JP3984138B2 - 測距装置及びこれを備えたカメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は測距装置に関し、より詳細には、パッシブ方式のAF(Auto Focus)センサを備えた測距装置及びこれを備えたカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
パッシブ方式のAFセンサを備えたカメラ等の測距装置は、例えば左右一対のラインセンサにより被写体を撮像し、左右のセンサ像(AFデータ)を取得する。この左右一対のラインセンサから得られるAFデータのうち、相関値演算に使用する一対のAFデータを取得するための一対のウインドウ範囲を決定し、この一対のウインドウ範囲を一対の所定のセンサ領域(採用センサ)内で互いに逆方向にシフトさせながら順次相関値演算に使用する一対のAFデータを取得する。又は、一方のウインドウ範囲を固定し、他方のウインドウ範囲をシフトさせながら順次相関値演算に使用する一対のAFデータを取得する。このようにして得られる一対のAFデータの相関を求め、最高相関が得られるとき(一対の採用センサ内の左右のセンサ像が一致するとき)のウインドウ範囲のシフト量に基づいて被写体距離を算出している。
【0003】
ここで、最高相関が得られるときのウインドウ範囲のシフト量は、具体的には相関値が極小となるところのシフト量である。尚、相関値演算の方法によっては、相関値が極大となるところが最高相関となる場合もあるが、本明細書では相関値が極小となるところが最高相関になる場合について説明する。そして、極小値が複数存在する場合があり、その場合には、通常、最小の極小値(最小極小値)が得られたときのシフト量が最高相関のシフト量と判断される。
【0004】
また、従来のパッシブタイプの測距装置では、相関値演算を実施して、最小相関(最小極小値)が得られたシフト量を距離結果としているが、周期的パターンの測距対象物の場合、極小値が複数存在することとなり、実際に測距対象物の存在するシフト量(距離)以外の極小値を結果としてしまい、誤測距をおこす場合がある。そこで、従来ではその極小値に信頼性があるか否かの判断を行い、信頼性のない極小値を選択しないようにしている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示の測距装置では、遠距離シフト側から相関シフトを開始し、極小値が現れた場合に極小値の小ささ(相関の高さ)及び前後相関値と極小値の谷の鋭さを判断することにより信頼性を判断していた。更に、上記公報に開示の測距装置では、この判断値を遠距離側は緩く、近距離側は厳しくし、シフト量(距離)に対する関数となるよう判断値を変更して、遠距離で測定した場合に近距離にずれてしまう誤測距を回避するようにしていた。
【0006】
【特許文献1】
特許第3239413号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、被写体が例えば繰り返しパターンを有するような場合には、図8(a)及び8(b)に示すように、左右一対のラインセンサにより得られるAFデータのコントラスト値が激しく変動する。かかるAFデータに基づいて相関値を算出した場合、図9に示すように、シフト量に対して相関値が激しく変動して多数の極小値が生じてしまう。これにより、最高の相関を与える相関値を誤って選択してしまい、その相関値が得られたときのシフト量に基づいて被写体距離を算出することで、被写体距離を誤って測定してしまうおそれがあった。
【0008】
また、極小値により判断を行った場合、絵柄のコントラスト強弱により、極小値の小ささ、谷の鋭さが変わってしまうという問題がある。
【0009】
例えば、図10(a)に示すような白と灰色の絵柄では、図10(b)に示すように、極小値は小さく谷の鋭さは緩やかになる。一方、図11(a)に示すような白と黒の絵柄では、図11(b)に示すように、極小値は大きく谷の鋭さは鋭くなる。
【0010】
上記公報に開示の測距装置のように、極小値の小ささ(相関の高さ)及び前後相関値と極小値の谷の鋭さを判断すると、同じ繰り返しパターンであるにもかかわらず、前者は極小値の小ささは良好(有利)、谷の鋭さは緩やか(不利)、後者は極小値は大きくなり(不利)、谷の鋭さは鋭く(有利)になる。
【0011】
従って、絵柄により判断を変更していないため相関値情報により判断を行うと、繰り返しパターンの判定を安定して行うことができないという問題があった。例えば、近距離にある繰り返しパターンを測距した場合、図12に示すように、遠距離の判断を緩く、近距離の判断を厳しく設定しているために、近距離を遠距離と誤判断してしまうおそれがあった。
【0012】
更に、上記公報に開示の測距装置では、相関値演算を行いながら極小値を検出した後上記2つの判断を行っているため、相関結果が良好でなかった場合、不要な相関演算を行っていることになり、演算時間を無駄に消費することとなっていた。相関演算は、周知のごとく演算時間が必要となるため、複数の領域で距離を算出する場合、及び複数回距離を算出する場合等、不要な時間が積み重なり、無駄な時間を要してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記した課題を解決するために為されたものであり、測距対象物の誤測距を抑制することが可能な測距装置及びこれを備えたカメラを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る測距装置は、(1)複数の受光素子を含む一対のラインセンサに測距対象物からの光を結像させ、各受光素子から得られた信号に基づいて相関値演算用の一対のAFデータを生成するAFデータ生成手段と、(2)一対のラインセンサのうちの測距に使用する一対の採用センサ範囲から一対のAFデータを取得するAFデータ取得手段と、(3)一対の採用センサ範囲内において、相関値演算に使用する一対のAFデータを取得するための一対のウインドウ範囲を決定し、一対のウインドウ範囲をシフトさせながら順次相関値を演算する相関値演算手段と、(4)相関値演算手段により演算された相関値に基づいて、最高の相関が得られるときのウインドウ範囲のシフト量を検出し、シフト量に基づいて測距対象物の距離を算出する測距対象物距離算出手段と、を備えた測距装置であって、(5)AFデータ取得手段により取得された一対のAFデータのコントラスト変化の度合いを示す指標値を算出し、指標値に基づいて測距不能とするか否かを判定する測距不能判定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
この測距装置では、AFデータ取得手段により取得されたAFデータのコントラスト変化の度合い示す指標値を算出し、この指標値に基づいて測距不能とするか否かを判定するようにしたので、かかる指標値に基づいてコントラスト変化が大きいと判定したときは測距不能とすることで、誤測距を抑制することが可能となる。
【0016】
本発明に係る測距装置では、測距不能判定手段は、AFデータ取得手段により取得された一対のAFデータをそれぞれ所定のサンプリング間隔でサンプリングし、隣接するサンプリング点におけるAFデータ間のコントラスト値の差の絶対値を加算して一対の加算値を算出すると共に、AFデータ取得手段により取得された一対のAFデータのそれぞれについて、コントラスト値の最大値と最小値とを減算して一対のコントラスト差を算出し、一対の加算値の和と一対のコントラスト差の和との比を指標値として算出することを特徴とする。このようにして算出される比は、コントラスト変化の大小を判定するための指標値として好適である。
【0017】
本発明に係るカメラは、上記した測距装置を備えたことを特徴とする。ここで、カメラにはフィルムカメラ、デジタルスチルカメラ等の写真機の他、ビデオカメラ等が含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る測距装置を備えたカメラを前面側から見た斜視図である。図1に示すように、カメラ10には、被写体像を銀塩フイルムに結像する撮影レンズを備えたズームレンズ鏡胴12と、ストロボ光が発光されるストロボ発光窓16と、撮影者が被写体を確認するファインダ窓18と、被写体距離を測定するパッシブタイプのAFセンサが内蔵されているAF窓22と、被写体の明るさを測定する測光センサが内蔵されている測光窓25と、撮影者がシャッタレリーズを指示する際に操作するシャッタボタン34等が設けられている。
【0020】
図2は、カメラ10の背面側から見た斜視図である。図2に示すように、カメラ10には、設定されている撮影モード等や日付情報等を表示するLCD表示パネル38と、ストロボの発光モードを設定するフラッシュボタン42と、セルフタイマーのモードを設定するセルフタイマーボタン44と、フォーカスのモードを設定するフォーカスボタン46と、日付や時刻を設定する日付ボタン48と、撮影画角をワイド方向又はテレ方向に指示するズームボタン50とが設けられている。
【0021】
図3は、パッシブ方式によるAFセンサ74の構成を示した図である。図3に示すように、AFセンサ74には、被写体90の像を左右の各センサの受光面に結像するレンズ92と、受光面に結像した像を光電変換して輝度信号として出力する右側のR(右)センサ94及び左側のL(左)センサ96と、CPU60と間で各種データの送受信を行うとともにRセンサ94及びLセンサ96の制御とデータ処理を行う処理回路99とが設けられている。尚、Rセンサ94、Lセンサ96、及び、処理回路99は、例えば、同一基板上に実装される。
【0022】
Rセンサ94及びLセンサ96は例えばCMOSラインセンサであり、直線上に配列された複数のセル(受光素子)から構成される。尚、Rセンサ94とLセンサ96のそれぞれのセルには図中左側から順にセンサ番号1、2、3…233、234が付されるものとする。ただし、Rセンサ94及びLセンサ96の左右両側の5つずつのセルは、ダミーのセルとして実際には使用されていないため、有効なセンサ領域は、センサ番号6から229までとなっている。これらのRセンサ94及びLセンサ96の各セルからは受光した光量に応じた輝度信号がセンサ番号と関連付けて処理回路99に順次出力される。
【0023】
処理回路99は、CPU60から指示信号によってAFセンサ74の動作状態と非動作状態の切替えを行い、動作状態においてCPU60から動作内容に関する制御データを取得すると、その制御データに基づいて積分処理等の処理を開始する。積分処理は、各Rセンサ94及びLセンサ96から得た各セルの輝度信号を各セル毎に積分(加算)し、各セル毎の輝度信号の積分値(光量の積分値)を生成する処理である。尚、各セル毎の輝度信号の積分値を示す値としてAFセンサ74の受光セルから出力されるデータをセンサデータというものとすると、処理回路99がセンサデータとして実際に生成する値は、各セルの輝度信号の積分値を所定の基準値(基準電圧VREF)から減算した値であり、以下の説明においてセンサデータという場合には、この値をいうものとする。従って、センサデータは受光した光量が多い程、低い値を示す。但し、AFセンサ74から出力されるセンサデータは、各セルからの出力を各セルごとに積分した信号に基づく値であって、AFセンサ74で撮像した被写体の特徴を示すデータ(例えば、被写体のコントラストを示すデータ)であればよい。
【0024】
CPU60は、処理回路99から積分処理によって得られた各セルのセンサデータをセンサ番号と対応付けて取得する。これによって、CPU60はRセンサ94及びLセンサ96で撮像された画像(以下、センサ像という)を認識する。そして、詳細を後述するようにRセンサ94とLセンサ96のそれぞれのセンサ像の間で相関値演算を行い、相関が最も高くなるときのセンサ像のズレ量を求め、被写体90までの距離を算出する(三角測量の原理)。
【0025】
定量的には、被写体距離は、Rセンサ94とLセンサ96との間隔及び各センサからレンズ92までの距離、Rセンサ94及びLセンサ96の各セルのピッチ(例えば12μm)等を考慮して、センサ像のズレ量から算出することができる。センサ像のズレ量は、Rセンサ94とLセンサ96のそれぞれのセンサ像の間で相関値演算を行うことにより求めることができる。
【0026】
ここで、図4に示すように、本実施形態においてRセンサ94及びLセンサ96のセンサ領域は、それぞれ5分割される。これらの分割されたエリアを以下分割エリアというものとすると、分割エリアは、同図に示すように「右エリア」、「右中エリア」、「中央エリア」、「左中エリア」、「左エリア」から構成される。また、各分割エリアは、隣接する分割エリアと一部領域(セル)を共有している。相関値演算等の際には、Rセンサ94とLセンサ96の対応する各分割エリア間(同一名の分割エリア間)でそれぞれ個別に相関値演算が行われることになる。尚、本実施の形態では分割エリアはセンサ領域を5分割したものであるが、5分割以外の分割数であってもよい。
【0027】
次に、CPU60によって測距対象物との距離を算出する処理を、図5のフローチャートを参照しながら詳説する。
【0028】
まずステップS10において、CPU60はAFデータを取得する。ここで、センサデータからAFデータを生成する処理について説明する。上述のように、AFセンサ74の受光セルより出力されるデータをセンサデータとすると、AFセンサ74から出力された各センサデータをA/D変換回路により取得し、取得したセンサデータのA/D変換値そのものをCPU60における以降の各処理で使用するAFデータとする場合と、測距精度向上のためセンサデータに所定の処理を施したものをAFデータとする場合とが考えられる。前者の場合にはCPU60においてAFデータを生成するための特別の処理を行う必要はなく、センサデータの取得処理がAFデータの取得処理(AFデータ生成手段)となるが、後者の場合にはセンサデータの取得後、CPU60においてAFデータを生成するための特別の処理が行われることになる。後者の場合の例として、センサデータにコントラスト抽出処理を施したものを以降の各処理で使用するAFデータとすることができ、以下、センサデータにコントラスト抽出処理を施してAFデータを生成する場合の処理について説明する。
【0029】
コントラスト抽出処理は、例えば、あるセンサ番号(アドレスi)のセルに着目したときに、その着目したセルのセンサデータと、着目したセルに対してmセル分(m画素分)離間したセンサ番号(i+m)のセルのセンサデータとの差分を算出する演算処理である。言い換えると、Rセンサ94とLセンサ96から得たセンサデータのそれぞれについて、センサデータとそのセンサデータをm画素分シフトしたものとの差分を算出する処理である。即ち、Rセンサ94におけるセンサ番号(i)のセルのセンサデータをR(i)、Lセンサ96におけるセンサ番号(i)のセルのセンサデータをL(i)とすると、Rセンサ94のセンサデータに対しては、次式、
【数1】
の演算が行われ、Lセンサ96のセンサデータに対しては、次式、
【数2】
の演算が行われる。これによって得られた差分データは、AFセンサ74の各セルによって撮像されたセンサ像のコントラストを示す。尚、本明細書では、2画素分のセンサデータの差分によりコントラストを示すデータを算出する演算処理を2画素差分演算という。
【0030】
差分を取る2つのセンサデータの上記セル間隔mの値は、所望の設定値とすることができるが、以下の説明ではm=2とする。但し、AFセンサ74においてセンサ番号が偶数のセルで蓄積された電荷と奇数のセルで蓄積された電荷は、異なるチャンネルにより伝送され、処理されるため、上記差分データも同一チャンネル同士のセルのセンサデータから求めるのが好ましく、mの値としては偶数であることが望ましい。尚、上記式(1)及び式(2)により求めたデータは、CPU60でAFセンサ74から取得したセンサデータの数に比べてm個分減少するが、予めm個分減少することを考慮して上記データ取得範囲を拡大しておくことによって、必要なAFデータ数を確保することができる。
【0031】
従来においては、上記式(1)及び式(2)により得られた差分データをAFデータとしているが、本実施の形態では、その差分データに対して更に+128を加算する処理を加えたものをAFデータとする。即ち、Rセンサ94のセンサ番号iに対応するAFデータをAFR(i)とし、Lセンサ96のセンサ番号iに対応するAFデータをAFL(i)とすると、m=2の場合、次式、
【数3】
により得られた値をAFデータとする。
【0032】
次に、ステップ12において、CPU60は、AFセンサ74のRセンサ94及びLセンサ96の各分割エリアごとに、AFデータのコントラスト値の変化の度合いを示す指標値Wを算出し、この指標値Wに基づいて測距不能とするか否か判定する。すなわち、図8に示すように、AFデータのコントラスト値の変化が激しいときは、図9に示すように、これに基づいて演算される相関値もシフト量に対して激しく変動し、多数の極小値が生じてしまう。これにより、最高の相関を与える相関値を誤って選択して誤測距を生じるおそれが高い。従って、この指標値Wが基準値Rよりも大きいときは、コントラスト変化の度合いが大きいとしてステップS14に進み、測距不能として処理を終了することで、誤測距の発生を予め防止する。一方、指標値Wが基準値R以下のときは、コントラスト変化の度合いが小さいとしてステップS16に進む。なお、この処理の詳細については後述する。
【0033】
ステップS16では、CPU60はAFセンサ74のRセンサ94及びLセンサ96の各分割エリアごとに、ステップS10において取得したAFデータに基づいて、相関値f(n)(n=−2,−1,0,1,…,MAX(=38))を算出する。
【0034】
相関値の算出においては、AFセンサ74のRセンサ94及びLセンサ96からそれぞれ取り込んだAFデータの間で相関値演算を行い、相関が最も高くなるときのセンサ像のズレ量(左右のAFデータ間のシフト量)を求める。この左右のAFデータ間のシフト量から被写体の距離を求めることができる。
【0035】
尚、本実施形態では5つの分割エリアが設定されているため、右エリア、右中エリア、中央エリア、左中エリア、左エリアの各分割エリアごとに相関値演算を行う。
【0036】
図6において、94A及び96Aは、それぞれRセンサ94及びLセンサ96のうちのある分割エリアのセンサ(以下「採用センサ」という)である。また、94B及び96Bは、それぞれ採用センサ94A及び96AのAFデータから相関値演算に使用するAFデータを抽出するためのRウインドウ及びLウインドウである。
【0037】
ここで、Rウインドウ94BとLウインドウ96Bとのシフト量をn(n=−2,−1,0,1,…,MAX(=38))とすると、n=−2のときにRウインドウ94Bは採用センサ94Aの左端に位置し、Lウインドウ96Bは採用センサ96Aの右端に位置している。そして、n=−1のときにLウインドウ96Bは採用センサ96Aの右端から1セル分だけ左にシフトし、n=0のときにRウインドウ94Bは採用センサ94Aの左端から1セル分だけ右にシフトし、同様にしてnが1増加するごとにRウインドウ94BとLウインドウ96Bとは交互に1セルずつ移動する。そして、n=MAXのときにRウインドウ94Bは採用センサ94Aの右端に位置し、Lウインドウ96Bは採用センサ96Aの左端に位置する。
【0038】
いま、Rウインドウ94BとLウインドウ96Bとのあるシフト量nのときの相関値をf(n)とすると、相関値f(n)は、次式、
【数4】
で表すことができる。尚、式(4)において、iはウインドウ内のセルの位置(i=1,2,…wo(=42))を示す番号であり、R(i)及びL(i)は、それぞれRウインドウ94B及びLウインドウ96Bの同じセル位置iのセルから得られたAFデータ(コントラスト値)である。即ち、式(4)に示すように相関値f(n)は、Rウインドウ94B及びLウインドウ96Bの同じセル位置のセルから得られたAFデータの差分の絶対値の総和であり、相関が高い程、ゼロに近づく。
【0039】
従って、シフト量nを変えて相関値f(n)を求め、相関値f(n)が最も小さくなるとき(相関が最も高くなるとき)のシフト量nから被写体の距離を求めることができる。尚、被写体距離が無限遠のときに、シフト量n=0で相関が最も高くなり、被写体距離が至近端のときに、シフト量n=MAXで相関が最も高くなるように被写体像がRセンサ94及びLセンサ96に結像するようになっている。また、相関を求める演算式は、上式(4)に限らず、他の演算式を用いることができる。その場合において、相関が高いほど相関値が大きくなる場合があり、このときには、以下の説明における相関値についての大小関係を反転してその演算式において本実施の形態を適用する。例えば、上式(4)により算出した相関値の極小値は、極大値となり、また、上式(4)により算出した相関値について小さい又は大きいなどの文言は、大きい又は小さいなどの文言に反転して適用することができる。
【0040】
次に、ステップS18において、CPU60はステップS16において求めた相関値の中から極小値を検出する。極小値の検出においては、f(n−1)≧f(n)<f(n+1)の判断を実施する。そして、極小値が単数しか検出されなかった場合はその極小値を、また極小値が複数検出された場合にあっては最小の極小値を最小極小値として検出する。
【0041】
次に、ステップS20において、ステップS18で検出された最小極小値を与えるときのシフト量を、最高の相関を与える最高相関シフト量として検出する。そして、検出された最高相関シフト量を外気の気温等を勘案して距離に変換し、変換された距離を最終的な測距対象物との距離とする。
【0042】
ここで、上記したAF測距においては、ステップS12において説明した測距不能判定処理に特徴がある。すなわち、ステップS12では、各分割エリア毎にAFデータのコントラスト変化の度合いを示す指標値Wを算出する。この指標値Wの算出には、以下の式(5)を用いる。
【数5】
この式(5)において、C1Lは、
【数6】
で表される。ここで、L(i)はL採用センサ範囲内のi番目のセンサのセンサ出力(コントラスト値)を表す。従ってCL1は、L採用センサ範囲の隣接したセンサ出力間におけるコントラスト値の差の絶対値の和を示している。なお、Sは採用センサ数を示している。
【0043】
一方、式(5)において、C1Rは、
【数7】
で表される。ここで、R(i)はR採用センサ範囲内のi番目のセンサのセンサ出力(コントラスト値)を表す。従ってC1Rは、R採用センサ範囲の隣接したセンサ出力間におけるコントラスト値の差の絶対値の和を示している。なお、Sは採用センサ数を示している。
【0044】
また式(5)において、ΔCONTは、
【数8】
で表される。
【0045】
この式(8)において、RMAX及びRMINは、Rセンサ94の採用センサの全セルのAFデータの最大値及び最小値を示している。同様にLMAX及びLMINは、Lセンサ96の採用センサの全セルのAFデータのうち最大値及び最小値を示している。
【0046】
上記式(5)に基づいて指標値Wを算出し、この指標値Wが所定の基準値Rより大きいと判定されると、AFデータのコントラスト変化が大きく誤測距を生じるおそれが高いため、ステップS14に進み測距不能として以降の処理を行わない。
【0047】
一方、この指標値Wが所定の基準値R以下と判定されると、AFデータのコントラスト変化が小さく誤測距を生じるおそれが低いため、ステップS16に進んで以降の処理を継続する。
【0048】
ここで、上記(5)式で算出される指標値Wの意味合いについて、図7を参照して説明する。
【0049】
図7に示すように、ある採用センサ範囲内でn個のセンサ出力のコントラスト値C1〜Cnが得られたとする。このとき、上記式(6)及び式(7)でC1L及びC1Rを求めることは、コントラスト値の累積変動量、すなわち、y軸方向の総変動量を求めることに相当する。したがって、このコントラスト値の累積変動量と、コントラスト値の最大値と最小値との差Dとの比を算出することで、y軸方向の移動回数、すなわち、コントラスト変化の度合いを判定することができる。なお、本実施形態では、隣接するセンサ間をAFデータのサンプリング間隔としたが、例えば一つおきのセンサ間をサンプリング間隔としてもよい。ただし、サンプリング間隔は狭くする方が指標値Wの精度が高くなるため好ましい。
【0050】
次に、図8及び図9を参照して、ステップS12における指標値Wに基づく測距不能の判定について具体例を挙げて説明する。
【0051】
図8(a)及び図8(b)は、ある被写体からの光をAFセンサ74で受光したときの、Lセンサ出力及びRセンサ出力の一例を示している。図9は、このようなセンサ出力が得られるときの相関値を示すグラフである。
【0052】
図8に示す場合、太線で示す採用センサ範囲において、上記(6)式で示すC1Lは2213であり、また上記(7)式で示すC1Rは2166である。また、Lセンサ96におけるコントラスト差を示す(LMAX−LMIN)は90であり、Rセンサ94におけるコントラスト差を示す(RMAX−RMIN)は95であるため、上記(8)式で示すΔCONTは185である。よって、式(5)より指標値Wは、23.670と求められる。
【0053】
指標値Wの判定の基準値Rが例えば20と設定されているとすると、図8に示す場合は、指標値Wが基準値Rより大きいため、コントラスト変化が大きく誤測距が生じ易いと判断し、ステップS14に進んで測距不能として以降の処理は行わない。なお、上記した基準値Rは、予め実験して得られたデータに基づいて設定することができる。
【0054】
このように、AFデータのコントラスト変化の度合いを示す指標値Wが大きいときは、誤測距を生じるおそれが高いため予め測距不能とすることで、誤測距の発生を抑制することが可能となる。そして、このように予め測距不能と判定したときは相関値演算など以降の処理を避けることで、無駄な演算を省いて測距時間の短縮を図ることが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、上記した実施形態では、本発明をいわゆる写真機と呼ばれるカメラに適用しているが、この他にもデジタルスチールカメラやビデオカメラ等にも適用することができる。また、カメラ以外にも車間距離測定装置などに適用することもできる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、測距対象物の誤測距を抑制することが可能な測距装置及びこれを備えたカメラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る測距装置を備えたカメラを正面側から見た斜視図である。
【図2】本実施形態に係る測距装置を備えたカメラを背面側から見た斜視図である。
【図3】パッシブ方式によるAFセンサの構成を示した図である。
【図4】Rセンサ及びLセンサのセンサ領域における分割エリアを示した図である。
【図5】距離を算出する処理のフロー図である。
【図6】相関値演算を説明するための図である。
【図7】指標値Wの意味合いを説明するための図である。
【図8】具体的なセンサデータの例を示す図である。
【図9】図8に示すセンサデータに基づいて演算された相関値とシフト量との関係を示す図である。
【図10】従来の測距装置による測距を説明するための図である。
【図11】従来の測距装置による測距を説明するための図である。
【図12】従来の測距装置による測距を説明するための図である。
【符号の説明】
10…カメラ、34…シャッタボタン、60…CPU、72…ストロボ装置、74…AFセンサ、94…Rセンサ、96…Lセンサ、99…処理回路。
Claims (2)
- 複数の受光素子を含む一対のラインセンサに測距対象物からの光を結像させ、各受光素子から得られた信号に基づいて相関値演算用の一対のAFデータを生成するAFデータ生成手段と、
前記一対のラインセンサのうちの測距に使用する一対の採用センサ範囲から一対のAFデータを取得するAFデータ取得手段と、
前記一対の採用センサ範囲内において、相関値演算に使用する一対のAFデータを取得するための一対のウインドウ範囲を決定し、該一対のウインドウ範囲をシフトさせながら順次相関値を演算する相関値演算手段と、
前記相関値演算手段により演算された相関値に基づいて、最高の相関が得られるときの前記ウインドウ範囲のシフト量を検出し、該シフト量に基づいて前記測距対象物の距離を算出する測距対象物距離算出手段と、を備えた測距装置であって、
前記AFデータ取得手段により取得された前記一対のAFデータのコントラスト変化の度合いを示す指標値を算出し、該指標値に基づいて測距不能とするか否かを判定する測距不能判定手段を備え、
前記測距不能判定手段は、
前記AFデータ取得手段により取得された前記一対のAFデータをそれぞれ所定のサンプリング間隔でサンプリングし、隣接するサンプリング点におけるAFデータ間のコントラスト値の差の絶対値を加算して一対の加算値を算出すると共に、
前記AFデータ取得手段により取得された前記一対のAFデータのそれぞれについて、コントラスト値の最大値と最小値とを減算して一対のコントラスト差を算出し、
前記一対の加算値の和と前記一対のコントラスト差の和との比を前記指標値として算出することを特徴とする測距装置。 - 請求項1に記載の測距装置を備えたことを特徴とするカメラ。
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