JP3986030B2 - 船外機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料が予圧ポンプおよび高圧ポンプで昇圧されてインジェクタからシリンダ内に噴射されている直接筒内噴射式エンジンを備えている船外機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の船外機のエンジンにおいては、ガソリンなどの燃料は吸気管に供給され、この吸気管で空気と混合されてから、シリンダ内に供給されている。したがって、エンジン始動時に、燃料が噴射されてからシリンダ内に達するまでに時間がかかっている。そして、その間、スターターモーターで、クランク軸を回転駆動する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジン始動に要する時間はできるだけ短いことが望まれており、燃料が噴射されてからシリンダ内に達するまでの時間をできるだけ短縮する必要がある。そのため、スターターモーターの駆動力が大きくなり、スターターモーターの重量が大きくなり、重量増加やコスト増加の要因となっている。
【0004】
また、クランク軸でエアーポンプを駆動して、このエアーポンプでインジェクタに燃料を供給していることがある。しかしながら、クランク軸が回転を開始してから所定回転数になるまでは、エアーポンプの圧力は上昇しない。したがって、インジェクタへの燃料供給をできるだけ早くするためには、クランク軸の回転を急加速する必要があり、スターターモーターの駆動力を大きくする必要がある。その結果、重量増加やコスト増加の要因となる。
【0005】
さらに、予圧ポンプおよび高圧ポンプなどの配置に考慮が払われておらず、燃料にベーパーが比較的多量に発生することがある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、小さな駆動力のスターターモーターでも、できるだけ迅速に始動することができる直接筒内噴射式エンジンを備えた船外機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の船外機(1)は、船外機外に設置されている燃料タンク(41)と、船外機内に設けられているベーパーセパレータータンク(45)と、燃料タンクの燃料をベーパーセパレータータンクに供給する低圧ポンプ(44)と、ベーパーセパレータータンクの燃料を昇圧して高圧ポンプに送るとともに、船外機内に設けられている予圧ポンプ(46)と、予圧ポンプからの燃料をさらに昇圧してインジェクタ(18)に供給するとともに、船外機内に設けられている高圧ポンプ(47)と、このインジェクタから燃料がシリンダ(6)内に噴射されている直接筒内噴射式エンジン(2)と、高圧ポンプをバイパスするとともに、逆止弁(59)が配置されているバイパス回路(58)とを備えている。そして、高圧ポンプはクランク軸(3)により駆動され、かつ、予圧ポンプはバッテリー(76)により駆動されており、エンジンの始動初期には、予圧ポンプの圧力により、燃料がバイパス回路を経由してインジェクタからシリンダ内に噴射されている。
【0008】
また、インジェクタからの燃料噴射が、エンジンの回転数が比較的低い時には予圧ポンプの圧力により、一方、エンジンの回転数が比較的高い時には高圧ポンプの圧力により行われている。
【0009】
そして、燃料噴射時間を制御する制御装置(61)が設けられ、この制御装置は、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップと燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップとを具備し、切り換え用エンジン回転数を基準にして前記マップを切り換えられている場合がある。
さらに、燃料が予圧ポンプの圧力により噴射されている場合には、高圧ポンプの圧力で噴射されている場合よりも、噴射時間が長くなっていることがある。
【0010】
そして、燃料予圧ポンプがベーパーセパレータータンク内に設けられているとともに、高圧ポンプの吐出側が圧力調整弁(54)を介してベーパーセパレータータンクに接続されている場合がある。
【0011】
また、高圧ポンプとインジェクタとの間に、燃料圧力調整機構を有するコモンレール形式の燃料供給レールが設けられている場合がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明における直接筒内噴射式エンジンを備えた船外機の実施の形態を図1ないし図6を用いて説明する。図1は本発明における船外機の模式図で、(a)が燃料系の回路図、(b)がエンジンの断面図、(c)が船外機の側面図およびバッテリーの図である。図2はエンジンの要部平断面図である。図3はエンジンの燃料噴射時間のマップで、(a)が高圧ポンプ用のマップ、(b)が予圧ポンプ用のマップである。図4は始動時のフローチャートである。図5は船外機の燃料系配置を説明するための概略の平面図である。図6は燃料予圧ポンプおよび高圧ポンプの吐出圧と、エンジン回転数との関係を表しているグラフである。図7は別の実施の形態における船外機の模式図である。
【0013】
船外機1の上部のカウリング1a内には、直接筒内噴射式2サイクル多気筒エンジン2が搭載されており、このエンジン2のクランク軸3は、縦置き状態である。また、船外機1の下部には、プロペラ4が回転可能に設けられている。このプロペラ4は、ドライブシャフトやプロペラシャフトなどを介して、エンジン2のクランク軸3に連結されており、クランク軸3により、プロペラ4を回転駆動できる。このエンジン2はV型6気筒で、各シリンダ6は略水平に配置されている。そして、このシリンダ6は上下に3段設けられているとともに、各段には左右に一個ずつ、平面図視でVバンクをなすように配置され、総計6個設けられている。各シリンダ6には、ピストン8が往復動自在に配置され、コンロッド9を介してクランク軸3に連結されている。
【0014】
このシリンダ6が形成されているシリンダボディ11は、燃焼室12側がシリンダヘッド13で覆われ、反対側のクランク室14側は、クランクケース16で覆われている。そして、シリンダヘッド13には、ソレノイド開閉式のインジェクタ18および点火プラグ19が設けられている。また、各シリンダ6には、3個の掃気口21および1個の排気口22が設けられている。
【0015】
各掃気口21はクランク室14に連通している。また、左側のシリンダ6の各排気口22は左集合排気通路26に合流し、一方、右側のシリンダ6の各排気口22は右集合排気通路27に合流している。シリンダ6内の燃焼ガスは、排気口22から、左集合排気通路26および右集合排気通路27を通って、マフラーなどを介してプロペラ4のボス等から船外機1外に排出されている。
【0016】
また、クランクケース16には吸気管31が接続されている。この吸気管31の吸気口側にはスロットルバルブ32が設けられ、吸気量を調整している。そして、オイルポンプ33が吸気管31に設けられており、スロットルバルブ32を通過した空気に潤滑オイルを噴射して供給している。さらに、吸気管31には、クランクケース16との接続部分付近に、逆流防止用のリード弁36が設けられている。
【0017】
次に、エンジン2への燃料系について説明する。船外機1が搭載されているボート等の船体側には主燃料タンク41が設けられており、この主燃料タンク41の燃料は、手動式の第1の低圧ポンプ42によりフィルター43を経て、第2の低圧ポンプ44に送られている。フィルター43およびそれよりも下流の部材は船外機1のカウリング1a内に配置されている。そして、第2の低圧ポンプ44は、エンジン2のクランク室14のパルス圧により駆動されるダイヤフラム式ポンプであり、第1の低圧ポンプ42から送られた燃料を、気液分離装置であるベーパーセパレータータンク45に送る。このベーパーセパレータータンク45内には、電動モーターにより駆動される燃料予圧ポンプ46が配設され、この燃料予圧ポンプ46はベーパーセパレータータンク45内の燃料を、約 2.5〜3.0kg/cm2 に昇圧して高圧ポンプ47に送る。また、燃料予圧ポンプ46にはベーパーセパレータータンク45への戻り配管48が接続されており、この戻り配管48には予圧圧力調整弁49が配設されている。
【0018】
この高圧ポンプ47の吐出側は逆止弁51を介して燃料供給レール52に接続されているとともに、高圧圧力調整弁54および燃料冷却器56を具備するリターン回路を介してベーパーセパレータータンク45に接続されており、燃料を約50〜70kg/cm2に昇圧して燃料供給レール52に供給している。また、高圧ポンプ47および逆止弁51をバイパスするバイパス回路58が設けられており、このバイパス回路58には逆止弁59が配設されている。燃料供給レール52は上下方向に延在し、各気筒のインジェクタ18が接続されている。また、燃料予圧ポンプ46は電動モーターで駆動されているが、高圧ポンプ47はクランク軸3と伝導ベルトで連動している。
【0019】
また、制御装置61には、船外機1やエンジン2の状態を検出している各種センサーが接続されている。これらセンサーとしては、たとえば、クランク軸3の回転角度を検出するクランク角センサー63、クランク室14内の圧力を検出するクランク室内圧センサー64、シリンダボディ11の温度を検出するエンジン温度センサー66、スロットルバルブ32の開度を検出するスロットル開度センサー67、空燃比を検出する空燃比検出装置68、燃料供給レール52の燃料の圧力を検出する圧力センサー69や、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサー71などがある。そして、制御装置61は、これら各種センサーからの信号を受けて、点火プラグ19、インジェクタ18やオイルポンプ33などに制御信号を出力している。
【0020】
さらに、船外機1が搭載されているボート等には、バッテリー76が設けられており、このバッテリー76に、メインスイッチ77を介して、燃料予圧ポンプ46の電動モーター、制御装置61およびスタートスイッチ78が接続されている。このスタートスイッチ78には、スターターモーター79が接続されている。また、バッテリー76はオイルポンプ33や点火プラグ19などにも電気を供給している。そして、エンジン2稼働時には、クランク軸3に連動して回転駆動されている図示しない発電機により、バッテリー76は充電されている。
【0021】
この様に構成されている船外機1のエンジン2が稼働している際には、空気が吸気管31の吸込口から吸い込まれ、スロットルバルブ32で空気量を調整されるとともに、オイルポンプ33により潤滑オイルが混入されている。この潤滑オイルが混入された空気は、リード弁36を介してクランク室14内に導かれている。そして、掃気口21が開口すると、クランク室14内に導かれた空気はシリンダ6内に流入し、ついで、インジェクタ18が燃料をクランク室14内に噴射するとともに、ピストン8がクランク室14内の空気を圧縮している。そして、ピストン8が上死点付近に移動すると、点火プラグ19が燃料を点火燃焼させている。その後、排気口22が開口した際に、この燃焼ガスは排気口22から排気されている。
【0022】
ところで、エンジン2の始動時には、メインスイッチ77をONとするとともに、スタートスイッチ78をONとし、バッテリー76から制御装置61、スターターモーター79および燃料予圧ポンプ46などに電気を供給している。このスターターモーター79への電気の供給で、スターターモーター79が稼働し、クランク軸3が回転を開始する。すなわち、いわゆるクランキングを開始する。このクランク軸3の回転により、ピストン8が往復動して、吸気管31の吸込口から空気を吸い込んで、前述の様に、シリンダ6内に空気を流入させている。また、クランク軸3の回転により、高圧ポンプ47も回転するが、クランク軸3の回転が低速であるので、高圧ポンプ47からの圧力は殆ど昇圧しない。
【0023】
一方、燃料予圧ポンプ46への電気の供給で、燃料予圧ポンプ46が速やかに稼働し、ベーパーセパレータータンク45内の燃料を吸い込んで、約 2.5〜3.0kg/cm2 に昇圧して高圧ポンプ47およびバイパス回路58に送り込んでいる。そして、前述の様に高圧ポンプ47は、クランキングの初期には回転が遅く、燃料の吸い込み量は少ないので、燃料予圧ポンプ46からの燃料はバイパス回路58を通ってインジェクタ18に達している。インジェクタ18に達した燃料は、制御装置61の制御に基づいて、シリンダ6内へ適宜噴射され、前述のエンジン2の稼働時と同様に、点火プラグ19で点火燃焼されている。そして、クランク軸3が順調に回転し出して、クランク軸3の回転速度が上昇すると、スタートスイッチ78をOFFとしてスターターモーター79によるクランキングすなわち始動を終了させる。以降、エンジン2は通常の稼働状態となる。
【0024】
この様に、エンジン始動時すなわちクランキング時には、クランク軸3の回転は段々と増速しており、図6に図示するように、クランク軸3により駆動されている高圧ポンプ47の吐出圧は、段々と上昇する。そして、クランク軸3の回転数すなわちエンジン回転数が所定値よりも高くなると、高圧ポンプ47の吐出圧は、燃料予圧ポンプ46の吐出圧すなわち約 2.5〜3.0kg/cm2 を越している。したがって、インジェクタ18には、クランキングの途中までは燃料予圧ポンプ46の圧力が加わり、そして、クランキングの途中から、すなわちエンジン回転数が所定値よりも高くなると、高圧ポンプ47の圧力が加わっている。
【0025】
この様に、インジェクタ18に加わる燃料の圧力が変動するため、単位時間当たりの燃料噴射量が変動する。したがって、燃料噴射量を略一定とするためには、インジェクタ18における燃料の圧力が増大すると、燃料噴射時間を短縮し、一方、燃料の圧力が低下すると、燃料噴射時間を延長する必要がある。そこで、制御装置61のメモリーなどの記憶装置には、燃料予圧ポンプ46用の燃料噴射時間マップおよび高圧ポンプ47用の燃料噴射時間マップを予め設定しておくとともに、この両マップの切り換え時期(すなわち切り換え用エンジン回転数)が予め設定されている。この燃料噴射時間マップは、図3(a)および図3(b)に図示するように、スロットルバルブ32のスロットル開度およびエンジン回転数を変数としており、図3(a)に図示する高圧ポンプ用燃料噴射時間マップでは、エンジン回転数およびスロットル開度が小さな燃料噴射時間A1nは約2.00msecで、エンジン回転数またはスロットル開度が増大する程、燃料噴射時間Aは増大し、エンジン回転数およびスロットル開度が大きな燃料噴射時間Am1は約6.00msecである。一方、図3(b)に図示する燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップの値は、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップの値よりも大きく、燃料噴射時間は長くなっている。そして、燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップでは、エンジン回転数およびスロットル開度が小さな燃料噴射時間B1nは約7.00msecで、エンジン回転数またはスロットル開度が増大する程、燃料噴射時間Bは増大し、エンジン回転数およびスロットル開度が大きな燃料噴射時間Bm1は約 10.00msecである。また、切り換え用エンジン回転数は約200rpmに設定されており、この切り換え用エンジン回転数よりもエンジン回転数が小さい時には、燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップを用い、一方、切り換え用エンジン回転数よりもエンジン回転数が大きい時には、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップを用いている。
【0026】
次に、図4を用いて制御装置61の制御フローを説明する。ステップ1において、制御装置61には、前述の様に、エンジン回転数検出装置であるクランク角センサー63からの信号が入力されており、スタートスイッチ78をONとして、スターターモーター79によりクランク軸3が回転し始めると、エンジン2すなわちクランク軸3が回転し始めたことを検出する。言い換えると、クランキング開始を検出する。そして、ステップ2に行く。ステップ2において、制御装置61は、クランク角センサー63の検出値から算出したエンジン回転数と、スロットル開度センサー67から入力されたスロットル開度に基づいて、燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップから燃料噴射時間Bを読み取る。ついで、ステップ3において、燃料噴射時間Bの間、インジェクタ18を駆動させ、ステップ4に行く。
【0027】
ステップ4において、制御装置61はエンジン回転数が切り換え用エンジン回転数(200rpm)になったか、否かを判断する。切り換え用エンジン回転数に達していない時には、ステップ2に戻り、燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップに基づいて、インジェクタ18を駆動する。一方、ステップ4において、エンジン回転数が切り換え用エンジン回転数に達すると、ステップ5に行き、制御装置61は高圧ポンプ用燃料噴射時間マップから燃料噴射時間Aを読み取る。そして、ステップ3に戻り、燃料噴射時間Aの間、インジェクタ18を駆動する。
【0028】
また、別の実施の形態として、図7に図示するように、燃料供給レール52を燃料圧力調整機構を有するコモンレール形式として、図1に図示する高圧圧力調整弁54および燃料冷却器56を具備するリターン回路を廃止することも可能である。このコモンレール形式の燃料供給レール52の燃料圧力調整機構は、従来よく知られているように、燃料供給レール52の燃料圧力が設定値以上になると、高圧ポンプ47の回転数を落としたりして高圧ポンプ47からの燃料供給を制限している。
【0029】
前述の様に、実施の形態においては、燃料が燃料予圧ポンプ46で昇圧されて高圧ポンプ47に送られ、さらに、この高圧ポンプ47で昇圧されてインジェクタ18に供給され、このインジェクタ18からシリンダ6内に燃料が供給されている。したがって、燃料が吸気管に供給されている従来のものに比して、燃料噴射からシリンダ6に燃料が到達するまでの時間が格段に短縮しており、クランキング時間を短縮することができるとともに、制御遅れを防止することができる。
【0030】
しかも、この実施の形態においては、高圧ポンプ47をバイパスするバイパス回路58が設けられており、クランキングすなわち始動の初期には、バッテリー76で駆動される燃料予圧ポンプ46から燃料が直接インジェクタ18に供給されている。したがって、エンジン2の回転が低速で、高圧ポンプ47では十分な圧力を発生することができない場合でも、電動式の燃料予圧ポンプ46により所定圧力の燃料を速やかにインジェクタ18に供給することができる。その結果、エンジン2を迅速に始動させることができる。そして、その後、エンジン2の回転が増大して、高圧ポンプ47が十分な圧力を発生することができる様になると、高圧ポンプ47から高圧の燃料をインジェクタ18に供給している。以上の様に、クランキングの初期に、電動式の燃料予圧ポンプ46によりインジェクタ18に燃料を供給することができる。したがって、スターターモーター79の出力性能を上昇させて、高圧ポンプ47を迅速に稼働させる必要はない。その結果、重量の増大や、コストの増大を防止することができる。
【0031】
また、燃料予圧ポンプ46からの燃料の圧力と、エンジン回転数大の時の高圧ポンプ47からの燃料の圧力とは異なっている。したがって、燃料予圧ポンプ46からの圧力がインジェクタ18に加わっている時と、高圧ポンプ47からの圧力が加わっている時とでは、インジェクタ18からの単位時間当たりの燃料噴射量が異なる。そのため、エンジン2の回転数が切り換え用エンジン回転数未満の時すなわち燃料予圧ポンプ46から圧力が加わっている時には、切り換え用エンジン回転数以上の時すなわち高圧ポンプ47からの圧力が加わっている時よりも、燃料噴射時間を長くして、燃料噴射量の変動を緩和している。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)実施の形態においては、エンジン2は6気筒であるが、気筒数などは適宜変更可能である。たとえば、2気筒や単気筒にしたりすることも可能である。また、4サイクルエンジンとすることも可能である。
【0033】
(2)実施の形態においては、マップ制御しているが、マップ制御ではなく他の制御方式で制御する事も可能である。また、エンジン温度、外気温度や大気圧などにより、燃料噴射時間を補正することも可能である。
(3)切り換え用エンジン回転数や燃料噴射時間A,Bなどの具体的数値は適宜変更可能である。
【0034】
(4)実施の形態においては、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップと燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップとの切り換えは、切り換え用エンジン回転数を基準にして切り換えているが、高圧ポンプの吐出圧が、切り換え用圧力値以上になった時に、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップに切り換えることも可能である。この切り換え用圧力値は制御装置の記憶部に予め設定しておく。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、インジェクタから噴射された燃料は直接シリンダ内に噴射されており、燃料が吸気管に供給されている従来のものに比して、燃料噴射からシリンダに燃料が到達するまでの時間が格段に短縮しており、クランキング時間を短縮することができるとともに、制御遅れを防止することができる。しかも、エンジンの始動初期には、電動式の予圧ポンプの圧力により、燃料がインジェクタからシリンダ内に噴射されている。したがって、エンジンを速やかに始動させることができる。そのため、従来の様にスターターモーターの出力性能を上昇させて、高圧ポンプを迅速に稼働させる必要はない。その結果、スターターモーターなどの重量の増大や、コストの増大を防止することができる。さらに、燃料タンクは船外機外に設けられているにもかかわらず、予圧ポンプは船外機内に設けられており、予圧ポンプと高圧ポンプとの間の配管距離を短くできる。したがって、予圧ポンプから高圧ポンプに容易に燃料を供給することができ、エンジンの迅速な始動が可能となる。また、船外機においてはエンジンは狭いカウリング内に設けられており、エンジンの周囲の温度が比較的高くなり、燃料配管でのベーパーの発生の恐れが高いが、前述の様に、予圧ポンプと高圧ポンプとの間の配管距離が短くすることができるので、燃料の配管でのベーパーの発生を減少させることが可能となる。
【0036】
また、インジェクタからの燃料噴射が、エンジンの回転数が比較的低い時には予圧ポンプの圧力により、一方、エンジンの回転数が比較的高い時には高圧ポンプの圧力により行われており、迅速なエンジンの始動が可能となる。
【0037】
さらに、燃料が予圧ポンプの圧力により噴射されている場合には、高圧ポンプの圧力で噴射されている場合よりも、噴射時間が長くなっていることがある。この様に構成すると、予圧ポンプの比較的低い圧力により噴射されている時の燃料噴射量と、高圧ポンプの比較的高い圧力で噴射されている時の燃料噴射量とを、できるだけ同じ値となるようにすることができる。その結果、エンジンをできるだけ最適な燃料噴射量で始動させることができる。
【0038】
そして、燃料予圧ポンプがベーパーセパレータータンク内に設けられているとともに、高圧ポンプの吐出側が圧力調整弁を介してベーパーセパレータータンクに接続されている場合には、高圧ポンプからのリターン回路が船外機内のベーパーセパレータータンクに接続されており、船外機外の燃料タンクに接続する場合と比して、配管距離を短くすることができ、ベーパーの発生を減少させることができる。
【0039】
また、高圧ポンプとインジェクタとの間に、燃料圧力調整機構を有するコモンレール形式の燃料供給レールが設けられている場合には、高圧ポンプからタンクへのリターン回路を省略することができ、配管コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明における船外機の模式図で、(a)が燃料系の回路図、(b)がエンジンの断面図、(c)が船外機の側面図およびバッテリーの図である。
【図2】 図2はエンジンの要部平断面図である。
【図3】 図3はエンジンの燃料噴射時間のマップで、(a)が高圧ポンプ用のマップ、(b)が予圧ポンプ用のマップである。
【図4】 図4は始動時のフローチャートである。
【図5】 図5は船外機の燃料系配置を説明するための概略の平面図である。
【図6】 図6は燃料予圧ポンプおよび高圧ポンプの吐出圧と、エンジン回転数との関係を表しているグラフである。
【図7】 図7は別の実施の形態における船外機の模式図である。
【符号の説明】
1 船外機
2 エンジン
3 クランク軸
6 シリンダ
18 インジェクタ
41 燃料タンク
44 低圧ポンプ
45 ベーパーセパレータータンク
46 燃料予圧ポンプ
47 高圧ポンプ
54 高圧圧力調整弁
76 バッテリー
Claims (6)
- 船外機外に設置されている燃料タンクと、
船外機内に設けられているベーパーセパレータータンクと、
燃料タンクの燃料をベーパーセパレータータンクに供給する低圧ポンプと、
ベーパーセパレータータンクの燃料を昇圧して高圧ポンプに送るとともに、船外機内に設けられている予圧ポンプと、
予圧ポンプからの燃料をさらに昇圧してインジェクタに供給するとともに、船外機内に設けられている高圧ポンプと、
このインジェクタから燃料がシリンダ内に噴射されている直接筒内噴射式エンジンと、
前記高圧ポンプをバイパスするとともに、逆止弁が配置されているバイパス回路とを備え、
前記高圧ポンプはクランク軸により駆動され、
かつ、前記予圧ポンプはバッテリーにより駆動され、
そして、エンジンの始動初期には、予圧ポンプの圧力により、燃料が前記バイパス回路を経由してインジェクタからシリンダ内に噴射されていることを特徴とする船外機。 - インジェクタからの燃料噴射が、エンジンの回転数が比較的低い時には予圧ポンプの圧力により、一方、エンジンの回転数が比較的高い時には高圧ポンプの圧力により行われていることを特徴とする請求項1記載の船外機。
- 燃料噴射時間を制御する制御装置が設けられ、
この制御装置は、高圧ポンプ用燃料噴射時間マップと燃料予圧ポンプ用燃料噴射時間マップとを具備し、切り換え用エンジン回転数を基準にして前記マップを切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の船外機。 - 燃料が予圧ポンプの圧力により噴射されている場合には、高圧ポンプの圧力で噴射されている場合よりも、噴射時間が長いことを特徴とする請求項1,2または3に記載の船外機。
- 前記燃料予圧ポンプがベーパーセパレータータンク内に設けられているとともに、
前記高圧ポンプの吐出側が圧力調整弁を介してベーパーセパレータータンクに接続されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項記載の船外機。 - 前記高圧ポンプとインジェクタとの間に、燃料圧力調整機構を有するコモンレール形式の燃料供給レールが設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項記載の船外機。
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