JP3979287B2 - 予混合圧縮着火内燃機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、予混合圧縮着火内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料を圧縮着火燃焼させる内燃機関では、機関運転領域の高負荷側でのノッキング発生と低負荷側での燃焼の不安定化の何れかの点から運転領域が限られてしまうため、例えば、内燃機関の運転条件が高負荷時には耐ノック性を有する燃料を供給し、内燃機関の運転条件が低負荷時には着火性の良い燃料を供給することによって、高負荷運転時のノッキング発生の抑制と低負荷運転時の燃焼安定性の確保とを両立させることが考えられる。
【0003】
このように、複数種類の燃料を内燃機関の運転条件に応じて供給する手段の一つとして、内燃機関の運転負荷に従って、複数種類の燃料の混合比率を調整することで燃焼室内における燃料のオクタン価(軽油であればセタン価)を、該運転負荷に適した値とすることで、内燃機関における安定した燃焼を得る手段が開示されている(例えば、特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】
特開2000−179368号公報
【特許文献2】
特開2001−20765号公報
【特許文献3】
特開2001−152853号公報
【特許文献4】
特開平11−351091号公報
【特許文献5】
特開2001−323833号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、圧縮着火内燃機関において、排出されるNOxの抑制と排気スモークの発生の抑制を目的として、予混合燃焼が行われる場合がある。この予混合燃焼は、一般に燃料を燃焼室内に吸気行程中もしくは圧縮行程中に噴射することで、燃焼室内により均一な予混合気を形成させる。この均一な予混合気が燃焼する場合、火炎温度が低く抑えられるためNOxの生成が抑制される。さらに、この予混合気は燃料と空気が均一に混合しているため、十分な量の酸素の存在下で燃料が燃焼することになり、従って、酸素不足下での燃焼に起因するスモークの発生も抑制される。
【0006】
ところが、複数種類の燃料を使用する圧縮着火内燃機関において、上記予混合燃焼を行う場合、圧縮着火内燃機関において圧縮行程上死点近傍において発生すべき燃料の着火燃焼が、予混合気の空燃比によっては、圧縮行程上死点近傍より早期に開始されるいわゆる過早着火が生じる虞がある。特に、使用する燃料が着火しやすい性質を有し、内燃機関の運転負荷が高負荷時である場合は、特に過早着火の虞が大きくなる。過早着火が生じることにより、燃焼室内の圧力が急激に上昇し、内燃機関に大きな衝撃や騒音が生じる結果となる。
【0007】
そこで、前記課題に鑑み、本発明では、1サイクルに複数回の燃料を噴射する圧縮着火内燃機関において予混合燃焼する場合に、過早着火の発生を抑制し、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼を可能とする予混合圧縮着火内燃機関を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。即ち、予混合圧縮着火内燃機関であって、主たる燃料を噴射する主燃料噴射弁と、前記主たる燃料より早い時期に副燃料を噴射し、燃焼室内に該副燃料と空気との予混合気を形成する副燃料噴射弁と、少なくとも前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときに、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整して前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することで該予混合気の着火時期を遅らせる空燃比調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記副噴射および前記主噴射における燃料噴射の態様については、両噴射ともに前記燃焼室内に直接に噴射を行う場合の他に、前記副噴射については、内燃機関の吸気ポートにおいて副燃料を噴射し、該副燃料が、吸気行程において吸気弁が開弁されることによって燃焼室内へ吸入されるようにしてもよい。
【0010】
更に、前記副噴射が行われる時期は、副噴射燃料が前記燃焼室内へ直接噴射される場合には、内燃機関の運転負荷や燃焼サイクルにおいて前記主噴射より早い時期に迎える吸気行程または圧縮行程であるが、該吸気行程直前の排気行程時でも構わない。また副噴射は複数回に分けて行われてもよい。また、副噴射燃料が吸気ポートにおいて噴射される場合は、一般に吸気行程において吸気弁が開弁される以前となる。前記副噴射によって噴射された燃料が、予混合気を形成することとなる。
【0011】
ここで、該予混合気の着火性は該予混合気の空燃比に大きく依存する。即ち、該予混合気の空燃比が理論空燃比近傍であるときは、該予混合気は非常に着火しやすい状態であるため過早着火の虞が非常に高いと考えられ、該予混合気の空燃比がリーン側もしくはリッチ側へとなるに従い、該予混合気の着火性は低くなり、過早着火の虞は低下すると考えられる。そこで、少なくとも該予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期を判定する。該予混合気は経時的に前記燃焼室内において変動するため、少なくとも時間をパラメータとして空燃比を検出することが好ましい。該予混合気の着火時期の判定、換言すると該予混合気の過早着火の可能性の判定の基礎となる空燃比については、該予混合気の一部において過早着火が発生すると、そこを起点として連鎖的に燃料の燃焼爆発が発生することを考慮すると、複数の空燃比センサ等で検出する場合は、検出される空燃比において最も過早着火の可能性が高い空燃比の値、即ち最も理論空燃比に近い空燃比の値を着火時期の判定の基礎とするのが最も好ましい。ただし、複数箇所の空燃比センサ等の値の平均値を、着火時期の判定の基礎としても、該予混合気の過早着火の判定は可能と考えられる。
【0012】
また少なくとも前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期が、所定の時期よい早いか否かが判定されるが、ここで該所定の時期より早い時期とは予混合気の着火が過早着火となりうる程度に早い時期を意味し、具体的には主噴射によって噴射された燃料が着火する以前の時期をいう。
【0013】
ここで、該予混合気の着火時期の判定において、該予混合気の空燃比だけではなく、前記副噴射および前記主噴射による各燃料噴射量、前記副噴射および前記主噴射の各噴射時期、該予混合気の空燃比ではなく前記主噴射後の前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比等に基づいて、該予混合気の着火時期、即ち、該予混合気の着火が過早着火となりうるかを判定してもよい。
【0014】
該予混合気の着火時期の判定において、該予混合気の着火が過早着火となると判定される場合は、前記空燃比調整手段によって前記燃焼室内の混合気の空燃比を調整することによって該予混合気の着火性を低減する。即ち前記空燃比調整手段によって燃焼室内の空燃比を調整し、該予混合気の着火時期が遅くなる空燃比とすることで、該予混合気の過早着火を回避する。
【0015】
従って、上述の予混合圧縮着火内燃機関であっては、副燃料噴射弁から副燃料が噴射され、該副燃料によって予混合気が形成される。その後、該予混合気の着火時期が判定され、その着火時期が所定の時期より早い、即ち該予混合気の過早着火が生じると判定されると、前記空燃比調整手段によって、前記燃焼室内の空燃比を調整し過早着火の発生を抑止する。これにより、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【0016】
ここで、前記空燃比調整手段として、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、副燃料の噴射量を減量するとともに主たる燃料の噴射量を増量することで、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比を調整する手段が考えられる。
【0017】
これは、該予混合気の過早着火が起こると判定される場合は、該予混合気を形成する副燃料の噴射量を減量することで、該予混合気の過早着火を抑止するものである。即ち、副燃料の噴射量を低減することで、該予混合気の空燃比がリーン側へと移行する結果となるため、該予混合気の過早着火が抑止されるものである。ここで、副燃料の噴射量を減量することで、内燃機関が発揮する出力が低減することになる。そこで、内燃機関が発揮する出力を、副燃料の噴射量の低減以前と同等とするために、前記主噴射による噴射量を増加する。これにより、該予混合気の過早着火を抑止し安定した燃焼保持するとともに、内燃機関の出力を一定に保持することが可能となる。
【0018】
更に、前記副噴射および前記主噴射によって噴射された燃料の燃焼によって発生する煤を再燃焼させて粒状物質の低減を図るために、前記主噴射より遅い時期に燃料の噴射が行われる後噴射を行う場合がある。そのような場合における前記空燃比調整手段として、次の手段が考えられる。後噴射を行う予混合圧縮着火内燃機関において、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記副燃料を減量するとともに前記後噴射による噴射量もしくは前記後噴射が行われる噴射時期の少なくとも何れかを補正する。
【0019】
これにより、該予混合気の過早着火が起こると判定される場合は、該予混合気を形成する副燃料の噴射量を減量することで、該予混合気の過早着火を抑止するとともに、前記後噴射による噴射量もしくは噴射時期の少なくとも何れかを補正する。即ち、先述したように該予混合気の過早着火抑止のために減量された副燃料の噴射量に相当する内燃機関の出力を補完するために、前記後噴射の噴射量もしくは噴射時期の少なくとも何れかを補正するものである。ここで、前記後噴射は、前記主噴射より遅い時期に行われる燃料噴射であるため、前記後噴射時期によって噴射された燃料が完全に燃焼されない虞がある。そこで、前記後噴射の噴射量によっては、前記後噴射の噴射時期も補正する必要がある。これにより、該予混合気の過早着火を抑止し安定した燃焼保持するとともに、内燃機関の出力を一定に保持し、且つ前記後噴射による粒状物質の低減を図ることが可能となる。
【0020】
ここで、前記空燃比調整手段によって、主たる燃料の噴射量、または前記後噴射による噴射量もしくは噴射時期を補正する場合において、前記主噴射は一定の期間に行われなければならない。即ち、前記空燃比調整手段によって、主たる燃料の噴射量が増量された場合、主たる燃料の噴射に要する時間は延長されることになるが、前記主噴射後に前記後噴射が実行される場合、前記主噴射は前記後噴射開始以前に終了しなければならない。また、前記後噴射が実行されない場合であっても、前記主噴射の噴射時間が延長されることで、噴射された燃料が完全燃焼されない虞があるため、噴射された燃料が完全燃焼されうる時期までに前記主噴射を終了させる必要がある。そこで、このような場合における、前記空燃比調整手段として、以下の手段が考えられる。
【0021】
前記主噴射による燃料噴射が所定の時期までに終了しないときは、主噴射時の噴射圧もしくは噴射開始時期の少なくとも何れかを補正することで、前記主噴射による燃料噴射が所定の時期までに終了する。
【0022】
ここで、所定の時期とは、先述したように、前記後噴射が実行される場合はその実行までの時期であり、前記後噴射が実行されない場合であれば、前記主噴射によって噴射された燃料が燃焼しうるまでの時期を意味する。従って、前記主噴射が所定の時期までに噴射を終了しない場合は、前記主噴射時の噴射圧を増加し、前記主噴射に要する時間の短縮を図る。また、前記主噴射の開始時期を早めることで、前記主噴射を所定の時期までに終了させる。尚、前記主噴射の噴射圧と噴射開始時期を同時に補正してもよい。これにより、前記主噴射を確実に実行させることが可能となり、該予混合気の過早着火を抑止し安定した燃焼保持するとともに、内燃機関の出力を一定に保持し、また前記後噴射が実行される場合は、前記後噴射による粒状物質の低減を図ることが可能となる。
【0023】
ここで、前記空燃比調整手段の別の手段として、前記予混合圧縮着火内燃機関において、更に、前記燃焼室内へ流入する吸気量を調整する吸気量調整手段を有し、前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記吸気量調整手段による吸気量を増量し、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれるの空燃比より低い場合は前記吸気量調整手段による吸気量を減量することで、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比を調整する手段が考えられる。
【0024】
これは、該予混合気の過早着火が起こると判定される場合は、前記吸気量調整手段によって前記燃焼室内に流入する吸気量を変更することで燃焼室内に形成される予混合気の空燃比を調整し、該予混合気の過早着火を抑止するものである。即ち、過早着火が発生すると判断される場合であって、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記吸気量調整手段によって吸気量を増量することで、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリーン側へ移行することにより、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。一方で、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記吸気量調整手段によって吸気量を減量することで、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリッチ側へ移行することにより、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。
【0025】
理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比とは、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整する際に、リーン側へ移行させるか、またはリッチ側へ移行させるかを判断させるための基準となる空燃比である。該予混合気の過早着火を抑止するためには、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリーン側もしくはリッチ側の何れかに移行すればよいが、前記燃焼室の空燃比によってはリーン側又はリッチ側の何れか一方への移行の方がより容易である場合が考えられる。そこで、前記吸気量調整手段に応じた空燃比を理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比として設定すればよい。
これにより、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【0026】
ここで、前記吸気量調整手段として、前記予混合圧縮着火内燃機関の吸気通路に設けられた過給器が考えられる。前記過給器による過給量を増加することにより前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記過給器による過給量を減少することにより前記燃焼室への吸気量を減少することで、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整し、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【0027】
また、別の吸気量調整手段として、前記燃焼室における吸気弁の開閉特性を変更する可変動弁機構が考えられる。前記可変動弁機構を介して少なくとも前記吸気弁の開弁時間を遅くするか又は前記吸気弁のリフト量を大きくするかの何れか一によって前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記可変動弁機構によって少なくとも前記吸気弁の開弁時間を早くするか又は前記吸気弁のリフト量を小さくするかの何れか一によって前記燃焼室への吸気量を減少する。
【0028】
前記可変動弁機構を介して、該吸気弁の開弁時間を遅くすることによって、前記燃焼室内の圧力と吸気管内の圧力の差が増大する。そのときに、該吸気弁を開弁すると増大した圧力差によって、前記燃焼室内へ空気が急激に流入する。その結果、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリーン側へ移行することにより、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。逆に、該吸気弁の開弁時間を早くすることによって、前記燃焼室内の圧力と吸気管内の圧力の差が低下するため、前記燃焼室内への空気の流入が緩和される。その結果、前記燃焼室内の予混合気の空燃比がリッチ側へ移行することになり、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。
【0029】
また、前記可変動弁機構を介して、該吸気弁のリフト量を大きくすることによって、空気が前記燃焼室内に流入する際の空気抵抗を小さくすることになる。そうすると、該吸気弁の開弁に伴い、前記燃焼室内へ多量の空気が流入する。その結果、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリーン側へ移行することにより、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。逆に、該吸気弁のリフト量を小さくすることによって、空気が前記燃焼室内に流入する際の空気抵抗を大きくすることになる。そうすると、該吸気弁の開弁に伴い、前記燃焼室内への空気の流入量が減少する。その結果、前記燃焼室内の予混合気の空燃比をリッチ側へ移行することにより、該予混合気の着火時期を遅らせ該予混合気の過早着火を抑止する。
【0030】
従って、前記可変動弁機構によって、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整し、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。また、前記可変動弁機構を介して吸気弁の開弁時期およびリフト量をともに調整してもよい。
【0031】
また、別の吸気量調整手段として、前記予混合圧縮着火内燃機関の吸気通路に設けられた吸気絞り弁が考えられ、前記吸気絞り弁の開度を大きくすることで前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記吸気絞り弁の開度を小さくすることにより前記燃焼室への吸気量を減少することで、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整し、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【0032】
ここで、前記空燃比調整手段の別の手段として、前記予混合圧縮着火内燃機関において、更に、前記燃焼室内の旋回流を制御する旋回流制御手段を有し、前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内の旋回流の強度を増加し、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内の旋回流の強度を低下することで、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比を調整する手段が考えられる。
【0033】
これは、該予混合気の過早着火が起こると判定される場合は、前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内に発生する旋回流の強度を制御することで、前記燃焼室内の燃料と空気との混合の程度を調整することで前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比を調整し、該予混合気の過早着火を抑止するものである。即ち、過早着火が発生すると判断される場合であって、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内に発生する旋回流の強度を大きくすることで、前記燃焼室内における燃料と空気との混合を促進させ、前記燃焼室内での局所的な空燃比の偏りを抑え、より均一な空燃比分布とすることで、過早着火の発生を回避する。一方で、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記旋回流制御手段によって該旋回流の強度を弱め、前記燃焼室内における燃料と空気との混合を抑制し、部分的な空燃比をよりリッチ側へ移行させることで、過早着火の発生を回避する。ここで、理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比とは、前述の通りである。
これにより、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【0034】
ここで、前記空燃比調整手段の別の手段として、前記予混合圧縮着火内燃機関において、更に、前記副噴射における噴射方向を変更する副噴射方向変更手段を有し、前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記副噴射方向変更手段によって前記副噴射における噴射方向を前記主噴射における噴射方向から遠ざけ、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記副噴射方向変更手段によって前記副噴射における噴射方向を前記主噴射における噴射方向に近づけることで、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比を調整する手段が考えられる。
【0035】
これは、該予混合気の過早着火が起こると判定される場合は、前記副噴射方向変更手段によって、前記副噴射によって形成される予混合気の前記燃焼室内における位置を調整することで、予混合気の過早着火を抑止するものである。即ち、前記副噴射と前記主噴射によって燃焼室内に噴射される各々の燃料の量は同一であっても、前記副噴射で噴射される燃料によって形成される予混合気と、前記主噴射で噴射される燃料によって形成される混合気の相対的な位置関係によって、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比分布は異なる。
【0036】
従って、予混合気の過早着火が発生すると判断される場合であって、前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記副噴射方向変更手段によって前記主噴射の噴射方向と前記副噴射の噴射方向を遠ざけることによって、両噴射によって形成される混合気の相対的な位置関係が遠ざかることにより局所的な空燃比が上がり、以て空燃比分布をリーン側へと移行させることで、過早着火の発生を回避する。一方で、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記副噴射方向変更手段によって前記主噴射の噴射方向と前記副噴射の噴射方向を近づけることによって、両噴射によって形成される混合気の相対的な位置関係が近づくことにより局所的な空燃比が下がり、以て空燃比分布をリッチ側へと移行させることで、過早着火の発生を回避する。
【0039】
ここで、1サイクルに複数回の燃料を噴射する圧縮着火内燃機関において予混合気を形成する場合に、該予混合気の過早着火の発生を抑制し、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼を可能とする予混合圧縮着火内燃機関を提供するその他の手段として、以下に示す手段が考えられる。即ち、主たる燃料を噴射する主燃料噴射弁と、前記主たる燃料より早い時期に副燃料を噴射し、燃焼室内に該副燃料と空気との予混合気を形成する副燃料噴射弁と、吸気通路の途中に設けられ吸気の酸素濃度を増加させる酸素富化装置と、吸気通路の途中に設けられ前記酸素富化装置をバイパスするバイパス通路と、吸気通路を流れる吸気に前記酸素富化装置又は前記バイパス通路のいずれを通過させるかを切り替えることで前記燃焼室内への吸気における酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、を備え、少なくとも前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときに、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を増加し、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を低減する手段である。
【0040】
尚、酸素富化装置とは、その内部に酸素透過膜を備え、酸素透過膜によって酸素を多く透過させて高濃酸素空気を得るものである。またこの他にも、例えばゼオライトなどによって空気中の窒素を吸着して酸素濃度を高める窒素吸着法を採用した酸素富化装置でも良い。
【0041】
本手段においては、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判断される場合、即ち予混合気の着火が過早着火となると判断される場合、前記酸素濃度調整手段によって前記燃焼室へ流入する吸気に含まれる酸素濃度が調整される。即ち、過早着火が発生すると判断される場合であって、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を増加させる。これにより、前記燃焼室内の酸素濃度が上がることで、実質的に前記燃焼室内の空燃比分布がリーン側へ移行するのと同等の効果を得る。以て前記燃焼室内での過早着火を回避する。一方で、過早着火が発生すると判断される場合であって、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を低減させる。これにより、前記燃焼室内の酸素濃度が下がることで、実質的に前記燃焼室内の空燃比分布がリッチ側へ移行するのと同等の効果を得る。以て前記燃焼室内での過早着火を回避する。
【0042】
これまでに主たる燃料を噴射する主燃料噴射弁と、副燃料を噴射する副燃料噴射弁とを備える予混合圧縮着火内燃機関における課題の解決手段を示したが、これらの課題の解決手段は前記主燃料噴射弁と前記副燃料噴射弁は、一の燃料噴射弁から構成される予混合圧縮着火内燃機関においても、同様に適用が可能である。このような場合においても、先述までと同様に予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判断される場合、即ち予混合気の着火が過早着火となると判断される場合、前記燃焼室における空燃比分布を制御し、または前記燃焼室における圧縮比を制御し、または前記燃焼室における酸素濃度を制御することで、予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0043】
更に、主たる燃料の性状と副燃料の性状が相異なる場合の他にも、同一の性状である場合においても先述までの課題の解決手段は適用が可能である。このような場合においても、先述までと同様に予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判断される場合、即ち予混合気の着火が過早着火となると判断される場合、前記燃焼室における空燃比分布を制御し、または前記燃焼室における圧縮比を制御し、または前記燃焼室における酸素濃度を制御することで、予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0044】
【発明の実施の形態】
<第1の実施例>
ここで、本発明に係る予混合圧縮着火内燃機関の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用される圧縮着火式の内燃機関1およびその制御系統の概略構成を表すブロック図である。また図2は内燃機関1における燃焼室32近傍の概略構成を示す図である。
【0045】
内燃機関1は、各気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する主燃料噴射弁3を備えている。各主燃料噴射弁3は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室4と接続されている。前記蓄圧室4は、燃料供給管5を介して燃料ポンプ6と連通している。前記燃料ポンプ6からは主たる燃料(以後、「主燃料」という)が吐出され、該吐出された主燃料は燃料供給管5を介して蓄圧室4へ供給され、蓄圧室4にて所定圧に蓄圧されて各気筒2の主燃料噴射弁3へ分配される。そして、主燃料噴射弁3に駆動電流が印加されると、主燃料噴射弁3が開弁し、その結果、主燃料噴射弁3から気筒2内へ主燃料が噴射される。ここで主燃料とは、圧縮着火式の内燃機関1において、主に気筒2における燃焼サイクルが圧縮上死点近傍において噴射される燃料である。
【0046】
次に、内燃機関1には、吸気枝管11が接続されており、吸気枝管11の各枝管は、各気筒2の燃焼室32と、吸気ポート11bを介して連通している。ここで、吸気ポート11bに、予混合気を形成する副燃料を噴射する副燃料噴射弁7が備えられている。各副燃料噴射弁7は、燃料を所定圧に蓄圧する蓄圧室8と接続されている。前記蓄圧室8は、燃料供給管9を介して燃料ポンプ10と連通している。前記燃料ポンプ10からは副燃料が吐出され、該吐出された副燃料は燃料供給管9を介して蓄圧室8へ供給され、蓄圧室8にて所定圧に蓄圧されて各気筒2の副燃料噴射弁7へ分配される。そして、副燃料噴射弁7に駆動電流が印加されると、副燃料噴射弁7が開弁し、その結果、副燃料噴射弁7から吸気ポート11b内へ副燃料が噴射され、吸気行程において気筒2の燃焼室32内に吸入される。
【0047】
ここで、図2には内燃機関1における燃焼室32近傍の概略構造が示されている。気筒2には燃焼室32内に形成される混合気の空燃比を検出する空燃比センサ23(図1参照)が備えられている。図2に示す気筒2においては、主燃料噴射弁3近傍に空燃比センサ23a、燃焼室側部に空燃比センサ23bおよび23cが備えられており、燃焼室32内に分布する混合気の空燃比を各部位において検出する。
【0048】
図1に戻って、前記吸気枝管11は吸気管12に接続されている。吸気管12には、該吸気管12内を流通する吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ13が取り付けられている。前記吸気管12における吸気枝管11の直上流に位置する部位には、該吸気管12内を流通する吸気の流量を調節する吸気絞り弁14が設けられている。この吸気絞り弁14には、ステップモータ等で構成されて該吸気絞り弁14を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ15が取り付けられている。
【0049】
ここで、エアフローメータ13と吸気絞り弁14との間に位置する吸気管12には、排気のエネルギを駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージャ)21のコンプレッサハウジング21aが設けられ、コンプレッサハウジング21aより下流の吸気管12には、前記コンプレッサハウジング21a内で圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ22設けられている。このように構成された吸気系では、吸気は、吸気管12を介してコンプレッサハウジング21aに流入する。コンプレッサハウジング21aに流入した吸気は、該コンプレッサハウジング21aに内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮される。前記コンプレッサハウジング21a内で圧縮されて高温となった吸気は、インタークーラ22にて冷却された後、必要に応じて吸気絞り弁14によって流量を調節されて吸気枝管11に流入する。吸気枝管11に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒2の燃焼室32へ分配され、各気筒2の主燃料噴射弁3および副燃料噴射弁7から噴射された主燃料と副燃料を着火源として燃焼される。
【0050】
一方、内燃機関1には、排気枝管18が接続され、排気枝管18の各枝管が排気ポート18bを介して各気筒2の燃焼室32と連通している。前記排気枝管18は、前記遠心過給機21のタービンハウジング21bと接続されている。前記タービンハウジング21bは、排気管19と接続され、この排気管19は、下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。このように構成された排気系では、内燃機関1の各気筒2で燃焼された混合気(既燃ガス)が排気ポート18bを介して排気枝管18へ排出され、次いで排気枝管18から遠心過給機21のタービンハウジング21bへ流入する。タービンハウジング21bに流入した排気は、排気が持つエネルギを利用してタービンハウジング21b内に回転自在に支持されたタービンホイールを回転させる。その際、タービンホイールの回転トルクは、前述したコンプレッサハウジング21aのコンプレッサホイールへ伝達される。
【0051】
前記排気管19の途中には、内燃機関から排出される排気を浄化する排気浄化触媒20が設けられている。排気浄化触媒20の下流の排気管19には、該排気管19内を流通する排気の流量を調節する排気絞り弁16が設けられている。この排気絞り弁16には、ステップモータ等で構成されて該排気絞り弁16を開閉駆動する排気絞り用アクチュエータ17が取り付けられている。
【0052】
前記タービンハウジング21bから排出された排気は、排気管19を介して排気浄化触媒20へ流入し、排気中の粒子状物質が捕集され且つ有害ガス成分が除去又は浄化される。排気浄化触媒20にて粒子状物質が捕集され且つ有害ガス成分が除去又は浄化された排気は、必要に応じて排気絞り弁16によって流量を調節された後にマフラーを介して大気中に放出される。
【0053】
ここで、主燃料噴射弁3および副燃料噴射弁7は、電子制御ユニット(以下、ECU:Electronic Control Unitと呼ぶ)25からの制御信号によって開閉動作を行う。即ち、ECU25からの指令によって、主燃料の噴射時期および噴射量と、副燃料の噴射時期および噴射量が制御される。また、空燃比センサ23a、23bおよび23cは電気的にECU25と接続されており、各空燃比センサによって検出された空燃比がECU25へ読み込まれる。
【0054】
このように構成される気筒2においては、排気行程後期においてECU25から副燃料噴射弁7に対して副燃料の噴射指令が出され、副燃料が吸気ポート11b内に噴射される。その後の吸気行程において、吸気弁31が開弁し、副燃料が燃焼室32へと吸入され、ピストン30の下降に伴い副燃料が燃焼室32内に拡散し、予混合気を形成する。さらに圧縮行程においてピストン30が上昇し、その上死点近傍において、ECU25から主燃料噴射弁3に対して主燃料の噴射指令が出され、主燃料が燃焼室32内へ噴射される。その後、噴射された燃料が着火燃焼し、排気行程において、排気ポート18bを介して、排気枝管18へ排気が排出される。尚、吸気弁31には、該吸気弁の開弁時期、リフト量等の吸気弁の開閉特性を可変とする可変動弁機構33が接続されている。
【0055】
ここで、図3において、燃焼室32の内部に形成される混合気の概略図および、該混合気の空燃比の分布が示されている。図3(a)は主燃料噴射後における気筒32内に形成される混合気の概略的な分布を示すものである。副燃料噴射弁7によって噴射された副燃料は主燃料より早い時期に噴射されているため、燃焼室32内において広く拡散し、予混合気32aを形成する。一方で、主燃料噴射弁3によって噴射された主燃料は、主燃料噴射弁3を中心として一定の範囲に分布し、主燃料混合気32bを形成する。
【0056】
このように形成された予混合気32aおよび主燃料混合気32bにおいて、概ね主燃料混合気32bの中心点である点Oから一定の方向における混合気の空燃比の変化を図3(b)に示す。図3(b)の横軸は点Oからの距離を、縦軸は混合気の空燃比を表している。ここで、予混合気32aは点Oからの距離がX2までの範囲において形成され、主燃料混合気32bは点Oからの距離がX1までの範囲において形成されているものとする。従って、図3(b)において、曲線L1は主燃料混合気32bの空燃比変化を、曲線L2は予混合気32aの空燃比変化を表す。
【0057】
ここで、混合気の空燃比が理論空燃比の近傍にある場合、該混合気の着火性がよくなるため、燃焼サイクルにおいて圧縮行程の後期、即ち圧縮行程上死点まで行程が進まなくても、例えば圧縮行程の初中期であって燃焼室32内の温度が最高温度まで上昇していない場合であっても、その時点で既に燃焼室内に形成されている予混合気32aが着火するいわゆる過早着火が生じる虞がある。その過早着火が発生する空燃比を、図3(b)において、A/F1からA/F2の範囲(以後、「過早着火空燃比範囲」という。)で表す。従って、図3(b)に示す空燃比分布を有する予混合気32aは、その予混合比分布曲線L2の点P1から点P2の範囲において、過早着火空燃比範囲に属していることになるため、主燃料が噴射される以前において、副燃料が過早着火する虞がある。そこで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないように、その空燃比を調整することで、予混合気32aの過早着火を回避することができる。
【0058】
ここで、図4に予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないように、その空燃比を調整する予混合時噴射量制御のフローチャートを示す。予混合時噴射量制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0059】
S100において、周辺部空燃比AFsrの検出を行う。ここで、周辺部空燃比AFsrとは、燃焼室32内に分布する予混合気の空燃比であって、燃焼室32に設けられた3台の空燃比センサ23a、23b、23cから得られるそれぞれの空燃比である。また、本実施例においては、空燃比センサの台数は3台であるが、台数を増加することによって燃焼室32内に形成される予混合気の空燃比分布を正確に判断できるため、より確実に予混合気の過早着火を回避するには空燃比センサの台数増加は好ましい。S100の処理が終了すると、S101へ進む。
【0060】
S101では、全混合気空燃比AFtの検出を行う。ここで、全混合気空燃比AFtとは、副燃料噴射弁7によって噴射された副燃料および主燃料噴射弁3によって噴射された主燃料と、吸気行程によって燃焼室32に吸入された吸気量から導出される空燃比であって、燃焼室32の内部における空燃比分布を考慮した空燃比とは異なる。S101の処理が終了すると、S102へ進む。
【0061】
S102では、少なくともS100およびS101で検出した空燃比AFsrとAFtを基に燃焼室32の内部で、予混合気の過早着火が生じるか否かを判定する。ここで、予混合気の過早着火の判定の一例について、図5に基づいて説明する。図5は、予混合気の過早着火とS100において検出された周辺部空燃比AFsrとの関係を概略的に示した図である。図5の横軸は、副噴射燃料弁7によって噴射される一ストロークあたりの副燃料の噴射量Qsを、図5の縦軸は、周辺部空燃比AFsrを表している。また、図5中のR1からR7は、副燃料の噴射量Qsと周辺部空燃比AFsrで定義される領域であり、図5中のF1およびF2は、それぞれ領域R2とR3との境界を決定する着火判定関数f1、領域R5とR6との境界を決定する着火判定関数f2によって決定される領域の境界線である。着火判定関数f1およびf2については後述する。尚、予混合気の過早着火の判定において、その判定基準となる空燃比は、本実施例に示す空燃比の値(図5の縦軸に示される値)に限られず、内燃機関に用いられる燃料の性状等に従って、変更される。
【0062】
ここで、空燃比点AFPを用いて、予混合気32aの過早着火の判定について、図5に基づいて説明する。空燃比点AFPは、S100で検出した周辺部空燃比AFsrと副燃料の噴射量Qsによって決定される点であり、この際の空燃比点AFPは最も過早着火が起こりやすい部位における空燃比、即ち最も理想空燃比に近い空燃比を有する部位の空燃比を意味する。S102においては、この空燃比点AFPがR1からR7のどの領域に属するかによって、予混合気の過早着火を判定する。具体的には、周辺部空燃比AFsrの値が、14以上16以下の範囲である場合、副燃料の噴射量Qsにかかわらず、常に空燃比点AFPは領域R1に属する。ここで、領域R1に属するということは、予混合気32aの何れかの部位において、空燃比が理論空燃比近傍であるため、非常に過早着火しやすい状態にあることを意味する。この領域R1を、以後「常時過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気32aが過早着火すると判定される。
【0063】
次に、周辺部空燃比AFsrの値が16より大きく25未満の範囲である場合、空燃比点AFPは領域R2もしくはR3の何れかに属する。ここで、領域R2に属するということは、周辺部空燃比AFsrの値が16より大きく25未満の範囲であっても、副燃料の噴射量Qsの値との関係で予混合気の過早着火が生じ得る状態にあることを意味する。この領域R2を、以後「リーン側過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気が過早着火すると判定される。一方で、領域R3に属するということは、周辺部空燃比AFsrの値が16より大きく25未満の範囲であっても、副燃料の噴射量Qsの値との関係で予混合気の過早着火は生じ得ない状態にあることを意味する。この領域R3を、以後「リーン側非過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気32aは過早着火しないと判定される。
【0064】
ここで、領域R2と領域R3との境界線であるF1を決定する着火判定関数f1は、周辺部空燃比AFsrおよび副噴射の噴射量Qsに加えて、主噴射による主燃料の噴射量、その噴射時期、およびS101で検出される全混合気空燃比AFtを基に、混合気の過早着火に関する副燃料の噴射量Qsと周辺部空燃比AFsrとの相対関係、即ちリーン側過早着火領域R2とリーン側非過早着火領域R3との境界線を決定する関数である。
【0065】
次に、周辺部空燃比AFsrの値が、25以上の範囲である場合、副燃料の噴射量Qsにかかわらず、常に空燃比点AFPは領域R4に属する。ここで、領域R4に属するということは、予混合気32aの何れの部位においても、空燃比が非常にリーンであるため、過早着火が生じにくい状態にあることを意味する。この領域R4を、以後、領域R3と同様、「リーン側非過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気32aは過早着火しないと判定される。
【0066】
次に、周辺部空燃比AFsrの値が10以上14未満の範囲である場合、空燃比点AFPは領域R5もしくはR6の何れかに属する。ここで、領域R5に属するということは、周辺部空燃比AFsrの値が10以上14未満の範囲であっても、副燃料の噴射量Qsの値との関係で予混合気32aの過早着火が生じ得る状態にあることを意味する。この領域R5を、以後「リッチ側過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気32aが過早着火すると判定される。一方で、領域R6に属するということは、周辺部空燃比AFsrの値が10以上14未満の範囲であっても、副燃料の噴射量Qsの値との関係で予混合気32aの過早着火は生じ得ない状態にあることを意味する。この領域R6を、以後「リッチ側非過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気は過早着火しないと判定される。
【0067】
ここで、領域R5と領域R6との境界線であるF2を決定する着火判定関数f2は、周辺部空燃比AFsrおよび副噴射の噴射量Qsに加えて、主噴射による主燃料の噴射量、その噴射時期、およびS101で検出される全混合気空燃比AFtを基に、混合気の過早着火に関する副燃料の噴射量Qsと周辺部空燃比AFsrとの相対関係、即ちリッチ側過早着火領域R5とリッチ側非過早着火領域R6との境界線を決定する関数である。
【0068】
次に、周辺部空燃比AFsrの値が、10未満の範囲である場合、副燃料の噴射量Qsにかかわらず、常に空燃比点AFPは領域R7に属する。ここで、領域R7に属するということは、予混合気32aの何れの部位においても、空燃比が非常にリッチであるため、過早着火が生じにくい状態にあることを意味する。この領域R7を、以後、領域R6と同様、「リッチ側非過早着火領域」というものとする。従って、この場合、S102において、予混合気32aは過早着火しないと判定される。
【0069】
S102において、予混合気32aが過早着火すると判定されるとS103へ進み、予混合気32aが過早着火しないと判定されるとS105へ進む。
【0070】
S103においては、副噴射による副燃料の噴射量Qsを減量する。これにより、副燃料によって形成される予混合気32aの空燃比をリーン側に移行させることによって、予混合気32aの過早着火を回避することが可能である。即ち、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1、リーン側過早着火領域R2およびリッチ側過早着火領域R5の何れかに属している場合は、副燃料の噴射量Qsを減量させることで、空燃比点AFPをリーン側非過早着火領域R3もしくはR4に属するようにするものである。S103の処理が終了すると、S104へ進む。
【0071】
S104においては、主噴射による主燃料の噴射量Qmを調整する。これは、S103の処理によって副燃料の噴射量を減量したままでは、内燃機関1の出力が減少するため、内燃機関1の出力を調整するために主燃料の噴射量Qmを調整するものである。主燃料の噴射量Qmの調整にあたって、主燃料と副燃料の燃料性状の違い、および噴射時期の違いを考慮する。即ち、燃料性状が異なることによって、同量の噴射量であっても、燃焼によって生じるトルクは異なってくるため、主燃料の噴射量Qmの補正が必要となる。また、副噴射と主噴射とでは、噴射時期が異なり、燃焼室32内における燃料の燃焼の様子が異なる。そのため、たとえ同一の燃料性状を有する燃料であっても、噴射時期が異なることによって、内燃機関1の出力への寄与度は異なってくるため、主燃料の噴射量Qmの補正が必要となる。S104の処理が終了すると、再度S100へ進み、周辺部空燃比等が検出され、過早着火の判定が行われる。
【0072】
S105においては、主噴射による主燃料の噴射が所定のリミット時期までに終了するか否か判断される。一般に、主噴射は圧縮行程上死点近傍において行われるが、噴射時間が長くなるほど燃焼室32の内部の温度が低下していくため、主燃料の噴射が可能となる所定のリミット時期までに主燃料の噴射を終えておく必要がある。特に、S104において主燃料の噴射量Qmが増量されると、主燃料の噴射に要する時間が多くなるため、主燃料の噴射が所定のリミット時期までに終了するかを判断する必要性が高まる。具体的には、主噴射の噴射開始時期、主燃料の噴射量、主噴射における噴射圧を考慮して判断する。S105において、主燃料の噴射が所定のリミット時期までに終了すると判断されればS107へと進み、主燃料の噴射が所定のリミット時期までに終了しないと判断されればS106へと進む。
【0073】
S106では、主燃料の噴射が所定のリミット時期までに終了するために、主噴射の補正が行われる。具体的には、主噴射開始時期を進角側に移行させることで主噴射の終了する時期を所定のリミット時期以前とする。また、主噴射における噴射圧を増加することで、主燃料の噴射に要する時間を短縮する。尚、主噴射開始時期を進角側に移行させるとともに、主噴射における噴射圧を増加させてもよい。S106の処理が終了すると、S107へ進む。
【0074】
S107においては、所定の時期において、副燃料噴射弁7より副燃料が噴射される。これにより予混合気32aが形成される。S107の処理が終了すると、S108へ進む。S108においては、主燃料噴射弁3より主燃料が噴射される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0075】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気32aの過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、副燃料の噴射量が減量されることで、予混合気32aの空燃比をリーン側へ移行させることで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
また、本実施例においては、主燃料噴射弁3によって主燃料が、副燃料噴射弁7によって副燃料が噴射されるが、主燃料の燃料性状と副燃料の燃料性状とは、各々の噴射弁による噴射の目的に応じて違えてもよく、また同一の性状であっても各々の噴射弁による噴射の目的を達成できる場合は、両燃料の性状を同一としても構わない。以降に示すその他の実施例においても、同様である。
【0076】
<第2の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する予混合時噴射量制御の別の実施例を、図6にフローチャートで示す。該予混合時噴射量制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0077】
本制御は、内燃機関1において後噴射を行う場合にECU25によって実行される制御である。ここで、後噴射とは、主燃料を噴射する主噴射の後に行われる燃料噴射であり、主噴射もしくは主噴射の前に行われる副噴射によって噴射された燃料から発生した煤を、再度燃焼させることで煤の発生を抑制するものである。特に、内燃機関1の運転負荷が中高負荷である場合は、主噴射または副噴射による煤の発生が増加するため、後噴射が好適に実行される。本実施例においては、後噴射は主燃料噴射弁3より噴射されるものとする。図6に示す予混合時噴射量制御は、後噴射を行う内燃機関1において、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものであるが、図4に示す予混合時噴射量制御と重複する処理があるところは、図4と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0078】
S102において、予混合気が過早着火すると判定されると、S103において副燃料の噴射量Qsが減量され、その後S109へ進む。S109においては、後噴射燃料の噴射量Qaおよび噴射時期を調整する。これは、S103の処理によって副燃料の噴射量を減量したままでは、内燃機関1の出力が減少するため、内燃機関1の出力を調整するために後噴射燃料の噴射量Qaを調整するものである。後噴射燃料の噴射量Qaの調整にあたって、後噴射燃料と副燃料の燃料性状の違い、および噴射時期の違いを考慮する。即ち、燃料性状が異なることによって、同量の噴射量であっても、燃焼によって生じるトルクは異なってくるため、後噴射燃料の噴射量Qaの補正が必要となる。また、副噴射と後噴射とでは、噴射時期が異なり、燃焼室32内における燃料の燃焼の様子が異なる。そのため、同一の燃料性状を有する燃料であっても、噴射時期が異なることによって、内燃機関1の出力への寄与度は異なってくるため、後噴射燃料の噴射量Qaの補正が必要となる。S109の処理が終了すると、S110へ進む。
【0079】
S110では、主燃料の噴射量Qmを調整する。本制御では、S109において、副噴射燃料の噴射量Qsの減量に対応する後噴射燃料の噴射量Qaの調整を行っている。従って、S109において副燃料の噴射量Qsの減量による内燃機関1の出力の低減を十分に後噴射量の噴射量Qaの補正で補償できれば、S110において主燃料の噴射量Qmの調整を行う必要はない。一方で、S109において副燃料の噴射量Qsの減量による内燃機関1の出力の低減を十分に後噴射量の噴射量Qaの補正で補償できなければ、即ち、後噴射において噴射可能な最大噴射量を超える燃料を補正する必要がある場合は、その最大噴射量を超える燃料は、主噴射において噴射されるようにする。その場合、先述のS110と同様に、燃料性状の違いや噴射時期の違いを考慮する。
【0080】
また、主噴射が終了すべき所定の時期は、後噴射が開始される時期となるため、S105においては主噴射が後噴射の開始される時期までに終了するか否かを判定する。その後、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了するとS111において後噴射が実行される。S111の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0081】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、副燃料の噴射量が減量されることで、予混合気の空燃比をリーン側へ移行させることで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0082】
<第3の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する予混合時過給量制御の実施例を、図7にフローチャートで示す。該予混合時過給量制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0083】
図7に示す予混合時過給量制御は、内燃機関1の有する遠心過給器21が可変ノズル式遠心過給器である場合において、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように燃焼室32の内部に流入する吸気量を制御することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものである。ここで、図4に示す予混合時噴射量制御と重複する処理があるところは、図4と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0084】
S102において、予混合気が過早着火しないと判定されると、S107およびS108へ順次進み、副燃料、主燃料の噴射が行われる。一方で、S102において、予混合気が過早着火すると判定されると、S120へと進み、以降燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する処理が行われる。
【0085】
S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS121へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS122へ進む。
【0086】
S121では、可変ノズル式遠心過給器のノズル開度を全開又は全閉とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。ここで、可変ノズル式遠心過給器において、ノズル開度を全開とすると過給量が最小量となり、ノズル開度を全閉とすると過給量が最大量となる。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。従って、即座に空燃比点AFPを常時過早着火領域R1から離脱させる必要があると考えられる。
【0087】
そこで、ノズル開度が全閉時の最大過給量を、内燃機関1の機関回転数毎に予めマップに記録しておき、S120において空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されると、その際の内燃機関1の機関回転数に基づいて、マップより導出されるノズル開度全閉時の最大過給によって、燃焼室32の内部の空燃比分布をリーン側に移行させることで、予混合気の過早着火を回避させることができると判断される場合は、ノズル開度を全閉として過給量を最大とする。一方で、ノズル開度を全閉とすることで予混合気の過早着火を回避することができないと判断される場合は、ノズル開度を全開として過給量を最小とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布をリッチ側へと移行させる。これにより、予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0088】
S122においては、可変ノズル式遠心過給器のノズル開度を着火判定関数f1
又はf2に従って調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、リーン側であれば過早着火判定関数f1、リッチ側であれば過早着火判定関数f2に従って、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、また過給量の急峻な変化による燃焼室32への吸気量の変化は、特に主燃料の燃焼に与える影響が大きく、内燃機関1の機関出力が変動する虞がある。従って、S122では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、リーン側であれば、過早着火判定関数f1に従い、リーン側過早着火領域R2からリーン側非過早着火領域R3もしくはR4へと移行するための過給量変化が最小となる過給量となるべきノズル開度に調整し、リッチ側であれば、過早着火判定関数f2に従い、リッチ側過早着火領域R5からリッチ側非過早着火領域R6もしくはR7へと移行するための過給量変化が最小となる過給量となるべきノズル開度に調整する。
【0089】
S121またはS122の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0090】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、可変ノズル式遠心過給器のノズル開度を調整することで、燃焼室32へ流入する吸気量を調整し、予混合気の空燃比をリーン側もしくはリッチ側へ移行させることで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0091】
また、本実施例では燃焼室32へ流入する吸気量を調整する手段として可変ノズル式遠心過給器を採用するが、それに代えてモータアシスト過給器を採用することも可能である。モータアシスト過給器は、モータによってコンプレッサを強制回転させることで、過給量を増加、減少させることが可能となる。従って、遠心過給器のように内燃機関の排気を利用してコンプレッサを回転させないため、内燃機関の運転状況にかかわらず任意の過給を供給することが可能となる。
【0092】
そこで、本実施例において可変ノズル式遠心過給器に代わってモータアシスト過給器を用いる場合は、図7に示す予混合時過給量制御におけるS121およびS122での可変ノズル式遠心過給器のノズル開度の調整に代わって、モータアシスト過給器のモータに対する駆動電圧を調整することで、該モータの回転数を調整し、以て予混合気の過早着火を回避するのに適した量の過給を、燃焼室32へ供給すればよい。
【0093】
<第4の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する予混合時吸気弁制御の実施例を、図8にフローチャートで示す。該予混合時吸気弁制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0094】
図8に示す予混合時吸気弁制御は、内燃機関1においてECU25によって実行される制御であり、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように燃焼室32の内部に流入する吸気量を制御することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0095】
S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS130へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS131へ進む。
【0096】
ここで、可変動弁機構33によって吸気弁31の開弁時期を遅らせることで、吸気行程におけるピストン30の下降運動によって燃焼室32内に発生する負圧が増大する。その結果、吸気弁31が開弁するとともに多量の吸気が燃焼室32の内部へ流入する。また、吸気弁31のリフト量を大きくすることで、吸気ポート11bと燃焼室32の間における吸気の流れに対する抵抗が小さくなる。その結果、吸気弁31の開弁に伴い、多量の吸気が燃焼室32の内部へ流入することが可能となる。従って、可変動弁機構33を介して吸気弁31の開弁時期を遅らせるとともに、吸気弁のリフト量を大きくすることで、燃焼室32に流入する吸気量をより増大させることになる。
【0097】
このとき、S130では、可変動弁機構33を介して吸気弁31の開弁時期を最も遅くし、且つ吸気弁31のリフト量を最大とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。従って、即座に空燃比点AFPを常時過早着火領域R1から離脱させる必要があると考えられる。そこで、S120において空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されると、吸気弁31の開弁とともに多量の吸気を燃焼室32の内部へ導入することで、燃焼室32の内部の空燃比分布をリーン側へと移行させる。これにより、予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0098】
S131においては、吸気弁31の開弁時期とリフト量を着火判定関数f1
又はf2に従って調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、リーン側であれば過早着火判定関数f1、リッチ側であれば過早着火判定関数f2に従って、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、また燃焼室32への吸気量の急峻な変化は、特に主燃料の燃焼に与える影響が大きく、内燃機関1の機関出力が変動する虞がある。従って、S131では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、リーン側であれば、過早着火判定関数f1に従い、リーン側過早着火領域R2からリーン側非過早着火領域R3もしくはR4へと移行するための吸気量変化が最小となるように吸気弁31の開弁時期およびリフト量となるべく可変動弁機構33を制御し、リッチ側であれば、過早着火判定関数f2に従い、リッチ側過早着火領域R5からリッチ側非過早着火領域R6もしくはR7へと移行するための吸気量変化が最小となるように吸気弁31の開弁時期およびリフト量となるべく可変動弁機構33を制御する。
【0099】
S130またはS131の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0100】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、可変動弁機構33を介して吸気弁31の開弁時期およびリフト量を調整することで、燃焼室32へ流入する吸気量を調整し、予混合気の空燃比をリーン側もしくはリッチ側へ移行させることで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0101】
<第5の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する実施例を図9及び図10に示す。図9は、燃焼室32の内部に旋回流(以後、「スワール」という)を発生させるSCV(スワールコントロールバルブ)35を含む気筒2近傍の概略図である。また、図10は、前記SCV35を用いて予混合気の過早着火を回避する予混合時SCV制御のフローを示すフローチャート図である。ここで、該予混合時SCV制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0102】
ここで、図9に基づきSCV35の作用について説明する。図9に示す気筒2においては、燃焼室32に2つの吸気弁31を介してそれぞれに吸気ポート11bが連通するとともに、2つの排気弁34を介してそれぞれに排気ポート18bが連通している。更に、2本の吸気ポート11bの一方の途中に、該吸気ポートを流れる吸気の流量を調整するSCV35が設けられている。このように構成される気筒2においては、SCV35の開度によっては、それぞれの吸気ポート11bを流れる吸気量が相違することになる。その結果、それぞれの吸気弁31の開弁によって燃焼室内へ流入する吸気量が相違するため、燃焼室32の内部に旋回流(スワール)が発生する。このスワールの強度は、それぞれの吸気ポート11bを流れる吸気量の差に応じて変化し、その吸気量の差が最大となるとき、即ちSCVを全閉としたときが、スワールの強度は最も強くなる。
【0103】
図10に示す予混合時SCV制御は、SCV35を有する内燃機関1においてECU25によって実行される制御であり、副噴射によって予混合気を形成する場合、内燃機関1の有するSCV35の開度を調整し、燃焼室32内に発生するスワールの強度を調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0104】
S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS140へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS141へ進む。
【0105】
S140では、SCV35を全閉として燃焼室32の内部に発生するスワールの強度を最大とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。従って、即座に空燃比点AFPを常時過早着火領域R1から離脱させる必要があると考えられる。そこで、S120において空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されると、燃焼室32の内部に発生するスワールの強度を最大とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布において理論空燃比に近い空燃比を有する部位において即座に混合気を拡散させる。これにより、予混合気の過早着火を即座に回避することが可能となる。
【0106】
S141においては、SCV35の開度を着火判定関数f1又はf2に従って調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、リーン側であれば過早着火判定関数f1、リッチ側であれば過早着火判定関数f2に従って、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、またSCV35によって燃焼室32の内部にスワールを発生させる一方で、SCV35の開度によってはポンピングロスによって内燃機関1における燃費が悪化する虞がある。従って、S141では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、リーン側であれば、過早着火判定関数f1に従い、リーン側過早着火領域R2からリーン側非過早着火領域R3もしくはR4へと移行するためのスワール強度が得られるSCV35の最大開度となるべくSCV35を制御し、リッチ側であれば、過早着火判定関数f2に従い、リッチ側過早着火領域R5からリッチ側非過早着火領域R6もしくはR7へと移行するためのスワール強度が得られるSCV35の最大開度なるべくSCV35を制御する。
【0107】
S140またはS141の処理が終了すると、S142へ進む。S142では、S140またはS141においてSCV35の開度を変更したことにより、燃焼室32の内部における予混合気の形成過程が変動していると考えられるため、S102において、予混合気の過早着火の可能性を判定するための基準値となる空燃比の値を補正する必要がある。即ち、スワールの強度が強くなることにより、燃料の拡散が促進されるため、燃焼室32内に形成される予混合気がより均一に拡散することで、予混合気の空燃比もより均一のものとなり、過早着火が生じる空燃比を回避することが可能となる。そこで、例えば図5に示すリーン側過早着火領域R4の境界値である空燃比の値は25であるが、これを例えば24.5に変更し、予混合気の過早着火が生じると判定される範囲を狭めることが可能となる。その他の領域を決定する空燃比の値も同様に補正することが可能となる。これにより、S102における予混合気の過早着火の判定がより正確に実行できる。
【0108】
S142の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0109】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、SCV35の開度を調整することで、燃焼室32の内部に発生する旋回流(スワール)の強度を調整し、燃料の拡散を制御することで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0110】
<第6の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する実施例を図11,図12及び図13に示す。図11は、内燃機関1における燃焼室32近傍の概略構成を示す図である。また、図12は、燃料噴射後における燃焼室32内に形成される混合気の概略的な分布を示す図である。図13は、予混合気の過早着火を回避する予混合時バタフライ制御のフローを示すフローチャート図である。ここで、該予混合時バタフライ制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0111】
ここで、予混合気32aの空燃比を調整するバタフライについて、図11および図12に基づいて説明する。図11に示す燃焼室32近傍の概略構成について、図2に示す燃焼室近傍の概略構成と同一の構成要素は、同一の参照番号を付することで、その説明を省略する。以下、図2に示す燃焼室近傍の概略構成と相違する要素について説明をする。
【0112】
副燃料噴射弁7の下流側の吸気支管11に、バタフライ36が設けられている。バタフライ36は、ECU25と電気的に接続されており、ECU25からの指令に応じて、バタフライ36は吸気支管11の内部へ進入することが可能となっている。ここで、バタフライ36が吸気支管11の内部へ進入すると、副燃料噴射弁7から噴射された副燃料の噴射方向を遮ることになる。その結果、噴射方向を遮られなかった場合には、図3(a)に示すように副燃料が燃焼室32内に広く拡散した予混合気32aは、副燃料の噴射方向が遮られることで、図12に示すように燃焼室32の側部に分布することになる。即ち、バタフライ36の吸気支管11内への進入量に応じて、予混合気32aが形成される位置が変動し、以て燃焼室32の内部の空燃比分布を調整することとなる。
【0113】
図13に示す予混合時バタフライ制御は、バタフライ36を有する内燃機関1においてECU25によって実行される制御であり、副噴射によって予混合気を形成する場合、内燃機関1の有するバタフライ36の吸気支管11への進入量を調整し、副燃料の噴射方向を調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0114】
S102において、少なくともS100およびS101で検出した周辺部空燃比AFsrと全混合気空燃比AFtを基に燃焼室32の内部で、予混合気の過早着火が生じるか否かが判定され、予混合気が過早着火すると判定されるとS150へ進む。S150では、S101で検出された全混合気空燃比AFtに従って、バタフライ36の吸気枝管11への進入量を調整する。即ち、S102において、予混合気が過早着火すると判定された場合に、バタフライ36の進入量を調整することで、予混合気32aの形成される位置と主燃料混合気32bの形成される位置の相対位置を調整することで、燃焼室32において予混合気が過早着火しない空燃比分布とするものである。
【0115】
例えば、予混合気32aが過早着火すると判定され、且つ全混合気空燃比AFtの値が理論空燃比より低い場合、バタフライ36の進入量を小さくすることで、副燃料の噴射方向を燃焼室32の中央付近に近づけ、予混合気32aの空燃比をリッチ側へ移行させることで、予混合気32aの過早着火を回避する。一方で、予混合気32aが過早着火すると判定され、且つ全混合気空燃比AFtの値が理論空燃比以上である場合、バタフライ36の進入量を大きくすることで、副燃料の噴射方向を燃焼室32の側部方向とし、予混合気32aの空燃比をリーン側へ移行させることで、予混合気32aの過早着火を回避する。
【0116】
S150の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0117】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、バタフライ36の吸気枝管11への進入量を調整することで、副燃料の噴射方向を調整し、燃焼室32の内部に形成される予混合気の形成される位置と主燃料混合気の形成される位置の相対位置が決定される。その結果、予混合気の空燃比分布が調整され、予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0118】
<第7の実施例>
ここで、予混合気32aの空燃比分布が過早着火空燃比範囲に属さないようにその空燃比を調整する予混合時吸気絞り制御の実施例を、図14にフローチャートで示す。該予混合時吸気絞り制御は、ECU25によって繰り返し実行される制御であり、ECU25によって本制御が実行されることは本発明における空燃比調整手段に相当する。
【0119】
図14に示す予混合時吸気絞り制御は、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように、内燃機関1の有する吸気絞り弁14によって燃焼室32の内部に流入する吸気量を制御することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0120】
S102において、予混合気が過早着火しないと判定されると、S107およびS108へ順次進み、副燃料、主燃料の噴射が行われる。一方で、S102において、予混合気が過早着火すると判定されると、S120へと進み、以降燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する処理が行われる。
【0121】
S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS160へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS161へ進む。
【0122】
S160では、吸気絞り弁14の開度を全開とすることで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。吸気絞り弁14の開度調整は、ECU25から吸気絞り用アクチュエータ15に対して駆動指令が出されることで行われる。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。従って、即座に空燃比点AFPを常時過早着火領域R1から離脱させる必要があると考えられる。
【0123】
そこで、吸気絞り弁14の開度が全開時の最大吸気量を、内燃機関1の機関回転数毎と、燃焼室に噴射された燃料量と該燃料が失火状態とならない最大吸気量との関係を予めマップに記録しておき、S120において空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されると、その際の機関回転数に対する最大吸気量を考慮した上で、主燃料噴射弁3と副燃料噴射弁7とから噴射される主燃料および副燃料が失火状態とならない範囲において、吸気絞り弁14の開度を最大開度とする。その結果、燃焼室32の内部において失火状態を回避しながら且つその内部の空燃比分布をリーン側に移行させることで、予混合気の過早着火を回避させることができる。
【0124】
S161においては、吸気絞り弁14の開度を着火判定関数f1又はf2に従って調整することで、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、リーン側であれば過早着火判定関数f1、リッチ側であれば過早着火判定関数f2に従って、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、また燃焼室32への吸気量の急峻な変化は、特に主燃料の燃焼に与える影響が大きく、内燃機関1の機関出力が変動する虞がある。従って、S161では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、リーン側であれば、過早着火判定関数f1に従い、リーン側過早着火領域R2からリーン側非過早着火領域R3もしくはR4へと移行するための吸気量変化が最小となるべき吸気絞り弁14の開度に調整し、リッチ側であれば、過早着火判定関数f2に従い、リッチ側過早着火領域R5からリッチ側非過早着火領域R6もしくはR7へと移行するための吸気量変化が最小となるべき吸気絞り弁14の開度に調整する。
【0125】
S160またはS161の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0126】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、吸気絞り弁14の開度を調整することで、燃焼室32へ流入する吸気量を調整し、予混合気の空燃比をリーン側もしくはリッチ側へ移行させることで、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0127】
<第8の実施例>
先述までの実施例においては、副燃料の噴射によって形成された予混合気が過早着火すると判定された場合は、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整することで、予混合気の過早着火を回避する本発明に係る実施例を示した。ここで、予混合気の過早着火を回避するその他の実施例として、燃焼室32における圧縮比を変更する例が考えられる。その実施例について、図15および図16に基づいて説明する。図15は本発明に係る可変圧縮比手段の概略的な構成を示す図である。また、図16は、予混合気の過早着火を回避する予混合時圧縮比制御のフローを示すフローチャート図である。
【0128】
ここで、可変圧縮比手段について図15に基づいて説明する。気筒2において、ピストン30の下端部の回転軸J1において、T字状の第1コンロッド37が回転自在に連結されている。さらに、第1コンロッド37は、回転軸J2において、第2コンロッド38と回転自在に連結されており、第2コンロッド38は内燃機関1のクランクシャフト40と回転軸J3において、回転自在に連結されている。さらに、第1コンロッド37の別の端部であって、回転軸J1と回転軸J2とを結ぶ直線上に存在しない部位に設けられた回転軸J4において、コントロールロッド39が回転自在に連結されている。さらに、コントロールロッド39は、コントロールシャフト41と回転軸J5において回転自在に連結されており、且つ回転軸J5はコントロールシャフト41の中心軸とは偏心した位置関係を有している。
【0129】
このように構成された可変圧縮比手段では、クランクシャフト40が回転することによって、第1コンロッド37および第2コンロッド38を介して、ピストン30が上下往復運動を行う。ここで、コントロールシャフト41が回転することによって、コントロールシャフトの中心軸と偏心した部位に連結されているコントロールロッド39が、おおよそその軸方向に移動することで、コントロールロッド39の揺動支点が変位し、ピストン30の行程容積、即ち圧縮比が変更される。従って、本実施例の可変圧縮比手段においては、コントロールシャフト41の回転角を制御することで、燃焼室32における圧縮比を制御することが可能となる。
【0130】
図16に示す予混合時圧縮比制御は、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように、図15に示す可変圧縮比手段によって燃焼室32における圧縮比を制御するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0131】
S102において、予混合気が過早着火しないと判定されると、S107およびS108へ順次進み、副燃料、主燃料の噴射が行われる。一方で、S102において、予混合気が過早着火すると判定されると、S120へと進む。S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS170へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS171へ進む。
【0132】
S170では、可変圧縮比手段によって燃焼室32における圧縮比を最小とする。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。そこで、燃焼室32における圧縮比を最小とすることで、圧縮行程の進行に伴って上昇する燃焼室32内の予混合気の温度上昇を抑制し、予混合気の過早着火を回避する。
【0133】
S171においては、燃焼室32における圧縮比を可変圧縮比手段によって、機関回転数と燃料噴射量に従って調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、また燃焼室32における圧縮比の低下は、圧縮行程による燃焼室内の温度上昇を抑制するため、噴射された燃料のうち未燃成分として残留する量が増加する等の虞がある。従って、S171では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、機関回転数と主燃料および副燃料の総量を考慮し、燃焼室32における圧縮比を最適の圧縮比とする。具体的には、機関回転数と燃料噴射量の増量に従い、徐々にもしくは段階的に圧縮比を低下させるようにする。
【0134】
S170またはS171の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0135】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、可変圧縮比手段によって燃焼室32における圧縮比を調整することで、該予混合気の温度を低下させ、該予混合気の過早着火を回避することが可能となる。
【0136】
<第9の実施例>
先述までの実施例においては、副燃料の噴射によって形成された予混合気が過早着火すると判定された場合は、燃焼室32の内部の空燃比分布を調整することで、予混合気の過早着火を回避する本発明に係る実施例を示した。ここで、予混合気の過早着火を回避するその他の実施例として、燃焼室32における酸素の濃度を調整する例が考えられる。その実施例について、図17および図18に基づいて説明する。図17は本発明に係る予混合圧縮着火内燃機関であって、燃焼室32における酸素濃度を調整する酸素富化装置および燃焼室近傍の概略的な構成を示す図である。また、図18は、予混合気の過早着火を回避する予混合時酸素濃度制御のフローを示すフローチャート図である。
【0137】
ここで、酸素富化装置近傍の構成について図17に基づいて説明する。図2に示す内燃機関と同一の構成要素については、同一の参照番号を付してその説明を省略する。吸気導入管42は、吸気管12から延出し、酸素富化装置43へと連通する。酸素富化装置43からは、2本の吸気送管44および45が延出しており、吸気送管44は酸素富化装置43内に設けられている酸素富化膜(図示せず)を経由しない吸気が流れる管であり、従って吸気送管44を流れる吸気における酸素濃度は、酸素富化装置43に流入する前の吸気における酸素濃度より低い。一方で、吸気送管45は酸素富化装置43内に設けられている酸素富化膜(図示せず)を経由した吸気が流れる管であり、従って吸気送管45を流れる吸気における酸素濃度は、酸素富化装置43に流入する前の吸気における酸素濃度より高い。吸気送管44および吸気送管45は、切替バルブ46およびポンプ47を介して、吸気送管48へと至る。更に、吸気送管48は燃焼室32へと連通している。
【0138】
このように構成された酸素富化装置43等を備える予混合圧縮着火内燃機関においては、ポンプ47を駆動することにより、吸気管12から吸気導入管42を介して酸素富化装置43へ吸気が送り込まれる。ここで、切替バルブ46は、吸気が吸気送管44又は吸気送管45のいずれかを流れるべく流路を切り替えるバルブである。従って、切替バルブ46によって、吸気送管44とポンプ47との間に吸気の流れが生じる場合、燃焼室32へ酸素濃度の低い吸気が供給される。また、切替バルブ46によって、吸気送管45とポンプ47との間に吸気の流れが生じる場合、燃焼室32へ酸素濃度の高い吸気が供給される。更に、ポンプ47の吸引力を調整することで、吸気送管48を介して燃焼室32へ供給される吸気量を調整することが可能となる。
【0139】
次に、図18に示す予混合時酸素濃度制御は、副噴射によって予混合気を形成する場合、該予混合気が過早着火を生じないように、図17に示す酸素富化装置43によって燃焼室32に供給される吸気における酸素濃度を制御するものである。ここで、図7に示す予混合時過給量制御と重複する処理があるところは、図7と同一の参照番号を付することで、当該処理の説明を省略する。
【0140】
S102において、予混合気が過早着火しないと判定されると、S107およびS108へ順次進み、副燃料、主燃料の噴射が行われる。一方で、S102において、予混合気が過早着火すると判定されると、S120へと進む。S120において、図5における空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているか否かが判断される。空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していると判断されるとS180へ進み、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属していない、即ちリーン側過早着火領域R2もしくはリッチ側過早着火領域R5に属していると判断されるとS181へ進む。
【0141】
S180では、切替バルブ46によって吸気送管44とポンプ47との間に吸気の流れが生じさせ、且つポンプ47の吸引力を最大とすることで、燃焼室32内部の酸素濃度を最も低くする。即ち、空燃比点AFPが常時過早着火領域R1に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位が存在しているため、過早着火が生じる可能性が極めて高い。そこで、燃焼室32内部の酸素濃度を最も低くすることで、予混合気の着火性を低減させ、以て予混合気の過早着火を回避する。
【0142】
S181においては、燃焼室32内部の酸素濃度を過早着火判定関数f1又はf2に従って調整することで、予混合気の着火性を調整する。空燃比点AFPがリーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5に属しているときは、燃焼室32の内部の空燃比分布において、理論空燃比に近い空燃比を有する部位は存在してはいないが、リーン側であれば過早着火判定関数f1、リッチ側であれば過早着火判定関数f2に従って、予混合気の過早着火が生じる可能性が高いと判断される場合である。しかし、リーン側過早着火領域R2又はリッチ側過早着火領域R5における予混合気の過早着火の可能性は、常時過早着火領域R1と比べて低いと考えられ、また燃焼室32内部の酸素濃度の変化は、特に主燃料の燃焼に与える影響が大きく、内燃機関1の機関出力が変動する虞がある。従って、S181では、予混合気の過早着火が発生すると判断されると、リーン側であれば、過早着火判定関数f1に従い、リーン側過早着火領域R2からリーン側非過早着火領域R3もしくはR4へと移行するための酸素濃度の変化量が最小となるべく切替バルブ46とポンプ47の吸引力を調整する。そこで、リッチ側であれば、過早着火判定関数f2に従い、リッチ側過早着火領域R5からリッチ側非過早着火領域R6もしくはR7へと移行するための酸素濃度の変化量が最小となるべく切替バルブ46とポンプ47の吸引力を調整する。
【0143】
S180またはS181の処理が終了すると、S182へ進む。S182では、S180またはS181において燃料富化装置43によって、燃焼室32内部の酸素濃度が吸気管12にある通常の吸気の酸素濃度と相違し、予混合気の着火性が変動していると考えられるため、S102において、予混合気の過早着火の可能性を判定するための基準値となる空燃比の値を補正する必要がある。即ち、燃焼室32内部の酸素濃度が大きくなるにつれて、予混合気の着火性が向上し、燃焼室32内部の酸素濃度が小さくなるにつれて、予混合気の着火性が低下する。そこで、予混合気の着火性の変動を考慮して、S102における予混合気の過早着火の判定基準となる空燃比の値を補正する。これにより、S102における予混合気の過早着火の判定がより正確に実行できる。
【0144】
S180またはS181の処理が終了すると、S107、S108において、副噴射および主噴射が実行される。S108の処理が終了すると、再度S100の処理から順次行われる。
【0145】
本制御によると、燃焼室32の内部の空燃比分布に従って、副噴射によって形成された予混合気の過早着火を判断し、過早着火が生じると判定されるときは、酸素富化装置43によって燃焼室32内部の酸素濃度を調整することで、該予混合気の着火性を調整し、その過早着火を回避することが可能となる。
【0146】
<第10の実施例>
先述までの実施例においては、副燃料を副燃料噴射弁7から噴射することによって予混合気を形成しているが、主燃料噴射弁3によって予混合気の形成が可能である場合は、副燃料噴射弁7を設ける必要はない。そのような実施例における、内燃機関1の概略的な構成を図19に示す。尚、図1に示す内燃機関と同一の構成要素については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0147】
【発明の効果】
本発明に係る予混合圧縮着火内燃機関は、燃焼室内に形成される空燃比分布に従って、予混合気の過早着火の発生を判定し、予混合気が過早着火すると判定する場合は、該予混合気の空燃比分布が所定の空燃比を回避することで該予混合気の着火時期を遅らせる。これにより、該予混合気の空燃比分布において、過早着火が発生する空燃比を避けることで、その空燃比に起因して発生する予混合気の過早着火が回避され、内燃機関の運転負荷にかかわらず安定した燃焼が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る予混合圧縮着火内燃機関およびその制御系統の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る予混合圧縮着火内燃機関における燃焼室近傍の概略構成を示す図である。
【図3】燃焼室における混合気の概略的な分布を示す図、および該混合気における空燃比の推移を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための燃料噴射量制御を示すフロー図である。
【図5】予混合気の空燃比に基づいて、該予混合気の過早着火を判定するための判定モデルを示す図である。
【図6】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための燃料噴射量制御を示すフロー図である。
【図7】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための過給量制御を示すフロー図である。
【図8】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための吸気弁の制御を示すフロー図である。
【図9】燃焼室内に旋回流を形成するためのスワールコントロールバルブの概略的な構成を示す図である。
【図10】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するためのスワールコントロールバルブ開度の制御を示すフロー図である。
【図11】本実施の形態に係る予混合圧縮着火内燃機関において、副燃料噴射弁の噴射方向を制御するバタフライを含む燃焼室近傍の概略構成を示す図である。
【図12】燃焼室における混合気の概略的な分布を示す図である。
【図13】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するためのバタフライ位置の制御を示すフロー図である。
【図14】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための吸気絞り弁開度の制御を示すフロー図である。
【図15】燃焼室における圧縮比を可変とする可変圧縮比機構の概略的な構成を示す図である。
【図16】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための燃焼室における圧縮比の制御を示すフロー図である。
【図17】本実施の形態に係る予混合圧縮着火内燃機関において、燃焼室内部の酸素濃度を調整する酸素富化装置を含む燃焼室近傍の概略構成を示す図である。
【図18】本実施の形態に係る予混合気形成時の該予混合気の過早着火を回避するための燃焼室内部の酸素濃度の制御を示すフロー図である。
【図19】本実施の形態に係る予混合圧縮着火内燃機関の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
2・・・・気筒
3・・・・主燃料噴射弁
7・・・・副燃料噴射弁
11・・・・吸気枝管
12・・・・吸気管
14・・・・吸気絞り弁
21・・・・過給器
23・・・・空燃比センサ
23a・・・・空燃比センサ
23b・・・・空燃比センサ
23c・・・・空燃比センサ
25・・・・ECU
31・・・・吸気弁
32・・・・燃焼室
32a・・・・予混合気
32b・・・・主たる燃料による混合気
33・・・・可変動弁機構
35・・・・スワールコントロールバルブ
36・・・・バタフライ
43・・・・酸素富化装置

Claims (13)

  1. 主たる燃料を噴射する主燃料噴射弁と、
    前記主たる燃料より早い時期に副燃料を噴射し、燃焼室内に該副燃料と空気との予混合気を形成する副燃料噴射弁と、
    少なくとも前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときに、前記燃焼室内の予混合気の空燃比を調整して前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することで該予混合気の着火時期を遅らせる空燃比調整手段と、を備えることを特徴とする予混合圧縮着火内燃機関。
  2. 前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記副燃料の噴射量を減量するとともに前記主たる燃料を増量することで、前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することを特徴とする請求項1に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  3. 前記予混合圧縮着火内燃機関においては更に前記主噴射より遅い時期に燃料の噴射を行う後噴射が行われ、
    前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記副燃料を減量するとともに前記後噴射による噴射量もしくは前記後噴射が行われる噴射時期の少なくとも何れかを補正することを特徴とする請求項2に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  4. 前記主噴射による燃料噴射が所定の時期までに終了しないときは、主噴射時の噴射圧もしくは噴射開始時期の少なくとも何れかを補正することで、前記主噴射による燃料噴射が所定の時期までに終了することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  5. 更に、前記燃焼室内へ流入する吸気量を調整する吸気量調整手段を有し、
    前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記吸気量調整手段による吸気量を増量し、前記燃焼室内に
    形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記吸気量調整手段による吸気量を減量することで、前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することを特徴とする請求項1に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  6. 前記吸気量調整手段は、前記予混合圧縮着火内燃機関の吸気通路に設けられた過給器であって、
    前記過給器による過給量を増加することにより前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記過給器による過給量を減少することにより前記燃焼室への吸気量を減少することを特徴とする請求項5に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  7. 前記吸気量調整手段は、前記燃焼室における吸気弁の開閉特性を変更する可変動弁機構であって、
    前記可変動弁機構を介して少なくとも前記吸気弁の開弁時間を遅くするか又は前記吸気弁のリフト量を大きくするかの何れか一によって前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記可変動弁機構を介して少なくとも前記吸気弁の開弁時間を早くするか又は前記吸気弁のリフト量を小さくするかの何れか一によって前記燃焼室への吸気量を減少することを特徴とする請求項5に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  8. 前記吸気量調整手段は、前記予混合圧縮着火内燃機関の吸気通路に設けられた吸気絞り弁であって、
    前記吸気絞り弁の開度を大きくすることで前記燃焼室への吸気量を増加し、更に前記吸気絞り弁の開度を小さくすることにより前記燃焼室への吸気量を減少することを特徴とする請求項5に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  9. 更に、前記燃焼室内の旋回流を制御する旋回流制御手段を有し、
    前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内の旋回流の強度を増加し、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記旋回流制御手段によって前記燃焼室内の旋回流の強度を低下することで、前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することを特徴とする請求項1に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  10. 更に、前記副噴射における噴射方向を変更する副噴射方向変更手段を有し、
    前記空燃比調整手段は、前記予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときは、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記副噴射方向変更手段によって前記副噴射における噴射方向を前記主噴射における噴射方向から遠ざけ、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記副噴射方向変更手段によって前記副噴射における噴射方向を前記主噴射における噴射方向に近づけることで、前記燃焼室内に分布する予混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比となることを回避することを特徴とする請求項1に記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  11. 主たる燃料を噴射する主燃料噴射弁と、
    前記主たる燃料より早い時期に副燃料を噴射し、燃焼室内に該副燃料と空気との予混合気を形成する副燃料噴射弁と、
    吸気通路の途中に設けられ吸気の酸素濃度を増加させる酸素富化装置と、
    吸気通路の途中に設けられ前記酸素富化装置をバイパスするバイパス通路と、
    吸気通路を流れる吸気に前記酸素富化装置又は前記バイパス通路のいずれを通過させるかを切り替えることで前記燃焼室内への吸気における酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、を備え、
    少なくとも前記燃焼室内に形成される予混合気の空燃比に基づいて該予混合気の着火時期が所定の時期より早いと判定されるときに、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比以上である場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を増加し、前記燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の前記所定の範囲に含まれる空燃比より低い場合は前記酸素濃度調整手段によって該吸気における酸素濃度を低減することを特徴とする予混合圧縮着火内燃機関。
  12. 前記主燃料噴射弁と前記副燃料噴射弁は、一の燃料噴射弁から構成されることを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載の予混合圧縮着火内燃機関。
  13. 前記主たる燃料と前記副燃料は、同一の性状を有する燃料であることを特徴とする請求項1から請求項12の何れかに記載の予混合圧縮着火内燃機関。
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