JP3982018B2 - プラズマディスプレイの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイやプラズマアドレス液晶ディスプレイなどのプラズマディスプレイの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、また大型化が容易であることから、OA機器および広報表示装置などの分野に浸透してきており、さらに、高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。
【0003】
このような用途拡大に伴って、繊細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。このカラーPDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で、対抗するアノードおよびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内に設けた蛍光体に当てることにより表示を行なうものである。この場合、放電の広がりを一定領域に押さえ、表示を規定のセル内で行なわせると同時に、均一な放電空間を確保するために隔壁(障壁またはリブともいう)が設けられている。この隔壁の形状は、およそ幅30〜80μm、高さ100〜200μmであり、この隔壁は、通常、前面ガラス基板や背面ガラス基板にガラスからなる感光性ガラスぺーストを塗布し、乾燥、露光、現像および焼成を経て形成される。
【0004】
ここで使用される感光性ガラスぺーストは、一般に感光性成分にポリマやオリゴマーを用いているために粘度が高くなり、塗布性やレベリング性において劣る。このため、感光性ガラスぺーストに有機溶媒を添加し、粘度を低下させて、塗布性やレベリング性を向上させる手段がとられている。
【0005】
しかしながら、ペーストに有機溶媒を添加した場合には、次のような不都合が生じる。まず、感光性ガラスぺースト自体の粘度が低下し流動性が高くなることによって、ペースト塗布面の少しの傾むきによってもペースト層に膜厚むらが発生し、均一な高さの隔壁を形成することができなくなる。また、ペースト表面のべたつき(タック性)のため、ごみや異物などが付着し易くなり、塗布面が汚染される恐れがある。また露光工程においては、目標の線幅のマスクを用いて露光しても、意図する線幅の隔壁が形成できないという重大な不都合が生じる。さらに、現像工程においては、隔壁とその下地層(ガラスやアンダーガラス)との接着性が悪くなり、現像液が浸透し易くなり、このため、隔壁が蛇行し易くなったり、あるいは極端な場合、隔壁が剥がれるなどの重大な欠点が生じる。さらに焼成工程においては、残存している有機溶媒の種類のよっては脱バインダー性が悪く、場合によっては焼成後に隔壁が黒色化するなどの不都合が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プラズマディスプレイの製造工程において、設計通りの形状の隔壁を安定して製造することができるプラズマディスプレイの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目標の線幅の隔壁形成という目的を達成せんとするものであって、本発明のプラズマディスプレイの製造方法は、基板上に、ガラス粉末、感光性有機物および有機溶媒を必須成分とする感光性ガラスぺーストを塗布後、乾燥、露光、現像、および焼成の各工程を経て隔壁を形成するプラズマディスプレイの製造方法において、感光性ガラスぺーストの溶媒残存量を0.01〜1重量%にして露光に供することを特徴とするものであり、本発明では、さらに次の好ましい実施態様を含んでいる。
【0008】
(a) 前記乾燥工程の乾燥温度が150℃以下であること。
【0009】
(b) 前記感光性ガラスペーストを1回の塗布厚みが50μm以上の厚みで塗布す ること。
【0010】
(c) 塗布、乾燥工程が1回または複数回であること。
【0011】
(d) 前記感光性ガラスぺーストの塗布をドクターブレード法またはスリットダイ コート法で行なうこと。
【0012】
(e) 前記ガラス粉末の平均屈折率と感光性有機物の平均屈折率の差が0.05以 下であること。
【0013】
(f) 前記感光性ガラスペーストが次の組成からなること。
【0014】
感光性有機成分 :5〜50重量部
ガラス粉末 :50〜95重量部
有機溶媒 :6〜50重量部
(g) 前記有機成分中に、分子内にカルボキシル基または/および不飽和二重結合 を有する重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを該 有機成分全量に対して10〜90重量%含むこと。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、ガラス粉末、感光性有機物および有機溶媒を必須成分とする感光性ガラスぺーストを塗布後、乾燥、露光、現像および焼成の各工程を経て隔壁を形成するプラズマディスプレイの製造方法において、露光工程における感光性ガラスぺースト中の有機溶媒残存量を0.01〜1重量%にして露光に供することにより、目標の線幅の隔壁形成を可能とするものである。
【0016】
本発明において、感光性ガラスぺペーストに用いられる有機溶媒は、好適には常圧での沸点が20〜250℃の液体であり、具体的には、例えばγ−ブチロラクトン(以下γ−BLと略す)やメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセルソルブ類、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、乳酸エチルやメチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソブチルアセテート、ノルマルペンチルアセテート、イオペンチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル−2−アセテートなどのエステル類類、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、メチレンクロライド、クロロホルムおよびジクロロメタンなどの塩素化炭化水素類などが挙げられ、本発明では、これらのうち1種類または2種類以上使用することができる。
【0017】
これら有機溶媒を用いる場合、常圧での沸点、揮発性、感光性有機物に対する溶解性、分散特性およびレオロジー特性などの点を考慮することが望まれる。例えば、常圧での沸点があまりにも高い場合には、乾燥温度を高くする必要があり、その結果、感光性有機物が熱分解したり、あるいは熱重合を起こすことが懸念される。また、揮発性に優れている溶媒を用いた場合、乾燥が容易であるという利点がある一方で、ペーストのレベリング性が悪くなり、表面平坦性が劣ったり、ペースト組成の安定化が困難になることがある。さらに、感光性有機物に対する溶解性や分散性が悪い場合、均一な組成のペースト塗布膜が形成できないなどの不都合が生じる。これらの点を充分に考慮し、有機溶媒を選定することが望まれる。
【0018】
本発明において、かかる有機溶媒の使用量については、使用量が少なすぎると乾燥時間が少なくて済むかわりに、ペーストの粘度が高くなり、塗布性やレベリング性が悪くなるという欠点がある。一方、有機溶媒が多すぎる場合は、塗布性やレベリング性は向上するが、乾燥に時間がかかり生産性の面で好ましくない。これらの点から、一般的には有機溶媒の使用量は6〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜40重量%である。
【0019】
有機溶媒を含む感光性ガラスペーストは基材上に塗布された後、乾燥して溶媒が除去される。この際、露光に供する前に、感光性ガラスペースト中の有機溶媒残存量を6重量%以下に、より好ましくは3重量%以下に、さらに好ましくは1重量%以下にコントロールすることが重要である。
【0020】
ここで有機溶媒残存量Y(wt%)とは、感光性ガラスペースト中の有機溶媒含有量をX(wt%)、ペースト塗布量をa(g)、乾燥後のペースト重量をb(g)としたときに、次式:
Y=100×{b−a(1−X/100)}/b
で表される。
【0021】
本発明においては、溶媒残存量が上記範囲の場合、マスク露光した際、マスク線幅とほぼ同じ線幅の隔壁を形成することができる。乾燥後の感光性ペースト中の有機溶媒残存量は、少なければ少ないほどよいが、例えば有機溶媒を全て除去するために乾燥温度を高くするとモノマやポリマーが熱重合する恐れがある。乾燥温度条件等によっては、溶媒残存量の下限を例えば0.01重量%として実施することができる。一方、溶媒残存量が6重量%より多い場合は、目標の線幅のマスクを用いて露光しても、マスク線幅に比べてかなり太い線幅の隔壁が形成されるという重大な不都合が生じる。さらに残存溶媒量が多い場合、現像の際に現像液が浸透し、隔壁の一部もしくは全部が剥がれるという問題が生じる。
【0022】
乾燥時の注意点は、感光性ガラスぺーストを塗布した基板を水平に保つことである。基板が傾いていた場合、ぺーストが流動して膜厚むらが発生するからである。
【0023】
乾燥方法としては、熱風オーブンや遠赤外線、ホットプレート、自然乾燥、減圧乾燥など一般によく用いられている方法を用いることができるが、重要な点は、感光性ガラスぺースト層を深さ方向に対して均一に乾燥させるという点である。例えば、ホットプレートを用いて乾燥した場合は、ペースト底部から上部へと熱が伝達するため、ペースト底部が表面より先に乾燥し、気泡をかみ込む恐れが少ない。自然乾燥は時間がかかり生産性が悪く、減圧乾燥は減圧装置が必要となり、設備費がかかりまた生産性も悪い。このような点から、感光性ペーストの乾燥はホットプレートを用いることが特に好ましい。
【0024】
また乾燥温度は、感光性有機物が熱重合を引起こさない温度であれば特に限定されないが、室温レベルの温度では、乾燥時間が長くなり生産性が悪くなる。また、乾燥温度が高すぎる場合は、感光性モノマやオリゴマーが熱分解する恐れがある。このような点から、本発明では40〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜120℃である。ここで乾燥温度とは、例えばホットプレートを用いて乾燥させた場合、ホットプレート表面の温度のことを、熱風オーブンの場合は熱風の温度のことを意味する。
【0025】
本発明において感光性ガラスぺーストを基板に塗布する方法として、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、スリットダイコート法、スピンコート法およびディップ法などが挙げられる。一般によく用いられているスクリーン印刷法では、まず、ガラス基板上にスクリーン印刷により薄膜ぺースト層を形成後、ぺースト表面を乾燥し、その後、再度ぺースト表面上にスクリーン印刷/乾燥の工程を繰り返し、所定の膜厚にするというものである。ドクターブレード法およびスリットダイコート法は、感光性ペーストを1回で塗布して乾燥するため、スクリーン印刷のような印刷/乾燥の工程を複数回繰り返す必要がない。このため、生産性が極めてよい。
【0026】
また、本発明で使用されるガラス粉末は、50〜400℃の熱膨張係数(α50400)が50〜90×10-7であることが好ましい。また、ガラス中に酸化珪素が3〜60重量%、酸化ホウ素が5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上させることができる。ガラス転移温度は430〜500℃、軟化点は470〜580℃であることが好ましい。ガラス転移温度が500℃、軟化点が580℃より高いと、高温で焼成しなければならず、焼成の際に基板に歪みが生じるからである。また、ガラス転移温度が430℃、軟化点が470℃より低いガラスの場合、緻密な隔壁層が得られず、隔壁の剥がれ、断線、蛇行の原因となるからである。ガラス粉末粒子径は作製しようとする隔壁の線幅や高さを考慮して選ばれるが、50体積%粒子径(平均粒子径D50)が1〜6μm、最大粒子サイズが30μm以下、比表面積1.5〜4cm2 /gであることが好ましい。
【0027】
本発明における感光性有機物とは感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーを意味する。感光性ガラスペーストにはこれら感光性有機物以外に光重合開始剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、バインダー、可塑剤、レべリング剤、紫外線吸収剤、有機溶媒などを必要に応じて含有させることができる。
【0028】
感光性モノマーとしては、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物で、具体的にはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロヂシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチッレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェニキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化ヘキシジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート等のアクリレート等を挙げることができる。
【0029】
これら以外に不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0030】
本発明において、これら感光性モノマの含有率は、ガラス粉末と感光性有機物の和に対して5〜30重量%が好ましい。これら以外の範囲では、パターン形成性の悪化や硬化後の硬化不足が発生するため好ましくない。
【0031】
また、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーは、前述の感光性モノマーの1種類以上を合成して得られたものを用いることができる。これら感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーの含有率は、ガラス粉末と感光性有機物の和に対して5〜30重量%が好ましい。この範囲外ではパターンが不可能であったり、パターンの太りが生じたり、蛇行が大きくなることがあるために好ましくない。
光重合開始剤としてはベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジメトキシアセチフェノン、2,2−ジメトキシ−2−メチル−2−フェニル−2−フェニルアセチフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチョオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(P−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタンジオン2−(o−メトキシカルボニル)オキシムおよび1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種類または2種類以上使用することができる。この光重合開始剤は、感光性有機成分に対して0.05〜20重量%の範囲で添加するのが好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%の範囲である。開始剤の量が少なすぎると光感度が低下して硬化不足になり、一方、多すぎる場合は隔壁が太る。
【0032】
増感剤の具体例として、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンイミダノンおよびp−ジメチルアミノベンジルデンインダノンナ等が挙げられる。本発明ではこれら1種類または2種類以上使用することができる。増感剤の使用量は、感光性有機成分に対して0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。増感剤の量が少ない場合、光感度を向上させることができない。一方、多すぎる場合は、光感度が敏感になりすぎて隔壁が太る。
【0033】
重合禁止剤は。保存安定性を向上させるために添加される。具体例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化合物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミンおよびクロラニールなどが挙げられる。使用量は好ましくは0.001〜1重量%である。
【0034】
またバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルーメタクリル酸エステル重合体、α−メチルスチレン重合体およびブチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0035】
さらに可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびグリセリン等が挙げられる。
【0036】
本発明では、紫外線吸収剤を添加することにより、高精細、高解像度が得られる。紫外線吸収剤としては、有機系染料が好ましく用いられる。具体的にはアゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系染料およびベンオフェノン系染料などが使用される。使用量はガラス粉末に対して0.05〜5重量%が好ましい。使用量が少ないと、紫外線吸収剤の添加効果が減少し、多すぎると、焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。より好ましくは0.05〜0.18重量%である。
【0037】
ここで有機染料からなる光吸収剤の使用方法の一例を挙げる。有機染料をアセトンなどの有機溶媒に溶解し、無機粉末と混合し、十分に撹拌する。次にロータリーエバポーレーターを用いて、有機溶媒を蒸発させる。この方法によって無機微粒子の個々の粉末表面に有機染料の膜をコートした、いわゆるカプセル状の粉末が作製することができる。
【0038】
酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防止するために添加される。具体例として2,6−ジ−t−p−クレゾール、ブチルカヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノールおよび2,2−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。使用量はペーストに対して好ましくは0.001〜1重量%である。
【0039】
次に、本発明の感光性ガラスペーストの調製方法について説明する。感光性ガラスペーストは、通常、ガラス粉末、感光性モノマー、オリゴマー、ポリマー、光重合開始剤、増感剤および有機溶媒の各種成分を所定の組成になるように調合した後、3本ローラや混練機で均一に混合・分散し、作製する。ペーストの粘度はガラス粉末、感光性モノマー、オリゴマー、ポリマー、溶媒、可塑剤などの添加割合によって決まるが、その範囲は0.5〜200Pa・sである。例えば、ガラス基板への塗布はスクリーン印刷法では30〜200Pa・s、ドクターブレード法やスリットダイコート法では2〜50Pa・s、スピンコート法では0.5〜2Pa・sが好ましい。
【0040】
次に、感光性ガラスペーストを用いてパターン加工を行なう一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。ガラス基板やセラミックの基板、もしくはポリマー製フィルムの上に、感光性ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としてはスクリーン印刷、バーコート、ロールコート、スリットダイコートおよびドクターブレードなど一般的な方法を用いることができる。ここで、感光性ガラスペーストを基板上に塗布する場合、基板と塗布膜との密着性を高めるために、基板の表面を処理することができる。表面処理液としては、シランカップリング、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロパントリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプタンプロピルトリメトキシシラン等、あるいは有機金属、例えば、有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなどが挙げられる。シランカップリング剤あるいは有機金属を有機溶媒、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどで0.5〜5%の濃度に希釈したものを用いることができる。
【0041】
次に、この表面処理液をスピンナーなどで基板上に均一に塗布した後、80〜140℃で10〜60分乾燥することによって表面処理することができる。
【0042】
感光性ガラスペーストを塗布した後、露光装置を用いて露光を行なう。露光は通常のフォトリソグラフィーで行なわれるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いられるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらも選定できる。また、フォトマスクを用いずに、赤色や青色のレーザ光などで直接描画する方法を用いてもよい。
【0043】
露光装置としてはステッパー露光機やプロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行なう場合は、ガラス基板などの基板上に感光性ペーストを塗布した後に搬送しながら露光を行なうことによって、小さな露光面積で大きな面積を露光することができる。
【0044】
この際、使用される活性光源としては、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線およびレーザ光線などが挙げられるが、これらの中でも紫外線が好ましく、その光源としては例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプおよび殺菌灯などが使用できる。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.2〜30分間露光を行なうことが好ましい。
【0045】
本発明では、塗布した感光性ガラスペースト表面に酸素遮断膜を設けることによって、パターン形状を向上させることができる。酸素遮断膜の一例としては、PVAやセルロース等の膜、あるいはポリエステルなどのフィルムがあげられる。PVA膜の形成方法は濃度が0.5〜5重量%の水溶液をスピンナーなどの方法で基板上に均一に塗布した後、70〜90℃で10〜60分間乾燥することによって、水分を蒸発させて行なう。また、水溶液中にアルコールを少量添加すると絶縁膜との塗れ性がよくなり蒸発が容易になるので好ましい。さらに好ましいPVA溶液濃度は1〜3重量%である。濃度がこの範囲にあると感度が一層向上する。PVA塗布により感度が向上するのは次の理由が推定される。すなわち、感光性有機成分が光反応する際に空気中の酸素があると光硬化の感度を阻害すると考えられるがPVAの膜があると余分な酸素を遮断できるので露光時に感度が向上すると考えられる。
【0046】
基材としてポリエステルやポリプレン、ポリエチレンなどの透明なフィルムを用いる場合は、塗布後の感光性ガラスペーストの上にこれらのフィルムを張り付けて用いる方法もある。露光後、感光部分と非感光部分の現像に対する溶解度の差を利用して現像を行なうが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行なう。用いる現像液は感光性ガラスペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を使用できる。また、この有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ガラスペースト中にカルボキシルキ等の酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像するもとができる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用するが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去し易いので好ましい。有機アルカリとしては、アミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎる場合、可溶部が除去されず好ましくなく、またアルカリ濃度が高すぎる場合、パターン部を剥離させ、さらに非可溶部を腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行なうことが工程管理上好ましい。
【0047】
次に焼成炉にて焼成を行なう。焼成雰囲気や温度はペーストの基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としてはバッチ式の焼成炉やローラーハース型などのベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は500〜610℃の温度で5〜60分間保持して焼成を行なう。特に好ましい温度は530〜580℃である。また、以上の塗布や露光、現像、焼成の各工程中に乾燥、予備反応の目的で50〜200℃加熱工程を導入してもよい。プラズマディスプレイを製造する場合、電極層を形成したガラス基板上に、本発明の感光性ガラスペーストを用いて、上記の工程によって隔壁を形成し、さらに蛍光体をスクリーン印刷法や感光性ガラスペースト法によって、形成し、背面基板を得ることができる。得られた背面基板と前面基板を合わせて、封止、希ガス導入した後、駆動回路を接続することによってプラズマディスプレイを製造できる。
【0048】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。なお、実施例、比較例中の濃度(%)は特にことわらない限り重量%である。
【0049】
比較例1)下記のガラス粒子および下記の有機成分を、下記のペースト組成割合で配合して感光性ガラスペーストを作成した。作製手順は、まず、有機成分の各成分を80℃に加熱しながら溶解し、その後、ガラス微粒子を添加し、混練機で混練することによって、ペーストを作成した。
【0050】
各成分の添加比率を以下に示す。
【0051】
Figure 0003982018
【0052】
Figure 0003982018
【0053】
Figure 0003982018
これら有機成分の平均屈折率の計算値は約1.59であり、これはガラスの屈折率1.586に非常に近いものであった。
【0054】
ガラス粉末 : 51.90%
感光性モノマ: 11.64%
感光性ポリマ: 9.46%
光重合開始剤: 2.60%
増感剤 : 2.60%
紫外線吸光剤: 0.10%
有機溶媒 : 21.70%
次に、100mm角ガラス基板上にドクターブレード法により、クリアランス380μmにて、上記ペーストを1回塗布した。塗布量は4.454gであった。有機溶媒(γ−ブチロラクトン)はペーストの21.7重量%含まれることから有機溶媒量は4.454g×0.217=1.109g含まれていることになる。
【0055】
次にホットプレートで80℃、60分乾燥後、ペースト重量を測定したところ、3.576gであった。この乾燥により、0.878gの有機溶媒(γ−ブチロラクトン)が蒸発した。その結果、1.109−0.878g=0.231gはペースト中に残存しており、溶媒残存量は5.18重量%であった。
【0056】
このペーストにマスクを介して露光を行なった。マスクはピッチ220μm、線幅60μm、プラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターン形成が可能となるように設計したクロムマスクである。露光は30mW/cm2の出力で超高圧水銀灯で0.8J/cm2紫外線露光を行なった。その後、モノエタノールアミンの0.3%水溶液を用いて、35℃でシャワー現像を行ない、80℃、10分間乾燥した。
【0057】
隔壁パターンの評価は、電子顕微鏡観察で観察し、評価結果は、良好な形状(下部のほうが少し幅の広い台形状)が得られた場合は〇、剥がれたり、残膜が残った場合は×とした。
【0058】
隔壁の高さ:179μm
半値幅:68μm
形状:〇
(実施例比較例1と同様にドクターブレード法で感光性ガラスペーストを塗布した後、ホットプレートで100℃、50分間乾燥。このときの有機溶媒の残存量は0.5重量%であった。その後、この状態で露光および現像を行ない、電子顕微鏡観察で隔壁パターンの断面を観察したところ、隔壁形状および隔壁幅とも目標のものを得ることができた。
隔壁の高さ:175μm
半値幅:61μm
形状:〇
(比較例比較例1と同様にドクターブレード法で感光性ガラスペーストを塗布した後、ホットプレートで80℃、30分間乾燥した。このときの有機溶媒残存量は10.8%であった。その後、この状態で露光および現像を行ない、電子顕微鏡観察で隔壁パターンの断面を観察したところ、隔壁形状はよいものの、隔壁幅がマスク線幅に比べて大幅に太くなり、目標の隔壁幅約60μmの隔壁を得ることができなかった。
隔壁の高さ:170μm
半値幅:108μm
形状:〇
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、プラズマディスプレイの製造において、設計通りの目標とする線幅の隔壁を安定して形成でき、高品質なプラズマディスプレイが製造できる。

Claims (7)

  1. 基板上に、ガラス粉末、感光性有機物および有機溶媒からなる感光性ガラスぺーストを塗布後、乾燥、露光、現像および焼成の各工程を経て隔壁を形成するプラズマディスプレイの製造方法において、該感光性ガラスぺースト中の有機溶媒残存量を0.01〜1重量%にして露光に供することを特徴とするプラズマディスプレイの製造方法
  2. 前記乾燥を150℃以下の温度で行なうことを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイの製造方法。
  3. 前記感光性ガラスペーストの1回の塗布厚みが50μm以上であることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマディスプレイの製造方法。
  4. 塗布、乾燥工程が1回または複数回であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
  5. 前記感光性ガラスぺーストをドクターブレード法またはスリットダイコート法で塗布することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
  6. 前記感光性ガラスペーストが次の組成からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
    感光性有機成分:5〜50重量部
    ガラス粉末:50〜95重量部
    有機溶媒:6〜50重量部
  7. 前記有機成分中に、分子内にカルボキシル基または/および不飽和二重結合を有する重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを該有機成分全量に対して10〜90重量%含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
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