JP3984734B2 - 海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物及びその増殖礁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物及びその増殖礁に関し、詳細にはサザエ、アワビ、ウニなどの海底を匍匐行動する生物の石積み礁を造る際に用いる増殖礁用基礎構造物とその構造物を用いて石積みした増殖礁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
サザエやアワビなどの生態は、餌料となるテングサ類、アオサ類などの海藻が繁茂する水深30メートル程度までの岩が入り組み隙間のある浅場を生息水域としているが、近年、その水域での稚貝の放流など栽培漁業がなされるようになってきた。
【0003】
上記の栽培漁業では、海藻が生育し、サザエやアワビなどが生息しやすい環境となるように天然石又はコンクリートブロックを直に、あるいは礁枠に割石を中詰めしたものなど(以下天然石、コンクリートブロック、礁枠に割石を中詰めしたものなどを石と称する)を海中に投入、設置して造成した石積みによる増殖礁(以下石積み礁と言う)が使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の石積み礁は、水深30メートル以内の浅場に通常 100kgから 1トン近い重さの石を高いもので 5m程度の高さにまで積み上げて造成するため、石が入り組み多くの隙間が形成されるとともに海藻が生育し易くサザエやアワビなどが生息するには適しているものの、その造成は石を海底に投入して積み上げる方式であるため以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、(1)海底の状況により、石だけでは、例えば、高さ 5mの台形状の石積みを海底に設けることが難しい場合や、積み上げたとしてもコストが高くなる場合がある。
(2)サザエやアワビなどの漁獲は水視漁業や潜水漁業など人手に頼っており、特に潜水漁業では漁獲作業中に積み上げた石が崩れる危険や、足場が不安定で漁獲作業の安全性に問題がある。
(3)海底が砂地の場合には石が沈みやすい。この沈みにより石積み礁が崩れたり、埋まるなど石積み礁としての機能が損なわれることがある。
(4)石積みの条件や海域条件によっては割高な石積みとなり、コストの問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであって、その目的の一つは、水深30メートル以内の浅場に石積み礁を波浪等で崩されたり、砂地に沈み難い状態で且つ石を有効に使用して造成し得るとともに、アワビやサザエなどが這い上がり易い石積み礁を造成するための増殖礁用基礎構造物を提供するものであり、またもう一つの目的は、前記基礎構造物を用いたアワビやサザエなどが生息し易い増殖礁を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物(請求項1)は、縦横長さに比較して高さが比較的低い鋼鉄製架台と、複数の石詰め籠を間隔をおいて備えた直方体状の鋼鉄製ユニットとを備え、鋼鉄製架台の天井の周辺部に鋼鉄製ユニットを設け、その中央部に鋼材製の網からなる石積み部を設ける一方、鋼鉄製架台の少なくとも岸に相対する前面部に格子部材及びその前面部の底部より外方に張出部を備えてなるものである。
【0008】
このように構成することで、鋼鉄製架台、鋼鉄製ユニット更に鋼材製の網からなる石積み部を採用しているので、大型の構造物に製作することができるとともに、鋼鉄製架台の高さを変えることで石積み礁を所望の高さで造成することができ、また鋼鉄製架台の上には石詰め籠や石積み部を備えているので、そこに石を予め敷き詰めることができ、アワビやサザエなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように石積みができる。
【0009】
また、鋼鉄製架台の少なくとも前面部の底部には外方に張り出した張出部を備えているので、海底が砂地の場合でも沈みにくく鋼鉄製架台の海底への設置を安定して行える。また、この張出部にも石積みができるので、石積みすることで礁全体を移動し難くできより安定した設置ができる。
【0010】
なお、この構成の増殖礁用基礎構造物においては、中央部の鋼材製の網からなる石積み部が、鋼材製の網からなる石積み部と鋼鉄製ユニットとを交互に設けてあってもよい(請求項2)。このように構成しても前記と同様の作用効果を享受することができる。また、この張出部は、岸に相対する前面部の底部と反岸側の底部との両方に構成してもよいし、あるいは全ての底部に構成してもよく、このようにした場合、上述した作用効果に加えて比較的規模の小さな(対角線が5〜10m程度の多角形状)構造物であっても、海底への設置がよりに安定して行え、特に波浪や潮流などの影響を防止して海底に沈設することができる。
【0011】
そして、上記もう一つの目的を達成するために、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁(請求項3)は、上述した請求項1または2記載の海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物の石積み部や石詰め籠に石が敷き詰めてなるものである。
【0012】
上記の構成では、鋼鉄製骨組み構造物を採用していることから、石積み部や石詰め籠に石を敷き詰めることで、所謂石を敷き詰めて構成した人工海底を所望の大きさ(広さ及び厚さ)で且つ重心を配慮した安定した高さ位置に構成することができる。またこのことと相まって構造物の少なくとも前面部の底部に外方に張り出した張出部を備えたことにより、前記人工海底を安定した状態で且つ所望の水深深さ(30メートル以内、好ましくは数メートル〜十数メートル)位置となるように海底に沈設できる。また、石は予め石積み部や石詰め籠に敷き詰めることができるので、石が崩れ難いように安定した状態で、且つサザエやアワビなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように敷き詰めることができる。また、人工海底にサザエやアワビなどを放流して人工産のサザエやアワビなどの栽培漁業がしやすくなる上に、水視漁業や潜水漁業など人手によるサザエやアワビなどの漁獲作業が安全にできる。また、人工海底と海底との間には必要により石を敷き詰めればよく特に石を敷き詰める必要がないことから石を有効に使用することができる。
【0013】
上記請求項3の増殖礁においては張出部上に石積みを施してもよい(請求項4)。このように石積みすることで、上記の作用効果に加えて増殖礁を海底により安定して沈設することができる。なお、この石積みは、増殖礁を海底へ沈設した後に張出部上に石積みしてもよいし、張出部上に石積み部や石詰め籠を構成し海底への沈設前にそこに石を敷き詰めて後に沈設してもよい。また、海底への沈設後に更に高く石を積み上げて増殖礁の上面と海底との間に石積みスロープを構成してもよい。このような石積みスロープを岸に相対する前面部側に設けた場合には、上述した作用効果に加えて、サザエなどは成長するにつれ海岸から深場の餌料となる海藻の繁茂する岩場に移動する習性があるので、その習性を利用して餌料となる海藻の繁茂する増殖礁の人工海底へ蝟集させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物の斜視図、図2は、図1の基礎構造物を構成する石詰めユニットの説明図であって、aは平面図、bはaのX−X矢視図である。図3は、図2bのY部拡大図である。
【0015】
増殖礁用基礎構造物1は、架台2と、その上の周辺部に載置して溶接固定された石詰めユニット3と、その中央部に設けられた石積み用の鋼材製の網部 15とを備え、石詰めユニット3と石積み用の鋼材製の網部 15 には石4(例えば天然石、コンクリートブロック、礁枠に割石を中詰めしたものなど)を敷き詰めるための格子又は籠が形成され、そこに石4を敷き詰めることで人工海底5が造成されるようになっている。
【0016】
架台2は、型鋼などの鋼材を溶接、骨組み構造とした鋼鉄製架台であって、岸と相対する前面側には格子部材6が溶接固定され、またその底枠7には外方に向けて張出枠8が溶接固定されている。また、架台2の上面の広さ(面積)は、そこに造成される人工海底5の広さに応じて溶接固定される石詰めユニット3と石積み用の鋼材製の網部 15 の数により適宜の広さのものが製作され、その高さは、この基礎構造物1を増殖礁として沈設する海底までの深さにより適宜の高さのものが製作される。なお、張出枠8は基本枠のみを図示したが、枠内の面積が大きい場合には適宜枠内に鋼材により格子を構造してもよく、このように構成することで、後記する増殖礁に構成して海底に沈設した場合に、海底が砂地の場合でも沈みにくく安定して増殖礁を海底に沈設することができるようになる。なお、符号 16 は増殖礁用基礎構造物1の上面にバランスを考慮して設けた吊りビームである。
【0017】
石詰めユニット3は、図2に示すように、型鋼などの鋼材を溶接、骨組みして製造した直方体状の鋼鉄製枠であって、架台2の上の周辺部に設けられている。この石詰め籠9は、図3に拡大して示すように、石詰めユニット3の上枠10と下枠11の間で、上枠10より 400mm程度の深さ位置に底枠12を構成するとともに、その底枠12の下に山形鋼13をほぼ等間隔に溶接固定して網底に構成したものである。なお、石詰め籠9の大きさの一例としては一辺が2000〜3000mm程度で深さ 400〜 500mm程度のものでる。また各石詰め籠9の間は増殖礁に構成した場合に海水の通しを良くするため、及びサザエなどを人手で漁獲しやすくするため 500〜1000mm程度の間隔9aを開けている。
【0018】
上記の如き構成の増殖礁用基礎構造物1は、鋼鉄製骨組み構造物を採用しているので高さが数メートル、一辺が十数メートルにもなる巨大な構造物に製作することができ、通常沈設する海岸沿いで架台2、石詰めユニット3及び石積み用網部 15をそれぞれ溶接して組立てられる。また、架台2の高さを変えることで石積み礁を所望の高さに造成することができる。その上、架台2の上には石詰め籠9を備える石詰めユニット3と石積み用網部 15が設けられているので、石詰め籠9と石積み用網部 15に海中に投入するための天然石、コンクリートブロックあるいは礁枠に割石を中詰めしたものなどの所謂石4を予め敷き詰めることができるので、アワビやサザエなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように石4を敷き詰めることができる。
【0019】
なお、石積み用網部15には、沈設するクレーン船などの能力に応じて予め陸上で石4を敷き詰めてもよいが、海底へ沈設した後に海上より石4を投入して敷き詰めることもできる。
【0020】
なお、上述した増殖礁用基礎構造物1においては、架台2の上面に石詰めユニット3を載置、溶接固定した形態を説明したが、石詰めユニット3を用いずに架台2の上面に直接石積み用網部15を溶接固定し、その周囲に鋼鉄製の柵を立設させた構成としてもよい。
【0021】
次に、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁の実施形態について、図1乃至3を用いて説明する。
【0022】
本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁は、図1に示す増殖礁用基礎構造物1を溶接、組み立てする際に、石詰めユニット3の石詰め籠9内に二点鎖線で示すように石4を所望の厚さ(400〜 500mm程度)で互いに動かないように且つ隙間を有するように予め敷き詰めた後、その石詰めユニット3を架台2上にクレーン等で吊り上げ架台2の周辺部に載置し、溶接固定する一方、中央部に石積み用網部 15 を溶接固定してその上に石4を敷き詰め、これにより石4を敷き詰めた人工海底5を造成することで製造される。そしてこの後、人工海底5の上面の適宜の位置に溶接固定した吊りビーム16を介してクレーン船などにより所定の沈設場所へ移動され、図4に示すように増殖礁17として海底18に沈設される。
【0023】
本発明に係る増殖礁17は上記の如き構成であり、鋼鉄製骨組み構造物を採用していることから、石4を敷き詰めて形成した人工海底5を所望の大きさで且つ重心を配慮した安定した高さ位置に形成することができる。またこれにより、前記人工海底5を安定した状態で且つ所望の水深深さ(数メートル〜十数メートル)位置となるように海底18に沈設できる。また、石4は予め敷き詰めることができるので、石4が崩れ難いように安定した状態で、且つサザエやアワビなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように敷き詰めることができる。また、人工海底5にサザエやアワビなどを放流して人工産のサザエやアワビなどの栽培漁業がしやすくなる上に、水視漁業や潜水漁業など人手によるサザエやアワビなどの漁獲作業が安全にできる。また、人工海底5と海底11との間には必要により石4を敷き詰めればよく特に石4を敷き詰める必要がないことから石4を有効に使用することができる。
【0024】
また、上記増殖礁17は、図5に示すように、増殖礁17を海底18に沈設した後、人工海底5の少なくとも岸側の縁に海底18との間に石積みスロープ19を形成することができる。このように石積みスロープ19を人工海底5の岸側の縁のみに形成した場合には、上記段落番号〔0023〕に説明した作用効果に加えて、サザエなどは成長するにつれ海岸から深場の餌料となる海藻の繁茂する岩場に移動する習性があるので、その習性を利用して石積みスロープ19より餌料となる海藻の繁茂する人工海底5へ蝟集させることができる。また石積みスロープ19は架台2の張出枠8上に石積みされるため増殖礁17がより安定して海底17に沈設できる。また、同図6に二点鎖線で示すように、前記石積みスロープ19と同様の石積みスロープ20を人工海底5の反岸側の縁に併せて形成してもよい。このように石積みスロープ20を形成することにより、特に波浪や潮流などの影響を受けやすい海底18では増殖礁17を安定して海底18に沈設することができる。なお、より波浪や潮流などの影響を受けやすい海底18では人工海底5の全ての縁に石積みスロープ19を形成してもよい。この場合、サザエやアワビなどの害敵であるヒトデなどが這い上がりやすくなるものの、増殖礁17を安定して海底18に沈設することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物によれば、鋼鉄製骨組み構造物を採用しているので大型の構造物に製作することができる。また、その構造物の天井部までの高さを変えることで石積み礁を所望の高さで造成することができる。その上、天井部には石積み部や石詰め籠を備えているので、そこに海中に投入するための天然石、コンクリートブロックあるいは礁枠に割石を中詰めしたものなどの所謂石を予め敷き詰めることができ、アワビやサザエなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように石積みができる。また、このように石積み部や石詰め籠に石を予め敷き詰めた鋼鉄製骨組み構造物とした後クレーン船などにより海中へ設置するので、石積み部や石詰め籠の石は波浪による影響を受け難くアワビやサザエなどが生息するために必要な石と石の間の隙間を確保して設置することができる。また、構造物の少なくとも前面部の底部には外方に張り出した張出部を備えているので、海底が砂地の場合でも沈みにくく構造物の海底への設置を安定して行える。また、この張出部にも石積みができるので、石積みすることでより安定した設置ができる。
【0026】
また、本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁であれば、鋼鉄製骨組み構造物を採用していることから、石積み部や石詰め籠に石を敷き詰めることで、所謂石を敷き詰めて構成した人工海底を所望の大きさ(広さ及び厚さ)で且つ重心を配慮した安定した高さ位置に構成することができる。またこのことと相まって構造物の少なくとも前面部の底部に外方に張り出した張出部を備えたことにより、前記人工海底を安定した状態で且つ所望の水深深さ(30メートル以内、好ましくは数メートル〜十数メートル)位置となるように海底に沈設できる。また、石は予め石積み部や石詰め籠に敷き詰めることができるので、石が崩れ難いように安定した状態で、且つサザエやアワビなどが生息するのに必要な隙間を多く形成するように敷き詰めることができる。また、人工海底にサザエやアワビなどを放流して人工産のサザエやアワビなどの栽培漁業がしやすくなる上に、水視漁業や潜水漁業など人手によるサザエやアワビなどの漁獲作業が安全にできる。また、人工海底と海底との間には必要により石を敷き詰めればよく特に石を敷き詰める必要がないことから石を有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物の斜視図である。
【図2】 図1の基礎構造物を構成する石詰めユニットの説明図であって、aは平面図、bはaのX−X矢視図である。
【図3】 図2のY部の拡大図である。
【図4】 本発明に係る海底を匍匐行動する生物の増殖礁を海底に沈設した状態の説明図である。
【図5】 本発明に係る別の実施状態の海底を匍匐行動する生物の増殖礁を海底に沈設した状態の説明図である。
【符号の説明】
1:増殖礁用基礎構造物 2:架台 3:石詰めユニット
4:石 5:人工海底 6:格子部材
7:底枠 8:張出枠 9:石詰め籠
9a:間隔部 10:上枠 11:下枠
12:底枠 13:山形鋼 15:石積み用の網部
16:吊りビーム 17:増殖礁 18:海底
19, 20:石積みスロープ
Claims (4)
- 縦横長さに比較して高さが比較的低い鋼鉄製架台と、複数の石詰め籠を間隔をおいて備えた直方体状の鋼鉄製ユニットとを備え、鋼鉄製架台の天井の周辺部に鋼鉄製ユニットを設け、その中央部に鋼材製の網からなる石積み部を設ける一方、鋼鉄製架台の少なくとも岸に相対する前面部に格子部材及びその前面部の底部より外方に張出部を備えてなることを特徴とする海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物。
- 中央部の鋼材製の網からなる石積み部が、鋼材製の網からなる石積み部と鋼鉄製ユニットとを交互に設けてなる請求項1記載の海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物。
- 請求項1または2記載の海底を匍匐行動する生物の増殖礁用基礎構造物の石積み部、石詰め籠に石が敷き詰められてなる海底を匍匐行動する生物の増殖礁。
- 海底に沈設された請求項3記載の増殖礁の張出部上に石積みしてなる海底を匍匐行動する生物の増殖礁。
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