JP3978781B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用や圧力変動を利用して防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、過大な振動荷重が入力された際に防振連結される部材間の相対変位量を制限するストッパ機構を備えた流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振装置の一種として、防振連結される各一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を所定距離を隔てて対向配置すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材の対向面間を本体ゴム弾性体で囲繞せしめて非圧縮性流体が封入された主液室を形成した流体封入式防振装置が知られている。例えば、特許文献1,2,3に記載されているものがそれである。かくの如き流体封入式防振装置では、振動入力時に本体ゴム弾性体の弾性変形に伴って惹起される非圧縮性流体の流動作用や圧力変動を利用して有効な防振効果を得ることが出来るのであり、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント等への適用が検討されている。
【0003】
ところで、このような防振装置では、一般に、衝撃的荷重等の過大な外力が及ぼされた際に本体ゴム弾性体の弾性変形量を制限して第一の取付部材と第二の取付部材の相対的変位量を緩衝的に制限するために、ストッパ機構が採用される。
【0004】
ところが、従来構造のストッパ機構は、上述の特許文献1,2,3にも記載されているように、第一の取付部材および第二の取付部材からそれぞれ外方に大きく突設せしめた当接部を互いに所定距離を隔てて対向位置せしめて、第一の取付部材と第二の取付部材の相対的な変位量が大きくなった場合にそれら両当接部を緩衝材を介して当接せしめられるようにすることによって構成されていることから、ストッパ機構が大型化してしまい、配設スペースが制限される場合には採用し難い場合があった。
【0005】
加えて、従来構造のストッパ機構は、何れも、第一の取付部材と第二の取付部材に突設した両当接部を、振動入力方向に対向位置せしめて、それらの対向面間に配設した圧縮ゴムを介して当接させるようになっていることから、両当接部が当接してストッパ機構が作用した際のバネ特性の立ち上がりが急激であり、両当接部の当接に際しての打音や衝撃が問題となる場合もあったのである。
【0006】
【特許文献1】
特開平1−238730号公報
【特許文献2】
実開平2−25749号公報
【特許文献3】
実開平3−59544号公報
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材の相対的変位量を緩衝的に制限することの出来るストッパ機構を、コンパクトに実現せしめた、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【0008】
【解決課題】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0009】
(本発明の態様1)
本発明の態様1は、第一の取付部材と第二の取付部材を、主たる振動入力方向となるマウント軸方向で所定距離を隔てて対向配置すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材の対向面間を本体ゴム弾性体で囲繞せしめて非圧縮性流体が封入された主液室を形成した流体封入式防振装置において、前記主液室に剛性のストッパブロックを収容せしめて前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の対向面間における中間位置でそれら第一の取付部材と第二の取付部材の何れからも離隔させて配設すると共に、該ストッパブロックを該第二の取付部材に対して該ストッパブロックから外周側に広がる支持ゴム弾性体によって連結支持せしめて、該第一の取付部材と該第二の取付部材が接近方向に相対変位せしめられた際にそれら第一の取付部材と第二の取付部材が該ストッパブロックを介して相互に当接せしめられて相対変位量が制限されるようにしたことを、特徴とする。
【0010】
このような本態様においては、過大な荷重入力があった場合に、第一の取付部材と第二の取付部材が、主液室に収容配置されたストッパブロックを介して当接されることにより、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位量が制限されて有効なストッパ機能が発揮されることとなる。そこにおいて、かかるストッパブロックは、主液室のスペースを効率的に利用して該主液室の内部に配設されることから、防振装置の外径寸法の大型化を抑えつつ有効なストッパ機構が実現可能となる。
【0011】
また、ストッパブロックは、大きな荷重が入力されていない初期段階で第一の取付部材と第二の取付部材の何れからも離隔位置せしめられており、過大な荷重入力によって先ず第一の取付部材がストッパブロックに当接せしめられた後、該ストッパブロックが第二の取付部材にも当接せしめられることとなるが、そこにおいて、第一の取付部材がストッパブロックに当接した後、該ストッパブロックが第二の取付部材に当接せしめられるまでの間には、ストッパブロックが第一の取付部材と共に第二の取付部材に向かって変位せしめられるに際して、支持ゴム弾性体には剪断成分をもった弾性変形が生ぜしめられることとなる。
【0012】
それ故、第一の取付部材がストッパブロックに当接してから第一の取付部材と第二の取付部材がストッパブロックを介して当接されることにより相対変位量が最終的に制限されるまでの間には、かかる支持ゴム弾性体の弾性変形によって有効な緩衝作用が発揮され得ることとなる。特に支持ゴム弾性体は、マウント軸方向に対する傾斜角度を適当に調節することによってばね特性を容易にチューニングすることが可能とされる。
【0013】
従って、支持ゴム弾性体の弾性変形に基づいて、第一の取付部材がストッパブロックに当接する前と後の両領域間で防振装置のばね特性を非線形的に変化させたり、第一の取付部材と第二の取付部材がストッパブロックを介して当接せしめられるまでのストローク領域で有効な緩衝作用を発揮せしめてストッパ機構による当接音や衝撃を効果的に軽減することが可能となるのである。
【0014】
なお、本態様において、ストッパブロックは、合成樹脂材やゴム弾性体等で形成することも可能であるが、第一の取付部材と第二の取付部材の最終的な相対的変位量を安定して制限するために、金属等の剛性材で形成されることが望ましい。また、ストッパブロックは、第一の取付部材や第二の取付部材に対して緩衝的に当接されるように、かかるストッパブロックが金属等の剛性材で形成される場合には、第一の取付部材や第二の取付部材の当接部位に対して緩衝ゴムが形成される。更にまた、ストッパブロックは、第一の取付部材と第二の取付部材に対して直接に当接せしめられる他、第一の取付部材や第二の取付部材によって固定的に支持される適当な剛性当接材に対して当接せしめられ、かかる剛性当接材を介して、第一の取付部材や第二の取付部材に対して間接的に当接されるようになっていても良い。なお、主液室の内部に配設したストッパブロックと支持ゴム弾性体によって主液室が流体密に二分されてしまうと主液室に封入された非圧縮性流体による目的とする防振性能の向上効果が阻害されてしまうおそれがあることから、ストッパブロックと支持ゴム弾性体によって主液室が流体密に二分されてしまうことがないように、例えばストッパブロックや支持ゴム弾性体に対して適当な連通孔が形成される。
【0015】
(本発明の態様2)
本発明の態様2は、前記態様1に係る流体封入式防振装置であって、前記主液室において前記ストッパブロックを挟んで前記第一の取付部材側に位置せしめられる領域と前記第二の取付部材側に位置せしめられる領域を相互に連通せしめる連通孔を該ストッパブロックに設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、ストッパブロックと支持ゴム弾性体によって主液室が流体密に二分されてしまうことが回避されて、振動入力時には、本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて主液室に有効な流体流動が惹起されて、流体流動に基づいて目的とする防振効果を得ることが出来るのである。なお、より有効な防振効果を得るためには、ストッパブロックにおける連通孔は、ストッパブロックが第一の取付部材や第二の取付部材に当接せしめられた状態下でも、常時、連通状態に維持されることが望ましい。
【0016】
(本発明の態様3)
本発明の態様3は、前記第一又は第二の態様に係る流体封入式防振装置において、前記本体ゴム弾性体および前記支持ゴム弾性体を、何れも、前記第一の取付部材から前記第二の取付部材に向かってマウント軸方向で次第に拡開するテーパ付きの略円筒形状としたことを、特徴とする。このような本態様においては、支持ゴム弾性体のテーパ角度を適当に調節することによって、支持ゴム弾性体におけるばね特性、ひいては、前述の如く第一の取付部材がストッパブロックに当接せしめられることによって発揮される非線形なばね特性を有利にチューニングすることが可能となる。
【0017】
(本発明の態様4)
本発明の態様4は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された副液室を設けると共に、該副液室を前記主液室に接続するオリフィス通路を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、振動入力時に主液室と副液室の間に惹起される相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、このオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等に基づいて有効な防振効果を得ることが可能となる。
【0018】
(本発明の態様5)
本発明の態様5は、前記第四の態様に係る流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材を筒形状として、該第二の取付部材の一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置すると共に、該第一の取付部材と該第二の取付部材を連結する前記本体ゴム弾性体によって該第二の取付部材の一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で覆蓋すると共に、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に仕切部材を配設して該仕切部材を該第二の取付部材で支持せしめて、該仕切部材を挟んだ一方の側に前記主液室を他方の側に前記副液室を形成し、更に該第二の取付部材によって支持されてマウント軸直角方向に広がる当接部材を設けて、該当接部材を介して、前記ストッパブロックが該第二の取付部材に当接せしめられるようにしたことを、特徴とする。
【0019】
このような本態様においては、主液室と副液室を防振装置内部に効率的に形成することが出来ると共に、第二の取付部材におけるストッパブロックの当接位置を当接部材で構成したことにより、かかる当接部材によって、第二の取付部材におけるストッパブロックの当接部位の耐久性や強度を有利に確保することが可能となると共に、当接部材の配設位置を変更することによって、第一の取付部材と第二の取付部材のストローク量を調節することも可能となる。
【0020】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1,2には、本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第一の取付金具12が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造とされており、図示はされていないが、第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。また、そのような装着状態下、パワーユニットの分担支持荷重と防振すべき主たる振動は、図1中で上下方向に延びる、第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向方向であるマウント中心軸18上で入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいうものとする。
【0022】
より詳細には、第一の取付金具12は、マウント中心軸18に直交する方向に長手状に延びるブロック形状を有しており、アルミニウム合金や鉄鋼等の剛性材で形成されている。また、第一の取付金具12の下部には、逆円錐台形状の固着突部20が一体形成されていると共に、固着突部20の大径側端部の外周縁部には、外周側に向かって突出する鍔状部22が周方向に突設されている。更にまた、第一の取付金具20には、長手方向に貫通する取付用孔24が形成されており、この取付用孔24に挿通される図示しないボルト等を介して、第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられるようになっている。
【0023】
また、第一の取付金具12には、本体ゴム弾性体16が加硫接着されており、本体ゴム弾性体16が第一の取付金具12を有する一体加硫成形品とされている。かかる本体ゴム弾性体16は、全体としてテーパ付きの厚肉円筒形状を有しており、マウント中心軸18上で下方に向かって拡開するように配設されている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側開口端縁部に対して、第一の取付金具12の固着突部20の外周面が加硫接着されており、それによって、本体ゴム弾性体16の小径側開口部が第一の取付金具12によって流体密に閉塞されている。一方、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、円筒形状の連結金具26が加硫接着されている。
【0024】
更にまた、第一の取付金具12の固着突部20の下端面には、その全面を覆う緩衝ゴム28が形成されて加硫接着されている。また、第一の取付金具12の上面には、鍔状部22で支持されて上方に向かって突出するストッパゴム30が形成されて加硫接着されている。なお、これら緩衝ゴム28とストッパゴム30は、何れも、本体ゴム弾性体16と一体成形されている。また、ストッパゴム30は、後述するように、リバウンド方向のストッパ機構を構成するものである。
【0025】
一方、第二の取付金具14は、全体として大径の円筒形状を有しており、第一の取付金具と同様に剛性材で形成されて、第一の取付金具12の下方に離隔位置してマウント中心軸18上に延びるように配設されている。この第一の取付金具12は、軸方向中間部分に環状の段差部32を有しており、該段差部32を挟んで軸方向下側が小径筒部34とされている一方、上側が大径筒部36とされている。また、小径筒部34の開口端縁部には、内方に向かって突出するフランジ状部38が一体形成されている。
【0026】
また、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部には、可撓性膜としてのダイヤフラム40が配設されている。このダイヤフラム40は、薄肉のゴム膜によって形成されており、上方に凸となるドーム形状とされて容易に変形し得るようになっている。そして、ダイヤフラム40の外周縁部がフランジ状部38に加硫接着されていることにより、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部が流体密に閉塞されている。なお、第二の取付金具14の小径筒部34と大径筒部36には、それぞれ、内周面の略全面に亘って薄肉のシールゴム層42が加硫接着されている。
【0027】
そして、第二の取付金具14の大径筒部36の開口部分に対して、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周縁部に加硫接着された連結金具26が嵌め込まれて、大径筒部36が連結金具26に外嵌固定されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性的に連結されている。また、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部が、本体ゴム弾性体16で流体密に覆蓋されている。
【0028】
また、第二の取付金具14の内部には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム40の対向面間において、外部空間に対して封止されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域44が画成されている。なお、封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が何れも採用可能であり、特に後述するオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・S以下の低粘性流体が好適に採用される。
【0029】
さらに、かかる流体封入領域44には、仕切部材46が収容配置されている。この仕切部材46は、全体として略厚肉円板形状を有しており、アルミニウム合金等の金属材や合成樹脂材等の硬質材で形成されている。そして、かかる仕切部材46は、第二の取付金具14の小径筒部34に嵌め込まれて、第二の取付金具14の軸方向中間部分において軸直角方向に広がって固着されている。
【0030】
これにより、流体封入領域44が、仕切部材46で流体密に二分されており、以て、仕切部材46と本体ゴム弾性体16の間には主液室48が画成されている一方、仕切部材46とダイヤフラム40の間には副液室50が画成されている。そして、副液室50は、壁部の一部を構成するダイヤフラム40が容易に変形し得ることによって、容積変化が容易に許容されて内圧変動が速やかに解消されるようになっている。
【0031】
また、仕切部材46には、外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる凹溝52が形成されており、この凹溝52が、小径筒部34でシールゴム層42を介して流体密に覆蓋されることにより、オリフィス通路54が形成されている。そして、オリフィス通路54の周方向の各端部が、連通孔56,58を通じて主液室48と副液室50の各一方に接続されており、以て、主液室48と副液室50が、オリフィス通路54を通じて相互に連通せしめられている。
【0032】
更にまた、仕切部材46には、主液室48に面する上端面の中央に位置してすり鉢形状の凹所60が形成されていると共に、この凹所60の開口部にゴム弾性板62が配設されている。かかるゴム弾性板62は、所定厚さの略円板形状を有しており、外周縁部には円環状の嵌着金具64が加硫接着されている。そして、嵌着金具64が凹所60の開口部に圧入されることにより、凹所60の開口部を流体密に覆蓋するようにしてゴム弾性板62が組み付けられている。なお、本実施形態では、仕切部材46に貫設されて凹所60の底面に開口する連通路66を通じて、凹所60が外部空間に連通せしめられている。
【0033】
要するに、ゴム弾性板62は、その配設状態下、凹所60によって背後に形成された空気室68により弾性変形が許容されるようになっている。そこにおいて、ゴム弾性板62のばね剛性は、本体ゴム弾性体16よりは充分に小さいが、ダイヤフラム40よりは大きく設定されている。そして、ゴム弾性板62の弾性変形に基づいて、主液室48における微小な圧力変動が吸収されて軽減乃至は解消されるようになっている。
【0034】
さらに、主液室48には、ストッパ部材70と、当接部材としての当接金具72が収容配置されている。これらストッパ部材70と当接金具72は、第一の取付金具12と仕切部材46の対向面間においてそれぞれ略軸直角方向に広がる状態で、マウント中心軸18上で互いに離隔して配設されている。
【0035】
ストッパ部材70は、逆円錐台形状のストッパブロック80を備えている。このストッパブロック80は、金属や合成樹脂等の硬質材で形成されており、大径側端面の中央部分には、上方に向かって円形断面をもって突出する中央突部82が一体形成されている。この中央突部82の突出先端面が、第一の取付金具12の固着突部20の小径側端面に対してマウント中心軸18上で離隔して対向位置せしめられている。そして、中央突部82の突出先端面が、固着突部20の小径側端面に対して、緩衝ゴム28を介して当接されるようになっている。
【0036】
また、ストッパブロック80の外周面には、支持ゴム弾性体84が加硫接着されている。この支持ゴム弾性体84は、ストッパブロック80の外周面から軸直角方向外方に向かってテーパ角度をもって広がっており、全体としてマウント中心軸18と同軸上で斜め下方にスカート状に広がる円環形状を呈している。また、支持ゴム弾性体84の外周面には、円筒形状の連結金具86が加硫接着されており、この連結金具86が第二の取付金具14の大径筒部36に圧入されて嵌着固定されることにより、支持ゴム弾性体84の外周面が第二の取付金具14に対して固着されている。なお、ストッパブロック80の小径側端面には、下方に向かって突出する緩衝ゴム88が、支持ゴム弾性体84と一体形成されて、突設されている。
【0037】
このようにして組み付けられたストッパ部材70においては、支持ゴム弾性体84が、ストッパブロック80から軸方向下方に向かってテーパ状に傾斜して外周側に広がる形態とされていることにより、ストッパブロック80が軸方向に変位せしめられた際に、支持ゴム弾性体84が、剪断成分をもって弾性変形せしめられることとなる。また、支持ゴム弾性体84は、そのテーパ角度を適宜に変更設定することにより、ストッパブロック80の軸方向の変位に際して惹起される剪断成分を調節して、ばね特性をチューニングすることが出来るようになっている。
【0038】
また、ストッパ部材70が、上述の如く主液室48内に配設されることにより、主液室48が、マウント中心軸18上で上下に仕切られた状態となり、ストッパ部材70の上側には、ストッパ部材70と第一の取付金具12の対向面間において上側分割室90が形成されている一方、ストッパ部材70の下側には、ストッパ部材70と仕切部材46の対向面間において下側分割室92が形成されている。
【0039】
更にまた、ストッパブロック80には、下面中央に開口して中心軸上を上方に向かって延び、中央突部82内で屈曲して中央突部82の外周面に開口する連通孔としての透孔94が形成されている。そして、この透孔94によって、上下の分割室90,92が相互に連通せしめられている。なお、透孔94の上端部は、中央突部82の外周面に開口せしめられていることから、中央突部82が第一の取付金具12に当接せしめられた状態下でも、透孔94の上側分割室90への連通状態が維持されるようになっている。
【0040】
また一方、当接金具72は、所定厚さの円板形状を有しており、アルミニウム合金等の剛性材で形成されている。そして、かかる当接金具72は、第二の取付金具14の大径筒部36に嵌め込まれて、外周縁部を段差部32に重ね合わされて固定的に支持されることにより、マウント中心軸18に対して直交する方向に広がる状態で、マウント中心軸18上においてストッパブロック80と仕切部材46の対向面間の中間部分に配設せしめられている。
【0041】
また、当接金具72には、中央部分と、径方向中間部分の複数箇所において、複数の貫通孔96が形成されており、これらの貫通孔96によって、当接金具72を挟んだ両側の領域が常時連通状態に維持されて、全体として実質的に一つの下側分割室92が維持されるようになっている。
【0042】
そして、ストッパブロック80が、当接金具72に対して、緩衝ゴム88を介して当接されるようになっている。また、ストッパブロック80が当接金具72に当接せしめられた状態下でも、ストッパブロック80の透孔94は、当接金具72の貫通孔96を通じて下側分割室92に開口せしめられるようになっており、透孔94による上下分割室90,92の連通状態が維持されるようになっている。特に、本実施形態では、透孔94が充分な流路断面積をもって形成されており、ストッパ部材70で仕切られた上下分割室90,92が、常時、透孔94での連通状態に維持されることにより、これら上下分割室90,92が実質的に単一の主液室48を構成するようになっている。
【0043】
上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、図1に示されているように、第二の取付金具14に対してブラケット98が固着せしめられ、かかるブラケット98を介して、第二の取付金具14が自動車のボデー(図示せず)に取り付けられるようにされる。なお、かかるブラケット98は、大径円筒形状の筒状嵌着部100に対して、その外周面に複数の脚部102が溶着されると共に、筒状嵌着部100の上方には、径方向一方向に跨いで延びるアーチ状のストッパ部104が固着されている。
【0044】
そして、脚部102によって自動車のボデーに固定された自動車への装着状態下では、パワーユニットに取り付けられた第一の取付金具12とボデーに取り付けられた第二の取付金具14の間に、マウント中心軸18上でそれら両取付金具12,14を相互に接近せしめる方向にパワーユニットの分担支持荷重が及ぼされて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて、図示された状態よりも第一の取付金具12が第二の取付金具14に対して接近方向に変位して位置せしめられることとなる。即ち、かかる装着状態下では、第一の取付金具12のストッパゴム30が、ストッパ部104に対して所定距離を隔てて対向位置せしめられており、第一の取付金具12が第二の取付金具14から離隔する方向(リバウンド方向)に大きく相対変位せしめられた際、第一の取付金具12がストッパゴム30を介してストッパ部104に当接せしめられることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14のリバウンド方向への相対変位量が緩衝的に制限されて、リバウンド方向のストッパ機能が発揮されるようになっている。
【0045】
また、かくの如き装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に略マウント中心軸18方向の振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って主液室48に圧力変動が惹起されることとなり、その結果、主液室48と副液室50の間に相対的な圧力変動が生ぜしめられて、かかる圧力変動により、オリフィス通路54を通じての流体流動が生ぜしめられることとなる。そして、このオリフィス通路54を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、入力振動に対する有効な防振効果が発揮され得るのである。具体的には、例えば、オリフィス通路54がエンジンシェイク等の低周波振動に対してチューニングされることにより、低周波振動の入力時に、オリフィス通路54を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて有効な減衰効果が発揮され得ることとなる。
【0046】
更にまた、特に本実施形態では、オリフィス通路54のチューニング周波数よりも高周波数域の振動が入力された場合には、例えばアイドリング振動や走行こもり音等の中乃至高周波数域の振動が入力された場合には、オリフィス通路54の流通抵抗が著しく増大するが、主液室48に面して配設されたゴム弾性板62の弾性変形に基づいて主液室48の圧力変動が吸収軽減され得ることとなり、その結果、アイドリング振動や走行こもり音等に対しても、良好な防振性能が発揮され得ることとなるのである。
【0047】
そして、かかるエンジンマウント10に対して、マウント中心軸18方向での大きな荷重が入力された場合には、先ず、第一の取付金具12がストッパブロック80に対して当接せしめられることとなる。かかる当接状態下では、第一の取付金具12とストッパブロック80が一体的に変位せしめられることから、本体ゴム弾性体16だけでなく、支持ゴム弾性体84も、入力振動乃至は入力荷重に対して直接にばね剛性を発揮し得ることとなる。
【0048】
それ故、入力荷重が大きくなるに従って、荷重の比較的小さい初期段階では、主に本体ゴム弾性体16のばね特性だけが支配的に発揮されて、比較的に柔らかいばね特性が発揮されるのに対して、中荷重の段階では、本体ゴム弾性体16と支持ゴム弾性体84が並列的にばね成分として作用して全体として硬いばね特性が発揮されるようになる。
【0049】
さらに、入力荷重が一層大きくなると、図3に示されているように、第一の取付金具12に当接せしめられて一体的に変位せしめられるストッパブロック80が、緩衝ゴム88を介して当接金具72に当接せしめられることとなる。これにより、緩衝ゴム88のばね特性に基づいて発揮される緩衝的なストローク領域を経て、第一の取付金具12が、ストッパブロック80と当接金具72を介して第二の取付金具14に対して直接的に当接せしめられることとなり、以て、第一の取付金具12と第二の取付金具14のマウント中心軸18上での接近方向における相対変位量が確実に規制されることとなるのである。
【0050】
従って、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に大きな荷重が入力された場合には、本体ゴム弾性体16の低ばね特性から、支持ゴム弾性体84による高ばね特性に変化し、その後、緩衝ゴム28,88の圧縮ばねによる緩衝作用を伴うストッパブロック80を介しての第一の取付金具12と第二の取付金具14の当接作用に基づく確実な変位規制に至ることとなるのであり、全体として、非線形的なばね特性が充分なストロークをもって有効に発揮され得て、第一の取付金具12と第二の取付金具14の接近方向(バウンド方向)での相対変位量が、大きな衝撃や打音を伴うことなく効果的に制限され得ることとなるのである。
【0051】
特に、支持ゴム弾性体84は、剪断成分をもって変形せしめられることから、大きなストローク領域で、本体ゴム弾性体16に対する補助的なばね作用を安定して発揮し得るのであり、エンジンマウント10における防振性能を充分に確保しつつ、最終的にストッパブロック80を介して第一の取付金具12と第二の取付金具14が相対的に当接せしめられることによりストッパ機能が発揮される場合の衝撃や打音を効果的に低減することが出来るのである。
【0052】
また、支持ゴム弾性体84は、マウント中心軸18に対する傾斜角度(スカート状に広がるテーパ角度)を調節することによって、部材容積(肉厚寸法)を大きくして充分な耐久性を確保しつつ、柔らかいばね特性を設定することが出来ると共に、発揮されるばね特性を大きな自由度で適当にチューニングすることが出来るのである。
【0053】
さらに、本実施形態では、第二の取付金具14に対するストッパブロック80の当接部位が、当接金具72によって構成されていることから、かかる当接金具72の第二の取付金具14に対する組付け位置を調節することで、第一の取付金具12と第二の取付金具14の相対的なストローク量を容易に設定,変更することが出来る。また、ストッパブロック80の当接部位を形成するために、第二の取付金具14において特別な当接金具72を設けたことにより、仕切部材46への大荷重の入力を回避せしめて、オリフィス通路54が形成されたりする仕切部材46の損傷防止が実現され得ると共に、仕切部材46におけるゴム弾性板62の配設領域を有利に確保することが出来るのであり、それらの点に関しても、大きな設計自由度が実現され得ることとなる。
【0054】
また、上述の如き構造においては、バウンド方向のストッパ機構が、主液室48をスペースとして巧く利用して配設され得ることから、マウントサイズの著しい大型化を伴うことなく、コンパクトなサイズでストッパ機能の実現が可能となるのである。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0056】
例えば、前記実施形態において採用されていた当接金具72は必ずしも必要ではなく、第二の取付金具14を有底円筒形状として、その底壁部に対してストッパブロック80を直接に当接させるようにしたり、或いは、図4に示されているように、第二の取付金具14に固着された仕切部材46に対して、ストッパブロック80が当接せしめられるようにしても良い。なお、図4においては、その理解を容易とするために、前記実施形態と同様な構造とされた部材および部位について、それぞれ、図中に、前記実施形態と同一の符号を付しておく。
【0057】
また、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力に際して流体が流動せしめられることとなる領域、具体的には、ストッパブロック80の透孔94や、当接金具72の貫通孔96を、流体流路として積極的に利用して、かかる流体流路の流路長さや流路断面積を適当に調節することにより、それら流体流路を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて有効な防振効果が発揮されるようにチューニングを施すことも可能である。
【0058】
また、支持ゴム弾性体84は、必ずしも周方向に連続して環状とされている必要はなく、例えば、周上の複数箇所でストッパブロック80から外周側に向かって延び出して、該ストッパブロック80を第二の取付金具14に対して弾性連結せしめる複数本の弾性連結部によって、支持ゴム弾性体を構成すること等も可能である。そして、このように複数本の弾性連結部によって支持ゴム弾性体を構成した場合には、周方向に隣接する支持ゴム弾性体の間の隙間を通じて上下の分割室90,92が相互に連通状態に維持されることから、ストッパブロック80における透孔94は必ずしも形成する必要はない。
【0059】
更にまた、連通路66を遮断して空気室68を密閉空間とすることによって、マウント防振特性を調節したり、或いは、連通路66に切換弁を設けて、該切換弁を開閉操作することでマウント防振特性を調節するようにしても良い。或いはまた、特開平10−184769号公報等に記載されているように、連通路66を通じて外部から積極的に空気圧変動を及ぼして主液室48に能動的な圧力変動を及ぼすことにより、能動的な防振効果を発揮させるようにすることも可能である。
【0060】
また、本発明において採用されるオリフィス通路の具体的構造や形態、或いは主液室および副液室の具体的な配設形態等は限定されるものでなく、要求されるマウントサイズや防振特性等を考慮して適宜に設計変更され得るものである。具体的には、例えば、特開2002−181117号公報等に記載されているように、本体ゴム弾性体16を挟んで主液室と反対側に副液室を形成するようにしても良い。
【0061】
加えて、本発明は、例示の如き自動車用エンジンマウントの他、自動車用のボデーマウントや自動車以外の各種装置における防振装置に対して、何れも適用可能である。
【0062】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、主液室をスペースとして巧く利用してバウンドストッパ機構が実現可能となるのであり、しかも、充分なストローク領域をもって非線形的なばね特性が実現可能となって、大きな衝撃や打音の発生を抑えつつ有効なバウンドストッパ機能が発揮され得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1に示されたエンジンマウントの平面図である。
【図3】図1に示されたエンジンマウントにおけるバウンド方向のストッパ機能を説明するための説明図である。
【図4】本発明の別の実施形態としてのエンジンマウントを示す、図1に対応する縦断面図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
40 ダイヤフラム
46 仕切部材
48 主液室
50 副液室
54 オリフィス通路
62 ゴム弾性板
70 ストッパ部材
72 当接金具
80 ストッパブロック
84 支持ゴム弾性体
Claims (5)
- 第一の取付部材と第二の取付部材を、主たる振動入力方向となるマウント軸方向で所定距離を隔てて対向配置すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材の対向面間を本体ゴム弾性体で囲繞せしめて非圧縮性流体が封入された主液室を形成した流体封入式防振装置において、
前記主液室に剛性のストッパブロックを収容せしめて前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の対向面間における中間位置でそれら第一の取付部材と第二の取付部材の何れからも離隔させて配設すると共に、該ストッパブロックを該第二の取付部材に対して該ストッパブロックから外周側に広がる支持ゴム弾性体によって連結支持せしめて、該第一の取付部材と該第二の取付部材が接近方向に相対変位せしめられた際にそれら第一の取付部材と第二の取付部材が該ストッパブロックを介して相互に当接せしめられて相対変位量が制限されるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記主液室において前記ストッパブロックを挟んで前記第一の取付部材側に位置せしめられる領域と前記第二の取付部材側に位置せしめられる領域を相互に連通せしめる連通孔を該ストッパブロックに設けた請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記本体ゴム弾性体および前記支持ゴム弾性体を、何れも、前記第一の取付部材から前記第二の取付部材に向かってマウント軸方向で次第に拡開するテーパ付きの略円筒形状とした請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された副液室を設けると共に、該副液室を前記主液室に接続するオリフィス通路を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
- 前記第二の取付部材を筒形状として、該第二の取付部材の一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置すると共に、該第一の取付部材と該第二の取付部材を連結する前記本体ゴム弾性体によって該第二の取付部材の一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で覆蓋すると共に、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に仕切部材を配設して該仕切部材を該第二の取付部材で支持せしめて、該仕切部材を挟んだ一方の側に前記主液室を他方の側に前記副液室を形成し、更に該第二の取付部材によって支持されてマウント軸直角方向に広がる当接部材を設けて、該当接部材を介して、前記ストッパブロックが該第二の取付部材に当接せしめられるようにした請求項4に記載の流体封入式防振装置。
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