JP3975019B2 - 耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線、耐熱ばね及び耐熱ばねの製造方法 - Google Patents

耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線、耐熱ばね及び耐熱ばねの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車エンジン排気系部品等の耐熱性が要求される部品、主にばねの素材として使用されるγ相(オーステナイト)金属組織を有するステンレス鋼線、耐熱ばね及び耐熱ばねの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
白動車エンジンの排気系に用いられるばね部品素材として、使用温度域〜350℃では、従来耐熱鋼として使用されてきSUS304,SUS316,SUS631Jlなどのオーステナイト系ステンレスが用いられている。
【0003】
近年、環境問題対策として自動車の排ガス規制への要求の高まりから、エンジン及び触媒の高効率化のために排気系温度が上昇する傾向にある。ばね部品においても、この傾向が見られ、最も一般的に広く使用されているSUS304,SUS316などのオーステナイト系ステンレスでは、耐熱特性、特に耐熱ばねに必要な高温引張強さと高温耐へたり性において不十分となる場合がある。
【0004】
この際、同部品素材としてSUS631などの析出強化型オーステナイト系ステンレスが用いられるが、歩留の低下や析出を目的とした長時間熱処理などによる製造コスト増加は免れない。
【0005】
そこで、耐熱特性を向上させる方法として一般にC,Nなどの侵入型固溶元素やW,Mo,V,Nb,Siなどのフェライト生成元素の添加による固溶強化が行われる。
【0006】
元素添加による固溶強化を行った先行技術として特公昭54-18648号公報では、SUS316の耐食性とSUS304の引張強さの両立を図っている。また、耐熱特性、特に700℃付近での高温引張り強さや高温耐力および高温耐酸化性を向上させるため、特公昭59-32540号公報では高Mnのオーステナイト鋼にC,Nの添加およびB,Vの複合添加による固溶強化を行っている。さらに、特開平4-297555号公報では、C,N,Nb,Wなどの添加による固溶強化によって900℃と言った高温域において高い引張強さとクリープ破断寿命を達成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の公知文献の中には、使用温度350℃〜500℃において耐熱ばねに必要な高温耐へたり性の向上を図ったものはない。固溶強化を行った耐熱鋼の耐熱特性は、熱処理,断面減少率によって様々に変化する。そのため、耐熱ばね材に必要な高温耐へたり性を得るには、適切な熱処理条件を規定する必要がある。
【0008】
従って、本発明の主目的は、SUS304やSUS316などに対しコスト増加を抑制し、高温域(350℃以上500℃以下)においても耐へたり性に優れる耐熱ばね用鋼線を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記の鋼線を利用した耐熱ばねと耐熱ばねの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Fe基であるオーステナイト系ステンレスの基地強化とC,Nなどの侵入型固溶元素やW,Mo,Nb,Siなどのフェライト生成元素の添加による固溶強化を行うことによって上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明鋼線は、重量%でC:0.02〜1.00,N:0.02〜1.00で0.15≦C+N≦1.00含有し、さらにMn:0.02〜2.0,Cr:12〜25,Ni:8.0〜15.0およびMo:0.1〜4.0を含有し、かつNb:0.1〜3.0,Si:1.0〜3.5,Ti:0.1〜2.0およびW:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1種を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなる耐熱ばね用ステンレス鋼線である。 この鋼線は、低温焼なまし前の引張り強さが1300N/mm2以上2000 N/mm2未満である。さらに、鋼線における横断面の平均結晶粒径が0.5μm以上5μm未満で、縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)が2.8〜90.0である。
【0011】
このステンレス鋼線の化学成分の代わりに、重量%でC:0.02〜1.00,N:0.02〜1.00で0.15≦C+N≦1.00含有し、さらにMn:4.0〜25.0,Cr:12〜25,Ni:0.1〜6.0を含有し、かつMo:0.1〜4.0,Nb:0.1〜3.0,Si:1.0〜3.5,Ti:0.1〜2.0およびW:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1種を含有し、 残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなる組成(高Mn型オーステナイトステンレス鋼線)としても良い。
【0012】
ここで、さらに重量%でCo:0.2〜2.0を含有することが好ましい。このCo添加によって金属間化合物の析出強化が実現され、高温耐へたり性の改善が見られる。
【0013】
また、本発明の耐熱ばねは前記のステンレス鋼線をばね加工したことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明耐熱ばねの製造方法は、適切な熱処理条件を規定することで、高温域でも耐へたり性に優れるばねを得る。すなわち、前記ステンレス鋼線をばね加工し、このばねを500℃以上600℃以下で低温焼なましして、15%以上引張り強さを増加させることを特徴とする。この低温焼なましを行うことで、ひずみ時効が促進され、15%以上引張り強さを増加させて高温耐へたり性を改善する。
【0015】
C,Nなどの侵入型固溶元素は、基地であるオーステナイト相に含有することで、結晶格子にひずみを生成して強化する固溶強化の他に、金属組織中の転位を固着させる効果がある。さらにW,Mo,Nb,Siなどのフェライト生成元素の添加による固溶強化を行うことによって、350℃という高温においても高い耐熱特性を得ることが可能である。この転位の固着効果は、ばね加工(コイリング等)を行った後の低温焼きなましを行うことで更に促進される。特に、500℃以上600℃以下で低温焼なましを行うとき、15%以上の強度増加が見込まれる材料において、その耐熱特性(高温耐へたり性)は高い。
【0016】
また、高Mn型オーステナイトステンレス鋼線とすることで更なるコスト低減を図った材料についても同様の性質を持つものは350℃以上という高温においても高い耐熱特性を得ることが可能である。
【0017】
ばね用鋼線としてばね加工(コイリング)を施すには、引張り強さで1300N/mm2以上必要であり、靭性を考慮すると2000N/mm2未満あることが望ましい。
【0018】
また、固溶強化の他に、高温耐へたり性を向上させるためには、結晶粒径をできるだけ小さくすることが有効であり、そのためには横断面の平均結晶粒径が5μm未満であることが望ましい。ただし、過度の結晶粒微細化はばね加工に必要な靭性を失うため、0.5μm以上とした。具体的に、このような鋼線を得るためには、溶体化温度を950℃から1100℃とし、出来るだけ低い温度で行うことが有効である。
【0019】
また、ステンレス鋼線縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)を2.8〜90.0と規定することで集合組織による耐熱特性の向上も期待できる。アスペクト比を2.8〜90.0としたのは、集合組織として機能するために最低必要な下限として2.8、靭性欠如が起こると思われる上限として90.0とした。具体的にアスペクト比を増加させる手段としては線引き加工がある。この方法は、前述した金属組織中の転位の固着を更に促進する更なる転位の導入が見込まれ、より高い耐熱特性を得られる相乗効果も期待できる。
【0020】
以下に本発明における構成元素の選定および成分範囲を限定する理由を述べる。
【0021】
Cは結晶格子中に侵入型固溶し、ひずみを導入して強化する効果を持つ。さらにコットレル雰囲気を形成し、金属組織中の転位を固着させる効果がある。また鋼中のCr、Nb、Tiなどと結合し炭化物を形成することで高温強度を高める効果もある。Nb,Tiなどと微細析出物を形成した場合は結晶粒径の抑制も期待でき、高温耐へたり性の向上に効果がある。しかしCr炭化物が結晶粒界に存在するとき、オーステナイト中のCrの拡散速度が低いため、粒界周辺にCr欠乏層が生じ、靭性および耐食性の低下が起こる。この現象はNb,Tiの添加によって抑制が可能であるが、Nbといった添加元素も過剰に存在するとオーステナイト相の不安定を引き起こす。そこで有効な含有量としてC:0.02〜1.00wt%とした。
【0022】
NもC同様、侵入型固溶強化元素であり、コットレル雰囲気形成元素でもある。また、鋼中のCr、Nb、Tiなどと結合し窒化物を形成することで高温強度を高める効果もある。Nb、Tiなどと微細析出物を形成した場合は結晶粒径の抑制も期待でき、高温耐へたり性の向上に効果がある。ただし、オーステナイト相中への固溶には限度があり、多量の添加は溶解,鋳造時のブローホール発生の要因となる。この現象はCr、Mn等のNとの親和力が高い元素を添加することで固溶限を上げ、ある程度の抑制が可能であるが、過度に添加する場合、溶解時に温度や雰囲気制御が必要となりコスト増加を招く恐れがある。そこでN:0.02〜1.00wt%とした。ただし、C,Nのいずれも侵入型で固溶するため、その溶解度には限度があり、溶解時のコスト増加を考慮し0.15wt%≦C+N≦1.00 wt%と規定した。
【0023】
Mnは溶解精錬時の脱酸剤として使用される。また、オーステナイト系ステンレスのγ相(オーステナイト)の相安定にも有効で高価なNiの代替元素となり得る。さらに、前述のようにオーステナイト中へのNの固溶限を上げる効果も持つ。ただし、高温での耐酸化性には悪影響を及ぼすため、Mn:0.02〜2.0wt%とした。なお、MnはNiの代替元素となり得るため、Niを少なく(0.1〜6.0wt%)した場合には、Mnを4.0〜25.0 wt%に増量しても良い。
【0024】
Crはオーステナイト系ステンレスの主要な構成元素であり、耐熱特性,耐酸化性を得るために有効な元素である。そこで本発明鋼線の他元素成分からNi当量,Cr当量を算出し、γ相(オーステナイト)の相安定性を考慮した上で、必要な耐熱特性を得るために12wt%以上、靭性劣化を考慮して25wt%以下とした。
【0025】
Niはγ相(オーステナイト)の安定化に有効である。しかし、本発明においてN含有量を0.2wt%以上とする場合、多量のNi含有はブローホール発生の原因となる。この場合、Nと親和力の高いMnの添加が有効で、オーステナイトステンレスを得るためにMn添加量を考慮したNi添加を行う必要がある。Mn量が少ない場合(0.02〜2.0wt%)には、γ相(オーステナイト)の安定化のためにNi量を8.0wt%以上、コスト上昇抑制のため15wt%以下とした。Mn量が多い場合(4.0〜25wt%)には、同様にγ相(オーステナイト)の安定化を補うものとしてNi量を0.1wt%以上とした。前述のようにMnはNiの代替元素となり得るため、コスト上昇の抑制のためにNi量を6.0wt%以下とした。
【0026】
また、Moはγ相(オーステナイト)中に置換型固溶し、高温引張強さ,耐へたり性の向上に大きく寄与する。そこで、耐へたり性向上に最低限必要な0.1wt%以上とし、加工性の劣化を考慮して4.0wt%以下とした。
【0027】
NbもMo同様γ相(オーステナイト)中に固溶し、高温引張強さ,耐へたり性の向上に大きく寄与する。また、前述のようにN,Cとの親和力が高く、γ相(オーステナイト)中に微細析出することで高温での耐へたり性の向上に寄与し、さらには結晶粒径粗大化の抑制、Cr炭化物の粒界析出抑制の効果もある。ただし、過剰に添加するとFe2Nb(ラーバス)相を析出する。このとき強度劣化が見込まれるため0.1〜3.0wt%とした。
【0028】
Siは固溶することで耐熱特性の向上に効果がある。また、溶解精錬時の脱酸剤としても有効であり、さらに固溶強化による耐熱特性を得るために1.0wt%以上必要である。ただし、靭性劣化を考慮し3.5wt%以下とした。
【0029】
Ti,WはMo,Nb,Siと同様にフェライト生成元素であり、γ相(オーステナイト)中に固溶することで耐熱特性を向上させることが出来る。ただし、γ相(オーステナイト)の安定性を低下させるため、Ti:0.1〜2.0wt%,W:0.1〜4.0wt%とした。
【0030】
Coはオーステナイト生成元素であり、固溶強化の効果は前述のフェライト生成元素ほど得られないが、金属間化合物を構成し、析出強化が起こる。この効果によってフェライト生成元素添加並の高温での耐熱特性の向上が著しく起こる。ただし、多量の添加は硫酸,硝酸に対する耐酸性や大気腐食性を低下させるため0.2〜2.0wt%とした。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
表1に記載の化学成分を有する鋼材を溶解鋳造し、鍛造後熱間圧延で直径9.5mmの線材を作製した。その後、1100℃での溶体化と線引き加工を繰り返し、線径1mmの試験片を作製した。各試験片の引張り強さ,横断面の結晶粒径,およびアスペクト比も併せて表1に示す。表中の化学成分の単位はwt%である。いずれの試料もSiを脱酸剤として溶解を行ったためSi:0.6wt%以上である。
【0032】
【表1】
Figure 0003975019
【0033】
そして、各試験片の高温耐へたり性を評価した。試料作製方法として前述の鋼線をコイルばね形状とした後、ばね加工後のひずみ取りを兼ねて低温焼なましを行った。加工したばねの諸元は次の通りである。
線径:1.0mm コイル平均径:4.0mm 自由高さ:45.0mm
有効巻き数:10.0 総巻き数:12.0 巻き方向:右
ばね定数:1.5kg/mm2
試験方法は、図1に示すように、作製したばね1に圧縮荷重を負荷し(負荷せん断応力は500MPa)、試験温度350℃において24hrs.保持し、試験後のへたり量測定から残留せん断ひずみを算出した。
【0034】
各試料の低温焼なまし条件は、比較例3のSUS631J1を除いて400℃×20min.とし、SUS631は析出強化を考慮し475℃×l時間とした。表2に実施例および比較例の低温焼なまし前後の引張強さ,強度増加率および高温耐へたり性評価試験後の残留せん断ひずみを示す。
【0035】
【表2】
Figure 0003975019
【0036】
各実施例はいずれも一般的な耐熱鋼であるステンレス鋼である比較例1( SUS304−WPB)、比較例2 (SUS316−WPA)よりも高い高温耐へたり性を有しており、特にCoを含有する実施例8は析出強化型ステンレスSUS631Jl−WPC (比較例3)よりも高い高温耐へたり性を達成していることが確認できる。それに対して化学成分でSiの含有量が少ない比較例4は、優れた高温耐へたり性を得ることはできないことが確認できた。また、化学成分でMoを含有せず、Siの含有量が少ない比較例5(SUS201)も優れた高温耐へたり性を得ることはできなかった。なお、実施例1〜5は本発明請求項1に該当し、実施例6、7は本発明請求項2に該当する。
【0037】
(試験例2)
次に前記実施例1の原材料を基準として、溶体化温度を低温化させて横断面の平均結晶粒径を更に小さくした実施例9、逆に溶体化温度を高温化させて結晶粒径を粗大化させた比較例6、線引き加工の断面減少率を増加させ縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)を増加させた実施例10、11、逆に断面減少率を低下させアスペクト比を低下させた比較例7を作製した。
【0038】
断面減少率を変えてアスペクト比を変化させると、同時に横断面の結晶粒径も変化するため、アスペクト比を増加するときは溶体化温度を上げ、アスペクト比を低減するときは溶体化温度を下げるなどの処理を行い、横断面の結晶粒径は、ほぼ同等となるように調節を行った。各実施例、比較例の化学成分、引張り強さ、結晶粒径およびアスペクト比を表3に示す。表中の化学成分の単位はwt%である。
【0039】
【表3】
Figure 0003975019
【0040】
以上の試料の高温耐へたり性を評価した。試料作製方法、試験方法は、試験例1と同様に行った。表4に実施例および比較例の低温焼なまし前後の引張強さ,強度増加率および高温耐へたり性評価試験後の残留せん断ひずみを示す。
【0041】
【表4】
Figure 0003975019
【0042】
実施例はいずれも高い高温耐へたり性を有しており、比較例も含めた傾向として、結晶粒径が小さいほど若しくはアスペクト比が大きいほど、良好な耐熱特性を示した。特に結晶粒径が大きすぎる比較例6およびアスペクト比が小さすぎる比較例7は、優れた高温耐へたり性を得ることができなかった。
【0043】
(試験例3)
次に、実施例1の鋼線を用いてばね加工を行い、加工後の低温焼なまし温度を400〜650℃に変化させて高温耐へたり性の評価を行った。この低温焼きなまし温度を450℃,500℃,550℃,600℃,650℃とした各ばね実施例12,13,14,15,16とする。また、比較例1であるSUS304にも同様に450℃,500℃,550℃で低温焼なましを行い、各ばねを比較例8,9,10とした。表5に実施例および比較例の低温焼なまし前後の引張強さ,強度増加率,及び高温耐へたり性評価試験後の残留せん断ひずみを示す。
【0044】
【表5】
Figure 0003975019
【0045】
実施例は、いずれも高い高温耐へたり性を有している。特に、低温焼なまし温度を500℃〜600℃とし、15%以上の強度増加が起きる場合、非常に高い高温耐へたり性を示すことが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の耐熱ステンレス鋼線はFe基であるオーステナイト系ステンレスの基地強化とC,Nなどの侵入型固溶元素やW,Mo,Nb,Siなどのフェライト生成元素の添加による固溶強化によって、SUS304やSUS316 などに対し安価で、耐熱性に優れる。特に、Co添加による金属間化合物の析出強化を行うことによって一層耐へたり性を改善できる。従って、耐へたり性に優れる耐熱ばねとしての利用が期待できる。
【0047】
また、本発明耐熱ばねの製造方法は、低温焼きなまし温度を特定することで、高温域(350℃以上500℃以下)においても耐へたり性に優れる耐熱ばねを得ることができる。
【0048】
本発明の耐熱ステンレス鋼線は350〜500℃での高温耐へたり性が優れることから、自動車排気系に用いられるフレキシブルジョイント部品であるボールジョイント,ブレード,三元触媒に用いられるニットメッシュなど、耐熱ばね材として適している。そして、固溶強化型合金であるため、析出強化型合金などと比較して歩留が良く、コスト上昇を小さくすることが可能で工業的価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐へたり性試験の試験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ばね

Claims (5)

  1. 重量%でC:0.02〜1.00およびN:0.02〜1.00を含み、かつ0.15≦C+N≦1.00で、
    さらにMn:0.02〜2.0,Cr:12〜25,Ni:8.0〜15.0およびMo:0.1〜4.0を含有し、
    かつNb:0.1〜3.0,Si:1.0〜3.5,Ti:0.1〜2.0およびW:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1種を含有し、
    残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなる耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線であって、
    低温焼なまし前の引張り強さが1300N/mm2以上2000N/mm2未満で、
    横断面の平均結晶粒径が0.5μm以上5μm未満で、
    縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)が2.8〜90.0であることを特徴とする耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線。
  2. 重量%でC:0.02〜1.00およびN:0.02〜1.00を含み、かつ0.15≦C+N≦1.00で、
    さらにMn:4.0〜25.0,Cr:12〜25,Ni:0.1〜6.0を含有し、
    かつMo:0.1〜4.0,Nb:0.1〜3.0,Si:1.0〜3.5,Ti:0.1〜2.0およびW:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1種を含有し、
    残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなる耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線であって、
    低温焼なまし前の引張り強さが1300N/mm2以上2000N/mm2未満で、
    横断面の平均結晶粒径が0.5μm以上5μm未満で、
    縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)が2.8〜90.0であることを特徴とする耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線。
  3. さらに重量%でCo:0.2〜2.0を含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐熱ばね用オーステナイト系ステンレス鋼線。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼線をばね加工したことを特徴とする耐熱ばね。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼線に、500℃以上600℃以下で低温焼なましを行い、15%以上引張り強さを増加させることを特徴とする耐熱ばねの製造方法。
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