JP3982464B2 - 通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相手側装置の送信クロックに同期して送られてくるビット列からなる伝送データを受信するデータ受信手段と、伝送データに同期した受信クロックを生成しデータ受信手段に供給する受信クロック生成手段とを備えた通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、アンテナ群を順に切替走査して得た受信信号に基づく電波の方位信号の位相と基準信号の位相との位相差を検出して方位測定を行う方向探知機であって、受信回路等の信号遅延による方位誤差を、プリセット可能なカウンタに補正値をプリセットすることにより補正する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、受信した伝送データに含まれる基準パルスが伝送データを符号化した送信クロックの周期に対応していることを利用してこの基準パルスを検出し、そのパルス幅を基準クロックにて測定することにより、伝送データの通信速度と同じ速さの受信クロックを生成するデータ受信装置が開示されている。このデータ受信装置によれば、基準パルスのパルス幅が正確に基準クロックの整数倍とならず徐々に位相のずれが蓄積される場合であっても、受信クロック生成部が、伝送データの変化点つまり伝送データのビット境界に合わせてリセットされるので、基準クロックの分周の開始が伝送データの変化点に一致し、受信クロックと伝送データの位相を一致させることができる。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−17080号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平8−98284号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献2に開示された手段を用いると、伝送データの位相に同期した受信クロックを生成でき、送信側で用いる基準クロックと受信側で用いる基準クロックとの間に周波数ずれが存在しても、その周波数ずれが微小である場合には通信を行うことができる。しかし、基準クロックの周波数ずれが大きくなると(例えば2%程度)、通信時間の経過とともに位相の累積誤差が急激に増大するため、もはや上記手段のみでは位相の補正が間に合わなくなり、受信データにビット抜けが生じる虞がある。このため、従来の通信装置においては、高精度且つ高安定である水晶発振回路を用いて基準クロックを生成していた。
【0007】
しかしながら、水晶発振子は例えばセラミック発振子などに比べて非常に高価である。このため、コストの低減を図る上で、精度は劣るもののコスト低減効果の大きいセラミック発振回路やCR発振回路の採用が望まれていた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、送信側の基準クロックと受信側の基準クロックとの間に周波数ずれが存在しても、誤りのない確実な通信を行うことができる通信装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した手段によれば、受信クロック生成手段は、受信した伝送データの信号レベル変化点の間隔(あるいはビット列の各ビットの幅)と送信した相手側装置において用いられた送信クロックの周期とが対応していることを利用して、受信クロックを生成し、データ受信手段はその受信クロックに同期して伝送データを受信する。
【0010】
そして、位相ずれ検出手段が、伝送データの信号レベル変化点に対応して、伝送データと受信クロックとの位相ずれを検出すると、位相補正手段が受信クロックの位相を補正する。これにより、単なる位相ずれ、あるいは送信側装置で用いられた送信クロックと本通信装置で用いた受信クロックとの間の比較的小さい周波数ずれに起因する位相ずれを補正することができる。
【0011】
さらに、周波数ずれ検出手段は、位相ずれ検出手段により上記位相ずれが連続して検出されると、相手側装置の送信クロックと本通信装置の受信クロックとの間に周波数ずれが存在することを検出し、周波数補正手段は、受信クロックの周波数を補正する。これにより、従来の位相補正だけでは補正しきれなかった比較的大きい周波数ずれが存在する場合でも、誤りのない確実な通信を行うことが可能となる。
【0012】
請求項2に記載した手段によれば、受信クロック生成手段に設けられたカウンタは、基準クロックをカウントすることにより伝送データの信号レベル変化点の間隔を計測する。受信クロックは、このカウント値に基づいて生成される。基準クロックの周波数は、通信速度、カウント値の分解能などに基づいて適宜決定される。
【0013】
請求項3に記載した手段によれば、位相ずれ検出手段は、伝送データの信号レベル変化点におけるカウンタのカウント値と予定カウント値とを比較(デコードを含む)して、伝送データと受信クロックとの位相ずれを検出する。アップカウントの場合を例に説明すると、伝送データの信号レベル変化点におけるカウント値が予定カウント値よりも小さい場合には、受信クロックの位相が遅れていることになる。この場合には、位相補正手段は、予定カウント値をX(≧1)だけ減少させることにより、基準クロックの周期を単位として位相を合わせる。本手段によれば、位相ずれの検出から位相補正が完了するまでの時間が非常に短い(例えば1ビット幅)ため、安定した通信を行うことができる。
【0014】
請求項4に記載した手段によれば、位相ずれ検出手段は、基準クロックの周期を単位として位相ずれ量を検出し、位相補正手段は、その位相ずれ量に応じて予定カウント値を増減するので、位相ずれが大きい場合でも短時間のうちに位相ずれを補正することができる。
【0015】
請求項5に記載した手段によれば、周波数ずれ検出手段が周波数ずれを検出すると、周波数補正手段は、予定カウント値をYだけ増加または減少させる。ここで、増減する値Yは、位相補正の場合の補正値Xよりも大きく設定される。これにより、位相補正だけでは補正しきれないずれ(周波数ずれと判定される)を確実に補正することができる。このときも、基準クロックの周期を単位として、極めて短時間のうちに周波数ずれを補正することができる。
【0016】
請求項6に記載した手段によれば、周波数補正手段は、受信クロックのデューティ比が所定値に保持されるようにカウンタのカウント値を調整する。例えば、50%デューティの場合、受信クロックのLレベル期間に対応するカウント値とHレベル期間に対応するカウント値のそれぞれについて同様の増減処理を行えばよい。
【0017】
請求項7に記載した手段によれば、受信クロック生成手段は、周波数ずれが検出された場合に、原発振クロックから基準クロックを生成する際の分周・逓倍比を変えることによっても周波数ずれを補正することができる。これにより、分周・逓倍比の調節分解能によっては、基準クロックの周期を単位として行う上述の補正よりも細かい単位での補正が可能となる。
【0018】
請求項8に記載した手段によれば、周波数補正手段は、受信クロックの周波数を補正した場合、次に補正するまでの期間その補正状態を保持する。これにより、受信クロックの周波数を送信側装置の送信クロックに自動的に合わせ込むことができる。
【0019】
請求項9に記載した手段によれば、周波数ずれ検出手段により周波数ずれが検出された場合に送信クロックの周波数も補正するので、本通信装置の送信クロックと相手側装置の受信クロックとの周波数ずれを低減でき、相手側装置での受信エラーについても減少させることができる。
【0020】
請求項10に記載した手段によれば、受信クロックをそのまま送信クロックとして用いてデータを送信するので、送信クロック生成手段が不要となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の車載通信装置は、例えば車両の前方側ナンバープレート(図示せず)の封緘として機能するケースなどに収納されており、車両の走行路近傍に設置された路上機(図示せず)との間で双方向通信を行うVICS、ETCなどのシステム、あるいは路上機との間の通信を介して車両に対し所定の駐車場への駐車を許可する駐車場管理システムにおいて用いられるものである。
【0022】
図2は、この車載通信装置の概略的な構成を示すブロック図である。車載通信装置1は、アンテナ2、一つのICとして構成された高周波部3、他のICとして構成された通信制御部4を備えて構成されており、バッテリ電圧を入力とする定電圧電源または電池(何れも図示せず)から電源電圧の供給を受けて動作するようになっている。このうち高周波部3は、上記路上機との間においてDSRC(Dedicated Short Range Communication) 規格に基づく5.8GHzのアクティブ方式の双方向通信を行うもので、ASK変調(またはQPSK変調)の変復調回路を備えている。また、通信制御部4のICには、コンデンサ7、8とセラミック発振子9が外付けされている。この通信制御部4は、ベースバンド信号の送受信を行うデータ送受信部5(本発明でいう通信装置に相当)と送受信データを処理するデータ処理部6とから構成されている。
【0023】
図1は、データ送受信部5の構成を示している。データ送受信部5は、データ受信部10、受信クロック生成部11、データ送信部12および送信クロック生成部13から構成されている。これらは、それぞれ本発明でいうデータ受信手段、受信クロック生成手段、データ送信手段、送信クロック生成手段に相当している。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0024】
データ受信部10は、デコーダ14と受信バッファ15とから構成されている。デコーダ14は、マンチェスタ符号で符号化されているベースバンド信号(以下、データ信号という)を高周波部3から入力し、後述する受信クロックRCKに同期してそのデータ信号を復号化するものである。復号化された受信データは、シフトレジスタの構成を有する受信バッファ15に1ビットずつ格納されるようになっている。
【0025】
受信クロック生成部11は、データ信号に同期した受信クロックRCKを生成するもので、クロック発生回路16(基準クロック生成手段に相当)、カウンタ17、クロック発生部18、位相ずれ検出部19(位相ずれ検出手段に相当)、周波数ずれ検出部20(周波数ずれ検出手段に相当)および制御部21(位相補正手段、周波数補正手段に相当)から構成されている。
【0026】
クロック発生回路16は、上述したセラミック発振子9を用いて原発振クロックCLK0を発振する発振回路22と、このクロックCLK0を逓倍してクロックCLK1(基準クロックに相当)を出力する逓倍回路23とから構成されている。本実施形態では製品コストを下げるために水晶発振子ではなくセラミック発振子9を採用したため、クロックCLK0、CLK1の周波数は、セラミック発振子9の製品ばらつき、経時変化、温度変化などにより最大で2%程度の変動が生じる。
【0027】
また、本実施形態で用いる通信速度は1Mbpsであり、クロックCLK0の周波数は16MHzである。そこで、カウンタ17がクロックCLK1を用いてデータ信号のエッジ間隔をカウントする場合の標準カウント値が16となるように、逓倍回路23は、制御部21から与えられる逓倍信号Saに従って、クロックCLK0を4逓倍して16MHzのクロックCLK1を生成している。本実施形態において、逓倍信号Saは4逓倍に固定されている。
【0028】
カウンタ17は、クロックCLK1をその立ち上がりエッジでアップカウントする5ビット構成のカウンタで、そのカウント値RCNTは制御部21により調整されるようになっている。後述するように、データ信号と受信クロックRCKとの位相ずれがない場合には、カウント値RCNTは0HからFHまでの値をサイクリックに繰り返す。そして、クロック発生部18は、カウント値RCNTをデコード(比較に相当)し、カウント値RCNTが0Hから7Hまでの期間はLレベル、8HからFHまでの期間はHレベルとなる受信クロックRCKを生成するようになっている。
【0029】
位相ずれ検出部19は、クロックCLK1の周期TCLK1(62.5ns)を計測単位(分解能)として、データ信号のレベル変化点(エッジ)におけるデータ信号と受信クロックRCKとの位相ずれを検出するものである。ここでの位相ずれとは、カウンタ17のカウント値RCNTが1ビット幅に対応した予定カウント値に達した時点とデータ信号のレベル変化時点とのずれをいう。なお、以下の説明において、位相の「遅れ」とは、データ信号のレベル変化時点においてカウント値RCNTが予定カウント値に達していない状態をいい、位相の「進み」とは、データ信号のレベル変化時点においてカウント値RCNTが予定カウント値を超えている状態をいう。
【0030】
デコーダ24は、カウント値RCNTをデコードしてデコード信号DS1、DS2、DS3を出力するようになっている。ここで、デコード信号DS1は、カウント値RCNTがCHからFHの期間にのみHレベルとなり、デコード信号DS2は、カウント値RCNTが0H(10Hが存在する場合には10Hも含む)の期間にのみHレベルとなり、デコード信号DS3は、カウント値RCNTが1から4の期間にのみHレベルとなる信号である。また、エッジ検出回路25は、データ信号をクロックCLK1の立ち上がりエッジでサンプリングし、データ信号のレベルが前回のサンプリング時と異なる場合に、クロックCLK1の1周期だけエッジ検出信号ESをHレベルにするようになっている。
【0031】
Dタイプのフリップフロップ26は、クロックCLK1を同期クロックとして動作し、データ信号のレベル変化時点において位相遅れ状態が発生すると、次のレベル変化点までの期間、出力端子QからHレベルの位相遅れ信号P1を出力するようになっている(図3参照)。そのイネーブル端子ENにはエッジ検出信号ESが入力されている。AND回路27は、デコード信号DS1と、デコード信号DS2の反転信号と、フリップフロップ26の出力端子/Qの信号とのAND信号を生成するもので、そのAND信号はフリップフロップ26のデータ入力端子Dに与えられるようになっている。
【0032】
同様に、Dタイプのフリップフロップ28は、クロックCLK1を同期クロックとして動作し、データ信号のレベル変化時点において位相進み状態が発生すると、次のレベル変化点までの期間、出力端子QからHレベルの位相進み信号P2を出力するようになっている(図4参照)。そのイネーブル端子ENにはエッジ検出信号ESが入力されている。AND回路29は、デコード信号DS2の反転信号と、デコード信号DS3と、フリップフロップ28の出力端子/Qの信号とのAND信号を生成するもので、そのAND信号はフリップフロップ28のデータ入力端子Dに与えられるようになっている。
【0033】
周波数ずれ検出部20は、位相ずれが連続して2回検出されると、データ信号を送信してきた路上機の通信装置が用いている送信クロック(以下、路上機側送信クロックという)と受信クロックRCKとの間の周波数ずれを検出するものである。以下の説明において、「周波数が低い状態」とは、路上機側送信クロックの周波数と比較して受信クロックRCKの周波数が低い状態をいい、「周波数が高い状態」とは、路上機側送信クロックの周波数と比較して受信クロックRCKの周波数が高い状態をいう。
【0034】
Dタイプのフリップフロップ30は、クロックCLK1を同期クロックとして動作し、上記周波数が低い状態が発生すると、次のデータ信号のレベル変化点までの期間、出力端子QからHレベルの周波数過小信号F1を出力するようになっている(図3参照)。そのイネーブル端子ENにはエッジ検出信号ESが入力されている。AND回路31は、デコード信号DS1と、デコード信号DS2の反転信号と、上記位相遅れ信号P1とのAND信号を生成するもので、そのAND信号はフリップフロップ30のデータ入力端子Dに与えられるようになっている。
【0035】
同様に、Dタイプのフリップフロップ32は、クロックCLK1を同期クロックとして動作し、上記周波数が高い状態が発生すると、次のデータ信号のレベル変化点までの期間、出力端子QからHレベルの周波数過大信号F2を出力するようになっている(図4参照)。そのイネーブル端子ENにはエッジ検出信号ESが入力されている。AND回路33は、デコード信号DS2の反転信号と、デコード信号DS3と、位相進み信号P2とのAND信号を生成するもので、そのAND信号はフリップフロップ32のデータ入力端子Dに与えられるようになっている。
【0036】
さらに、デコード信号DS1、DS2、DS3はNOR回路34に入力されており、AND回路35は、そのNOR回路34の出力信号とエッジ検出信号ESとのAND信号である初期化信号RSを出力するようになっている。
【0037】
制御部21は、位相遅れ信号P1、位相進み信号P2、周波数過小信号F1、周波数過大信号F2、初期化信号RSおよびカウント値RCNTに基づいてカウント値RCNTを調整し、位相ずれの状態または周波数ずれの状態を補正するものである。すなわち、制御部21は、位相遅れ信号P1がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値RCNTを16から15に1(Xに相当)だけ減じて受信クロックRCKの位相を早め、位相進み信号P2がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値RCNTを16から17に1(Xに相当)だけ増やして受信クロックRCKの位相を遅らせる制御をするようになっている。
【0038】
また、制御部21は、周波数過小信号F1がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値を16から14に2(Yに相当)だけ減じて受信クロックRCKの周波数を高め、周波数過大信号F2がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値を16から18に2(Yに相当)だけ増やして受信クロックRCKの周波数を低下させる制御をするようになっている。なお、初期化信号RSがHレベルになると、カウント値RCNTを0にクリアするようになっている。
【0039】
データ送信部12は、エンコーダ36と送信バッファ37とから構成されている。エンコーダ36は、後述する送信クロックTCKに同期して、送信バッファ37から送信データを入力し、それをマンチェスタ符号で符号化してベースバンド信号(データ信号)を出力するようになっている。
【0040】
送信クロック生成部13は、データ信号に同期した送信クロックTCKを生成するもので、カウンタ38、クロック発生部39、制御部40(周波数補正手段に相当)および送信開始制御部41から構成されている。このうちカウンタ38は、クロックCLK1をその立ち上がりエッジでアップカウントする5ビット構成のカウンタで、そのカウント値TCNTは制御部40により調整されるようになっている。そして、クロック発生部39は、カウント値TCNTをデコードし、カウント値TCNTが0Hから7Hまでの期間はLレベル、8HからFHまでの期間はHレベルとなる送信クロックTCKを生成するようになっている。
【0041】
制御部40は、周波数過小信号F1と周波数過大信号F2とに基づいてカウント値TCNTを調整し、周波数ずれの状態を補正するものである。すなわち、制御部40は、周波数過小信号F1がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値を16から14に2だけ減じて送信クロックTCKの周波数を高め、周波数過大信号F2がHレベルになると、次のエッジまでの1ビット期間のカウント値を16から18に2だけ増やして送信クロックTCKの周波数を低下させる制御をするようになっている。なお、送信開始制御部41は、図示しないCPUからの指令により、データの受信から送信までの遅れ間隔を制御するようになっている。
【0042】
次に、データ送受信部5の動作について、図3および図4も参照しながら説明する。
図3は、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも低い場合における各信号のタイミングチャートを示しており、図4は、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも高い場合における各信号のタイミングチャートを示している。両図における(a)から(l)は、それぞれ以下の信号を示している。
【0043】
(a)…受信したデータ信号(ベースバンド信号)
(b)…エッジ検出信号ES
(c)…クロックCLK1
(d)…カウンタ17のカウント値RCNT
(e)…受信クロックRCK
(f)…デコード信号DS1
(g)…デコード信号DS2
(h)…デコード信号DS3
(i)…位相遅れ信号P1
(j)…周波数過小信号F1
(k)…位相進み信号P2
(l)…周波数過大信号F2
【0044】
データ信号は、マンチェスタ符号で符号化されており、データ信号がHレベルからLレベルに変化した場合がデータ「0」に相当し、データ信号がLレベルからHレベルに変化した場合がデータ「1」に相当する。本実施形態でいうデータ信号の1ビット幅とは、データ信号の各ビットの幅であり、データが0、1、0、1、…と変化する場合には、データ信号のレベル変化点の間隔(エッジ間隔)に等しくなる。
【0045】
これに対し、同じデータが0、0、…または1、1、…と続く場合には、エッジ間隔が1ビット幅の1/2になる。この1ビット幅の中間に現れるエッジは、1ビット幅に対応した予定カウント値を用いる位相ずれ検出や周波数ずれ検出を誤らせる。このため、エッジ検出回路25は、各スロットの同期ビットを用いて同期を確立した後は、上記中間に現れるエッジをマスクして当該エッジに対しエッジ検出信号ESがHレベルとならないように制御する。
【0046】
受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数に等しく、且つデータ信号のレベル変化点(エッジ)におけるデータ信号と受信クロックRCKとの位相ずれがない場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間におけるカウント値RCNTは0Hとなり、デコード信号DS2がHレベルとなる。
【0047】
これに対し、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも低いために位相が遅れているように見える場合または周波数は一致しており単に位相が遅れている場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間におけるカウント値RCNTは、予定されるカウント値0Hに達する前のFH(またはEH、DH、CH)となり、デコード信号DS1がHレベルとなる。
【0048】
逆に、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも高いために位相が進んでいるように見える場合または周波数は一致しており単に位相が進んでいる場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間におけるカウント値RCNTは、予定されるカウント値0Hを超えた1H(または2H、3H、4H)となり、デコード信号DS3がHレベルとなる。
【0049】
従って、フリップフロップ26、28を備えた位相ずれ検出部19は、エッジ検出信号ESをイネーブル信号としてデコード信号DS1、DS2、DS3を取り込むことにより、位相の遅れまたは進みを位相遅れ信号P1または位相進み信号P2により検出することができる。そして、フリップフロップ30、32を備えた周波数ずれ検出部20は、位相遅れまたは位相進みが検出されて位相遅れ信号P1または位相進み信号P2がHレベルを有する期間内に、データ信号の次のエッジに対応して再び位相遅れまたは位相進みが検出された場合には、周波数過小信号F1または周波数過大信号F2により周波数過小状態または周波数過大状態を検出することができる。すなわち、位相遅れまたは位相進みが検出されると後述するように位相を補正するが、それにもかかわらず連続して位相遅れまたは位相進みが検出されるということは、単なる位相のずれではなく周波数自体にずれが存在すると判断する。
【0050】
この検出原理を踏まえて、図3に示す動作ついて説明する。この場合、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも低いので、あたかも受信クロックRCKの位相が遅れているような状態となる。すなわち、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t1〜t2)、カウント値RCNTはFHとなり、デコード信号DS1がHレベルとなる。フリップフロップ26は、このレベルをデータ入力して位相遅れ信号P1をHレベルにする(時刻t2)。
【0051】
この位相ずれに対する位相調整は、カウンタ17の次の1ビット期間における予定カウント値を1だけ減じることにより行われる。つまり、時刻t5において、カウント値RCNTはEHからFHを経ることなく0Hに変化する。その結果、周波数のずれが比較的小さい場合(図3の場合とは異なる)には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t4〜t5)カウント値RCNTはFHではなく0Hとなり、周波数ずれの補正が機能することなく位相ずれが補正される。
【0052】
これに対し、図3に示すように周波数のずれが比較的大きい場合には、上記位相調整では間に合わず、次のエッジまでの期間にさらに受信クロックRCKの位相が遅れるような状態となる。この場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t4〜t5)、カウント値RCNTはEHとなり、デコード信号DS1がHレベルとなる。フリップフロップ30は、AND回路31を介してこのレベルをデータ入力し、周波数過小信号F1をHレベルにする(時刻t5)。
【0053】
この周波数ずれに対する周波数調整は、カウンタ17の次の1ビット期間における予定カウント値を2だけ減じることにより行われる。この調整では、受信クロックRCKのデューティ比を50%に保持するため、受信クロックRCKのLレベルに対応するカウント値5Hと、受信クロックRCKのHレベルに対応するカウント値9Hを除くことにより行われる。つまり、カウント値RCNTは、クロックCLK1のカウントに伴って4Hから6Hに変化し、その後8HからAHに変化する。その結果、エッジ検出信号ESの次のHレベルの期間(時刻t7〜t8)でのカウント値RCNTは0Hとなり、周波数ずれが補正される。
【0054】
続いて、図4について説明する。この場合、受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも高いので、あたかも受信クロックRCKの位相が進んでいるような状態となる。すなわち、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t12〜t13)カウント値RCNTは1Hとなり、デコード信号DS3がHレベルとなる。フリップフロップ28は、このレベルをデータ入力して位相進み信号P2をHレベルにする(時刻t3)。
【0055】
この位相ずれに対する位相調整は、カウンタ17の次の1ビット期間における予定カウント値を1だけ増やすことにより行われる。つまり、時刻t14において、カウント値RCNTはFHから通常では取り得ない10Hに変化し、その後時刻t15において0Hに変化する。その結果、周波数のずれが比較的小さい場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t14〜t16)、カウント値RCNTは1Hではなく0Hとなり、周波数ずれの補正が機能することなく位相ずれが補正される。
【0056】
これに対し、図4に示すように周波数のずれが比較的大きい場合には、上記位相調整では間に合わず、次のエッジまでの期間にさらに受信クロックRCKの位相が進むような状態となる。この場合には、エッジ検出信号ESがHレベルの期間(時刻t16〜t17)カウント値RCNTは1Hとなり、デコード信号DS3がHレベルとなる。フリップフロップ32は、このレベルをデータ入力して周波数過大信号F2をHレベルにする(時刻t17)。
【0057】
この周波数ずれに対する周波数調整は、カウンタ17の次の1ビット期間における予定カウント値を2だけ増やすことにより行われる。この調整では、受信クロックRCKのデューティ比を50%に保持するため、受信クロックRCKのLレベルに対応するカウント値5Hと、受信クロックRCKのHレベルに対応するカウント値9Hを付加することにより行われる。つまり、カウント値RCNTは、クロックCLK1のカウントに伴って4Hから5H、5H、6H、…と変化し、その後8Hから9H、9H、AH、…と変化する。その結果、エッジ検出信号ESの次のHレベルの期間(時刻t18〜t19)でのカウント値RCNTは0Hとなり、周波数ずれが補正される。
【0058】
以上は受信クロックRCKの補正であるが、路上機の通信装置が用いている送信クロックと受信クロックは一つの基準クロックを用いて生成されているため、車載通信装置1においては、送信クロックTCKも受信クロックRCKと同様に補正すればよい。ただし、車載通信装置1側では、データ送受信部5が送信クロックTCKに同期して任意の位相でデータを送信できるので、位相ずれの補正は必要ない。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の車載通信装置1は、路上機との間の通信で用いられる所定の通信速度に対応した基準クロックCLK1を生成し、それに基づいて受信クロックRCKを生成している。そして、受信したデータ信号(ベースバンド信号)に基づいて路上機側送信クロックと受信クロックRCKとの間の位相ずれを検出し、その位相ずれを自動補正するようになっている。これにより、路上機側送信クロックと受信クロックRCKとの間に単なる位相ずれまたは比較的小さい周波数ずれが存在するような場合には、この位相補正によって位相ずれまたは周波数ずれを補正することができる。
【0060】
これに加え、車載通信装置1は、データ信号のエッジに対応して同じ向きの位相ずれが連続して2回発生したことをもって周波数ずれを検出し、その周波数ずれを自動補正するようになっている。これにより、位相補正だけでは補正しきれなかった比較的大きい周波数ずれが存在する場合でも、誤りのない確実な通信を行うことが可能となる。そして、周波数の自動補正が可能となったことによりクロックCLK1の周波数精度を下げることができ、水晶発振子に代えてセラミック発振子(周波数のずれが最大で2%程度)を使用してコストを下げることができる。
【0061】
位相ずれの検出は、カウンタ17によりクロックCLK1をカウントし、データ信号のエッジが検出された時点でのカウント値RCNTに基づいて行われ、位相の補正または周波数の補正は、1ビット幅の予定カウント値を1または2だけ増減させることにより行われる。このため、位相ずれまたは周波数ずれの検出から位相補正または周波数補正が完了するまでの時間が非常に短くなり、ビット抜けなどの通信エラーのない安定した通信を行うことができる。
【0062】
送信クロックTCKについても、受信クロックRCKと同様に、受信したデータ信号を利用した周波数ずれの検出結果に基づいてカウント値TCNTを調整し、周波数ずれを補正している。これにより、送信クロックTCKと路上機の通信装置が用いている受信クロックとの間の周波数ずれを低減でき、路上機の通信装置においてもデータ受信に伴う通信エラーの発生を低減できる。
【0063】
位相ずれ検出部19は、エッジ検出時におけるカウント値RCNTが0Hとなる位相ずれのない状態に対し、カウント値RCNTがCHからFHの範囲(−25%の範囲)で位相遅れを検出でき、カウント値RCNTが1Hから4Hの範囲(+25%の範囲)で位相進みを検出できるようになっている。そして、±25%を超える範囲では初期化信号RSによりカウント値RCNTを強制的に0にクリアするので、通信開始直後の同期ビットにおいて確実に同期を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
位相補正をする場合、1ビット幅に対応した予定カウント値の増減量は1に限らず、一般にX(≧1)だけ増減させるように制御部21を構成してもよい。また、周波数補正をする場合、予定カウント値の増減量は1に限らず、一般にY(≧X)だけ増減させるように構成してもよい。さらに、予定カウント値の増減量を位相ずれ量ひいては周波数ずれ量に応じた数だけ増減させるように構成してもよい。
【0065】
位相遅れ、位相進みの検出範囲は、+25%から−25%までの範囲に限定されない。また、クロックCLK1の周波数、予定カウント値も通信速度などに応じて適宜変更可能である。発振回路22は、セラミック発振子9を用いたものに限られず、例えばCR発振回路であってもよい。
【0066】
周波数ずれが検出された場合に、上述したカウント値RCNTの調整とともに、逓倍信号Saを変化させてクロックCLK1の周波数を調整するように構成してもよい。これにより、クロックCLK1の周期を単位として行う周波数補正よりも細かい単位での補正が可能となる。
【0067】
受信クロックRCKの周波数を補正した場合、次に補正するまでの期間その補正状態を保持してもよい。これにより、受信クロックRCKの周波数を路上機側送信クロックに自動的に合わせ込むことができる。
送信クロック生成部13を省略し、受信クロックRCKをエンコーダ36と送信バッファ37に供給するようにしてもよい。
【0068】
データ信号(ベースバンド信号)の符号化にはマンチェスタ符号以外の符号を採用してもよい。また、一方向通信などに用いる場合に、データ受信部10と受信クロック生成部11とを備えた受信装置として構成してもよい。さらに、無線による通信装置に限らず有線による通信装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示すデータ送受信部の構成図
【図2】 車載通信装置の全体構成を示す概略的なブロック図
【図3】 受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも低い場合におけるタイミングチャート
【図4】 受信クロックRCKの周波数が路上機側送信クロックの周波数よりも高い場合におけるタイミングチャート
【符号の説明】
5はデータ送受信部(通信装置)、10はデータ受信部(データ受信手段)、11は受信クロック生成部(受信クロック生成手段)、12はデータ送信部(データ送信手段)、13は送信クロック生成部(送信クロック生成手段)、16はクロック発生回路(基準クロック生成手段)、17はカウンタ、19は位相ずれ検出部(位相ずれ検出手段)、20は周波数ずれ検出部(周波数ずれ検出手段)、21は制御部(位相補正手段、周波数補正手段)、40は制御部(周波数補正手段)である。
Claims (10)
- 相手側装置の送信クロックに同期して送られてくるビット列からなる伝送データを受信するデータ受信手段と、前記伝送データに同期した受信クロックを生成し前記データ受信手段に供給する受信クロック生成手段とを備えた通信装置において、
前記受信クロック生成手段は、
前記伝送データの信号レベル変化点に対応して、前記伝送データと前記受信クロックとの位相ずれを検出する位相ずれ検出手段と、
この位相ずれ検出手段により位相ずれが検出された場合に前記受信クロックの位相を補正する位相補正手段と、
前記位相ずれ検出手段により位相ずれが連続して検出されたことにより、前記相手側装置の送信クロックと前記受信クロックとの間に周波数ずれが存在することを検出する周波数ずれ検出手段と、
この周波数ずれ検出手段により周波数ずれが検出された場合に前記受信クロックの周波数を補正する周波数補正手段とを備えて構成されていることを特徴とする通信装置。 - 前記受信クロック生成手段は、基準クロックを生成する基準クロック生成手段と、前記基準クロックをカウントすることにより前記伝送データの信号レベル変化点の間隔を計測するカウンタとを備え、このカウント値に基づいて前記受信クロックを生成するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
- 前記位相ずれ検出手段は、前記伝送データの信号レベル変化点における前記カウンタのカウント値と、前記伝送データの信号レベル変化点の間隔に対応した所定の予定カウント値とを比較して、前記伝送データと前記受信クロックとの位相ずれを検出するように構成されており、
前記位相補正手段は、位相ずれが検出された場合に、前記予定カウント値をX(≧1)だけ増加または減少させるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の通信装置。 - 前記位相ずれ検出手段は、前記基準クロックの周期を単位として位相ずれ量を検出するように構成されており、
前記位相補正手段は、前記予定カウント値を前記位相ずれ量に応じた数だけ増加または減少させることを特徴とする請求項3記載の通信装置。 - 前記周波数補正手段は、周波数ずれが検出された場合に、前記予定カウント値をY(>X)だけ増加または減少させるように構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の通信装置。
- 前記周波数補正手段は、前記受信クロックのデューティ比が所定値に保持されるように前記カウンタのカウント値を調整するように構成されていることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに記載の通信装置。
- 前記基準クロック生成手段は、指令された分周・逓倍比に従って原発振クロックを分周または逓倍して前記基準クロックを生成するように構成されており、
前記受信クロック生成手段は、周波数ずれが検出された場合に前記分圧・逓倍比の指令値を増減して前記受信クロックの周波数を補正するように構成されていることを特徴とする請求項5または6記載の通信装置。 - 前記周波数補正手段は、前記受信クロックの周波数を補正した場合、次に補正するまでの期間、その補正状態を保持するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の通信装置。
- 送信クロックを生成する送信クロック生成手段と、その送信クロックに同期してデータを送出するデータ送信手段とを備え、
前記送信クロック生成手段は、前記周波数ずれ検出手段により周波数ずれが検出された場合に前記送信クロックの周波数を補正する周波数補正手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の通信装置。 - 前記受信クロックに同期してデータを送出するデータ送信手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の通信装置。
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