JP3983125B2 - 核酸の分離精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸を分離精製する方法に関する。より詳細には、本発明は、RNAとDNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸は、様々な分野で種々の形態で使用されている。例えば、組換え核酸技術の領域においては、核酸をプローブ、ゲノム核酸、およびプラスミド核酸の形状で用いることを要求する。
【0003】
診断分野においても、核酸は種々の方法で用いられている。例えば、核酸プローブは、ヒトの病原体の検出および診断に日常的に用いられている。同様に核酸は遺伝障害の検出に用いられている。核酸はまた食品汚染物質の検出にも用いられている。さらに、核酸は遺伝地図の作製からクローニングおよび組換え発現におよぶ種々の理由により、興味ある核酸の位置確認、同定および単離において日常的に用いられている。
【0004】
多くの場合、核酸は極めて少量でしか入手できず、そして単離および精製操作が煩雑で時間を要する。このしばしば時間を消費する煩雑な操作は核酸の損失に結びつきやすい。血清、尿およびバクテリアのカルチャーから得られた試料の核酸の精製においては、コンタミネーションおよび疑陽性の結果が生じるという危険性も加わる。
【0005】
広く知られた精製方法の一つに、核酸を二酸化珪素、シリカポリマー、珪酸マグネシウム等の表面に吸着させ、引き続く洗浄、脱着等の操作によって精製する方法がある(例えば、特公平7−51065号公報)。この方法は、分離性能としては優れているが、同一性能の吸着媒体の工業的大量生産が困難であり、かつ取扱いが不便で、種々の形状に加工しがたい等の問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、検体中の核酸を固相表面に吸着させた後、洗浄等を経て脱着させて核酸を分離精製する方法を提供することである。本発明の別の目的は、分離性能に優れ、洗浄効率が良く、加工が容易であり、実質的に同一の分離性能を有するものを大量に生産可能である固相を使用した核酸の分離精製方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、RNAとDNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、核酸を固相に吸着及び脱着させる過程を含む核酸の分離精製方法において、前記固相として有機高分子を使用し、二個の開口を有する容器内に上記固相を収容した核酸分離精製ユニットを使用することによって、RNAとDNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、有機高分子から成る固相に、RNAとDNAを含む核酸混合物中の核酸を吸着及び脱着させる工程を含む、該核酸混合物からRNAを分離精製する方法が提供される。
【0009】
好ましくは、有機高分子はアセチルセルロースであり、さらに好ましくは、トリアセチルセルロースである。
好ましくは、有機高分子は表面鹸化率0〜50%のアセチルセルロースであり、さらに好ましくは、表面鹸化率0〜20%のアセチルセルロースである。
好ましくは、アセチルセルロースは多孔膜または非孔性膜である。
好ましくは、アセチルセルロースはビーズにコーティングされている。
【0010】
好ましくは、本発明の方法では、有機高分子から成る固相に、試料溶液中の核酸を吸着及び脱着させる。
好ましくは、試料溶液は、細胞又はウイルスを含む検体を核酸可溶化試薬で処理して得られた溶液に水溶性有機溶媒を添加した溶液である。
好ましくは、核酸可溶化試薬は、グアニジン塩、界面活性剤およびタンパク質分解酵素である。
【0011】
好ましくは、本発明の方法は、有機高分子から成る固相に核酸を吸着させた後、核酸洗浄バッファを用いて固相を洗浄し、次いで固相に吸着した核酸を脱着せしめうる液を用いて固相に吸着した核酸を脱着させる工程を含む。
好ましくは、核酸洗浄バッファは、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はn−プロパノールを20〜100重量%含む溶液である。
好ましくは、固相に吸着した核酸を脱着せしめうる液は、塩濃度が0.5M以下の溶液である。
【0012】
好ましくは、少なくとも2個の開口を有する容器内に有機高分子から成る固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う。
【0013】
さらに好ましくは、(a) 有機高分子から成る固相、(b) 前記固相を収容する、少なくとも2個の開口を有する容器、及び(c) 前記容器の一の開口に結合された圧力差発生装置を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う。
【0014】
好ましくは、本発明の方法は以下の工程により行うことができる。
(a) 検体を用いて核酸を含む試料溶液を調製し、核酸分離精製ユニットの一の開口を上記の核酸を含む試料溶液中に挿入する工程、
(b) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸を含む試料溶液を吸引し、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(c) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸を含む試料溶液を容器外に排出する工程、
(d) 核酸分離精製ユニットの一の開口を核酸洗浄バッファ中に挿入する工程、
(e) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸洗浄バッファを吸引し、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(f) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸洗浄バッファを容器外に排出する工程、
(g) 核酸分離精製ユニットの一の開口を、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液中に挿入する工程、
(h) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を吸引し、固相に接触させる工程、及び
(i) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を容器外に排出する工程。
【0015】
好ましくは、本発明の方法は以下の工程で行うこともできる。
(a) 検体を用いて核酸を含む試料溶液を調製し、核酸分離精製ユニットの一の開口に上記の核酸を含む試料溶液を注入する工程、
(b) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を含む試料溶液を、他の開口より排出することによって、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(c) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に核酸洗浄バッファを注入する工程、
(d) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸洗浄バッファを上記他の開口より排出することによって、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(e) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を注入する工程、
(f) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を脱着せしめうる液を上記他の開口より排出させることによって、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の核酸の分離精製方法は、RNAとDNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製する方法に関するものであり、有機高分子から成る固相に、RNAとDNAを含む核酸混合物中の核酸を吸着及び脱着させる工程を含むことを特徴とする。
本発明において「核酸」は一本鎖、二本鎖のいずれでもよく、また、分子量の制限も無い。
【0017】
本発明で用いる核酸混合物は、RNAとDNAを含む混合物を意味する。DNAとRNAを含む限り、核酸混合物中の核酸の種類は特に制限されず、また混合物中に含まれる核酸の種類の数も制限されない。個々の核酸の長さも特に限定されず、例えば、数bp〜数Mbpの任意の長さの核酸を使用することができる。取り扱い上の観点からは、核酸の長さは一般的には、数bp〜数百kbp程度である。
【0018】
固相として使用する有機高分子としては、アセチルセルロースが好ましい。アセチルセルロースしては、モノアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースの何れでもよいが、特にはトリアセチルセルロースが好ましい。本発明では、表面鹸化したアセチルセルロースを固相として使用することもできるが、表面鹸化していないアセチルセルロースを使用する方が好ましい。表面鹸化したアセチルセルロースを使用する場合、表面鹸化率は低い方が好ましく、具体的には、表面鹸化率0〜50%のアセチルセルロース、さらに好ましくは表面鹸化率0〜20%のアセチルセルロースを使用することができる。
以下の実施例で示す通り、高い表面鹸化率(実施例では表面鹸化率100%)を有するアセチルセルロースを使用するとRNAとDNAが両方とも回収されるのに対し、低い表面鹸化率(実施例では未鹸化)を有するアセチルセルロースを使用するとRNAだけが選択的に回収できることが今回判明した。本発明はこの性質を利用することにより、RNAとDNAを含む混合物からRNAを選択的に回収する方法を提供するものである。
【0019】
ここで表面鹸化とは、鹸化処理液(例えば、NaOH)が接触する表面だけが鹸化されることを言う。本発明において表面鹸化したアセチルセルロースを使用する場合には、固相の構造体はアセチルセルロースのままで、固相の表面だけが鹸化されていることが好ましい。これにより、表面鹸化処理の程度(表面鹸化度)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。
【0020】
有機高分子の表面積を大きくするためには、有機高分子を膜化することが好ましい。また、アセチルセルロースは多孔膜でも非孔性膜でもよいが、膜を多孔性とすることが更に好ましい。
【0021】
例えば、トリアセチルセルロースの膜は、商品名TACベースとして富士写真フイルムから市販されており、トリアセチルセルロースの多孔膜としては、ミクロフィルターFM45(富士写真フイルム(株)製)などがある。
また、例えばポリエチレン製のビーズの表面にトリアセチルセルロースの膜を形成してもよい。この場合、トリアセチルセルロースはビーズにコーティングされることになる。ビーズの素材は、核酸を汚染等しなければよく、ポリエチレンには限定されない。
【0022】
本発明では、上記したような有機高分子から成る固相、好ましくはアセチルセルロースから成る固相、さらに好ましくはトリアセチルセルロースから成る固相、例えば、ミクロフィルターFM45(富士写真フイルム(株)製)を固相として用い、該固相にRNAとDNAを含む核酸混合物中の核酸を吸着及び脱着させることにより、該核酸混合物からRNAを選択的に分離精製することができる。上記したような有機高分子から成る固相を用いることによってRNAを選択的に分離精製できることが従来報告がなく、本発明者らにより今回初めて明らかにされたことである。
【0023】
本発明の核酸の分離精製方法では、好ましくは、少なくとも2個の開口を有する容器内に有機高分子から成る固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行うことができる。
【0024】
さらに好ましくは、(a)有機高分子から成る固相、(b) 前記固相を収容する、少なくとも2個の開口を有する容器、及び(c) 前記容器の一の開口に結合された圧力差発生装置を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行うことができる。
【0025】
この場合の本発明の核酸の分離精製方法の第一の実施態様は、以下の工程を含むことができる。
(a) 核酸分離精製ユニットの一の開口を核酸を含む試料溶液中に挿入する工程、
(b) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸を含む試料溶液を吸引し、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(c) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸を含む試料溶液を容器外に排出する工程、
(d) 核酸分離精製ユニットの一の開口を核酸洗浄バッファ溶液中に挿入する工程、
(e) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸洗浄バッファ溶液を吸引し、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(f) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸洗浄バッファ溶液を容器外に排出する工程、
(g) 核酸分離精製ユニットの一の開口を、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液中に挿入する工程、
(h) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を吸引し、固相に接触させる工程、及び
(i) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を容器外に排出する工程。
【0026】
本発明の核酸の分離精製方法の第二の実施態様は、以下の工程を含むことができる。
(a) 検体を用いて核酸を含む試料溶液を調製し、核酸分離精製ユニットの一の開口に上記の核酸を含む試料溶液を注入する工程、
(b) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を含む試料溶液を、他の開口より排出することによって、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(c) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に核酸洗浄バッファを注入する工程、
(d) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸洗浄バッファを上記他の開口より排出することによって、有機高分子から成る固相に接触させる工程、
(e) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を注入する工程、
(f) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を脱着せしめうる液を上記他の開口より排出させることによって、有機高分子から成る固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
【0027】
有機高分子を用いた核酸の分離精製方法についてさらに具体的に説明する。本発明では、好ましくは、核酸を含む試料溶液を有機高分子から成る固相に接触させることにより試料溶液中の核酸を固相に吸着させ、次いで、固相に吸着させた核酸を、以下に説明する好適な溶液を用いて固相から脱着させる。さらに好ましくは、核酸を含む試料溶液は、細胞又はウイルスを含む検体を細胞膜及び核膜を溶解する溶液で処理することにより核酸を液中に分散させた溶液に水溶性有機溶媒を添加した溶液である。
【0028】
本発明において使用できる核酸を含む試料溶液に制限はないが、例えば診断分野においては、検体として採取された全血、血漿、血清、尿、便、精液、唾液等の体液、あるいは植物(又はその一部)、動物(またはその一部)など、あるいはそれらの溶解物およびホモジネートなどの生物材料から調製された溶液が対象となる。
【0029】
最初にこれらの検体を、細胞膜を溶解して核酸を可溶化する試薬を含む水溶液で処理する。これにより細胞膜および核膜が溶解されて、核酸が水溶液内に分散する。
細胞膜の溶解および核酸の可溶化のためには、例えば、対象となる試料が全血の場合、▲1▼赤血球の除去、▲2▼各種タンパク質の除去、及び▲3▼白血球の溶解及び核膜の溶解が必要となる。▲1▼赤血球の除去および▲2▼各種タンパク質の除去は、固相への非特異吸着および多孔膜の目目詰まりを防ぐために、▲3▼白血球の溶解及び核膜の溶解は、抽出の対象である核酸を可溶化させるためにそれぞれ必要となる。特に、▲3▼白血球の溶解及び核膜の溶解は重要な工程であり、本発明の方法では、この工程で核酸を可溶化することが必要である。例えば、塩酸グアニジン、Triton−X100、プロテアーゼK(SIGMA製)を添加した状態で60℃で10分インキュベートすることによって上記の▲1▼、▲2▼及び▲3▼を同時に達成することができる。
【0030】
本発明で用いる核酸可溶化試薬としては、グアニジン塩、界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含む溶液が挙げられる。
グアニジン塩としては、塩酸グアニジンが好ましいが、他のグアニジン塩(イソチオシアン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン)を使用することもできる。グアニジン塩の溶液中の濃度は、0.5M以上6M以下、好ましくは、1M以上5M以下である。
【0031】
界面活性剤としてはTriton−X100を使用することができるが、この他にも、SDS、コール酸ナトリウム又はサルコシンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、Tween20又はメガファック等のノニオン性界面活性剤、その他各種両性界面活性剤を使用することもできる。本発明では、ポリオキシエチレンオキチルフェニルエーテル(Triton−X100)等のノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤の溶液中の濃度は、通常0.05重量%〜10重量% 特に好ましくは0.1重量%〜5重量%である。
【0032】
タンパク質分解酵素としては、プロテアーゼKを使用することはできるが、他のプロテアーゼでも同様の効果を得ることができる。プロテアーゼは酵素であるため加温するのが好ましく、37℃〜70℃で使用することが好ましく、特に50℃〜65℃で使用することが好ましい。
【0033】
このように核酸が分散した水溶液中に、水溶性有機溶媒を添加して、有機高分子と接触させる。この操作により、試料溶液中の核酸が有機高分子に吸着される。本明細書中上記した操作で可溶化された核酸を、有機高分子から成る固相に吸着させるためには、可溶化した核酸混合液に水溶性有機溶媒を混合することと、得られた核酸混合液中に塩が存在することが必要である。
【0034】
即ち、核酸の周りに存在する水分子の水和構造を破壊することにより、核酸は不安定な状態で可溶化することになる。この状態の核酸を、有機高分子から成る固相と接触させると、核酸表面上の極性基と固相表面の極性基間で相互作用し、核酸は固相表面上に吸着するものと考えられる。本発明の方法では、可溶化した核酸混合液に水溶性有機溶媒を混合することと、得られた核酸混合液中に塩が存在することによって、核酸を不安定な状態にさせることができる。
DNAの糖の部分はデオキシリボースであるのに対し、RNAではリボースである。このため、1塩基当たり水酸基がRNAは1つ多くなっており、この分、固相表面上の極性基との相互作用が発生しやすくなっている。この相互作用の強さを利用して、RNAとDNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製している。
【0035】
ここで用いる水溶性有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール又はプロパノールなどが挙げられ、中でもエタノールが好ましい。水溶性有機溶媒の濃度は、好ましくは5重量%〜90重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜60重量%である。エタノールの添加濃度は、擬集物を生じない程度でできるだけ高くすることが特に好ましい。
【0036】
得られた核酸混合液中に存在する塩としては、各種カオトロピック物質(グアニジウム塩、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム)や塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム等が好ましい。特にグアニジウム塩は、細胞膜の溶解および核酸の可溶化の効果を併有するので特に好ましい。
【0037】
次いで、この核酸が吸着した有機高分子を核酸洗浄バッファ溶液に接触させる。この溶液は核酸と一緒に有機高分子に吸着した試料溶液中の不純物を洗い流す機能を有する。従って、有機高分子から核酸は脱着させないが不純物は脱着させる組成を有する必要がある。核酸洗浄バッファ溶液は主剤と緩衝剤、及び必要に応じて界面活性剤を含む水溶液からなる。主剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−イソプロパノール、ブタノール、アセトン等の約10〜100重量%(好ましくは約20〜100重量%、さらに好ましくは約40〜80重量%)の水溶液が、緩衝剤及び界面活性剤としては、既述の緩衝剤及び界面活性剤が挙げられる。これらの内では、エタノール、Tris及びTriton−X100を含む溶液が好ましい。Tris及びTriton−X100の好ましい濃度は、それぞれ10〜100mM、及び0.1〜10重量%である。
【0038】
次に、有機高分子に吸着した核酸を脱着せしめうる溶液に、上記洗浄後の有機高分子を接触させる。この溶液には目的とする核酸が含まれているので、これを回収し、後に続く操作、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による核酸の増幅に提供する。核酸を脱着せしめうる溶液としては、塩濃度が低いことが好ましく、特に好ましくは0.5M以下の塩濃度の溶液を使用する。この溶液としては、精製蒸留水、TEバッファ等が使用できる。
【0039】
本発明で使用する核酸分離精製ユニットは、少なくとも2個の開口を有する容器内に有機高分子から成る固相を収容した核酸分離精製ユニットである。
容器の材料に特別な限定はなく、有機高分子が収容でき、かつ少なくとも2個の開口を設けることができればよいが、製造の容易性からプラスチックが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート等の透明あるいは不透明の樹脂を用いるのが好ましい。
【0040】
容器の概念図を図1に示す。基本的には、固相の収容部を持ち、収容部に固相を収容でき、固相が試料液等の吸引及び排出時に収容部の外へは出ることがなく、開口に圧力差発生装置、例えば注射器を接合できればよい。このためには、容器が当初は二つの部分に分かれており、固相を収容した後で一体化できることが好ましい。また、固相が収容部から外へでることをさける為には、固相の上下にDNAを汚染しない材料で作成されたメッシュを置くことができる。
【0041】
上記容器に収容される有機高分子の形状にも特別な限定は無く、円形、正方形、長方形、楕円、膜の場合には筒状、巻物状、あるいは有機高分子をコーティングしたビーズ等、任意の形状で良いが、製造適性の点からは、円、正方形、円筒状、巻物状等の対称性の高い形状及びビーズが好ましい。
【0042】
上記容器の一の開口を核酸を含む試料溶液中に挿入し、他の一の開口から吸引して有機高分子に試料溶液を接触させ、これを排出し、次いで核酸洗浄バッファ溶液を吸引・排出し、次いで、有機高分子に吸着した核酸を脱着せしめうる溶液を吸引・排出して、この排出液を回収することにより、目的とする核酸を得ることができる。
【0043】
有機高分子を、核酸を含む試料溶液、核酸洗浄バッファ溶液、及び有機高分子に吸着した核酸を脱着せしめうる溶液中に順次浸漬しても目的とする核酸を得ることができる。
【0044】
本発明で使用する核酸分離精製ユニットは、(a) 有機高分子から成る固相、(b) 前記固相を収容する、少なくとも2個の開口を有する容器、及び(c) 前記容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、を含むものであることが好ましい。以下、この核酸分離精製ユニットについて説明する。
【0045】
容器は、通常、有機高分子から成る固相を収容する本体と、蓋体に分けた態様で作製され、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられている。一方は核酸を含有する試料溶液、核酸洗浄バッファ溶液及び固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液(以下、「試料溶液等」と記す。)の入口及び出口として使用され、他方は容器内を減圧又は加圧状態にせしめうる圧力差発生装置に接続される。本体の形状に特に限定はないが、製造が容易で、試料溶液等が固相の全面に拡散し易くするには、断面を円形にすることが好ましい。断面を四角形にすることも、固相の裁断屑を発生させないために好ましい。
【0046】
上記蓋は、圧力差発生装置によって容器内部を減圧及び加圧状態にできるように本体に接合されている必要があるが、この状態が達成できれば、接合方法は任意に選択できる。例えば、接着剤の使用、ねじ込み、はめ込み、ネジ止め、超音波加熱による融着等が挙げられる。
【0047】
容器の内容積は処理すべき試料溶液の量のみによって決められるが、通常、収容される固相の体積で表す。即ち、厚さが約1mm以下(例えば、50〜500μm程度)で、直径が約2mm〜20mmの固相を1枚〜6枚程度収容する大きさとすることが好ましい。
【0048】
固相の端面は、試料溶液等が通過しない程度に、容器の内壁面に密着させることが好ましい。
【0049】
試料溶液等の入り口に使用される開口に対向する固相の下は、容器の内壁に密着させずに空間を設け、試料溶液等が固相の全面にできるだけ均等に拡散する構造にする。
【0050】
他の一の開口、即ち圧力差発生装置に結合される開口に対向する固相の上には、ほぼ中央に穴を穿った部材を設けることが好ましい。この部材は、固相を押さえると共に、試料溶液等を効率よく排出する効果を有するものであり、液が中央の穴に集まる様に、漏斗状あるいはお椀状等の斜面を有する形状にすることが好ましい。この穴の大きさ、斜面の角度、部材の厚さは、処理する試料溶液等の量や固相を収容する容器の大きさ等を考慮して、当業者が適宜定めることができる。この部材と当該開口の間には、オーバーフローした試料溶液等を溜めて、圧力差発生装置内に吸引されることを防ぐための空間を設けることが好ましい。この空間の大きさも当業者が適宜選択することができる。なお、核酸を効率良く集めるためには、固相の全体が浸る以上の量の核酸を含む試料溶液を吸引することが好ましい。
【0051】
また、吸引している開口の真下の部分にのみ試料溶液等が集中することを防いで、試料溶液等が固相内を比較的均一に通過できるようにするため、固相とこの部材の間にも空間を設けることが好ましい。このためには、当該部材から固相に向けて複数の突起物を設けることが好ましい。突起物の大きさや数は当業者が適宜選択することができるが、空間を保持しながら固相の開口面積をできる限り大きく保つことが好ましい。
【0052】
なお、容器に3以上の開口を設けた場合には、減圧及び加圧操作に伴う液の吸引及び排出を可能にすべく、余分の開口を一時的に封鎖する必要があることはいうまでもない。
【0053】
圧力差発生装置は、まず固相を収容した容器内を減圧にして核酸を含む試料溶液を吸引する。圧力差発生装置としては、注射器、ピペッタ、あるいはペリスタポンプのような吸引及び加圧が可能なポンプ等が挙げられる。これらの内、手動操作には注射器が、自動操作にはポンプが適している。また、ピペッタは片手操作が容易にできるという利点を有する。好ましくは、圧力差発生装置は、前記容器の一の開口に着脱可能に結合されている。
【0054】
次に、上記した核酸分離精製ユニットを使用した、核酸の精製方法について説明する。先ず、核酸を含む試料溶液中に、上記の核酸分離精製ユニットの一の開口を挿入する。次いで他の一の開口に接続された圧力差発生装置を用いて精製ユニットの内部を減圧にして試料溶液を容器内に吸入する。この操作により、試料溶液が固相と接触して試料溶液中にある核酸が固相に吸着する。この際に、固相のほぼ全体と接触する量の試料溶液を吸引することが好ましいが、圧力差発生装置内に吸引すると装置を汚染するので、適量に調整する。
【0055】
適量の試料溶液を吸引後、圧力差発生装置を用いてユニットの容器内を加圧して、吸引した液を排出する。この操作までに間隔を開ける必要はなく、吸引後直ちに排出してもよい。
【0056】
次に、上記と同様の減圧−加圧操作で核酸洗浄バッファ溶液を容器内に吸引し、これから排出して容器内部を洗浄する。この溶液は容器内に残留する試料溶液を洗い流すと共に、核酸と一緒に固相に吸着した試料溶液中の不純物も洗い流す機能を有する。従って、固相から核酸は脱着させないが不純物は脱着させる組成を有する必要がある。核酸洗浄バッファ溶液は主剤と緩衝剤、及び必要に応じて界面活性剤を含む水溶液からなり、主剤としてはメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、アセトン等の約10〜90%(好ましくは約50〜90%)の水溶液が、緩衝剤及び界面活性剤としては、既述の緩衝剤及び界面活性剤が挙げられる。これらの内では、エチルアルコール、Tris及びTriton−X100を含む溶液が好ましい。Tris及びTriton−X100の好ましい濃度は、それぞれ10〜100mM、及び0.1〜10%である。
【0057】
次に、固相に吸着した核酸を脱着せしめうる溶液を、上記と同様の減圧−加圧操作によって容器内部に導入し、容器から排出する。この排出液には目的とする核酸が含まれているので、これを回収し、後に続く操作、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による核酸の増幅に提供することができる。
【0058】
図2は、本発明の核酸分離精製ユニットの一例の断面図である。但し圧力差発生装置は図示していない。固相を収容する容器1は、本体10と蓋20から成り、透明なポリスチレンで形成されている。本体10は固相30として表面鹸化したトリアセチルセルロースの膜を収容している。また、試料溶液等を吸引する開口101を有する。開口から続いている底面102は漏斗状に形成され、固相30との間に空間121が設けられている。固相30を支えて空間121を保つために、底面102と一体となった枠103が設けられている。
【0059】
本体は、内径が20.1mm、深さが5.9mm、底面102から開口101までの長さは約70mmである。また、内蔵されている固相30の直径は20.0mm、一枚の厚さは約50〜500μmであり、厚さの一例としては100μmである。
【0060】
図2において、固相の上部には漏斗状の押さえ部材13が設けられている。押さえ部材13の中央には穴131があり、かつ下方に一群の突起132が設けられ、固相30との間に空間122が設けられている。固相30と本体10の壁104の間から試料溶液等が漏れにくい様に、壁104の上部の直径は固相の直径より大きく作成され、段差105の上に押さえ部材13の端が乗っている。
【0061】
蓋20は本体10と超音波加熱により接合されている。蓋20のほぼ中央部には、圧力差発生装置を結合する開口21が設けられている。蓋20と押さえ部材13の間には、穴131から流出する試料溶液等を保持する空間123が設けられている。空間123の容積は約0.1mlである。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【実施例】
(1)核酸精製用カートリッジの作成
内径7mm、厚さ2mmの核酸吸着用の固相を収容する部分を持つ核酸精製用カートリッジをハイインパクトポリスチレンで作成した。作成した核酸精製用カートリッジの構造を図3に示す。この核酸精製用カートリッジは、試料吸引口、核酸吸着固相収納部、及び試料排出口を有しており、試料排出口側に吸引ポンプを接続して、試料を吸引する。
【0063】
(2)核酸吸着固相の作成
核酸吸着固相として、富士ミクロフィルターFM45(富士写真フイルム製)(ポアサイズ0.45μm)を使用した。この固相はトリアセチルセルロース(未鹸化品)から成るものである。比較用の固相としては、富士ミクロフィルターFR250(富士写真フイルム製;ポアサイズ2.5μm;表面鹸化率100%のトリアセチルセルロース)を使用した。これらの固相を上記(1)で作成した核酸精製用カートリッジの核酸吸着固相収納部に収容した。
【0064】
(3)核酸精製用吸着バッファ溶液及び洗浄バッファ溶液の調製
表1に示す処方の核酸精製用吸着バッファ溶液及び洗浄バッファ溶液を調製した。
【0065】
【表1】
(吸着バッファ)
塩酸グアニジン(ライフテクノロジー社製) 382g
Tris(ライフテクノロジー社製) 12.1g
Triton-X100(ICN製) 10g
蒸留水 1000ml
(洗浄バッファ)
10mM Tris−HCl 65%エタノール
【0066】
(4)核酸精製操作
1.3kbpのDNAを含む水溶液(50ng/μl)およびトータルRNA(Human)を含む水溶液(50ng/μl)を用意した。各々の水溶液200μlに吸着バッファー200μlおよびエタノール200μlを加え、攪拌した。攪拌後、上記(1)及び(2)で作成した核酸精製用固相を有する核酸精製用カートリッジを用いて液を吸引・排出した。
さらに、洗浄バッファ500μlを吸引・排出することにより、カートリッジおよび吸着固相上の不純物を洗浄した。
最後に、蒸留水200μlを吸引し、この液を回収した。
【0067】
(5)核酸の回収量の定量
上記回収した液の260nmの光吸収測定により、核酸の回収量を定量した。その結果を表2および図4に示す。また、回収液を用いてアガロースゲル電気泳動を行った結果を図5に示す。
【0068】
【表2】
Figure 0003983125
【0069】
表2、図4および図5の結果から分かるように、有機高分子から成る本発明の固相に核酸を吸着させることにより、RNAを選択的に回収できることが判明した。
【0070】
【発明の効果】
分離性能に優れ、洗浄効率が良く、加工が容易であり、実質的に同一の分離性能を有するものを大量に生産可能である固相を用いた本発明の核酸の分離精製方法により、DNAとRNAを含む核酸混合物からRNAを分離精製することができる。更に、本明細書に記載した核酸分離精製ユニットを使用することにより、操作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の核酸分離精製ユニットの概念図である。
【図2】図2は、本発明の核酸分離精製ユニットの一例である。但し、開口21に結合されるべき圧力差発生装置は図示していない。図2において、1は容器、10は本体、101は開口、102は底面、103は枠、104は壁、105は段差、121は空間、122は空間、123は空間、13は押さえ部材、131は穴、132は突起、20は蓋、21は開口、30は固相を示す。
【図3】図3は、実施例で用いた核酸精製カートリッジの模式図である。
【図4】図4は、本発明の方法に従って分離精製した核酸の回収率の測定結果を示す。
【図5】図5は、本発明の方法に従って核酸混合物から精製した核酸の電気泳動の結果を示す。

Claims (14)

  1. 未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に、RNAとDNAを含む核酸混合物中の核酸を吸着及び脱着させる工程を含む、該核酸混合物からRNAを分離精製する方法。
  2. トリアセチルセルロースが多孔膜である、請求項に記載の方法。
  3. トリアセチルセルロースが非孔性膜である、請求項1または2に記載の方法。
  4. トリアセチルセルロースがビーズにコーティングされている、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  5. 未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に、試料溶液中の核酸を吸着及び脱着させる、請求項1からの何れかに記載の方法。
  6. 試料溶液が、細胞又はウイルスを含む検体を核酸可溶化試薬で処理して得られた溶液に水溶性有機溶媒を添加した溶液である、請求項に記載の方法。
  7. 核酸可溶化試薬が、グアニジン塩、界面活性剤およびタンパク質分解酵素である、請求項に記載の方法。
  8. 未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に核酸を吸着させた後、核酸洗浄バッファを用いて固相を洗浄し、次いで固相に吸着した核酸を脱着せしめうる液を用いて固相に吸着した核酸を脱着させる工程を含む、請求項1からの何れかに記載の方法。
  9. 核酸洗浄バッファが、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はn−プロパノールを20〜100重量%含む溶液である、請求項に記載の方法。
  10. 固相に吸着した核酸を脱着せしめうる液が、塩濃度が0.5M以下の溶液である、請求項またはに記載の方法。
  11. 少なくとも2個の開口を有する容器内に未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  12. (a) 未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相、(b) 前記固相を収容する、少なくとも2個の開口を有する容器、及び(c) 前記容器の一の開口に結合された圧力差発生装置を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う、請求項1から11の何れかに記載の方法。
  13. 以下の工程を含む、請求項12に記載の方法。
    (a) 検体を用いて核酸を含む試料溶液を調製し、核酸分離精製ユニットの一の開口を上記の核酸を含む試料溶液中に挿入する工程、
    (b) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸を含む試料溶液を吸引し、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に接触させる工程、
    (c) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸を含む試料溶液を容器外に排出する工程、
    (d) 核酸分離精製ユニットの一の開口を核酸洗浄バッファ中に挿入する工程、
    (e) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして核酸洗浄バッファを吸引し、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に接触させる工程、
    (f) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された核酸洗浄バッファを容器外に排出する工程、
    (g) 核酸分離精製ユニットの一の開口を、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液中に挿入する工程、
    (h) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を吸引し、固相に接触させる工程、及び
    (i) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を容器外に排出する工程。
  14. 以下の工程を含む、請求項13に記載の方法。
    (a) 検体を用いて核酸を含む試料溶液を調製し、核酸分離精製ユニットの一の開口に上記の核酸を含む試料溶液を注入する工程、
    (b) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を含む試料溶液を、他の開口より排出することによって、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に接触させる工程、
    (c) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に核酸洗浄バッファを注入する工程、
    (d) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸洗浄バッファを上記他の開口より排出することによって、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に接触させる工程、
    (e) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を注入する工程、
    (f) 核酸分離精製ユニットの上記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を脱着せしめうる液を上記他の開口より排出させることによって、未鹸化のトリアセチルセルロースから成る固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
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