次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施例に係るラミネート装置用ワークトレー1に収容する積層基材Wについて、図7を参照して説明する。
図7は、ICカードを製造するための積層基材Wの分解図を示す。同図において、Eは部品シートであり、この部品シートE上には、ICチップEiとアンテナEaを有する電子部品が、縦横に配列された状態で複数実装される。そして、部品シートEは、上下一対のシート生地材Ca,Cbにより挟まれる。各シート生地材Ca,Cbは、例えば、外側の樹脂シート(ポリエチレンテレフタレート等)及びこの内側の不織布を有し、各シート生地材Ca,Cbの内面には接着剤が塗布されている。このような積層基材Wは別工程で製造され、積層された部品シートE及びシート生地材Ca,Cbは複数位置がスポット溶接等により仮固定されている。
次に、本実施例に係るラミネート装置用ワークトレー1の構成について、図1〜図6を参照して説明する。
ワークトレー1は、下側のトレー部2と、このトレー部2の上面に重なる上側のカバー部3を備える。トレー部2は、図1に示すように、アルミニウム材等により矩形枠により構成した支持フレーム部4と、平板により形成した矩形のトレー本体部5を備える。したがって、支持フレーム部4は、前後のフレームメンバ4f,4rと左右のフレームメンバ4p,4qの組合わせからなる。
また、トレー本体部5の四辺部5f,5r,5p,5qには、それぞれ短冊状に形成した複数の係合片6fs,6f…,6rs,6r…,6ps,6p…,6qs,6q…を直角方向に突出形成する。即ち、一方の長辺部となる前側の辺部5fには、等間隔に配した五つの係合片6fs,6f…を形成するとともに、他方の長辺部となる後側の辺部5rには、等間隔に配した五つの係合片6rs,6r…を形成し、さらに、一方の短辺部となる左側の辺部5pには、等間隔に配した三つの係合片6ps,6p…を形成するとともに、他方の短辺部となる右側の辺部5qには、等間隔に配した三つの係合片6qs,6q…を形成する。この場合、各辺部5f,5r,5p,5qの中央に位置する一の係合片6fs,6rs,6ps,6qsは主係合片を構成するとともに、他の係合片6f…,6r…,6p…,6q…は副係合片を構成する。そして、これらの副係合片6f…,6r…,6p…,6q…の幅寸法Lbは、主係合片6fs,6rs,6ps,6qsの幅寸法Lbsよりも短く選定する。即ち、図3には、主係合片6rsと副係合片6rを示すが、主係合片6rsの幅寸法Lbsと副係合片6rの幅寸法Lbは、Lbs>Lbに選定する。
一方、各フレームメンバ4f…における所定位置には、各係合片6fs,6f…,6rs,6r…,6ps,6p…,6qs,6q…に対応する係合孔7…を設ける。この場合、各係合孔7…は、図3に示すように、各フレームメンバ4f…の上面に各係合片6fs,6f…,6rs,6r…,6ps,6p…,6qs,6q…に対応する係合凹部7s…を設け、各係合凹部7s…をカバープレート7c…で覆うことにより形成できる。このため、各係合凹部7s…の両側には、カバープレート7c…が嵌合する段差部11…を形成する。これにより、カバープレート7c…を段差部11…に嵌合した際には、各フレームメンバ4f…の上面は、カバープレート7c…を含む平坦面となる。よって、支持フレーム部4にトレー本体部5を支持させるに際しては、各係合片6fs,6f…,6rs,6r…,6ps,6p…,6qs,6q…を対応する係合凹部7s…に収容し、段差部11…にカバープレート7c…を嵌合した後、固定ネジにより、カバープレート7c…を支持フレーム部4に固定すればよい。これにより、支持フレーム部4の内側にトレー本体部5が支持される。
ところで、各係合凹部7s…の幅寸法Lsは全て同一に形成するとともに、この幅寸法Lsは、主係合片6rsの幅寸法Lbsと略同じになるように選定する。これにより、各主係合片6fs,6rs,6ps,6qsは、係合孔7…により係合方向(挿通方向)、即ち、X方向又はY方向にのみ変位自在に支持されるとともに、他の副係合片6f…,6r…,6p…,6q…は、幅寸法Lbが係合凹部7sの幅寸法Lsよりも短くなるため、各係合孔7…により少なくとも係合方向及びこの直角方向、即ち、X方向及びY方向の双方に変位自在に支持される。
よって、トレー本体部5の四辺部5f,5r,5p,5qからそれぞれ直角方向に突出した主係合片6fs,6rs,6ps,6qsは、支持フレーム部4に設けた係合孔7…によりX方向又はY方向にのみ変位自在に支持されるため、トレー本体部5は、支持フレーム部4に対して位置決めされた状態で支持される。一方、トレー本体部5が熱膨張により変形した際には、副係合片6f…,6r…,6p…,6q…が係合孔7…に対して少なくともX方向及びY方向の双方に変位自在に支持されるため、各主係合片6fs,6rs,6ps,6qsを支点としてトレー本体部5の変形が吸収されることになる。
さらに、カバー部3は、平板により形成するとともに、トレー本体部5とほぼ同じ大きさの矩形に形成し、下面には四辺に沿った一定の厚さを有する矩形枠状のシール部12を固着する。このシール部12の厚さは、積層基材Wの厚さを考慮する。なお、トレー部2及びカバー部3は、一定の厚さを有するステンレス材等により形成することができ、厚さは3〔mm〕以内、望ましくは1〔mm〕程度が好適である。これにより、トレー本体部5の上面に積層基材Wを載せ、上からカバー部3を重ねれば、トレー本体部5とカバー部3間には、積層基材Wを収容した密閉空間K(被真空部)が形成される。
一方、支持フレーム部4の搬送方向における右側の隅部には、図4及び図5に示す真空接続部Jqを設ける。この真空接続部Jqは、上面に被吸着面13fを有する接続体部13と、この接続体部13とトレー本体部5に形成した吸気孔2oを接続する接続通路部14を備え、被吸着面13fに開口する真空接続口13foとトレー本体部5の下面側に開口する吸気孔2oは通気路Aa,Abにより連通接続する。この場合、接続体部13には、通気路Aaに接続される逆止弁Vを内蔵するとともに、この逆止弁Vの機能を解除する解除操作部15を備える。
逆止弁Vは、図4に示すように、直方体形の下体部16dの上に、シート弁17及び所定の厚さを有する上体部16uを順次重ね、固定ネジにより固定する。この際、下体部16dの内部に通気路Aaを形成し、この通気路Aaは、下体部16dにおける上面の略中央,後側面,下面及び右側面にそれぞれ開口するとともに、上体部16uに、下体部16dの上面に開口する通気路Aaに対向する真空接続口13foを形成する。これにより、上体部16uの上面が被吸着面13fになるとともに、下体部16dの上面は、平坦な弁座となる。シート弁17は、ゴム等の弾性素材により形成し、真空接続口13foに対向する通気路Aaの開口に対して位置を異ならせた四つの通気孔17c…を設けるとともに、他方、上体部16uの下面には、全ての通気孔17c…が臨む弁受凹部16iを形成する。そして、この弁受凹部16iには、図6に示すシート状の付着防止網18を収容する。なお、図6は、理解を容易にするため、シート弁17,付着防止網18及び上体部16uを下方からの斜視で示す。このような構造により、極めて薄く、しかもシール性の良好な逆止弁Vを得ることができ、特に、厚さが制限された部位であっても、この種の逆止弁Vを容易に内蔵させることができる。また、付着防止網18を用いることにより、弁受凹部16iに対するシート弁17の付着を防止できる。
一方、解除操作部15は、図5に示すように、下体部16dの前側面から突出した操作体支持部16fの外側に、矩形枠状の操作体19cを変位可能に係合させるとともに、下体部16dの内部に設けた通気路Aaの開口を操作体支持部16fの下面に開口させる。そして、操作体19cの下辺部内面にシート弁19sを固着し、このシート弁19sを通気路Aaの開口に対面させるとともに、不図示のスプリングにより操作体19cを付勢し、シート弁19sを通気路Aaの開口に圧接させる。これにより、自然状態では、シート弁19sにより通気路Aaの開口が閉塞されるとともに、操作体19cを押操作し、シート弁19sを通気路Aaの開口から離せば、通気路Aaの開口を大気に連通させることができる。即ち、逆止弁Vの機能を解除することができる。
他方、接続通路部14は、トレー本体部5の下面に重ねて固定した導出プレート20dを備える。この導出プレート20dの内部には、一端が吸気孔2oに連通するとともに、他端がトレー本体部5から突出した導出プレート20dの上面に開口する内部通気路を有し、導出プレート20dの上面に開口した内部通気路と下体部16dの右側面に開口した通気路Aaは、送気パイプ20pにより連通接続する。これにより、吸気孔2oから通気路Aaに至る通気路Abが形成される。
また、支持フレーム部4における左右のフレームメンバ4p,4qには、円筒形の真空タンク21p,21qを設置する。この場合、下体部16dの前側面に接続凸部16jを一体形成し、この接続凸部16jに、一方の真空タンク21qの一端開口を嵌め込むことにより接続する。なお、24は接続凸部16jの外周に装着したOリングを示す。この接続凸部16jには、通気路Aaが開口しているため、真空タンク21qを、接続体部13の通気路Aaに直接接続することができる。他方の真空タンク21pは、支持フレーム部4の左側の隅部に設けた真空接続部Jpを介してワークトレー1の密閉空間Kに接続する。この真空接続部Jpは、真空接続部Jqと同様の接続体部25と接続通路部26を有するが、被吸着面13f等は備えておらず、密閉空間Kと真空タンク21pを接続するのみである。このような真空タンク21p,21qを設けることにより、吸引時の衝撃を緩和し、かつ安定した真空圧Pvを維持できる。
さらに、接続体部25の上面には、被検出子27を設ける。この被検出子27は、接続体部25に挿通させたシャフト部27sと、このシャフト部27sの上端に設け、後述する検出部73により検出されるヘッド部27hを有し、接続体部25に対して上方へ引き出した検出位置と下方へ押し込んだ非検出位置へ選択的に変位させることができる。これにより、被検出子27が検出位置にあるときは、検出部73により検出されるとともに、非検出位置にあるときは、検出部73により検出されなくなる。また、支持フレーム部4における前後のフレームメンバ4f,4rには、それぞれ左右一対ずつ計四つの位置決め孔28…を形成する。
このようなワークトレー1は、上面に被吸着面13fを有する接続体部13や真空タンク21p,21qは、矩形枠により構成した支持フレーム部4の上面に設けたため、ワークトレー1からの横方への突起物を無くすことができ、保管性,取扱性及び安全性を高めることができる。
次に、ワークトレー1を用いるラミネート装置Mの本体側の構成について、図8〜図11を参照して説明する。
図8は、ラミネート装置Mの全体構成を示す。ラミネート装置Mは、同図に示すように、平面方向から見て全体が矩形枠状(ロの字形)となる搬送路Rを有する。この搬送路Rは、水平面上に平行に配した処理搬送部Rpと戻搬送部Rrを備えるとともに、処理搬送部Rpと戻搬送部Rrの一端側間に配した導入搬送部Riと、処理搬送部Rpと戻搬送部Rrの他端側間に配した排出搬送部Roを備え、これにより、全体が矩形枠状の搬送路Rとなる。
戻搬送部Rrは、搬送方向に対し、左右一対のガイドレール31p,31qと、このガイドレール31p,31qの内側に配した複数の搬送ローラ機構32…を備える。また、処理搬送部Rpは、搬送方向に対し、左右一対の搬送キャリア33p,33qを備え、この搬送キャリア33p,33qは、駆動部33d…により搬送方向における前後(矢印Dm方向)の二位置へ選択的に移動させることができ、図8中、実線の搬送キャリア33p,33qが後退位置、仮想線の搬送キャリア33ps,33qsが前進位置となる。この搬送キャリア33p,33qには、ワークトレー1の左右両端、即ち、支持フレーム部4における左右のフレームメンバ4p,4qを載置することができる。
一方、導入搬送部Riは、各ガイドレール31p,31q及び各搬送キャリア33p,33q間に配した複数の搬送ローラ機構34r…を有する搬送機構34を備え、この搬送機構34は、上下方向における二位置へ選択的に昇降させることができる。また、排出搬送部Roは、各ガイドレール31p,31q及び各搬送キャリア33p,33q間に配した複数の搬送ローラ機構35r…を有する搬送機構35を備え、この搬送機構35は、上下方向における二位置へ選択的に昇降させることができる。
そして、導入搬送部Riの始点となる搬送路Rにおける隅部には、ワークトレー1に積層基材Wを装填する装填部36を配設する。装填部36は、ワークトレー1における上側のカバー部3を下側のトレー部2に対して着脱するカバー着脱部37を備え、このカバー着脱部37は、先端に吸着部を有する着脱アーム38と、この着脱アーム38の後端を所定角度回転させる回転駆動部39を有する。また、処理搬送部Rpの始点となる搬送路Rにおける次の隅部には、ワークトレー1の待機部40を設けるとともに、排出搬送部Roの始点となる搬送路Rにおける次の隅部には、ワークトレー1の排出部41を設ける。さらに、待機部40と排出部41間には、真空吸引工程S1,熱圧着工程S2及び冷却工程S3を順次配設する。この真空吸引工程S1,熱圧着工程S2及び冷却工程S3には、それぞれ真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3を備える。
次に、各プレスユニットU1〜U3の構成について具体的に説明する。図9及び図10は、加熱プレスユニットU2の構成を示す。この加熱プレスユニットU2は、上下に離間して配した上支持盤51と下支持盤52を備え、連結シャフト53…により連結されている。そして、上支持盤51の下面には、加熱ヒータを内蔵する上加圧盤(上熱盤)U2xを固定する。上加圧盤U2xの下面は平坦面であり、クッションシート54uが貼着されている。一方、この上加圧盤U2xの下方には、対向する下加圧盤(下熱盤)U2yを配する。そして、この下加圧盤U2yは加圧機構55により昇降可能に支持される。この下加圧盤U2yも上加圧盤U2xと同様に、加熱ヒータを内蔵するとともに、上面は平坦面であり、クッションシート54dが貼着されている。なお、加圧機構55は、下支持盤52の下面に固定した六つの加圧シリンダ56a,56b,56c,56d…を備え、各加圧シリンダ56a…は、三つずつ二列にして対称的に配する。各加圧シリンダ56a…のシリンダロッド56ar…は、下支持盤52の内部を貫通させ、上面から上方へ突出させるとともに、先端面を、下加圧盤U2yの下面に固定した対応する各当接板57…に当接させる。また、58は、下支持盤52の下面に取付けた補助シリンダであり、この補助シリンダ58のピストンロッド58rは、リンク機構59を介して下加圧盤U2yに結合する。これにより、補助シリンダ58は、加圧時に加圧シリンダ56a,56b…の加圧力を補助するとともに、加圧解除時に下加圧盤U2yを下降させる。
他方、下支持盤52には、エアシリンダを用いた四つのリフタ61…をワークトレー1に設けた四つの位置決め孔28…に対応して設置する。これにより、リフタ61…は、ワークトレー1の前後の端部、即ち、支持フレーム部4の前後のフレームメンバ4f,4rを支持することにより当該ワークトレー1を所定の高さまで上昇させる機能を備えるとともに、ピストンロッド61r…の上端に設けた位置決め凸部62…がワークトレー1の各位置決め孔28…に係合し、下加圧盤U2yとワークトレー1間の位置決めを行う機能を兼ねている。
また、加熱プレスユニットU2には真空処理部60を備える。真空処理部60は、上支持盤51の搬送方向に対して右側に固定した吸盤シリンダ(エアシリンダ)63を備え、この吸盤シリンダ63におけるピストンロッド63rの先端には、ワークトレー1に設けた被吸着面13fに対して吸着する吸盤64を備える。この吸盤64は、制御弁を介して真空ポンプを用いた不図示の真空装置に接続する。さらに、加熱プレスユニットU2にはエラー処理部70を備える。エラー処理部70は、上支持盤51の搬送方向に対して左側に固定した操作シリンダ(エアシリンダ)71を備え、この操作シリンダ71のピストンロッド71rの先端には、ワークトレー1に設けた被検出子27を下方へ押し込む押子72を有する。また、操作シリンダ71の近傍には、ヘッド部27hを検出するための近接スイッチ等を用いた検出部73を配設する。これにより、ワークトレー1の被検出子27が、接続体部25に対して上方へ引き出した検出位置にあるときは、ヘッド部27hが検出部73に近接し、検出部73により検出されるとともに、操作シリンダ71により押子72を下降させ、被検出子27を接続体部25に対して下方へ押し込んだ場合には、被検出子27は非検出位置に変位し、ヘッド部27hが検出部73から離れることにより、検出部73によっては検出されなくなる。このように、単純な被検出子27を用いることにより、検出部73にも容易かつ確実に検出可能な近接スイッチ等を利用できるため、簡易な構成により低コストに実施できるとともに、信頼性の高いエラー処理を行うことができる。
なお、真空プレスユニットU1及び冷却プレスユニットU3の構成も、加熱プレスユニットU2と基本的に同じとなるが、真空プレスユニットU1は、加熱プレスユニットU2における加熱ヒータを内蔵する上加圧盤(上熱盤)U2x及び下加圧盤(下熱盤)U2yの代わり、加熱ヒータの無い単なる上加圧盤U1x及び下加圧盤U1yを備えるとともに、冷却プレスユニットU3は、加熱プレスユニットU2における加熱ヒータを内蔵する上加圧盤(上熱盤)U2x及び下加圧盤(下熱盤)U2yの代わりに、冷却手段(水冷のためのウォータジャケット等)を内蔵する上加圧盤U3x及び下加熱盤U3yを備える点が異なる。
そして、これらの真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3は、それぞれ独立したユニットとして構成する。したがって、各プレスユニットU1〜U3を、図8に示すように基台91に設置する場合には、各プレスユニットU1〜U3を、基台91上に順次定位置に取付け、この後、搬送キャリア33p,33qを組付ける。この場合、各プレスユニットU1〜U3における下支持盤52…に、レール支持部92p…,92q…を取付け、このレール支持部92p…,92q…の上端に、駆動部33d…を介して各搬送キャリア33p,33qを支持する。このため、各搬送キャリア33p,33qは、それぞれ各プレスユニットU1〜U3に跨がる一本のレール部材を用いる。また、各搬送キャリア33p,33qの高さは、下加圧盤U1y,U2y,U3yが下降した際に当該下加圧盤U1y,U2y,U3yの上方に位置するワークトレー1…を支持し、かつ下加圧盤U1y,U2y,U3yが上昇した際に当該下加圧盤U1y,U2y,U3yに支持されるワークトレー1…よりも下方に位置するように設定する。なお、駆動部33d…は、サーボモータを利用して直進駆動機構を構成することができる。その他、図8中、95は搬送路Rの周囲に配した安全ウォールを示す。
このように、真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3は、それぞれ独立したユニットとして構成され、しかも、矩形枠状に設けた搬送路Rの一辺に、真空プレスユニットU1(真空吸引工程S1),加熱プレスユニットU2(熱圧着工程S2)及び冷却プレスユニットU3(冷却工程S3)を順次配設するため、各処理工程S1〜S3の変更や他の処理工程(予熱工程,第二熱圧着工程等)の追加を搬送路Rの長さ変更程度の設計変更により容易に対応できるとともに、任意数の追加が可能になり、発展性に優れる。また、積層基材Wのサイズ、特に、搬送方向のサイズを任意に設定できるなど、高い設計自由度を得れるとともに、量産性向上に寄与できる。さらに、定位置で全処理工程(S1〜S3)を監視できるなど、工程全体の監視を容易かつ効率的に行うことができるとともに、監視やメンテナンス等に伴うオペレータの移動距離(作業動線)を短縮することができる。一方、搬送キャリア33p,33qは、水平方向への単なる往復移動のみとなるため、構成の簡略化,小型化及び低コスト化を図ることができるとともに、真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3間に容易に設置することができる。しかも、積層基材W(ワークトレー1)を各プレスユニットU1,U2,U3の定位置まで高い精度で搬送することができる。
次に、本実施例に係るラミネート装置Mの動作について、図1〜図11を参照して説明する。
全体的な概略動作としては、ワークトレー1が搬送路Rに沿って循環搬送されるとともに、積層基材Wが装填部36においてワークトレー1に装填(収容)され、真空プレスユニットU1(真空吸引工程S1),加熱プレスユニットU2(熱圧着工程S2)及び冷却プレスユニットU3(冷却工程S3)を経てラミネート処理される。図8中、矢印F1,F2,F3,F4は、ワークトレー1の搬送方向を示す。
今、ワークトレー1が戻搬送部Rrを経て装填部36に戻された状態を想定する。これにより、カバー装填部37の着脱アーム38が回転駆動部39によって図8に実線で示す吸着位置へ回転変位し、先端の吸着部によりワークトレー1のカバー部3の上面を吸着する。この後、着脱アーム38は逆方向に所定角度回転変位し、カバー部3を吸着したまま図8に仮想線で示す待機位置で待機する。これにより、トレー部2からカバー部3が離脱する。なお、ワークトレー1が排出部41から装填部36に戻される間に、ワークトレー1に備える解除操作部17が操作され、逆止弁Vの機能が解除される。これにより、密閉空間Kの真空状態が解除され、大気圧に戻される。また、ワークトレー1の被検出子27が非検出位置に変位した不良トレーとして戻った場合には、ワークトレー1の交換を行い、不良チェックを行う。
一方、トレー部2からカバー部3が離脱したなら、ラミネート処理された積層基材Wを取出すとともに、予め準備した処理前の積層基材Wをトレー部2の上面にセットする。セットする方向を、図8において矢印Dwで示す。この場合、自動でセットしてもよいし、手動によりセットしてもよい。手動によりセットした場合には、不図示のスタートボタンを押すことにより、着脱アーム38が吸着位置へ回転変位し、カバー部3をトレー部2の上に載置するとともに、載置したなら着脱アーム38は待機位置まで戻される。これにより、積層基材Wは、トレー部2とカバー部3間に収容される。このように、積層基材Wをワークトレー1に収容することにより、各プレスユニットU1〜U3間の移動時における保温性及び保圧性が確保される。
次いで、導入搬送部Riにおける搬送機構34が上昇し、搬送ローラ機構34r…の回転動作により、ワークトレー1は待機部40まで搬送される。この際、ワークトレー1は、ガイドレール31p及び搬送キャリア33qを跨いで通過する。図11(a)は、真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3における全処理が終了し、下加圧盤U1y,U2y,U3yが下降している状態を示している。この場合、搬送キャリア33p,33qは後退位置にあり、導入搬送部Riを搬送されたワークトレー1は、待機部40における搬送キャリア33p,33q上に載置される。真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3における処理の終了した各ワークトレー1…も、下加圧盤U1y,U2y,U3yが下降していることにより、搬送キャリア33p,33q上に載置される。
したがって、駆動部33d…を駆動制御して搬送キャリア33p,33qを、図8に仮想線で示す搬送キャリア33ps,33qsの位置(前進位置)まで一タクト分移動させれば、待機部40のワークトレー1は真空プレスユニットU1にセットされ、真空プレスユニットU1のワークトレー1は加熱プレスユニットU2にセットされ、加熱プレスユニットU2のワークトレー1は冷却プレスユニットU3にセットされ、冷却プレスユニットU3のワークトレー1は排出部41にセットされる。この状態を図11(b)に示す。このように、搬送キャリア33p,33qの搬送動作は、水平方向への単なる往復移動のみであり、このときの移動ストローク(一タクト分)は、予め正確に設定されている。
各ワークトレー1…が次工程となる各ユニットU1〜U3にセットされたなら、最初に、真空圧Pvの判定処理が行われる。この場合、図9及び図10に示す加熱プレスユニットU2では、リフタ61…により、ワークトレー1を一旦所定の高さまで上昇させる。真空プレスユニットU1及び冷却プレスユニットU3においても、同様にリフタ(61…)により、各ワークトレー1…を一旦所定の高さまで上昇させる。この状態を図11(c)に示す。この際、検出部73により、ワークトレー1における被検出子27の検出が行われ、被検出子27が検出位置にある場合には、前工程において正常に真空吸引されたことを確認できるため、真空圧Pvの判定処理が行われるとともに、被検出子27が非検出位置にある場合には、前工程で既に不良トレーと判定されているため、真空圧Pvの判定処理は行わない。
判定処理に際しては、吸盤シリンダ63により吸盤5が下降し、ワークトレー1に設けた被吸着面13fに吸着する。吸盤64は、真空装置に接続されているため、この真空装置によりワークトレー1の密閉空間Kが真空吸引される。真空吸引時には、シート弁17が弁受凹部16i側に吸引され、弁座となる下体部16dの上面から離間するため、真空接続口13foは、弁受凹部16i及び通気孔17c…を介して通気路Aaに接続される。このように、真空接続口13foを設けた被吸着面13fと吸盤64を着脱するようにしたため、正確な位置決め機構が不要或いは簡易な位置決め機構で足り、構造の簡略化及びコストダウンに寄与できるとともに、常に確実な着脱を行うことができる。
そして、真空吸引時に、ワークトレー1に漏れ等の異常がないか否かの判定(検査)が行われる。この場合、吸盤64に接続された真空圧計により真空圧Pvが検出され、正常値を満たしているか否か判定される。例えば、加熱プレスユニットU2の真空圧Pvの正常値が−96〔kPa〕に設定されている場合、−96〔kPa〕に満たないときは、不良トレーと判定する。不良トレーと判定された場合にはエラー処理を行う。即ち、操作シリンダ71により押子72を下降させ、ワークトレー1の被検出子27を下方へ押し込むことにより非検出位置に変位させる。したがって、次の冷却工程では検出部(6)により検出されなくなり、真空圧Pvの判定処理をはじめ全ての冷却処理は行われない。一方、真空吸引後は、吸盤シリンダ63により吸盤64を上昇させる。これにより、吸盤64は被吸着面13fから離脱するが、逆止弁Vにより通気路Aa側への大気の侵入が阻止される。即ち、通気路Aa側からの負圧によりシート弁17が下体部16dの上面に密着するため、通気路Aaはシート弁17により遮断(閉塞)される。
以上、加熱プレスユニットU2における真空圧Pvの判定処理を説明したが、真空プレスユニットU1及び冷却プレスユニットU3においても同様に行われる。この場合、冷却プレスユニットU3における真空圧Pvの正常値(例えば、−75〔kPa〕)は、加熱プレスユニットU2の真空圧Pvよりも低く設定される。また、真空プレスユニットU1に接続される真空装置は、冷却プレスユニットU3と共通の真空装置を用いる。したがって、真空圧Pvの正常値は、冷却プレスユニットU3における真空圧Pvの正常値と同じになる。真空プレスユニットU1では、大気圧の状態から密閉空間Kに対する真空吸引処理が行われるため、真空吸引を開始した後、設定時間が経過しても−75〔kPa〕に達しない場合に、不良トレーと判定する。
真空圧Pvの判定処理が終了したなら各下加圧盤U1y,U2y,U3yを上昇させる。これにより、各ワークトレー1…は、上加圧盤U1x,U2x,U3xと下加圧盤U1y,U2y,U3y間に挟まれて加圧処理が行われる。この状態を図11(d)に示す。この際、ワークトレー1の真空圧Pvが正常値を満たしていないとき、即ち、不良トレーと判定されている場合、対応する下加圧盤U1y…は上昇しない。そして、真空プレスユニットU1では、真空吸引処理が行われ、ワークトレー1の密閉空間Kが真空吸引されることにより、積層基材Wの内部に含まれる気泡が完全に除去される。また、加熱プレスユニットU2では熱圧着処理が行われるとともに、冷却プレスユニットU3では冷却処理が行われる。
一方、排出部41のワークトレー1は、排出搬送部Roにおける搬送機構35が上昇し、搬送ローラ機構35r…の回転動作により、戻搬送部Rr上に搬送される。この際、ワークトレー1は、搬送キャリア33q及びガイドレール31pを跨いで通過する。この状態では、下加圧盤U1y,U2y,U3yと一緒に各ワークトレー1…が上昇し、搬送キャリア33p,33qから離れているとともに、不良トレーは、リフタ61…で支持されることにより、搬送キャリア33p,33qから離れているため、図11(e)に示すように、駆動部33d…を駆動制御して搬送キャリア33p,33qを図8に実線で示す後退位置まで移動させる。
この後、真空プレスユニットU1,加熱プレスユニットU2及び冷却プレスユニットU3における全処理が終了したなら、下加圧盤U1y,U2y,U3yを下降させるとともに、不良トレーのリフタ61…を下降させる。この状態を図11(f)に示す。また、この状態では、待機部40に、次のワークトレー1が導入搬送部Riから搬送キャリア33p,33q上に搬送される。この状態は、図11(a)に示した状態と同じになる。したがって、以下、同様の動作が繰り返される。
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明は、このような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、必要により予熱工程や第二熱圧着工程等の他の処理工程を設けることができる。また、主係合片6fs…は、実施例のように各辺部5f…の略中央に形成する場合が最も望ましいが、必ずしも中央に設ける必要はない。さらに、積層基材WとしてはICカードに用いて好適であるが、他の任意のカード類に適用できる。