JP4256501B2 - 無端状網 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有端状網の両端部を接合した無端状網に関する。
さらに詳細には、金網の少なくとも経糸を撚り線とし、この金網をコンベアベルトとして使用するために無端状に接合した無端状網に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、網は色々な用途に使用されている。
特に金網は優れた剛性等の特性を生かし、不織布用や建材製造用、各種搬送用コンベアベルト等に使用されている。金網を構成する線としては断面円形状や四角形状の単線等の線材が使用されることが多いが、コンベア装置のロール径が小さい場合のように、ベルトが大きく屈曲させられると、経糸に金属の単線を使用したベルトではすぐに屈曲疲労によって切断してしまうため、経糸に撚り線を使用して柔軟性を高め、回転半径を大きくして耐屈曲疲労性を向上させる対策がなされている。
そして、このベルトを無端状に接合するためには、公知の技術である織継、かがり継ぎ、金ろうや銀ろうのろう材を使用したろう付けによる方法が採用されていた。
しかし、織継による方法では、非常に手間がかかりコストが高くなる問題、負荷が高くベルトに高張力が係る場合に継ぎ部の経糸が抜け切断する問題がある。
また、織継では次ぎのような大きな欠点があった。織継は接合する網の端部から緯糸を取り除いて経糸のみとした両端部を形成し、それを対向させて突き合わせ、その間に別に用意した同じ組織の織物で形成した経糸を取り除いて緯糸のみとした部分を設置し、この緯糸を組織通りに開口させて、経糸のみとした端部の経糸を両端側から交互に織り込んで、再度組織通りに織り合わせることにより接合するのである。
ところが、再度織り合わせた部分は、組織を合わせたといっても経糸と緯糸との曲がり形状がぴったりと完全に合致するわけではなく、また経糸末端部付近は緯糸による拘束力が弱く経糸が抜け勝手になるため、どうしても経糸が浮いたように突出した状態になってしまい織継部の厚さが厚くなる問題もある。
また、接合強度を向上させるために両端の経糸端部同士を緯糸緯糸何本分か交差させているため織継部は普通部と比較して巾が広がるため、この巾差を吸収しきれずに波気が発生して平滑性が悪くなる。また、剛性が増して固くなり柔軟性がなくなる問題もある。
したがって、織継部が異常摩耗を起こすことが多かった。
また、緯糸を取り除いてバラバラにほぐした経糸の普通部との境界の付け根部分は、どうしても経糸の撚りが戻ってしまう問題があった。
この部分は剛性が増して固くなった織継接合部と普通部との境界の部分でもあって屈曲が集中する部分となるため、屈曲疲労切れが発生する傾向が大きい。
さらに、織り継ぐ場合にはバラバラにほぐした経糸を筬や針等で緯糸間に打ち込むのであるが、その時に撚り線を構成している細い素糸を傷つけ、場合によっては切断させる問題がある。
素糸が切断されるとその端部が表面にでて、不織布等の繊維製品を搬送する場合等に製品をひっかけて製品を駄目にしたり、良好に搬送できなくなる問題を生ずる。
この他、かがり継ぎは、網を構成している線とは別の線を使用して文字通りかがって接合するが、かがる線が表面に突出するので表面性や耐摩耗性に問題があり、さらに普通部との剛性に差異が生ずる問題もあった。
ろう材を使用してろう付けすると、金網を構成している線材とろう材との間に電位差が生じて線材とろう材とのどちらかが腐食する電食が発生して使用中や保管中にろう付けした接合部が切断するという問題がある。
腐食環境下で使用される場合に、腐食に強いステンレス線材を使用しても、ステンレスの優れた耐腐食性を十分に生かすことができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みて、耐屈曲性が良好であって、接合部の構造が普通部とほとんど差がなく、普通部と同等の耐摩耗性を有し、電食によって切断することがない、容易に端部を溶接して無端状とすることができる、金網を溶接した無端状網を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本件発明は、
「1.経糸を複数本の金属素線を撚り合わせた撚線とし、緯糸を金属または合成樹脂の単線又は撚線とした金属網の両端部の経糸を接触させ、加熱溶融して両端部を接合すると共に接合部に生ずる余り溶融金属を素線間の間隙がなくなり線径が小さくなった溶融接合部に供給して細くなった接合部を普通部の経糸とほぼ同等かそれ以下となすとともに余り溶融金属による球状体の生成を防止し、溶融接合部の体積を減少して接合部の径を経糸の線径とほぼ等しくした無端状網。
2.経糸の金属撚線がステンレス線である、1項に記載された無端状網。
3.経糸の金属撚線の接合が金属網の両端部の経糸を綾を合わせて突き合わせて溶接した接合である、1項または2項に記載された無端状網。
4.経糸の金属撚線の溶接がプラズマ溶接である、1項ないし3項のいずれか1項に記載された無端状網。
5.経糸を複数本の金属素線を撚り合わせた撚線とし、緯糸を金属または合成樹脂の単線又は撚線とした金属網の両端部の経糸を接触させた後、加熱溶融して両端部を接合すると共に接合部に生ずる余り溶融金属を素線間の間隙がなくなり線径が小さくなった溶融接合部に供給して細くなった接合部を普通部の経糸とほぼ同等かそれ以下となすとともに余り溶融金属による球状体の生成を防止し、溶融接合部の体積を減少して接合部の径を経糸の線径とほぼ等しくする無端状網の製造方法。
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される網の種類としては少なくとも経糸に金属の撚り線を使用していれば緯糸は特に限定されず、材質もステンレスやブロンズ等の金属、ポリエステルやポリアミドの合成樹脂が使用される。
例えば、ステンレスの撚り線の経糸とポリエステルモノフィラメント緯糸を織り合わせた網等の異種の材質を組み合わせた網でもよい。
また、織り組織も平織、各種綾織、朱子織りの一重織や多重織組織も使用でき特に限定されない。
また、本発明で経糸とは溶接する線を意味するものであり、製織時の織機上や使用時の網の経糸に限定するものではない。例えば袋織りすれば製織時の緯糸が使用時の経糸となるからである。
【0006】
本発明の特徴は、網を構成している線のうち少なくとも経糸を金属の撚り線とし、この撚り線自体を直接溶融させて溶接したことである。
まず、溶接する経糸を撚り線としたため経糸方向に柔軟で耐屈曲性が良好である。
そして、溶接部の線径を普通部の線径とほぼ同等かそれ以下にすることができる。以下その理由を説明する。
本来、経糸を重ね合わせたり横に並べて接触配置させて溶接した場合は、溶接部分には2本分の経糸が存在しているために、1本分の経糸は余分な経糸溶融物となるため、当然その部分の線径は太くなる。
経糸同士を突き合わせて溶接させる場合にも、突き合わせ方向にある程度の力を加えて加圧一体化させなくてはならないために、押しつぶされる状態になって溶接部の線径はどうしても玉状に太くなるのである。
すなわち、加圧一体化させているために、溶接部の経糸は圧縮されて長さが短くなり、短縮された部分の経糸が余分な経糸溶融物となって溶接部に玉状となって現れるのである。
しかし、本発明の経糸は複数本の細い線径の素線を撚り合わせた撚り線であり、素線間に空隙が形成されている糸であるため、溶融すると素線が一体化し、素線間の空隙がなくなり線径が細くなる。それと同時に本来余分となるはずの経糸溶融物が、細くなった線径部分を補うこととなり、溶接部の線径を普通部の線径とほぼ同線径にでき、普通部の構造と同等に形成させることができるのである。
【0007】
また、撚り線自体を直接溶融させて溶接しているため、溶接接合部がすべて同一の金属となり電位差が生じることがなく、電食によって接合部が切断することがない。
本発明では、経糸を重ね合わせたり、横に並列配置させたり、突き合わせて溶接することが可能であるが、接合する両端部を綾を合わせて突き合わせて溶接するのが、線径だけではなくて経糸の曲がり形状も普通部とほぼ同等に形成させることができて好ましい。
溶接法の種類としても、特に限定されるわけではなく、レーザー溶接等種々な溶接法が採用できるが、なかでもプラズマ溶接が周囲に熱影響をあまり及ぼさず、経糸接触部のみに熱を集中して溶融させることができるため好ましい。
【0008】
【実施例】
発明の実施の携帯を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施例である溶接部を示す平面図である。
溶接された金網は、経糸1と緯糸2によって1/1平織組織にて製織されている。
溶接部4が、接合する金網の経糸同士をそれぞれ突き合わせ、経糸を溶融させて一体化することによって溶接された部分である。
経糸1はステンレス製の線径0.213mmの7本の素糸を撚り合わされて構成されている撚り線であり、Z撚りとS撚りの糸が交互に配置されている。
緯糸3はステンレス製の線径0.42mmの単線である。
溶接部4は経糸の普通部の線径とほぼ同線径に形成されていることがわかる。
これは前述したように経糸を撚り線構造としたことによって可能となったのである。
また、本実施例では、両端部を、経糸同士が接して向き合うように綾を合わせて突き合わせ、突き合わせ部を溶接して両端部を接合する方法を採用した。
【0010】
図2は、図1のI−I′線で切断した断面図である。
溶接部4が普通部の経糸線径と同線径に形成されていることがわかる。
緯糸3のピッチも普通部と比較して多少長いがほぼ同等に形成されている。
これは、突き合わせる経糸の最端部の長さ、及び突き合わせる加圧力によって調節が可能であり、普通部と同ピッチとすることもできる。しかし、ピッチをあまり狭くすると経糸のナックル部や緯糸が溶融したりして表面性に悪影響を及ぼす等の不具合が生じる。メッシュの細かさ、溶接部に要求される諸性能に応じて適宜決定すればよい。
【0011】
図3は経糸を突き合わせたところを示す断面図である。
突き合わせ部5をプラズマ溶接機のトーチ6を近付けて溶融させ溶接する。
突き合わせ部5は矢印方向に加圧されているので、経糸1の突き合わせ部5が溶融すると付き合わされたそれぞれの経糸1は矢印方向に少し移動、すなわち緯糸の間隔が狭まって、溶融部が一体化して溶接される。
図2と図3を比較すると、突き合わせ部5または溶接部4を挾んで両側に配置された緯糸3の間隔が図2の方が少し狭くなっていることから、突き合わされた経糸同士が溶融移動して、経糸の長さが短くなって一体化したことがわかる。
本来であれば溶融移動して短くなると、短くなった部分に存在していた経糸部分が余分な経糸溶融物となって、玉状に形成され線径を太くさせるのである。
しかし、本発明は経糸1を撚り線構造としているために、溶触前に形成されていた素糸間の空隙が、素糸が溶融一体化して細くなると同時に、余分な経糸溶融物がなくなった微細空間部分を補うかたちとなり、結果として普通部の線径と同等に形成され、表面性を悪化させたりすることがないのである。
【0012】
比較試験
次ぎに同一の織物を用いて本発明により接合した実施例と、織り次ぎにて接合して接合部に耐摩耗溶射を実施した比較例とで、接合時間、接合後の状態を比較した。
また、これ等の実施例の網と比較例の網を実際に不織布製造装置に使用して状況を比較した。
接合時間は、実施例が比較例の約半分であった。
接合後の状態は実施例が表面性、剛性等普通部とおぼ同等であったのに対し、比較例は波気が発生し、柔軟性がなくなって固くなっており、厚さも普通部が1.19mmであるのに対し1.24mmと厚くなっていた。
実際に不織布製造装置に使用しての状況では、比較例が耐摩耗溶射を実施したにも関わらず接合部の異常摩耗で2週間の寿命であったのに対し、実施例は3週間問題がなく使用された。摩耗状況も全体的に均一であった。
【0013】
【発明の効果】
本件発明は、以上説明したように、網の耐屈曲性を良好としたうえに、接合部の製品に接合部の跡をつけない構造を普通部とほとんど差がなくすることができる。また、接合部の耐摩耗性を普通部と同等にでき、短時間で容易に接合することが可能である。
また、ろう材を使用しないため、溶接接合部が電食によって切断することがない。網厚が一定であるのでコンベアの走行時に振動せず安定した走行となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である溶接接合部を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線で切断した断面図である。
【図3】経糸を突き合わせたところを示す断面図である。
【符号の説明】
1 経糸
2 素糸
3 緯糸
4 溶接部
5 突き合わせ部
6 トーチ

Claims (5)

  1. 経糸を複数本の金属素線を撚り合わせた撚線とし、緯糸を金属または合成樹脂の単線又は撚線とした金属網の両端部の経糸を接触させ、加熱溶融して両端部を接合すると共に接合部に生ずる余り溶融金属を素線間の間隙がなくなり線径が小さくなった溶融接合部に供給して細くなった接合部を普通部の経糸とほぼ同等かそれ以下となすとともに余り溶融金属による球状体の生成を防止し、溶融接合部の体積を減少して接合部の径を経糸の線径とほぼ等しくした無端状網。
  2. 経糸の金属撚線がステンレス線である、請求項1に記載された無端状網。
  3. 経糸の金属撚線の接合が金属網の両端部の経糸を綾を合わせて突き合わせて溶接した接合である、請求項1または2に記載された無端状網。
  4. 経糸の金属撚線の溶接がプラズマ溶接である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された無端状網。
  5. 経糸を複数本の金属素線を撚り合わせた撚線とし、緯糸を金属または合成樹脂の単線又は撚線とした金属網の両端部の経糸を接触させた後、加熱溶融して両端部を接合すると共に接合部に生ずる余り溶融金属を素線間の間隙がなくなり線径が小さくなった溶融接合部に供給して細くなった接合部を普通部の経糸とほぼ同等かそれ以下となすとともに余り溶融金属による球状体の生成を防止し、溶融接合部の体積を減少して接合部の径を経糸の線径とほぼ等しくする無端状網の製造方法。
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