JP3977239B2 - 液状シリコーン組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は液状シリコーン組成物の製造方法に関する。詳しくは、粘度が低く、かつ粘度の経時変化が小さい液状シリコーン組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコーンゴム成形品は、ジオルガノポリシロキサン生ゴムと補強性シリカフィラーを主剤とするシリコーンゴムベースコンパウンドに硬化触媒として有機過酸化物を混練し、硬化成形することによって得られていた。しかしながら、この方法の場合、成形加工の前に2本ロールミル等による素練りや分出し等の複雑な工程が必要であった。また、最近では、比較的低重合度のケイ素原子結合ビニル基を有するジオルガノポリシロキサンと微粉末状シリカフィラーからなる液状シリコーンゴムベースコンパウンドに硬化剤あるいは硬化触媒としてケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンと白金系触媒を添加配合して硬化成形してシリコーンゴム成形品を得る方法が広く用いられている。この方法の場合、硬化前の液状シリコーン組成物は流動性を有し、工程が簡単でかつ射出成形への応用や自動化が容易であるなど、混練から成形までの全工程を簡素化できるという利点がある。しかし、この液状シリコーン組成物は、多量の補強性充填剤を含有しつつも流動性を保つことが必要であり、そのために可塑剤として、例えば、ヘキサメチルジシラザン,低重合度の両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンまたは低重合度の両末端アルコキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンの添加が不可欠であった。その結果、組成や工程が複雑化し、製造コストが上昇するという欠点があった。この欠点を解決するため、可塑剤を添加することなく、かつ単純な工程で流動性のある液状シリコーンゴムベースコンパウンドを製造する方法が提案されている(特公平4−28008号公報、特公平4−39487号公報参照)。しかし、これらの方法で得られる液状シリコーンゴムベースコンパウンドは、その粘度の経時変化が大きいという欠点があった。また、特許第3245272号公報には粘度の低い液状シリコーンゴムベースコンパウンドの製造方法が提案されているが、表面疎水化処理シリカフィラーの混練量が25〜50重量部と多いために、結果的に流れ性の悪いベースコンパウンドとなってしまうきらいがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記欠点を解消するために鋭意検討した結果、タップ密度が著しく大きい表面処理補強性シリカ微粉末を使用し、特定の混練方法を採れば上記欠点が解消されることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の課題は、粘度が低く、かつ粘度の経時変化が小さい液状シリコーン組成物を製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決する手段として、
(A)25℃における粘度が5〜100,000mm2/sであり、かつ1分子中に少なくとも2個の、シラノール基または脂肪族不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサン30〜60重量部と、
(B)有機ケイ素化合物により表面が処理されたシリカ微粉末であって、BET法による比表面積が50 m2/g以上、タップ密度が0.2〜0.4 g/ml、そして表面のカーボン量が2.5重量%以上である上記表面処理シリカ微粉末1〜24重量部と
を混練して混練物を得、
次いで、該混練物に前記(A)成分のジオルガノポリシロキサン70〜40重量部(但し、得られる組成物全体における(A)成分の合計量は100重量部)を加えて混練することを特徴とする、液状シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
−(A)ジオルガノポリシロキサン−
本発明に使用される(A)成分のジオルガノポリシロキサンは従来より液状シリコーン組成物の原料として通常使用されている公知のジオルガノポリシロキサンでよい。
【0006】
このジオルガノポリシロキサンは25℃における粘度が、5mm2/s未満では硬化後にシリコーンゴム弾性体としての優れた物理特性が得られず、また、100,000mm2/sを越えるとその取扱いが困難となるため、25℃における粘度が5〜100,000mm2/sであることが必要であり、好ましくは500〜30,000mm2/s、より好ましくは1,000〜10,000mm2/sである。このジオルガノポリシロキサンの分子構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、ジオルガノヒドロキシシロキシ基、トリオルガノシロキシ基、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基等の無官能性または単官能性シロキサン単位で末端が封鎖された基本的に直鎖状であるが、少量ならば分子内に分岐状構造を含んでいてもよい。このジオルガノポリシロキサンが有する有機基としては置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、その具体例は後述する平均組成式(1)に関して説明する通りである。また、このジオルガノポリシロキサンは1分子中に少なくとも2個の、シラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)またはケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を、好ましくは分子鎖両末端に有する。
【0007】
このようなジオルガノポリシロキサンは、典型的には、例えば平均組成式(1):
R1 aSiO(4-a)/2
(式中、R1は置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基であり、aは1.9〜2.4の数である。)
により表される。
【0008】
平均組成式(1)中のケイ素原子に結合する基R1により表される置換もしくは非置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基としては、例えばメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基などのアルキル基;ビニル基,アリル基,1−プロペニル基などのアルケニル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;2−フェニルメチル基,2−フェニルエチル基,3,3,3−トリフルオロプロピル基などの置換アルキル基が例示される。これらの置換もしくは非置換の1価炭化水素基の少なくとも50モル%、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上はメチル基である。また、このジオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上の、シラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)またはケイ素原子に結合したアルケニル基等の脂肪族不飽和基を含有するものであるが、好ましくはこのシラノール基または脂肪族不飽和基を分子鎖両末端に有するものである。脂肪族不飽和基としては、具体的にはケイ素原子結合アルケニル基、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基などやアクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基などが好ましい。また、分子鎖末端に位置するケイ素原子には前述したようにシラノール基または脂肪族不飽和基が結合していることが好ましいが、前述したその他の置換もしくは非置換の1価炭化水素基あるいはアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基)または水素原子が結合していてもよい。
【0009】
このようなジオルガノポリシロキサンのさらに具体的な代表例としては、両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヒドロキシシロキサン共重合体,両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヒドロキシシロキサン共重合体,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体が挙げられる。
【0010】
−(B)表面処理補強性シリカ微粉末−
(B)成分の表面処理補強性シリカ微粉末(以下、「表面処理シリカ」という)は、その表面が特定量の有機ケイ素化合物で表面処理されていることにより、上記(A)成分との混合後のシリコーンコンパウンドの経時的凝集による増粘が抑制され、さらに、該コンパウンドを硬化触媒や架橋剤(アルコキシシラン類)と混合後に作業に必要なポットライフを十分確保することができる。そのため、この表面処理シリカは本発明の組成物を構成する成分のなかで、特に重要な成分である。
【0011】
表面処理シリカの調製に使用されるシリカ微粉末(以下、「未処理シリカ」という)は、特にその種類は限定されず、従来のシリコーンゴム組成物に補強性充填剤として使用されているものを使用できる。中でも、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカなどが好適に使用され、特にゴム強度を向上するにはヒュームドシリカが好適である。
【0012】
(B)成分の表面処理シリカは、表面処理後の状態で、BET吸着法により測定した比表面積が50 m2/g以上であり、タップ密度が0.2〜0.4 g/mlであるものを用いることが必要である。なお、BET吸着法による比表面積は通常50〜600 m2/gの範囲でよく、好ましくは100〜400 m2/gである。また、タップ密度は好ましくは0.2〜0.3g /mlであり、更に好ましくは0.22〜0.30 g/mlであり、特に好ましくは0.25〜0.29 g/mlである。
【0013】
タップ密度は、試料を均一に充填したシリンダーをタッピングで圧縮させて、最密充填密度(タップ密度)を測定したものである。測定器としては、セイシン企業社製のKYT-4000等がある。
(B)成分の表面処理シリカは前記未処理シリカ微粉末を有機ケイ素化合物で表面処理して得られる。
一般に、シリカ微粉末はゴムの補強剤として必要不可欠なものであるが、未処理のシリカは表面に多数のシラノール基(Si-OH基)が存在するために補強剤として添加するとチキソトロピーなどによる増粘、ポットライフの短縮などの招来する。この点、本発明の(B)成分である表面処理シリカは表面が疎水化しているので上記のような弊害が避けられる。
【0014】
表面処理シリカの表面に存在するカーボン量が表面処理シリカ全体の2.5重量%以上であればよく、好ましくは3重量%以上、より好ましくは3.2重量%以上の範囲である。該カーボン量が2.5重量%未満ではゴム組成物の増粘やポットライフの変化を抑制する効果が少ない。なお、カーボン量の上限は特に制限されないが、通常20重量%以下、好ましくは12重量%以下、特に好ましくは8重量%以下である。
なお、表面処理に用いる有機ケイ素化合物の量は処理後に表面処理シリカ表面上に上述した所定量以上のカーボンが存在しさえすれば特に限定されない。
【0015】
表面処理シリカ表面のカーボン量は、シリカ表面のシラノール基中の「−OH」が、例えばシラザン等で処理された結果「−O−Si(CH3)3」となったものについて、そのカーボン量をNMRで容易に測定することができる。
【0016】
(B)成分の表面処理シリカ微粉末は、予め粉体の状態で直接処理されたものがよい。表面処理法としては一般的に周知の技術を採用することができる。例えば、常圧で密閉された機械混練装置に、あるいは流動層に上記未処理シリカと表面処理剤である有機ケイ素化合物を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温或いは熱処理下にて混合処理する。場合により触媒を使用して処理を促進してもいい。混練後乾燥することにより表面処理シリカが得られる。
【0017】
未処理シリカの表面処理剤として用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、加水分解性基を有するモノマー性有機ケイ素化合物またはその部分加水分解縮合物が用いられ、未処理シリカ表面をチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基で覆うことができるものが好ましい(なお、上記の各シリル基において、メチル基以外のケイ素原子上の結合手はSi−O−で示されるシロキサン構造を形成する酸素原子と結合するものである。)。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジメチルテトラビニルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン、オクタメチルトリシラザン、1,5-ジビニルヘキサメチルトリシラザン等のオクタオルガノトリシラザンなどのオルガノシラザン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のアルケニルトリアルコキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等のジアルケニルジアルコキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等のトリアルケニルアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、トリビニルクロロシラン等のオルガノクロロシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ジメチルポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、これらの部分加水分解縮合物であってもよい。これらは一種単独でも二種以上の組み合わせでも用いることができる。
【0018】
なお、これらの中では、加水分解性基以外のケイ素原子に結合する置換基がメチル基であるシラン系カップリング剤及びオルガノシラザン類が好ましく、特にはオルガノシラザン類が好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で得られる液状シリコーン組成物は上記した(A)成分と(B)成分を主剤とするものであるが、この他に例えば低重合度の両末端シラノール基末端ジメチルポリシロキサン,低重合度の両末端アルコキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等の可塑剤や、石英微粉末,珪藻土粉体,弁柄,酸化セリウム,セリウムの脂肪酸塩,酸化チタン,カーボンブラックなどの従来公知の添加剤を添加配合することは、本発明の目的を損なわない限り差し支えない。
【0020】
−製造方法−
本発明においては、上述した(A)成分30〜60重量部と(B)成分1〜24重量部とを混練して混練物を得、次いでこうして得られた混練物に(A)成分70〜40重量部を加えて混練する。通常、この方法は混練機内で行い、均一な混練を行う。
使用される混練機としては2軸連続混練押出機,ニーダーミキサー,バンバリーミキサー,万能ミキサーが例示される。
混練は常温下でも行うことができるが、一般には100℃〜300℃の加熱下、より好ましいのは100℃〜250℃の加熱下で行う。
【0021】
本発明の製造方法によれば、粘度が低く、かつ粘度の経時変化の小さい液状シリコーン組成物を製造することができる。このような液状シリコーン組成物は、粘度が低く、かつ、粘度の経時変化が小さいので長時間の保存が可能であり、また、取扱い易い。
【0022】
−硬化剤−
本発明の組成物は、適当な硬化剤を配合することにより硬化性を付与することができる。こうして得られる硬化性シリコーン組成物は所要の操作により硬化してエラストマー状硬化物となるので、絶縁材料、シール材料、ポッティング材料、型取り用母型材料、タンポ印刷用材料等として広範囲の用途に有用である。
硬化剤としては、スズ、チタン、ビスマス等の有機金属化合物からなる縮合触媒と、アルコキシシラン等とからなる架橋剤との組み合せ、あるいは分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を少なくとも2個含有する架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと硬化触媒として作用する白金族金属系触媒との組み合わせがあげられる。
【0023】
縮合触媒として作用する上記の有機スズ化合物としては、一般に金属スズとして1〜50重量%含むものが用いられ、スズオクトエート、スズカプリレート、スズオレエートのようなスズのカルボン酸塩や、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルスズジバーサテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートなどが挙げられる。
【0024】
該縮合触媒の配合量は、液状シリコーン組成物100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部であり、より好ましくは0.2〜4重量部である。縮合触媒の配合量が少なすぎると硬化性が不十分となり離型性も低下するためウレタン型取り耐久性が悪くなってしまう。多すぎると得られる硬化物にクラッキングが発生し易く、硬化物の保存安定性が悪くなり、さらに硬化物の耐熱性等の特性が低下する傾向がある。
【0025】
上記の縮合触媒と併用される架橋剤としては、例えば、下式で表わされる化合物またはその部分加水分解物が用いられる。
【0026】
R2 aSiX4-a
(式中、R2は置換または非置換の一価炭化水素基を表わし、Xは加水分解性基を表わし、aは0または1である。)
【0027】
R2としては、具体的には前記R1に関して例示したものが例示され、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。Xで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、ジメチルアミノキシ基等のアミノキシ基等が例示され、アルコキシ基が好ましい。
【0028】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、ビニルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、テトラ(ブタノキシム)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、3-クロロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリ(プロパノキシム)シラン、メチルトリ(ペンタノキシム)シラン、メチルトリ(イソペンタノキシム)シラン、ビニルトリ(シクロペンタノキシム)シラン、メチルトリ(シクロヘキサノキシム)シランおよびこれらの部分加水分解物などが例示され、中でもアルコキシシラン類が好ましい。
以上説明した硬化剤の中でも好ましいのは、触媒としての有機スズ化合物と架橋剤としてのアルコキシシランとの組合わせである。
【0029】
一方、架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する必要があり、好ましくは2〜200個、より好ましくは3〜100個有することが望ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
【0030】
R3 bHcSiO(4-b-c)/2 (2)
上記式(2)中、R3は非置換又は置換の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、このR3の例としては、上記式(1)中のR1について例示した基、特に脂肪族不飽和結合を除く非置換又は置換の一価炭化水素基を挙げることができる。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、bは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cが1.5〜2.5である。
【0031】
一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0032】
式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)2SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0033】
この架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A)成分中のケイ素原子と結合するアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が、0.3〜5.0当量となる量であり、好ましくは、0.5〜2.0当量の範囲とされる。0.3当量より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎ硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与える場合があり、5当量より多い場合には脱水素反応による発泡の問題が生じ、更に耐熱性に悪影響を与える場合がある。
【0034】
架橋剤のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の製造方法によって得ることが可能である。一般的な製造方法を挙げると、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はテトラメチルシクロテトラシロキサンと末端基となり得るヘキサメチルジシロキサン或いは1,1'−ジハイドロ−2,2',3,3'−テトラメチルジシロキサン単位を含む化合物とを硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0035】
硬化触媒としての白金族金属系触媒は、(A)成分と架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの硬化付加反応(ハイドロサイレーション)を促進させるための触媒として使用されるものである。白金族系触媒は、公知のものを用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。白金化合物には、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体等が例示される。
【0036】
なお、この白金族系触媒の配合量は、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は(A)成分に対して、あるいは(A)成分と架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計に対して白金量(重量換算)で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜300ppmの範囲とすればよい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部は重量部、粘度は25℃における粘度を示す。
<表面処理シリカの調製>
下記の調製例で製造した表面処理シリカのタップ密度および表面に存在するカーボンの量は次の方法で測定した。
【0038】
・タップ密度の測定方法
表面処理シリカをシリンダーに100g秤量し、これをセイシン企業社製『タップデンサー KYT−4000』を使用し、ストローク30mmにてタッピングで圧縮させ、最密充填の状態とし、その時の容積を測定し、最密充填密度(タップ密度)を測定した。
【0039】
・表面カーボン量の測定方法
シリカ表面のカーボン量については、シリカ表面のシラノール基に基づく「−OH」をヘキサメチルジシラザンで処理し、「−O−Si(CH3)3」とさせ、そのカーボン量をNMRで測定した。
[調製例1-1]
流動層に未処理のヒュームドシリカ1,000g及びヘキサメチルジシラザン5gを入れ、窒素ガス気流下において室温にて攪拌し、ヒュームドシリカ表面をヘキサメチルジシラザンで処理し、その後熱処理により未反応物などを除去した。こうして、BET法による比表面積が180 m2/gであり、タップ密度が0.27 g/mlであり、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理された表面のカーボン量が2.8重量%である表面処理ヒュームドシリカ(1)を調製した。
【0040】
[調製例1-2](比較用)
BET法のよる比表面積が45m2/gである未処理のヒュームドシリカを使用した以外は調製例1-1と同様にして、BET法による比表面積が45 m2/gであり、タップ密度が0.27 g/mlであり、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理された表面のカーボン量が2.8重量%である表面処理されたヒュームドシリカ(2)を調製した。
【0041】
[調製例1-3](比較用)
タップ密度が0.45 g/mlである未処理のヒュームドシリカを使用した以外は調製例1-1と同様にして、BET法による比表面積が180 m2/gであり、タップ密度が0.45 g/mlであり、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理された表面のカーボン量が2.8重量%である表面処理されたヒュームドシリカ(3)を調製した。
【0042】
<シリコーンコンパウンドの調製>
[調製例2-1]
分子鎖両末端がジメチルヒドロキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度:5,000 mm2/s)30部と、上記調製例1−1で得られたヒュームドシリカ(1)20部とをニーダー内で1時間混合し、160℃で4時間、加熱処理した後、上記と同じ分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン70部を加えて、室温にて2時間混合してシリコーンコンパウンド(1)を得た。
【0043】
[調製例2-2]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度:5,000 mm2/s)30部と、上記調製例1−1で得られたヒュームドシリカ(1)20部とをニーダー内で1時間混合し、160℃で4時間、加熱処理した後、上記と同じ分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン70部を加え、室温にて2時間混合して更に塩化白金酸オクチルアルコール錯体を白金として40ppmとなるように添加し、シリコーンコンパウンド(2)を得た。
【0044】
[調製例2-3](比較用)
ヒュームドシリカ(1)をヒュームドシリカ(2)に変更した以外は、調製例2-1と同様にしてシリコーンコンパウンド(3)を得た。
[調製例2-4](比較用)
ヒュームドシリカ(1)をヒュームドシリカ(3)に変更した以外は、調製例2-1と同様にしてシリコーンコンパウンド(4)を得た。
【0045】
[調製例2-5](比較用)
分子鎖両末端がジメチルヒドロキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度:5,000 mm2/s)30部と、上記調製例1−1で得られたヒュームドシリカ(1)40部とヘキサメチルジシラザン5部、水2.5部をニーダー内で1時間混合し、160℃で4時間、加熱処理した後、上記と同じ分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン70部を加えて、室温にて2時間混合してシリコーンコンパウンド(5)を得た。
【0046】
<硬化剤の調製>
[調製例3-1]
硬化触媒としてジオクチルスズジラウレート1.0部、架橋剤としてフェニルトリメトシキシラン2.2部、および分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン1.8部を混合して硬化剤(1)を調製した。
[調製例3-2]
架橋剤として、25℃の粘度が10,000mm2/sである分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン2部、下記平均式で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン2部と分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン1部を混合して硬化剤(2)を調整した。
【0047】
【化1】
【0048】
−実施例・比較例−
実施例1
上記シリコーンコンパウンド(1)の粘度を調製直後に測定し、次いで室温で保温して調製後1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月経過後に粘度を測定した。
また、同様に調製直後ならびに室温で1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月間保温後シリコーンコンパウンド(1)に硬化剤(1)を、100:5(重量比)の割合で混合し、シリコーンゴム組成物を調製した。それらのシリコーンゴム組成物についてポットライフを測定した。
【0049】
実施例2
上記シリコーンコンパウンド(1)を上記シリコーンコンパウンド(2)に変更し、更に硬化剤(1)を硬化剤(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして各測定を行った。
【0050】
比較例1
上記シリコーンコンパウンド(1)を上記シリコーンコンパウンド(3)に変更した以外は、実施例1と同様にして各測定を行った。
比較例2
上記シリコーンコンパウンド(1)を上記シリコーンコンパウンド(4)に変更する以外は、実施例1と同様にして各測定を行った。
【0051】
比較例3
上記シリコーンコンパウンド(1)を上記シリコーンコンパウンド(5)に変更した以外は、実施例1と同様にして各測定を行った。
上記各実施例・比較例における測定結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、粘度が低く、かつ粘度の経時変化が小さい液状シリコーン組成物を効率よく製造することができる。
Claims (2)
- (A)25℃における粘度が500〜100,000mm2/sであり、かつ1分子中に少なくとも2個のシラノール基を含有するジオルガノポリシロキサン30〜60重量部と、
(B)オルガノシラザン及びシラン系カップリング剤から選ばれる1種又は2種以上により表面が処理されたシリカ微粉末であって、BET法による比表面積が50 m2/g以上、タップ密度が0.2〜0.4 g/ml、そして表面のカーボン量が2.5重量%以上である上記表面処理シリカ微粉末1〜24重量部と
を混練して混練物を得、
次いで、該混練物に前記(A)成分のジオルガノポリシロキサン70〜40重量部(但し、得られる組成物全体における(A)成分の合計量は100重量部)を加えて混練することを特徴とする、縮合硬化型シリコーン組成物調製用の液状シリコーン組成物の製造方法。 -
(A)25℃における粘度が500〜100 , 000mm 2 /sであり、かつ1分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサン30〜60重量部と、
(B)オルガノシラザン及びシラン系カップリング剤から選ばれる1種又は2種以上により表面が処理されたシリカ微粉末であって、 BET 法による比表面積が 50 m 2 /g 以上、タップ密度が 0.2 〜 0.4 g/ml 、そして表面のカーボン量が 2.5 重量%以上である上記表面処理シリカ微粉末 1 〜24重量部と
を混練して混練物を得、
次いで、該混練物に前記 ( A ) 成分のジオルガノポリシロキサン70〜40重量部(但し、得られる組成物全体における(A)成分の合計量は100重量部)を加えて混練することを特徴とする、付加硬化型シリコーン組成物調製用の液状シリコーン組成物の製造方法。
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