JP3982300B2 - X線発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は従来のX線発生装置の原理図であり、図5は図4の楕円領域Aの拡大図である。
【0003】
図4に示すX線発生装置1は、レーザシンクロトロン放射光源(LSS)であり、主にレーザ光2を発生するレーザ光源3と、レーザ光を集光、コリメートするレンズ群4と、電子ビームを発生する電子銃(図示せず。)と、電子ビームを加速する加速器(図示せず。)と、加速器からの電子ビームを集光、コリメートする4極マグネット5と、レーザ光2と電子ビームとを衝突させるためのコンプトンセル6と、コンプトンセル6内を通過する電子ビームとコンプトンセル6内で発生したレーザ逆コンプトン散乱X線と電子ビームとを分離するためのダイポール7とで構成されている。
【0004】
図5に示すコンプトンセル6は、ケーシング8と、ケーシング8内の一方の側(図では左側)に配置され、中央に貫通孔9が形成され、ケーシング8の長手方向に対して直角に入射したレーザ光2をケーシング8の長手方向に反射すると共に集光する第1の凹面鏡(図では左側)10と、ケーシング8内の他方の側(図では右側)に配置され、中央に貫通孔11が形成され、第1の凹面鏡10からのレーザ光2をケーシング8の長手方向に対して直角に出射する第2の凹面鏡(図では右側)12とを有し、ケーシング8の他方の側から入射した電子ビームe-が両凹面鏡10、12の貫通孔9、11を通過するようになっている。コンプトンセル6内では両凹面鏡10、12の間を通過するレーザ光2と、両貫通孔9、11を通過する電子ビームe-とが衝突するようになっている。
【0005】
なお、13は電子ビームe-の位置を観測するためのBPM(ビームポジションモニタ)であり、14は電子ビームe-の位置を微調整するためのステアリングコイルである。15はコンプトンセル6内のレーザ光2を観測するためのIRカメラであり、16はコンプトンセル6からの電子ビームe-を観測するためのファラディカップである。17はベリリウムウィンドウであり、18はダイポール7で分離されたX線を観測するためのX線検知器である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、コンプトンセル6内ではレーザ光2と電子ビームe-とは一見正面衝突しているように見えるが、完全な正面衝突ではなく所定角度だけ斜めに1個所で衝突している。これは、両凹面鏡10、12のように孔あきミラーを用いると、レーザ光2の光軸と電子ビームe-の軌道とを完全に一致させることができないからである。このため、レーザを同期させ増幅する必要があり、両凹面鏡10、12には貫通孔9、11があるのでレーザ光が損失し、その分だけX線の発生効率に限界があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、X線の発生効率を向上させたX線発生装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、加速器で加速された電子ビームとレーザ光源からのレーザ光とを衝突させてX線を発生させるX線発生装置において、加速器内で直線状の電子ビーム軌道を挟むと共に隣り合う磁界の方向が互い違いになるように配列され挿入光源を構成する複数対の磁石と、加速器外で直線状の電子ビーム軌道の一方の延長線上に配置され挿入光源からの可視光を挿入光源に戻す第1のミラーと、加速器外で直線状の電子ビーム軌道の他方の延長線上に配置され可視光の反射面とX線の反射面とが異なる非対称ミラーと、加速器外に配置され非対称ミラーからの可視光を非対称ミラーに反射させて挿入光源に戻すことによりレーザ発振を生じさせ、得られたレーザ光を電子ビームと正面衝突させてレーザ逆コンプトン散乱X線を発生させるための第2のミラーとを備えたものである。
【0009】
本発明によれば、加速器内の挿入光源を構成する複数対の磁石間を加速された高速の電子ビームが通過する際電子が蛇行してシンクロトロンと呼ばれるX線や可視光が発生する。加速器で発生した可視光は、第1のミラー、非対称ミラー及び第2のミラーからなる光学系内を往復することでレーザ発振する(FEL、Free Electron Laser:自由電子レーザ)。このレーザ発振によるレーザ光が挿入光源を通過する電子ビームと正面衝突して、レーザ逆コンプトン散乱X線(γ線)が発生する。レーザ光と電子ビームとの衝突回数が従来例より増加するのでX線の発生効率が向上する。挿入光源で発生したX線は加速器から出射して非対称ミラーでレーザ光とは異なる角度で反射する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】
図1は本発明のX線発生装置の一実施の形態を示す概念図であり、図2は図1に示したX線発生装置に用いられる非対称ミラーの説明図であり、図3は図2に示した非対称ミラーの変形例を示す図である。
【0012】
図1に示すX線発生装置20は、主に電子ビームe-を発生する電子銃(図示せず。)と、電子ビームe-を加速する加速器21と、加速器21内に配置された挿入光源22と、光学系23とで構成されている。
【0013】
挿入光源22は、加速器21内で直線状の電子ビーム軌道(光路)24を挟むと共に隣り合う磁界の方向が互い違いになるように配列された複数対の磁石25a、25bからなっている。
【0014】
光学系23は、加速器21外で直線状の電子ビーム軌道24の一方(図では右側)の延長線上に配置され、挿入光源22からの光路26上を通るレーザ光を加速器21の入出射窓(図示せず。)を介して挿入光源22に戻す第1のミラー27と、加速器21外で直線状の電子ビーム軌道24の他方(図では右側)の延長線上に配置され、加速器21の入出射窓(図示せず。)を介して挿入光源22からの光路上を通るレーザ光及びX線28−1が入射する非対称ミラー29と、加速器21外に配置され非対称ミラー29で反射されて光路31を通るレーザ光を非対称ミラー29の可視光反射面29aで反射させて挿入光源22に戻す第2のミラー32とで構成されている。光学系23の各ミラー27、29、32の光軸調整は図示しないギヤードモータ或いはステッピングモータで行われるようになっている。
【0015】
なお、Lnaは非対称ミラー29の可視光反射面29aの法線であり、Lnxは非対称ミラー29のX線反射面29bの法線である。
【0016】
図2に示すように非対称ミラー29は結晶(例えばBe)からなっており、光路30を通るレーザ光の可視光反射面29aが結晶面(X線28−1の反射面)29bに対し角度θ2だけ傾斜するように形成されている。
【0017】
なお、γ線を発生させる場合には非対称ミラー29が不要となり、非対称ミラー29の位置に共振用ミラーが配置される。
【0018】
次に図1に示したX線発生装置の動作について図2を参照して説明する。
【0019】
図1に示す加速器21内の挿入光源22を構成する複数対(図では8対であるが、限定されない。)の磁石25a、25b間を加速された高速の電子ビームe-が通過する際電子ビームe-が磁界の影響を受けて蛇行してシンクロトロンと呼ばれるX線や可視光が発生する。挿入光源22で発生した可視光のうち、加速器21から第1のミラー27に向かう光路26上の可視光は第1のミラー27で反射されて加速器21に戻り、挿入光源22を通過して加速器21から非対称ミラー29へ向かう。光路30を通る可視光が非対称ミラー29に入射すると、光路30上の可視光は可視光反射面29aで反射して第2のミラー32へ向かう。光路31上の可視光は第2のミラー32で反射されて同一光路31上を辿り非対称ミラー29へ向かう。光路31上の可視光は非対称ミラー29の可視光反射面29aで反射されて同一光路30上を通って直線状の電子ビーム軌道24及び光路26を通って第1のミラー27へ向かう。すなわち、挿入光源22で発生した可視光は第1のミラー27、非対称ミラー29及び第2のミラー32で反射されて光路24、26、30、31を複数回往復することによりレーザ発振(FEL)が生じる。このレーザ発振によるレーザ光が直線状の電子ビーム軌道24を通過する電子ビームe-と正面衝突してレーザ逆コンプトン散乱X線(γ線)28−1が発生する。レーザ出力は数十MW程度であるので、X線源として利用可能である。レーザ光と電子ビームe-との衝突回数が従来例より増加するのでX線の発生効率が向上する。
【0020】
挿入光源22で発生したX線28−1は加速器21から出射して非対称ミラー29へ向かう。
【0021】
ここで、図2において、加速器21内のレーザ光と、直線状の電子ビーム軌道24で発生したX線28−1とが非対称ミラー29の可視光反射面29aに共に入射角度θ1で入射するが、光路30を通るレーザ光は可視光反射面29aで反射角度θ1で反射するのに対し、X線28−1はX線反射面(結晶面)29bで反射角度θ3で反射する(ブラッグ回折)。
【0022】
尚、結晶面29bの間隔をdとし、X線28−1、28−2の波長をλとし、X線28−1の結晶面29bに対する入射角度を(θ1+θ2)とすると、X線28−1の波長λは2dsin(θ1+θ2)を満たすようになっている。
【0023】
すなわち、図1に示すX線発生装置20は、光学系23内を往復する可視光若しくはレーザ光のうち、非対称ミラー29で光路31を進むレーザ光とは異なる角度θ2でX線28−2が反射するようになっている。また、レーザはFEL(Free Electron Laser:自由電子レーザ)であるため、衝突レーザ波長が連続して得られる。この結果、加速器21の蓄積エネルギーだけでなく、FELの発振レーザ波長も変更できるため、任意の波長のX線の発生が可能となる。
【0024】
図3は図2に示した非対称ミラーの変形例を示す概念図である。
【0025】
この非対称ミラー40は回折格子からなっており、反射面40a上に複数の溝41が所定の間隔で形成されている。
【0026】
このような非対称ミラー40を用いても図2に示した非対称ミラー29と同様の効果が得られる。
【0027】
次に図1に示したX線発生装置20で発生したX線について述べる。
【0028】
図1に示したX線発生装置20はレーザ光と電子ビームe-とが正面衝突するだけでなく、180°衝突(追突)する。しかし、180°衝突はミラーで回折されない(正面衝突時の発生X線のエネルギーを50keVとすると、180°衝突時の電磁波の発生エネルギーはわずか1eVとなる。但し、蓄積エネルギー53MeV、レーザ波長1μmの場合である。)。
【0029】
発生X線のエネルギーErは数1式で表され、発生レーザ波長は数2式で表される。
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
蓄積エネルギーE=53MeV、λ1=1μmから、λu=22mm、K=0.26(Gap=20mm)となるため、実現は可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、X線の発生効率を向上させたX線発生装置の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線発生装置の一実施の形態を示す概念図である。
【図2】図1に示したX線発生装置に用いられる非対称ミラーの説明図である。
【図3】図2に示した非対称ミラーの変形例を示す図である。
【図4】従来のX線発生装置の原理図である。
【図5】図4の楕円領域Aの拡大図である。
【符号の説明】
20 X線発生装置
21 加速器
22 挿入光源
23 光学系
24 直線状の電子ビーム軌道(光路)
25a、25b 磁石
26、30、31 光路
27 第1のミラー
29 非対称ミラー
32 第2のミラー
Claims (1)
- 加速器で加速された電子ビームとレーザ光源からのレーザ光とを衝突させてX線を発生させるX線発生装置において、上記加速器内で直線状の電子ビーム軌道を挟むと共に隣り合う磁界の方向が互い違いになるように配列され挿入光源を構成する複数対の磁石と、上記加速器外で直線状の電子ビーム軌道の一方の延長線上に配置され上記挿入光源からの可視光を上記挿入光源に戻す第1のミラーと、上記加速器外で上記直線状の電子ビーム軌道の他方の延長線上に配置され可視光の反射面とX線の反射面とが異なる非対称ミラーと、上記加速器外に配置され上記非対称ミラーからの可視光を上記非対称ミラーに反射させて上記挿入光源に戻すことによりレーザ発振を生じさせ、得られたレーザ光を上記電子ビームと正面衝突させてレーザ逆コンプトン散乱X線を発生させるための第2のミラーとを備えたことを特徴とするX線発生装置。
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JP2002092472A JP3982300B2 (ja) | 2002-03-28 | 2002-03-28 | X線発生装置 |
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Publications (2)
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- 2002-03-28 JP JP2002092472A patent/JP3982300B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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