JP3982406B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエンジンの小型・軽量・高出力化に伴い、エンジンに取り付けられる各種電装品の振動が大きくなっている。また、車両走行抵抗の低減のためのスラントノーズ化やエンジン回りの各種電装品の増加、および車室内居住空間確保というニーズからエンジンルームが近年ますます狭小化しており、車両用交流発電機の周囲温度が高くなる傾向にある。一方、快適性や安全性の向上のための各種の電気負荷の増加により、車両用交流発電機の発電能力の向上も求められており、発電機自身の発熱も増加している。以上のことから、車両用交流発電機を構成する各種部品の中でも、温度上昇の高い機能部品である整流素子(ダイオード)を持つ整流装置の耐振性や冷却性の向上を実現することが必要である。
【0003】
このような要請に応える従来技術として、一方のフィンを環状に形成した整流装置を備えた車両用交流発電機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この整流装置では、リアカバーに接近して配置された正極側フィンを環状に形成することにより、冷却性や耐振性の向上を図ることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−164538号公報(第6−9頁、図1−10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1に開示された車両用交流発電機に備わった整流装置の正極側フィンは、円弧形状の部分をそのまま延長して円環形状にしているため、この円弧形状をつなぐ部分がブラシ装置よりもリアカバー側に配置されており、リアカバーの開口部を介して導入された冷却風がブラシ装置に直接当たることを妨げてしまい、ブラシ装置に備わったブラシの温度が上昇するおそれがあるという問題があった。特に、ブラシの温度が高くなると、回転軸に設けられたスリップリングに褶動する部分の摩耗が多くなり、製品寿命や性能維持の観点からは好ましくない。
【0006】
また、上述した特許文献1に開示された整流装置では、正極側フィンを円環形状につなぐ部分は、円弧形状の両端である出力端子側の端部と、反出力端子側の端部とを接続しているが、この反出力側の端部の近傍には整流装置をリアフレームに取り付ける取付穴が形成されている。このため、この取付穴に最も近いダイオードで発生した熱は、反出力端子側端部に伝搬する際にこの取付穴近傍の断面積が大きく減少した部位で遮断されてしまい、反出力端子側のダイオードを十分に冷却することができないという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1では、摩耗したブラシを交換する場合に、ブラシ装置を発電機から取り外すためには周囲を取り囲むレギュレータ等も取り外さなければならず、工数がかかるという問題があった。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、整流装置の耐振性および冷却性を向上させることができ、しかもブラシ装置等の他の電機部品の冷却性に悪影響を及ぼすことを防止することができ、さらにブラシ交換のためのブラシ装置の脱着を容易に行うことができる車両用交流発電機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、回転子磁極を有する回転子と、回転子と対向配置された固定子と、回転子と固定子とを支持するフレームと、固定子の交流出力を直流出力に変換する整流装置と、回転子の界磁コイルに界磁電流を供給するブラシ装置と、外部から整流装置を経由して冷却風を吸入するファンとを備えている。また、整流装置は、整流素子と、整流素子を固定保持する冷却部材と、整流素子の電気回路を形成する端子台とを有し、冷却部材は、回転子の回転軸に対して直角方向に配置された複数の極性に対応する馬蹄形の平面部を有する2層構造であり、少なくとも一方の極性の冷却部材が全周に切り欠きのないほぼ円環形状となる接続部を有し、この接続部がブラシ装置よりも回転子磁極側に配置されている。これにより、整流装置の冷却部材の周方向の温度差を少なくすることができ、最も温度が高い部位の温度を低減して冷却性を向上させることができる。また、円環形状とすることにより、冷却部材の剛性を高めることが可能になり、耐振性を向上させることができる。また、円環形状をなすために用いられる接続部をブラシ装置よりも回転子磁極側に配置しているため、ブラシ装置やその他の電機部品を冷却する冷却風の流れを妨げることがなく、ブラシ装置等の冷却性に悪影響を及ぼすことを防止することができる。さらに、接続部がブラシ装置よりも回転子磁極側に配置されているため、摩耗したブラシを交換する際のブラシ装置の脱着を容易に行うことが可能になる。
【0009】
また、上述した接続部は、一体となってほぼ円環形状をなす馬蹄形の冷却部材と別部品であり、冷却部材の両端部間に接合されることが望ましい。これにより、馬蹄形の冷却部材と接続部とを別々の部品として作ることができるため、それぞれの形状が単純になって例えばプレス加工等によって作ることも可能になり、工程の簡略化や歩留まり向上によるコスト低減が可能になる。
【0010】
また、少なくとも出力端子が設けられた冷却部材がほぼ円環形状に形成されることが望ましい。出力端子には車両用交流発電機の出力取り出し用のハーネス(配線)が接続されるため、馬蹄形の冷却部材を用いた場合には、出力端子側の一方の端部近傍の温度が低く、反対に反出力端子側の他方の端部近傍の温度が高くなる。本発明では、温度差が大きなこれら両端部間を接続部を介して接続することにより、温度差をさらに少なくすることができる。
【0011】
また、上述した出力端子が設けられた冷却部材は、馬蹄形の一方の端部に出力端子が設けられているとともに、整流装置の取付穴と他方の端部との間に少なくとも一の整流素子が固定保持されていることが望ましい。反出力端子側の端部と整流装置の取付穴との間に整流素子を配置することにより、この整流素子で発生した熱を効率よく接続部を介して出力端子側に伝えることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機1の断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、エンジンからベルト(図示せず)およびプーリ10を介して回転駆動される回転子2と、電機子として働く固定子4と、回転子2と固定子4とを一対の軸受け3c、3dを介して支持するフロントフレーム3aおよびリアフレーム3bと、固定子4に接続されて交流出力を直流出力に変換する整流装置5と、回転子2の界磁コイル22に界磁電流を供給するブラシを保持するブラシ装置7と、出力電圧を制御するレギュレータ9と、車両との間で電気信号を入出力する端子を持つコネクタケース6と、整流装置5やレギュレータ9やブラシ装置7等を覆うようにリアフレーム3bの端面に取り付けられる樹脂製の保護カバー8等を含んで構成されている。
【0014】
回転子2は、回転子磁極24の軸方向端面に、外部から整流装置5を経由して冷却風を吸入する冷却ファン26を備えている。
次に、整流装置5の詳細について説明する。図2は、整流装置5の平面図である。また、図3は整流装置の部分的斜視図である。図4は、整流装置5近傍に着目した車両用交流発電機1の部分断面図である。図5は、整流装置5にブラシ装置7とレギュレータ9とを組み付けた状態を示す平面図である。
【0015】
図2および図4に示すように、整流装置5は、回転子2の回転軸方向に2段に重ねられた馬蹄形の平面部を有する冷却部材としての正極側フィン501および負極側フィン503と、正極側フィン501をほぼ円環状に形成する接続部としてのつなぎ部501aと、正極側フィン501に取り付けられた6個の正極側ダイオード5021〜5026と、負極側フィン503に取り付けられた6個のダイオード5041〜5046と、端子台513とを含んで構成されている。
【0016】
図1および図4に示すように、端子台513は、正極側フィン501と負極側フィン503の間を電気的に絶縁する樹脂製絶縁部材であり、固定子4で発生する交流電圧を正極側ダイオード5021〜5026と負極側ダイオード5041〜5046に導くための導電部材を内蔵している。正極側ダイオード5021〜5026は、各ダイオードから延びたリードが負極側フィン503側に向くように配置され、正極側フィン503の取付孔に圧入固定されている。同様に、負極側ダイオード5041〜5046は、各ダイオードから延びたリードが正極側フィン501側に向くように配置され、負極側フィン503の取付孔に圧入固定されている。正極側ダイオード5021〜5026および負極側ダイオード5041〜5046の各リードは、端子台513の導電部材に電気接続されて電気回路(三相全波整流回路)が形成されている。本実施形態では、2組の三相全波整流回路を形成するように、図2に示すように、正極側フィン501に6個の正極側ダイオード5021〜5026が、負極側フィン503に6個の負極側ダイオード5041〜5046がそれぞれ配置されている。そして、正極側フィン501に取り付けられた出力端子506から直流出力が取り出される。この出力端子506は、正極側フィン501の一方の端部近傍に設けられており、他方の端部と整流装置5をリアフレーム3bに取り付けるために用いられる取付穴51との間に正極側ダイオード5026が配置されている。
【0017】
また、つなぎ部501aは、図3に示すように、馬蹄形の正極側フィン501に対し、その表面を延長して接続するのではなく、回転子磁極24側に迂回するように配置されている。これにより、図5に示すように、整流装置5にレギュレータやブラシ装置7を組み付けたときに、このつなぎ部501aがレギュレータ9とリアフレーム3bとの間に配置される。
【0018】
上述した構造を有する整流装置5は、フレーム3bと保護カバー8との間に配置されており、リアベアリングボックス30の支持部材としての締結ボルト31に、保護カバー8とともに締結固定されている。また、正極側フィン501は、負極側フィン503に比べて外径寸法が小さくなっている。
【0019】
正極側フィン501の製造にあたって、アルミダイカストの製造手法を適宜採用することができる。これにより、正極側フィン501とつなぎ部501aを一体成形することが可能になる。また、保護カバー8の正極側ダイオード5021〜5026近傍には、軸方向開口部80が設けられている。負極側フィン503は、正極側フィン501に比べて大径であり、外径近くの4カ所の穴5030を用いてリアフレーム3bにねじ締め固定されている。また、正極側フィン501は、負極側フィン503のように複数箇所で直接リアフレーム3bに組み付けられるのではなく、図4に示すように、端子台513を介して組み付けられている。
【0020】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1に備わった整流装置5は、正極側ダイオード5021〜5026および負極側ダイオード5041〜5046と、これらの各ダイオードを固定保持する正極側フィン501および負極側フィン503と、正極側放熱フィン501が全周に切り欠きのないほぼ円環形状となるようにその両端部を接続するつなぎ部501aとを有しており、しかも、このつなぎ部501aがブラシ装置7よりも回転子磁極24側に配置されている。これにより、正極側フィン501の周方向の温度差を少なくすることができ、最も温度が高い部位の温度を低減して冷却性を向上させることができる。また、円環形状とすることにより、正極側フィン501およびこれを用いた整流装置5の剛性を高めることが可能になり、耐振性を向上させることができる。
【0021】
特に、正極側フィン501は、端子台513を介してリアフレーム3bに取り付けられているため、つなぎ部501aを有しない従来構造の整流装置では、エンジン振動に対して、負極側フィンよりも影響が大きくなり、熱ストレスの繰り返しともあいまって、リードの断線の可能性があったが、本実施形態のように正極側フィン501をほぼ円環形状に形成するつなぎ部501aを追加することにより剛性が向上し、耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、円環形状をなすために用いられるつなぎ部501aをブラシ装置7よりも回転子磁極24側に配置しているため、ブラシ装置5やその他の電機部品(レギュレータ9等)を冷却する冷却風の流れを妨げることがなく、ブラシ装置7等の冷却性に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0023】
さらに、ブラシ装置7は、図5に示されるように、固定用のビス2本を取り外せば、容易に取り外しができ、車両定期点検などでブラシ摩耗が発見されて行われるブラシ交換のときに、周囲を取り囲むコネクタケース6やレギュレータ9を取り外すことなくブラシ装置7のみを取り外すことができ、工数を低減することができる。
【0024】
また、本実施形態の整流装置5では、出力端子506が設けられた正極側フィン501がほぼ円環形状に形成されている。出力端子506には車両用交流発電機1の出力取り出し用のハーネス(配線)が接続されるため、馬蹄形の正極側フィン501を用いた場合には、出力端子506側の一方の端部近傍の温度が低く、反対に反出力端子側の他方の端部近傍の温度が高くなるが、本実施形態では、温度差が大きなこれら両端部間をつなぎ部501aを介して接続することにより、温度差をさらに少なくすることができる。また、反出力端子側の端部と整流装置5の取付穴51との間に正極側ダイオード5026を配置することにより、この正極側ダイオード5026で発生した熱を効率よくつなぎ部501aを介して出力端子506側に伝えることができるため、さらに正極側フィン501の温度分布を均一化することが可能になる。
【0025】
図6は、正極側フィン501に取り付けられた各正極側ダイオード5021〜5026の温度分布を示す図である。図6において、横軸の数字は各正極側ダイオードの符号であり、縦軸は各正極側ダイオードの温度を示している。また、実線Aは本実施形態の整流装置5における温度分布を示しており、点線Bはつなぎ部501aを有しない従来構造の整流装置における温度分布を示している。
【0026】
図6から明らかなように、本実施形態の整流装置5では、取付穴51と反出力端子側の端部との間に取り付けられた正極側ダイオード5026の温度や、最も温度が低い正極側ダイオード5021と最も温度が高い正極側ダイオード5026との温度差を、従来構造の場合と比べて大幅に低減することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、正極側フィン501とつなぎ部501aとをアルミダイカストの製造方法によって一体成形する場合を説明したが、プレス加工等によって正極側フィン501とつなぎ部501aを別々に製造するようにしてもよい。この場合には、馬蹄形の正極側フィンの両端部を別部品のつなぎ部にて、ねじ締め、かしめ、圧入等により接合し、ほぼ円環形状を形成すればよい。これにより、馬蹄形の正極側フィン501とつなぎ部501aとを別々の部品として作ることができるため、それぞれの形状が単純になって例えばプレス加工等によって作ることも可能になり、工程の簡略化や歩留まり向上によるコスト低減が可能になる。
【0028】
また、上述した実施形態では、2組の三相全波整流回路を形成する整流装置5を示したが、一般的な一組の三相全波整流回路が含まれる整流装置や、3組以上の三相全波整流回路が含まれる整流装置に本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、上述した実施形態では、樹脂製の保護カバー8を用いたが、金属製の保護カバーを用いてもよい。このとき、カバー自身が放熱フィンとなって整流装置5からの伝熱を促進させて、冷却性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、正極側フィン501のみにつなぎ部501aを接続して円環形状にしたが、負極側フィン503にもつなぎ部を追加して円環形状にしてもよい。
【0030】
また、つなぎ部501aをリアフレーム3bの吸気孔3b1とオーバーラップする位置に配置してもよい。これにより、つなぎ部501aの通風による冷却を促進できるので、さらに整流装置5の冷却性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の断面図である。
【図2】整流装置の平面図である。
【図3】整流装置の部分的斜視図である。
【図4】整流装置近傍に着目した車両用交流発電機の部分断面図である。
【図5】整流装置5にブラシ装置7とレギュレータ9とを組み付けた状態を示す平面図である。
【図6】各正極側ダイオードの温度分布を示す図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 回転子
3a フロントフレーム
3b リアフレーム
4 固定子
5 整流装置
8 保護カバー
9 レギュレータ
501 正極側フィン
501a つなぎ部
5021〜5026 正極側ダイオード
503 負極側フィン
5041〜5046 負極側ダイオード
506 出力端子
513 端子台

Claims (3)

  1. 回転子磁極を有する回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームと、前記固定子の交流出力を直流出力に変換する整流装置と、前記回転子の界磁コイルに界磁電流を供給するブラシ装置と、外部から前記整流装置を経由して冷却風を吸入するファンとを備える車両用交流発電機において、
    前記整流装置は、整流素子と、前記整流素子を固定保持する冷却部材と、前記整流素子の電気回路を形成する端子台とを有し、
    前記冷却部材は、前記回転子の回転軸に対して直角方向に配置された複数の極性に対応する馬蹄形の平面部を有する2層構造であり、
    少なくとも一方の極性の前記冷却部材が全周に切り欠きのないほぼ円環形状となる接続部を有し、この接続部が前記ブラシ装置よりも前記回転子磁極側に配置されており、
    少なくとも出力端子が設けられた前記冷却部材がほぼ円環形状に形成されることを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 請求項1において、
    前記接続部は、一体となってほぼ円環形状をなす馬蹄形の前記冷却部材と別部品であり、前記冷却部材の両端部間に接合されることを特徴とする車両用交流発電機。
  3. 請求項1または2において、
    前記出力端子が設けられた前記冷却部材は、馬蹄形の一方の端部に前記出力端子が設けられているとともに、前記整流装置の取付穴と他方の端部との間に少なくとも一の前記整流素子が固定保持されていることを特徴とする車両用交流発電機。
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