JP2003064416A - 冷鍛性、温鍛性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

冷鍛性、温鍛性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法

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JP2003064416A
JP2003064416A JP2001249793A JP2001249793A JP2003064416A JP 2003064416 A JP2003064416 A JP 2003064416A JP 2001249793 A JP2001249793 A JP 2001249793A JP 2001249793 A JP2001249793 A JP 2001249793A JP 2003064416 A JP2003064416 A JP 2003064416A
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Hideki Nakagawa
英樹 中川
Hiroshi Yokota
博史 横田
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 冷鍛が難しいとされていたSUS630の加工性を
大幅に改善できる、冷鍛性、温鍛性に優れた析出硬化型
マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法を提供する。 【解決手段】 重量比にしてC:0.070%以下、Si:1.00%以
下、Mn:1.50%以下、S:0.015%以下、Cu:2.5〜4.0%、Ni:
3.50〜6.00%、Cr:14.00〜17.00%、Nb:0.15〜0.55%、N:
0.030%以下を含有し、かつC+N:0.090%以下及びNb/(C+N)
≧5.00を満足し、残部がFe及び不純物元素からなる鋼を
熱間圧延後室温まで冷却した後、980〜1080℃まで加熱
して15分〜6時間保持した後冷却する固溶化熱処理を施
し、次に850〜950℃に加熱、1〜16時間温度を保持し、
さらに700〜800℃まで冷却して1〜16時間温度を保持し
た後、マルテンサイト変態終了まで冷却する中間焼鈍処
理を施し、最後に600〜680℃に加熱する軟化焼鈍処理を
施す、析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、機械構造材、ステ
ンレス建築構造材の中で高強度と優れた耐食性を共に必
要とする冷鍛部品又は温鍛部品への使用に適し、優れた
冷鍛性、温鍛性を有するための析出硬化型マルテンサイ
ト系ステンレス鋼の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】SUS630等の析出硬化型ステンレス鋼は、
固溶化熱処理状態で冷間加工又は温鍛加工し、その後の
時効処理により高強度を得ることが可能な鋼種であり、
ステンレス鋼の中では最も高い強度を得ることができる
鋼種であるため、機械構造材料、建築構造材料等で高強
度と優れた耐食性を共に必要とする部位に使用されてい
る。 【0003】前記したようにSUS630等の析出硬化型ステ
ンレス鋼は、固溶化熱処理状態で所定形状への加工が施
されるため、優れた加工性を得るには、固溶化熱処理に
よって硬度をできるだけ下げる必要がある。それに対
し、実際に部品として使用する際には高強度を要求され
るため、時効処理により高硬度の得られることが要求さ
れる。 【0004】以上の要求に対し、従来から広く使用され
てきたSUS630は、固溶化熱処理を施して硬さを下げて
も、得られる硬さはHRC35程度と冷鍛、温鍛等の塑性加
工を容易に行うにはかなり厳しい硬さであり、冷鍛でボ
ルト等を製造する際に加工性の面で問題が生じていた。 【0005】上記課題を解決するための試みが現在まで
盛んに行われており、特許出願され公開されている。そ
の内容は、化学成分の添加範囲の最適化のみで低い硬さ
を得ることを特徴とする発明と、化学成分を適切な範囲
に特定した上で、さらに適切な熱処理を行って低い硬さ
を得ることを特徴とする発明の2種類に大きく分けられ
る。 【0006】前者に該当する発明としては、例えば特開
平8-85851号、特開平8-225894号、特開平8-311619号等
がある。これらの発明に共通することは、実際に製造さ
れ使用されているSUS630に比べC、N含有率を低減(SUS63
0の規格ではCは0.07%以下、Nは記載がなく、Cが0.07%
以下である限り、極力低減するかしないかに関係なくSU
S630の範囲内となるものであるが、実際には製造上の理
由から、Cは0.03〜0.05%、Nは0.025〜0.035%程度のも
のがほとんどである。)することによって固溶化熱処理
後の硬さを低減しようとすることを特徴としている点に
ある。そして、C、Nの低減によって問題となる結晶粒粗
大化による靭延性の低下や析出硬化処理後の強度低下を
C、N以外の成分添加量の最適化によって解決するための
方策について開示されている。 【0007】また、後者に該当する発明としては、例え
ば特開平6-172929号、特開平8-85822号等がある。これ
らの発明も前者の発明と同様に実際に製造されているSU
S630に比べC、N量を低減して固溶化熱処理状態での硬さ
低減を図る点では共通しているが、成分範囲の最適化に
加え、さらに熱間圧延時に焼鈍したり、固溶化熱処理条
件を最適化する等の方策によって硬さ以外の特性の劣化
を防止しつつ固溶化熱処理状態での硬さ低減を図ること
を特徴とするものである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た従来の発明には次の問題がある。C、N量の低減は固溶
化熱処理時の硬さを下げることだけを考えれば、確かに
効果的な方法であるが、製造しやすさという面から考え
ると、大きな問題がある。すなわち、ステンレス鋼の
C、N量の調整は製鋼時にAOD、VODによって酸化精錬する
ことにより行うのが通常であるが、通常レベルを超えた
低減をしようとすると、この処理時間が長くなり、生産
量が少量であれば対応可能であるが、常時生産するとな
ると、大きな負担となり、他鋼種の生産への影響が大き
い。 【0009】また、C、N量の低減は従来から明らかなよ
うに結晶粒の粗大化による靭延性の低下や、析出硬化処
理後の強度低下をもたらす。前記発明にはこの問題を解
決するための方策について記載されているが、いずれに
してもそのような問題が起きやすいことにかわりはな
く、C、N量が通常レベルのままでも優れた冷間加工性が
得られる方法が強く望まれていた。さらに、実際に成分
規格を変更する場合には、硬さだけでなく全ての要求特
性について問題がないか再検討されるのが普通であり、
容易にできることではない。従って、従来のSUS630の成
分のままで硬さを十分に低下させることが可能となれば
大きな普及の妨げとなる原因が一つ解消されることにな
り、産業上の価値は極めて大きいものとなる。 【0010】本発明はこのような課題を解決するために
成されたものであり、その目的とするところは、C、N量
がSUS630における通常量のままであっても時効処理前に
おいて優れた冷鍛性、温鍛性を得ることのできる析出硬
化型マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法を提供す
ることにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、重量
比にしてC:0.070%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、
S:0.015%以下、Cu:2.5〜4.0%、Ni:3.50〜6.00%、Cr:14.
00〜17.00%、Nb:0.15〜0.55%、N:0.030%以下を含有し、
かつC+N:0.090%以下及びNb/(C+N)≧5.00を満足し、残部
がFe及び不純物元素からなる鋼か、または耐食性改善の
ためのMo:0.30〜2.00%と、熱間加工性改善のための
B:0.0005〜0.0100%、Ca:0.0005〜0.0100%、Mg:0.0005〜
0.0100%、REM:0.0005〜0.0100%のうちの1種または2種
以上の、のうちの1種又は2種以上の元素を前記鋼
にさらに含有させた鋼を熱間圧延後室温まで冷却した
後、980〜1080℃まで加熱して15分〜6時間温度を保持
した後冷却するという固溶化熱処理を施し、次に850〜9
50℃に再加熱して1〜16時間温度を保持した後、700〜8
00℃まで冷却して1〜16時間温度を保持した後、マルテ
ンサイト変態が終了する温度まで冷却するという中間焼
鈍処理を施し、最後に600〜680℃に加熱して1〜16時間
温度を保持した後、室温まで冷却するという軟化焼鈍処
理を施すことを特徴とする冷鍛性、温鍛性に優れた析出
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法にあ
る。 【0012】本発明において注目すべきことは、SUS630
における通常の範囲を含む上記特定の組成のステンレス
鋼に対して、熱間圧延後に上記特定の条件で固溶化熱処
理、中間焼鈍処理、軟化焼鈍処理を行うことである。 【0013】固溶化熱処理後の硬さを低減するために
は、前記した通りC、Nをできるだけ低減した方が良いこ
とは前記した通りである。しかしながら、本発明では
C、Nを従来のSUS630に比べて大きく低減することなしに
優れた冷鍛性、温鍛性を確保することを目的としてい
る。そのため本発明では、C+N量に応じたNbを添加し、
固溶化熱処理(最初の加熱)時に再結晶により組織の均一
化を図るとともに、炭窒化物を十分固溶させ、これを中
間焼鈍処理時の加熱保持中にNb炭窒化物として析出させ
ている。この結果固溶強化に寄与するC、Nが減少し、硬
さの上昇を小さく抑えることができる。 【0014】そして、中間焼鈍処理により析出させたNb
炭窒化物は、中間焼鈍処理時の加熱保持及びその後に施
される軟化焼鈍処理時によって大きな炭窒化物へと粗大
化していく。その結果、C、N量が通常のレベルのままで
あっても冷鍛、温鍛が容易なレベルまで容易に硬さを下
げることができる。 【0015】また、この軟化焼鈍処理時の加熱保持中に
おいては前記炭窒化物の粗大化に加えてε-Cu相の析
出、粗大化と逆変態オーステナイトの生成が促進され
る。この結果、炭窒化物の析出、粗大化による効果との
相乗効果により、大きな硬さ低減効果が得られる。 【0016】次に本発明の製造方法の化学成分添加量の
範囲、熱処理条件の限定理由について以下に説明する。
なお、化学成分はJISのSUS630と一部が重複するもので
あるが、熱処理後の硬さ低減効果を大きくするためにSU
S630の範囲の中でも適切な範囲としているので、以下に
その理由を説明する。 【0017】C:0.070%以下、N:0.030%以下、C+N:0.090%
以下 C、Nは侵入型元素であり固溶強化により硬さを上昇さ
せ、加工性を低下させるため、冷鍛性、温鍛性改善を目
的とする本発明にとっては、可能な限り低減すべき元素
である。本発明ではNbの添加によってC、NをNb炭窒化物
として析出させ、固溶強化による硬さの上昇を防止して
いるが、C、Nが多いほど硬さが上昇することに変わりは
なく、できるだけ低減することが望ましい。しかしなが
ら、前記した通りC、Nの低減は製鋼設備への負担が大と
なり、製造性を低下させるため本発明では通常の製造条
件で得られる上限値に設定しており、C、N、C+Nの上限
をそれぞれ0.070%、0.030%、0.090%とした。 【0018】Si:1.00%以下 Siは固溶強化により素材硬さ上昇の原因となる元素であ
る。しかしながら、Siは脱酸剤として不可欠な元素であ
り、上限を厳しくしすぎると製造が難しくなるので、1.
00%までの範囲で添加できることとした。より望ましく
は、上限を0.40%とするのが良い。 【0019】Mn:1.50%以下 MnはSiと同様に固溶強化により素材硬さ上昇の原因とな
る元素である。従って、硬さ低減のためには極力低減す
る方が好ましいが、あまり上限を厳しく規制すると製造
が難しくなるので、上限を1.50%とした。 【0020】S:0.015%以下 Sは製造上不純物として存在している元素であるが、多
量に含有すると硫化物系の非金属介在物が増加し、鍛造
時に割れが発生しやすくなるので、上限を0.015%とし
た。 【0021】Cu:2.50〜4.00% Cuは固溶化熱処理後の時効処理により析出して高い強度
を得るためと優れた耐食性を確保するために不可欠な元
素であり、2.50%以上含有させることが必要である。し
かしながら、多量に含有させると熱間加工性が低下して
製造性が悪くなるとともに、前記した析出硬化による強
度向上効果が飽和するので、上限を4.00%とした。 【0022】Ni:3.50〜6.00% Niは本発明のステンレス鋼にとって必要な耐食性を確保
するための基本元素であるとともに、高温におけるδフ
ェライトの生成による熱間加工性の低下を抑えるために
必要な元素である。また、強力なγ相形成元素であり、
本発明で記載の熱処理後において適量の逆変態オーステ
ナイトを生成させ、硬さ低減に効果のある元素でもあ
る。従って、最低でも3.50%以上含有させる必要があ
る。 【0023】しかしながら、多量に含有させると、Ms点
が低下し固溶化熱処理後における組織中の残留オーステ
ナイトが増加して析出硬化能が低下し必要な強度が得ら
れなくなるので、上限を6.00%とした。 【0024】Cr:14.00〜17.00% Crは、ステンレス鋼の特徴である優れた耐食性を得るた
めの基本元素であり、最低でも14.00%以上、好ましくは
15.00%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に
含有させるとδフェライト量が増加し、熱間加工性や靱
性が劣化するので、上限を17.00%とした。 【0025】Nb:0.15〜0.55%、Nb/(C+N)≧5.00 NbはC、Nと結合して炭窒化物を形成し、固溶強化に寄与
するC、N量を減少させて熱処理後の硬さ低減に効果のあ
る元素である。また、Nbはいわゆる安定化効果によって
Cr炭化物の析出を防止し、耐食性を向上させる働きもあ
る。従って、C、Nの固溶強化による冷鍛性、温鍛性の低
下を防止するために必要十分な量をあらかじめ添加して
おく必要があり、下限を0.15%とした。 【0026】しかしながら、多量に含有させると、Crと
同様にδフェライトの生成を助長し熱間加工性や靱性が
劣化するので、上限を0.55%とした。なお、炭窒化物を
十分に生成させて、固溶強化により硬さを上昇させる
C、Nを減少させるためには、含有するC、Nの量に応じて
十分なNb量とする必要があり、その条件をNb/(C+N)≧5.
00とした。 【0027】Mo:0.30〜2.00% Moは実際に使用する部位の使用環境に耐えられる耐食性
を確保するために必要に応じ添加して、耐食性を向上す
ることができる元素である。そして、未添加の場合に比
べ優れた耐食性を明確に得るためには、最低でも0.30%
以上の含有が必要である。しかしながら、多量に含有さ
せると、δフェライト量が増加して熱間加工性が低下す
るとともに、靱性が低下するので、上限を2.00%とし
た。 【0028】B:0.0005〜0.0100%、Ca:0.0005〜0.0100
%、Mg:0.0005〜0.0100%、REM:0.0005〜0.0100%のうち1
種または2種以上 B、Ca、Mg、REMは熱間加工性の改善のために必要に応じ
て添加できる元素である。そして、前記効果を十分に得
るには、前記元素のうちの少なくとも1種以上を0.0005
%以上含有させることが必要である。しかしながら、多
量に含有しても効果が飽和するので、上限を各元素共に
0.0100%とした。 【0029】また、本発明では必須条件としては限定し
ていないが、製造上不純物として含有が避けられないH
は、多量に含有すると熱間圧延時に毛割れが発生しやす
くなるとともに、本発明で得られた鋼を用いて部品に製
造後の使用中において遅れ破壊を発生する可能性があ
る。従って、これらの不具合を防止するために、Hは、
0.0005%以下にその含有率を抑えることがより好まし
い。 【0030】次に、本発明の熱処理条件の限定理由につ
いて以下に説明する。第1段目の加熱温度を980〜1080
℃としたのは、通常の固溶化熱処理と同様に再結晶によ
り組織の均一化を図るとともに炭窒化物を十分に固溶さ
せるのに適切な温度であるからである。すなわち、980
℃未満では組織が均一化せず、炭窒化物が十分に固溶し
ない可能性があり、1080℃を超えるとδフェライトが生
成し、靱性、耐食性が劣化する可能性がある。そして、
再結晶による組織の均一化を図り、かつ炭窒化物を確実
に固溶させるには加熱保持温度の下限は1020℃とするの
が望ましく、δフェライトの生成を考慮すると、加熱保
持温度の上限は1060℃とするのが良い。また、加熱保持
時間は、炭窒化物を固溶させるのに十分な時間とする必
要があり、最低でも15分以上とし、上限は生産性の問題
から6時間とした。好ましくは2時間以下とするのが良
い。 【0031】次に、第2段目の熱処理(中間焼鈍処理)の
前半の再加熱温度を850〜950℃、後半の加熱温度を700
〜800℃の範囲で行うのは、第1段目の加熱で炭窒化物
が十分に固溶した状態となっており、さらにこの温度域
で保持することにより、Nb炭窒化物を十分に析出及び粗
大化させるためである。特に前半の加熱によって十分な
析出を図り、後半の加熱によって、析出させた炭窒化物
の粗大化を促進させる。この温度範囲より温度が高くて
も低くても炭窒化物の十分な析出及び粗大化がしにくく
なるため、この温度範囲とした。加熱保持時間はNb炭窒
化物の析出と粗大化が十分に起きるだけの必要な時間と
する必要があり、前半、後半共に下限を1時間とした。
処理時間を長くするほど炭窒化物の析出及び粗大化が進
行し、硬さ低減効果が大きくなるが、ある程度時間が経
過すると、それ以上は硬さ低下効果が飽和してくる。ま
た、当然生産性を考慮する必要があり、最低でも1時間
以上とし、上限は生産性の問題から16時間とした。な
お、硬さ低減効果を十分に得るためには、少なくとも前
半、後半のいずれか一方において4時間以上加熱保持す
ることが望ましい。 【0032】なお、前半の加熱と後半の加熱の間の冷却
速度は特に指定しないが、100℃/hr以上、より好ましく
は500℃/hr以上の速度とする方が良い。これは100℃/hr
未満の冷却速度であっても特性は大きく低下しないが、
冷却速度が遅くなると生産性が低下して、不利になるか
らである。100℃/hr以上の冷却速度であれば生産性の点
でも問題がなく、かつ後半の加熱保持によって炭窒化物
は十分に析出及び粗大化し、狙いとする硬さ低減効果を
得ることができる。 【0033】次に、中間焼鈍処理後においてはマルテン
サイト変態が完了するまで冷却する。その理由は、マル
テンサイト変態が十分に起きていない状態で再加熱し
て、その後の軟化焼鈍処理を行うと、軟化焼鈍処理によ
るε-Cu相の析出及び粗大化が不十分になるためであ
る。 【0034】本発明では、中間焼鈍処理の後、さらに第
3段目の加熱として、600〜680℃の温度で1〜16時間加
熱保持し、室温まで冷却するという軟化焼鈍処理を行
う。この熱処理は、中間焼鈍処理に加えて実施すること
により、Nb炭窒化物をさらに粗大化させて硬さ低減効果
をさらに大きくするために実施するものである。 【0035】また、この加熱保持によって、Nb炭窒化物
の粗大化と共にε-Cu相が析出、粗大化し、かつ逆変態
オーステナイトが適量生成され、さらに低い硬さを得る
ことができる。この軟化焼鈍処理の温度範囲を600〜680
℃としたのは、600℃未満では、析出したε-Cu相が十分
に粗大化しないため、かえって硬化してしまうという問
題があり、680℃を超えると、変態温度を超えてマルテ
ンサイト組織がオーステナイトに逆変態し、その後の冷
却時に再度オーステナイトがマルテンサイトに変態する
ため、硬さ低減効果が得られなくなるという問題が生じ
るからである。 【0036】以上説明した方法により、通常行われる固
溶化熱処理のみを施した場合に比べ低い硬さとすること
ができるため、優れた冷鍛性、温鍛性を得ることができ
る。但し、本発明の熱処理が施されたステンレス鋼は、
ε-Cu相が析出、粗大化し、かつ逆変態オーステナイト
が生成しており、そのまま時効処理しても十分に高い硬
度を得ることはできない。従って、冷鍛、温鍛によって
所定形状に加工した後、再度固溶化熱処理を行ってから
時効処理を施すことが必要となる。これにより、十分な
強度を得ることができる。また、本発明の熱処理により
低い硬さとすることができるので、以上説明した冷鍛
性、温鍛性だけでなく、当然のごとく切削性も同時に改
善することができる。 【0037】 【実施例】次に、本発明鋼の特徴を比較例と対比して、
実施例により説明する。表1に実施例として用いた供試
鋼の化学成分を示す。なお、供試鋼は短時間に多数の成
分の鋼の評価をするため、30kg真空誘導溶解炉によって
溶解した鋼塊を用い、1200℃に加熱して鍛伸することに
より準備したものである。 【0038】 【表1】 【0039】表1において、1〜5鋼は本発明の成分範
囲内の鋼であり、6〜8鋼はいずれかの成分が本発明で
規定する範囲を外れている比較鋼である。なお。6〜8
鋼のうち、8鋼はSUS630の成分範囲内の鋼であり、6鋼
はSUS630に対しSi含有率が高い鋼に耐食性改善のため、
Moを少量含有させた鋼であり、7鋼は、SUS630に対しNb
含有率が低い鋼に熱間加工性改善のためにCaを少量含有
させたものである。 【0040】これら各供試鋼について、熱処理後の硬
さ、変形抵抗について、室温〜300℃の温度範囲にて評
価した。以下に試験方法について説明する。まず、表1
に示す供試鋼全てに対し、表2に示す2条件のうちの条
件2の熱処理を施し、各特性を評価した。そして、本発
明による効果を明確にするために、本発明の成分範囲内
の鋼である1鋼とSUS630の成分範囲内の鋼である8鋼に
条件1の熱処理(従来実施されてきた固溶化熱処理)を
施した例(試験No.1、9)も同時に実施した。 【0041】 【表2】 【0042】(1)熱処理後の硬さの評価 冷鍛、温鍛時の加工のしやすさを調べるため、上記した
熱処理後の硬さを評価した。なお、温鍛性についても評
価するため、室温だけでなく200℃、300℃における硬さ
も高温硬さの測定できるビッカース硬さ試験機を使用し
て測定した(測定荷重500gf)。 【0043】(2)冷鍛、温鍛時の変形抵抗の測定 実際に加工した際の変形抵抗が熱処理によってどの程度
低減されるかについて調べるために、円筒型試験片を圧
縮加工した際の荷重を測定した。試験は、上記熱処理し
た供試材を機械加工して、直径5mm、高さ7.5mmの円筒型
圧縮試験片を準備し、富士電波工機(株)製の熱間加工
再現試験装置(サーメックマスター)を使用して、室
温、200℃、300℃の各温度で圧縮加工し、その加工時の
最大荷重を測定することにより評価した。荷重は圧縮率
が40%狙い(実績値39%)、60%狙い(実績値57%)の2種類
についてそれぞれ測定した。試験結果を表3に示す。 【0044】 【表3】 【0045】表3から明らかなように、化学成分が本発
明の範囲内である1〜5鋼に対して本発明の条件範囲内
の熱処理を行った鋼は、熱処理後の硬さが大幅に低い値
を示し加工性が優れていることが確認できた。 【0046】さらに、注目すべきことは従来通り固溶化
熱処理のみ行った鋼材が、室温と300℃の間で硬さ、
変形抵抗ともに明確な差が認められなかったのに対し、
本発明の熱処理を施した供試材は、室温から300℃に加
熱するだけで、硬さでHv50程度(従来例と比較すると最
大でHv100以上)、かつ変形抵抗も約20%低下(従来例と
比較すると約2/3倍に低下)できたことである。鍛造用
工具の強度が室温と300℃とでほとんど差がないことを
考えると、大幅な寿命改善が期待できる。また、200℃
の加熱でも、300℃加熱ほどではないが、大きな効果が
得られており、本発明の熱処理を施した後、室温に近い
低温加熱によって、加工性を大幅に向上できることがわ
かる。 【0047】それに対し、一部の成分が本発明で規定し
た範囲を外れている6〜8鋼は、固溶強化によって硬さ
を高める効果を有するSiの含有率が高かったり(6
鋼)、最も固溶強化効果の大きいC、Nと結合して硬さ低
減に寄与するNb含有率が低い(7、8鋼)ため、通常の
方法で熱処理した場合(試験No.9)に比べれば低い硬
さ、変形抵抗が得られたが、十分に大きな硬さ低減効果
を得られないことがわかった。 【0048】次に、熱処理条件を様々に変化させた場合
において、硬さ及び変形抵抗がどのように変化するかを
確認した別の実施例について以下に説明する。供試材と
して、前記表1に示した供試材のうち本発明の成分の条
件を満足する1鋼を用い、中間焼鈍条件(温度、保持時
間)、軟化焼鈍条件(温度、保持時間)を変化させて、
硬さ、変形抵抗がどのように変化するか調査した。な
お、第1段目の熱処理である固溶化熱処理については、
1040℃×30分という一定の条件で行った。結果を表4に
示す。 【0049】 【表4】【0050】表4から明らかなように、本発明で規定し
た成分範囲内の鋼を用いて熱処理をした場合でも、焼鈍
温度の条件がはずれていたり、保持時間が短かった場合
には、十分な効果が得られないことが判明した。従っ
て、本発明の効果を十分に得るためには、成分、熱処理
条件共に、前記した特定の範囲内として実施する必要が
あることがわかる。 【0051】なお、前記実施例では、第1段目の熱処理
である固溶化熱処理条件を1040℃一定で行った場合のみ
示したが、この加熱の狙いは、従来の固溶化熱処理と同
様に、組織の均一化と炭窒化物の固溶にあり、他の温度
(980〜1080℃)で実施しても、十分に組織は均一化し、
炭窒化物も固溶させることができるので、同様の効果を
得ることができる。 【0052】以上、様々な熱処理条件で実験した結果を
示したが、以上示した実施例は全て、多数の条件を短時
間に試験するために、30kg真空誘導溶解炉による溶解材
を用いて実験したものである。そこで、実製造設備で製
造した鋼についても同様な条件で熱処理を行ったが、同
じように優れた結果が得られることが確認された。 【0053】 【発明の効果】以上説明した通り、本発明では、成分範
囲を最適化し、特定の条件で熱処理することによって、
従来冷鍛がかなり難しい鋼種として位置づけられていた
SUS630(またはSUS630に耐食性改善元素(Mo)、熱間加工
性改善元素(B,Ca,Mg,REM)を追加添加した鋼)の硬さを
低く抑えることが可能となる。また、本発明の熱処理を
施した鋼は、300℃以下の室温にかなり近い温度に加熱
するだけで、大幅に変形抵抗を低減することができ、加
工に用いる金型やパンチの寿命を大幅に改善することが
可能となる。従って、締結ボルト等、耐食性と強度が共
に要求される部品を、析出硬化型ステンレス鋼を用いて
効率良く製造することが可能となる。また、低い硬さと
することができるので、切削性も同時に改善することが
できる。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量比にしてC:0.070%以下、Si:1.00%以
    下、Mn:1.50%以下、S:0.015%以下、Cu:2.5〜4.0%、Ni:
    3.50〜6.00%、Cr:14.00〜17.00%、Nb:0.15〜0.55%、N:
    0.030%以下を含有し、かつC+N:0.090%以下及びNb/(C+N)
    ≧5.00を満足し、残部がFe及び不純物元素からなる鋼
    か、または耐食性改善のためのMo:0.30〜2.00%と、熱
    間加工性改善のためのB:0.0005〜0.0100%、Ca:0.0005
    〜0.0100%、Mg:0.0005〜0.0100%、REM:0.0005〜0.0100%
    のうちの1種または2種以上の、のうちの1種又は
    2種以上の元素を前記鋼にさらに含有させた鋼を熱間圧
    延後室温まで冷却した後、980〜1080℃まで加熱して15
    分〜6時間温度を保持した後冷却するという固溶化熱処
    理を施し、次に850〜950℃に再加熱して1〜16時間温度
    を保持した後、700〜800℃まで冷却して1〜16時間温度
    を保持した後、マルテンサイト変態が終了する温度まで
    冷却するという中間焼鈍処理を施し、最後に600〜680℃
    に加熱して1〜16時間温度を保持した後、室温まで冷却
    するという軟化焼鈍処理を施すことを特徴とする冷鍛
    性、温鍛性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステン
    レス鋼の製造方法。
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