次に、本発明をコンバインに適用した実施例について説明すると、図1は左右一対の走行クローラ2a,2bを有する走行車両である汎用コンバインの走行機体1の側面図であり、該走行機体1上には脱穀装置3を搭載し、該脱穀装置3における扱室内の扱胴4をその軸線が走行機体1の進行方向に沿うように配設し、その下方には受け網とシーブ等による揺動選別装置5と唐箕フアン6の風による風選別装置とを備え、脱穀装置3の側方に脱穀済みの穀粒を貯留する籾タンクを搭載してある。
刈取前処理装置7は、前記脱穀装置3の前部に開口し、昇降用油圧シリンダ8にて昇降自在な角筒状のフイーダハウス9(内部にチエンコンベヤ9aを備える)と、該フイーダハウス9の前端に連設した横長のバケット状のプラットホーム10と、該プラットホーム10内に横設した横長の掻き込みオーガ11と、その前方上部位置のタインバー付きリール12と、プラットホーム10下面側に左右長手に配設したバリカン状の刈刃14とから成る。また、刈取前処理装置7の前部左右両端には、前向きに突出する左右一対の分草体15を備えている。
左右の走行クローラ2a,2bは、それぞれ、後述する操向装置20の左右の出力軸21a,21bから出力される動力にて回転駆動する起動輪22,22と、走行機体1の後端側に後向き付勢された誘導輪23,23とに巻掛けられた履帯24,24と、各履帯24の下側内周面を支持する懸下輪(下部転輪)25等からなる。
次に、動力伝達機構を備えた操向装置20の構成について説明する。図2〜図4に示す実施例は、ミッションケース30内に、後述する左右一対の遊星歯車機構31,31等からなる差動機構と、第1油圧ポンプ33及び第1油圧モータ34からなる走行用の油圧式駆動手段32と、第2油圧ポンプ36及び第2油圧モータ37からなる旋回用の油圧式駆動手段35等を内装する。
なお、走行機体1に搭載したエンジン17からの回転力は、チェンスプロケットと無端チェン60とを介して、ミッションケース30の外側にて一方の油圧ポンプの入力軸(例えば走行用の油圧式駆動手段の第1油圧ポンプ33の入力軸33a)に伝達し、次いで、第1油圧ポンプ33の入力軸33aと第2油圧ポンプ36の入力軸36aとをミッションケース30外のチェンスプロケットにチェン61巻掛けにて動力伝達するように構成する(図2及び図3参照)。
左右一対の遊星歯車機構31,31は左右対称状であって、同一半径上に複数(実施例では3つ)の遊星歯車39,39,39がそれぞれ回転自在に軸支された左右一対の腕輪38,38をミッションケース30内にて同軸線上にて適宜隔てて相対向させて配置する。前記各遊星歯車39にそれぞれ噛み合う太陽歯車40,40を固着した太陽軸41の左右両端は、両腕輪38,38の内側にてその回転中心部に位置する軸受に回転自在に軸支されている。
内周面の内歯と外周面の外歯とを備えたリングギヤ42は、その内歯が前記3つの遊星歯車39,39,39にそれぞれ噛み合うように、太陽軸41と同心状に配置されており、このリングギヤ42は、前記太陽軸41上または、前記腕輪38の外側面から外向きに突出する中心軸43上に軸受を介して回転自在に軸支される。前記走行用の油圧式駆動手段32における容量可変式の第1油圧ポンプ33の回転斜板の角度を変更調節することにより、第1油圧モータ34への圧油の吐出方向と吐出量を変更して、当該第1油圧モータ34の出力軸の回転方向及び回転数が調節可能に構成されている。第1油圧モータ34からの回転動力は、入力軸44の入力歯車45から副変速機構の歯車46,47,48を介して、太陽軸41に固定したセンター歯車49に伝達される。なお、歯車48が取付くブレーキ軸50には図示しないブレーキ機構が設けられている。また、歯車46に噛み合う歯車51を介して作業機等への回転力を伝達するPTO軸52に出力する。
そして、前記走行用の油圧式駆動手段32からの回転動力は、前記太陽軸41上に固定した前記センター歯車49を介して、前記左右一対の遊星歯車機構31,31に伝達され、前記左側の腕輪38の中心軸43に固着した伝動歯車53を、左側の出力軸21aに固着した伝動歯車54に噛み合わせて出力する。同様に、右側の腕輪38の中心軸43に固着した伝動歯車53を、右側の出力軸21bに固着した伝動歯車54に噛み合わせて出力する(図2及び図4参照)。
旋回用の油圧式駆動手段35における容量可変式の第2油圧ポンプ36の回転斜板の角度を変更調節することにより、第2油圧モータ37への圧油の吐出方向及び吐出量を変更して、当該第2油圧モータ37の出力軸の回転方向及び回転数を調節可能に構成されている。第2油圧モータ37からの回転動力は、入力軸55に取付く一対の伝動歯車56,57に伝達される。そして、図2に示すように左側のリングギヤ42の外歯に対しては伝動歯車56と直接噛み合い、右側の伝動歯車57が逆転軸58に取付く逆転歯車59に噛み合い、この逆転歯車59と右側のリングギヤ42の外歯とが噛み合う。
従って、第2油圧モータ37の正回転にて、左側のリングギヤ42が所定回転数にて逆回転すると、右側のリングギヤ42が前記と同一回転数にて正回転することになる。
この構成により、例えば、旋回用の油圧式駆動手段35を停止させておけば、左右両側のリングギヤ42,42の回転は停止した固定状態である。この状態で走行用の油圧式駆動手段32を駆動すると、第1油圧モータ34からの回転力は、太陽軸41のセンター歯車49に入力され、その回転力は、左右両側の太陽歯車40,40に同一回転数にて伝達され、左右両側の遊星歯車機構の遊星歯車39、腕歯車38を介して左右両側の出力軸21a,21bに平等に同方向の同一回転数にて出力されるので、直進走行ができる。従って、走行用の油圧式駆動手段32のみを正回転駆動すると、走行機体1は直進前進し、逆回転駆動したときには直進後退する。
反対に、走行用の油圧式駆動手段32を停止した状態では、前記太陽軸41及び左右両側の太陽歯車40,40は固定される。この場合、ブレーキ軸50を固定すべくブレーキ手段を作動させるのが好ましい。この状態にて、旋回用の油圧式駆動手段35(第2油圧ポンプ36)を例えば正回転駆動させると、左の遊星歯車39、腕歯車38からなる遊星歯車機構は逆回転する一方、右の遊星歯車39、腕歯車38からなる遊星歯車機構は正回転することになる。従って、左走行クローラ2aは後進する一方、右走行クローラ2bは前進するので、走行機体1はその場で、左にスピンターンすることになる。
同様にして、旋回用の油圧式駆動手段35(第2油圧ポンプ36)を逆回転駆動させると、左の遊星歯車機構31は正回転し、右の遊星歯車機構31は逆回転して、左走行クローラ2aは前進する一方、右走行クローラ2bは後退するので、走行機体1はその場で、右にスピンターンすることになる。
走行用の油圧式駆動手段32を駆動しつつ旋回用の油圧式駆動手段35を駆動した場合には、前進時及び後退時において、前記スピンターン旋回半径の大きい旋回半径で右また左に旋回できることになり、その旋回半径は左右走行クローラ2a,2bの速度に応じて決定されることになる。
次に、図5〜図12を参照しながら、走行クローラ2a,2bの駆動方向を前進時と後退とで、切り換える走行切換操作装置70と、走行機体1を旋回させる旋回操作装置71とについて説明する。
図5、図6及び図7に示すように、走行切換操作装置70における主変速操作レバーとしての操作レバー72は、操縦部における操作板73に穿設した平面視略Z字状の案内溝74に沿って移動可能に突出しており、操作レバー72は、第1横軸75にて操作板73の前後方向に回動可能な第1ブラケット76上の第2横軸77を介して左右方向に回動可能に枢支されている。そして、第1ブラケット76の下端に連結して前後方向に延びる一対の操作ワイヤ78a,78bを前記走行用の第1油圧ポンプ33の操作部(図示せず)に接続して、操作レバー72を中立位置から遠ざかる前後方向に傾ける角度が大きくなるのに比例して、圧油吐出量を増大させ、走行速度を高速となるように調節する。
また、操作レバー72の左右に連結した操作ワイヤ79a,79bの案内管を第1ブラケット76上に設けた第2ブラケット80に固定し、操作レバー72を左右方向に回動する(傾ける)とき、前記第1油圧ポンプ33を操作して、第1油圧モータ34の出力軸の回転方向を前進用と後退用とに切り換える。
従って、図6に示すように、案内溝74における横溝部74aの左右中央箇所に操作レバー72を位置させるときには完全中立位置No(停止位置)となり、操作レバー72を右に倒して前進に切り換え、前方に傾けるにつれて前進高速となる。反対に操作レバー72を左に倒して後退に切り換え、後方に傾けるにつれて後退高速となる。なお、後述するように、この操作レバー72を前進・後退・中立の各位置に操作することに連動させて旋回操作装置71におけるヨーク94の傾きを変更させるべく、操作ワイヤ79a,79bと一体的に移動する操作ワイヤ89a,89bを設けている。
次に、図8〜図12を参照して、操向用(旋回用)ハンドル81の旋回操作方向と、走行機体1の前進時と後退時とにおける旋回方向とを一定にするための、換言すると、走行機体1を前進と後退とに走行方向を切り換えても、ハンドル81を右に傾動(回動)すれば右方向に旋回し、左方向に傾動(回動)させると左方向に旋回するための機械的な切換手段82について説明する。
まず、前提として、前述したように、操向装置20における走行用の第1油圧ポンプ33及び旋回用(操向用)第2油圧ポンプ36の入力軸の回転方向は前進時と後退時とで一定であり、走行用の第1油圧ポンプ33及び旋回用(操向用)の第2油圧ポンプ36は、その斜板の向き及び傾斜角度を切り換えることにより、各ポンプからそれぞれに対応する第1油圧モータ34及び第2油圧モータ37への圧油の吐出方向が逆転可能であり、また、斜板の傾斜角度を切り換えることにより、圧油量、ひいては各油圧モータの回転数も無段階変更調節可能である。ところで、前進時に正回転していた第1油圧モータ34のみの回転方向を逆転させると、第2油圧モータ37による前記左右一対の遊星歯車機構31,31の作用(動き)は前進時と後退時とで逆になる。然るに、第2油圧ポンプ36の圧油の吐出方向及び吐出量を制御操作するための操作部(ひいては旋回操作用のハンドル81)の動きを前進時の状態で機械的に規定していると、つまり、この操向用ハンドル81を一方に回動するとき前進時右旋回し、他方に回動させると前進時左旋回するというように機械的に連結していると、後退時には前記第2油圧ポンプ36の入力軸(出力軸)の回転方向を逆転させなければ、ハンドル81を一方に回動したとき、左旋回方向に作用し、他方に回動すれば右旋回方向に作用することになる。
そこで、前記旋回操作用(操向用)のハンドル81と前記操作部との間に機械的な切換手段82を設けて、走行機体1を前進と後退とに走行方向を切り換えて、走行機体1が前進時と後退時とに拘らず、ハンドル81を右に傾動(回動)すれば右方向に旋回し、左方向に傾動(回動)させると左方向に旋回するように構成するものである。
操縦部に立設したステム83の上端に固定したハウジング84には、筒状のステアリングコラム85を立設し、先端に操向用ハンドル81を固着したハンドル軸86を前記ステアリングコラム85内で回動可能に支持させるハンドル軸86の下端に取付けられた小ベベルギヤ87と、これに噛み合う大ベベルギヤ88とは、ハウジング84内に収納されており、大ベベルギヤ88と一体的に回転する、伝動軸90にはウオームギヤ91が取付けられ、これらは切換手段82を作動させるための連動機構の一部を構成する。
前記ハウジング84の一側には、水平方向(X軸)の第1軸92と、この軸線の延長線上で直交する鉛直方向(Z軸)の第2軸93とを設け、第1軸92には左右両側にアーム片95,95がY軸方向に延びるヨーク94を回動自在に軸支し、前記アーム片95,95には前記前進・後退切り換え用の操作レバー72に連結した一対の操作ワイヤ79a,79bから枝別れした、もしくは並列状に設けた一対の操作ワイヤ89a,89bの端部を接続する。なお、前記第2軸93には、前記前進・後退切り換え用の操作レバー72に連結した一対の操作ワイヤ89a,89bにおけるアウタ管89a′,89b′を取付けるためのブラケット110が固定されている。
従って、操作ワイヤ89a,89bのいずれか一方の操作ワイヤを引張れば、その引張り側が下向きになるようにヨーク94は第1軸92の周りに傾き回動することになる。
このヨーク94の上端には、第1軸92と直交する支軸96を突設し、該支軸96に軸受97を介して回動ブロック98を左右両側回動可能に装着する。この支軸96は、操作レバー72を前述の完全中立位置Noにセットしたときには、第2軸93(Z軸)の延長線上に位置する(軸線が一致する)ことになる。
回動ブロック98の外面には、操作レバー72を前述の完全中立位置Noにセットしたときに前記第1軸92の延長線上になる自在継手部99を設け、この自在継手部99に連結する側面視L字状のアーム100の下端を、前記第2軸93に沿って上下移動自在且つ回動自在に被嵌する操作部101に連結する。この操作部101に連結された操作ワイヤ102の他端は、旋回用の第2油圧ポンプ36の圧油の吐出方向及び吐出量を調節する斜板の制御レバー(図示せず)に連結されている。
また、前記アーム100に対して先端二股部103aにて挟み、中途部を第2軸93と一体的に回動するようピン104連結した連動アーム103の基端の扇状歯車部103bを前記ハウジング84内でウオームギヤ91に噛み合わせることにより、操向用ハンドル81の左旋回操作及び右旋回操作に応じて前記アームを中立位置を挟んで第2軸93周りに回動可能に構成する。なお、ここで、中立位置とは、図8において、アーム100がX−Z平面にあるときをいい、操向用ハンドル81を直進状態にセットしたときに対応させるものとする。
回動ブロック98には、ねじ109及びばね105にて押圧するボール106を前記支軸96と一体的に回動するデテント円板107の係止溝108に押圧付勢するように設け、オペレータが操向用ハンドル81を直進状態にした状態を感覚として容易に判断できるようにするものである。
従って、ハウジング84内のベベルギヤ87,88、ウオームギヤ91及び扇状歯車部103bを備えた連動アーム103とからなる連動機構により、操向用ハンドル81の回動角度に比例して前記アーム100を第2軸93周りに回動させるので、当該回動ブロック98の向き、ひいては操作部101の向きを左右に首振りさせることができる。
次に、図13〜図15を参照して、前記前進・後退切換用操作レバー72及び操向用ハンドル81の回動方向と回動ブロック98の姿勢並びにその姿勢における、旋回の態様とについて説明する。
まず、操作レバー72を完全中立位置Noで、左右両操作ワイヤ89a,89bの両方を引張らない状態では(図6及び図7参照)、ヨーク94における両アーム片95,95は、第1軸92及び第2軸9と直交するY軸にそって延びるように位置される。そして、ヨーク94における支軸96は第2軸93の軸線と一致し、回動ブロック98は第2軸93の延長線上の支軸96周りに回動可能である。しかも、自在継手部99は第1軸92の軸線上にあるから、操向用ハンドル81の左右回動操作にかかわらず、第2軸93(Z軸)と直交するX−Y平面上で自在継手部99が回動することになり(図13参照)、これとアーム100を介して連結された操作部101は第2軸93上で上下移動しないのである。つまり、走行機体を停止させた状態で、操向用ハンドル81を左右に回動しても、旋回用の第2油圧ポンプ36は中立位置となり、旋回作用が起こらない。
他方、図7に示すように、操作レバー72を前進側に回動すると、操作ワイヤ89aが引張られ、図10及び図14に示すように、一方のアーム片95が下向きとなるようにヨーク94が第1軸92(X軸)を中心に角度θだけ右下向きに傾き、該ヨーク94に支持軸96を介して取付けられた回動ブロック98もX−Y平面に対して所定角度θだけ右下向きに傾く。反対に、図7に示すように、操作レバー72を後退方向に回動させると、操作ワイヤ89bを下向きに引き、前記と同様にして回動ブロック98は第1軸92(X軸)回りに回動して図15のように左に所定角度θだけ傾く。
ところで、直進時においては、ハンドル81を中立状態(前記デテント円板107における係止溝108にボール106が係止した状態)に保持する。この状態では、前記回動ブロック98における自在継手部99の位置は、第1軸92の延長上にあるから、自在継手部99とアーム100を介して連結された操作部101は第2軸93上で位置保持され、旋回用の第2油圧ポンプ36は中立位置となり、旋回作用が起こらない。
直進時においては、操作レバー72のみを図5及び図6の前後方向に回動させても、前記操作ワイヤ89a,89bのいずれかの引張り関係は同じであり、且つ自在継手部99の位置は不動点となり、操作部101は操作レバー72の回動に拘らず上下移動せず、旋回用の第2油圧ポンプ36は中立位置となり、旋回作用が起こらないで、前進・後退時の両方において走行速度を低速から高速に無段階に変速できる。
前述したように、操作レバー72を前進側に倒せば、図14に示すように、回動ブロック98における自在継手部99の回動平面120は、X−Y平面に対して所定角度θだけ右下向きに傾く。この状態で、操向用ハンドル81を右に回動すると、ハウジング84内の連動機構と連動アーム103を介してアーム100が右方向に回動して前記回動平面に沿って自在継手部99が移動することになり、アーム100に取付く操作部101は第2軸93に沿って下向き(Z1方向)に移動し、旋回用の第2油圧ポンプ36を正回転側で作動させる。即ち、旋回外側(実施例では左側)の走行クローラの速度が旋回内側(実施例では右側)の走行クローラの速度より大きい状態にする。前記操作部104の移動量は操向用ハンドル81の回動角度に比例する。その移動量に比例して右旋回半径を小さくするようにして前進旋回できる。前記と逆に操向用ハンドル81を左方向(左旋回操作方向)に回動すると、その回動角度に比例してハウジング84内の連動機構と連動アーム103を介してアーム100が左方向に回動して前記回動平面に沿って自在継手部99が移動することになり、アーム100に取付く操作部101は第2軸93に沿って上向き(Z2方向)に移動し、旋回用の第2油圧ポンプ36を逆回転側で作動させ、旋回外側(実施例では右側)の走行クローラの速度が旋回内側(実施例では左側)の走行クローラの速度より大きい状態とし、操向用ハンドル81の回動角度に比例して小さくなる旋回半径で前進し且つ左旋回できることになる。
同様に、後退操作時においては、図15に示すように、回動ブロック98における自在継手部99の回動平面120′は、X−Y平面に対して所定角度θだけ左下向きに傾く。この状態で、操向用ハンドル81を右に回動すると、ハウジング84内の連動機構と連動アーム103を介してアーム100が右方向に回動して前記回動平面に沿って自在継手部99が移動することになり、アーム100に取付く操作部101は第2軸93に沿って上向き(Z2方向)に移動し、旋回用の第2油圧ポンプ36を逆回転側で作動させる。従って、即ち、旋回外側(実施例では左側)の走行クローラの速度が旋回内側(実施例では右側)の走行クローラの速度より大きい状態にする。このときも、前記操作部101の移動量は操向用ハンドル81の回動角度に比例する。その移動量に比例して右旋回半径を小さくするようにして後退旋回できる。
他方、操向用ハンドル81を左方向(左旋回操作方向)に回動すると、その回動角度に比例してハウジング84内の連動機構と連動アーム103を介してアーム100が左方向に回動して前記回動平面に沿って自在継手部99が移動することになり、アーム100に取付く操作部101は第2軸93に沿って下向き(Z1方向)に移動し、旋回用の第2油圧ポンプ36を正回転側で作動させ、旋回外側(実施例では左側)の走行クローラの速度が旋回内側(実施例では右側)の走行クローラの速度より大きい状態とし、操向用ハンドル81の回動角度に比例して小さくなる旋回半径で後退し且つ左旋回できることになる。
以上から理解できるように、操作レバー72の傾き方向(従って、操作レバー72による走行機体の停止、前進、後退の操作)に応じて、前記回動ブロック98を傾き方向を設定させることができ、また、前進時と後退時とでは、回動ブロック98の傾き方向、ひいては自在継手部99の回動平面120(120′)が前進操作時と後退操作時とでは、互いに逆方向に傾くため、操向用ハンドル81の旋回操作方向が同じであっても、操作部101の移動方向が互いに逆になり、旋回内側の走行クローラの速度を旋回外側の走行クローラの速度より小さくして、オペレータの操作用ハンドル81の回動操作に合致した旋回ができるのである。
前記の実施例において、第2軸93に軸線に対する操作部101の操作ワイヤ102端部の離れ距離H1を極力短くし、且つ、操作ワイヤ102端部から、そのアウタ管102aの取付け位置迄の前記第2軸93に沿う方向の長さL1をできるだけ長く設定することにより、図13の状態で操向用ハンドル81を回動させるにつれて操作部101が左右回動したときも、操作ワイヤ102が必要以上に引張られないようにすることが好ましい。また、前記第2軸93を、連動アーム103が被嵌する部分と、操作部101が取付く部分とに分断し、操作部101の回動及び上下移動と一体的に作動するように、操作部101が取付く第2軸部分を構成しても良い。
なお、図16は、横軸に前記操向用ハンドル81の回動角度βを採り(最大回動角度に対するパーセントで示す)、縦軸に左右の走行クローラに対する第2油圧モータ37からの旋回出力速度(m/sec.)を採った出力線図を示す。操向用ハンドル81の回動角度0%の位置では、左右の走行クローラの走行速度は同じである。
図16の実線及び一点鎖線は、緩旋回〜急旋回までを任意の速さで且つ旋回半径を任意に無段階調節する場合の第2油圧モータ37からの旋回駆動出力速度線図であって、例えば、左右両走行クローラ2a,2bを1.0 (m/sec.)にて前進走行させている状態から右旋回する場合、ハンドル81の単位回動角度当たり左走行クローラ2aがx(m/sec.)の速度だけ増速する一方(実線α1参照)、右走行クローラ2bは前記と同じ値x(m/sec.)だけ減速することになる(実線β1参照)。即ち、ハンドル81を一定角度Δ回動させると、左走行クローラ2aは、1.0 +x1・Δ(m/sec.)で走行し、右走行クローラ2bは1.0 −x1・Δ(m/sec.)にて走行して右旋回することになる。従って、旋回半径は、ハンドル81の回動角度により任意に無段階に調節できる。図16の一点鎖線は、左右両走行クローラ2a,2bの初期走行速度(前進時)が2.0 (m/sec.)から開始した右旋回の態様を示す。
左右両走行クローラ2a,2bが前進(後退)状態であって、速度差が小さいときには緩旋回となり、一方の走行クローラと他方の走行クローラとの速度差が大きいとき(各走行クローラの進行方向が互いに逆になるとき)は、いわゆる急旋回(スピンターン)を実行できることになる。このような旋回態様は後退時においても実行できることになる。
ところで、前記図16における実線α1と実線β1との比較、一点鎖線α2と一点鎖線β1との比較で理解できるように、操向ハンドル81の回動角度を大きくする(旋回半径を小さくする)と、左右走行クローラ2a,2bの速度差が大きくなるように、第2油圧ポンプ36から旋回駆動力が出力される。そうすると、直進走行速度に比べ、旋回外側の走行クローラ2a(または2b)の旋回走行速度が大きくなりすぎるから、走行機体に搭乗して操縦するオペレータ(操縦者)には、大きな遠心力が作用して機外に放り出されるという危険性がある。そこで、操向用ハンドル81の回動角度に比例して左右両走行クローラの走行速度を減速させるため第1油圧ポンプ33の作動を加減する減速連動機構を、前記操向用ハンドル81と切換手段との連動機構に接続するのである。その1実施例は、図10、図11、図14及び図15に示すように、前記ハウジング84の外側において、操向用ハンドル81の回動角度に比例して減速回動する伝動軸90の一端に円板状またはアーム状等の減速連動体121を固定し、前記第1油圧ポンプ33の斜板を操作する操作部(図示せず)に他端を接続するワイヤ122の一端を前記減速連動体121に接続し、操向用ハンドル81の中立位置でワイヤ122の引張が最小または0であり、操向用ハンドル81を左右いずれの方向に回動しても、その回動角度に比例してワイヤ122の引張り量が増大し、前記第1油圧ポンプ33からの圧油吐出量が比例的に減少するように構成するのである。
このように構成すれば、操作レバー72にて所定の走行速度に設定した状態から、操向用ハンドル81の回動角度を増大させるのに比例して、左右両側の走行クローラ2a,2bに伝える第1油圧ポンプ33からの速度が次第に減少し、旋回外側の走行クローラ2a(または2b)の旋回走行速度が例えば直進走行速度等に維持される。即ち、直進走行速度に比べ、旋回外側の走行クローラ2a(または2b)の旋回走行速度が大きくなりすぎるのを防止でき、旋回操作中のオペレータが振り回される遠心力の作用が少なくなって、不快感も減少する。
また、前記減速連動体121を連動機構における伝動軸90に取付けるだけで実現でき、至極簡単な構成で、コストも低減できる。
上記の記載及び図2、図11、図14から明らかなように、エンジン17からの動力を、走行機体1に設けた左右の走行部としての走行クローラ2a,2bに伝達可能に構成する一方、前進・後退・中立の各位置に操作可能な直進操作体としての操作レバー72と、左右に旋回操作可能な旋回操作体としての操向用ハンドル81と、エンジン17からの動力を、左右の走行クローラ2a,2bへ伝達するミッションケース30とを備え、ミッションケース30に、左右の走行クローラ2a,2bを同一方向に駆動する走行用駆動手段としての油圧駆動手段32と、左右の走行クローラ2a,2bを互いに逆方向に駆動する旋回用駆動手段としての油圧駆動手段35と、左右の走行クローラ2a,2bに走行用油圧駆動手段32及び旋回用油圧駆動手段35からの出力を伝える差動機構としての左右の遊星歯車機構31とを配置してなる走行車両において、操向用ハンドル81の旋回操作により、操向用ハンドル81の旋回操作角度に比例して、旋回用油圧駆動手段35を増速方向に制御可能に構成する一方、操向用ハンドル81の旋回操作角度に比例して、走行用油圧駆動手段32を減速方向に制御可能に構成したものであるから、操向用ハンドル81の旋回操作によって旋回用油圧駆動手段35を増速方向に制御するだけで、その旋回操作によって走行用油圧駆動手段32が減速方向に制御されることにより、左右の走行クローラ2a,2bの旋回半径を小さくして、走行機体1を旋回(方向転換)させたときに、オペレータ等に作用する遠心力が大きくなりすぎるのを防止できる。したがって、操向用ハンドル81の旋回操作に伴うオペレータの走行速度の減速及び増速操作等を不要にでき、且つエンジン17の回転数を略一定に維持した状態で、走行機体1を方向転換できる。
上記の記載及び図1、図2から明らかなように、エンジン17からの略一定回転数の動力によって駆動する一定回転作業装置としての脱穀装置3を備える走行車両であって、走行用油圧駆動手段32及び旋回用油圧駆動手段35にエンジン17からの略一定回転数の動力を伝達可能に構成したものであるから、エンジン17を略最高出力の回転数に維持した状態で、走行機体1を移動できる。したがって、直進移動での収穫作業等の作業性能、及び圃場の枕地等の走行抵抗が大きい場所での走行機体1の方向転換性能を向上できる。
上記の記載及び図11、図14から明らかなように、操向用ハンドル81の左旋回操作及び右旋回操作に応じて、走行用油圧駆動手段32の出力を減少させる減速連動体121を備えたものであるから、走行用油圧駆動手段32の制御部に対して操作レバー72と操向用ハンドル81とを並列状に連結できる。操作レバー72の操作によって設定された走行機体1の走行速度を基準に、操向用ハンドル81の旋回操作によって走行機体1の走行速度を減速できる。操向用ハンドル81を旋回操作位置から直進位置に戻すことによって、操作レバー72の操作によって設定された基準速度に、走行機体1の走行速度を戻すことができる。したがって、直進移動と方向転換とを交互に繰り返し行う往復作業(略矩形状の圃場の対向する枕地間を往復する収穫作業等)における走行機体1の操縦操作性を向上できる。
上記の記載及び図8、図13から明らかなように、操向用ハンドル81のハウジング84内に、直交する方向に延長する第1軸92と第2軸93とを備え、第1軸92周りに回動可能にヨーク94が装着され、ヨーク94には、第1軸92と直交する軸線周りに回動可能に回動ブロック98を装着し、操向用ハンドル81の中立位置において回動ブロック98における第1軸92の延長線上に設けた自在継手部99に連結するアーム100と、第1軸92と直交する第2軸93に沿って移動自在且つ回動自在な旋回用駆動手段操作部101とを連結し、ヨーク94を、操作レバー72の前進と後退との切り換え操作に応じて第1軸92周りに正逆回動するように構成し、操向用ハンドル81の左旋回操作及び右旋回操作に応じてアーム100を中立位置を挟んで第2軸93周りに回動可能に構成したものであるから、ハウジング84を利用して、操向用ハンドル81と、第1軸92と、第2軸93とを、簡単な組立作業で、高精度に組付けることができる。例えば走行用油圧駆動手段32の制御部及び旋回用油圧駆動手段35の制御部と、操向用ハンドル81とを連結したときの組立て誤差を簡単な調整作業で修正でき、操向用ハンドル81及び第1軸92及び第2軸93等の組立て作業性を向上できる。
上記の記載及び図8、図13から明らかなように、旋回操作体としての操向用ハンドル81のハウジング84内に、直交する方向に延長する第1軸92と第2軸93とを備え、第1軸92周りに回動可能にヨーク94が装着され、ヨーク94には、第1軸92と直交する軸線周りに回動可能に回動ブロック98を装着し、操向用ハンドル81の中立位置において回動ブロック98における第1軸92の延長線上に設けた自在継手部99に連結するアーム100と、第1軸92と直交する第2軸93に沿って移動自在且つ回動自在な旋回用駆動手段操作部101とを連結し、ヨーク94を、直進操作体としての操作レバー72の前進と後退との切り換え操作に応じて第1軸92周りに正逆回動するように構成し、操向用ハンドル81の左旋回操作及び右旋回操作に応じてアーム100を中立位置を挟んで第2軸93周りに回動可能に構成したものであるから、ハウジング84を利用して、操向用ハンドル81と、第1軸92と、第2軸93とを、簡単な組立作業で、高精度に組付けることができる。例えば走行用油圧駆動手段32の制御部及び旋回用油圧駆動手段35の制御部と、操向用ハンドル81とを連結したときの組立て誤差を簡単な調整作業で修正でき、操向用ハンドル81及び第1軸92及び第2軸93等の組立て作業性を向上できる。
本発明は、農作業機ばかりでなく、ブルドーザ等の土木用の走行車両にも適用できることはいうまでもない。