JP3983149B2 - 光ピックアップの対物レンズ駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ピックアップの対物レンズ駆動装置に関し、特にチルト駆動機能を有する光ピックアップの対物レンズ駆動装置に関する。
【0002】
【従来技術】
情報をディスクに記録再生する光ピックアップでは、ディスク上の記録トラックにレーザビームを合焦させながら追従させる必要がある。このため、光ピックアップは、対物レンズをディスク面に垂直な方向に駆動制御するフォーカス制御装置と、記録トラックに垂直な方向に駆動するトラッキング制御装置とを有し、レーザビームの合焦ずれとトラックずれを補正している。
【0003】
しかし、ディスクの反りや光ピックアップとディスクとの調整ずれ等があると、ディスクの径方向の切断面は水平とはならず、上または下に傾くので、対物レンズの光軸もディスク面に対して垂直状態から傾く。このため、コマ収差が発生し、光ピックアップの記録再生特性を劣化させる。
【0004】
そこで、かかる不都合を解消するために、対物レンズを搭載し、フォーカス方向に境界線でN極とS極との2極に分けて着磁したマグネットを対向して固定し、これら2つのマグネットによって挟まれた磁気ギャップ内に、フォーカスコイル、トラッキングコイルおよびチルトコイルが装着されたコイルユニットを配置した光ピックアップの対物レンズ駆動装置が知られている。ここで、チルトコイルは直列に接続された2つのコイルからなり、互いに逆向きに電流が流れるように巻かれて、マグネットのN極とS極との境界線上に、ディスク内周側と外周側に並んで配置されている。
【0005】
このチルトコイルに電流を流すと、マグネットからの磁界によって2つのチルトコイルには、それぞれフォーカス方向に逆の力が働く。このため、対物レンズ駆動装置は傾き、対物レンズの光軸をディスクに対して垂直になるように補正することができる。
【0006】
かかる対物レンズ駆動装置は、その可動部であるコイルユニットにフォーカスコイル、トラッキングコイルに加えてチルトコイルを設けるムービングコイルタイプである。このため、それぞれのコイルに通電するとともに、各コイルを保持するため、各種コイルごとに2本ずつ、合計6本のサスペンションワイヤが必要となる。
【0007】
この6本のサスペンションワイヤは、対物レンズ駆動装置の側面に沿って、片側3本ずつディスクに対して平行になるように、つまりフォーカス方向に片側3本ずつ並べて配置されており、その端部はそれぞれ各種コイルの両端に電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−92916号公報(第3−5頁、第1−4図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サスペンションワイヤを対物レンズ駆動装置の側面に3本ずつ配置する際に、それぞれのサスペンションワイヤを精度よく、かつ同じように構成しなければ不要共振が発生して、光ピックアップの記録再生特性を劣化させる原因となる。
【0010】
特に、薄型用の対物レンズ駆動装置の場合、その側面の幅は約2mmと非常に狭いにもかかわらず、この部分に3本のサスペンションワイヤを平行に配置しなければならないので、組立作業が難しく、組立誤差が増加するので、不要共振が発生しやすいという問題がある。
【0011】
また、対物レンズ駆動装置の側面にサスペンションワイヤを3本ずつ配置するので、フォーカス方向の剛性が増して合焦しにくくなるので、感度が低下するという問題もある。
【0012】
それゆえに、この発明の主たる目的は、チルトコイルをマグネットを介して、または直接フレームに固定するので、チルトコイルに接続するサスペンションワイヤが不要になる。このため、対物レンズ駆動装置の組立誤差を少なくして光ピックアップの記録再生特性の劣化を防止するとともに、感度の低下も防止できる対物レンズ駆動装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、対物レンズが組み込まれた可動部と磁気回路が配置された基体とを備え、ディスクに光を照射する光ピックアップの対物レンズ駆動装置であって、可動部は、ディスクに垂直な方向に対物レンズを駆動するフォーカスコイルとフォーカスコイルに通電するとともに可動部を保持する第1サスペンションワイヤとを含み、磁気回路は、基体に固定された対向する1対のマグネットと、互いに逆方向に巻かれて直列に接続された少なくとも2個のチルトコイルとを含み、チルトコイルは少なくとも一方のマグネットに所定の距離を隔ててディスク内周側とディスク外周側とに形成された孔にそれぞれ挿入され、フォーカスコイルの一部が1対のマグネットで挟まれた磁気ギャップ内に配置され磁気ギャップ内の磁界がフォーカスコイルに流れる電流に作用することによって対物レンズのチルトを制御する、光ピックアップの対物レンズ駆動装置である。
【0014】
【作用】
この発明の対物レンズ駆動装置は、対物レンズが組み込まれた可動部と磁気回路が配置された基体であるフレームとを備えている。可動部は、ディスクに垂直な方向に対物レンズを駆動するフォーカスコイルとフォーカスコイルに通電するとともに可動部を保持する2本の第1サスペンションワイヤとを含み、基体の磁気回路は、対向して基体に固定された1対のマグネットと、互いに逆方向に巻かれて直列に接続された少なくとも2個のチルトコイルを含んでいる。このチルトコイルは、少なくとも一方のマグネットに所定の距離を隔ててディスク内周側とディスク外周側とに形成された孔に挿入される。このようにチルトコイルは基体に固定されたマグネットの孔に挿入されているので、チルトコイルを保持するサスペンションワイヤは不要となり、可動部の側面に取り付けるサスペンションワイヤの本数を減らすことができる。このため、対物レンズ駆動装置の組立誤差を少なくすることができる。また、同じマグネットに配置されたチルトコイルは互いに逆向きに巻かれて直列に接続されているので、チルトコイルに電流を流すと、各チルトコイルは逆方向の磁界を発生させる。このチルトコイルによる磁界とマグネットによる磁界との合成磁界がフォーカスコイルに流れる電流に力を及ぼすことにより、対物レンズ駆動装置をチルト制御して、対物レンズの光軸がディスクに対して垂直になるように補正される。
【0015】
また、2つのチルトコイルは、磁気ギャップ内のディスク内周側のチルトコイルにより生じる磁界の方向がマグネットによる磁界の方向とは逆方向になるように巻かれ、ディスク外周側のチルトコイルにより生じる磁界の方向はマグネットによる磁界の方向と同じ方向になるように巻かれていることが好ましい。この場合、マグネットによる磁界とチルトコイルによる磁界が合成されて、ディスク内周側ではマグネットによる磁界よりも弱くなり、ディスク外周側ではマグネットによる磁界よりも強くなる。なお、チルトコイルによる磁界の強さは、チルトコイルに流す電流によって制御することができる。
【0017】
また、磁気回路は、4個のチルトコイルを含み、これらのチルトコイルは1対のマグネットの各々に形成された孔にそれぞれ挿入されていることが好ましい。1対のマグネットのいずれか一方に形成された孔にのみチルトコイルが挿入されている場合と比べて、磁気ギャップ内の磁界の強さを精度よく制御できるので、対物レンズの光軸をディスクに対して垂直にする補正を容易に行うことができる。
【0018】
また、可動部は、さらにディスクに平行な方向に対物レンズを駆動するトラッキングコイルと、トラッキングコイルに通電するとともに可動部を保持する2本の第2サスペンションワイヤとを含んでいることが好ましい。この場合、対物レンズ駆動装置は記録トラックに垂直な方向に移動して、トラックずれを補正することができる。
【0019】
また、フォーカスコイルを保持する2本の第1サスペンションワイヤと、トラッキングコイルを保持する2本の第2サスペンションワイヤは、可動部の両側面に、ディスクに対して平行になるようにして、片側面2本ずつ配置されていることが好ましい。この場合、特に薄型用の対物レンズ駆動装置では、その側面の幅が非常に狭いが、片側面に2本ずつ平行に配置すればよいので、組立作業がやりやすく、組立誤差も少なくすることができる。
【0020】
【発明の効果】
この発明によれば、チルトコイルを、マグネットを介してまたは直接フレームに固定するので、可動部にチルトコイルを接続する場合に必要となるサスペンションワイヤが不要になる。このため、対物レンズ駆動装置の組立誤差を少なくすることができるので、組立誤差による光ピックアップの記録再生特性の劣化およびサスペンションワイヤの本数が多くなることによる感度の低下を、チルト制御ができない対物レンズ駆動装置と同程度に抑えることができる。
【0021】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0022】
【実施例】
図1を参照して、光ピックアップの対物レンズ駆動装置の第1実施例について説明する。対物レンズ駆動装置10は、可動部12とフレーム(基体)24を含む。可動部12は、レンズホルダ14を含み、このレンズホルダ14には、対物レンズ16がディスク表面に対して平行になるように組み込まれている。さらに、このレンズホルダ14には、1つのフォーカスコイル18と2つの直列に接続されたトラッキングコイル20a、20bが収納されている。
【0023】
このレンズホルダ14の側面には、サスペンションワイヤ22が片側に2本ずつ、合計4本配置されており、この4本のサスペンションワイヤ22で可動部12を保持している。また、2つのトラッキングコイル20a、20bは、互いに逆向きに巻かれて直列に接続されており、レンズホルダ14内で、それぞれディスクの内周側と外周側に位置するように配置されている。
【0024】
そして、フォーカスコイル18とトラッキングコイル20a、20bの両端には、レンズホルダ14の側面に配置されているサスペンションワイヤ22の端部が電気的に接続されている。つまり、サスペンションワイヤ22は可動部12を保持すると同時に、各コイルに通電するという役割を有している。
【0025】
次に、フレーム24はヨークを兼ねており、その中央付近に所定の間隔をあけて対向する2つの折り曲げ部26a、26bを有している。この折り曲げ部26a、26bには、それぞれ永久磁石からなるマグネット30,32が対向して固定されている。
【0026】
各マグネット30(32)には、同じ高さの位置に並んで2つの貫通孔36a、36b(36c、36d)が設けられており、各貫通孔36a、36b(36c、36d)にはそれぞれチルトコイル34a、34b(34c、34d)が挿入されている。これらのマグネット30,32とチルトコイル34a、34b、34c、34dはヨークとともに磁気回路を構成している。
【0027】
ここで、2組のチルトコイル34a、34bとチルトコイル34c、34dには、それぞれ通電するために図示しない配線が接続されている。これらのチルトコイル34a、34b、34c、34dは可動部12に収納されているのではなく、フレーム24に固定されている。このため、チルトコイル34a、34b、34c、34dに接続されている配線は、フォーカスコイル18などのサスペンションワイヤ22と異なり、チルトコイル34a、34b、34c、34dに通電できればよいので、サスペンションワイヤ22を用いる必要はない。
【0028】
したがって、必要なサスペンションワイヤ22は、フォーカスコイル18に接続する2本と、トラッキングコイル20a、20bに接続する2本の合計4本でよいので、レンズホルダ14の片側側面に2本ずつ配置すればよい。特に、薄型用の対物レンズ駆動装置10の場合、その側面の幅は約2mmと非常に狭いが、この幅に2本の配線を配置することは比較的容易に行なうことができる。このため、組立誤差が少なくなるので記録再生特性の劣化を防止できるとともに、感度の低下も防止できる。
【0029】
このフレーム24に可動部12を組み込むと、フレーム24の折り曲げ部26a、26bにそれぞれ固定されたマグネット30とマグネット32とに挟まれた空間である磁気ギャップ28内に、可動部12のレンズホルダ12に収納されたフォーカスコイル18の一部と2つのトラッキングコイル20a、20bが配置された状態となる。
【0030】
フレーム24には、フレームサポート38が取り付けられ、さらにその外側には接続基板40が取り付けられている。そして、レンズホルダ12の側面に取り付けられた4本のサスペンションワイヤ22は、平行を保ったままフレームサポート38を通して、接続基板40に固定されると同時に電気的にも接続される。
【0031】
次に、図2を参照してマグネット30,32とチルトコイル34a、34b、34c、34dとの関係について説明する。フレーム24の折り曲げ部26a、26bに固定された各マグネット30(32)には、それぞれ同じ高さの位置に2つの貫通孔36a、36b(36c、36d)が並んで設けられている。これらの貫通孔36a、36b(36c、36d)は、対物レンズ駆動装置をディスクに対してセットしたときに、ディスクの内周側と外周側に位置するように設けられている。
【0032】
各貫通孔36a、36b(36c、36d)にはそれぞれチルトコイル34a、34b(34c、34d)が1個ずつ挿入されており、2つのチルトコイル34a、34b(34c、34d)は、互いに逆向きに巻かれて直列に接続されている。
【0033】
したがって、チルトコイル34a、34b(34c、34d)に電流を流すと、ディスクの内周側の貫通孔36a(36c)に挿入されたチルトコイル34a(34c)によって発生する磁界の方向と、ディスクの外周側の貫通孔36b(36d)に挿入されたチルトコイル34b(34d)によって発生する磁界の方向とは互いに逆方向となる。
【0034】
また、2つのマグネット30,32は、対向して、それぞれ折り曲げ部26a、26bに固定されている。これら2つのマグネット30,32は、それぞれN極とS極の永久磁石であるので、磁気ギャップ28内に、一様な強さの磁界が生じる。たとえば、マグネット30がN極、マグネット32がS極の永久磁石の場合には、図の矢印で示すように、マグネット30からマグネット32に向かう方向の磁界が生じる。
【0035】
また、各マグネット30(32)のディスク内周側の貫通孔36a(36c)に挿入されたチルトコイル34a(34c)は反時計回りに巻かれ、ディスク外周側の貫通孔36b(36d)に挿入されたチルトコイル34b(34d)は時計回りに巻かれている。
【0036】
なお、磁気ギャップ28内にはフォーカスコイルの一部および2つのトラッキングコイルが配置されているが、図2では省略されている。
【0037】
図3を参照して、2つのマグネット30に挟まれた空間である磁気ギャップ28内の磁界について説明する。図3(a)は、図2に示すフレーム24の折り曲げ部26aに固定されたマグネット(第1マグネット)30とマグネット(第2マグネット)32とに挟まれた磁気ギャップ28の平面図である。ここで、第1マグネット30をN極からなる永久磁石、第2マグネット32をS極からなる永久磁石とした場合、磁気ギャップ28には一様な強さの磁界が生じ、その方向は、矢印Aで示すように第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向、すなわちX方向である。
【0038】
次に、各マグネット30(32)に挿入されたチルトコイル34a、34b(34c、34d)に電流を流すことによって生じる磁界について説明する。図3(b)に示すように、ディスクの内周側の貫通孔に挿入されているチルトコイル34a(34c)は反時計回り(矢印Dの方向)に巻かれている。
【0039】
このため、このチルトコイル34a(34c)による磁界は、右ねじの法則により、図3(a)の矢印Bで示すように、2つのマグネット30,32による磁界の方向(矢印Aの方向)とは逆方向である第2マグネット32から第1マグネット30に向かう方向に生じる。このときの、磁界の強さは、チルトコイル34a、34cに流す電流の大きさによって決まるが、マグネット30,32による磁界の強さよりも弱くしておく。
【0040】
したがって、ディスク内周側の2つのチルトコイル34a、34cによって挟まれた磁気ギャップ28内の磁界の方向は、2つのマグネット30,32による磁界の方向と同じである。しかし、その強さは、マグネット30,32による磁界が、チルトコイル34a、34cによる磁界によって一部打ち消されるので、マグネット30,32だけによる磁界の強さに比べて弱くなる。
【0041】
一方、図3(b)に示すように、ディスクの外周側の貫通孔36b、36dに挿入されているチルトコイル34b、34dは時計回り(矢印Eの方向)に巻かれている。このため、このチルトコイル34b、34dによる磁界は、右ねじの法則により、図3(a)の矢印Cで示すように、2つのマグネット30,32による磁界の方向(矢印Aの方向)と同じ方向である、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向に生じる。このときの、磁界の強さは、チルトコイル34b、34dに流す電流の大きさによって決まるが、マグネット30,32による磁界の強さよりも弱くしておく。
【0042】
したがって、ディスク外周側の2つのチルトコイル34b、34dによって挟まれた磁気ギャップ28内の磁界の方向は、2つのマグネット30,32による磁界の方向と同じである。また、その強さは、マグネット30,32による磁界に、チルトコイル34b、34dによる磁界が加わるので、マグネット30,32だけによる磁界の強さに比べて強くなる。
【0043】
つまり、この場合の磁気ギャップ28内の磁界の方向は、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向で一定であるが、その強さはディスクの内周側ではマグネット30,32による磁界よりも弱く、また外周側ではマグネット30,32による磁界よりも強くなっている。
【0044】
また、永久磁石であるマグネット30,32だけでなく、電磁石であるチルトコイル34a、34b、34c、34dも用いているので、チルトコイル34a、34b、34c、34dに流れる電流の大きさを変えることにより、磁気ギャップ28内の磁界の強さを任意の値に変えることができる。
【0045】
また、図3(a)およびその断面図である図3(c)からわかるように、フォーカスコイル18の一部が、磁気ギャップ28内で、2つのマグネット30、32に挿入されたチルトコイル34a、34bとチルトコイル34c、34dで挟まれている。
【0046】
したがって、フォーカスコイル18に接続されているサスペンションワイヤを通して電流を流すと、フォーカスコイルは磁気ギャップ28内の磁界から、フレミングの右手の法則による力を受ける。この力の方向は、図3(a)の紙面に垂直方向、すなわち光軸方向に働き、その大きさは磁気ギャップ28内でのフォーカスコイル18の位置の磁界の強さとフォーカスコイル18を流れる電流の大きさによって決まる。
【0047】
なお、既に図1で説明したように、逆方向に巻かれた2つのトラッキングコイル20a、20bも磁気ギャップ28内でディスクの半径方向に並んで配置されている。このトラッキングコイル20a、20bに、サスペンションワイヤ22を通して電流を流すと、トラッキングコイル20a、20bも、磁気ギャップ28内の磁界から力を受ける。
【0048】
しかし、この力はディスクの半径方向の力であるので、対物レンズ駆動装置10のチルト制御に影響を与えない。このため、上述の対物レンズ駆動装置10のチルト制御の説明では、トラッキングコイル20a、20bに関する説明を省略した。
【0049】
次に、ディスクの反りの方向と対物レンズ駆動装置との関係について説明する。まず、図4に示すように、ディスク42が上向きに反っている場合の対物レンズ駆動装置10のチルト制御について説明する。ディスク42が上向きに反っていると、対物レンズの軸がディスク42の面に対して垂直の状態から傾く。この状態でディスク42の面に合焦させるフォーカス制御を行なっても、対物レンズの軸の傾きは解消しないので、球面収差が発生する。
【0050】
そこで、フォーカス制御時にチルトコイル34a、34b、34c、34dにより、磁気ギャップ28内の磁界の強さを、ディスク外周側で強くし、ディスク内周側で弱くする。この状態で上向き(ディスク42に近づく方向)にフォーカス制御を行なうと、対物レンズのディスク外周側がディスク42に近づく方向により強い駆動力を受け、その結果ディスク42の反りと同じ方向に対物レンズが傾いた状態でフォーカス制御が行なわれる。これにより、ディスク42の反りによる対物レンズの傾きが解消されるので、球面収差の発生が抑制される。
【0051】
具体的には、既に図3(a)で説明したように、磁気ギャップ28内の磁界の方向は、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向で、その大きさは、ディスク内周側で弱く、ディスク外周側で強くなっている場合に、フォーカスコイル18に反時計回りに電流を流す。このとき、フォーカスコイル18の磁気ギャップ28にある部分は紙面の裏面から表面に向かう力、すなわち光軸方向でディスク42に近づく向きの力を受ける。
【0052】
しかし、磁気ギャップ28内ではディスク42の内周側のチルトコイル34a、34cに挟まれた領域よりも、外周側のチルトコイル34b、34dに挟まれた領域の磁界の強さが強い。したがって、フォーカスコイル18が受ける力の強さも、ディスク内周側のチルトコイル34a、34cに挟まれた領域にあるフォーカスコイル18の部分よりも、外周側のチルトコイル34b、34dに挟まれた領域にあるフォーカスコイル18の部分が強い上向きの駆動力を受ける。
【0053】
このため、チルトコイル34a、34b、34c、34dに流れる電流の大きさを制御することにより、ディスク42の反り量に合わせて、対物レンズをディスク42の反りと同じ上向きに傾けて、ディスク42と対物レンズの距離を一定に保つことができる。
【0054】
次に、図5に示すように、ディスク42が下向きに反っている場合の対物レンズ駆動装置10のチルト制御について説明する。ディスク42が下向きに反っていると、対物レンズの軸がディスク42の面に対して垂直の状態から傾く。このときの対物レンズの軸の傾きの方向は、図4のディスク42が上向きに反っている場合とは逆方向である。この状態でディスク42の面に合焦させるフォーカス制御を行なっても、対物レンズの軸の傾きは解消しないので、球面収差が発生する。
【0055】
そこで、フォーカス制御時にチルトコイル34a、34b、34c、34dにより、磁気ギャップ28内の磁界の強さを、ディスク外周側で強くし、ディスク内周側で弱くする。この状態で下向き(ディスク42から遠ざかる方向)にフォーカス制御を行なうと、対物レンズのディスク外周側がディスク42から遠ざかる方向により強い駆動力を受け、その結果ディスク42の反りと同じ方向に対物レンズが傾いた状態でフォーカス制御が行なわれる。これにより、ディスク42の反りによる対物レンズの傾きが解消されるので、球面収差の発生が抑制される。
【0056】
具体的には、既に図3(a)で説明したように、磁気ギャップ28内の磁界の方向は、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向で、その大きさは、ディスク内周側で弱く、ディスク外周側で強くなっている場合に、フォーカスコイル18に時計回りに電流を流す。このとき、フォーカスコイル18の磁気ギャップ28にある部分は紙面の表面から裏面に向かう力、すなわち光軸方向でディスク42から遠ざかる向きの力を受ける。
【0057】
しかし、磁気ギャップ28内ではディスク内周側のチルトコイル34a、34cに挟まれた領域よりも、外周側のチルトコイル34b、34dに挟まれた領域の磁界の強さが強い。したがって、フォーカスコイル18が受ける力の強さも、ディスク内周側のチルトコイル34a、34bに挟まれた領域にあるフォーカスコイル18の部分よりも、外周側のチルトコイル34b、34dに挟まれた領域にあるフォーカスコイル18の部分が強い下向きの駆動力を受ける。
【0058】
このため、チルトコイル34a、34b、34c、34dに流れる電流を制御することにより、ディスク42の反り量に合わせて、対物レンズをディスク42の反りと同じ下向きに傾けて、ディスク42と対物レンズの距離を一定に保つことができる。
【0059】
なお、上述の説明では、ディスク内周側のチルトコイル34a、34cは反時計回りに巻かれ、ディスク外周側のチルトコイル34b、34dは時計回りに巻かれているとしてきた。
【0060】
しかし、これらのチルトコイル34a、34cとチルトコイル34b、34cは互いに逆向きに巻かれていればよく、この巻き方に限定されない。つまり、ディスク内周側のチルトコイル34a、34cは時計回りに巻かれ、ディスク外周側のチルトコイル34b、34dは反時計回りに巻かれていてもよい。
【0061】
ただし、この場合には第1マグネット30をS極、第2マグネット32をN極として、マグネット30,32による磁界も逆にしないと、ディスク内周側のフォーカス駆動力が、外周側の駆動力よりも強くなってしまい、ディスク42の反りにあわせたチルト制御ができなくなる。
【0062】
次に、第1実施例の変形例である第2実施例〜第5実施例について説明する。これらは、第1実施例と磁気回路の構成が異なる。まず、図6を参照して、対物レンズ駆動装置の第2実施例について、第1実施例と異なる点を説明する。対向する2つのマグネット30,32のうち、N極の第1マグネット30にのみ貫通孔36a、36bを設けてチルトコイル34a、34bを挿入し、S極の第2マグネット32には貫通孔を設けず、したがってチルトコイルも挿入されていない。そして、これらのマグネット30,32はフレーム24の折り返し部26a、26bに固定されている。この場合、磁気ギャップ内の磁界の向きは矢印で示すように、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向である。
【0063】
次に、図7を参照して、対物レンズ駆動装置の第3実施例について、第2実施例と異なる点を説明する。対向する2つのマグネット30,32のうち、第2実施例の場合とは逆に、S極の第2マグネット32に貫通孔36c、36dを設けてチルトコイル34c、34dを挿入し、N極の第1マグネット30には貫通孔を設けず、したがってチルトコイルも挿入されていない。そして、これらのマグネット30,32はフレーム24の折り返し部26a、26bに固定されている。この場合も、磁気ギャップ内の磁界の向きは矢印で示すように、第1マグネット30から第2マグネット32に向かう方向である。
【0064】
さらに、図8を参照して、対物レンズ駆動装置の第4実施例について、第1実施例と異なる点について説明する。チルトコイル34a、34bを直接フレーム24の折り曲げ部26aに固定し、一方、S極の第2のマグネット32には貫通孔を設けず、したがってチルトコイルも挿入しないで、折り曲げ部26b固定されている。この場合、磁気ギャップ内の磁界の向きは矢印で示すように、チルトコイル34a、34bから第2マグネット32に向かう方向である。
【0065】
最後に、図9を参照して、対物レンズ駆動装置の第5実施例について、第4実施例と異なる点について説明する。第4実施例の場合とは逆に、2つのチルトコイル34c、34dを直接フレーム24の折り曲げ部26bに固定し、一方、N極の第1マグネット30は貫通孔を設けず、したがってチルトコイルも挿入しないで折り曲げ部26aに固定されている。この場合、磁気ギャップ内の磁界の向きは矢印で示すように、第1マグネット30からチルトコイル34c、34dに向かう方向である。
【0066】
これらの、第2実施例から第5実施例の場合の動作原理は第1実施例の場合と同じである。
【0067】
ここで、第1実施例から第5実施例の各チルトコイルに同じ電圧をかけた(同じ電流を流した)場合に、対物レンズがどの程度傾くかをあらわす電圧感度(電流感度)の比較を行なうと、第1実施例の場合が最も大きく、次に2つのマグネットを有する第2実施例と第3実施例の場合が大きく、最も小さいのはマグネットが1つしかない第4実施例と第5実施例の場合である。
【0068】
一方、製造の容易さを考えると、電圧感度(電流感度)の場合とは逆に、構造の簡単な順に、第4実施例と第5実施例の場合が最も製造しやすく、次に第2実施例と第3実施例の場合が製造しやすく、最も製造しにくいのは複雑な構造の第1実施例である。
【0069】
したがって、第1実施例から第5実施例のいずれの対物レンズ駆動装置を選択するかは、必要とする電圧感度(電流感度)と製造の容易さの両面を考慮して決めればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例を示す図解図である。
【図2】第1実施例の一部を示す図解図である。
【図3】第1実施例の動作原理を示す図解図である。
【図4】第1実施例の動きを示す図解図である。
【図5】第1実施例の動きを示す図解図である。
【図6】この発明の第2実施例を示す図解図である。
【図7】この発明の第3実施例を示す図解図である。
【図8】この発明の第4実施例を示す図解図である。
【図9】この発明の第5実施例を示す図解図である。
【符号の説明】
10…対物レンズ駆動装置
12…可動部
16…対物レンズ
18…フォーカスコイル
20a、20b…トラッキングコイル
22…サスペンションワイヤ
24…フレーム
28…磁気ギャップ
30…(第1)マグネット
32…(第2)マグネット
34a、34b、34c、34d…チルトコイル
36a、36b、36c、36d…貫通孔
42…ディスク

Claims (5)

  1. 対物レンズが組み込まれた可動部と磁気回路が配置された基体とを備え、ディスクに光を照射する光ピックアップの対物レンズ駆動装置であって、
    前記可動部は、前記ディスクに垂直な方向に前記対物レンズを駆動するフォーカスコイルと前記フォーカスコイルに通電するとともに前記可動部を保持する第1サスペンションワイヤとを含み、
    記磁気回路は、前記基体に固定された対向する1対のマグネットと、互いに逆方向に巻かれて直列に接続された少なくとも2個のチルトコイルとを含み、前記チルトコイルは少なくとも一方の前記マグネットに所定の距離を隔ててディスク内周側とディスク外周側とに形成された孔にそれぞれ挿入され
    前記フォーカスコイルの一部が1対の前記マグネットで挟まれた磁気ギャップ内に配置され、前記磁気ギャップ内の磁界が前記フォーカスコイルに流れる電流に作用することによって対物レンズのチルトを制御する、光ピックアップの対物レンズ駆動装置。
  2. ディスク内周側に配置された前記チルトコイルはその磁界の方向が前記マグネットによる磁界の方向とは逆方向になるように巻かれ、ディスク外周側に配置された前記チルトコイルはその磁界の方向が前記マグネットによる磁界の方向と同じ方向になるように巻かれた、請求項1記載の光ピックアップの対物レンズ駆動装置。
  3. 前記磁気回路は、4個のチルトコイルを含み、前記チルトコイルは1対の前記マグネットの各々に対向して2個ずつ形成された前記孔にそれぞれ挿入された、請求項1または2記載の光ピックアップの対物レンズ駆動装置。
  4. 前記可動部は、その一部が前記磁気ギャップ内に配置されたトラッキングコイルと、前記トラッキングコイルに通電するとともに前記可動部を保持する第2サスペンションワイヤとをさらに含み、前記トラッキングコイルに通電することによって前記ディスクに平行な方向に前記対物レンズを駆動する、請求項1ないしのいずれかに記載の光ピックアップの対物レンズ駆動装置。
  5. 記第1サスペンションワイヤと記第2サスペンションワイヤは、前記可動部の両側面に前記ディスクに対して平行に配置された、請求項記載の光ピックアップの対物レンズ駆動装置。
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