JP3982226B2 - 電子制御装置へのデータ書込システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される電子制御装置(以下「ECU」という。)を対象とした書込システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両形式によってECUに搭載される制御プログラムが変わるため、生産工場において、車両形式に合った制御プログラムを書き込むことが行われている。また、市場に出荷されてからでも、ECUの故障などにより、修理工場などにおいて、車両形式に合った制御プログラムを再度書き込む必要が生じることがある。
【0003】
ここでいうところの車両形式による制御プログラムの違いは、一つには、車両制御における所定部品の補正処理の違いとして現れる。例えば、インジェクタの噴射量を車両形式に合わせ、制御プログラムにより補正するという具合である。
そのため、特開平4−246730号公報には、車両形式を識別して、車両形式に適する制御プログラムをサーバ装置から選定し、制御プログラムを書き込む技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、インジェクタを例に挙げた場合、個々のインジェクタがそれぞれに固有のばらつきを有しており、車両形式だけで一律に補正できない場合が存在する。つまり、このような個々のインジェクタのばらつきを考慮した補正は、車両形式、さらに言えば車両側の情報だけからは困難である。
【0005】
このようなばらつきは部品製造過程において必ず発生するものであり、最近の排ガス規制などをクリアするためには、個々のインジェクタのばらつきを考慮した補正を行うことが必要になっている。また、このような補正が可能であれば、部品製造においても、製造部品のばらつきが、ある程度まで許容されることになり、不良率を低減させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような個々のインジェクタのばらつきは、一次的に、部品メーカ側で把握されるものであり、このようなばらつきの補正を行うためには、個々の部品のばらつきを補正するための補正データを何らかの形で、ECUに搭載される制御プログラムに反映する必要がある。
【0007】
これに対し、特表2000−501155号公報には、補正データを示すバーコードや2次元コードを個々のインジェクタに付加し、スキャナでこの補正データを読み取ってECUへ伝達する技術が提案されている。また、特表2000−502770号公報には、補正データを書き込んだEEPROMを個々のインジェクタに付加し、このEEPROMから読み出した補正データをECUに伝達する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、前者の技術では、補正データが多くなると、対応できない可能性が高くなる。一方、後者の技術では、EEPROMから補正データを読み出すために、ECU側の端子や、ECUとEEPROMとの接続のためのワイヤの増加を招くことになり、車両ハーネスの増加につながる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、インジェクタに代表される所定部品毎のばらつきを考慮したECUへのデータ書き込みを実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明のデータ書込システムは、ECUへのデータ書き込みに用いられる。このデータ書込システムは、工場内でのECUへのデータの書き込みはもちろん、市場においても使用可能である。したがって、ここでいうデータの書き込みは、データの書き換えをも含む。
【0011】
ECUは、外部からの書込指示があると、送信される書込情報の基づき、制御プログラム又は制御データの少なくとも一方を書き込む。制御データは、制御プログラムによって参照されるものである。
本発明のデータ書込システムでは、端末装置が、ECUに接続され、書込プログラムを実行することにより、ECUに対する書込指示を行い、書込情報を送信する。この端末装置は、サーバ装置との間でデータ通信可能になっている。
【0012】
ここで特に、サーバ装置は、所定部品の固有のばらつきを補正する補正データを記憶したデータベースを有しており、端末装置との間にデータ通信可能状態が確立されると、端末装置からの要求に応じて補正データを送信する。所定部品は、ECUによる車両制御に用いられるものであり、上述したインジェクタをはじめ、各種のアクチュエータやセンサであることが考えられる。
【0013】
一方、端末装置は、サーバ装置から送信される補正データを書込情報としてECUへ送信する。
このように、サーバ装置のデータベースに予め補正データを記憶しておくようにすれば、このサーバ装置にアクセスすることで、端末装置は、補正データを取得でき、この補正データを書込情報として送信することにより、補正データをECUへ反映することができる。ここにある技術思想は、部品メーカ側で一次的に把握される所定部品毎の補正データを、サーバ装置のデータベースを介して、ECUへ反映させるというものである。
【0014】
このような構成を採用すれば、個々の部品のばらつきを考慮して、ECUへのデータの書き込みを実現することができる。そしてこのときは、バーコード等を用いる場合と異なり、補正データのデータ量が大きくなっても対応することができる。また、EEPROMを用いる場合と異なり、車両ハーネスの増加を伴うこともない。
【0015】
具体的な構成としては、サーバ装置のデータベースに、部品毎に固有の部品識別番号と補正データとを対応付けて記憶しておき、サーバ装置は、端末装置から送信される部品識別番号を用いて、データベースの検索を行い、該当する補正データを送信するよう構成することが考えられる。このとき、端末装置からの部品識別番号の送信を前提としているが、この部品識別番号は、作業者によって端末装置へ入力されるものとしてもよいし、あるいは、バーコードなどの形で部品に付しておき、スキャナで読み取ることにより端末装置へ入力されるものとしてもよい。このようにサーバ装置側で補正データを検索して送信する構成を採れば、端末装置の構成が簡単になる。
【0016】
なお、部品毎の部品識別番号は、その部品が既に車両に搭載されたものであれば、車両毎に特定される。例えば、4気筒エンジンを搭載する車両であれば、4本のインジェクタを備えることになり、その車両に対し、4本のインジェクタの部品識別番号が特定される。
【0017】
そこで、サーバ装置のデータベースに、部品識別番号に対し、車両毎に固有の車両固有情報を対応付けて記憶しておき、サーバ装置が、端末装置から送信される車両固有情報を用いて、データベースの検索を行い、該当する補正データを送信できるようにしてもよい。車両固有情報は、車両毎に固有の情報であればよく、車両番号、エンジン番号、ECU番号などを含むものとすることが考えられる。このようにすれば、部品識別番号に代え車両固有情報を送信することによっても、サーバ装置で、該当する補正データを検索できる。
【0018】
なお、このような車両固有情報は、例えば、端末装置から部品識別番号及び車両固有情報が送信された場合に、サーバ装置が、部品識別番号に対し、車両固有情報を対応付けてデータベースに記憶するようにすればよい。例えば部品識別番号によって最初に補正データを検索するときに、車両固有情報をも端末装置から送信するようにするという具合である。このようにすれば、データベースが簡単に構築できる。
【0019】
また、ECUに部品識別番号や車両固有情報を記憶しておき、端末装置は、ECUに記憶された当該情報に基づいて部品識別番号や車両固有情報を送信可能にするとよい。例えば最初に端末装置に入力された部品識別番号や車両固有情報をECUに記憶しておくという具合である。このようにすれば、次からは入力の手間が省けて便利である。
【0020】
もっとも、部品識別番号に対応する車両情報が存在するのは、既に車両に搭載された部品であることを前提とする。したがって、新しい部品への交換を行う場合などは、部品識別番号による検索を行う必要がある。
ところで、端末装置が、サーバ装置がアクセス履歴を管理するためのアクセス情報を車両固有情報の一部として送信できる構成にすることも考えられる。ここでいうアクセス情報は、例えば、日時や場所の情報とすることが考えられる。場所の情報とは、端末装置のある修理工場などの場所を特定できるものを意味し、例えばその修理工場の電話番号を用いることが考えられる。このようにすれば、車両毎の不具合発生状況を把握でき、不具合の発生を統計的に管理することができる。
【0021】
なお、サーバ装置のデータベースに、ECUに搭載される制御プログラムを記憶しておき、サーバ装置が、端末装置から送信される車両制御に関する車両情報に基づき、制御プログラムを送信可能とし、端末装置は、サーバ装置から送信される制御プログラムを書込情報として送信可能としてもよい。
【0022】
また、サーバ装置のデータベースに、端末装置に搭載される書込プログラムを記憶しておき、サーバ装置が、端末装置からの要求に応じて、書込プログラムを送信し、端末装置は、サーバ装置から送信される書込プログラムによって、搭載された書込プログラムを更新可能にしてもよい。
【0023】
これらの構成を採用すれば、ECUの制御プログラムを容易にバージョンアップしたり、端末装置の書込プログラムを容易にバージョンアップしたりすることができる。また、前者の構成によれば、ECUの故障などで制御プログラムが消失してしまった場合にも対応できる。
【0024】
ところで、上述したサーバ装置は、インターネット上の装置として、端末装置からアクセスされるものとすることが考えられる。特に端末装置を携帯可能に構成すれば、場所を選ばずアクセスできることになる。したがって、例えばECUの故障などによって車両が道路に立ち往生した場合、その現場にて、ECUへのデータ書き込みを実現することも可能になる。これは牽引して修理工場まで運ぶことが困難な大型車両に有効である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
図1は、データ書込システムの概略構成を示す説明図である。
本実施例のデータ書込システムは、ECU10に対して用いられ、端末装置20と、サーバ装置30とを備えている。
【0026】
ECU10は、車両に搭載されてエンジン制御を行うものであり、車両を制御するための制御プログラム11と、制御プログラム11より参照される制御データ12とが搭載される。
端末装置20は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)21と、ダイアグツール22とで構成されている。ダイアグツール22は、ダイアグ通信ラインによってECU10のECUコネクタに接続されて機能する。そして、このダイアグツール22を介してECU10との通信を行うのがPC21である。したがって、ダイアグツール22は、PC21のポートに接続され、ECU10のコネクタ信号とPC21のデータとを相互に変換する専用ツールとして位置付けられる。
【0027】
このような端末装置20は、車両組立工場や修理工場などに配置されて用いられるものであり、搭載されるEOLプログラムの実行し、ECU10に対して書込指示及び書込情報を送信することにより、ECU10による制御プログラム11や制御データ12の書き込みを実現する。PC21は、キーボード・マウスといった入力装置及び、ディスプレイなどの表示装置を有する構成となっている。なお、入力装置としてスキャナを備える構成としてもよい。
【0028】
サーバ装置30は、端末装置20からネットワーク50を介してアクセスされるサーバシステムとして実現されている。ネットワーク50には、周知のインターネットを用いる。サーバ装置30には別の端末装置20からもネットワーク50を介してアクセスできるようになっており、サーバ装置30がデータベース31を有することにより、端末装置20間でサーバ装置30のデータを共有できる仕組みとなっている。
【0029】
ここでサーバ装置30のデータベース31に記憶される諸情報を、図2を参照して説明する。
図2に示すように、サーバ装置30のデータベース31には、車両固有情報32、部品識別番号33、補正データ34、車両情報35、制御プログラム36、及びEOLプログラム37が記憶される。
【0030】
車両固有情報32は、車両番号32a、エンジン番号32b、ECU番号32c、アクセス日時32d、アクセス場所32eからなっている。
車両番号32a、エンジン番号32b、ECU番号32cはそれぞれ、車両、エンジン、ECUに付けられたシリアルナンバーである。アクセス日時32dは、端末装置20からアクセスのあった日時であり、アクセス場所32eは、アクセスのあった端末装置20の設置場所を示す情報であり、端末装置20が電話回線を利用してアクセスすることを前提に電話番号としている。
【0031】
部品識別番号33は、具体的にはインジェクタ番号となっている。インジェクタ番号は、インジェクタ一本一本に付けられたシリアルナンバーである。本実施例では4気筒エンジンを搭載した車両を例に挙げるものとしする。したがって、気筒#1〜気筒#4に対応する4つのインジェクタ番号が記憶される。
【0032】
補正データ34は、インジェクタ毎の補正データであり、インジェクタ固有のばらつきを補正するためのデータである。図2に示すように、4つのインジェクタ番号にそれぞれ対応させて、補正データが記憶される。
車両情報35は、車両形式35a、エンジン形式35b、オプション情報35c、ECU形式35dからなっている。
【0033】
車両形式35a、エンジン形式35b、ECU形式35dはそれぞれ、車両、エンジン、ECUの形式(タイプ)を示す情報である。また、オプション情報35cは、車両制御オプションの有り無しを示す情報である。
制御プログラム36は、ECU10に搭載可能なエンジン制御のためのプログラムであり、上述した車両情報35に対応付けられて記憶されている。
【0034】
EOLプログラム37は、端末装置20に搭載可能なものであり、ECU10への書込指示及び書込情報の送信を実現するプログラムである。
なお、以下の説明では、適宜、車両固有情報32及び車両情報35をまとめて車両関連情報と呼ぶ。
【0035】
このようなデータベース31には、まず、部品メーカにより、製造されたインジェクタそれぞれに対応する補正データ34が記憶される。インジェクタには、インジェクタ番号が付加されており、このインジェクタ番号に対応させて補正データ34が記憶される。続いて、車両メーカにより、データベース31には、車両情報35、車両情報35に対応する制御プログラム36、さらに、EOLプログラム37が記憶される。つまり、車両固有情報32を除く諸情報が最初に記憶されることになる。
【0036】
このような諸情報が記憶されたデータベース31の存在を前提として、次に、本実施例のデータ書込システムの動作を説明する。ここでは端末装置20の処理である端末側処理を最初に説明し、次に、サーバ装置30の処理であるサーバ側処理を説明する。
【0037】
図3及び図4は、端末側処理を示すフローチャートである。
まず最初のステップ(以下、ステップを単に記号Sで示す。)100において、ECU10に車両関連情報があるか否かを判断する。ECU10へ制御プログラム11の書き込みが既に行われている場合には、車両関連情報が記憶されており、ここで肯定判断されることになる。車両関連情報があれば(S100:YES)、S110にて車両関連情報を読み出し、S130へ移行する。一方、車両関連情報がなければ(S100:NO)、S120にて車両関連情報の入力を行い、S130へ移行する。
【0038】
S130では、入力されたあるいは読み出された車両関連情報に基づき、書き込みを続行してもよいか否かを作業者に確認する。ここで書き込みの続行を了承する入力があった場合(S130:YES)、S140へ移行する。一方、書き込みの続行を了承しない場合(S130:NO)、S120からの処理を繰り返す。
【0039】
S140では、端末装置20からサーバ装置30を発呼することにより、データ通信可能状態の確立処理を行う。そしてここでデータ通信可能状態が確立されると、続くS150にて、車両関連情報をサーバ装置へ送信する。
図4中のS160では、サーバ装置30からEOLプログラムの更新が促されたか否かを判断する。サーバ装置30へのアクセスが2回目以降であれば、後述するようにデータベース31に車両固有情報32が記憶されている。したがって、サーバ装置30は、車両固有情報32の中のアクセス日時32dなどに基づき、EOLプログラム37が更新されている場合には、端末装置20に対し、プログラム更新を促す。ここでEOLプログラムの更新が促された場合(S160:YES)、S170へ移行する。一方、EOLプログラムの更新が促されていない場合(S160:NO)、S200へ移行する。
【0040】
S170では、EOLを更新するか否かをユーザに問い合わせる。ここでEOLの更新を行う旨の入力があれば(S170:YES)、サーバ装置30に対して送信を要求する。これに対して、サーバ装置30はデータベース31に記憶されたEOLプログラム37を送信してくる。したがって、S180にてEOLプログラム37を受信し、S190にて更新する。一方、EOLの更新を行う旨の入力がなければ(S170:NO)、S200へ移行する。
【0041】
S200では、サーバ装置30からの情報を受信する。この処理は、図3中のS150で送信した車両関連情報により、サーバ装置30が送信してくる情報を受信するものである。サーバ装置30が送信してくる情報は、端末装置20から送信する情報によって異なるが、補正データ34又は制御プログラム36の少なくとも一方を含むものである。
【0042】
続くS210では、サーバ装置30からの情報に基づき、ECU10への書込指示を行うと共に、書込情報を送信する。すなわち、このS210の処理がEOLプログラムの実行により実現されるものである。この書込情報は、サーバ装置30から送信された補正データ34又は制御プログラム36の少なくとも一方を含むものである。これによって、ECU10は、制御データ12や制御プログラム11を書き込む、あるいは、書き換える。
【0043】
次のS220では、サーバ装置30へ送信したところの車両関連情報をECU10へ送信する。これに対応して、ECU10は、車両関連情報を記憶する。
続くS230では、ECU10との通信により、正常に書き込めたか否かを判断する。ここでECU10への書き込みが正常終了している場合(S230:YES)、S240にて正常終了を通知し、本端末側処理を終了する。一方、ECU10への書き込みが正常終了していない場合(S230:NO)、S250にて異常終了を通知し、本端末側処理を終了する。なお、正常終了・異常終了の通知は、端末装置20のディスプレイを介してユーザに対してなされると共に、サーバ装置30に対してもなされる。
【0044】
続けて、サーバ装置30によるサーバ側処理を、図5のフローチャートに基づいて説明する。このサーバ側処理は、端末装置20とのデータ通信可能状態が確立されると実行される。
まず最初のS300において、セキュリティチェックを行う。これは未登録の端末装置20からのアクセスをチェックする処理である。このチェック結果に基づき、続くS310では、登録された端末装置20であるか否かを判断する。ここで登録された端末装置20であると判断された場合(S310:YES)、S320へ移行する。一方、未登録の端末装置20であれば(S310:NO)、以降の処理を実行せず、本サーバ側処理を終了する。
【0045】
S320では、端末装置20からの車両関連情報を受信する。この処理は、図3中のS150に対応するものである。
続くS330では、新規書込であるか否かを判断する。この判断は、送信された車両関連情報に基づいて行う。この判断結果に基づき、新規の書き込みであれば(S340:YES)、S350にて制御プログラム36及び補正データ34を検索して送信し、S370へ移行する。一方、新規の書き込みでなければ(S340:NO)、不足していると想定されるデータを検索して送信し、S370へ移行する。
【0046】
S370では、端末装置20から正常終了の通知があったか否かを判断する。ここで正常終了の通知があった場合(S370:YES)、S380にてデータベース31を更新して、その後、本サーバ側処理を終了する。一方、正常終了の通知がない場合(S370:NO)、すなわち異常終了の通知があった場合には、S380の処理を実行せず、本サーバ側処理を終了する。
【0047】
次に、具体例を挙げてデータ書込システムの動作を説明し、本実施例に対する理解を容易にする。ここでは最初に車両組立工場におけるECU10への新規書込の場合を最初に説明し、次に、修理工場などにおける市場でのECU10へのデータ書込について説明する。
【0048】
▲1▼車両組立工場における新規書込の場合
この場合、ECU10には車両関連情報が記憶されていないため、図3中のS100にて否定判断され、端末装置20に対する車両関連情報の入力が行われる(S120)。
【0049】
このときの入力画面例を示すのが、図6の説明図である。
図6に示すように、端末装置20のディスプレイには、車両形式、エンジン形式、オプション情報、ECU形式、車両番号、エンジン番号、ECU番号、気筒#1〜気筒#4のインジェクタ番号、アクセス日時、及びアクセス場所の入力画面が表示される。
【0050】
車両形式には、普通車両、小型車両、大型車両の区分が入力される。これは、画面上のボタン61をマウスでクリックすることにより表示されるプルダウンメニュー62から入力する。プルダウンメニュー62中でマウスカーソル63を移動させ、該当する情報を選択してクリックする。この入力形態は、エンジン形式、オプション情報、ECU形式の入力でも同様である。図6には、エンジン形式「JA05」が選択され、オプション情報「定速クルーズ」、「ブレーキ油圧制御」が選択され、ECU形式「タイプ1」が選択された様子を示した。
【0051】
車両番号、エンジン番号、ECU番号、インジェクタ番号はそれぞれ、入力フィールド64a,64b,64c,64d,64e,64f,64gにキーボードを用いて入力される。
車両組立工場においては、図9(a)に示すように、4本のインジェクタ41がエンジン43に組み付けられて車両に搭載される。そして、このエンジン43には、ECU10が接続される。そこで、車両番号「XXXXX」を入力フィールド64aに入力し、さらに、搭載されたエンジン43のエンジン番号44、ECU10のECU番号13、インジェクタ41のインジェクタ番号42を、入力フィールド64b〜64gに入力していく。なお、本実施例では、これらの情報をキーボードを用いて入力するようにしたが、図9(a)に示したインジェクタ番号42、エンジン番号44、ECU番号13を示すバーコードを付加するようにした場合、スキャナを用いて端末装置20への入力を行うことも考えられる。
【0052】
アクセス日時及びアクセス場所は、入力フィールド65a,65bにそれぞれ入力する。このとき、アクセス日時は端末装置20の時計機能を用いて、また、アクセス場所を示す電話番号は端末装置20に予め記憶しておくことによって、入力フィールド65a,65bにデフォルト表示されるようにしてもよい。
【0053】
端末装置20へ車両関連情報が入力されると、データ通信可能状態が確立され(図3中のS140)、入力された車両関連情報がサーバ装置30へ送信される(S150)。
サーバ装置30では、送信された車両関連情報を受信し(図5中のS320)、このときは、新規書込であることが判断される(S330,S340:YES)。すると、サーバ装置30では、送信されたインジェクタ番号を用い、データベース31の部品識別番号33に基づいて、該当する補正データ34を送信する(S350)。また、送信された車両形式などを用い、データベース31の車両情報35に基づいて、制御プログラム36を送信する(S350)。
【0054】
このようにしてサーバ装置30から送信される制御プログラム36及び補正データ34を、端末装置20が受信し(図4中のS200)、ECU10へ書込指示を行うと共に、制御プログラム36及び補正データ34を書込情報として送信する(S210)。これによって、ECU10に制御プログラム11及び、補正データ34に基づく制御データ12が書き込まれる。また、端末装置20は、S120にて入力された車両関連情報をECU10へ送信する(S220)。これにより、ECU10には、車両関連情報が記憶されることになる。
【0055】
端末装置20から正常終了の通知がなされると(図4中のS240)、サーバ装置30では、データベース31を更新する(S380)。これによって、データベース31において、図2に示すような、車両固有情報32と、部品識別番号33との対応付けが行われる。このとき、インジェクタ番号は気筒#1〜気筒#4とも対応付けられる。その結果、図2に示すデータベース31が構築されることになる。
【0056】
▲2▼市場でのデータ書込の場合(その1)
例えば、図9(b)に示すように、修理工場などにおいて、気筒#4に組み付けられたインジェクタ41を交換する場合を考える。
このときは、端末装置20にて端末側処理が開始されると、ECU10に車両関連情報が記憶されているため、図3中のS100にて肯定判断され、車両関連情報がECU10から読み出される(S110)。
【0057】
このときの入力画面例を示すのが、図7の説明図である。
図7には、図6と同様の情報が表示されるが、気筒#4のインジェクタ41を交換したことにより、気筒#4のインジェクタ番号を変更する(図3中のS130:NO,S120)。つまり、図7中に斜線を施して示した入力フィールド64gの内容を変更するのである。具体的には、交換したインジェクタ41のインジェクタ番号42、「0010」を入力する。
【0058】
入力された車両関連情報がサーバ装置30へ送信されると(図3中のS150)、サーバ装置30では、新規書込でないことが判断される(図5中のS330,S340:NO)。すると、サーバ装置30では、送信されたインジェクタ番号を用い、データベース31の部品識別番号33に基づいて、該当する補正データ34を送信する(S350)。これによって、端末装置20に、交換したインジェクタ41に対応する補正データ34が送信され、ECU10の制御データ12が書き換えられる。この場合も、車両関連情報がECU10に記憶され、一方サーバ装置30では、データベース31が更新される(S380)。
【0059】
▲3▼市場でのデータ書込の場合(その2)
例えば、ECU10の故障により、ECU10に搭載された制御プログラム11や制御データ12が破損した場合を考える。
このときは、ECU10から車両関連情報が読み出せない場合も想定される。そこでECU10との通信が可能であり、ECU10に車両関連情報の少なくとも一部が記憶されている場合(S100:YES)、車両関連情報の読み出しが行われる(S110)。一方、ECU10との通信が不可能であってECU10自体の交換が必要であるとき、あるいは、ECU10との通信が可能であってもECU10の車両関連情報が全て消失してしまっている場合には、端末装置20を介して車両関連情報を新たに入力する(S120)。以下の説明では、ECU10から車両関連情報の一部が読み出せた場合を例に挙げて説明する。
【0060】
このときの入力画面例を示すのが、図8の説明図である。
図8には、エンジン番号「AAAA」のみが読み出され、斜線を施して示した車両番号、ECU番号、インジェクタ番号については消失してしまった様子を示した。
【0061】
このときは、入力された車両関連情報がサーバ装置30へ送信されると(図3中のS150)、サーバ装置30では、送信されたエンジン番号を用い、車両固有情報32に基づく検索を行い、対応する部品識別番号33を特定する。そして、該当する補正データ34を送信する(S350)。また、車両形式などを用い、車両情報35に基づいて、該当する制御プログラム36を検索して送信する(S350)。
【0062】
これによって、端末装置20には、制御プログラム36及び補正データ34が送信され、ECU10には制御プログラム11及び制御データ12が書き込まれる。
次に、本実施例のデータ書込システムの発揮する効果を説明する。
【0063】
本実施例のデータ書込システムでは、サーバ装置30のデータベース31に予め補正データ34を部品識別番号33に対応させて記憶しておくようにし、端末装置20がこのサーバ装置30にアクセスすることで、端末装置20は、補正データ34を取得し、この補正データ34を、ECU10の制御データ12に反映させる。これにより、個々のインジェクタのばらつきを考慮したECU10へのデータの書き込みを実現できる。
【0064】
このとき、端末装置20から車両関連情報を送信し(図3中のS150)、サーバ装置30が部品識別番号33に基づき、該当する補正データ34を送信する構成とした。このようにサーバ装置30側で補正データ34を検索して送信する構成としたため、端末装置20の構成が簡単になる。
【0065】
また、端末装置20から送信される車両関連情報に基づき、サーバ装置30は、部品識別番号33に対応付けて、車両固有情報32を記憶する(図5中のS380)。したがって、データベース31にこのような対応関係が形成された後は、インジェクタ番号が分からなくなったときでも、車両番号、エンジン番号、ECU番号などが分かれば、該当する補正データ34を取得することができる。
【0066】
さらにまた、本実施例のデータ書込システムでは、車両関連情報は端末装置20からECU10にも送信され(図4中のS220)、ECU10に車両関連情報が記憶される。そして、ECU10に車両関連情報があれば(図3中のS100:YES)、ECU10から車両関連情報が読み出される(S110)。したがって、何度も同じ情報を入力する手間が省けて便利である。
【0067】
また、本実施例のデータ書込システムでは、端末装置20からサーバ装置30へ送信される車両関連情報の中にアクセス日時及びアクセス場所の情報が含まれ、サーバ装置30のデータベース31に、車両固有情報32として記憶される(図2参照)。これによって、車両毎の不具合発生状況を把握でき、不具合の発生を統計的に管理することができる。
【0068】
さらにまた、本実施例のデータ書込システムでは、サーバ装置30のデータベース31に、ECU10に搭載されて用いられる制御プログラム36を記憶するようにした(図2参照)。そして、必要に応じ、補正データ34と共にあるいは補正データ34に代え、制御プログラム36を端末装置20へ送信可能にした。そして、端末装置20は、受信した制御プログラム36を書込情報としてECU10に送信可能とし、これにより、ECU10の制御プログラム11の書き込みや書き換えを実現した。その結果、ECU10における制御プログラム11の新規書込はもちろん、制御プログラム11が消失してしまったときにも対応できる。また、制御プログラム11のバージョンアップも容易に行うことができる。
【0069】
加えて、端末装置20に搭載されて用いられるEOLプログラム37をデータベース31に記憶するようにし(図2参照)、サーバ装置30は、端末装置20からの要求に応じて、EOLプログラム37をも送信可能とした。端末装置20は、受信したEOLプログラム37によって自身のEOLプログラムを更新する。これによって、EOLプログラムのバージョンアップも容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施例のデータ書込システムでは、ネットワーク50にインターネットを用いた。したがって、特に端末装置20を携帯可能なラップトップ型などのPC21で構成すれば、場所を選ばずアクセスできることになる。したがって、例えばECU10の故障などによって車両が道路に立ち往生した場合、その現場にて、ECU10へのデータ書き込みを実現することも可能になる。これは牽引して修理工場まで運ぶことが困難な大型車両に有効である。
【0071】
以上、本発明はこのような実施例に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
例えば上記実施例では、インジェクタを例に挙げていたが、これには限定されない。例えば、他のアクチュエータやセンサなどのばらつきを補正に対しても本発明が適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のデータ書込システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】データベースに記憶される情報を示す説明図である。
【図3】端末装置における端末側処理の前半部分を示すフローチャートである。
【図4】端末装置における端末側処理の後半部分を示すフローチャートである。
【図5】サーバ装置におけるサーバ側処理を示すフローチャートである。
【図6】端末装置の入力画面例を示す説明図である。
【図7】端末装置の入力画面例を示す説明図である。
【図8】端末装置の入力画面例を示す説明図である。
【図9】ECU、エンジン、インジェクタの対応関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10…ECU
11…制御プログラム
12…制御データ
13…ECU番号
20…端末装置
21…PC
22…ダイアグツール
30…サーバ装置
31…データベース
32…車両固有情報
32a…車両番号
32b…エンジン番号
32c…ECU番号
32d…アクセス日時
32e…アクセス場所
33…部品識別番号
34…補正データ
35…車両情報
35a…車両形式
35b…エンジン形式
35c…オプション情報
35d…ECU形式
36…制御プログラム
37…EOLプログラム
41…インジェクタ
42…インジェクタ番号
43…エンジン
44…エンジン番号
50…ネットワーク
61…ボタン
62…プルダウンメニュー
63…マウスカーソル
64a,64b,64c,64d,
64e,64f,64g,65a,65b
…入力フィールド

Claims (9)

  1. 外部からの書込指示があると、送信される書込情報の基づき、制御プログラム又は制御データの少なくとも一方を書き込む車両制御用の電子制御装置に対して用いられ、
    前記電子制御装置に接続され、書込プログラムを実行することにより、当該電子制御装置に対する前記書込指示を行い、前記書込情報を送信する端末装置と、
    前記端末装置との間でデータ通信可能なサーバ装置と
    を備えたデータ書込システムにおいて、
    前記サーバ装置は、
    前記電子制御装置の車両制御に用いられる所定部品の固有のばらつきを補正する補正データを記憶したデータベース
    前記端末装置との間にデータ通信可能状態が確立された際に、前記端末装置からの要求に応じて前記補正データを送信する補正データ送信手段と、を備え
    前記端末装置は、
    前記サーバ装置から送信される前記補正データを前記書込情報として前記電子制御装置に送信する書込情報送信手段を備えており、
    前記サーバ装置において、
    前記データベースには、前記部品毎の固有の部品識別番号と前記補正データとが予め対応付けて記憶され、
    前記補正データ送信手段は、前記端末装置から送信されてきた前記部品識別番号に対応する前記補正データを前記端末装置に送信する、ように構成され、
    さらに、
    前記電子制御装置の搭載される車両に関連する車両固有情報が前記端末装置から受信された際、該車両固有情報に基づいて、該車両固有情報による前記データベースへの書込を行うべきか否かを判定する書込判定手段と、
    該書込判定手段により書込を行うべきと判定された場合に、前記車両固有情報と前記部品識別番号とを対応付けて前記データベースへの書込を行うデータベース書込手段と、を備えている
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  2. 請求項1に記載のデータ書込システムにおいて、
    前記端末装置は、
    前記サーバ装置との間にデータ通信可能状態を確立する通信状態確立手段と、
    該通信状態確立手段によりデータ通信可能状態が確立された後に、前記部品識別番号を前記サーバ装置に送信する識別番号送信手段と、が備えられており、
    前記サーバ装置は、
    前記端末装置から送信される部品識別番号を用いて、前記データベースの中から該当する補正データを検索する補正データ検索手段が備えられ、
    前記補正データ送信手段が、前記補正データ検索手段により検出された補正データを前記端末装置に送信する、ように構成されている
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  3. 請求項2に記載のデータ書込システムにおいて、
    前記端末装置は、
    前記通信状態確立手段によりデータ通信可能状態が確立された後に、前記車両固有情報を前記サーバ装置に送信する固有情報送信手段が備えられており、
    前記サーバ装置は、
    前記データベースにおける前記部品識別番号に対し、車両毎に固有の車両固有情報が対応付けて記憶されており、
    前記補正データ検索手段が、前記端末装置から送信される車両固有情報を用いて、前記データベースの中から該当する補正データを検索可能である
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  4. 請求項2に記載のデータ書込システムにおいて、
    前記電子制御装置に前記部品識別番号を記憶しておき、
    前記端末装置は、
    前記電子制御装置に記憶された前記部品識別番号を読み出す識別番号読出手段を備え、
    前記識別番号送信手段が、前記識別番号読出手段により読み出された部品識別番号を前記サーバ装置に送信する
    ことを特徴とするデータ書込システム。
  5. 請求項3に記載のデータ書込システムにおいて、
    前記電子制御装置に前記車両固有情報を記憶しておき、
    前記端末装置は、
    前記電子制御装置に記憶された前記車両固有情報を読み出す固有情報読出手段を備え、
    前記固有情報送信手段が、前記固有情報読出手段により読み出された車両固有情報を前記サーバ装置に送信する
    ことを特徴とする請求項3に記載のデータ書込システム。
  6. 請求項〜5のいずれかに記載のデータ書込システムにおいて、
    前記端末装置は、
    前記通信状態確立手段によりデータ通信可能状態が確立された後に、前記車両固有情報を前記サーバ装置に送信する固有情報送信手段が備えられており、
    該固有情報送信手段が、前記サーバ装置がアクセス履歴を管理するためのアクセス情報を前記車両固有情報の一部として送信可能である
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のデータ書込システムにおいて、
    前記サーバ装置は、
    前記データベースに電子制御装置に搭載される制御プログラムが記憶され、
    前記書込判定手段が、車両制御に関する車両情報が前記端末装置から受信された際に、該車両情報および前記車両固有情報に基づいて、前記データベースへの書込を行うべきか否かを判定して、
    さらに、
    前記書込判定手段により前記データベースへの書込を行うべきと判定された場合に、前記制御プログラムを前記端末装置に送信する制御プログラム送信手段が備えられており、
    前記端末装置は、
    前記通信状態確立手段によりデータ通信可能状態が確立された後に、前記車両情報を前記サーバ装置に送信する車両情報送信手段が備えられており、
    前記書込情報送信手段が、前記サーバ装置から送信される前記制御プログラム,および,前記補正データの一方または両方前記書込情報として前記電子制御装置に送信する
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のデータ書込システムにおいて、
    前記サーバ装置は、
    前記データベースに前記端末装置に搭載される書込プログラムが記憶されており、
    前記端末装置は、
    搭載された書込プログラムを、前記サーバ装置から送信される書込プログラムに更新する書込プログラム更新手段が備えられている
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のデータ書込システムにおいて、
    前記サーバ装置は、インターネット上の装置として、前記端末装置からアクセスされる
    ことを特徴とする電子制御装置へのデータ書込システム。
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