JP3985508B2 - 硬化性組成物および樹脂硬化物 - Google Patents

硬化性組成物および樹脂硬化物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性等の光学物性、機械物性及び耐熱性に優れた樹脂硬化物およびそれを与える硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料は、無機材料に比べて軽量で割れにくく、成形性にも優れているため、近年、透明樹脂材料は、ガラスなどの無機透明材料の代替として注目されている。
しかし、例えば、タッチパネルやカラーフィルタなどのディスプレイ関連の用途においては、はんだ耐熱、加熱工程に対する耐熱性などの耐熱性が必要とされ、透明樹脂材料を用いる上での問題となっている。
耐熱性が高い透明材料としては、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等の透明耐熱熱可塑性樹脂や、フッ素化ポリイミド(特開平9−229679号公報参照)、脂環骨格ポリイミド等の透明ポリイミド樹脂が知られている。
【0003】
しかし、透明耐熱熱可塑性樹脂には、成形性が悪く、また、複屈折などの光学歪みが大きいという問題がある。特に、比較的大きなシートを得ようとする場合には、複屈折の増大が顕著となり、高度な光学特性を要求される用途への応用は困難であった。
また、透明ポリイミド樹脂は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を経由する、いわゆる二段合成法によって合成されなければならず、製造タクトタイムを増大させ、また、得られる成形体の形状に制限があるなど成形性に問題がある。
【0004】
一方、透明材料の特性を改良するために、透明樹脂材料に機能性成分を充填する、いわゆるハイブリッド材料が開発されている。例えば、特開平8−297201号公報には、脂肪族(メタ)アクリレートに金属アルコキシド化合物を配合することにより、高屈折率のコーティング材料を得る方法が提案されている。しかし、この公報に記載の樹脂組成物では、注型体を作成することができず、例えば、レンズ、基板などの用途向けの材料として使用することができないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い耐熱性を有すると同時に、機械特性、透明性等の光学特性に優れ、しかも工業的に有利なコストで得られる樹脂組成物を提供することに存する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定の(メタ)アクリレートと金属アルコキシド化合物を配合した硬化性組成物を硬化させて得られた樹脂硬化体は、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は、一般式(1)で表される脂環式構造を有する重合性単量体であるビス(メタ)アクリレート、及び金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属アルコキシド構造を有するもの、を含有する硬化性組成物に存する。
Figure 0003985508
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立して、アルキレン基または単結合を表し、xは1または2を表し、yは0または1を表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」と「アクリレート」の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「メタクリロイル基」と「アクリロイル基」の総称である。
【0008】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、上記したように一般式(1)で表される重合性単量体及び金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属アルコキシド構造を有するものを含有することを特徴とする。
【0011】
上記の一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立して、アルキレン基または単結合である。アルキレン基としては、通常炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。アルキレン基の炭素数が小さいと耐熱性が向上するので好ましい。また、R3および/またはR4が単結合である化合物と、R3およびR4がアルキレン基である化合物とを併用すると、靱性が向上するので好ましい。この場合、R3および/またはR4が単結合である化合物の配合量は、重合性単量体に対して、通常1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%程度である。xは1又は2、好ましくは1を表し、yは0または1、好ましくは0を表す。
【0012】
一般式(1)で示される単量性重合体の具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレートなどのトリシクロデカン化合物;ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレートなどのペンタシクロデカン化合物等が挙げられる。トリシクロデカン化合物、特に、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレートは、優れた透明性及び耐熱性を有するので、特に好適に用いられる。
これらの重合性単量体は単独で用いても、複数を併用してもよい。
【0013】
<金属アルコキシド化合物またはその分解生成物>
本発明で用いる金属アルコキシド化合物としては、アルコキシド中心原子に1個以上のアルコキシド基が結合されている化合物であれば特に制限はなく、好ましくは下記一般式(2)で示される化合物である。
【0014】
【化4】
M(OR11n(R12m-n (2)
【0015】
Mは、Al、Si、Ti、Y、Zr、Nb、Cd、Ba、Ta又はCeを、好ましくはTi、Si、Al又はZrを表す。
11はアルキル基、好ましくは炭素数2〜6のアルキル基、特に好ましくは炭素数が2〜4のアルキル基を表す。R11で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基で置換されていてもよい。
11が炭素数が2〜4のアルキル基であると、得られる樹脂硬化物の線膨張係数が小さくなるので好ましい。R11の炭素数が2〜4の場合、得られる樹脂硬化物の線膨張係数が低下する理由は明かではないが、金属アルコキシド化合物が樹脂の分子鎖と複数の箇所で効果的に結合することによって、樹脂の熱運動を束縛、抑制することにより、樹脂硬化物の線膨張係数を低下させていることが考えられる。金属アルコキシド化合物のアルコキシド部分が炭素数1、すなわちメトキシドの場合、アルコキシド部分での結合が十分に行われず、線膨張係数を低下させる効果が小さいものと推測される。
【0016】
12はアルキル基又はアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシアルキル基を表す。R12で表されるアルキル基およびアルコキシアルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基などが挙げられる。該置換基が(メタ)アクリル基の場合は、耐熱性や機械特性が向上することが多く、特に好ましい。
mはMの配位数で2〜5の整数を表す。
nは1〜mの整数、好ましくはm又は(m−1)の整数を表す。
【0017】
これらの金属アルコキシド化合物のうち、60℃以下の温度で液状の金属アルコキシド化合物は、重合性単量体との相溶性に優れ、容易に均一に混合させることができ、また、その後の重合硬化の過程においても凝集しにくいので好ましく用いられる。
金属アルコキシド化合物としては、具体的には次の化合物が挙げられる。
【0018】
(1)アルミニウムトリアルコキシド化合物
アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等が挙げられる。
【0019】
(2)アルコキシシラン化合物
テトラアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類のアルコキシ基1個をアルキル基またはアルコキシアルキル基で置換したトリアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類のアルコキシ基2個をアルキル基で置換したジアルコキシシラン類などが挙げられる。
テトラアルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
トリアルコキシシラン類としては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシトリエトキシシラン等が挙げられる。
ジアルコキシシラン類としては、具体的には、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
(3)チタニウムテトラアルコキシド化合物
チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド等が挙げられる。
(4)イットリウムトリアルコキシド化合物
イットリウムトリプロポキシド等が挙げられる。
【0021】
(5)ジルコニウムテトラアルコキシド化合物
ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等が挙げられる。
(6)ニオビウムペンタアルコキシド化合物
ニオビウムペンタメトキシド、ニオビウムペンタエトキシド、ニオビウムペンタブトキシド等が挙げられる。
【0022】
(7)カドミウムジアルコキシド化合物
カドミウムジメトキシド、カドミウムジエトキシド等が挙げられる。
(8)バリウムジアルコキシド化合物
バリウムジエトキシド等が挙げられる。
【0023】
(9)タンタリウムペンタアルコキシド化合物
タンタリウムペンタプロポキシド、タンタリウムペンタブトキシド等が挙げられる。
(10)セリウムテトラアルコキシド化合物
セリウムテトラメトキシド、セリウムテトラプロポキシド等が挙げられる。
【0024】
これらの化合物のアルキル基及びアルコキシアルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基等が挙げられる。
特に好ましい金属アルコキシド化合物としては、例えばテトラエトキシシラン、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシトリエトキシシランの単量体及びそのオリゴマー等が挙げられる。これらの化合物は、その中心金属の環境面での有害性が低い点でも好ましい。
【0025】
これらの金属アルコキシド化合物は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの化合物が2個以上重合したオリゴマー状態のものを使用してもよい。
金属アルコキシド化合物の分解生成物とは、上述の金属アルコキシド化合物から、加水分解等の分解反応により生成する化合物であり、具体的には、通常、その中心原子(一般式(2)におけるM)を含むアルコキシド残基及びアルコール(一般式(2)の分解物においては、例えば、R1OH)である。
【0026】
本発明の硬化性組成物における金属アルコキシド化合物またはその分解生成物の含有量は、通常、重合性単量体と金属アルコキシド化合物の合計を100重量部とした場合、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、特に好ましくは20重量部以下、更に好ましくは15重量部以下である。
【0027】
金属アルコキシド化合物の添加量が少なすぎると耐熱性を向上させる効果が不十分である。一方、金属アルコキシド化合物の添加量が多すぎると耐熱性が低下する恐れがあり、また、中心原子が凝集して透明性が損なわれる恐れがあるので好ましくない。
特に、金属アルコキシド化合物として、一般式(2)におけるR11が炭素数2〜4のアルキル基を示す化合物を用いた場合には、金属アルコキシド化合物の添加量が少なすぎると線膨張係数を低下させる効果が不十分であり、一方、多すぎると線膨張係数を上昇する恐れがある。
【0028】
金属アルコキシド化合物を添加すると、樹脂硬化物の耐熱性が向上する理由は明かではないが、金属アルコキシド化合物の一部が、硬化性組成物中に含まれる水分を消費して加水分解を起こし、樹脂硬化物の耐熱性を低下させる原因の一つと考えられている樹脂硬化物中に含まれる水分の量を低下することができるためと推察される。なお、金属アルコキシド化合物が硬化性樹脂組成物中の水分により加水分解すると、アルコール成分が生成するが、アルコール成分は、樹脂硬化物の製造過程で揮散するなどして樹脂硬化物から除去されるものと考えられる。
【0029】
<硬化性組成物に含まれる他の成分>
本発明の硬化性組成物は、上述の一般式(1)で表される重合性単量体、金属アルコキシド化合物の他に、通常ラジカル重合開始剤を含有する。
【0030】
ラジカル重合開始剤としては、加熱または活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させるものであればよく、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線などが挙げられる。活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられ、好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノンが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても、複数を併用してもよい。
【0031】
ラジカル重合開始剤の添加量は、上述の一般式(1)で表される重合性単量体とラジカル重合可能な他の重合性単量体の総和(以下「重合性単量体の総和」という)100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部であり、この添加量が多すぎると、重合が急激に進行し複屈折の増大をもたらすだけでなく色相も悪化する場合があり、また少なすぎると組成物を十分に硬化させることができなくなる場合がある。
【0032】
また、本発明の硬化性組成物は、その効果を損なわない範囲で、ラジカル重合可能な他の重合性単量体、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、可塑剤、充填剤、チクソトロピー性付与剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤などを含んでいてもよい。
【0033】
ラジカル重合可能な他の重合性単量体としては、上述の一般式(1)で表される重合性単量体以外の、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。架橋剤としては、例えば、メルカプト化合物、好ましくは2官能以上のメルカプト化合物が挙げられる。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、実質的に溶媒を含有しないものであることが好ましい。ここでいう溶媒には、金属アルコキシ化合物の分解により生成するアルコールは含まない。
硬化性組成物が溶媒を含有する場合、硬化物を得る際に溶媒を揮発させる必要があり、特に厚みの大きい硬化物を得る場合にはコスト面で不利であるし、また、得られた硬化物の機械物性が低下する場合がある。更に、硬化物の透明度を低下する原因の一つである金属アルコキシド化合物の中心原子の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0035】
溶媒しては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、ヘキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられる。
【0036】
本発明の硬化性組成物は、上述の一般式(1)で表される重合性単量体、金属アルコキシド化合物、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて他の成分を、通常、常温で混合することにより得られる。
【0037】
<樹脂硬化物>
本発明の樹脂硬化物は、本発明の硬化性組成物を重合、硬化して得られる。本発明の硬化性組成物の重合反応は、通常、架橋反応であり、重合反応の結果3次元網目構造が形成され、各種溶媒に不溶でかつ不融の重合体である樹脂硬化物が得られる。
重合反応による硬化は、ラジカル重合開始剤を含有する硬化性組成物を加熱または活性エネルギー線照射することにより行われる。活性エネルギー線照射により硬化を行うと、光線透過性に優れ、複屈折が小さい樹脂硬化物を得ることができる。
【0038】
硬化に用いられる活性エネルギー線は、ラジカル重合開始剤に作用してラジカルを発生させることができればよく、例えば、電子線、紫外線などが挙げられる。活性エネルギー線照射量は、重合性単量体、ラジカル重合開始剤の種類、量により適宜選択されるが、通常200〜400nmの紫外線を通常0.1〜200jの範囲で照射するのが好ましい。活性エネルギー線の照射が少なすぎると、重合が不完全なため、得られる硬化物の耐熱性、機械的強度などが不十分となる恐れがあり、照射が多すぎると得られる硬化物が着色する恐れがある。
【0039】
所望の形状の樹脂硬化物を得る方法としては、本発明の硬化性組成物を所望の形状の型内に硬化性組成物を注入した後、硬化させ、脱型する方法が挙げられる。
このようにして得られる本発明の樹脂硬化物は、光学歪みの指標の一つである複屈折が、樹脂硬化物の厚さ1mmにおいて、通常10nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは2nm以下である。複屈折の測定は、例えば、10cm×10cm×1mm厚の試験片を用い、測定面の中心を基準に3cm間隔の格子点を9個設定して各格子点の複屈折を25℃で複屈折測定装置(オーク社製)を用いて測定し、それらの平均値により表される。複屈折が小さい材料は光学用途に好ましく用いられる。
【0040】
本発明の樹脂硬化物は、耐熱性の指標であるガラス転移温度が、通常120℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上である。ガラス転移温度(Tg)の測定は、例えば、3mm×30mm×0.5mmの短冊状試験片を用いて、引っ張り法TMAにて加重2g、昇温条件5〜10℃/minで行うことができる。
【0041】
さらに、本発明の樹脂硬化物の機械的強度は、引っ張り強度が、通常1MPa以上、好ましくは2MPa以上、更に好ましくは4MPa以上である。引っ張り強度の測定は、例えば、幅1cm×長さ8cmの短冊状のサンプルについて、スパン幅3cm、テストスピード5mm/minにて、オートグラフ試験装置を用いて23℃で行うことができる。
本発明の樹脂硬化物は、光学用途などに用いる場合は、透明度が高いことが好ましく、入射光波長55nmにおける光線透過率が、通常85%以上、好ましくは88%以上である。光線透過率は、例えば、分光計にて、550nmにおける光線透過率を1mm厚の試験片で25℃で測定することができる。
【0042】
本発明の樹脂硬化物は、視光領域において透明性を有するためには、金属アルコキシド化合物に由来するアルコキシド中心原子が、大きな粒子状態になっていない、または大きな凝集体を形成していないことが望ましい。本発明の樹脂硬化物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、金属アルコキシド化合物に由来するアルコキシド中心原子は、微小ドメインとして確認でき、このドメインの最大長さが通常50nm以下、好ましくは0.5〜50nmの範囲であることが望ましい。ドメインとは、本発明の樹脂組成物において、アルコキシド中心原子の濃度が、ある立体形状の内部空間においてその外部よりも高い該立体形状の内部空間を意味し、透過型電子顕微鏡で観察すると、例えば、にじんだ斑点状のように見え、確認することができる。
【0043】
本発明の樹脂硬化物は、光学部材、具体的には、ディスプレイ部材、光通信・光回路用部材、光部品、記憶・記録用ディスク基板等のオプティクス、オプトエレクトロニクス用部材、およびその表面等に形成されるコーティングに好適に用いられる。
ディスプレイ部材としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどに用いられる基板、導光板、タッチパネル、位相差板などが挙げられる。
光部品としては、眼鏡用レンズ、光コネクタ用マイクロレンズ、発光ダイオード用集光レンズ等のレンズやプリズムなどが挙げられる。
光通信・光回路用部材としては、光スイッチ、光ファイバー、導波路、光分岐、接合回路、光多重分岐回路、光度調器用部品などが挙げられる。
表面などに形成されるコーティングとしては、反射防止膜、硬化被膜、選択反射膜、選択透過膜等の光学多層膜などが挙げられる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、光学部材に好適な樹脂硬化物を提供することができる。
【0045】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
樹脂硬化物の物性は、次の方法で測定した。
(1)光線透過率:500nmにおける光線透過率を1mm厚の試験片で測定した。
(2)複屈折:1mm厚の試験片で複屈折測定装置(オーク社製)を用いて25℃で測定した。
(3)引っ張り強度:幅1cm、長さ8cmの短冊状のサンプルについて、スパン幅3cm、テストスピード5mm/minにて、オートグラフ試験装置を用いて23℃で測定した。
(4)屈折率:カルニューデジタル精密屈折計KPR−2(カルニュー光学工業社製)を用いて23℃で測定した。
(5)耐熱性:得られた線膨張率のチャートにおいて、変曲点のうち、最も温度の低い位置にあるものを、その試料のガラス転移温度とした。
測定装置:TMA装置SSC/5200(セイコーインスツルメント社製)
測定モード:圧縮法(加重2g)
サンプル:5mm×5mm×1mm
昇温条件:5℃/min
【0046】
<実施例1>
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート(三菱化学社製、25℃において液体)95重量部、チタニウムテトラブトキシド(和光純薬社製)5重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(光ラジカル発生剤:BASF社製「ルシリンTPO」)0.1重量部、ベンゾフェノン(光ラジカル発生剤:和光純薬社製)0.1重量部をナス型フラスコ内にて互いに溶解するまで攪拌した。その後、フラスコ内をアスピレータによって減圧状態にして、溶液内に溶解している気体を取り除く脱泡操作を、溶液から気泡がほとんど出なくなるまで行い、重合性組成物を得た。
得られた重合性組成物を、光学研磨された2枚のガラスを対向させ、スペーサーとして厚さ1mmのシリコーン板を配置した成形型内に注入し、ガラス面より距離40cmで上下に設置された出力80W/cmのメタルハライドランプを用いて、まず1分間照射し、次いで5分間照射する二段階で紫外線を照射した。紫外線照射後、脱型し、さらに、150℃で1時間加熱し、樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を測定した。結果を表−1に示す。
【0047】
<実施例2>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートを90重量部、チタニウムテトラブトキシドを10重量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0048】
<実施例3>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートを80重量部、チタニウムテトラブトキシドを20重量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0049】
<実施例4>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートを75重量部、チタニウムテトラブトキシドを25重量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0050】
<比較例1>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートを100重量部、チタニウムテトラブトキシドを添加しない以外は、実施例1と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0051】
<比較例2>
比較例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートの代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いる以外は比較例1と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0052】
<比較例3>
実施例3において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレートの代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いる以外は実施例3と同様に行い樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の物性を表−1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0003985508
【0054】
<実施例5>
実施例3の樹脂組成物の線膨張係数を次の方法により測定した。
線膨張係数:40〜130℃の範囲で10℃刻みの各温度における線膨張係数を平均した。
測定装置:TMA装置SSC/5200(セイコーインスツルメント社製)
測定モード:圧縮法(加重2g)
サンプル:5mm×5mm×1mm
昇温条件:5℃/min
【0055】
<実施例6>
実施例3において、チタンテトラブトキシドの代わりにチタンテトラメトキシドを用いた以外は、実施例3と同様に行い、樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の線膨張係数を実施例5と同様の方法で測定した。結果を表−2に示す。
【0056】
<比較例4>
比較例1の樹脂組成物の線膨張係数を実施例5と同様の方法で測定した。結果を表−2に示す。
【0057】
【表2】
Figure 0003985508

Claims (9)

  1. 一般式(1)で表される脂環式構造を有する重合性単量体であるビス(メタ)アクリレート、及び金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属アルコキシド構造を有するもの、を含有することを特徴とする硬化性組成物。
    Figure 0003985508
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立して、アルキレン基または単結合を表し、xは1または2を表し、yは0または1を表す。)
  2. 一般式(1)で表される脂環式構造を有する重合性単量体であるビス(メタ)アクリレート、及び一般式(2)で表される金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属(M)に結合したOR 11 基を有するもの、を含有することを特徴とする硬化性組成物。
    Figure 0003985508
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立して、アルキレン基または単結合を表し、xは1または2を表し、yは0または1を表す。)
    M(OR11n(R12m-n (2)
    (式中、Mは、Al、Si、Ti、Y、Zr、Nb、Cd、Ba、Ta又はCeを表し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R12は置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基を表し、mはMの配位数で2〜5の整数を表し、nは1〜mの整数を表す。)
  3. 金属アルコキシド化合物又はその分解生成物が、テトラエトキシシラン、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン及び3−メタクリルオキシトリエトキシシラン及びこれらのオリゴマーより成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
  4. 金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属アルコキシド構造を有するものの含有量が、重合性単量体と金属アルコキシド化合物又はその分解生成物の合計を100重量部とした場合に、0.1〜40重量部であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の硬化性組成物。
  5. 金属アルコキシド化合物又はその分解生成物であって金属アルコキシド構造を有するものの含有量が、重合性単量体と金属アルコキシド化合物又はその分解生成物の合計を100重量部とした場合に、3〜20重量部であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の硬化性組成物。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる樹脂硬化物。
  7. 請求項1ないし5のいずれかに記載の硬化性組成物を型内で硬化させた後、脱型して得られることを特徴とする樹脂硬化物。
  8. 樹脂組成物の厚さ1mmにおける複屈折が10nm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の樹脂硬化物。
  9. 請求項6ないし8に記載の樹脂硬化物からなる光学部材。
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