全く同じ状態で配置されている。
なお、大きな接合強度が望まれる場合は、接合部と普通部に多少段差が発生するが線径の太い芯線を使用し、接合強度を向上させることができる。
また、本発明では必要に応じて芯線を挿通してから接合部をコロ等でつぶしてより平滑性を向上させてもよい。
また、本実施例では全ての経糸を使用して接合用ループを形成し、両端のループを交互に相手側ループ間に挿入して組み合わせたが、本発明はこれに限定されるものではなく、数本置の経糸で接合用ループを形成することもできる。例えば経糸2本置に接合用ループを形成する。ループを形成しない経糸は端部で切断し、必要に応じて溶接止すればよい。接合用ループの組み合わせも、1個の片側端部ループと2個の反対側端部ループを組み合わせる等、色々な組み合わせ方が可能である。
【0015】
比較試験
次に実施例の接合部と、かがりレーシングにて接合した接合部とで、引張強度、ローラー耐折試験を実施し、また接合部製造時間、接合後の状態を比較した。使用した織物は、経糸がステンレス製の線径0.234mmの7本の素糸を撚り合わせて構成した撚り線で1インチ当たり10本配置され、緯糸がステンレス製の線径0.6mmの単線で1インチ当たり10本配置されている織物である。引張強度
引張試験機にて破断時の強度を比較した。
引張強度試験では、実施例が55.0kg/cmであったのに対し、かがりレーシングは35.8kg/cmであった。
実施例の強度が、かがりレーシングに比較して53.6%も優れている。
ローラー耐折試験
試験条件は、ロール径φ40mm、ストローク400mm、スピード40回/分で、破断するまでの回数を比較した。
実施例は1123回、かがりレーシングは191回であった。また、普通部は1380回であった。
実施例がかがりレーシングに比較して487.9%も優れている。
また、かがりレーシングは普通部の13.8%の強度しかないのに対し、実施例の強度は普通部の81.3%もの強度を有している。
したがって、実際に使用された場合に、ほぼ普通部の織物自体の寿命に応じた使用が可能となるのである。
接合部製造時間は、実施例がかがりレーシングの約1/2の時間であった。
接合後の状態も実施例が表面性、厚さ、剛性など普通部とほぼ同等であったのに対し、レーシングの場合はレーシング線が突出して表面性が悪く、柔軟性が損なわれた状態であった。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、自由に無端状や有端状に形成することが可能なループ形成による接合部であるにもかかわらず、短時間で容易に、接合部の構造を普通部とほぼ同等に形成した接合部を形成することができ、接合部の強度、耐屈曲性も優れており、織物全体の使用寿命を非常に長くすることができる非常に優れた効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】経糸のみからなる部分の先端部分を接触させたところを示す平面図である。
【図2】経糸5と経糸6の溶接後を示す平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】図3に示した接合用ループの経糸の重なりを上下に重なるように形成したところを示す平面図である。
【図5】本実施例の接合部を示す平面図である。
【図6】図5のI−I′線で切断した側面図である。
【符号の説明】
1 経糸
2 経糸
3 経糸
4 経糸
5 経糸
6 経糸
7 経糸のみからなる部分
8 緯糸
9 溶接部
10 接合用ループ
11 芯線
12 緯糸
13 溶接部
14 接合部
15 共通孔
Claims (3)
- 経糸が金属製である有端状の工業用織物の両端部に接合用ループを形成し、両端の接合用ループを互いに組み合わせて形成した接合用ループの共通孔に芯線を挿通して接合する工業用織物の接合部において、接合用ループが、工業用織物の両端部の緯糸を数本取り除いて形成した経糸のみからなる部分の隣接する2本の経糸の先端部分、を溶接して一体化されて形成されていることを特徴とする工業用織物の接合部。
- 織物を構成する経糸が金属製の複数本の素糸を撚り合わせて形成した撚り線である、請求項1に記載された工業用織物の接合部。
- 両端の接合用ループの組み合わせが、両端のループを交互に相手側ループ間に挿入した組み合わせである、請求項1または2に記載された工業用織物の接合部。
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ID=13600316
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JP07626299A Expired - Lifetime JP3988807B2 (ja) | 1999-02-16 | 1999-02-16 | 工業用織物の接合部 |
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