JP3980220B2 - 偏光変換素子及びlcdパネル用照明装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、光束の偏光方向を揃える偏光変換素子及びこの偏光変換素子を用いたLCDパネル用照明装置に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
液晶ディスプレイでは、液晶表示素子(LCDパネル)を偏光方向が揃った光束(直線偏光光束)で照明する必要があるため、各種の偏光変換素子(偏光子)が用いられており、その中で、ノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ等のLCDパネルの照明は、バックライトと呼ばれる薄型の照明装置によって行われている。従来のバックライトは、基本的に、光源からの非偏光の光束を、断面楔状をした導光体内に導いてその一面から出射させ、このとLCDパネルとの間に、何らかの偏光子を介在させる構成であった。偏光子は、振動方向がランダムな光束(非偏光光束)中の特定の偏光方向(振動方向)の光束を100%吸収し、これと直交する方向の偏光成分を透過させるという性質上、少なくとも50%の光エネルギロスが生じるのが避けられない。
【0003】
【発明の目的】
本発明は、光エネルギの利用効率が高い、すなわち、少なくとも50%以上の光エネルギを利用することができる偏光変換素子及びLCDパネル用照明装置を得ることを目的とする。本発明は、光束射出面からの光量分布を可及的に均一にすることができる偏光変換素子及びLCDパネル用照明装置を得ることを目的とする。
【0004】
【発明の概要】
本発明の偏光変換素子は、表裏の少なくとも一面を光束射出面とし一端面を非偏光光束の導光端面とした板状の導光体内に、屈折率の異なる2以上の媒質が隣接する面であってその法線ベクトルがある一つの法線面に収まるように屈曲した少なくとも一つの波状反射界面を設け、前記導光体の反対側の面には、導光体の導光方向と平行な稜線群を持つルーフミラー群が設けられ、前記屈折率の異なる2以上の媒質の屈折率nは、n>1であり、屈折率の異なる隣接する2つの媒質の屈折率nα、nβは、|nα−nβ|/(nα+nβ)<0.16を満足し、前記波状反射界面は、導光体を伝播する光束を上記光束射出面に向けて反射させる反射面を有していることを特徴としている。
【0005】
ルーフミラー群の頂角は90°であるのが好ましい。
【0006】
別の態様によると、本発明の偏光変換素子は、表裏の少なくとも一面を光束射出面とし一端面を非偏光光束の導光端面とした板状の導光体内に、屈折率の異なる2以上の媒質が隣接する面であってその法線ベクトルがある一つの法線面に収まるように屈曲した少なくとも一つの波状反射界面を設け、前記導光体は、波状反射界面の屈曲方向を決定する、互いに噛み合う凹凸を有する一対の導光体本体を有し、前記少なくとも一つの波状反射界面は、この一対の導光体本体の凹凸の間に挟着される合成樹脂フィルムと接着剤層とから構成され、前記屈折率の異なる2以上の媒質の屈折率nは、n>1であり、屈折率の異なる隣接する2つの媒質の屈折率nα、nβは、|nα−nβ|/(nα+nβ)<0.16を満足し、前記波状反射界面は、導光体を伝播する光束を上記光束射出面に向けて反射させる反射面を有していることを特徴としている。
【0007】
この態様では、合成樹脂フィルムと接着剤層とは複数層が備えられているのが好ましい。
【0008】
波状反射界面の周期sは、導光体内に導入する非偏光光束の波長λより十分大きくし(s≫λ)、回折による予期しない波長依存性が生じないようにする。
【0009】
本発明の偏光変換素子を用いたLCDパネル用照明装置は、導光端面に非偏光光源を有し、光束射出面をLCDパネルとの対向面表裏の少なくとも一面を光束射出面とし一端面を非偏光光束の導光端面とした板状の導光体内に、屈折率の異なる2以上の媒質が隣接する面であってその法線ベクトルがある一つの法線面に収まるように屈曲した少なくとも一つ以上の波状反射界面を設けたことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態(図10及び図11の実施形態)と第2の実施形態(図27〜図29の実施形態)、及び複数の参考例を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による偏光変換素子10を用いた面状発光装置1の概念図である。偏光変換素子10は、全体として扁乎な矩形状をしていて、表裏の一面(図の上面)を光束射出面11、左右の端面の一方(図の左端面)を導光端面12としている。導光端面12には、非偏光光源2が対向しており、光束射出面11上には、LCDパネル3が位置している。本発明の第一の特徴は、偏光変換素子10の光束射出面11から直接、偏光方向の揃った偏光光束が出射される点にあり、この偏光変換素子10を用いた面状発光装置1によれば、偏光変換素子10の光束射出面11とLCDパネル3との間に、何らの偏光子を要することなく、LCDパネル3に特定偏光光束(直線偏光光束)を与えることができる。偏光変換素子10の光束射出面11とは反対側の面を裏面13、導光端面12とは反対側の面を導光方向終端面14とする。
【0016】
図2、図3、図4は、本発明による偏光変換素子10の第1の参考例を説明するための模式図である。偏光変換素子10は、偏平で略矩形をなす屈折率nl、n2の異なる2つの透光性材料10A、10Bからなっており、この透光性材料10A、10Bの対向面には、互いに噛み合う凹凸10Cが形成されている。凹凸10Cが噛み合うことにより透光性材料10A、10B間に波形の反射界面が形成される。波形の反射界面は、光束射出面11との直交面に対し、導光端面12から入射した光を光束射出面11側に反射するよう傾斜した傾斜面(反射面)10Dと、光束射出面11に対して直交した透過面10Eとを交互に有している。導光端面12から偏光変換素子10内に入射した光は、透光性材料10Aと10B内を交互に進み、傾斜面(反射面)10Dでその一部が反射し、残りの光は透過して透過面10Eに進む。透過面10Eでは、入射した光の一部が反射されて傾斜面10Dに至り、傾斜面10Dにより裏面13側に反射される。透過面10Eに入射した光の残りの部分は透過面10Eを透過する。つまり、透過面10Eは、そこでの反射光を偏光変換素子10の内部にとどめる作用を有している。傾斜面(反射面)10Dの傾斜方向は、ここでの反射光が光束射出面11から出射するように定められており、図2ないし図4では、光束射出面11と略直交する方向に出射するように、光束射出面11に対して略45°傾斜している。傾斜面(反射面)10D及び透過面10Eからなる波状反射界面は、面各部の法線ベクトルがある1つの面(法線面)に収まるように屈曲して形成されている。さらに各屈曲点bの光束射出面と直交する方向の中間点mを結ぶ面(平均面)pはほぼ平面である。
【0017】
次に、波形反射界面の両側の媒質の屈折率(この参考例においては透光性材料10Aと10Bの屈折率)nl、n2と偏光の関係について説明する。図5は、屈折率nlの媒質中を進む光が屈折率n2の媒質との境界に、入射角θ1で入射するときの界面での反射光束と透過光束を描いている。この入射角θ1がtan-1(n2/nl)に等しいときをブルースター角θBと呼ぶこと(θB=tan-1(n2/nl))、および入射角θ1がブルースター角θBのときに、P偏光は100%透過し、S偏光は一部を反射することが知られている。nl=1、n2=1.5のとき、このθBは、56.3°である。
【0018】
図6は、nl=1、n2=1.5のとき、各入射角における界面でのP偏光の反射率Rpと透過率Tp、S偏光の反射率Rsと透過率Ts、及びRp/Rsを描いたものである。ブルースター角では、Rsは、約15%である。よって、傾斜面(反射面)10Dの傾斜を、該傾斜面(反射面)10Dへの入射角がブルースター角になるように設定すれば、光束射出面11からS偏光のみを取り出すことができることになる。すなわち、P偏光はすべての傾斜面10Dを透過し、各傾斜面(反射面)10Dに至った光束の15%のエネルギのS偏光が光束射出面11から取り出されることになる。
【0019】
偏光変換素子10の光束射出面11からのS偏光光束をより効果的にLCDパネル3に与えるには、つまり光束射出面11とほぼ直交する方向にS偏光光束を出射させるには、ブルースター角θBが45°に近いことが望ましい。n1とn2を近づけると、ブルースター角は、45°に接近し、例えば、n1=1.5、n2=1.6では、θB=46.8°となる。図7は、n1=1.5、n2=1.6のとき、各入射角における界面でのP偏光の反射率Rpと透過率Tp、S偏光の反射率Rsと透過率Ts、及びRp/Rsを描いたものである。RsとRpは値が小さいので10倍して描いている。ブルースター角では、Rsは、約0.3%である。Rsの値が小さくなることから、より多くの傾斜面(反射面)10Dを設定することができ、より大面積の光束射出面11に対してS偏光のみを取り出すことができることになる。また、入射角が45°に近くなるので、ほぼ光束射出面11と直交する方向にS偏光光束を取り出すことができる。
【0020】
光束射出面11からS偏光を取り出すために、2つの媒質の屈折率n1、n2は、n1>1、n2>1であること、つまり双方ともに空気でないこと、及び
|n1−n2|/(n1+n2)<0.16 ・・・式(1)
の条件を満足することが望ましい。第1の参考例では、n1=1.5、n2=1.6であるから、式(1)の値は0.03である。
【0021】
次に本発明の偏光変換素子10の第2の参考例を説明する。図8は、同一の屈折率n1からなる一対の透光性材料10Aと10Bの対向面にそれぞれ、光束射出面11の法線に対して対称な略±45°の対をなす凹凸面を設けて、これを噛み合わせ、透光性材料10Aと10Bの間に、屈折率n2の接着剤15を介在させている。この例によると、透光性材料10Aと接着剤15の間、接着剤15と透光性材料10Bとの間にそれぞれ、波形反射界面が構成される。このため、波状反射界面の数が多くなり、かつ接着剤15の屈折率を選択することにより、入射角をブルースタ一角に近づけた反射界面を容易に得ることができる。また、この例では、波状反射界面は偏光変換素子10内を伝播する光束を偏光変換素子10の外部に向けて反射する反射面として作用し、光束射出面11側へ反射させる傾斜部10D'と裏面13側に反射させる傾斜部10D"とが交互に配置されている。このため、裏面13の外側には、裏面13から偏光変換素子10の外部に出た(あるいは出ようとする)光束を偏光変換素子10内に戻す反射面(反射ミラー)16が形成されている。傾斜部10D"で裏面13側に反射し反射面16により偏光変換素子10内に戻される光はほとんどS偏光であり、一部が傾斜部10D"により導光端面12の方向に反射される(n1=1.5、n2=1.6のとき約0.3%)ものの大部分は傾斜部10D"を透過し光束射出面から射出される。
【0022】
図8の例では、波形反射界面の隣り合う各傾斜部10D'、10D"の稜線を鋭角状に措いているが、実際に透光性材料10A、10Bを加工すると、稜線が図9に示す第3の参考例のようになまる(鋭角状でなくなる)ことが考えられる。このような場合、各傾斜部10D'、10D"は、光束を偏光変換素子10の外部に向けて反射する反射面として作用するのに対し、なまった稜線10Fでの反射光は光束射出面11に対する入射角が大きくなり、光束射出面11の内面で全反射して外部に射出されない。つまり、なまった稜線10Fはそこでの反射光を偏光変換素子10内に留まらせる反射面として作用する。従って、この反射面10Fを積極的に利用することにより光射出面積の大きい偏光変換素子を得ることができる。図9では、接着剤15の図示を省略している。
【0023】
図10、図11は、本発明の偏光変換素子の第1の実施形態を示す。この実施形態は光束射出面11から取り出すS偏光光束の光量をコントロールするための構成を示す。LCDパネルの大きさ(導光方向の長さ)は、デジタルカメラ用の数インチからノートパソコンの10数インチまで多様である。従って、照明装置も20cm程度導光して光エネルギを射出するものと、数センチ以内に光を射出するものとがある。偏光変換素子の光射出面積が大きい場合、導光方向終端まで所定の光量で光を射出するために、非偏光光源から偏光変換素子の導光端面へ入射する光量に対する光射出面の単位面積当たりの射出光量は比較的小さくする必要がある。反対に、光射出面積が小さい場合は光射出面の単位面積当たりの射出光量は大きくして光量のロスをなくすことが望ましい。従って、反射光量をコントロールすることが望まれる。図10、図11に示した第1の実施形態は、図8で説明した例において、透光性材料10Aと10Bとの間に、屈折率が透光性材料10A、10Bの屈折率n1と略等しいm枚の薄い合成樹脂シート17を挟み、これらを屈折率n2の接着剤15で接着したものである。この第1の実施形態では、波状反射界面の数(反射回数)がm+1倍に増えるから、合成樹脂シート17の枚数を選択することにより、光束射出面11からの出射光量をコントロールすることができる。
【0024】
以上に説明した各参考例及び第1の実施形態では、偏光変換素子10の導光端面12から入射した非偏光光束は、導光端面12側にある反射界面から順に、そのS偏光の一部を反射させつつ、導光方向終端面14側に伝播していく。伝播中に光のエネルギを反射で奪われていくので、伝播光のエネルギは、導光方向終端面14に向かって進むにつれ指数関数的に減じていくことになる(図12参照)。
【0025】
図13ないし図20は、より均一な光量分布を得るための参考例である。以下の実施形態では、波形反射界面を1本または2本の線で描いているが、図8ないし図11で説明した参考例と第1の実施形態の反射界面の構成を利用できることは明らかである。
【0026】
図13に示す第4の参考例では、偏光変換素子10の導光方向終端面14の外側に、偏光変換素子10を伝播し外部に出た(あるいは出ようとする)光を、偏光変換素子10内に戻す反射面(反射ミラー)18を設けている。いま、仮に導光端面12から偏光変換素子10内に入射した光の75%を光束射出面11からS偏光として取り出すとすると、導光端面12で1.0であった光エネルギが導光方向終端面14で0.5となるように偏光変換素子10の反射率を設定する(波状反射界面の数及びS偏光反射率を設定する)。すると、光束射出面11からは、導光端面12から導光方向終端面14方向への行きの光が波状反射界面の第1傾斜部10D'で反射したものと、導光方向終端面14から導光端面12方向への戻りの光が傾斜部10D"で反射したものとが重なって射出することになる。つまり、導光端面12側では1.25の光に対し、導光方向終端面14側では1.00の光が得られ、肉眼では判別できない程度の均一な光量分布が得られる。
【0027】
図14に示す第5の参考例では、波形反射界面の傾斜部10D'及び傾斜部10D"の主導光方向に対する角度を導光端面12から導光方向終端面14に向けて変化させることにより、光量分布の均一化を図っている。図6、図7で説明したように、反射界面への入射角がブルースター角に等しいとき、反射光は全てS偏光であり、P偏光は全て透過する。そして、S偏光の反射率は、入射角が大きくなる程大きくなる。そこで、この実施形態では、傾斜部10D'への入射角が導光端面12側においてはブルースター角より小さく、導光端面12から離れ導光方向終端面14に近づくにつれて徐々に大きくなり、導光方向終端面14付近でブルースター角より大きくなるように、傾斜部10D'の主導光方向に対する角度を徐々に変化させている。
【0028】
非偏光光源からの光は広がりを持っているので、偏光変換素子内を伝播する光も主導光方向に対し角度を持って分布する。この角度を導光角とする。いま、n1=1.50、n2=1.60、導光角範囲を25°とすると、各反射界面角度(波状反射界面の法線と主導光方向のなす角)について、導光角25°の範囲内の光の平均反射率は、表1のように変化する。この表から、傾斜部10D'の角度を35°から55°に(45°に対し±10°)ずらせることにより、S偏光の反射率を約7倍変化させることができることが分かる。
【0029】
【表1】
反射界面角度(°) Rs(%) Rp(%)
35 0.33 0.05
40 0.47 0.08
45 0.74 0.18
50 1.27 0.46
55 2.39 1.24
【0030】
図15に示す第6の参考例では、光束射出面11と裏面13に、導光端面12から導光方向終端面14側にかけて薄くなる方向の角度△の楔形状を与えることにより、光量分布の改善を図っている。波状反射界面の反射面である各傾斜部10D'、10D"の反射界面角度が等しいとすると、導光角αで波状反射界面の傾斜部に入射した光線が光束射出面11または裏面13で一度反射して次の傾斜部に入射するときには、β=α+△で表される新しい導光角βで入射する。すなわち、光束射出面または裏面で一度反射する毎に導光角が楔の角度△だけ増えていく。前述のように、入射角が小さいとS偏光の反射率は低く、入射角が大きいと同反射率は高いから、導光体10を楔状とすることにより光量分布の改善を図ることができる。例えば、反射界面角度を45°、導光角を25°とすると、反射界面に対する入射角は、
反射界面角度+導光角=45+25=70°または
反射界面角度−導光角=45−25=20°
のいずれかが2分の1の確率で生じることとなる。
入射角が一定角度増加したときの反射率増加量は、入射角が一定角度減少したときの反射率の減少量より大きい(図7参照)ので、導光端面12から導光方向終端面14側に近づくにつれて、S偏光の平均反射率が増えることになる。これにより内部を伝播する光量の減少を補って偏光変換素子10の光束射出面11からの射出光量分布をほぼ一定に保つことができる。
【0031】
いま、nl=1.50、n2=1.60、反射界面角度45°とすると、導光角範囲内の光の平均反射率は、表2のように変化する。この表から、導光角範囲が導光端面12付近で15°、導光方向終端面14付近で35°になるように楔角△を設定すれば、S偏光の反射率を約4倍変化させることができることが分かる。
【0032】
【表2】
導光角範囲(°) Rs(%) Rp(%)
±15 0.47 0.04
±20 0.57 0.08
±25 0.74 0.18
±30 1.08 0.40
±35 1.75 0.91
【0033】
図16は、光束射出面11と裏面13に、導光端面12から導光方向終端面14側にかけて薄くなる方向の角度Δの楔形状を与えるとともに波状反射界面の反射面10Dの深さとピッチを異ならせて偏光変換素子10の楔形状を得た第7の参考例を示している。導光端面12から導光方向終端面14に近づくにつれてピッチを短くすることにより偏光変換素子10内を伝播する光の単位長さあたりの分岐面通過数を多くすることができ、結果的に反射光量を多くすることができる。
【0034】
次に、図17は、接着剤15の屈折率を変化させることで、光量分布を改善した第8の参考例である。S偏光の反射率は、屈折率で決まる。例えば垂直入射の場合、S偏光の反射率Rは、
R={(n1−n2)/(n1+n2)}2
で与えられるから、n1とn2の屈折率差が大きい程、S偏光の反射率が大きくなる。垂直入射でない場合も、式が複雑になるので省略するが、同様の傾向である。従って、透光性材料10A、10B(あるいは合成樹脂シート17)の屈折率nよりも、接着剤15の屈折率の方が大きいという前提の下で、導光端面12側から導光方向終端面14側にかけて、接着剤15の屈折率を徐々に大きくすれば、光量分布の改善を図ることができる。図において、導光端面12側から導光方向終端面14側にかけて、接着剤15の屈折率がna、nb、nCと変化するとき、
n<na<nb<nc
となるように接着剤15を選択すればよい。接着剤15としては、屈折率1.5〜1.6のものが一般的に用いられており、かつ異なる屈折率の接着剤を混合すると、その中間の屈折率の接着剤が得られる。
【0035】
図18と図19は、第9の参考例を示す。この例は、合成樹脂シート17を利用した第1の実施形態(図10、図11)を応用して、光量分布の改善を図った参考例である。この参考例では、導光端面12から導光方向終端面14側にかけて、透光性材料10Aと10Bとの間に接着剤15を介して挟着する合成樹脂シート17の枚数を増加させることにより、波形反射界面の数を導光端面12から導光方向終端面14側にかけて増加させている。この参考例によれば、波状反射界面の数(密度)が導光端面12側から導光方向終端面14側にかけて増加するので、光量分布を改善することができる。
【0036】
図20は、第10の参考例を示す。この例は、図9で説明した反射面10Fをより積極的に利用している。偏光変換素子10内の波形反射界面には、第1、第2の傾斜部10D'、10D"からなる光束を偏光変換素子10の外部に向けて反射する反射面の他に、反射光を偏光変換素子10内に留まらせる反射面10Fが設けられている。反射面10Fで反射した光はその大部分が光束射出面11または裏面13の内面で全反射して偏光変換素子内部に留まる。この反射面10Fの密度は、導光端面12側が高く、導光方向終端面14側にかけて低くなっており、逆に第1、第2の傾斜部10D ' 、10D " からなる反射面の密度は、導光端面12側が低く、導光方向終端面14側にかけて高くなっている。反射面10Fは、図示例では、光束射出面11、裏面13と略平行な面として措いているが、反射光を偏光変換素子10内に留まらせることができる面形状であればよい。この参考例によれば、波状反射界面のピッチ(傾斜部の密度)が導光端面12側から導光方向終端面14側にかけて増加するのに加えて、導光端面12側では反射面10Fにより多くの光エネルギを偏光変換素子10内に留まらせることができるので、光量分布を改善することができる。
【0037】
以上の説明、参考例及び実施形態では、光束射出面11からS偏光を取り出すことができることを述べ、波形反射界面を透過するP偏光については論じなかった。光エネルギの有効利用、特に50%以上の利用を図るには、波状反射界面を透過していくP偏光を利用することが好ましい。図21ないし図29は、P偏光を利用する実施形態と参考例である。以下の実施形態と参考例では、偏光変換素子10内の波状反射界面を描くことを省略し(全体形状としての偏光変換素子10のみを描き)、あるいは波状反射界面を1本または2本の線で措いているが、図1ないし図11、及び図13ないし図20で説明した波状反射界面の構成を前提としている。
【0038】
図21は、偏光変換素子10の透光性材料10Aと10Bを複屈折物質から構成してP偏光の利用効率を高めた第11の参考例を示す。プラスチックには、複屈折を示すものが多くある。このような物質に偏光を入射させると、物質内を光が伝播するにつれ光の偏光状態が変化していく。例えば直線偏光が楕円偏光に変化したり、楕円偏光が長軸の方向を変化させたり、楕円率を変えたりする。従って、偏光変換素子10を構成する透光性材料10Aと10B(あるいは及び合成樹脂シート17)を、複屈折を示すプラスチック材料から構成すると、伝播中に偏光状態が変化し、減少したS偏光成分を補充するようにP偏光成分の一部がS偏光成分に変化する。図21の偏光変換素子10内の直線、円、楕円は、光の伝播中の偏光状態の変化を示している。
【0039】
図22は、偏光変換素子10の透光性材料10Aと10Bを旋光物質10Hから構成することによりP偏光の利用効率を高めた第12の参考例である。旋光とは、物質内を光が伝播するとき光の偏光面が回転していく現象である。例えショ糖水溶液はこの旋光を示す物質である。溶液100g中にショ糖65gが含まれる水溶液中では、光が10cm進むと、偏光面が43°回転する。よって、A4版の横の長さ(約21cm)では、約90°偏光面が回転することになる。すなわち、この距離の伝播でP偏光とS偏光が入れ替わる。この参考例では、波形反射界面は、例えばフィルムシートを折り曲げて構成し、このフィルムシートと旋光物質10Gをセル19内に封入して偏光変換素子10を構成する。なおショ糖水溶液の濃度を薄くすれば、単位伝播距離当たりの旋光回転角は小さくなるから、より大型のLCDパネルの照明に用いることができる。
【0040】
図23は、図13の参考例において、偏光変換素子10の導光方向終端面14と反射面(反射ミラー)18の間に、四分の一波長板(λ/4板)20を挿入してP偏光の利用効率を高めた第13の参考例である。ただし、この例では導光端面12で1.0であったS偏光成分の光エネルギが導光方向終端面14で0.25になるように反射界面を設定する。この参考例では、導光方向終端面14から出て反射面(反射ミラー)18で反射して再び偏光変換素子10内に戻る光は、四分の一波長板(λ/4板)20を2回通過し、その結果、光の偏光方向が90°回転する。つまり、P偏光成分はS偏光成分に、S偏光成分はP偏光成分に変換される。従って、導光端面12から導光方向終端面14に至る行きの光路で残ってしまったP偏光成分は、反射面(反射ミラー)18と四分の一波長坂(λ/4板)20を介してS偏光成分に変換されて偏光変換素子10内に戻ることとなり、このS偏光成分が導光方向終端面14から導光端面12へ向かう帰りの光路で、波状反射界面の傾斜部10D"で反射されて光束射出面11から出射し、さらに傾斜部10D'及び反射面(反射ミラー)16を介して光束射出面11から出射することになる。図23には、その下方に、偏光状態の変化を併せて描いた。
【0041】
図24ないし図26は、偏光変換素子10の導光方向終端面14に、導光方向終端面14の正面から見たときにその稜線群21aが光束射出面11の法線方向に対して45°傾斜したルーフミラー群21群を形成することにより、P偏光の利用効率を高めた第14の参考例である。図25は図24の矢印A方向から偏光変換素子10を見た図、図26は図24を真上からみた図である。ルーフミラーには、光線を反射させるとともに、稜線と直交する方向の像を反転させる効果がある。このため、稜線に対して45°の偏光方向をもって入射した光は、偏光方向が90°回転する。図25のように、稜線群21aを光束射出面11に対して45°傾いた形状としておくと、波形反射界面の各傾斜部を透過するP偏光成分の偏光方向は稜線21aに対し45°となり、ルーフミラー群21により偏光方向が90°回転してS偏光成分として偏光変換素子10内に戻る。すなわち、図23の参考例における四分の一波長板(λ/4板)20と同等の偏光変換作用がこのルーフミラー群21によって得られる。図25における実線の傾斜線は稜線群21aを示し、破線の傾斜線は、隣り合うミラーの谷部を示している。
【0042】
図27、図28は、第2の実施形態を示す。この実施形態では、偏光変換素子10の裏面13に、導光方向と平行な稜線群22aを持つルーフミラー群22を設けることにより、P偏光の利用効率を高めている。図28は図27の矢印B方向から偏光変化素子10を見た図である。このルーフミラー群22の各面は、図28に明らかなように、その法線面が主導光方向と直交している。ルーフミラー群の頂角は90°より大きくなっている。図28中の細線は、ある1本の光線が偏光変換素子10中を伝播していく様子を示し、矢印は入射時のある方向の振動方向を持つ光線が、光束射出面11とルーフミラー群22との間での反射の繰り返しにより、どのように変換されていくかを示している。矢印の方向が大きく変化しているのは、反射の繰り返しにより、偏光変換素子10内を伝播する光線の偏光方向が大きく回転していることを意味している。よって、偏光変換素子10中を光が伝播する間にP偏光成分をS偏光成分に変換して、減少するS偏光成分を補い、P偏光成分を有効利用することが可能となる。
【0043】
図29は、図27、図28に示した第2の実施形態の変形例であり、ルーフミラー群22の頂角を90°に設定した点に特徴がある。図中の細線は、偏光変換素子10中の波形反射界面で導光方向終端面14方向に反射した1本の光線を描いたものである。この変形例によれば、導光方向終端面14に設けた頂角90°のルーフミラー群22によってP偏光成分がS偏光成分に変換されるだけでなく、裏面13に至った光線を光束射出面11側に戻す作用が得られ、ルーフミラー群22が図8の変形例の反射面(反射ミラー)16の役割を兼ねることになる。
【0044】
なお、本発明において偏光変換素子10内に設ける波形反射界面の最小ピッチ(間隔)sは、偏光変換素子10を伝播する非偏光光束の波長λより十分大きく(s≫λ)し、回折現象が生じないようにする。回折が生じると、予期せぬ波長依存性が生じる可能性がある。
【0045】
なお、以上のすべての実施形態及び参考例において、波状反射界面は、面各部の法線ベクトルがある1つの面(法線面)に収まるように屈曲して形成された面であり、さらに各屈曲点bの光束射出面と直交する方向の中間点mを結ぶ面(平均面)pはほぼ平面である。
【0046】
以上、第1及び第2実施形態と各参考例について説明したが、本発明の偏光変換素子は、各実施形態単独と各参考例単独の形態だけでなく、これらを組み合わせた形態も当然可能である。
【発明の効果】
本発明の偏光変換素子によれば、別部材としての偏光子を必要とすることなく、従来のバックライトの導光体に相当する部材の光束射出面から直接、偏光状態が揃った偏光光束を取り出すことができる。また、本発明によれば、少なくとも50%以上の光エネルギを利用することができる偏光変換素子が得られ、さらに光束射出面からの光量分布を可及的に均一にすることができる偏光変換素子及びLCDパネル用照明装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による偏光変換素子を用いた面状発光装置の概念的断面図である。
【図2】本発明による面状発光素子の第1の参考例を示す、一対の透光性材料の分離状態の斜視図である。
【図3】図2の一対の透光性材料の結合状態を示す斜視図である。
【図4】図3のモデルの光束の反射と透過の状態を示す模式断面図である。
【図5】反射と透過の法則及びブルースター角を説明する図である。
【図6】隣り合う2つの媒質の屈折率が1と1.5の場合のブルースタ一角及びS偏光とP偏光の反射率と透過率を示すグラフ図である。
【図7】隣り合う2つの媒質の屈折率が1.5と1.6の場合のブルースター角及びS偏光とP偏光の反射率と透過率を示すグラフ図である。
【図8】本発明による偏光変換素子の第2の参考例を示す図4に対応する模式断面図である。
【図9】本発明による偏光変換素子の第3の参考例を示す図4に対応する模式断面図である。
【図10】本発明による偏光変換素子の第1の実施形態を示す、一対の透光性材料とフィルム材料の分離状態の模式断面図である。
【図11】図10の一対の透光性材料とフィルム材料を結合した状態を示す模式断面図である。
【図12】本発明による偏光変換素子の光量分布の例を示す図である。
【図13】光量分布を改善した偏光変換素子の第4の参考例を示す模式断面図である。
【図14】光量分布を改善した偏光変換素子の第5の参考例を示す模式断面図である。
【図15】光量分布を改善した偏光変換素子の第6の参考例を示す模式断面図である。
【図16】光量分布を改善した偏光変換素子の第7の参考例を示す模式断面図である。
【図17】光量分布を改善した偏光変換素子の第8の参考例を示す模式断面図である。
【図18】光量分布を改善した偏光変換素子の第9の参考例を示す、一対の透光性材料とフィルム材料の結合前の状態を示す模式断面図である。
【図19】同結合状態の模式断面図である。
【図20】光量分布を改善した偏光変換素子の第10の参考例を示す模式断面図である。
【図21】光エネルギの利用効率を高めた偏光変換素子の第11の参考例を示す斜視図である。
【図22】光エネルギの利用効率を高めた偏光変換素子の第12の参考例を示す斜視図である。
【図23】光エネルギの利用効率を高めた偏光変換素子の第13の参考例を示す模式断面図である。
【図24】光エネルギの利用効率を高めた偏光変換素子の第14の参考例を示す斜視図である。
【図25】図24のA矢視図である。
【図26】図24の平面図である。
【図27】光エネルギの利用効率を高めた偏光変換素子の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図28】図27のB矢視端面図である。
【図29】光エネルギの利用効率を高めた第2の実施形態の偏光変換素子の変形例を示す、図28に対応する端面図である。
【符号の説明】
10 偏光変換素子
10A 10B 透光性材料
10D 反射面(傾斜面)
10D' 傾斜部(反射面)
10D" 傾斜部(反射面)
10E 反射面(透過面)
10F 反射面
10G 旋光物質
11 光束射出面
12 導光端面
13 裏面
14 導光方向終端面
15 接着剤
16 18 反射面(反射ミラー)
20 四分の一波長板
21 22 ルーフミラー群
Claims (6)
- 表裏の少なくとも一面を光束射出面とし一端面を非偏光光束の導光端面とした板状の導光体内に、屈折率の異なる2以上の媒質が隣接する面であってその法線ベクトルがある一つの法線面に収まるように屈曲した少なくとも一つの波状反射界面を設け、前記導光体の反対側の面には、導光体の導光方向と平行な稜線群を持つルーフミラー群が設けられ、
前記屈折率の異なる2以上の媒質の屈折率nは、n>1であり、屈折率の異なる隣接する2つの媒質の屈折率nα、nβは、|nα−nβ|/(nα+nβ)<0.16を満足し、前記波状反射界面は、導光体を伝播する光束を上記光束射出面に向けて反射させる反射面を有していることを特徴とする偏光変換素子。 - 請求項1項記載の偏光変換素子において、ルーフミラー群の頂角は90°である偏光変換素子。
- 表裏の少なくとも一面を光束射出面とし一端面を非偏光光束の導光端面とした板状の導光体内に、屈折率の異なる2以上の媒質が隣接する面であってその法線ベクトルがある一つの法線面に収まるように屈曲した少なくとも一つの波状反射界面を設け、前記導光体は、波状反射界面の屈曲方向を決定する、互いに噛み合う凹凸を有する一対の導光体本体を有し、前記少なくとも一つの波状反射界面は、この一対の導光体本体の凹凸の間に挟着される合成樹脂フィルムと接着剤層とから構成され、
前記屈折率の異なる2以上の媒質の屈折率nは、n>1であり、屈折率の異なる隣接する2つの媒質の屈折率nα、nβは、|nα−nβ|/(nα+nβ)<0.16を満足し、前記波状反射界面は、導光体を伝播する光束を上記光束射出面に向けて反射させる反射面を有していることを特徴とする偏光変換素子。 - 請求項3項記載の偏光変換素子において、合成樹脂フィルムと接着剤層とは複数層が備えられている偏光変換素子。
- 請求項1から4のいずれか1項記載の偏光変換素子において、波状反射界面の周期sは、導光体内に導入する非偏光光束の波長λより十分大きい(s≫λ)偏光変換素子。
- 請求項1から5のいずれか1項記載の偏光変換素子を用いたLCDパネル用照明装置であって、導光端面に非偏光光源を有し、光束射出面をLCDパネルとの対向面としたLCDパネル用照明装置。
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