JP3975498B2 - ディーゼル機関の排気ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、排気ガス浄化手段を備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関の排気系にパティキュレートフィルタあるいは触媒コンバータ等の排気ガス浄化手段を設け、排気ガス中に含まれる有害物質(例えば、パティキュレート、NOx等)を除去するようにしている。
【0003】
一方、ディーゼル機関においては、排気系において前記排気ガス浄化手段の上流側にシャッター弁を設け、アクセルペダルを離した時(すなわち、減速時)に前記シャッター弁を閉鎖することにより、排気ガスの放出を阻止して排圧を排気系に発生させ、これによって機関の回転速度を強制的に低下させて制動力を得る手段(即ち、排気ブレーキ装置)を設けるようにしている。
【0004】
上記した排気ガス浄化手段と排気ブレーキ装置とを具備したディーゼル機関については、例えば特開平3−237230号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記構成のディーゼル機関の場合、排気ブレーキ装置が作動すると、その上流側の内圧が極めて高くなる(例えば、4.5kg/cm2)。この状態から排気ブレーキ装置が解除(即ち、シャッター弁が開弁)されると、下流側に位置する排気ガス浄化手段に対して大きな動圧(換言すれば、圧力波)が急激に作用することとなり、排気ガス浄化手段を破損に至らしめるおそれがある。特に、触媒コンバータの場合、モノリス担体をケーシング(即ち、排気管に形成された収納室)に対して支持するインターラムマットが吹き飛んだり、モノリス担体自体が破損するおそれがある。
【0006】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、排気シャッター弁の開作動初期にその下流側に位置する排気ガス浄化手段へ作用する動圧(即ち、圧力波)を緩和し得るようにすることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の基本構成では、上記課題を解決するための手段として、ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁と、該排気シャッター弁の下流側に配設された排気ガス浄化手段とを備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置において、前記排気シャッター弁の開作動初期に前記排気ガス浄化手段に作用する動圧を緩和する動圧緩和手段を付設している。
【0008】
上記のように構成したことにより、排気シャッター弁の開作動初期において該排気シャッター弁の上流側に生じた高内圧(即ち、動圧)が排気ガス浄化手段に到達する前に動圧緩和手段により減圧されることとなり、下流側に位置する排気ガス浄化手段に大きな動圧(即ち、圧力波)が作用することがなくなる。
【0009】
本願発明の基本構成において、前記動圧緩和手段を、前記排気シャッター弁と排気ガス浄化手段との間に形成された容積拡張室により構成した場合、動圧緩和手段の構成が簡略となる。この場合において、前記容積拡張室を、前記排気管を拡大することにより形成すれば、より一層の簡略化が得られる。
【0010】
また、前記容積拡張室を、前記排気管と並列状態で設けるとともに、その入口を、前記排気シャッター弁により開閉するようにすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスの大部分が容積拡張室へ流入することとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響をより確実に緩和できる。
【0011】
また、前記排気シャッター弁を、所定開度で前記容積拡張室の入口のみを開状態とし、所定開度以上で前記容積拡張室の入口および排気管を開状態とするものとすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスの全量が容積拡張室のみに流入することとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響をより一層緩和することができる。また、前記排気シャッター弁を、開作動時において所定開度まで徐々に開くように制御するようにすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスが容積拡張室に流入する量を徐々に増大できることとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響がより一層緩和できる。
【0012】
また、前記動圧緩和手段を、前記排気シャッター弁の上流側から前記排気ガス浄化手段の下流側にバイパスするバイパス通路と、該バイパス通路に設けられ、前記排気シャッター弁の開作動に先立って開作動するバイパス弁とにより構成した場合、排気シャッター弁の開作動に先立ってバイパス通路を介して排気ガスが排気ガス浄化手段の下流側へバイパスされることとなり、排気ガス浄化手段へ大きな動圧が作用することがなくなるとともに、排気シャッター弁の開作動初期に排気される未燃焼ガスが排気ガス浄化手段へ供給されることがなくなる。この場合において、前記バイパス弁を、燃料カット域において燃料復帰前に開閉動作を完了するように制御するようにすれば、燃料復帰時においてはバイパス通路は閉鎖されることとなり、排気ガス浄化手段により浄化されない燃焼ガスが排気されることがなくなる。
【0013】
また、前記排気シャッター弁を、排気ブレーキスイッチのOFF作動時、ニュートラルスイッチのON作動時、クラッチスイッチのON作動時、アクセルスイッチのON作動時およびエンジン回転数が所定値以下となった時のうち少なくともいずれか一つを満足したときに開作動するように制御した場合、運転状態に対応した排気シャッター弁の開作動制御が行えることとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの好適な実施の形態について詳述する。
【0015】
第1の実施の形態(請求項2および7に対応)
図1には、本願発明の第1の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置が示されている。
【0016】
この排気ブレーキ装置は、ディーゼルエンジン1の排気管2に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁3と、該排気シャッター弁3の下流側に配設された排気ガス浄化手段4と、前記排気シャッター弁3と排気ガス浄化手段4との間に形成された容積拡張室5とを備えて構成されている。該容積拡張室5は、前記排気管2と並列状態で設けられており、その入口5aは、前記排気シャッター弁3により開閉されることとなっている。つまり、本実施の形態においては、容積拡張室5が動圧緩和手段として作用することとなっているのである。
【0017】
前記排気ガス浄化手段4は、前記排気管2を半径方向に拡大して形成された収納室6内に配設された触媒コンバータとされている。該触媒コンバータ4を構成するモノリス担体は、前記収納室6に対してインターラムマット(図示省略)を介して支持されている。なお、触媒コンバータに代えてパティキュレートフィルタを用いることもある。
【0018】
前記容積拡張室5は、前記排気シャッター弁3と排気ガス浄化手段4との間の排気管2の外周側に形成されており、その入口5aは、前記排気シャッター弁3の所定開度において全開されることとなっている。なお、この場合、排気シャッター弁3は、所定開度まで開作動される過程(即ち、容積拡張室5の入口5aを開放する過程)において排気管2をも若干開放することとなっている。また、容積拡張室5の出口5bは、前記排気管2に形成されている。
【0019】
この排気ブレーキ装置には、前記排気シャッター弁3を開閉作動させるためのアクチュエータ7と、該アクチュエータ7の駆動源である真空ポンプ8とが付設されている。
【0020】
前記アクチュエータ7は、前記排気シャッター弁3を所定開度(即ち、容積拡張室5の入口5aを全開状態とする開度)まで開作動させる第1アクチュエータ7aと、前記排気シャッター弁3を前記所定開度から全開状態まで開作動させる第2アクチュエータ7bとを一体的に連結した2連式のものとされており、前記第1アクチュエータ7aと真空ポンプ8との間には第1負圧切換弁9が介設される一方、前記第2アクチュエータ7bと真空ポンプ8との間には第2負圧切換弁10が介設されている。
【0021】
これら第1および第2負圧切換弁9,10のON状態においてアクチュエータ7は排気シャッター弁3を全閉するように作動し、第1および第2負圧切換弁9,10のOFF状態においてアクチュエータ7は排気シャッター弁3を全開するように作動し、第1負圧切換弁9のOFF状態および第2負圧切換弁10のON状態において排気シャッター弁3は所定開度状態(例えば、半開状態)となすように作動することとなっている。符号11は前記排気シャッター弁3の開度位置を検出するための開度検出センサー、12はディーゼルエンジン1の運転状態を検出する運転状態検出センサーである。この運転状態検出センサー12としては、例えば排気ブレーキスイッチ、ニュートラルスイッチ、クラッチスイッチ、アクセルスイッチおよびエンジン回転数検出センサー(共に図示省略)が用いられている。
【0022】
そして、前記開度検出センサー11および運転状態検出センサー12からの情報(即ち、排気シャッター弁3の開度およびディーゼルエンジンの運転状態)は制御回路13に入力され、該制御回路13から前記第1および第2負圧切換弁9,10へ制御信号が出力されることとなっている。
【0023】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、上記構成のディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用について説明する。
【0024】
ステップS1において各種データ(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態および排気シャッター弁3の開度)が取り込まれ、ステップS2において排気ブレーキスイッチがON状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがOFF状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがOFF状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがOFF状態と判定され、しかもステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)を超えていると判定された場合(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態が減速状態と判定された場合)には、ステップS7に進み、第1および第2負圧切換弁9,10が共にON状態とされる。すると、第1および第2アクチュエータ7a,7bが作動されて排気シャッター弁3は全閉状態とされる。その後、制御はステップS1へリターンする。
【0025】
一方、ステップS2において排気ブレーキスイッチがOFF状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがON状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがON状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがON状態と判定され、あるいはステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)以下と判定された場合には、ステップS8に進み、排気シャッター弁3が全開状態にあるか否かの判定がなされる。ここで、否定判定された場合、ステップS9において第1負圧切換弁9がOFF状態とされる。すると、第1アクチュエータ7aが作動されて排気シャッター弁3が所定開度状態(例えば、半開状態)とされる。なお、ステップS8において肯定判定された場合には以下の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0026】
ついで、ステップS9においてフラッグ判定(即ち、F=1か否かの判定)を行い、ここで、肯定判定された場合には、ステップS10においてタイマー(例えば、タイマー値T=50msec)のカウントが開始され、ステップS11においてフラッグF=1とされ、ステップS12において排気シャッター弁3が所定開度以上(例えば、半開以上)となっているか否かの判定がなされる。なお、ステップS9においてF=1と判定された場合には、ステップS10およびステップS11を省略してステップS12に進む。
【0027】
そして、ステップS12において肯定判定され且つステップS13においてタイマーがカウントアップしたと判定されると、ステップS14において第2負圧切換弁10がOFF状態とされる。すると、第2アクチュエータ7bが作動されて排気シャッター弁3は全開状態とされ、その後ステップS1へリターンする。なお、ステップS12およびステップS13において否定判定された場合には、以後の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0028】
上記したように、本実施の形態においては、排気シャッター弁3の開作動初期においては、排気シャッター弁3により容積拡張室5の入口5aが全開状態とされるところから、排気ガスの大部分は、容積拡張室5を経て排気ガス浄化手段4へ排出され、容積拡張室5において動圧(即ち、圧力波)が緩和されることとなり、排気ガス浄化手段4が動圧(即ち、圧力波)を受けて破壊するということはなくなる。つまり、触媒コンバータ4を構成するモノリス担体を支持しているインターラムマットが吹き飛んだり、モノリス担体自体が破損したりすることがなくなるのである。
【0029】
第2の実施の形態(請求項2,4および7に対応)
図3には、本願発明の第2の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置が示されている。
【0030】
この場合、排気シャッター弁3を開閉作動させるためのアクチュエータ7は、第1デューティソレノイドバルブ14を介して真空ポンプ8に連通されるとともに、第2デューティソレノイドバルブ15を介して大気に連通されている。
【0031】
これらの第1および第2デューティソレノイドバルブ14,15は、制御回路13からの制御信号により作動されることとなっており、第1デューティソレノイドバルブ14のデューティ値=100でのON状態および第2デューティソレノイドバルブ15のデューティ値=0でのON状態においてアクチュエータ7は排気シャッター弁3を全閉するように作動し、第1デューティソレノイドバルブ14のデューティ値=0でのON状態および第2デューティソレノイドバルブ15のデューティ値=100でのON状態においてアクチュエータ7は排気シャッター弁3を全開するように作動し、第1および第2デューティソレノイドバルブ14,15のデューティ値=50でのON状態においてアクチュエータ7は排気シャッター弁3を所定開度状態(例えば、半開状態)となるように作動することとなっている。その他の構成は第1の実施の形態におけると同様なので説明を省略する。
【0032】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、上記構成のディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用について説明する。
【0033】
ステップS1において各種データ(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態および排気シャッター弁3の開度)が取り込まれ、ステップS2において排気ブレーキスイッチがON状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがOFF状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがOFF状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがOFF状態と判定され、しかもステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)を超えていると判定された場合(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態が減速状態と判定された場合)には、ステップS7に進み、第1デューティソレノイドバルブ14をデューティ値=100でON作動させ且つ第2デューティソレノイドバルブ15をデューティ値=0でON作動させる。すると、アクチュエータ7が作動されて排気シャッター弁3は全閉状態とされる。その後、制御はステップS1へリターンする。
【0034】
一方、ステップS2において排気ブレーキスイッチがOFF状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがON状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがON状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがON状態と判定され、あるいはステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)以下と判定された場合には、ステップS8に進み、排気シャッター弁3が全開状態にあるか否かの判定がなされる。
【0035】
ステップS8において否定判定された場合、ステップS9において急加速状態が否かの判定がなされ、ここで、肯定判定された場合には、ステップS10において第1デューティソレノイドバルブ14をデューティ値=50でON作動させ且つ第2デューティソレノイドバルブ15をデューティ値=50でON作動させる。すると、アクチュエータ7が所定速度で作動されて排気シャッター弁3が所定開度状態(例えば、半開状態)まで所定速度で開作動される(図5の折れ線X参照)。一方、ステップS9において否定判定された場合には、ステップS11において第1デューティソレノイドバルブ14をデューティ値=100−ΔNでON作動させ且つ第2デューティソレノイドバルブ15をデューティ値=0+ΔNでON作動させる。すると、アクチュエータ7が急加速時より小さい速度で作動されて排気シャッター弁3が所定開度状態(例えば、半開状態)まで急加速時より小さい速度で開作動される(図5の折れ線Y参照)。なお、ステップS8において肯定判定された場合には以下の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0036】
ついで、ステップS12においてフラッグ判定(即ち、F=1か否かの判定)を行い、ここで、肯定判定された場合には、ステップS13においてタイマー(例えば、タイマー値T=50msec)のカウントが開始され、ステップS14においてフラッグF=1とされ、ステップS15において排気シャッター弁3が所定開度以上(例えば、半開以上)となっているか否かの判定がなされる。なお、ステップS12においてF=1と判定された場合には、ステップS13およびステップS14を省略してステップS15に進む。
【0037】
そして、ステップS15において肯定判定され且つステップS16においてタイマーがカウントアップしたと判定されると、ステップS17において第1デューティソレノイドバルブ14をデューティ値=0でON作動させ且つ第2デューティソレノイドバルブ15をデューティ値=100でON作動させる。すると、アクチュエータ7が作動されて排気シャッター弁3は全開状態とされ、その後ステップS1へリターンする。なお、ステップS15およびステップS16において否定判定された場合には、以後の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0038】
上記したように、本実施の形態においては、排気シャッター弁3の開作動初期においては、排気シャッター弁3により容積拡張室5の入口5aが所定速度で(即ち、徐々に)全開状態とされるところから、排気ガスは、徐々に容積拡張室5に流入し、該容積拡張室5を経て排気ガス浄化手段4へ排出されるが、容積拡張室5において動圧(即ち、圧力波)が第1の実施の形態におけるより緩和されることとなり、排気ガス浄化手段4が動圧(即ち、圧力波)を受けて破壊するということはなくなる。
【0039】
第3の実施の形態(請求項1,4および7に対応)
図6には、本願発明の第3の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置が示されている。
【0040】
この場合、容積拡張室5は、排気シャッター弁3と排気ガス浄化手段4との間の排気管2を拡大することにより形成されている。また、第2の実施の形態におけると同様に、排気シャッター弁3を開閉作動させるためのアクチュエータ7は、第1デューティソレノイドバルブ14を介して真空ポンプ8に連通されるとともに、第2デューティソレノイドバルブ15を介して大気に連通されており、これらの第1および第2デューティソレノイドバルブ14,15は、制御回路13からの制御信号により作動されることとなっている。なお、本実施の形態の場合、排気シャッター弁3は、第1および第2デューティソレノイドバルブ14,15が共にデューティ値=50でON作動されたとき所定開度状態(例えば、半開状態)とされることとなっている。その他の構成および作用効果は第1および第2の実施の形態において説明したと同様なので説明を省略する。
【0041】
第4の実施の形態(請求項5〜7に対応)
図7には、本願発明の第4の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置が示されている。
【0042】
この場合、排気シャッター弁3の上流側から排気ガス浄化手段4の下流側にバイパスするバイパス通路16が設けられており、該バイパス通路16には、前記排気シャッター弁3の開作動に先立って開作動し且つ燃料カット域において燃料復帰前に開閉動作を完了するバイパス弁17が介設されている。前記バイパス通路16は、排気管2の中心部に位置され、しかも排気ガス浄化手段4を貫通して形成されている。また、排気シャッター弁3は、図8(イ)に示すように、排気管2とバイパス通路16との間に形成される環状通路を開閉する一対の弁体3a,3bとからなっており、図8(ロ)に示すように、弁体3a,3bが重合する方向に作動することにより開作動されることとなっている。
【0043】
そして、この排気ブレーキ装置には、前記排気シャッター弁3を開閉作動させるための第1アクチュエータ18と、前記バイパス弁17を開閉作動させるための第2アクチュエータ19と、前記両アクチュエータ18,19の駆動源である真空ポンプ8とが付設されている。前記第1アクチュエータ18と真空ポンプ8との間には第1負圧切換弁20が介設される一方、前記第2アクチュエータ19と真空ポンプ8との間には第2負圧切換弁21が介設されている。
【0044】
そして、第1負圧切換弁20のON状態において第1アクチュエータ18は排気シャッター弁3を全閉するように作動し、第1負圧切換弁20のOFF状態において第1アクチュエータ18は排気シャッター弁3を全開するように作動し、第2負圧切換弁21のON状態において第2アクチュエータ19は排気シャッター弁3を全開するように作動し、第2負圧切換弁21のOFF状態においてアクチュエータ19は排気シャッター弁3を全開するように作動することとなっている。符号22は排気ブレーキの作動を検出する排気ブレーキ作動センサー、23は制御回路、24は燃料ポンプコントロールスリーブである。その他の構成は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0045】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、上記構成のディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用について説明する。
【0046】
ステップS1において各種データ(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態および排気シャッター弁3の開度)が取り込まれ、ステップS2において排気ブレーキスイッチがON状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがOFF状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがOFF状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがOFF状態と判定され、しかもステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)を超えていると判定された場合(即ち、ディーゼルエンジン1の運転状態が減速状態と判定された場合)には、ステップS7に進み、第1負圧切換弁20がON状態とされる。すると、第1アクチュエータ18が作動されて排気シャッター弁3は全閉状態とされる。その後、制御はステップS1へリターンする。
【0047】
一方、ステップS2において排気ブレーキスイッチがOFF状態と判定され、ステップS3においてニュートラルスイッチがON状態と判定され、ステップS4においてクラッチスイッチがON状態と判定され、ステップS5においてアクセルスイッチがON状態と判定され、あるいはステップS6においてエンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1300rpm)以下と判定された場合には、ステップS8に進み、排気シャッター弁3が全閉状態にあるか否かの判定がなされる。ここで、肯定判定された場合、ステップS9において第2負圧切換弁21がON状態とされる。すると、第2アクチュエータ19が作動されてバイパス弁17が全開される。なお、ステップS8において肯定判定された場合には以下の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0048】
ついで、ステップS9においてフラッグ判定(即ち、F=1か否かの判定)を行い、ここで、肯定判定された場合には、ステップS10においてタイマー(例えば、タイマー値T=50msec)のカウントが開始され、ステップS11においてフラッグF=1とされ、ステップS12においてタイマーがカウントアップしたと判定されると、ステップS13において第1および第2負圧切換弁20,21がOFF状態とされる。すると、第1および第2アクチュエータ18,19が作動されて排気シャッター弁3およびバイパス弁17は全開状態とされ、その後ステップS1へリターンする。なお、ステップS9において否定判定された場合には、ステップS10およびステップS11を省略してステップS12へ進み、また、ステップS12において否定判定された場合には、以後の制御を省略してステップS1へリターンする。
【0049】
ところで、エンジン回転数Neが1300rpmを超えた状態において排気ブレーキ解除信号が出た場合(即ち、燃料カットされた場合)には、制御回路23からの制御信号により燃料ポンプコントロールスリーブ24が制御されて所定期間燃料復帰を遅延させ、当該期間内で上記ステップS9〜ステップS13の制御が実行される。つまり、燃料カット域においてはバイパス弁17は燃料復帰前に開閉作動を完了することとなっているのである。このようにすると、燃料復帰時においてはバイパス通路16は閉鎖されることとなる。従って、排気ガス浄化手段4により浄化されない燃焼ガスが排気されることがなくなり、HCの排出を効果的に防止できる。なお、燃料カット条件は、排気ブレーキスイッチON、ニュートラルスイッチOFF、クラッチスイッチOFF、アクセルスイッチOFFおよびエンジン回転数Ne≧1100rpmの全てを満たすこととされている。
【0050】
上記したように、本実施の形態においては、排気シャッター弁3の開作動初期においては、バイパス弁17が全開状態とされるところから、排気ガスは、排気ガス浄化手段4をバイパスするバイパス通路16を介して排出されることとなる。従って、排気ガス浄化手段4には動圧(即ち、圧力波)が作用することがなくなり、排気ガス浄化手段4が破壊するということはなくなる。
【0051】
第5の実施の形態(請求項2,3,4および7に対応)
図10には、本願発明の第5の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置が示されている。
【0052】
この場合、第1の実施の形態とは、排気シャッター弁3は、所定開度(符号3′で示す開度)までは容積拡張室5の入口5aのみを開状態とし、所定開度以上(符号3′→3″で示す開度)で排気管2を開状態とするように構成されている点が相異しているのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0053】
上記のように構成した場合、排気シャッター弁3の開作動初期において排気ガスの全量が容積拡張室5のみに流入することとなり、排気ガス浄化手段4に対する動圧の影響をより一層緩和することができる。なお、排気シャッター弁3の開度制御は、第2あるいは第3の実施の形態におけると同様とすることができる。
【0054】
【発明の効果】
本願発明によれば、ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁と、該排気シャッター弁の下流側に配設された排気ガス浄化手段とを備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置において、前記排気シャッター弁の開作動初期に前記排気ガス浄化手段に作用する動圧を緩和する動圧緩和手段を付設して、排気シャッター弁の開作動初期において該排気シャッター弁の上流側に生じていた高内圧(即ち、動圧)を動圧緩和手段により減圧するようにしたので、下流側に位置する排気ガス浄化手段に大きな動圧(即ち、圧力波)が作用することがなくなり、排気ガス浄化手段が破壊するということがなくなるという優れた効果がある。
【0055】
また、前記動圧緩和手段を、前記排気シャッター弁と排気ガス浄化手段との間に形成された容積拡張室により構成した場合、動圧緩和手段の構成が簡略となるし、この場合において、前記容積拡張室を、前記排気管を拡大することにより形成すれば、より一層の簡略化が得られるし、前記容積拡張室を、前記排気管と並列状態で設けるとともに、その入口を、前記排気シャッター弁により開閉するようにすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスの大部分が容積拡張室へ流入することとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響をより確実に緩和できる。また、前記排気シャッター弁を、所定開度で前記容積拡張室の入口のみを開状態とし、所定開度以上で前記容積拡張室の入口および排気管を開状態とするものとすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスの全量が容積拡張室のみに流入することとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響をより一層緩和することができる。また、前記排気シャッター弁を、開作動時において所定開度まで徐々に開くように制御するようにすれば、排気シャッター弁の開作動初期において排気ガスが容積拡張室に流入する量を徐々に増大できることとなり、排気ガス浄化手段に対する動圧の影響がより一層緩和できる。
【0056】
また、前記動圧緩和手段を、前記排気シャッター弁の上流側から前記排気ガス浄化手段の下流側にバイパスするバイパス通路と、該バイパス通路に設けられ、前記排気シャッター弁の開作動に先立って開作動するバイパス弁とにより構成した場合、排気シャッター弁の開作動に先立ってバイパス通路を介して排気ガスが排気ガス浄化手段の下流側へバイパスされることとなり、排気ガス浄化手段へ大きな動圧が作用することがなくなるとともに、排気シャッター弁の開作動初期に排気される未燃焼ガスが排気ガス浄化手段へ供給されることがなくなる。この場合において、前記バイパス弁を、燃料カット域において燃料復帰前に開閉動作を完了するように制御するようにすれば、燃料復帰時においてはバイパス通路は閉鎖されることとなり、排気ガス浄化手段により浄化されない燃焼ガスが排気されることがなくなる(即ち、HCの排出が効果的に防止できる)。
【0057】
また、前記排気シャッター弁を、排気ブレーキスイッチのOFF作動時、ニュートラルスイッチのON作動時、クラッチスイッチのON作動時、アクセルスイッチのON作動時およびエンジン回転数が所定値以下となった時のうち少なくともいずれか一つを満足したときに開作動するように制御した場合、運転状態に対応した排気シャッター弁の開作動制御が行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の第1の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置を示す構成図である。
【図2】 本願発明の第1の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用を説明するフローチャートである。
【図3】 本願発明の第2の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置を示す構成図である。
【図4】 本願発明の第2の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用を説明するフローチャートである。
【図5】 本願発明の第2の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置における排気シャッター弁の開度変化を示すタイムチャートである。
【図6】 本願発明の第3の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置を示す構成図である。
【図7】 本願発明の第4の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置を示す構成図である。
【図8】 本願発明の第4の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置における排気シャッター弁を示す図であり、(イ)は全閉状態を、(ロ)は全開状態を示している。
【図9】 本願発明の第4の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置の作用を説明するフローチャートである。
【図10】 本願発明の第5の実施の形態にかかるディーゼル機関の排気ブレーキ装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1はディーゼルエンジン、2は排気管、3は排気シャッター弁、4は排気ガス浄化手段(触媒コンバータ)、5は容積拡張室、5aは入口、5bは出口、16はバイパス通路、17はバイパス弁。
Claims (7)
- ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁と、該排気シャッター弁の下流側に配設された排気ガス浄化手段とを備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置であって、
前記排気シャッター弁の開作動初期に前記排気ガス浄化手段に作用する動圧を緩和する動圧緩和手段が付設されており、
前記動圧緩和手段は、前記排気シャッター弁と排気ガス浄化手段との間に形成された容積拡張室により構成され、
前記容積拡張室は、前記排気管を拡大することにより形成されていることを特徴とするディーゼル機関の排気ブレーキ装置。 - ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁と、該排気シャッター弁の下流側に配設された排気ガス浄化手段とを備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置であって、
前記排気シャッター弁の開作動初期に前記排気ガス浄化手段に作用する動圧を緩和する動圧緩和手段が付設されており、
前記動圧緩和手段は、前記排気シャッター弁と排気ガス浄化手段との間に形成された容積拡張室により構成され、
前記容積拡張室は、前記排気管と並列状態で設けられており、その入口は、前記排気シャッター弁により開閉されることを特徴とするディーゼル機関の排気ブレーキ装置。 - 前記排気シャッター弁は、所定開度で前記容積拡張室の入口のみを開状態とし、所定開度以上で前記容積拡張室の入口および排気管を開状態とするものとされていることを特徴とする前記請求項2記載のディーゼル機関の排気ブレーキ装置。
- 前記排気シャッター弁は、開作動時において所定開度まで徐々に開くように制御されることを特徴とする前記請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載のディーゼル機関の排気ブレーキ装置。
- ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、減速時にエンジンブレーキをかけるために閉作動される排気シャッター弁と、該排気シャッター弁の下流側に配設された排気ガス浄化手段とを備えたディーゼル機関の排気ブレーキ装置であって、
前記排気シャッター弁の開作動初期に前記排気ガス浄化手段に作用する動圧を緩和する動圧緩和手段が付設されており、
前記動圧緩和手段は、前記排気シャッター弁の上流側から前記排気ガス浄化手段の下流側にバイパスするバイパス通路と、該バイパス通路に設けられ、前記排気シャッター弁の開作動に先立って開作動するバイパス弁とにより構成されていることを特徴とするディーゼル機関の排気ブレーキ装置。 - 前記バイパス弁は、燃料カット域において燃料復帰前に開閉動作を完了するように制御されることを特徴とする前記請求項5記載のディーゼル機関の排気ブレーキ装置。
- 前記排気シャッター弁は、排気ブレーキスイッチのOFF作動時、ニュートラルスイッチのON作動時、クラッチスイッチのON作動時、アクセルスイッチのON作動時およびエンジン回転数が所定値以下となった時のうち少なくともいずれか一つを満足したときに開作動するように制御されることを特徴とする前記請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載のディーゼル機関の排気ブレーキ装置。
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- 1996-12-27 JP JP35031596A patent/JP3975498B2/ja not_active Expired - Fee Related
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