JP3977875B2 - アルミナ系セラミックス−アルミニウム合金の接合用ろう合金及び接合体 - Google Patents
アルミナ系セラミックス−アルミニウム合金の接合用ろう合金及び接合体 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はアルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とのろう付に用いられるろう合金及びアルミナ系セラミックス−アルミニウム合金の接合体に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
従来、本発明の対象となっているアルミナ系セラミックスとアルミニウム合金との接合技術に関しては、以下のような近接する技術が知られている。
【0003】
まず、アルミナ系セラミックスと金属とを接合する技術としては、下記の示すように(1)活性金属ろうによるろう付、及び(2)メタライズ法が知られている。
【0004】
(1)の活性金属ろうによるろう付は、セラミックスと化学的に反応するTi、Zrなどの金属(活性金属)を含有するろう(活性金属ろう)によりセラミックスと金属とをろう付する方法である。この方法で用いられる活性金属ろうの基本はAg−Cuろうであり、ろう付温度は800〜1000℃である。
【0005】
(2)のメタライズ法は、接合しようとするセラミックス表面にMo、Wなどの高融点金属を含む表面層(メタライズ層)を設け、さらに表面層をNiなどの金属でメッキした後、メッキ層と相手金属部材とをろう付する方法である。
【0006】
一方、アルミニウム合金を他種の材料と接合するのに有効な方法としては、(3)接着剤を用いて接合する方法しか知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以下に示すように、上述した従来技術のどの方法でもアルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とを接合するには不適当である。
【0008】
(1)の方法はアルミニウム合金とセラミックスとの接合に適用することができない。これは、この方法による処理温度がアルミニウム合金の融点(一般的に600℃以下)よりも高いことから、接合しようとするアルミニウム合金部材自体が溶融してしまうためである。
【0009】
(2)の方法では、セラミックス表面にメタライズ層及びメッキ層を設けた状態で、アルミニウム合金用のろうを用いればろう付が可能である。しかし、ろう付の前にメタライズ処理及びメッキ処理という2段階の前処理が必要となるので生産性が悪い。
【0010】
(3)のように接着剤を用いる方法では、高強度、高安定性、高耐熱性、高熱伝導性の接合を得ることができない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とをなんらの前処理なしに金属的に接合することができ、高強度、高安定性、高耐熱性、高熱伝導性の接合を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の接合用ろう合金は、アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金との接合に用いられるろう合金であって、5〜45wt%のGe、5〜15wt%のSi、2〜10wt%のMg、残部Alからなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の接合体は、アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とをろう合金により接合した接合体であって、前記ろう合金が、5〜45wt%のGe、5〜15wt%のSi、2〜10wt%のMg、残部Alからなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、アルミナ系セラミックスとはアルミナ、アルミナを含有するガラス、アルミナを含有するセラミック−ガラス複合材を含み、特に限定されない。また、アルミニウム合金に関してもその構成成分及び組成は特に限定されない。本発明の接合体は様々な分野で利用され、その用途は特に限定されない。
【0015】
本発明において、ろう合金の組成を上記のように限定した理由を説明する。
【0016】
Mgはアルミナ系セラミックスと反応し、良好な接合を形成する作用を有するとともに、アルミニウム表面の酸化膜を還元分解してろうによる濡れを良好にする作用を有する。Mgが10wt%を超えると雰囲気中の酸素による酸化が激しくなり、ろう付性が悪化して接合部にボイドなどの欠陥が発生する。Mgが2wt%未満ではアルミナ系セラミックスとの反応、及びアルミニウム合金表面の酸化物の分解とも不十分となり、上記の効果が得られない。
【0017】
Ge及びSiはろうの融点を降下させる作用を有する。ただし、GeとSiとの合計が10wt%未満ではろうの融点を600℃以下に降下させることができず、接合しようとするアルミニウム合金の融点以上又は融点近くの温度でろう付する必要が生じるため、接合が不可能になったり、アルミニウム合金の劣化を招く。Siの含有量が15wt%を超えた場合にもろうの融点が上昇するため、上記と同様の問題が生じる。Geの含有量が45wt%を超えると、ろう自体が脆化して実用的でなくなるとともに、ろう付後の接合部にも脆化が起こるために接合強度が低下する。
【0018】
【作用】
本発明のろう合金は融点がアルミニウム合金の融点よりも低いので、アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とを直接接合することができる。このろう付に際しては、アルミナ系セラミックスにメタライズ処理、化学研磨、メッキなどの前処理を施す必要がなく、アルミニウム合金表面の酸化物を除去するためにフラックスを用いる必要もないので、生産性が向上する。また、本発明のろう合金を用いて得られる接合体は金属ろうにより接合されているため、接着剤を用いて接合されたものと比較して、強度が高く、熱伝導性・耐熱性・気密性にも優れている。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0020】
実施例1〜5及び比較例1〜5
25wt%Ge、12wt%Si、6wt%Mg、残部Alからなるろう合金を調製した。このろう合金を用い、アルミナセラミックスとA1050アルミニウム合金とを、温度550℃、5×10-4torrの真空中でろう付した。
【0021】
得られたアルミナセラミックス−アルミニウム合金の接合体の接合界面の金属組織を示す電子顕微鏡写真を図1及び図2に示す。なお、図2は図1の拡大写真である。これらの図に示されるように接合界面にはボイドなどの欠陥は見られない。また得られた接合体について、接合面に平行にせん断荷重をかけたところ、アルミナ部材が破断するまで接合面の破断は起こらなかった。
【0022】
上記と同様に表1に示す種々の組成のろう合金を調製して、ろう付によりアルミナセラミックス−アルミニウム合金の接合体を作製し、そのろう付性能を調べた結果を表1に併記する。
【0023】
【表1】
実施例6
30wt%Ge、10wt%Si、5wt%Mg、残部Alからなるろう合金を調製した。図3に示すように、このろう合金を用い、アルミナパイプ1とA6061アルミニウム合金製の円盤2とをろう付して真空機器用絶縁フランジを作製した。
【0024】
この真空機器用絶縁フランジは、絶縁部材がセラミックスであるため電気絶縁性が良好である。また、締結部がアルミニウム合金であるため十分な機械的信頼性を有する。更に、接合部の気密性が高いため、内部を高真空にしてもリークが起こらない。
【0025】
実施例7
25wt%Ge、8wt%Si、3wt%Mg、残部Alからなるろう合金を調製した。図4に示すように、このろう合金を用い、アルミナ基板11上にA1050アルミニウム合金製のブロック12をろう付して電子素子用ヒートシンクを作製した。
【0026】
このヒートシンクは、接合部がアルミニウムを主体とする金属質であるため、熱伝導性に優れている。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の接合用ろう合金を用いればアルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とを直接に高い生産性で接合することができる。また、このろう合金を用いて得られる本発明の接合体は強度が高く、熱伝導性・耐熱性・気密性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られたアルミナセラミックス−アルミニウム合金の接合体の接合界面の金属組織を示す電子顕微鏡写真。
【図2】本発明の実施例1で得られたアルミナセラミックス−アルミニウム合金の接合体の接合界面の金属組織を示し、図1を拡大した電子顕微鏡写真。
【図3】本発明の実施例6で作製された真空機器用絶縁フランジの分解斜視図。
【図4】本発明の実施例7で作製された電子素子用ヒートシンクの分解斜視図。
【符号の説明】
1…アルミナパイプ、2…アルミニウム合金製の円盤、11…アルミナ基板、12…アルミニウム合金製のブロック。
Claims (2)
- アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金との接合に用いられるろう合金であって、5〜45wt%のGe、5〜15wt%のSi、2〜10wt%のMg、残部Alからなることを特徴とする接合用ろう合金。
- アルミナ系セラミックスとアルミニウム合金とをろう合金により接合した接合体であって、前記ろう合金が、5〜45wt%のGe、5〜15wt%のSi、2〜10wt%のMg、残部Alからなることを特徴とする接合体。
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