JP3983906B2 - 酵素含有コンタクトレンズ用液剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズや酸素透過性ハードコンタクトレンズのための酵素含有コンタクトレンズ用液剤に関し、さらに詳しくは、安全で酵素の活性が高く優れた洗浄力を有するコンタクトレンズ用液剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズは直接目に挿入する医療用具であるが、その装用により蛋白、脂質、無機塩などの生体由来の汚れの付着は避けられない。またコンタクトレンズの取り扱いを手指で行うため、場合によっては化粧品、ハンドクリーム、ヘアスプレーなど体外からの汚染物質の付着も多く見られる。これらの汚れを放置すると、レンズの透過性が低下して見えにくくなり、装用感が悪化するのみならず、酸素透過性の低下が起こり、コンタクトレンズ自体の寿命を短縮し、さらには感染症など目に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
コンタクトレンズはハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズに大別されるが、より優れた装用感を目指して近年開発された酸素透過性の良いハードコンタクトレンズや含水性ソフトコンタクトレンズの場合には、素材の特性から汚れが一層付着し易いことから、その優れた特性を活かすためには汚染物質の除去が重要である。
【0003】
レンズに付着した蛋白質や脂肪の汚れを除去するために、蛋白質分解酵素や脂肪分解酵素を利用する方法があり、これらの酵素を含有する洗浄液剤などのケア用品は既に実用化されている。しかしながら、酵素は一般に水溶液中で不安定であることから、液体中で酵素を安定化する様々な方法が提案されている。例えば、蛋白分解酵素の活性を長期間安定に維持するために、水に混和性の有機性液体(特開平2−168224号公報)や、ホウ酸、ホウ砂(特開昭60−121417号公報)を配合する方法が開示された。しかしながら、これら従来法は、もっぱら酵素の安定化を目的としており、酵素活性を高め洗浄効果を増進することについては殆ど考慮されていない。実際、これらの酵素含有液を用いてコンタクトレンズを洗浄しても、酵素が安定化されているので十分な洗浄効果を得ることができないという問題があった。酵素の安定性及び活性に対するpHの影響は酵素により異なるが、コンタクトレンズ洗浄液剤に利用される多くの酵素が酸性〜中性のpH範囲で安定であり、アルカリ性側で活性が高い傾向を示す。そのような酵素の場合、安定化された状態では十分な活性を発揮できないことになる。
【0004】
一般に、酵素含有液剤を希釈することによる酵素安定化剤の濃度の低下、さらには希釈時に発生する弱い熱量により幾分活性が高まると考えられているが、その程度の変化ではコンタクトレンズに固着した汚れを洗浄するのに十分な酵素活性の上昇を期待することは到底できない。すなわち、通常のコンタクトレンズ用液剤においては、処理液が涙液に近いpH付近になるよう意図して、酵素含有液剤のpHを酵素の安定化に有効な酸性から中性のやや低いpH域に、希釈液剤のpHを涙液に近い中性付近のpHに設定している。従って、従来の方法で得られるレンズ処理液のpHは酵素の安定性には適するが、コンタクトレンズ洗浄液剤に利用される多くのタンパク分解酵素の至適pHからは外れていることになる。このような状況は、希釈液をコンタクトレンズ保存液やすすぎ液として使用することを意図した液剤の場合、希釈液のpHを涙液と同様のpH7.4前後に維持することが必要であることから、より顕著となる。
【0005】
例えば、特開平5−76587には、希釈して用いる酵素含有コンタクトレンズトレンズ用液剤が開示されているが、この液剤は、浸透圧を一定範囲に維持することで酵素を安定に保持するよう構成されたものである。この液剤も安定性に主眼が置かれており、洗浄時に酵素活性を高める必要性については考慮されていないことから、酵素活性の発現が十分でではなく、洗浄活性が弱いために、固着した汚れに対して満足できる洗浄効果が得られなかった。
【0006】
しかも、従来の安定化された状態の酵素を含有する処理液でコンタクトレンズを洗浄処理する場合には、洗浄後も酵素が失活せずに残存する可能性があり、万一すすぎが不充分である等の理由でコンタクトレンズに酵素が付着していると、それが目に対して悪影響を及ぼす恐れがあった。
一方、洗浄効果を高めるために酵素を多量に用いることは、アレルギーを惹起する恐れがあることや、製造コストが高くなる等の点から望ましくない。
なお、特開平5−186791号公報には、特定の高pH条件下において界面活性剤を含有させると、脂質汚れに対して強い洗浄力の洗浄液が得られると開示されているが、酵素の活性を高めることについては何ら言及されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
酵素による洗浄効果を高めるには至適pHで使用することが望ましいが、酵素含有液剤は酵素を安定に維持することが第一の目的であることから、その目的に沿ってpHが調整され安定化が図られており、希釈に際する安定化剤の濃度低下や僅かな発熱程度では安定化された酵素活性の十分かつ効果的な上昇は期待できない。
従って、コンタクトレンズを安全かつ有効に洗浄するために、酵素を安定に維持すると同時に酵素活性を高め、より優れた洗浄効果を示すコンタクトレンズ用液剤の開発が強く求められている。そのような液剤はコンタクトレンズの洗浄に有用であるのみならず、酵素使用量の低減や、レンズ上に不活化されないままの酵素が残存する危険性を回避する上でも有用である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討し、ある条件下で調製した酵素含有液剤と希釈液剤とを用いると、酵素を安定に保持すると同時に、混合後は酵素活性の発現に適したpHの処理液を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、酵素、多価アルコール及び緩衝剤を含有し、酸性〜中性に調整された第1液と、緩衝剤を含有し中性に調整された第2液からなり、これら2つの液を混合することにより調製されるコンタクトレンズ処理液が第1液及び第2液のいずれよりも高いpHを示すことを特徴とするコンタクトレンズ用液剤を提供するものである。
【0009】
本発明は、それぞれ異なるpH範囲の第1液と第2液とを混合した場合、通常は、これら2つの液のpH値の間のpHの液が得られると予測されるが、ある条件下でこれら2つの液を調製すると、得られた液のpH値は元の2つの液のいずれよりも高くなるという予想外の知見に基づくものである。
【0010】
本発明はまた、酵素、多価アルコール及び緩衝剤を含有し酸性又は中性に調整された第1液と、緩衝剤を含有し中性に調整された第2液とを混合することによっていずれの液よりも高いpHであるコンタクトレンズ処理液を調製し、該処理液にコンタクトレンズを浸漬することを特徴とするコンタクトレンズの洗浄方法を提供するものである。
本発明の液剤を構成する第1液は、少なくとも酵素安定化剤としての多価アルコールと、その安定化を増強するための緩衝剤を含有し、酵素の安定化に適した酸性〜中性のpH域に保持されている。また、第2液は、少なくとも緩衝剤を含有し、第1液を希釈するために用いると共に、コンタクトレンズの保存・すすぎ・消毒液としても利用し得るよう直接目に入れても安全な中性pH域に維持されている。
本発明における第1液と第2液との混合比は通常1:5〜1:200であり、1:10〜1:100が好ましい。
【0011】
上記のごとく、本発明のコンタクトレンズ用液剤は、酵素、多価アルコール及び緩衝剤を含有する第1液と緩衝剤を含有する第2液を1:5〜1:200の比率で混合して得られるコンタクトレンズ処理液のpHが第1液及び第2液のいずれよりも高いことを特徴とする。従って、混合後のpHがこれら第1及び第2液よりもアルカリ性側であって、使用する酵素の活性が高められるに十分なpH値にシフトすることを条件として、第1液には適当な緩衝剤と多価アルコールを、第2液には適当な緩衝剤を、それぞれ適当量含有させることができる。
即ち、第1液については酸性〜中性、好ましくはpH=5.0〜7.8、より好ましくはpH=6.0〜7.5に、第2液については中性付近、好ましくはpH=6.0〜8.0、より好ましくはpH=6.5〜7.8に調節する。なお、上記のpH値の組み合わせは必ずしも限定的なものでなく、酵素の種類によって適宜選択することができる。
【0012】
本発明の液剤に使用し得る緩衝剤は、第1液と第2液を混合した場合に、第1及び第2液のいずれよりも高いpHの処理液を与えることを条件として任意であり、ホウ酸及び/又はその塩、リン酸及び/又はその塩、クエン酸及び/又はその塩、炭酸系、酒石酸系、乳酸系、フタル酸系緩衝剤などが例示される。また、これら以外の緩衝剤や塩酸、水酸化ナトリウムなどのpH調節剤を加えてもよい。
酵素含有液剤である第1液に配合する緩衝剤として特に好ましいのは、酵素安定効果に優れるホウ酸及び/又はその塩の緩衝系である。
希釈液剤である第2液には、第1液と混合して得られる処理液のpHが第1液及び第2液のpHより塩基性となる緩衝剤を、適当な濃度配合する。第2液に配合する緩衝剤としては、このようなpHの変化を妨げない限り、特に限定されず、第1液に用いる緩衝剤や多価アルコールとの関係で適宜選択すればよい。
【0013】
第1液中の緩衝剤の濃度が0%又は低すぎると、酵素の安定化を増強することができず、また、濃度が20%よりも高いと、コンタクトレンズの物性に悪影響を及ぼすことがある。従って、緩衝剤の濃度は、酵素を安定に保つ濃度として、第1液中に1〜20%、第1液を第2液で希釈した後の処理液中の濃度は0.01〜2%であることが好ましい。
【0014】
本発明の液剤には、本発明の目的から、第1液と第2液を混合した際に酵素の洗浄効果を阻害しないことを条件として当該技術分野で酵素の安定化に用いられる任意の多価アルコールを、適当量含有させることができる。通常、第1液中の多価アルコール濃度は5〜95%であることが酵素の安定化に有効であり、5〜50%であることがより好ましい。有効な洗浄効果を得るためには希釈後の液剤中の濃度が0.05〜5%であることが望ましい。希釈後の液中の濃度がこれよりも高いとコンタクトレンズの物性に影響を及ぼす恐れがある。
本発明の液剤に配合しうる多価アルコールとしてグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。中でも酵素の安定化のみならず、脂質汚れの洗浄効果にも優れているグリセリン、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコールが特に好ましい。
第1液と第2液を混合して両者のpHよりもアルカリ性側のpHを示す処理液を得ることができる理由は必ずしも明らかでない。
【0015】
本発明液剤の第1液には、当該技術分野で用いられる蛋白質分解酵素又は脂肪分解酵素を1種又は2種以上、組み合わせて用いることができる。
蛋白質分解酵素は、その活性部位によって、セリンプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、カルボキシルプロテアーゼの4種類に大別される。本発明では、特に酸性pHにおいて安定に長期間保存され、洗浄活性の発現が中性からアルカリ性において高発現する酵素が好適に使用される。特に、バチルス属の生産するセリンプロテアーゼを用いると最も効果的である。具体例として「クリアレンズプロ」(ノボ・ノルディスクバイオインダストリー・ジャパン株式会社製)、「ビオプラーゼ」(ナガセ生化学工業株式会社製)、「アルカリプロテアーゼ」(協和エンザイム社製)「プロテアーゼN『アマノ』」(天野製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0016】
脂肪分解酵素としては、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属、バチルス属由来のリパーゼ等があり、それらの中から適宜選択して使用することができる。具体的には「クリアレンズリポ」(ノボ・ノルディスクバイオインダストリー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
酵素の使用量は、用いる酵素により異なるが、通常、第1液中に、合計濃度として、0.01〜10重量%程度含有されることが好ましい。従って、第2液と混合して得られる処理液中の好ましい酵素濃度は約0.00005〜2%である。
【0017】
さらに、本発明の第1液及び/又は第2液には、下記の当該技術分野で用いられる他の成分をも含有させることができる。
非イオン性界面活性剤は、酵素の安定化効果を高めると同時に、洗浄効果を増強しうる。非イオン性界面活性剤は第1液及び/又は第2液に含有させることが好ましい。配合量は、混合液中の濃度として、好ましくは、0.001〜10%、特に好ましくは0.01〜5%である。濃度が低すぎると、期待される酵素安定化効果や洗浄力が得られず、高すぎると、皮膚障害を生じる危険性がある。
【0018】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロプレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グルセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等がある。
【0019】
また、金属キレート剤には、コンタクトレンズに付着する涙液に由来すると考えられる無機塩類の汚れの除去効果が期待できる。金属キレート剤は第1液及び/又は第2液に含有させることが好ましい。金属キレート剤の具体例としては、エデト酸、エデト酸塩(エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム)等、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸及びその塩を挙げることができ、その配合量は、混合後の液剤中の含有量として、0.01%〜1%が好ましく、特に好ましくは、0.05%〜0.5%である。濃度が低すぎると充分な洗浄効果が期待できず、高すぎると酵素の安定性を低下させる可能性がある。
【0020】
さらに、殺菌剤を配合することにより、液全体を消毒剤として使用することや液に防腐力を付与することができる。殺菌剤は第2液に含有させることが好ましい。通常、殺菌と洗浄は異なる工程によって行われることから、レンズケアを煩雑にしており、同時に行うことができれば、使用者の操作が簡便になり好ましい。殺菌剤は酵素の洗浄効果を阻害することが知られているが、酵素の活性を高め、洗浄効果が十分に発揮される本発明の液剤であれば洗浄効果を損なうことなく殺菌剤を配合することが可能となる。殺菌剤としては、過酸化水素、塩化ベンザルコニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸又はその塩、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩等のビグアニド類、α−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)塩化アンモニウム−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチル塩化アンモニウム−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)塩化アンモニウム等の4級アンモニウム塩などが挙げられ、ビグアニド類及び4級アンモニウム塩が好ましい。配合する濃度は0.00001%〜0.1%が好ましい。
ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩を濃度0.00001〜0.001%で、あるいはα−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)塩化アンモニウム−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチル塩化アンモニウム−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)塩化アンモニウムを濃度0.0001〜0.01%で用いるのが特に好ましい。
【0021】
また、コンドロイチン硫酸ナトリウムやヒアルロン酸ナトリウムを配合することにより、洗浄力を高めると共にレンズの装用感を高める作用も期待できる。これは第2液に含有させることが好ましい。
【0022】
本発明に関して、その洗浄効果を損なわない限り、上記記載の成分以外に、防腐剤、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、アミノ酸類、保存剤、無機塩類等の必要な公知成分を適宜配合することができる。
防腐剤としてソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル類、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられ、第1液及び/又は第2液に含有させることができる。
また、pH調整剤として塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム等、等張化剤としてグリセリン、ブドウ糖、マンニトール等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N―アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、、第1液及び/又は第2液に含有させることができる。
【0023】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリアルキルアミノエチルグリシン等があり、第1液及び/又は第2液に含有させることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の好ましい実施の形態を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
【表1】
【表2】
【0025】
(1)第1液(酵素含有液剤)の調製
表1、E1の欄に記載の成分を混合し精製水にて100mlとして調製した。E1は900単位のバチラス属由来タンパク分解酵素(アルカリプロテアーゼ;協和エンザイム社)、グリセリン40g、ホウ砂10g及びポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩0.00015gを含有しpH6.2である。
E1と同様にして表1記載のE2〜E6を製した。
(2)第2液(希釈液剤)の調製
表2、D1の欄に記載の成分を混合し精製水にて100mlとして調製した。D1は塩化ナトリウム0.5g、ホウ酸0.15g及びホウ砂0.015gを含み、pHは7.4である。
D1と同様にして表2に記載のD2〜D6を製した。
【0026】
以下の表3に記載のように、各酵素含有液剤E1〜E6を対応する希釈液剤D1〜D6で希釈し処理液1〜6を調製した。
【表3】
表3に記載のごとく、得られた処理液のpHは第1液及び第2液のいずれよりも高い。
【0027】
試験例1
実施例1に記載の酵素含有液剤E1を希釈液剤D1で25倍に希釈して得た処理液(pH8.1)を試験液として用い、洗浄力効果を評価した。
卵白アルブミン1.0g、塩化リゾチーム0.1g、豚胃ムチン0.1gを量り取り、100mlのリン酸緩衝液に溶解してpHを7.2とした人工涙液を調製し、この液5mlに未使用のコンタクトレンズ▲1▼(ブレス・オーTM:東レ社製)又はコンタクトレンズ▲2▼(ワンディアキュビューTM:ジョンソン&ジョンソン社製)を浸漬し、約8時間37℃で震盪した。
レンズ▲1▼の過剰な人工涙液を生理食塩水ですすぎ、試験液1.5mlとともにレンズケース中に浸漬し、煮沸器にて煮沸し、さらに15時間浸漬した。新しい試験液に交換してこの操作を3回繰り返した。
レンズ▲2▼は、過剰な人工涙液を生理食塩水ですすぎ、試験液1.5mlとともにレンズケース中に約15時間浸漬した。新しい液に交換してこの操作を3回繰り返した。
最後にレンズを生理食塩水ですすいだ後、レンズの状態を強光下、目視で観察した。
その結果、いずれのレンズも汚れは認められず、試験液の洗浄効果が高いことが確認された。
【0028】
【発明の効果】
本発明にかかる酵素含有コンタクトレンズ用液剤は、酵素の安定性、目に対する安全性を確保した第1液と、涙液付近のpHに調整され、該第1液と混合して第1液のみならず自身のpHよりも高く酵素活性の発現に適したpHに移行するよう構成された第2液からなる。従って、本発明の液剤によれば少ない酵素量で高い洗浄効果が得られるので低い酵素濃度でも短時間で十分な洗浄効果を達成することができ、酵素の大量使用によるアレルギー反応の回避や製造コストの低下が可能となる。また、混合後の処理液中では酵素の活性が高く、逆に安定性は低下しているので、洗浄後に酵素は速やかに失活することから、万一すすぎが不充分であっても残存酵素による目への悪影響は最小限に抑えられる。また、第2液は涙液に近いpHであり、単独でもコンタクトレンズ保存液や消毒液として使用できるものであることから、コンタクトレンズ装用時には希釈液をすすぎ液として用いれば、より安全である。
Claims (8)
- (A)0.5〜4.3w/v%の酵素、20〜50w/v%の多価アルコール、及び3.1〜10.0w/v%の緩衝剤を含有し、酸性〜中性に調整された第1液と、
(B)0.055〜0.32w/v%の緩衝剤、0.5〜0.65w/v%の無機塩類、0.05〜0.15w/v%の非イオン性界面活性剤、及び0.003〜0.05w/v%の金属キレート剤を含有し、中性に調整された第2液からなり、
(C)第1液の希釈率が15〜50倍となるように第1液と第2液を混合することにより調製されるコンタクトレンズ処理液がpH8.0以上となることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤。 - さらに、第1液及び/又は第2液が、0.00001〜0.00015w/v%の殺菌剤、及び/又は0.05〜0.25w/v%のコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する、請求項1記載の液剤。
- 酵素が、バチラス属由来のアルカリプロテアーゼである、請求項1又は2に記載の液剤。
- 多価アルコールがグリセリン及び/又はプロピレングリコールである、請求項1〜3のいずれかに記載の液剤。
- 第1液の緩衝剤が、ホウ酸及び/又はホウ砂である、請求項1〜4のいずれかに記載の液剤。
- 第2液の緩衝剤が、ホウ酸、ホウ砂、リン酸2水素カリウム、及び/又はリン酸水素2ナトリウム・12水和物である、請求項1〜5のいずれかに記載の液剤。
- 第1液を第2液で希釈した後の処理液中の緩衝剤の濃度が0 . 01〜2w/v%である、請求項1〜6のいずれかに記載の液剤。
- ソフトコンタクトレンズ用である、請求項1〜7のいずれかに記載の液剤。
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