JP3985994B2 - 成形用材料の製造方法、成形体の製造方法、焼結体の製造方法、成形用材料および成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスや粉末冶金に利用できる、成形用材料の製造方法、成形体の製造方法、焼結体の製造方法、成形用材料および成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
寒天を利用した水系射出成型技術は、セラミック粉末の成形や粉末冶金分野において知られている。特に、セラミック粉末の射出成形法において、水と寒天とから構成されるバインダーを用いてセラミック粉末を成形することが知られている。例えば、特許第2604592号公報はこの分野の基本特許と見なされているが、金属粉末やセラミック粉末と、寒天質ゲル生成物質と、水とを混合し、寒天質ゲル生成物質のゲル化点を超える温度に混合物を昇温し、次いでこの混合物をゲル化点以下の低温で成形することによって、セラミック粉末や金属粉末からなる成形体を得ている。例えば、アルミナ粉末と脱イオン水との混合物に寒天水溶液を添加して混合し、この混合物を77℃で加熱混合し、射出成形し、得られた成形体を1600℃で焼結させている。また、特許第3105225号公報にも、これと類似した製法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前述した特許に基づき、複雑形状の焼結製品を射出成形法によって成形する研究を進めていた。その過程で、条件によっては、焼結体の強度にバラツキが発生したり、あるいは焼結体の強度に低下が見られた。このように強度の低下が見られた焼結体を分析し、検討してみたところ、相対密度の低下は非常に小さいことが分かった。また、もともと寒天と水とをバインダーとして使用する本技術分野においては、通常の樹脂バインダーやワックスバインダーの場合とは異なり、寒天の添加割合は非常に少ない。その上、成形体の温度を上昇させる過程において、寒天は水と共に容易に排出されるので、特別の脱脂工程も不要と考えられている。つまり、寒天と水とをバインダーとして使用する本技術において、混合、成形、脱脂条件によって焼結体に顕著な強度低下が生ずることは考えにくく、原因が不明であった。セラミックスは脆性材料であり、破壊に至る危険性回避の観点から強度を高くすることが望まれる。
【0004】
本発明の課題は、ゲル生成物質をバインダーとして利用し、成形用粉末の焼結体を製造するのに際して、焼結体の強度を向上させ、強度のバラツキを抑制できるようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも成形用粉末、ゲル生成物質の粉末および溶剤を、ゲル生成物質粉末の溶解温度以下の温度で混合するのに際して、成形用粉末、ゲル生成物質粉末およびゲル生成物質粉末に吸収された溶剤を含む凝集物を解砕する処理を混合物に対して施し、次いで混合物を前記溶解温度以上の温度に加熱することによってゾルを生成させ、次いでゾルをゲル生成物質のゲル化点以下の温度に冷却することによって成形用材料を生成させることを特徴とする、成形用材料の製造方法に係るものである。
【0006】
また、本発明の成形方法においては、成形用材料からなる成形体を得る。具体的には、成形用材料を所定の型内に充填あるいは供給し、型内で成形することによって成形体を得る。あるいは、ゾルを型内で冷却することによって成形体を得る。また、本発明は、この成形体を焼結させることによって、焼結体を得る方法に係るものである。
【0007】
本発明者は、前述したように、焼結体の密度は比較的良好であるにも関わらず焼結体の強度低下が生ずる原因について、焼結体の製造プロセスの全体にわたって詳細に検討した結果、次の知見を得た。即ち、成形用粉末、ゲル生成物質、例えば寒天の粉末および溶剤を室温において混合し、得られた混合物を、ゲル生成物質の溶解温度以上の温度に加熱し、流動化させ、混練する。この際、混合段階のスラリーを良く観察してみると、スラリーの表面に不均質な浮遊物が浮遊しているのが観察された。また、スラリーを混合槽から排出した後、混合槽の内壁面を観察してみると、凝集物が付着しているのが観察された。混合槽の内壁面に付着した凝集物を再度スラリー中に掻き落とし、再び混合を試みたが、凝集物は再び浮遊し、混合槽の内壁面に付着することが分かった。
【0008】
この浮遊物や内壁面の付着物を微視的に詳細に観察してみると、多数の成形用粉末が寒天によって強固に結合され、凝集していることが判明した。この理由は明確ではないが、次のように推定できる。即ち、寒天粉末は水分含有量が非常に少なく、粉末の内部に水分を迅速に吸収し、水を包含して膨潤する性質を有する。寒天粉末をスラリー中に投入すると、寒天粉末の近傍の水分を急激に吸収する。本技術分野においては、スラリー中の水分量は一般的に少なく、成形用粉末の量は多い。このため、寒天粉末の近傍の水分が急激に吸収されると、その周囲では局所的に水分が失われ、成形用粉末が凝集する。この凝集物の内部では、吸水したばかりの寒天が結合剤として作用するため、凝集が強固であるものと考えられる。
【0009】
本発明者は、こうした知見に立ち、成形用粉末、ゲル生成物質粉末および溶剤を溶解温度以下の温度で混合するのに際して、成形用粉末、ゲル生成物質粉末およびゲル生成物質粉末に吸収された溶剤を含む凝集物を解砕する処理を施し、次いで混合物をゲル生成物質の溶解温度以上の温度で加熱および混練するというプロセスを採用した。この結果、焼結体の強度が向上した。また、焼結体の強度のバラツキが少なくなることが分かった。
【0010】
更に、本発明者は、ゲル生成物質と成形用粉末とを混合するのに際して、溶媒、例えば水の量を増大させ、大量の水を使用することによって、ゲル生成物質、例えば寒天を充分に溶解させることも検討した。つまり、大量の水を使用することによって、寒天が急激に水を吸収したときにも、充分に多量の水を供給することで凝集物の生成を抑制しようとも試みた。しかし、寒天が急激に吸水し、寒天粒子の回りに微細な成形用粉末が強固に付着することから、大量の水を使用することが必要である。このため、混合物中の水分含有量が非常に大きくなる。しかし、混合物中の水は、後の乾燥工程で除去する必要があるため、乾燥工程において、時間およびエネルギーの多大な浪費を招く。本発明によれば、こうした乾燥工程におけるコスト上昇を招くことなく、高強度の焼結体を製造することができるので、コスト低減に有益である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明において対象とする成形用粉末は、加熱によって焼結し、焼結体を生成するような成形用粉末であれば特に制限はない。また、成形用粉末は、溶媒への溶解や溶媒との反応を生じないような粉末であることが好ましい。本成形用粉末は、無機物粉末であることが好ましく、焼結を目的とする無機物粉末であることが特に好ましい。無機物粉末は、典型的には、セラミック粉末、金属粉末、セラミックス−金属複合材料の粉末、およびこれらの混合粉末である。セラミックスとしては、例えばアルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物等の酸化物系セラミックス;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等の複合酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素,サイアロン等の窒化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物系セラミックスを例示できる。また、金属としては、鉄、ステンレス、カルボニル鉄等の鉄系金属、チタン、銅、アルミニウム等の非鉄金属または非鉄金属の合金を例示できる。また、無機物粉末としては、グラファイト、ガラス、カーボンも例示できる。更に、無機物粉末以外の成形用粉末としては、樹脂粉末を例示できる。
【0012】
また、成形用粉末を溶媒およびゲル生成物質とを混合する際には、成形用粉末の粒径が小さいほど、つまり粒子が細かいほど、ゲル生成物質の周囲から溶媒分が奪われたときに、成形用粉末がゲル生成物質粒子の周辺に強固に凝集しやすい。従って、本発明は、成形用粉末の平均粒径が小さい場合に、特に有益である。この観点からは、好適な実施形態においては、成形用粉末の平均粒径が10μm以下であり、特に好適な実施形態においては、1μm以下である。
【0013】
成形用粉末の平均粒径の下限は本発明の観点からは特にない。一般的、経済的な観点からは0.1μm以上とすることができるが、これには限定されない。
【0014】
ゲル生成物質は、溶解温度以上に加熱することで流動性のゾルを生成し、次いでこのゾルをゲル化点以下の温度に冷却することでゲルを生成する物質である。ゲル生成物質は、特許第2604592号公報に記載されているように、0〜22℃の間のゲル強度が少なくとも500g/cm2 であるようなものが好ましい。好適な実施形態においては、ゲル生成物質が、可逆的に、溶解温度以上でゾルを生成し、ゲル化点以下の温度でゲルを生成する物質である。
【0015】
特に好ましくは、ゲル生成物質が、天然または合成の多糖類である。多糖類としてはゼチラン、デンプン、カラギーナン、寒天、ペクチン、グルカン等を例示できる。
【0016】
特に好適な実施形態においては、ガラクトースを基本骨格とする多糖類を使用する。好ましくは多糖類が寒天質ゲル生成物質である。寒天質ゲル生成物質とは、寒天質のすべてのゲル生成物質を含み、高純度のアガロースだけでなく、アガロペクチン成分を多く含む純度の低い寒天も含んでおり、また改質寒天も含む。純粋な寒天はアガロースと呼ばれており、1、3位で結合したβ−D−ガラクトピラノースと、1、4位で結合した3,6−アンヒドロ−L−ガラクトピラノースを繰り返し単位とする中性多糖類である。また、寒天質ゲル生成物質には、アガロースの誘導体も含まれていて良い。アガロースが部分的に硫酸エステル、メトキシル、ピルビン酸などを含んでいる場合にはアガロペクチンと呼ばれている。一般的な寒天は、アガロースとアガロペクチンとの混合物である。
【0017】
寒天質ゲル生成物質中に、アガロースとアガロース誘導体(典型的にはアガロペクチン)とが含有されている場合には、アガロースとアガロース誘導体との比率は、目的とする用途によって異なる。アガロース誘導体中には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、硫酸分などの灰分が含まれている。このため、ファインセラミックスなどのように、不純物を嫌う用途においては、アガロース誘導体の量が少ないことか好ましい。具体的には、灰分2重量%以下が好ましく、灰分1重量%以下の高純度のアガロースが特に好ましい。
【0018】
溶媒は、ゲル生成物質粉末を溶解し、加熱時にゾルを生成し、温度降下時にゲルを生成するようなゲル生成物質用の溶媒である。この溶媒としては、水が特に好ましいが、アルコール類等の親水性有機化合物溶媒であってもよく、また水と親水性有機化合物溶媒との混合物であってもよい。親水性有機化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、および塩素または臭素原子によって置換されたアルコール類が好ましい。
【0019】
混合物の混合段階において、凝集物の存在の有無は、混合の終了した混合物を、線径390μm、目開き600μm(JIS Z8801)のスクリーンに通し、スクリーン上の残留物の存在によって確認できる。また、混合物中で凝集物の解砕が行われたか否か、解砕の終了した混合物を、線径390μm、目開き600μm(JIS Z8801)のスクリーンに通し、スクリーン上の残留物の量によって確認できる。
【0020】
本発明による解砕後の混合物を上記スクリーンに通した場合の残留物の量は、成形用粉末100重量部当たり、0.4重量部以下であることが好ましく、0.2重量部以下であることが更に好ましく、0.1重量部以下であることが特に好ましい。ただし、この残留物の量を測定するのに際しては、次のようにして試験を行う。即ち、成形用粉末100重量部、溶媒27.4重量部、ゲル生成物質3重量部、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム共重合体40%溶液)1重量部を混合したものとする。この混合の後に、混合物を前記スクリーンに通し、スクリーン上に残留した残留物の重量比率を測定する。
【0021】
ある処理が解砕処理に該当するか否かは、混合時にその処理を施したときの前記凝集物のスクリーン上の残留量と、混合時にその処理を施していない場合の前記凝集物のスクリーン上の残留量との比率によって決定できる。即ち、前記特定処理を施すことによって、前記残留量が少なくとも50%以下まで減少していることが必要であり、好ましくは20%以下にまで減少しており、更に好ましくは15%以下にまで減少しており、特に好ましくは5%以下まで減少している。この要件を満足する限り、解砕処理の具体的手法は限定されない。例えば、混合物中の凝集物をチョッパーブレード等の切断手段によって切断ないし分断する方法の他、凝集物をすりつぶしたり、混合物に流れを与えて凝集物同士を互いに衝突させることで分解させることも考えられる。
【0022】
前記凝集物は比較的強固であり、通常の混合プロセスによって混合物スラリーを流動攪拌するだけでは解砕しにくい。このため、スラリー中の凝集物を切断する切断手段を備えることが好ましい。特に好ましくは、混合槽に、スラリーを循環させ、流動させる流動手段と、流動中のスラリーに含まれる凝集物を切断する切断手段とを設ける。こうした流動手段および切断手段それ自体は特に制限はない。好ましくは、流動手段は、混合槽中のスラリーを攪拌する攪拌手段であり、具体的にはブレード、スターラ等であってよい。特に好ましくはプラネタリーブレードである。また、流動手段は、混合槽中でスラリーを流動させるためのパイプラインであってよい。
【0023】
このように流動してきた運動中の混合物スラリーを、その流路に配置された切断手段の前を通過させ、凝集物を切断する。切断手段は、高速回転する切断ブレードまたは切断歯が好ましく、特にチョッパーブレードが好ましい。こうした攪拌手段および切断手段を備えた混合槽は、例えば高速分散機「T.Kホモディスパー」「T.K ホモジェッター」「T.K パイプラインホモミクサー」「T.K ハイビスミックス」(以上、特殊機化工業株式会社)を例示できる。
【0024】
解砕を効率的に行うという観点からは、切断ブレード、切断歯の回転速度は、500rpm以上であることが好ましく、1000rpm以上であることが更に好ましい。
【0025】
ただし、この回転数が高すぎると、装置が高価となるし、またブレードの磨耗によって金属不純物が製品側に混入するおそれもある。この転換からは、切断ブレード、切断歯の回転速度は、5000rpm以下であることが好ましく、3000rpm以下であることが更に好ましい。
【0026】
混合時の温度は、ゲル生成物質の溶解温度以下である。ゲル生成物質の溶解温度とは、ゲル生成物質を溶媒と混合し、次いで温度を上昇していったときに、ゲル生成物質が溶媒中に溶解してゾル化する温度である。従って、同一のゲル生成物質であっても、溶媒が異なれば溶解温度は変動することがある。本発明においては、特に溶解温度よりも若干は低温側で混合することが好ましく、例えば溶解温度−30℃以下で混合することが好ましく、溶解温度−50℃以下で混合することが更に好ましい。ゲル生成物質が寒天質である場合には、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが更に好ましい。
【0027】
加熱混練時には、混合物を混練と同時に溶解温度以上の温度に加熱して流動性のゾルを得る。加熱温度は、ゲル生成物質の種類によって異なるが、寒天質ゲル生成物質の場合には85〜120℃とすることが好ましい。ただし、100℃以上の温度では、水の沸騰を避けるために加圧することが好ましい。次いで、この加熱混練物を型中で冷却することによって、所望形状の成形体が得られる。あるいは、加熱混練物を冷却することで成形用材料を得、この成形用材料を型中に供給し、成形体を得る。
【0028】
好適な実施形態においては、成形用材料をペレタイゼーションし、同時にベレットの水分量を一定範囲に調節する。この水分量調節後のペレットを射出成形型内に射出し、成形体を得る。しかし、他の成形法、例えば鋳込み成形法、押し出し成形法も利用できる。
【0029】
本発明の混合物においては、成形用粉末100重量部に対して、ゲル生成物質粉末の量を1重量部以上とすることが好ましく、3重量部以上とすることが更に好ましい。これによって、成形体の強度が一層高くなる。また、前述のように高いゲル強度を有するゲル生成物質を使用することによって、成形体の強度を高くすることができる。
【0030】
また、成形用粉末100重量部に対して、ゲル生成物質粉末の量を10重量部以下とすることが好ましく、7重量部以下とすることが更に好ましい。これによって、ゲル生成物質の粉末を混合するのに際して、混合物スラリーから奪われる水の量が減るために、焼結体のマイクロクラックが効果的に抑制される。
【0031】
本発明の混合物においては、成形用粉末100重量部に対して、溶媒の量を40重量部以下とすることが好ましく、30重量部以下とすることが更に好ましい。これによって、乾燥段階におけるコストが低くなる。溶媒の量をこのように減らすことによって、前述した凝集物の生成が著しく顕著となり、従って本発明が特に効果的となる。一方、混合を効果的に短時間で行えるようにし、かつ焼結体の強度を高くするという観点からは、成形用粉末100重量部に対して、溶媒の量を40重量部以上とすることが好ましく、50重量部以上とすることが更に好ましい。
【0032】
【実施例】
アルミナ粉末として、易焼結性の低ソーダアルミナ粉末(住友化学工業株式会社製)「AES−11」純度99.5%、BET比表面積7m2 /g、平均粒子径0.5μm)6000gを用いた。分散剤として、ポリアクリル酸アンモニウム共重合体(東亜合成株式会社製「A−6114)分子量10000MW、pH7〜9、39〜41%溶液)をアルミナ粉末100重量部に対して1重量部添加し、水分量が21.5重量部となるようにイオン交換水を加え、充分に混合した。次いで、混合物を、ナイロンボールを粉砕メディアとしてポットミル中で5時間粉砕した。得られたスラリーを、線径390μm、目開き600μm(JIS Z8801)のスクリーンに通し、次いで混合槽中に入れた。混合槽としては、「T.K ハイビスミックス」(特殊機化工業株式会社)を使用した。この混合槽は、プラネタリーブレード(ひねりブレード)とチョッパーブレードとを備えている。
【0033】
粉末寒天(伊那食品工業社製「XG89」ゲル強度840g/cm2 を、アルミナ粉末100重量部に対して3重量部の割合で秤量した。混合物を攪拌しながら、寒天粉末を混合槽中に段階的に投入した。秤量した寒天粉末を全量投入してから5分経過後に、混合槽の蓋を開け、プラネタリーブレード、チョッパーブレード、内壁面に付着した固形分をスラリー中に掻き落とし、再度5分間混合した。得られたスラリーを線径390μm、目開き600μm(JIS Z8801)のスクリーンに通し、スクリーン上に残った固形分の重量を測定した。固形分は凝集物である。プラネタリーブレードの回転数およびチョッパーの回転数は、表1に示すように変更した。
【0034】
次いで、混合槽を加熱し、寒天粉末を溶解させるのと共に混練を行った。温度は、室温から95℃まで30分間で昇温した。95℃に材料の温度を保持しつつ、回転数30rpmでプラネタリーブレードを回転させ、スラリーを混練した(チョッパーは回転させていない)。昇温時にはプラネタリーブレードの回転を停止した。95℃で混練を30分間行い、得られた混練物を室温まで冷却し、成形用材料を得た。この成形用材料を混合槽から取り出した。
【0035】
成形用材料をペレタイズし、この際調湿操作を行い、ペレットの水分量を17.5%に調整した。調湿後のペレットを型締め30トンの電動射出成形機により成形し、一辺60mm、厚さ6mmの平板を成形した。この成形体を室温にて一昼夜乾燥した後、130℃の乾燥機中で残留水分を除去し、昇温速度300℃/時間、最高温度で1620℃、1620℃での保持時間2時間の条件で焼成した。冷却は、自然放冷で行った。得られた焼結体を加工し、JIS(R1601)に準拠した寸法4mm×3mm×40mmの試験片を切り出し、試験片について密度と4点曲げ強度とを測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
上記の結果から分かるように、実施例1〜6においては、混合後のスラリーをスクリーンに通したときに、スクリーン上の残留物の量が、比較例1〜3に比べて実質的に著しく低減されている。比較例1〜3においては、スラリーの表面付近に凝集物が浮遊し、またブレード表面や混合槽の内壁面に浮遊物が付着していた。この付着物を混合槽中に掻き落とし、再度混合を試みたが、凝集物は強固であり、プラネタリーブレードでは解砕できなかった。実施例1〜6においては、こうした凝集物の解砕が行なわれている。
【0038】
比較例1〜3の焼結体の密度は3.92g/cc程度であって大きく、実施例1〜6の焼結体の密度との差異もほとんどない。この理由は、混合物内における寒天(有機物)の量が少なく、スラリーの大部分をアルミナ粉末が占めているためである。確かにスラリー中に凝集物が生成すれば、成形体中にもアルミナ粉末や寒天の量にバラツキが発生するものと思われる。しかし、焼成の過程で寒天は消失飛散するので、焼結体全体の密度という点ではほとんど影響はない。従って、混合物中に凝集物が生成していても、焼結体の密度の低下はほとんど起こらない。
【0039】
一方、焼結体の強度は、焼結体中の欠陥の大きさ、形状および頻度と密接に関係している。凝集物がスラリー中に存在していると、焼成過程において寒天および水が消失した部分が粗な部分やポアとして残り、欠陥として作用するものと思われる。これらの欠陥は、応力集中源として作用し、強度低下につながったものと考えられる。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ゲル生成物質をバインダーとして利用し、成形用粉末の焼結体を製造するのに際して、焼結体の強度を向上させることができる。
Claims (23)
- 少なくとも成形用粉末、ゲル生成物質の粉末および溶剤を、前記ゲル生成物質粉末の溶解温度以下の温度で混合するのに際して、前記成形用粉末、前記ゲル生成物質粉末および前記ゲル生成物質粉末に吸収された前記溶剤を含む凝集物を解砕する解砕処理を施し、次いで前記混合物を前記溶解温度以上の温度で加熱および混練することによってゾルを生成させ、次いで前記ゾルを前記ゲル成形物質のゲル化点以下の温度に冷却することによって成形用材料を生成させることを特徴とする、成形用材料の製造方法。
- 前記ゲル生成物質が、ガラクトースを基本骨格とする多糖類であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 前記混合物を流動させつつ前記凝集物を切断手段によって切断し、解砕することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
- 前記混合を、前記溶解温度−30℃以下の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 成形用粉末の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 少なくとも成形用粉末、ゲル生成物質の粉末および溶剤を、前記ゲル生成物質粉末の溶解温度以下の温度で混合するのに際して、前記成形用粉末、前記ゲル生成物質粉末および前記ゲル生成物質粉末に吸収された前記溶剤を含む凝集物を解砕する解砕処理を施し、次いで前記混合物を前記溶解温度以上の温度で加熱および混練することによってゾルを生成させ、次いで前記ゾルを前記ゲル生成物質のゲル化点以下の温度に冷却することによって成形用材料を生成させることを特徴とする、成形体の製造方法。
- 前記ゲル生成物質が、ガラクトースを基本骨格とする多糖類であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
- 前記混合物を流動させつつ前記凝集物を切断手段によって切断し、解砕することを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
- 前記混合を、前記溶解温度−30℃以下の温度で行うことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 成形用粉末の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記成形用材料を成形用型を用いて成形することによって前記成形体を得ることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記ゾルを成形用型内で前記ゲル化点以下の温度に冷却することによって、前記成形用材料からなる成形体を得ることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 少なくとも成形用粉末、ゲル生成物質の粉末および溶剤を、前記ゲル生成物質粉末の溶解温度以下の温度で混合するのに際して、前記成形用粉末、前記ゲル生成物質粉末および前記ゲル生成物質粉末に吸収された前記溶剤を含む凝集物を解砕する解砕処理を施し、次いで前記混合物を前記溶解温度以上の温度で加熱および混練することによってゾルを生成させ、次いで前記ゾルを前記ゲル生成物質のゲル化点以下の温度に冷却することによって成形用材料を得、この成形用材料を焼結させることを特徴とする、焼結体の製造方法。
- 前記成形用材料を成形用型を用いて成形することによって成形体を得ることを特徴とする、請求項13記載の方法。
- 前記ゾルを成形用型内で前記ゲル化点以下の温度に冷却することによって、前記成形用材料からなる成形体を得ることを特徴とする、請求項13記載の方法。
- 前記ゲル生成物質が、ガラクトースを基本骨格とする多糖類であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記混合物を流動させつつ前記凝集物を切断手段によって切断し、解砕することを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記混合を、前記溶解温度−30℃以下の温度で行うことを特徴とする、請求項13〜17のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 成形用粉末の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 少なくとも成形用粉末、ゲル生成物質の粉末および溶剤を、前記ゲル生成物質粉末の溶解温度以下の温度で混合するのに際して、前記成形用粉末、前記ゲル生成物質粉末および前記ゲル生成物質粉末に吸収された前記溶剤を含む凝集物を解砕する解砕処理を施し、次いで前記混合物を前記溶解温度以上の温度で加熱および混練することによってゾルを生成させ、次いで前記ゾルを前記ゲル生成物質のゲル化点以下の温度に冷却することによって得られるものであることを特徴とする、成形用材料。
- 前記ゲル生成物質が、ガラクトースを基本骨格とする多糖類であることを特徴とする、請求項20記載の成形用材料。
- 請求項20または21記載の成形用材料からなることを特徴とする、成形体。
- 射出成形体であることを特徴とする、請求項22記載の成形体。
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