JP3986040B2 - 磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超臨界状態の二酸化炭素を用いたクロマトグラフィーを利用した磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、磁気ヘッドとの接触摩耗による損傷を防ぐために、磁性層上にカーボンや二酸化珪素などの保護膜を設け、さらにこの保護膜上に潤滑剤層を設けてある。潤滑層は保護膜上に安定して存在することが必要であり、そのため潤滑剤には、保護膜との吸着力が大きいことが求められる。そこで、一般に、保護膜との吸着力を大きくするための官能基としてヒドロキシル基や芳香環などの極性基が導入されたパーフルオロポリエーテルが潤滑剤として使用されている。
【0003】
しかしながら市販されているパーフルオロポリエーテルは、分子量が数百から数万であり非常にブロードな分子量分布を持っている。また官能基の導入は完全に行われておらず、市販の官能基導入パーフルオロポリエーテルには、官能基が導入されていない官能基未導入体が混在している。官能基未導入体の混在率は,通常10%前後である。さらに分子量分布や官能基未導入体など混在量は、製品ロット間でばらついている。
【0004】
分子量が数百である低分子量体や官能基未導入体は、保護膜との吸着力が小さいために、揮発やマイグレーションにより、膜厚の経時変化や磁気ヘッドの汚染の原因となる。そのため、このような低分子量体や官能基未導入体が混入した状態の潤滑剤を用いると、磁気記録媒体や磁気ヘッドの損傷、ヘッドクラッシュ、データエラーなどのトラブルを発生しやすい。また製品ロット間の、分子量分布や官能基未導入体混在量のばらつきは、磁気録媒体の摺動特性や耐久性などの品質を不安定にする。
【0005】
従って、このような実情を考慮すると、市販の官能基導入パーフルオロポリエーテルを磁気記録媒体用潤滑剤として用いて、良好な摺動特性や耐久性などの品質を有する磁気録媒体を得る為には、使用前に、さらに精製する必要がある。
【0006】
市販の官能基導入パーフルオロポリエーテルを精製する方法として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法が提案されており(特開平5−20673号公報)、一般に広く用いられている。GPC法は、移動層として有機溶媒を用い、かつ固定層としてポリマーゲルを用いて、主にサイズ排除作用により、分子量の異なる分子を分離し、不要成分を除去する方法である。GPC法では、所定の溶出時間の溶出物のみを分取することにより、低分子量体が除去されたパーフルオロポリエーテルを得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、GPC法では、移動層として、パーフルオロポリエーテルを溶解する有機溶媒を多量に必要とする。しかし、パーフルオロポリエーテルは、主にフロンなどのフッ素系溶媒にのみ可溶であり、これらフッ素系溶媒は作業者や環境に対して悪影響を及ぼす危険性が大きい。
また、GPC法は一回の溶出に数十分を要するため、目的量の精製されたパーフルオロポリエーテルを得るために多大な時間がかかる。
さらにGPC法は、主にサイズ排除効果により分離するため、官能基の有無による分離は原理的に困難である。即ち、分子量分布の均一性を向上させることは可能であるが、官能基未導入体の混在率を低下させることはできない。
【0008】
また、GPC法以外に超臨界流体分別法を用いて、市販の官能基導入パーフルオロポリエーテルを分画することも提案されている(特開平9−120524号公報)。超臨界流体分別法は、フッ素系溶媒を使用する必要がない点で、GPC法より優れている。しかし、特開平9−120524号公報には、超臨界流体としてどのような物質をどのような条件で用いるか等の詳細は全く記載されておらず、単に、得られた画分の分子量分布が狭いことのみが記載されている。このことから、特開平9−120524号公報の記載が明細書として十分な開示をしているか疑問であるが、いずれにしても、特開平9−120524号公報に記載の超臨界流体分別法は、分子量分布の均一性を向上させる方法であって、官能基未導入体の混在率を低下させるものではない。
【0009】
このように、これまでは、市販の官能基導入パーフルオロポリエーテルにおける官能基未導入体の混在率を低下させることが可能な方法は提案されておらず、現状では磁気記録媒体の潤滑剤には官能基未導入体が混入した状態のパーフルオロポリエーテルが用いられている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、多量の有機溶媒を使用することなく、従来技術と比較して短時間で、低分子量体や官能基未導入体などの混入物を除去できる精製したフッ素系潤滑剤の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、能基導入フッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに供し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率が95%以上である画分を選択することを特徴とする磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法
本発明の磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法ては、官能基導入フッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに供する。
超臨界流体は、わずかな温度・圧力の変化により、極希薄な低密度状態から液体に近い高密度な状態まで連続的に大きく変化する。超臨界流体の溶質溶解能力はこの密度に依存する。従って温度・圧力を制御することにより、溶質溶解能力を自由に変化させることができる。
二酸化炭素は、臨界温度 31.3℃、臨界圧力 75.3kgf/cm2であり、他の物質と比較して温和な条件で超臨界流体状態とすることができる。
【0013】
このような特徴を有する超臨界流体状態の二酸化炭素の溶質溶解能力を、温度・圧力を変化させることにより制御し、それに対する分子量・官能基などのわずかな構造的相違による溶解度差を利用として、フッ素系潤滑剤を分子量分別および/または官能基分別できる。また超臨界流体は、液体と比較して、拡散係数は2〜3桁ほど大きく、粘度は2桁ほど小さい。従って有機溶媒などを用いる分別方法と比較して、短い所要時間で分別が可能である。
【0014】
官能基導入フッ素系潤滑剤としては、例えば、官能基導入パーフルオロポリエーテル系潤滑剤を挙げることができる。官能基導入フッ素系潤滑剤としては、官能基導入パーフルオロポリエーテル系潤滑剤以外に、例えば、官能基導入フルオロポリエーテル系、官能基導入パーフルオロアルキル系、官能基導入フルオロアルキル系、官能基導入パーフルオロアルキル化シリコン系、官能基導入フルオロアルキル化シリコン系等も挙げることができる。官能基導入フッ素系潤滑剤が有する官能基としては、例えば、がピペロニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基及びアミノ基等を挙げることができる。
【0015】
パーフルオロポリエーテル系潤滑剤としては、例えば、-(C(R)F-CF2-O)p- (但し、RはF、CF3、CH3などの基)、特にHOOC-CF2(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-COOH、F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2COOHといったようなカルボキシル基変性パーフルオロポリエーテル、HOCH2-CF2(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-CF2OH、HO-(C2H4-O)m-CH2-(O-C2F4)p(OCF2)q-OCH2-(OCH2CH2)n-OH、F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2CH2OHといったようなアルコール変性パーフルオロポリエーテル、R-O-CH2-CF2-(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-CH2-O-R(但し、Rはピペロニル基を表す)等を挙げることができる。これらの官能基を導入したパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は市販されており、例えば、フォンブリン(Fomblin)Z-Dol、フォンブリンAM2001、フォンブリンZ-DIAC(アウジモント社)、デムナム(Demnum)(ダイキン株式会社)、クライトックス(Krytox)(デュポン社)の商標名で市販されている。
【0016】
移動相として用いる超臨界状態の二酸化炭素は、例えば、圧力が80〜350kgf/cm2の範囲であり、温度が35〜300℃の範囲であることができる。但し、超臨界状態の二酸化炭素の圧力及び温度は、カラム内のフッ素系潤滑剤の分離状態を考慮して、上記範囲から適宜決定することができる。また、固定相として用いるシリカゲルは、公知または市販のシリカゲルから適宜選択する事ができる。
本発明における超臨界流体状態の二酸化炭素を用いたフッ素系潤滑剤の分子量分別および/または官能基分別は、シリカゲルカラム以外に、主に超臨界流体送液装置、温度調整装置、背圧調整装置を用いることにより、簡便に行うことができる。
【0017】
クロマトグラフィーは、所定量のシリカゲルを充填したカラムに官能基導入フッ素系潤滑剤を単独または溶剤に溶解して流し、さらに溶離媒体として超臨界状態の二酸化炭素を流し、溶出した画分中の官能基導入フッ素系潤滑剤をモニタリングすることで行う。モニタリングは例えば、紫外線の吸収により行うことができる。モニタリングしながら、複数の画分を得、得られた画分から官能基導入率の高い画分を選択する。官能基導入率の高い画分の選択は、予め官能基導入率の高い画分のリテンションタイムを求めておき、このリテンションタイムを目安に行うことができる。
【0018】
温度・圧力は、フッ素系潤滑剤の種類、精製目的に応じて設定する。必要に応じて温度グラジエント、圧力グラジエントなどの勾配をかけてもよい。
また、超臨界流体状態の二酸化炭素に対するフッ素系潤滑剤の溶解性を調整するために、超臨界流体状態の二酸化炭素に、少量の有機溶媒を添加してもよい。添加する有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、フェノールなどの芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、代替フロンなどのフッ素系溶媒や、これらの有機溶媒の混合溶媒、水とアルコール系溶媒などの混合溶媒、などが挙げられる。
【0019】
尚、画分の選択は、画分に含まれる官能基導入フッ素系潤滑剤における官能基導入率が95%以上、好ましくは99%以上となるように行うことが好ましい。
得られた官能基導入率の高い画分(官能基導入フッ素系潤滑剤含有)から、官能基導入フッ素系潤滑剤を取り出すことで、官能基導入率が高く、磁気記録媒体用として適したフッ素系潤滑剤が得られる。
本発明の製造方法における精製は、フッ素系潤滑剤の種類、精製目的に応じて、異なる条件のもと2回以上繰返してもよい。また他の精製方法により予め精製したフッ素系潤滑剤を本発明の製造方法の原料として用いることもできる。
【0020】
磁気記録媒体用の官能基導入フッ素系潤滑剤
本発明は、磁気記録媒体用の官能基導入フッ素系潤滑剤であって、平均官能基導入率が95%以上である潤滑剤を包含する。従来、磁気記録媒体の潤滑剤として用いられてきた官能基導入フッ素系潤滑剤は、平均官能基導入率が90%前後の物である。それに対して本発明の官能基導入フッ素系潤滑剤であって、平均官能基導入率が95%以上である。より好ましくは、本発明の官能基導入フッ素系潤滑剤は、平均官能基導入率が99%以上である。
【0021】
官能基導入フッ素系潤滑剤としては、例えば、官能基導入パーフルオロポリエーテル系潤滑剤を挙げることができる。官能基導入フッ素系潤滑剤としては、官能基導入パーフルオロポリエーテル系潤滑剤以外に、例えば、官能基導入フルオロポリエーテル系、官能基導入パーフルオロアルキル系、官能基導入フルオロアルキル系、官能基導入パーフルオロアルキル化シリコン系、官能基導入フルオロアルキル化シリコン系等も挙げることができる。また、官能基導入フッ素系潤滑剤が有する官能基としては、例えば、ピペロニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基及びアミノ基等を挙げることができる。
【0022】
パーフルオロポリエーテル系潤滑剤としては、より具体的には、-(C(R)F-CF2-O)p- (但し、RはF、CF3、CH3などの基)、特にHOOC-CF2(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-COOH、F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2COOHといったようなカルボキシル基変性パーフルオロポリエーテル、HOCH2-CF2(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-CF2OH、HO-(C2H4-O)m-CH2-(O-C2F4)p(OCF2)q-OCH2-(OCH2CH2)n-OH、F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2CH2OHといったようなアルコール変性パーフルオロポリエーテル、R-O-CH2-CF2-(O-C2F4)p(OCF2)q-OCF2-CH2-O-R(但し、Rはピペロニル基を表す)等を挙げることができる。
【0023】
さらに本発明の磁気記録媒体用官能基導入フッ素系潤滑剤は、分子量 500以下の低分子量体および/または不純物を含んでいないものである。ここで「含んでいない」とは、含有量が、1%以下であることを意味する。
【0024】
磁気記録媒体
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に、少なくとも磁性層及び潤滑剤層を有する磁気記録媒体であり、より好ましくは磁性層上に保護層を有し、その上に潤滑剤層を有するものである。
非磁性基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET) 等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のオレフィン系の樹脂、セルロース系の樹脂及び塩化ビニル系の樹脂等の高分子材料、ガラス、セラミック、ガラスセラミック及びカーボン等の無機系材料、並びにアルミニウム合金などの金属材料を用いることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0025】
磁性層は、1層又は2層以上であることができ、2層以上の場合、各磁性層間に非磁性中間層を設けることができる。また、磁性層を構成する材料には特に制限はないが、例えばFe、Co、Ni等の金属や、Co-Ni合金、Co-Ni-Cr合金、Co-Ni-Cr-Ta合金、Co-Pt合金、Co-Pt-Cr合金、Co-Ni-Pt-Cr合金、Co-Ni-Pt合金、Fe-Co合金、Fe-Ni合金、Fe-Co-Ni合金、Fe-Co-B合金、Co-Ni-Fe-B合金、Co-Cr合金、Co-Pt-Cr-Ta合金、あるいはこれらの合金にAl等の金属や酸素、窒素、酸化物、窒化物等を含有させたもの等を挙げることができる。
これらの磁性層は、蒸着法、直流スパッタ法、交流スパッタ法、高周波スパッタ法、直流マグネトロンスパッタ法、高周波マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などの各種の方法により形成することができる。
また、上記磁性層は、前記非磁性基板上に、直接に、または例えばCr等の下地層を介して設けることができる。
【0026】
保護膜層としては、例えば、非晶質カーボン膜、ダイヤモンド状カーボン膜及び水素化カーボン膜等のカーボン膜や二酸化珪素膜及びジルコニア膜等の酸化物膜を挙げることができる。但し、保護膜層としては、これらに限定されるものではない。尚、カーボン膜は、酸化物膜のように表面の官能基の数が少ないために潤滑剤の吸着性が酸化物膜に較べて悪く、本発明は、カーボン膜を保護膜層として有する磁気記録媒体において特に有効である。
また、磁気記録媒体の表面が凹凸状であることが、ヘッドの潤滑剤層への吸着を防止するという観点から好ましい。保護膜層の凹凸状表面は、基板や基板上の下地層の表面を凹凸状とする(テクスチャー化する)ことや、保護膜層に微粒子を含有させることによっても形成できる。
磁気記録媒体の表面の凹凸状は、最大高さRmax が、例えば、1〜30nmの範囲、好ましくは3〜10nmの範囲であることが適当である。磁気記録媒体の表面の凹凸状は、磁気記録媒体がハードディスクである場合に特に有用である。
【0027】
潤滑剤としては、前記本発明の製造方法で製造された潤滑剤または本発明の潤滑剤を用いる。潤滑剤層の膜厚は、例えば、0.5〜2.0nmの範囲とすることが適当である。
【0028】
本発明の製造方法により得られた潤滑剤及び本発明のフッ素系潤滑剤は、低分子量体や官能基未導入体が除去されているため、磁気記録媒体の保護膜との吸着力が高い。従って、得られたフッ素系潤滑剤を保護膜上に塗布することにより、安定性の優れた潤滑剤層が形成され、良好な摺動特性、耐久性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0029】
【実施例】
<実施例>
アウジモント社製ピペロニル導入パーフルオロポリエーテル系潤滑剤 FOMBLIN AM2001を、超臨界流体送液装置、温度調整装置、背圧調整装置、紫外可視分光検出器から構成される超臨界流体応用装置に高圧力用シリカゲルカラムを取り付け、移動相二酸化炭素によるクロマトグラフィー分別を行った。
クロマト条件は、二酸化炭素流量 5ml/min、背圧 210〜220kgf/cm2、カラム温度80℃とした。溶出物の検出は、波長は 200nmで行った。
その結果、溶出時間 5〜420secの間に5つのピークが観測され、それぞれのピークに対応した溶出物を分取し5つのフラクションを得た。得られたフラクションは溶出時間の早い順番にF1、F2、F3、F4、F5とした。
【0030】
F2について1H-NMRスペクトル測定を行い、ピークのケミカルシフト値および積分強度比から、ピペロニル基の導入率を評価した。その結果、F2はピペロニル基導入率が99.6%であった。
さらにF2についてGPC法により分子量および分子量分布を評価した。その結果、F2は平均分子量 2030 分子量分散 1.39であり、さらに分子量500以下の不純物は検出されなかった。
これらの結果からF2はピペロニル基導入がほぼ完全になされ、分子量500以下の低分子量体が混入していない精製されたAM2001のフラクションであることがわかった。
また同フラクション 20gを得るための所用時間は40分であった。
【0031】
下地層、磁性層、および最表面に非晶質カーボンからなる保護膜を形成したガラス基板上に、上記により得た精製されたAM2001のフラクションであるF2の潤滑剤層(膜厚約1nm)をディッピング法により形成し、磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体について、Al2O3−TiC製磁気ヘッドを用いて、CSSテストを行った。
テスト条件は、ヘッド荷重 3gf、温度 25℃、湿度40%、測定半径 20mm、ディスク回転数 3600rpmとした。測定結果は、CSS 初回および30000回までの最大摩擦係数はそれぞれ0.3、0.6であった。
【0032】
<比較例>
FOMBLIN AM2001を、GPC装置により、溶離液にフッ素系溶媒である旭ガラス株式会社製アサヒクリンAK225を用いて分子量分別を行った。クロマト条件は、溶離液流量 5mL/min、カラム温度室温で行った。
その結果、分別前のFOMBLIN AM2001は、溶出時間440〜1730secの間に、分子量300〜30000のブロードな1ピークが観測された。このブロードな1ピークのうち溶出時間 880〜1000secの溶出物を分別し、1つのフラクションを得た。このフラクションについて、1H-NMRスペクトル測定を用いて実施例と同様の測定条件、評価方法によりピペロニル基の導入率を評価した。その評価から同フラクションはピペロニル基導入率が90.8%であった。
【0033】
さらに同フラクションについてGPC法により実施例と同様の測定条件、評価方法により分子量および分子量分布を評価した。その結果、同フラクションは平均分子量 2120 分子量分散 1.41であり、分子量500以下の不純物は検出されなかった。
また同フラクション 20gを得るための所用時間は190分であった。
【0034】
実施例に用いたものと同様の、下地層、磁性層、および最表面に非晶質カーボンからなる保護膜を形成したガラス基板に、上記により得られたAM2001のフラクションの潤滑剤層(膜厚約1nm)をディッピング法により形成し、磁気録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体について、実施例と同様な装置、条件により、CSSテストを行った。測定結果は、CSS 初回および30000回の最大摩擦係数はそれぞれ0.4、2.5であった。
【0035】
表1に実施例で得られたフラクションF2、比較例で得られたフラクションおよび精製前のAM2001の、ピペロニル基導入率、平均分子量、分子量分散を示す。
【0036】
【表1】
Figure 0003986040
【0037】
精製前のAM2001のピペロニル基導入率は、90.6%であり約1割りほどの官能基未導入体が混入していた。比較例において従来技術であるGPC法により得られたフラクションのピペロニル基導入率は、90.8%であり、官能基未導入体は除去されていなかった。これに対して実施例において、超臨界流体状態の二酸化炭素を用いたクロマトグラフィー分別により得られたフラクションF2のピペロニル基導入率は、99.6%であり、官能基未導入体がほとんど除去されていた。
またフラクションF2の平均分子量、分子量分散は、それぞれ2030、1.39であり、従来技術のGPC法により得られたフラクションのそれらとほぼ同様であった。分子量 500以下の低分子量体は除去されていた。
上記のように、本発明における製造方法により、官能基導入率が高く、なおかつ低分子量体の混入物が除去され分子量・分子量分布が制御された、高度に精製されたパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を得ることができた。
【0038】
表2.に実施例および比較例における分取について、それぞれ20gを得るための所用時間、溶離液使用量を示す。
【0039】
【表2】
Figure 0003986040
【0040】
実施例におけるフラクションF2、比較例におけるフラクションを20g得るための所用時間は、それぞれ40分、190分であった。また実施例においてフッ素系溶媒は用いる必要がなかったことに対して、比較例において溶離液として用いたフッ素系溶媒の使用量は約1000mlであった。
上記のように、本発明における製造方法は、従来技術のGPC法と比較して所要時間が約1/5と短く、またフッ素系溶媒を用いることがなかった。
【0041】
表3に実施例において得れらたフラクション F2、比較例において得られたフラクションを用いて潤滑層を形成した磁気記録媒体のCSSテストの結果を示す。
【0042】
【表3】
Figure 0003986040
【0043】
実施例において得られたフラクション F2を用いた媒体は、CSS初回の最大摩擦係数は0.3であり、30000回後のそれは0.6と、約2倍程度の増加であった。
これに対して比較例において得られたフラクションを用いた媒体のCSS初回の最大摩擦係数は0.4であり、30000回後のそれは2.5と、6倍以上増加した。
従って本発明の製造方法により得られる精製されたフッ素系潤滑剤を用いた磁気記録媒体は、従来技術法により精製されたものを用いた媒体より、高い摺動特性、耐久性をもっていた。
【0044】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、官能基導入率が高く、分子量、分子量分布が制御され、高度に精製されたフッ素系潤滑剤を提供することができる。また本発明の製造方法は、その製造(精製)のための所用時間が従来技術法に比べて短時間であり、なおかつフッ素系溶媒を使用しないため、生産性が高く、作業者や環境に対する安全性が高い。
本発明の製造方法により得られた高度に精製されたフッ素潤滑剤を用いたることにより、摺動特性及び耐久性が向上した磁気記録媒体を提供することができる。

Claims (4)

  1. 能基導入フッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに供し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率が95%以上である画分を選択することを特徴とする磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法。
  2. 圧力が80〜350kgf/cm2の範囲であり、温度が35〜300℃である超臨界状態の二酸化炭素を用いる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 官能基導入フッ素系潤滑剤がパーフルオロポリエーテル系潤滑剤である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 官能基がピペロニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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