JP3982038B2 - 車両用ドアロックシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に接近する人を赤外線エリアセンサにより検出して動作する車両用ドアロックシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ドアロックを解除するために、例えばキーシリンダにキーを差込んだり、キーレスエントリシステムのリモートキーを操作するなどのドアロック解除の動作を行うことなく、ドアロック解除の判断を車両側が行う自動ロック解除システムが提案されている。これは、車両側から携帯用電子キーに対して質問信号を発信し、これを受けて電子キー側が応答信号を返すことにより、車両側が受信した応答信号の照合を行い、予め登録された電子キーであると認証したときは、ドアロックの解除を自動的に行うシステムである。従って、電子キーを携帯した人は、ドアロックの解除操作を行うことなく乗車することができるので、素早く乗車でき使い勝手に優れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電子キーによるドアロックの解除のタイミングは主に駐車時(エンジン停止時)であり、車両側からの信号発信時の消費電力が問題となる。
【0004】
しかしながら、電子キーが車両の近傍に位置しているかを判断する手段がないことから、車両からの質問信号は所定間隔を設けて常に発信させている必要があり、消費電力の低減には限界がある。これを回避するためには、低電力の超音波センサなどを利用して接近する人を検出することも考えられるが、超音波センサでは検出物が人なのかを判断することができないため、超音波センサの検出対象領域に物体が位置するような状況では質問信号の発信状態を継続しなければならず、消費電力の大幅な低減とはならないという欠点がある。
このことは、従来のリモコンキーにおいても、車両側はリモコンキーからの信号の受信待機状態を維持しなければならず、電力消費の低減が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電子キーとの通信に応じてドアロック制御動作を実行する構成において、消費電力を低減することができる車両用ドアロックシステムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、赤外線エリアセンサは車外周辺に設定されて検出対象領域の温度分布を検出するので、熱画像データ作成手段は、赤外線エリアセンサが検出した温度分布に基づいて熱画像データを作成する。そして、物体判断手段は、熱画像データ作成手段が作成した熱画像データに基づいて検出対象領域に位置した物体を判断する。
【0007】
ここで、ドアロック制御手段は、物体判断手段が物体は人体であると判断したときは電子キーの真偽を判定する判定動作を実行し、当該電子キーは真であると判定したときはドアロックを解除する。これにより、ドアロック解除手段の判定動作が必要なタイミングでのみ行われるようになるので、消費電力の低減を図ることができる。
また、物体検出手段は、赤外線エリアセンサの熱検知素子のうち間引いて作動させた所定の熱検知素子による温度分布に基づいて熱画像データ作成手段が作成した熱画像データにより検出対象領域に物体が位置したかを判断する。これにより、赤外線エリアセンサの消費電力を一層抑制することができる。
そして、物体判断手段は、物体検出手段が物体を検出したときは、赤外線エリアセンサの全ての熱検知素子を作動させることによる温度分布に基づいて熱画像データ作成手段が作成した熱画像データにより物体を判断するので、検出対象領域に位置した物体を確実に判断することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、電子キーを携帯した人が降車して赤外線エリアセンサの検出対象領域に位置した状態で車両から離れると、赤外線エリアセンサにより人を検出していることに応じてドアロック制御手段が電子キーとの通信動作を行うにもかかわらず、電子キーとの通信が不可能となるので、このような場合は、ドアロック制御手段はドアロックを実行する。これにより、自動的なドアロックが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図7を参照して説明する。
図2は車両の外観を示している。この図2において、車両の運転席及び助手席ドアに対応した車両フレーム部、後席の右席、左席ドアに対応した車両フレーム部には赤外線エリアセンサユニット1〜4がそれぞれ取付けられている。この場合、赤外線エリアセンサユニット1〜4の検出対象領域はそれぞれのドアの外方領域に設定されている。
【0012】
図1は全体の構成を概略的に示している。この図1において、赤外線エリアセンサ5の前面にはレンズ6が配置されており、このレンズ6により赤外線エリアセンサ5上に検出対象領域の熱画像が結像するようになっている。このレンズ6は高密度ポリエチレン、カルコゲンガラス、BaF2 、ZnSなどから成る赤外線集光レンズであり、球面、非球面、或いはフレネル形状をなしている。
【0013】
赤外線エリアセンサ5は、熱検知素子7が例えば15×10個のように2次元のマトリクス状に集合した形状をしており、車両周辺から発せられた赤外線をレンズ6で集光して熱検知素子7上に熱画像として結像する。この場合、レンズ6は、例えば500mmはなれた位置で750×500mmの範囲を熱検知素子7全体に集光できるように設計されている。従って、赤外線エリアセンサ5の熱検知素子7の個数が15×10個とすると、1つの熱検知素子7で検出できる範囲(検出分解能)は50mm四方となる。
また、赤外線エリアセンサ5において熱検知素子7の周辺には、信号発生回路8及び選択回路9が設置されている。
【0014】
熱検知素子7単体は、図3に示すようにSi基板5a上にSiO2 薄膜7a、金属薄膜抵抗部7b、吸収膜7cを形成してから、金属薄膜抵抗部7bの裏面側をエッチングにより除去することにより金属薄膜抵抗部7bがSi基板5aからエアギャップを存して位置する断熱構造に形成されている。
【0015】
図4は赤外線エリアセンサ5の電気的構成を概略的に示している。この図4において、赤外線エリアセンサ5の熱検知素子7は選択回路18を構成するXリングカウンタ18a及びYリングカウンタ18bによりFETを通じて択一的に順番に選択されるようになっており、選択された熱検知素子7からの信号を図1に示す信号検出・処理回路10(熱画像データ作成手段に相当)に順に取込むことにより、赤外線エリアセンサ5に設定された検出領域の温度分布を検出することができる。
【0016】
即ち、図1において、信号検出・処理回路10は、信号増幅器11、信号処理回路12、データ送信回路13から構成されており、信号処理回路12において赤外線エリアセンサ5が検出した温度分布に基づいて熱画像データを作成するようになっている。
【0017】
そして、ドアロックシステム制御回路14(物体判断手段、物体検出手段、ドアロック制御手段に相当)は、信号検出・処理回路10からの熱画像データに基づいて後述するように電子キー15との通信に応じてドアロック制御動作を実行する。
【0018】
ここで、電子キー15は、ドアロックシステム制御回路14から質問信号を受信したときは予め記憶されている自己固有の識別信号を示す応答信号を返信するようになっている。
【0019】
次に上記構成の作用について説明する。
例えば運転者が車両に乗車するために電子キー15を携帯した状態で赤外線エリアセンサ5の検出対象領域に位置すると、運転者から発せられた赤外線がレンズ6を通じて赤外線エリアセンサ5に到達する。
【0020】
赤外線エリアセンサ5の熱検知素子7にあっては、入射した赤外線を吸収膜7cで吸収することにより熱に変換し、その熱により金属薄膜抵抗部7bの温度が上昇して抵抗値が変化するので、熱検知素子7からのセンサ信号を信号検出・処理回路10に順に出力することにより検出対象領域の温度分布を検出することができる。
【0021】
そして、信号検出・処理回路10は、全ての熱検知素子7からの信号を取込むことにより検出対象領域の熱画像データを作成することができる。つまり、赤外線エリアセンサ5が検出した温度分布データを信号処理回路12で処理することにより熱画像データを作成する。この熱画像データは、データ送信回路13によりドアロックシステム制御回路14に送信され、検出対象領域に位置する人の位置検出に用いる。
【0022】
ここで、図5はドアロックシステム制御回路14の動作を示している。この図5において、ドアロックシステム制御回路14は、信号検出・処理回路10からの熱画像データに基づいて連続的に車外温度をモニタしており(S101)、温度の急変を検出することにより検出対象領域に物体が位置したかを判断し、そのときの温度分布の変化から物体が位置したかを判断する(S102)。この場合、15×10個のドットマトリクス状の熱検知素子7を全て作動させたときは、消費電力が大きくなってしまう。
【0023】
即ち、赤外線エリアセンサ5の1つの熱検知素子7を作動させるために必要な消費電流が20mA、作動に必要となる時間が0.1msec とすると、150個の熱検知素子7を作動するには1つの赤外線エリアセンサ5において15msec の間常に20mAを消費していることになる。
【0024】
ここで、赤外線エリアセンサ5の検出サイクルを80msec の周期で作動させたとすると、全ての赤外線エリアセンサ5の熱検知素子7が連続して作動している時間は15msec ×4=60msec となり、このときの平均消費電力は、20mA×(60/80)=15mAとなる。
【0025】
そこで、150個の熱検知素子7のうち、例えば図6に塗潰して示す位置の50個の熱検知素子7だけ作動させて検出を行うことにした。この場合、作動時間は60msec の1/3である20msec となり、このときの平均消費電力は、20mA×(20/80)=5mAとなる(図7参照)。
【0026】
従って、本実施例では、赤外線エリアセンサ5において作動させる熱検知素子7の数を1/3に削減することにより、消費電力を1/3に低減することができる。この場合、作動させる熱検知素子7の数をさらに減らすことにより、消費電力を一層低減することができる。
【0027】
さて、電子キー15を携帯した人が車両に接近して4個の赤外線エリアセンサ5のうち例えば運転席に対応した赤外線エリアセンサ5の検出対象領域に位置すると、上述のようにして赤外線エリアセンサ5が検出対象領域に位置した物体を検出するようになる。このとき、赤外線エリアセンサ5においては熱検知素子7を間引いて作動させているので、作動している熱検知素子7に対応する検知領域に人の顔、或いは手が位置したときは、それらに対応する熱検知素子7の温度が上昇するようになり、赤外線エリアセンサ5により検出される温度分布が変化するようになる。これにより、赤外線エリアセンサ5の熱検知素子を間引いて作動させながら、車両に接近する物体の有無を判断することができる。
【0028】
そして、作動している熱検知素子7が検出した温度変化の度合いを把握することにより、物体が侵入したと判断したときは(図7参照)、物体の侵入を検出した赤外線エリアセンサ5の全ての熱検知素子7を作動させることによりその移動物体がどのような大きさ、温度分布を有するかを判断する(S103)。
【0029】
この場合、赤外線エリアセンサ5の取得エリアによっては、水平よりも上向きになる熱検知素子7もあり、太陽光が入射した場合などに誤検出することがある。このような場合、熱検知素子7により検出された温度分布変化が一様であることから、太陽光の入射或いはノイズであると判断し(S104)、検出不可能を判断して通常のタイミングでの信号発信することにより、ドアロック解除の未作動を回避することができる。
【0030】
そして、全ての熱検知素子7により周辺温度データ取得し(S105)、人体であると判断したときは(S106:YES)(図7参照)、質問信号を発信する(S107)。
【0031】
すると、人が携帯している電子キー15が質問信号を受信して、予め記憶している識別番号を示す応答信号を返信するので、ドアロックシステム制御回路14は、応答信号を受信したときは(S108)、応答信号が示す識別番号に基づいて電子キー15の真偽を判断し(S109)、真であると判断したときはドアロックを解除する(S110)。
そして、上述のようにしてドアロックを解除したときは、赤外線エリアセンサ5による人検知動作を再開する。
【0032】
以上の動作により、電子キー15を携帯した人が車両に接近したときは、ドアロックの解除動作を行うことなく車両に乗車することができるので、使い勝手に優れている。
【0033】
尚、人が車室内に乗車して電子キー15が車室内に存在する(車両が走行している)場合においても、赤外線エリアセンサ5は車外の周辺温度情報を取得しているものの、赤外線エリアセンサ5が物体を検知することはないので、電子キー15に対する車両側からの質問信号の発信及び電子キー15からの応答信号の返信は行っていない。
【0034】
一方、図5のフローチャートには記載されていないものの、次のようにドアロックを自動的に行うことができる。
つまり、車両を停止して運転者が電子キー15を携帯して降車すると、赤外線エリアセンサ5の検出対象領域に人が位置するようになるので、上述したのと同様にして電子キー15に対する通信によりドアロック解除動作が行われる。このとき、ドアロックは既に解除された状態にあるので、ドアロック解除動作は有効に作用することない。
【0035】
そして、運転者が赤外線エリアセンサ5の検出対象領域に位置しながら車両から離れると、電子キー15の通信範囲から外れるようになるので、電子キー15からの応答信号が途絶えるようになる。従って、ドアロックシステム制御回路14は、このような条件が成立したこと基づいてドアロックを実行することにより赤外線エリアセンサ5を利用した自動ロックが可能となる。
【0036】
上記構成のものによれば、赤外線エリアセンサ5が検出した温度分布に基づいて車両に人が接近したことを検出したときに電子キー15との通信を行うようにしたので、電子キー15との通信動作を間欠的に行う構成に比較して、消費電力の大きな通信動作が必要なタイミングでのみ電子キー15と通信を行うことができ、車両に搭載されたバッテリの消耗を極力低減することができる。
【0037】
この場合、通常時においては赤外線エリアセンサ5の熱検知素子7のうち1/3の熱検知素子を間引いて作動させると共に、それらの熱検知素子7による温度分布に基づいて物体が侵入したと判断したときは全ての熱検知素子7を作動させることにより物体が人かを判断するようにしたので、通常時におけるバッテリの消費電力を低減しながら、検出対象領域に位置する人を確実に判断することができる。
また、自動ロック解除に加えて自動ロックも行うことができるので、使い勝手に極めて優れている。
【0038】
本発明は、上記実施例のみに限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
図8に示すように赤外線エリアセンサユニット1をドアノブ16の内側に取付けることにより、赤外線エリアセンサ5に日光が直接入射してしまうことをドアノブ16により遮蔽することができるので、日光の影響を回避することができる。さらに、ドアノブ16の内部に手が侵入した場合のみ電子キー15との通信を実行することにより、さらに電子キー15との通信タイミングを減少して消費電力を一層低減することができる。
【0039】
赤外線エリアセンサ5が検出した温度分布に基づいて車両への物体の接近を検出したときは、物体の侵入を検出した赤外線エリアセンサ5の全ての熱検知素子7を連続的に作動させるようにしてもよい。この場合、赤外線エリアセンサ5のデータ取得間隔が短くなるので、物体を判断するまでの時間を短縮することができる。
【0040】
また、本発明を一般的なキーレスエントリーシステムに適用することができる。つまり、現在のドアロックシステム制御回路は、リモートキーからロック信号或いはアンロック信号の受信待機状態となっており、消費電力が比較的大きい。従って、消費電力が小さな赤外線エリアセンサ5により人を検知したときのみ受信動作を実行することにより消費電力の低減を図ることができる。
【0041】
赤外線エリアセンサ5の検出対象領域として図9に示すように車両の後部にも設定するようにしてもよい。この場合、車両の後方の死角に位置する子供、動物、暴漢などの存在を判断できるので、例えばクラクション、ライトなどの警報形態と組合わせることにより、事故などを未然に防止することができる。
赤外線エリアセンサ5を車両の停止状態で作動させるようにしてもよい。この場合、全体の消費電力を一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における全体構成を示す概略図
【図2】赤外線エリアセンサユニットの配置位置を示す車両の斜視図
【図3】赤外線エリアセンサの構造を示す模式図
【図4】赤外線エリアセンサの電気的構成を示す概略図
【図5】ドアロックシステム制御回路の動作を示すフローチャート
【図6】赤外線エリアセンサにおいて作動している熱検知素子の位置を示す図
【図7】赤外線エリアセンサの動作タイミングと消費電力との対応関係を示す図
【図8】本発明の変形例を示すドアノブの斜視図
【図9】本発明のその他の変形例を示す車両の斜視図
【符号の説明】
1〜4は赤外線エリアセンサユニット、5は赤外線エリアセンサ、7は熱検知素子、10は信号検出・処理回路(熱画像データ作成手段)、14はドアロックシステム制御回路(物体判断手段、物体検出手段、ドアロック制御手段)、15は電子キーである。

Claims (2)

  1. 2次元的に配列された複数の熱検知素子を有し、車両の周辺に設定された所定の検出対象領域の温度分布を検出する赤外線エリアセンサと、
    この赤外線エリアセンサが検出した温度分布に基づいて熱画像データを作成する熱画像データ作成手段と、
    この熱画像データ作成手段が作成した熱画像データに基づいて前記検出対象領域に位置した物体を判断する物体判断手段と、
    この物体判断手段が物体は人体であると判断したときは電子キーの真偽を判定する通信動作を実行し、当該電子キーは真であると判定したときはドアロックを解除するドアロック制御手段と、
    前記赤外線エリアセンサの熱検知素子のうち間引いて作動させた所定の熱検知素子による温度分布に基づいて前記熱画像データ作成手段が作成した熱画像データにより前記検出対象領域に物体が位置したことを検出する物体検出手段とを備え、
    前記物体判断手段は、前記物体検出手段が物体を検出したときは、前記赤外線エリアセンサの全ての熱検知素子を作動させることによる温度分布に基づいて前記熱画像データ作成手段が作成した熱画像データにより物体を判断することを特徴とする車両用ドアロックシステム。
  2. 前記ドアロック制御手段は、前記物体判断手段が物体は人であると判断している状態で通信動作にかからず前記電子キーとの通信が不可能となったときはドアロックを実行することを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロックシステム。
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