JP3975599B2 - ガス濃度検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両用エンジンの排出ガス中の酸素濃度など、被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するためのガス濃度センサを用いたガス濃度検出装置に適用され、当該ガス濃度センサから出力される電流信号を好適に得るためのガス濃度検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジルコニア等の固体電解質を用いて被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するガス濃度センサとして、例えば排ガス中の酸素濃度を検出するための限界電流式空燃比センサ(A/Fセンサ)が開示されている。このA/Fセンサは、固体電解質と一対の電極とを有するセンサ素子部を備え、該センサ素子部に電圧が印加されると、その電圧印加に伴い排ガス中の酸素濃度(空燃比)に応じた電流信号を出力する。また、同センサにはセンサ素子部の活性状態を維持するためのヒータが設けられる。
【0003】
図2は、限界電流式センサのV−I特性を有する。図2の特性では、V軸(横軸)に平行な直線部分がセンサ素子部に流れる限界電流(センサ出力Ip)を特定する限界電流検出域に相当し、このセンサ出力Ipの増減が空燃比の増減(すなわち、リーン・リッチの程度)に対応する。つまり、空燃比がリーン側になるほどセンサ出力Ipは増大し、空燃比がリッチ側になるほどセンサ出力Ipは減少する。
【0004】
このV−I特性において、V軸に平行な直線部分よりも小さい電圧域は抵抗支配領域となっており、その抵抗支配領域における一次直線部分の傾きは素子直流抵抗Riにより特定される。素子直流抵抗Riは、センサ素子部の活性状態を反映するものであり、例えば抵抗支配領域(V−I特性の一次直線部分)にて電圧V1を印加した時の、当該印加電圧V1とセンサ出力I1とから検出される(Ri=V1/I1)。
【0005】
また近年、限界電流式センサの交流特性を利用し、印加電圧の瞬時変化により素子の交流インピーダンスZACを検出する手法が提案されている。この場合、印加電圧の変化量とそれに伴う電流変化量とから素子の交流インピーダンスZACが求められる(ZAC=電圧変化量/電流変化量)。なお、V−I座標上にて規定される素子直流抵抗Riと、素子の交流インピーダンスZACとは特定の関係を有し、一般には「Ri>ZAC」の関係があることが知られている。
【0006】
上記の如く検出される交流インピーダンスZACは、短時間で検出できるため、インピーダンス検出期間における空燃比の検出不可時間が短縮できる等の利点があり、幅広い活用が期待できる。そのため通常は、交流インピーダンスZACを検出しその後、交流インピーダンスZACを所定の変換マップを用いて直流抵抗換算値ZDCに変換する。そして、同換算値ZDCに基づいて印加電圧制御やヒータの通電制御などを適宜実施する。
【0007】
詳細には、センサの印加電圧制御に際し、センサ印加電圧が常にV−I特性上の限界電流検出域にかかるように、直流抵抗換算値ZDCに応じて同印加電圧を制御する。つまり、図19(a)の関係を用いて交流インピーダンスZACを直流抵抗換算値ZDCに変換し、その直流抵抗換算値ZDCに応じてセンサの目標印加電圧を設定する。このとき、直流抵抗換算値ZDCが大きいほど、リーン側では目標印加電圧を大きな電圧値に設定し、リッチ側では小さい値に設定する。また、ヒータの通電制御に際し、図19(b)の関係を用いて交流インピーダンスZACから素子温(センサ素子部の温度)を求め、その素子温が所定の活性温度になるようにヒータ通電を制御する。
【0008】
要するに、素子直流抵抗Riを直接的に計測する代わりに、交流インピーダンスZACを検出し、その後、同インピーダンスZACを直流抵抗換算値ZDCに変換して印加電圧制御を行ったり、同インピーダンスZACを素子温に換算してヒータ通電制御を行ったりしていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の如く素子直流抵抗Riの代用として交流インピーダンスZACを使う場合、センサの個体間バラツキや経時的な変化に起因して下記の問題が生ずる。すなわち、センサ個々にバラツキ(個体間バラツキ)があると、素子の交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの対応関係、及び素子インピーダンスZACと素子温との対応関係が、図20(a),(b)に示すように予め設定されたマップの値に対してセンサ個々でばらつく。図中、実線のセンサAは中央値品を示し、破線のセンサB及び二点鎖線のセンサCは各々バラツキを持ったセンサを示す。
【0010】
また、経時的な変化が生じると、素子インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの対応関係、及び素子インピーダンスZACと素子温との対応関係が崩れ、その関係が図21(a),(b)に示すように素子の劣化前後でずれる。図中、実線は劣化前の初期品を示し、破線は劣化品を示す。例えば熱劣化に伴い電極の抵抗値が変化する時、交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの対応関係が崩れ、図21(a),(b)の状態を招く。
【0011】
上記図20,21のようにセンサ個々の特性が変動する場合、印加電圧制御が適正に行われず、正確なセンサ出力(空燃比出力)が得られない。また同様に、ヒータの通電制御が適正に行われず、やはり正確なセンサ出力(空燃比出力)が得られないことになる。
【0012】
こうした事態は、高精度な空燃比フィードバック制御を実現する上で特に問題視されることであり、本来、空燃比が高精度に検出されるべく領域、すなわち、例えばリーン制御域(空燃比=18〜50程度の領域)において空燃比の検出精度が悪化し、ひいては空燃比の制御精度が低下してエミッション悪化等の不具合を招くおそれもある。
【0013】
本発明は、上記問題に着目にてなされたものであって、その目的とするところは、センサの個体差や経時変化に関係なく、常にガス濃度を精度良く検出することができるガス濃度検出装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のガス濃度検出装置は、固体電解質と該固体電解質の相対向する面に各々設けられた電極とを有する素子部を備え、前記電極間に電圧が印加されるとそれに伴い被検出ガス中の特定成分の濃度に応じた電流信号を出力するガス濃度センサを用いることを前提とする。また同センサには、電源電圧の通電により発熱して前記素子部を所定の活性温度に加熱するためのヒータが設けられ、ガス濃度検出装置はヒータの通電量を制御する。
【0015】
請求項1に記載の発明では、前記素子部における素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換する直流抵抗換算手段と、前記検出した素子直流抵抗と前記変換した直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出し、該算出した補正値を用いてガス濃度センサから出力される電流信号を補正するセンサ出力補正手段とを備える。
【0016】
既述の通り素子直流抵抗Riは図2のV−I特性にて規定され、本来、センサ素子部の活性状態を反映するものであるが、この素子直流抵抗Riを、交流インピーダンスZACをマップ変換した直流抵抗換算値ZDCで代用する従来装置の場合、センサの個体間バラツキや経時的な変化に起因してガス濃度の検出精度が低下する。例えば熱劣化に伴い電極の抵抗値が変化する時、同検出精度が低下する。これに対して上記構成によれば、仮に電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗によるセンサ出力補正が行われるため、ガス濃度の検出精度低下が回避できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常にガス濃度を精度良く検出することができる。
【0018】
本構成によれば、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差に基づく補正を行うため、センサの個体間バラツキや経時変化が正確に把握でき、それが原因で図20(a),図21(a)のようにセンサ特性が変化した場合において適正な補正を実施することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記センサ出力補正手段は、その時々のガス濃度に応じて前記補正値を算出する。つまり、被検出ガス中のガス濃度(空燃比)が相違すると、実際のセンサ出力と本来得たいセンサ出力との差が変動し、必要となる補正値が自ずと相違することがある。これに対し上記構成では、補正ズレの要因が解消され、より一層正確なセンサ出力補正が可能となる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明では、前記素子部における素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換する直流抵抗換算手段と、前記検出した素子直流抵抗と前記変換した直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出し、該算出した補正値を用いてガス濃度センサへの印加電圧を補正する印加電圧補正手段とを備える。
【0021】
請求項3の構成によれば、上記請求項1と同様に、仮に電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗による印加電圧補正が行われるため、ガス濃度の検出精度低下が回避できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常にガス濃度を精度良く検出することができる。
【0023】
本構成によれば、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差に基づく補正を行うため、センサの個体間バラツキや経時変化が正確に把握でき、それが原因で図20(a),図21(a)のようにセンサ特性が変化した場合において適正な補正を実施することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記印加電圧補正手段は、その時々のガス濃度に応じて前記補正値を算出する。つまり、被検出ガス中のガス濃度(空燃比)が相違すると、実際のセンサ印加電圧と本来所望のセンサ印加電圧との差が変動し、必要となる補正値が自ずと相違することがある。これに対し上記構成では、補正ズレの要因が解消され、より一層正確なセンサ出力補正が可能となる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明では、前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記素子部の素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、前記検出した交流インピーダンスに基づき決定されるヒータの通電量を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正する通電量補正手段とを備える。
【0026】
請求項5の構成によれば、上記請求項1,3と同様に、仮に電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗によるヒータ通電量の補正が行われるため、ガス濃度センサが常に所望の活性状態で維持できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常にガス濃度を精度良く検出することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換する。前記通電量補正手段は、前記素子直流抵抗と前記直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出する手段と、該算出した補正値を用いて前記設定したヒータの通電量を補正する手段とを備える。
【0028】
本構成によれば、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差に基づく補正を行うため、センサの個体間バラツキや経時変化が正確に把握でき、それが原因で図20(b),図21(b)のようにセンサ特性が変化した場合において適正な補正を実施することができる。
【0029】
上述した請求項5又は6では、素子直流抵抗に基づき例えば素子活性不足を補うべくヒータの通電量が増量側に補正されるが、センサ素子部の損傷等を抑制するには加熱上限を決める必要がある。そのため、センサ素子部の加熱上限付近ではヒータ通電量をそれ以上増やすのではなく、他の補正によりガス濃度検出の精度を確保する。
【0030】
つまり、請求項7に記載したように、ガス濃度センサから出力される電流信号を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正するセンサ出力補正手段を更に備える。或いは、請求項8に記載したように、ガス濃度センサへの印加電圧を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正する印加電圧補正手段を更に備える。
【0031】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が大きいほど、前記補正値を増大させる。つまり、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が大きいほど、ガス濃度センサによる電流信号、センサ印加電圧、又はヒータ通電量のズレ幅が大きくなる。この場合、上記の如く補正値を設定することで、補正演算の精度が向上する。
【0032】
請求項10に記載の発明では、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が所定の許容値を超える時、ガス濃度センサの異常と判断する。例えば素子電極の熱劣化等により素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が極めて大きくなると、既述の各種補正を行ったとしてもガス濃度の検出精度低下を回避することはできない。そこでかかる場合には、センサ異常の旨を判定する。
【0033】
前記直流抵抗検出手段は、以下に示す請求項11,12のように構成されるとよい。つまり、
・請求項11では、ガス濃度センサのV−I座標上の抵抗支配領域にて電圧を印加し、その時の印加電圧とセンサ出力とから素子直流抵抗を算出する。
・請求項12の発明では、ガス濃度センサに電圧を印加するための回路を瞬断し、該瞬断する前後の電圧変化と電流変化との比から素子直流抵抗を検出する。
これら何れの場合にも、素子直流抵抗が精度良く検出できる。
【0034】
ところで上述の通り素子直流抵抗を検出する場合、交流インピーダンスの検出に比べて長い時間を要するため、請求項13に記載のように、ガス濃度検出が中断できるような所定の実施条件が成立した場合にのみ、素子直流抵抗の検出を許可するとよい。これにより、素子直流抵抗の検出時にガス濃度検出が中断されることによる影響が最小限に抑えられる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、この発明を車両用エンジンの空燃比制御システムに具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本制御システムにおいてはエンジン排気管に設けられた空燃比センサの検出結果を基にエンジンへの燃料噴射量を所望の空燃比に制御する。以下の記載では、空燃比センサを用いた空燃比(A/F)の検出手順や、同センサに設けられたヒータ通電制御手順を詳細に説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態における空燃比制御システムの概要を示す構成図である。図1において、エンジン10は多気筒4サイクル内燃機関として構成されている。吸気管11には、エンジン10の各気筒に対して燃料を噴射供給するためのインジェクタ12が配設されている。また、排気管13には限界電流式空燃比センサからなるA/Fセンサ30が配設されており、同センサ30は排気中の酸素濃度(或いは、未燃ガス中の一酸化炭素などの濃度)に比例して広域で且つリニアな空燃比信号を出力する。
【0037】
A/Fセンサ30は、断面コップ状の固体電解質31とその外側に積層された拡散抵抗層32とを備え、固体電解質31の内外(大気側及び排気側)には一対の電極33,34が設けられる。本実施の形態では、これら各部材31〜34によりセンサ素子部30aが構成される。固体電解質31の内部にはセンサ素子部30aを加熱するためのヒータ35が配設される。ここで、固体電解質層31は、ZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 O3 等にCaO、MgO、Y2 O3 、Yb2 O3 等を安定剤として固溶させた酸素イオン伝導性酸化物焼結体からなり、拡散抵抗層32は、アルミナ、マグネシャ、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質からなる。また、電極33,34は共に、白金等の触媒活性の高い貴金属からなりその表面には多孔質の化学メッキ等が施されている。ヒータ35はバッテリ電源からの給電により発熱する。
【0038】
上記構成のA/Fセンサ30において、センサ素子部30aは理論空燃比点よりリーン領域では酸素濃度に応じた限界電流を発生する。この場合、センサ素子部30a(固体電解質31)は酸素濃度を直線的特性にて検出し得るものであるが、センサ素子部30aを活性化するには約600℃以上の高温が必要とされ、且つ同センサ素子部30aの活性温度範囲が狭いため、エンジンの排ガスのみによる加熱では活性状態を維持できない。そのため、本実施の形態では、ヒータ35の加熱制御によりセンサ素子部30aを活性温度域で保持する。なお、理論空燃比よりもリッチ側の領域では、未燃ガスである一酸化炭素(CO)等の濃度が空燃比に対してほぼリニアに変化し、センサ素子部30aはCO等の濃度に応じた限界電流を発生する。
【0039】
図2にはA/Fセンサ30のV−I特性を示す。図2において、素子限界電流(センサ出力Ip)の増減は空燃比の増減に対応し、空燃比がリーン側になるほどセンサ出力Ipは増大し、空燃比がリッチ側になるほどセンサ出力Ipは減少する。また、V軸に平行な直線部分(限界電流検出域)よりも小さい電圧域は抵抗支配領域であり、抵抗支配領域における一次直線部分の傾きはセンサ素子部30a(固体電解質31)の素子直流抵抗Riにより特定される。抵抗支配領域における直線部分の傾きは素子温の変化に伴い変化し、例えば素子温が低下すると、素子直流抵抗Riが増大して前記傾きが小さくなる。また、素子直流抵抗Riに対して交流インピーダンスZACは図示の通り規定される(Ri>ZAC)。
【0040】
また、図2のV−I座標上には、抵抗支配領域の一次直線部分に平行に印加電圧線LX1が与えられ、この印加電圧線LX1に沿ってその時々の空燃比に応じた印加電圧が設定される。従って、仮に空燃比がリーン側に移行しA/Fセンサ30に流れる素子限界電流(センサ出力Ip)が増えると、それに伴い印加電圧がより大きな値に変更される。
【0041】
一方、図1において、ECU15は、インジェクタ12による燃料噴射量を最適に制御するためのエンジン制御用マイコン16を備える。エンジン制御用マイコン16は、図示しないセンサ群から各種エンジン運転情報を取り込み、これらのセンサ検出結果からエンジン回転数、吸気圧、水温、スロットル開度などのエンジン運転状態を検知する。
【0042】
空燃比検出用マイコン20は、前記エンジン制御用マイコン16に対して相互に通信可能に接続されている。空燃比検出用マイコン20は、所定の制御プログラムに従いバイアス制御回路40を操作し、電圧印加に伴いA/Fセンサ30に流れる電流値を計測する。そして、該計測した電流値から空燃比を検出し、その検出結果をエンジン制御用マイコン16に出力する。また、同マイコン20は、A/Fセンサ30が活性状態で維持されるようヒータ制御回路25を操作し、必要に応じてヒータ35を通電する。
【0043】
ここで、A/Fセンサ30に電圧を印加するためのバイアス指令信号Vrは空燃比検出用マイコン20からD/A変換器21に入力され、同D/A変換器21にてアナログ信号Vbに変換された後、LPF(ローパスフィルタ)22に入力される。また、LPF22にてアナログ信号Vbの高周波成分が除去された出力電圧Vcはバイアス制御回路40に入力され、同バイアス制御回路40によりA/Fセンサ30に電圧が印加される。この場合、空燃比(センサ出力Ip)の検出時か、素子直流抵抗Riの検出か、或いは交流インピーダンスZACの検出かに応じて各個にセンサ印加電圧が制御される。
【0044】
その時々の空燃比に対応するA/Fセンサ30の出力(センサ出力Ip)は、バイアス制御回路40内の電流検出回路50にて検出され、その検出値はA/D変換器23を介して空燃比検出用マイコン20に入力される。ヒータ制御回路25は、A/Fセンサ30の素子抵抗又は素子温に応じてヒータ35への通電量をデューティ制御し、同ヒータ35の加熱制御を行う。
【0045】
なお、エンジン制御用マイコン16による空燃比F/B制御については、本案の要旨ではなく且つその制御内容が周知であるため、ここではその詳細な説明を省略するが、簡単に述べると、エンジン制御用マイコン16は、A/Fセンサ30による空燃比の検出結果(電圧信号)やその他、各種センサの検出結果を取り込み、それらの検出結果に基づいて現代制御或いはPI制御といった制御アルゴリズムに則って空燃比F/B制御を実施する。つまり、その時々の空燃比が目標空燃比に一致するよう、エンジン10の各気筒へインジェクタ12から噴射供給される燃料量を制御する。
【0046】
次に、上記の如く構成される空燃比制御システムの作用について、空燃比検出用マイコン20の動作を中心に説明する。本実施の形態において、空燃比検出用マイコン20は図示しないメインルーチンに従い、
(イ)交流インピーダンスZACの検出、
(ロ)素子直流抵抗Riの検出、
(ハ)空燃比(センサ出力Ip)の検出、
(ニ)ヒータの通電制御、
といった各処理を順次実施する。上記各処理のうち、(イ)の処理によればA/Fセンサ30の活性状態を表す交流インピーダンスZACが検出され、(ロ)の処理によればA/Fセンサ30の個体間バラツキや劣化状態を表す素子直流抵抗Riが検出される。そして、(ハ),(ニ)によれば、前記(イ),(ロ)の検出結果を反映しつつ空燃比の検出やヒータ制御が実施される。以下、上記各処理について図3〜図6のフローチャートに従い詳細に説明する。
【0047】
先ず始めに、掃引法を用いた交流インピーダンスZACの検出手順を図3を用いて説明する。図3の処理は例えば128ms(ミリ秒)毎に実行される。但し、エンジン運転状態に応じてZAC検出の実行周期を変更してもよく、例えばエンジン10の定常運転時等、空燃比の変化が比較的小さい通常時には2s(秒)に、エンジン10の始動時や過渡運転時等、空燃比の急変時には128msに、というように可変に設定してもよい。
【0048】
図3において、ステップ101では、バイアス指令信号Vrを操作しそれまでの印加電圧Vp(空燃比検出用の電圧)に対して電圧を正側に単発的に変化させる。インピーダンス検出用電圧の印加時間は、A/Fセンサ30の周波数特性を考慮して数10〜100μs程度とする。その後、ステップ102では、その時の電圧変化量Vaと電流検出回路50により検出されたセンサ出力の変化量Iaとを読み取る。また、続くステップ103では、前記Va,Iaから交流インピーダンスZACを算出し(ZAC=Va/Ia)、その後本処理を終了する。
【0049】
上記の処理によれば、前記図1のLPF22並びにバイアス制御回路40を介し、所定の時定数を持たせた電圧が単発的にA/Fセンサ30に印加される。その結果、図7に示されるように、当該電圧の印加からt時間経過後にピーク電流Ia(電流変化量)が検出され、その時の電圧変化量Vaとピーク電流Iaとから交流インピーダンスZACが検出される(ZAC=Va/Ia)。かかる場合、LPF22を介して単発的な電圧をA/Fセンサ30に印加することにより、過度なピーク電流の発生が抑制され、交流インピーダンスZACの検出精度が向上する。
【0050】
上記の如く求められる交流インピーダンスZACは、素子温に対して図19(b)に示す関係を有する。すなわち、素子温が低いほど、交流インピーダンスZACは飛躍的に大きくなる。
【0051】
次に、素子直流抵抗Riの検出手順について図4のフローチャートに従い説明する。図4の処理は例えば4ms周期で実行される。
図4において、先ずステップ201では、素子直流抵抗Riの検出条件が成立するか否かを判別する。つまり、素子直流抵抗Riの検出は、交流インピーダンスZACの検出に比べて長い時間を要し、その検出期間中は空燃比(センサ出力Ip)の検出が中断されてしまう。従って、空燃比検出を中断してもよい条件が成立する場合にのみ、素子直流抵抗Riの検出を実行する。具体的には、
・燃料カットの実行中であること、
・エンジン制御用マイコン16から空燃比F/B制御の中止の旨の信号が送信されていること、
等の少なくとも一つが満たされる時に、素子直流抵抗Riの検出条件が成立する。
【0052】
ステップ201がNOの時、本処理を一旦終了し、ステップ201がYESの時、ステップ202に進む。ステップ202では、印加電圧の設定マップをそれまでの空燃比検出用のものから直流抵抗検出用のものに切り替える。実際には、図8に示されるように、抵抗支配領域の直線部分に平行な印加電圧線LX1に応じて空燃比検出用の印加電圧マップが与えられるのに対し、抵抗支配領域の直線部分に交わる、負の傾きを持つ印加電圧線LX2に応じて直流抵抗検出用の印加電圧マップが与えられる。
【0053】
続くステップ203では、前記図8の印加電圧線LX2を用い、その時のセンサ出力Ipに応じた目標印加電圧Vtgを設定し出力する。このとき、素子容量成分の電流出力への影響を考慮して例えば5mV/8ms以下の変更速度で印加電圧が徐々に変更される。これにより図8の事例では、実際の印加電圧(実印加電圧Vre)が図のA点から徐々に左側(負側)に変更されることとなる。
【0054】
次に、ステップ204では、印加電圧変更後において固体電解質31に流れる電流値、すなわち電流検出回路50により検出されるセンサ出力Ipを読み込む。また、続くステップ205では、印加電圧線LX2上の目標印加電圧Vtgと今現在の実印加電圧Vreとが一致するか否かを判別する。Vtg≠Vreであれば、ステップ203に戻り、ステップ203〜205の処理を繰り返し実行する。つまり、4ms毎に目標印加電圧Vtgが再設定され、その時々のセンサ出力Ipが検出される。
【0055】
そして、Vtg=Vreになると、ステップ206に進み、最新の印加電圧(Vtg=Vreとなった時の電圧値)とセンサ出力Ipとから素子直流抵抗Riを算出する。すなわち、
Ri=Vtg/Ip
の演算結果から素子直流抵抗Riを算出する。Ri値の検出後、本処理を一旦終了する。
【0056】
上記ステップ203〜206の処理によれば、図8において、印加電圧線LX1上のA点から印加電圧線LX2上のB点にセンサ印加電圧が変更され、同B点での印加電圧とセンサ出力とから素子直流抵抗Riが算出される。例えば電圧変更速度を5mV/8msとして印加電圧を0.45Vから0.24Vに変更する場合、印加電圧を変更し始めてから336ms経過後に素子直流抵抗Riが検出されることとなる。
【0057】
上記構成では印加電圧の変更に際し電圧変更速度を制限したが、これに代わる構成も可能である。例えば印加電圧を変更する際、印加電圧線LX2と抵抗支配領域の直線部分との交点(図8のB点)で目標印加電圧Vtgを設定して出力し、その後、素子容量成分の電流出力への影響に関係なく同電流出力が安定する時間だけ待ち、電流出力が安定した時のセンサ出力を使って素子直流抵抗Riを算出する。
【0058】
次に、空燃比の検出手順を図5を用いて説明する。図5の処理は例えば4ms周期で実行される。図5において、ステップ301では、電圧印加に伴い固体電解質31に流れる電流値、すなわち電流検出回路50により検出されるセンサ出力Ipを読み込む。
【0059】
また、ステップ302では、前記図3にて算出した交流インピーダンスZACを読み込み、続くステップ303では、予め設定される図19(a)の変換マップを用い、交流インピーダンスZACを直流抵抗換算値ZDCに変換する。さらに、ステップ304では、前記図4にて算出した素子直流抵抗Riを読み込む。
【0060】
その後、ステップ305では、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)が所定値K1未満であるか否かを判別する。この所定値K1は素子割れや電極の損傷等を判定するものであって、Ri−ZDC<K1であれば、ステップ306で異常発生の旨を認識してそのまま本処理を終了する。この場合、警告灯を点灯させる、空燃比F/B制御を中断させる、ダイアグ情報をメモリに記憶する等の処理を実行する。
【0061】
また、Ri−ZDC≧K1であれば、ステップ307に進む。同ステップ307では、図9の関係に従い、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)、並びにその時の空燃比(センサ出力Ip)に応じて電流補正値ΔIを算出する。
【0062】
図9(a)では、空燃比がリーンかリッチか、すなわちセンサ出力Ipが正か負かに応じて複数の特性線が設定されており、空燃比リーンの特性例としてA/F=18,23を、空燃比リッチの特性例としてA/F=12を示す。図中、K1は前記ステップ305で使用した判定値であり、K2,K3は補正の要否を判断するための判定値である(但し、K1<K2<K3である)。そして、(Ri−ZDC)値と空燃比とに応じて電流補正値ΔIが設定される。
【0063】
ここで、Ri−ZDC<K2となるのは、直流抵抗換算値ZDCに対して素子直流抵抗Riが減少する場合であり、例えばセンサ素子温が高く、センサ素子部30aに印加される電圧が限界電流検出域を外れる事態が考えられる。この場合、空燃比がリーン(センサ出力Ip>0)であれば、負の電流補正値ΔIが設定され、空燃比がリッチ(センサ出力Ip<0)であれば、正の電流補正値ΔIが設定される。より具体的には、図20(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「センサC」のように崩れる場合、「Ri−ZDC<K2」の事態が生じ、上記の如く補正値ΔIが設定される。
【0064】
また、Ri−ZDC=K2〜K3(正常域)となるのは、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとがほぼ一致する場合である。この場合、例えばA/Fセンサ30の個体間バラツキが殆ど無く、且つ劣化状態でもないと考えられるため、空燃比に関係なく、電流補正値ΔI=0が設定される。
【0065】
さらに、Ri−ZDC≧K3となるのは、直流抵抗換算値ZDCに対して素子直流抵抗Riが増大する場合であり、例えばセンサ素子温が低く、センサ素子部30aに印加される電圧が限界電流検出域を外れる事態が考えられる。この場合、空燃比がリーン(センサ出力Ip>0)であれば、正の電流補正値ΔIが設定され、空燃比がリッチ(センサ出力Ip<0)であれば、負の電流補正値ΔIが設定される。より具体的には、図20(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「センサB」のように崩れる場合、或いは図21(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「劣化後」のように崩れる場合、「Ri−ZDC≧K3」の事態が生じ、上記の如く補正値ΔIが設定される。
【0066】
なお、(Ri−ZDC)値が大きくなるほど、センサ出力Ipのズレ量は大きくなる。そのため、同一の空燃比で見た場合、(Ri−ZDC)値が正常域(K2〜K3)から離れるほど、電流補正値ΔIは正側又は負側に大きく設定される。因みに、空燃比がストイキの場合、(Ri−ZDC)値に関係なく、常にΔI=0となる。
【0067】
電流補正値ΔIの設定後、ステップ308では、前記検出したセンサ出力Ipを電流補正値ΔIにより補正する。つまり、
Ipf=Ip+ΔI
として補正後のセンサ出力Ipfを得る。そしてその後、補正後のセンサ出力Ipfをエンジン制御用マイコン16に対して出力する。例えば図9(b)に示されるように、A/F=18であり且つRi−ZDC=Kxの時、電流補正値ΔIとして「ΔIx」が設定され、このΔIxによりセンサ出力Ipが補正される。
【0068】
但し、空燃比の検出結果としてエンジン制御用マイコン16に出力するデータは、センサ出力(補正後のセンサ出力Ipf)そのものでもよいし、所定の変換マップを用いてA/F値に変換したデータでもよい。
【0069】
ステップ309では、次の空燃比検出のために、その時々の空燃比(補正前のセンサ出力Ip)に対応する印加電圧を設定して出力する。このとき、前記図2の印加電圧線LX1を用いてその時のセンサ出力Ipに対応した印加電圧が設定される。そしてその後、本処理を終了する。
【0070】
センサ出力Ipが補正される様子を図10を用いて説明する。図10では、正常な活性時(劣化前)におけるV−I特性を実線で示し、素子劣化時におけるV−I特性を二点鎖線で示す。正常時の具体的数値は、ZAC=20Ω、ZDC=30Ω、Ri=30Ωであり、電圧Vpの印加に伴い電流Ip1が流れたとする。これに対し劣化時には、ZAC=20Ω、ZDC=30Ω、Ri=150Ωに変化し、電圧Vpの印加に伴い電流Ip2が流れたとする。
【0071】
この場合、後者の状態において、(Ri−ZDC)値に応じて電流補正値ΔIが設定され、
Ipf=Ip2+ΔI
として補正後のセンサ出力Ipfが算出される。この補正後のセンサ出力Ipfは劣化前のセンサ出力Ip1に一致する。
【0072】
次に、ヒータ通電の制御手順を図6を用いて説明する。図6において、先ずステップ401では、前記図3にて算出した交流インピーダンスZACを読み込み、続くステップ402では、予め設定される図19(a)の変換マップを用い、交流インピーダンスZACを直流抵抗換算値ZDCに変換する。
【0073】
その後、ステップ403では、直流抵抗換算値ZDCが固体電解質31(センサ素子部)の半活性状態を判定するための所定の判定値(本実施の形態では、200Ω程度)以下であるか否かを判別する。例えばエンジン10の低温始動時等、素子温が低い場合にはZDC>200Ωとなり、ステップ404に進んでヒータ35の「100%通電制御」を実施し、その後本処理を終了する。100%通電制御は、ヒータ35へのデューティ比制御信号を100%に維持する制御であり、直流抵抗換算値ZDCが200Ω以下になりステップ403がYESになるまで継続して実施される。
【0074】
ヒータ熱により素子温が上昇し、ステップ403がYESになると、ステップ405に進んで直流抵抗換算値ZDCが素子インピーダンスF/B制御を開始するための所定の判定値(本実施の形態では、40Ω程度)以下であるか否かを判別する。ステップ405の判定値は、直流抵抗換算値の目標値ZDCtg(本実施の形態では、30Ω)に対して「+10Ω」程度の値として設定される。
【0075】
センサ活性化の完了前であってZDC>40Ωであれば、ステップ406に進んで「電力制御」によりヒータ35の通電制御を実施し、その後本処理を終了する。このとき、直流抵抗換算値ZDCが大きいほど、大きな電力指令値が決定され、その電力指令値に応じてヒータ通電のための制御デューティ比が算出される。
【0076】
センサ活性化が完了し、前記ステップ405がYESになると、ステップ407に進む。ステップ407では、前記図4にて算出した素子直流抵抗Riを読み込み、続くステップ408では、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)が所定値K1未満であるか否かを判別する。この所定値K1は前記図5のステップ305におけるK1値と同一でよい。Ri−ZDC<K1であれば、ステップ409で異常発生の旨を認識してそのまま本処理を終了する。この場合、警告灯を点灯させる、空燃比F/B制御を中断させる、ダイアグ情報をメモリに記憶する等の処理を実行する。
【0077】
また、Ri−ZDC≧K1であれば、ステップ410に進む。同ステップ410では、図11の関係に従い、直流抵抗換算値の目標値ZDCtgについてその補正値ΔZDCtgを、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)に応じて算出する。
【0078】
図11において、K1,K2,K3は前記図9中と同じ値である。すなわち、K2,K3は補正の要否を判断するための判定値である。ここで、Ri−ZDC<K2の場合、負の補正値ΔZDCtgが設定され、Ri−ZDC=K2〜K3の場合、補正値ΔZDCtg=0が設定され、Ri−ZDC≧K3の場合、正の補正値ΔZDCtgが設定される。
【0079】
例えば図20(a),(b)において、センサ個々の特性が「センサC」のように崩れる場合、「Ri−ZDC<K2」の事態が生じ、負の補正値ΔZDCtgが設定される。また、同図20(a),(b)においてセンサ個々の特性が「センサB」のように崩れる場合、或いは図21(a),(b)において破線の如く劣化が進行した場合、「Ri−ZDC≧K3」の事態が生じ、正の補正値ΔZDCtgが設定される。
【0080】
その後、ステップ411では、直流抵抗換算値の目標値ZDCtgを補正値ΔZDCtgにより補正する。つまり、
ZDCtgf=ZDCtg+ΔZDCtg
として補正後の目標値ZDCtgfを得る。
【0081】
ステップ412では、素子インピーダンスF/B制御の実施に際してヒータ通電のためのデューティ比DUTYを算出する。本実施の形態では、その一例としてPID制御手順を用いることとしている。つまり、次の式(1)〜(3)により比例項GP,積分項GI,微分項GDを算出する。
【0082】
GP=KP・(ZDC−ZDCtgf) …(1)
GI=GIi-1 +KI・(ZDC−ZDCtgf) …(2)
GD=KD・(ZDC−ZDCi-1 ) …(3)
但し、上式において、「KP」は比例定数、「KI」は積分定数、「KD」は微分定数を表し、添字「i−1」は前回処理時の値を表す。
【0083】
また、上記比例項GP,積分項GI,微分項GDを加算してデューティ比DUTYを算出する(DUTY=GP+GI+GD)。そして、補正後の目標値ZDCtgfによりヒータ35を通電し、その後本処理を終了する。なお、こうしたヒータ制御は上記のPID制御に限定されるものではなく、PI制御やP制御を実施するようにしてもよい。
【0084】
上記の如く補正後の目標値ZDCtgfでヒータ通電を制御する際、センサ素子部を過昇温させることの懸念がある。そのため、素子温に最大ガードをかけ、ガード値に達する場合にはそれ以上のデューティ増加側の補正を中止する。この場合、目標値ZDCtgの補正は中止されても、前述のセンサ出力補正が継続して実施されることで個体間バラツキ等の影響が解消される。
【0085】
なお本実施の形態では、図3の処理により「インピーダンス検出手段」が構成され、図4の処理により「直流抵抗検出手段」が構成される。また、図5のステップ307,308により「センサ出力補正手段」が構成され、図6のステップ410〜412により「通電量補正手段」が構成される。
【0086】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(a)センサ素子部30aの素子直流抵抗Riを検出し、該検出した素子直流抵抗Riに応じてセンサ出力Ipを補正するようにした。実際には、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)に応じた電流補正値ΔIを算出し、該電流補正値ΔIを用いてセンサ出力Ipを補正した。本構成によれば、仮にセンサ電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗Riによるセンサ出力補正が行われるため、当該補正の無い従来装置とは異なり、空燃比の検出精度低下が回避できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる。
【0087】
(b)電流補正値ΔIを設定するためのマップを見ると、図9のように、(Ri−ZDC)値の大きさ並びにその時々の空燃比に応じて当該補正値ΔIが算出される。これにより、補正演算の精度が向上し、より一層正確なセンサ出力補正が可能となる。
【0088】
(c)ヒータの通電制御に際し、素子直流抵抗Riに応じてヒータ通電のための目標値ZDCtgを補正するようにした。実際には、(Ri−ZDC)値に応じて補正値ΔZDCtgを算出した。本構成によればやはり、仮に電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗Riによるヒータ通電量の補正が行われるため、A/Fセンサ30が常に所望の活性状態で維持できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる。
【0089】
上記センサ出力補正やヒータ通電量補正によれば、センサの個体間バラツキや経時変化が原因で図20,図21のようにセンサ特性が変化した場合において適正な補正を実施することができる。
【0090】
(d)素子直流抵抗Riに基づくセンサ出力補正とヒータ通電量補正とを併せて実施する本実施の形態の場合、基本的には目標値ZDCtgの補正によりセンサの個体間バラツキや経時変化の影響が解消され、更に同補正の不足分はセンサ出力Ipの補正により補われ、結果として精度の良い空燃比検出値が得られる。この場合、両補正を併用することで、空燃比検出の信頼性がより一層向上すると共に、ヒータ通電時におけるセンサ素子部の過昇温が抑制される。
【0091】
(e)素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差が所定の許容値を超える時(Ri−ZDC<K1の時)、A/Fセンサ30の異常と判断する。これにより、素子電極の熱劣化等、センサの異常発生にも適正に対処できる。
【0092】
(f)素子直流抵抗Riの検出に際し、A/Fセンサ30のV−I座標上の抵抗支配領域にて電圧を印加し、その時の印加電圧とセンサ出力とから素子直流抵抗Riを算出する。この場合、素子直流抵抗Riが精度良く検出できる。
【0093】
(g)空燃比検出が中断できるような所定の実施条件が成立した場合にのみ、素子直流抵抗Riの検出を許可するようにした。つまり、上述の通り素子直流抵抗Riを検出する場合、交流インピーダンスZACの検出に比べて長い時間を要するが、実施許可の条件を付すことにより、素子直流抵抗Riの検出時に空燃比検出が中断されることによる影響が最小限に抑えられる。
【0094】
(h)上記の如く空燃比の検出精度が向上するため、高精度な空燃比F/B制御を実現することができ、ひいては排気エミッションを良好に保つことが可能となる。
【0095】
次に、本発明における第2,第3の実施の形態を説明する。但し、以下の各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0096】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、上記第1の実施の形態との相違点として、素子直流抵抗Riの検出法を変更する。つまり、A/Fセンサ30に電圧を印加するための回路を瞬断し、該瞬断する前後の電圧変化及び電流変化の比から素子直流抵抗Riを検出する。装置の変更点として、図12に示されるように、ECU15内のLPF22とバイアス制御回路40との間にスイッチ60を設け、同スイッチ60の開閉を空燃比検出用マイコン20により操作するようにしている。
【0097】
図13は、本実施の形態における素子直流抵抗Riの検出手順を示すフローチャートであり、同処理は前記図4の処理に置き換えて実行される。
図13において、先ずステップ501では、素子直流抵抗Riの検出条件が成立するか否かを判別する。そして、ステップ501がNOの時、本処理を一旦終了し、ステップ501がYESの時、ステップ502に進む。つまり、例えば燃料カット時など、空燃比検出を中断してもよい条件が成立する場合にのみ、素子直流抵抗Riの検出を許可し、空燃比検出が中断されることによる影響を最小限に抑えることとする。
【0098】
ステップ502では、今現在のA/Fセンサ30の印加電圧Vp及びセンサ出力Ipを読み込む。すなわち、空燃比検出状態(スイッチ閉鎖状態)でのVp値,Ip値が読み込まれる。
【0099】
その後、ステップ503ではスイッチ60を開放し、続くステップ504ではA/Fセンサ30の起電力Eoを検出する。また、ステップ505ではスイッチ60を再び接続する。この場合、スイッチ60の開放から再接続までの時間は短ければ短い程良い。
【0100】
その後、ステップ506では、素子直流抵抗Riを算出する。すなわち、
Ri=(Vp−Eo)/Ip
の演算結果から素子直流抵抗Riを算出する。Ri値の検出後、本処理を一旦終了する。なお本実施の形態では、図13の処理により「直流抵抗検出手段」が構成される。
【0101】
上記処理によれば、図14に示されるように、スイッチ60の開放に伴い回路の一部が瞬間的に遮断されることで、センサ素子部に電圧が印加されなくなり電流と電圧が減衰する。そして、回路の応答性など考慮した所定のタイミングで起電力Eoが検出される。このとき、固体電解質31の内外両側の酸素分圧差に応じた起電力Eoが検出されること、並びにセンサ出力Ipが「0mA」になることからその電圧変化及び電流変化が求められ、それら変化量から素子直流抵抗Riが演算される。
【0102】
以上第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、センサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる等の優れた効果が得られる。また上述した素子直抵抗Riの検出法によれば、素子直流抵抗Riが精度良く検出できる。
【0103】
(第3の実施の形態)
本第3の実施の形態では、前記第1の実施の形態との相違点として、空燃比検出処理における印加電圧制御を変更する。
【0104】
上記実施の形態では、素子直流抵抗Riの変動分に応じてセンサ出力Ipを補正したが、これに代えて本実施の形態では、素子直流抵抗Riの変動分に応じてA/Fセンサ30への印加電圧を補正する。
【0105】
図15は、本実施の形態における空燃比の検出手順を示すフローチャートであり、同処理は前記図5の処理に置き換えて実行される。
図15において、先ずステップ601〜606では、前記図5におけるステップ301〜306と同様に、
・ステップ601では、センサ出力Ipを読み込み、
・ステップ602では、交流インピーダンスZACを読み込み、
・ステップ603では、交流インピーダンスZACを直流抵抗換算値ZDCに変換し、
・ステップ604では、素子直流抵抗Riを読み込み、
・ステップ605では、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)が所定値K1未満であるか否かを判別し、
・Ri−ZDC<K1となる場合に、ステップ606で異常発生の旨を認識する。
【0106】
また前記図5とは相違する処理として、Ri−ZDC≧K1の時にステップ607に進み、図16の関係に従い、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)、並びにその時の空燃比(センサ出力Ip)に応じて電圧補正値ΔVを算出する。
【0107】
図16(a)では、空燃比がリーンかリッチか、すなわちセンサ出力Ipが正か負かに応じて複数の特性線が設定されており、空燃比リーンの特性例としてA/F=18,23を、空燃比リッチの特性例としてA/F=12を示す。図中、K1は前記ステップ605で使用した判定値であり、K2,K3は補正の要否を判断するための判定値である(但し、K1<K2<K3である)。そして、(Ri−ZDC)値と空燃比とに応じて電圧補正値ΔVが設定される。
【0108】
ここで、Ri−ZDC<K2となるのは、直流抵抗換算値ZDCに対して素子直流抵抗Riが減少する場合であり、例えばセンサ素子温が高く、センサ素子部30aに印加される電圧が限界電流検出域を外れる事態が考えられる。この場合、空燃比がリーン(センサ出力Ip>0)であれば、負の電圧補正値ΔVが設定され、空燃比がリッチ(センサ出力Ip<0)であれば、正の電圧補正値ΔVが設定される。より具体的には、図20(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「センサC」のように崩れる場合、「Ri−ZDC<K2」の事態が生じ、上記の如く補正値ΔVが設定される。
【0109】
また、Ri−ZDC=K2〜K3(正常域)となるのは、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとがほぼ一致する場合である。この場合、例えばA/Fセンサ30の個体間バラツキが殆ど無く、且つ劣化状態でもないと考えられるため、空燃比に関係なく、電圧補正値ΔV=0が設定される。
【0110】
さらに、Ri−ZDC≧K3となるのは、直流抵抗換算値ZDCに対して素子直流抵抗Riが増大する場合であり、例えばセンサ素子温が低く、センサ素子部30aに印加される電圧が限界電流検出域を外れる事態が考えられる。この場合、空燃比がリーン(センサ出力Ip>0)であれば、正の電圧補正値ΔVが設定され、空燃比がリッチ(センサ出力Ip<0)であれば、負の電圧補正値ΔVが設定される。より具体的には、図20(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「センサB」のように崩れる場合、或いは図21(a)において交流インピーダンスZACと素子直流抵抗Riとの関係が「劣化後」のように崩れる場合、「Ri−ZDC≧K3」の事態が生じ、上記の如く補正値ΔVが設定される。
【0111】
なお、(Ri−ZDC)値が大きくなるほど、印加電圧Vpのズレ量は大きくなる。そのため、同一の空燃比で見た場合、(Ri−ZDC)値が正常域(K2〜K3)から離れるほど、電圧補正値ΔVは正側又は負側に大きく設定される。因みに、空燃比がストイキの場合、(Ri−ZDC)値に関係なく、常にΔV=0となる。
【0112】
電圧補正値ΔVの設定後、ステップ608では、センサ出力Ip(ステップ601の検出値)に応じて図2の印加電圧線LX1によりマップ演算される印加電圧Vpを、前記電圧補正値ΔVにより補正する。つまり、
Vpf=Vp+ΔV
として補正後の印加電圧Vpfを得る。そしてその後、補正後の印加電圧Vpfをバイアス制御回路40に対して出力する。例えば図16(b)に示されるように、A/F=18であり且つRi−ZDC=Kxの時、電圧補正値ΔVとして「ΔVx」が設定され、このΔVxにより印加電圧Vpが補正される。
【0113】
ステップ609では、前記補正後の印加電圧Vpfに変更した後に、電極間に流れる限界電流を、センサ出力Ipとして再検出し、その検出結果をエンジン制御用マイコン16に出力する。そしてその後、本処理を終了する。なお本実施の形態では、図15のステップ607,608により「印加電圧補正手段」が構成される。
【0114】
印加電圧Vpが補正される様子を図17を用いて説明する。図17では、正常な活性時(劣化前)におけるV−I特性を実線で示し、素子劣化時におけるV−I特性を二点鎖線で示す。正常時の具体的数値は、ZAC=20Ω、ZDC=30Ω、Ri=30Ωであり、センサ出力Ipを検出するための印加電圧が「Vp1」であるとする。これに対し劣化時には、ZAC=20Ω、ZDC=30Ω、Ri=150Ωに変化したとする。
【0115】
この場合、後者の状態において、(Ri−ZDC)値に応じて電圧補正値ΔVが設定され、
Vpf=Vp1+ΔV
として補正後の印加電圧Vpfが算出される。この補正後の印加電圧Vpfを印加することで、劣化前と同一のセンサ出力Ipが得られる。
【0116】
なお本実施の形態では上記第1の実施の形態と同様に、ヒータ通電制御(前記図6の処理)が実施され、素子直流抵抗Riに応じてヒータ通電のための目標値ZDCtgが補正されるが、その内容は重複するためここではその図示及び説明を省略する。また本実施の形態の装置は、前記第2の実施の形態と組み合わせても実現できる。
【0117】
以上第3の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(a)センサ素子部30aの素子直流抵抗Riを検出し、該検出した素子直流抵抗Riに応じてセンサ印加電圧Vpを補正するようにした。実際には、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差(Ri−ZDC)に応じた電圧補正値ΔVを算出し、該電圧補正値ΔVを用いてセンサ印加電圧Vpを補正した。本構成によれば、仮にセンサ電極の熱劣化等が生じた場合にもその反映として素子直流抵抗Riによる印加電圧補正が行われるため、当該補正の無い従来装置とは異なり、空燃比の検出精度低下が回避できる。その結果、センサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる。
【0118】
上記印加電圧補正によれば、センサの個体間バラツキや経時変化が原因で図20,図21のようにセンサ特性が変化した場合において適正な補正を実施することができる。
【0119】
(b)電圧補正値ΔVを設定するためのマップを見ると、図16のように、(Ri−ZDC)値の大きさ並びにその時々の空燃比に応じて当該補正値ΔVが算出される。これにより、補正演算の精度が向上し、より一層正確なセンサ出力補正が可能となる。
【0120】
(c)素子直流抵抗Riに基づく印加電圧補正とヒータ通電量補正とを併せて実施する本実施の形態の場合、基本的には目標値ZDCtgの補正によりセンサの個体間バラツキや経時変化の影響が解消され、更に同補正の不足分は印加電圧Vpの補正により補われ、結果として精度の良い空燃比検出値が得られる。この場合、両補正を併用することで、空燃比検出の信頼性がより一層向上すると共に、ヒータ通電時におけるセンサ素子部の過昇温が抑制される。
【0121】
(d)素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差が所定の許容値を超える時(Ri−ZDC<K1の時)、A/Fセンサ30の異常と判断する。これにより、素子電極の熱劣化等、センサの異常発生にも適正に対処できる。
【0122】
なお、本発明の実施の形態は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
(別の形態1)上記第1の実施の形態では、センサ出力Ipの補正に際し、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差「Ri−ZDC」を求め、該求めた値に応じて電流補正値ΔIを算出したが、これを変更する。例えば素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの比「Ri/ZDC」を求め、該求めた値に応じて電流補正値ΔIを算出してもよい。また同様に、上記第3の実施の形態において、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの比「Ri/ZDC」を求め、該求めた値に応じて電圧補正値ΔVを算出してもよい。
【0123】
(別の形態2)上記第1の実施の形態では、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとの差「Ri−ZDC」とその時々の空燃比に応じて「0」を基準とする電流補正値ΔIを算出し(図9参照)、演算式、
Ipf=Ip+ΔI
により補正後のセンサ出力Ipfを算出したが、これを変更する。例えば図18の関係を用い、「Ri−ZDC」(又はRi/ZDC)に応じて「1」を基準とする電流補正値ΔIaを算出する。このとき、Ri−ZDC<K2であればΔIa<1とし、Ri−ZDC>K3であればΔIa>1とする。また、「Ri−ZDC」が「0」から離れるほど電流補正値ΔIaを大きくする。そして、演算式、
Ipf=Ip・ΔIa
により補正後のセンサ出力Ipfを算出する。なおこの場合、空燃比が変化しても同一の補正値ΔIaが使用でき、空燃比をΔIa値算出のパラメータとする必要はない。以上のことは、第3の実施の形態のようにセンサ印加電圧を補正する際にも同様に適用できる。すなわち、「Ri−ZDC」(又はRi/ZDC)に応じて電圧補正値ΔVaを算出し、そのΔVa値に応じて補正後の印加電圧Vpfを算出する(Vpf=Vp・ΔVaとする)。以上の構成でも、既述の通りセンサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる。
【0124】
(別の形態3)上記第1の実施の形態では、ヒータの通電制御に際し、素子直流抵抗Riに応じてヒータ通電のための目標値ZDCtgを補正するようにしたが、これを変更してもよい。例えば直流抵抗換算値ZDCに応じてヒータ通電のためのデューティ比DUTYを算出すると共に、素子直流抵抗Riに応じて(Ri−ZDCに応じて)デューティ補正値ΔDを算出する。そして、
DUTYf=DUTY+ΔD
として補正後のデューティ比DUTYfを得て、そのDUTYfによりヒータを通電する。本構成でもやはり、センサの個体差や経時変化に関係なく、常に空燃比を精度良く検出することができる。
【0125】
(別の形態4)上記第1の実施の形態のように、素子直流抵抗Riに基づくセンサ出力補正とヒータ通電量補正とを併せて実施する場合、その時々の素子温に応じて両補正を選択的に実施してもよい。例えば素子温が比較的低い場合にはヒータ通電量補正を行い、素子温が比較的高い場合にはセンサ出力補正を行う。或いは、上記第3の実施の形態のように、素子直流抵抗Riに基づくセンサ印加電圧補正とヒータ通電量補正とを併せて実施する場合、その時々の素子温に応じて両補正を選択的に実施してもよい。例えば素子温が比較的低い場合にはヒータ通電量補正を行い、素子温が比較的高い場合にはセンサ印加電圧補正を行う。この場合、センサ素子部の過昇温が抑制できる。
【0126】
(別の形態5)上記第1の実施の形態では、素子直流抵抗Riに基づくセンサ出力補正とヒータ通電量補正とを併せて実施したが、何れか一方のみを実施する構成としてもよい。或いは、上記第3の実施の形態では、素子直流抵抗Riに基づくセンサ印加電圧補正とヒータ通電量補正とを併せて実施したが、センサ印加電圧補正のみを実施する構成としてもよい。
【0127】
(別の形態6)上記各実施の形態では、素子直流抵抗Riと直流抵抗換算値ZDCとを比較する際、Ri−ZDC<K1の時にセンサ異常とみなしたが(図5,6,15参照)、新たに判定値K4を設け(但し、K4>K3)、Ri−ZDC>K4となる時にもセンサ異常とみなすようにしてもよい。この場合、警告灯を点灯させる、空燃比F/B制御を中断させる、ダイアグ情報をメモリに記憶する等の処理を実施する。
【0128】
(別の形態7)素子直流抵抗Riを検出する際、V−I特性上の負の印加電圧を印加すると共にそれに伴い流れる負の限界電流を計測し、これら各値から素子直流抵抗Riを検出してもよい。V−I特性上の負の印加電圧を印加することは、抵抗支配領域にて電圧を印加することを意味する。
【0129】
(別の形態8)上記各実施の形態では、コップ型A/Fセンサへの適用例を開示したが、他のセンサへの適用も可能である。例えば固体電解質、電極、拡散抵抗層及びヒータを各々板状に成形し、これら各部材を積層して成る、いわゆる積層型A/Fセンサに適用したり、排ガス(被検出ガス)中の複数のガス成分濃度を検出する、いわゆる複合型ガスセンサに適用したりしてもよい。複合型ガスセンサは概ね、被検出ガスを導入するための拡散抵抗部と、電圧印加に伴い拡散抵抗部内の被検出ガス中の余剰酸素を排出しつつその酸素濃度に応じた電流を流す第1セル(ポンプセル)と、同じく電圧印加に伴い余剰酸素排出後のガス成分から特定成分の濃度に応じた電流を流す第2セル(センサセル)とを備える。前記第2セルでは、例えば排ガス中のNOx、CO、HC等が検出される。これら各センサへの適用時にも、既述の通りセンサの個体差や経時変化に関係なく、常にガス濃度を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における空燃比制御システムの概要を示す構成図。
【図2】A/FセンサのV−I特性を示す図。
【図3】交流インピーダンスの検出手順を示すフローチャート。
【図4】素子直流抵抗の検出手順を示すフローチャート。
【図5】空燃比の検出手順を示すフローチャート。
【図6】ヒータ通電の制御手順を示すフローチャート。
【図7】インピーダンス検出時におけるセンサ電圧とセンサ電流との推移を示す波形図。
【図8】素子直流抵抗の検出時における設定電圧を説明するための図。
【図9】電流補正値ΔIを設定するための関係図。
【図10】電流補正値ΔIによりセンサ出力が補正される様子を示す図。
【図11】補正値ΔZDCtgを設定するための関係図。
【図12】第2の実施の形態において空燃比制御システムの概要を示す構成図。
【図13】第2の実施の形態において素子直流抵抗の検出手順を示すフローチャート。
【図14】回路瞬断時における電圧及び電流の変化を示す図。
【図15】第3の実施の形態において空燃比の検出手順を示すフローチャート。
【図16】電圧補正値ΔVを設定するための関係図。
【図17】電圧補正値ΔVにより印加電圧が補正される様子を示す図。
【図18】別の形態において電流補正値ΔIaを設定するための関係図。
【図19】素子直流抵抗、交流インピーダンス、素子温の関係を示す図。
【図20】素子直流抵抗、交流インピーダンス、素子温の関係を示す図。
【図21】素子直流抵抗、交流インピーダンス、素子温の関係を示す図。
【符号の説明】
20…直流抵抗検出手段,センサ出力補正手段,印加電圧補正手段,インピーダンス検出手段,通電量補正手段を構成する空燃比検出用マイコン、30…ガス濃度センサとしてのA/Fセンサ(限界電流式空燃比センサ)、30a…センサ素子部、31…固体電解質、33,34…電極、35…ヒータ。
Claims (13)
- 固体電解質と該固体電解質の相対向する面に各々設けられた電極とを有する素子部を備え、前記電極間に電圧が印加されるとそれに伴い被検出ガス中の特定成分の濃度に応じた電流信号を出力するガス濃度センサを用いたガス濃度検出装置において、
前記素子部における素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、
前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換する直流抵抗換算手段と、
前記検出した素子直流抵抗と前記変換した直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出し、該算出した補正値を用いてガス濃度センサから出力される電流信号を補正するセンサ出力補正手段と
を備えることを特徴とするガス濃度検出装置。 - 前記センサ出力補正手段は、その時々のガス濃度に応じて前記補正値を算出する請求項1に記載のガス濃度検出装置。
- 固体電解質と該固体電解質の相対向する面に各々設けられた電極とを有する素子部を備え、前記電極間に電圧が印加されるとそれに伴い被検出ガス中の特定成分の濃度に応じた電流信号を出力するガス濃度センサを用いたガス濃度検出装置において、
前記素子部における素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、
前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換する直流抵抗換算手段と、
前記検出した素子直流抵抗と前記変換した直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出し、該算出した補正値を用いてガス濃度センサへの印加電圧を補正する印加電圧補正手段と
を備えることを特徴とするガス濃度検出装置。 - 前記印加電圧補正手段は、その時々のガス濃度に応じて前記補正値を算出する請求項3に記載のガス濃度検出装置。
- 固体電解質と該固体電解質の相対向する面に各々設けられた電極とを有する素子部と、電源電圧の通電により発熱して前記素子部を所定の活性温度に加熱するためのヒータとを備え、前記電極間に電圧が印加されるとそれに伴い被検出ガス中の特定成分の濃度に応じた電流信号を出力するガス濃度センサを用い、前記ヒータの通電量を制御するガス濃度検出装置において、
前記素子部の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記素子部の素子直流抵抗を検出する直流抵抗検出手段と、
前記検出した交流インピーダンスに基づき決定されるヒータの通電量を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正する通電量補正手段と
を備えることを特徴とするガス濃度検出装置。 - 前記検出した交流インピーダンスを直流抵抗換算値に変換するガス濃度検出装置において、
前記通電量補正手段は、前記素子直流抵抗と前記直流抵抗換算値との差に応じた補正値を算出する手段と、該算出した補正値を用いて前記設定したヒータの通電量を補正する手段とを備える請求項5に記載のガス濃度検出装置。 - 請求項5又は6に記載のガス濃度検出装置において、
ガス濃度センサから出力される電流信号を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正するセンサ出力補正手段を更に備えるガス濃度検出装置。 - 請求項5又は6に記載のガス濃度検出装置において、
ガス濃度センサへの印加電圧を、前記検出した素子直流抵抗に応じて補正する印加電圧補正手段を更に備えるガス濃度検出装置。 - 素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が大きいほど、前記補正値を増大させる請求項1〜8の何れか一項に記載のガス濃度検出装置。
- 素子直流抵抗と直流抵抗換算値との差が所定の許容値を超える時、ガス濃度センサの異常と判断する請求項1〜8の何れか一項に記載のガス濃度検出装置。
- 前記直流抵抗検出手段は、ガス濃度センサのV−I座標上の抵抗支配領域にて電圧を印加し、その時の印加電圧とセンサ出力とから素子直流抵抗を算出する請求項1〜10の何れか一項に記載のガス濃度検出装置。
- 前記直流抵抗検出手段は、ガス濃度センサに電圧を印加するための回路を瞬断し、該瞬断する前後の電圧変化と電流変化との比から素子直流抵抗を検出する請求項1〜10の何れか一項に記載のガス濃度検出装置。
- 前記直流抵抗検出手段は、ガス濃度検出が中断できるような所定の実施条件が成立した場合にのみ、素子直流抵抗の検出を許可する請求項1〜12の何れか一項に記載のガス濃度検出装置。
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