(1)モータの第1の参考形態
図1は、本発明の参考とするモータの第1の形態を示す一部切り欠き斜視図である。モータ1は、略円筒状の筐体5に対して回転自在に配設されたモータ回転シャフト12に固定された電機子11を具備し、電機子11は複数の電機子コイル(図示せず)から構成されている。モータ回転シャフト12上には円筒状の回転体(以下、「円筒体」と称する)である整流子13も固定されている(モータ回転シャフト12はすなわち整流子13の回転シャフトである)。整流子13の外周面上には、複数の帯状の導電性接触部すなわち整流子片13aが並設されている。各整流子片13aは、モータ回転シャフト12と平行に延在している。隣り合う2つの整流子片13a間には、絶縁部13bとしての溝が形成され、電気的絶縁を確保している。図示しないが、各整流子片13aは電機子11を構成する複数の電機子コイルの各々と電気的に接続されている。電機子11及び整流子13は、回転シャフト12とともに回転する回転子を構成している。
一方、筐体5の内面に固定された一対の固定子31A、31Bは、回転シャフト12を中心として電機子11の両側に対向して配置されている。固定子31A、31Bは、永久磁石でも界磁コイルを巻いた電磁石でもよい。
これらの電機子11、モータ回転シャフト12、整流子13及び固定子31A、31Bは公知の構成要素であり、多様な変形形態があり得る。
さらにモータ1は、整流子13の外周面に対して当接する一対のブラシ21A、21Bを設けている。これらのブラシ21A、21Bは、それぞれ導電性材料からなる円筒体で形成され、モータ回転シャフト(すなわち整流子13の回転シャフト)12を中心に整流子13を挟んで互いに反対側に配置されている。ブラシ21Aと21Bは基本的に同じ構造であるので、以下、一方のブラシ21Aについて構造を説明する。
ブラシ21Aの円筒体は、その回転シャフト22と一体に回転可能に軸支されている。これにより、整流子13が回転すると、その外周面に当接するブラシ21A、21Bが整流子13の回転力を受けて回転することができる。この結果、従来の固定・押圧型ブラシのように摺動のみによって当接するブラシに比べて、摩耗を格段に低減することができる(以下の、ブラシの回転を伴ういずれの形態においても同様)。
図示のブラシ21Aでは、円筒体の両端面の中心部からブラシ回転シャフト22がそれぞれ外方に延びており、ブラシ回転シャフト22は一対のベアリング22aにより回転自在に支持されている。一対のベアリング22aの各々は、適宜の連結部材を介して筐体5に連結されている。図示の例における連結部材は、各ベアリング22aを固定するコ字状支持部材24と、コ字状支持部材24の梁部両端と筐体5の内壁の間を連結する一対の脚部材25とを具備する。各脚部材25の基端部は、内壁に穿設された固定孔27に挿入され、各脚部材25の周囲には、スプリング26が圧縮状態で配設されている。このスプリング26の弾性作用によりブラシ21Aが整流子13の外周面に対して押圧される。これにより、ブラシ21Aの外周面と、整流子13の外周面との当接状態を保持することができる。
なお、ブラシ21Aと21Bは、整流子13を互いに反対側から均等に押圧するように配置されている(以下の各形態においても同様)。
さらに、ブラシ21Aとの電気的接続を確保するために、ブラシ回転シャフト22の外周上に導電体片23が弾性的に押し当てられている。導電体片23はコ字状支持部材24に連結され、詳細は示さないが、さらに外部の電源に接続されることによりブラシ21Aに給電する。但し、コ字状保持材24と筐体5とは電気的に絶縁されている。この図1においては、脚部材25を絶縁体とする。スプリング26は筐体5の電位である。よって、図示の例では、ブラシ回転シャフト22及びコ字状支持部材24もまた導電性材料で形成される。導電体片23は、例えば、従来の固定・押圧型ブラシと同様の部材を用いてもよい。ブラシ回転シャフト22には、整流子13の外周面のような凹凸がないため摩擦は小さく、導電体片23の摩耗はほぼ問題とならない。
なお、図1に概略的に破線で示した外部電源への給電ラインは、直巻モータの場合を例示しているが、モータは直巻モータに限定されない。
なお、図1に示したブラシ回転シャフト22、ベアリング22a、コ字状支持部材24、脚部材25及びスプリング26などの形態は一例であり、円筒体のブラシ21Aを回転可能に軸支しかつ整流子13の外周面に対して弾性的に当接させる構成であれば、多様な変形形態があり得る。
さらに特徴的な点として、図1に示すように、一対のブラシ21A、21Bの各円筒体の回転軸は、整流子13の回転軸と平行とならないように所定の角度をなして配置されている。図2は、ブラシの回転軸と整流子の回転軸との関係を詳細に示す図である。図2(A)は、図1の矢印Y方向に見たモータ1の主要部の平面図であり、図2(B)は、図1の矢印X方向に見たモータ1の主要部の正面図である。
図2(A)の平面図に示すように、整流子13の回転軸Aに対し、ブラシ21Aの回転軸B1は所定の角度θ1をなし、ブラシ21B(破線で示す)の回転軸B2は所定の角度θ2をなしている。また、図2(B)の正面図は、整流子13とブラシ21Aとの当接面P1、及び、整流子13とブラシ21Bとの当接面P2を示している。当接面P1とP2は互いに平行である。ここで、図2(A)に示した面は、これらの当接面P1及びP2に平行な面であり、また、回転軸A、B1及びB2に垂直な軸Cに対して垂直な面である。言い換えるならば、ブラシ21A、21Bの回転軸B1、B2と整流子13の回転軸Aとは、ブラシと整流子との当接面上への投影において互いに所定の角度をなしている。
以下、ブラシ回転軸と整流子回転軸とが、ブラシと整流子との当接面上への投影において所定の角度をなすようなブラシの配置を「ブラシの第1配置」と称することとする。
なお、図示の例では、回転軸B1の角度θ1と回転軸B2の角度θ2とは、回転軸Aに対して反対方向であるが、同方向であってもよい(以下の、他の参考形態及び実施形態におけるブラシの第1配置においても同じ)。角度θ1とθ2を同角度とすると、摩擦抵抗が均一となり、また、後述するブラシによる複数の整流子片への渡り(複数の整流子片への同時接触)においても、無駄がなくなり好適である。これは、2つのブラシの渡りの数が異なる場合、少ない方の数によって渡りの効果が決まるからである。なお、角度θ1及びθ2があまり大きくなるとブラシ21A、21Bが整流子13の回転に伴って回転することが容易とならないため、角度θ1及びθ2は、ブラシ21A、21Bが回転し易く、かつ、回転による摩耗低減効果が適度に得られる程度とする。
ブラシ21A、21Bの円筒体の回転軸B1、B2が、整流子13の回転軸Aと平行とならないよう配置したことにより、上記のようにブラシ21A及び21Bが整流子と接触するため、ブラシ21A、21Bの各々が整流子13の複数の整流子片13aにまたがって当接することになる。この結果、ブラシ21A、21Bが整流子13の個々の整流子片13aに対して離れる際にスパークが発生する度合いが少なくなる。前述の特許文献3〜8に掲げた従来の回転型ブラシのようにブラシ回転軸が整流子回転軸と平行である場合は、整流子円筒とブラシ円筒との線接触となるため、ブラシが1つの整流子片に対して接触している状態から一旦離れてから次の1つの整流子片に接触するという事象を繰り返すので、必然的にスパークが発生する(球状ブラシも同様)。これに対し本参考形態では、ブラシ21A、21Bが複数の整流子片13aに対して斜めに面接触するので、ブラシ21A、21Bは複数の整流子片に亘って接触している。このため、ブラシ21A、21Bは、回転中において、現在接触している整流子片から次の整流子片への移行を開始して次の整流子片との接触に至るまで、現在接触している整流子片との接触状態を維持できる。よって、整流子片に接続されている電機子コイルとの電流の遮断が発生しないためスパーク発生の程度が抑制される。
さらに、ブラシ21A、21Bが整流子13に対し斜めに当接することにより、ブラシ21A、21Bが整流子13の外周面上で回転するのみでなく、適度に摺動することにもなるため、双方に付着したごみや錆が削り取られて接触抵抗の劣化を防止できるという効果も得られる。
(2)モータの第2の参考形態
図3は、本発明の参考とするモータの第2の形態を示す概略的な縦断面図である。図3に示すモータ2は、前述の図1(A)に示したモータ1とほぼ共通する内部構成を有している。すなわち、モータ回転シャフト12に固定された電機子11及び整流子13が回転子10を構成し、整流子13の外周面には回転可能に軸支された一対の円筒体であるブラシ21A、21Bがそれぞれ当接している。以下、ブラシ21Aと21Bを合わせてブラシ21として示す。
図1(A)に示したモータ1との相違点は、モータ2の筐体が、第1筐体5A及び第2筐体5Bに2分割されており、いずれか一方がモータ回転シャフト12を中心に回動可能(破線両矢印)に構成されている点である。注記すると、図3のモータ2を所定の用途に用いる場合は、第1筐体5Aまたは第2筐体5Bのいずれか一方は必ず固定状態とし、他方のみを回動可能とする。つまり、1つの用途においてどちらも回動可能とするものではない。ここで、第1筐体5A及び第2筐体5Bの各々についての「固定状態」とは、モータ2を設置する架台や床等に対して不動とすることを意味する。これは、一般的なモータを設置し固定することと同じ意味である。
なお、回動方向は、正逆いずれにも回動可能としてよいが、用途に応じていずれか一方のみに回動可能としてもよい。
第1筐体5Aまたは第2筐体5Bを回動可能とする具体的機構は多様であり、例えば図3のように第1筐体5Aと第2筐体5Bの開口端面同士を対向させ、環状のベアリング5Cを介して連結する。なお、図示しないが、回動可能とした第1筐体5Aまたは第2筐体5Bを、任意の回動角で一時的に固定する手段も適宜備えているものとする。また、回動操作及びその一時的固定は、手動で行っても自動で行ってもよい。自動の場合は別途設けたモータ等で回動速度及び回動方向を制御可能とする。このような回動手段及び一時的固定手段は、公知のものである。
なお、モータ回転シャフト12は、第1筐体5Aに対してはベアリング5D1を介して回転自在に設けられ、かつ第2筐体5Bに対してはベアリング5D2を介して回転自在に設けられる。
一対の固定子31A、31Bは、第1筐体5Aの内面に固定され、第1筐体5Aと一体的に回動することができる。すなわち、第1筐体5Aを回動させると、固定子31A、31Bにより発生する界磁磁束すなわち磁束軸の角度を変更することができる。
一方、ブラシ21は、第2筐体5Bの内面に固定され、第2筐体5Bと一体的に回動することができる。すなわち、第2筐体5Bを回動させると、ブラシ21の電気角を変更することができる。
ここで、図4は、図3に示したモータ2の回動操作とそのモータ動作を説明するための図である。図中の回転子磁極中に示される破線白矢印は、回転子磁束の方向を示し、固定子磁極間に示される実線白矢印は、固定子磁束軸の方向を示す。また、固定子と回転子の間に示される実線黒矢印は回転子の回転方向を示す。先ず、図4(A)は、通常のモータにおいて固定子131A、131Bによる磁束軸の角度に対しブラシ121の電気角が90°に設定されているときの模式図である。これは一般的な設定である。ブラシの電気角が90°またはこれよりやや大きい角度範囲においては駆動トルクが最大となるため、外部電源を印加すると直ちにモータが回転し始める。しかしながら、その際の突入電流が非常に大きく、急激な回転トルクが生じるという問題もある。
図3に示したモータ2においては、図4(B)に示すように、固定子31A、31Bの発生する磁束軸を回転子磁束と同方向(破線)とする。これがブラシの電気角0°に相当する。図3において、第1筐体5Aまたは第2筐体5Bのいずれかを回動させることによりこの状態とすることができる。
図4(B)の状態で外部電源を印加した後、図4(C1)に示すように界磁の磁束軸の角度を回動角φだけ回動させる。この操作は、図3において第2筐体5Bを固定し第1筐体5Aのみを回動させることに相当する。この場合、ブラシ21は固定されたままで、固定子31A、31Bが回動する。磁束軸の角度を回動させ始めると回転子10は徐々に回転を始める。回動角φだけ回動した後、その位置で第1筐体5Aを固定する。すると、この回動角φでのトルクに応じて回転子10が回転を持続することとなる。なお、磁束軸の角度を反対方向に回動させれば、回転子10は逆回転する。
あるいは、外部電源を印加した後、図4(C2)に示すようにブラシ21の電気角を回動角φだけ回動させる。この操作は、図3において第1筐体5Aを固定し第2筐体5Bのみを回動させることに相当する。この場合、固定子31A、31Bは固定されたままで、ブラシ21が回動する。ブラシ21の電気角を回動させ始めると回転子10は徐々に回転を始める。回動角φだけ回動した後、その位置で第2筐体5Bを固定する。すると、この回動角φでのトルクに応じて回転子10が回転を持続することとなる。なお、ブラシ21の電気角を反対方向に回動させれば、回転子10は逆回転する。
図4(C1)または(C2)に示す回動手段を用いれば、始動時に回転子10を徐々に回転させ始めることができるため、突入電流が発生しない。また急激な回転トルクも生じないので安全である。
図4(C1)または(C2)に示す回転子10の回転中において、磁束軸の角度またはブラシの電気角の回動角φをさらに変更することもできる。例えば、回動角φを90°に近づけさらに90°を超すように回動させると、トルクが増して回転速度が上がる。さらに角度を増すと回転速度は上がるがトルクは減少する。このようにして例えば、電気自動車に用いればアクセル効果が得られる。続いて、回動角φを元に戻していくとブレーキ効果が得られる。
以上、図4(B)、(C1)及び(C2)を参照して説明した固定子の回動角φによる固定子の磁束軸の角度の変動、または、ブラシの電気角の回動角φの変動の操作は、図3に示したモータ2の使用形態の一例であり、他にも多様な使用形態があり得る。
(3)パンタグラフの参考形態
図5は、パンタグラフの参考形態を示す図である。図5(A)は、電車等の屋根部に設けたパンタグラフを示した斜視図である。図5(B)は、(A)におけるパンタグラフの概略上面図である。図5(C)は、(A)におけるパンタグラフの概略側面図である。
図5(A)に示すように、電車49の屋根に取り付けられたパンタグラフ40は、架線である導電体線路48と電気的に接触することにより給電される。パンタグラフ40は、導電性円筒体41を備えており、導電性円筒体41の外周面は導電体線路48との当接状態を保持しつつ回転可能に軸支されている。これにより、パンタグラフ40が導電体線路48に沿った進行方向(白抜矢印)に進行すると、その外周面に当接する導電体線路48との摩擦により導電性円筒体41が回転することができる。この結果、従来の摺動のみによって当接するパンタグラフに比べて、摩耗を格段に低減することができる。
図示のパンタグラフ40では、導電性円筒体41の両端面の中心部から回転シャフト42がそれぞれ外方に延びており、回転シャフト42は一対のベアリング42aにより回転自在に支持されている。一対のベアリング42aの各々は適宜の連結部材を介して電車49の屋根に連結されている。図示の例における連結部材は、各ベアリング42aを固定支持する柱体44であり、柱体44は回転シャフト42とは電気的に絶縁され、柱体44の周囲にはスプリング45が圧縮状態で配設されている。スプリング45の弾性作用により導電性円筒体41が導電体線路48に対して押圧される構成となっている。これにより、導電性円筒体41の導電体線路48に対する当接状態を保持する。
さらに、導電性円筒体41と電車49の所定の電気回路との電気的接続を確保するために、回転シャフト42の外周上に導電体片43(電車の車体49とは絶縁されている)が弾性的に押し当てられている。詳細は示さないが、導電体片43は適宜の経路で電車内部の動力系回路に接続されている。導電体片43と回転シャフト42との摺動は、摩擦ができるだけ小さくなるよう構成する。
なお、図5に示した回転シャフト42、ベアリング42a、柱体44及びスプリング45などの形態は一例であり、導電性円筒体41を回転可能に軸支しかつ導電性線路48に対して弾性的に当接させる構成であれば、多様な変形形態があり得る。
さらに特徴的な点として、図5(B)の上面図及び図5(C)の側面図に示すように、導電性円筒体41の回転軸B3が、導電体線路48に垂直な方向A2と平行ではない。回転軸B3と導電体線路垂直方向A2とは、導電性円筒体41と導電体線路50との当接面P3上への投影において互いに所定の角度θ3をなしている。これにより、導電性円筒体41と導電体線路48との当接状態は、回転のみでなく摺動も付加される。この結果、経年変化により生じる錆や付着物等が削ぎ取られるため、これらによる接触抵抗の劣化を防止できる。仮に、回転軸B3と導電体線路垂直方向A2とが平行であるとすると、両者は回転接触のみとなり摩擦が極度に少なくなるため、錆や付着物等により接触抵抗が増加する。
ただし、角度θ3があまり大きくなると導電性円筒体41が回転し難くなる。従って、角度θ3については、導電性円筒体41の回転による摩耗低減効果と、摺動による付着物除去効果との双方を得る上で最適な角度に設定する。
(4)モータのその他の参考形態
(4−1)回転体の整流子及びブラシを有する形態
図6は、モータの別の参考形態を示す一部切り欠き斜視図である。図6では、整流子及びブラシが図1の形態と相違する。図1に対応する構成要素については同じ符号で示す(以下の図において同じ)。図6では、円筒体である整流子13の内部が空洞であり、整流子13は円筒状の内周面を備えている。整流子13の内周面上には複数の帯状の整流子片14aが並設されている。この場合、整流子13の外周面上には整流子片は設けられていない。整流子13と一体的に回転するモーター回転シャフト12は、整流子13の内部空洞の中心軸上を貫通している。各整流子片14aは、モータ回転シャフト12(すなわち整流子13の回転シャフト)と平行に延在し、隣り合う2つの整流子片14a間には、絶縁部14bとしての溝が形成されている。なお、図6の例では、固定子に永久磁石を用いているので、給電は電機子コイルのみであり、2つのブラシに給電している。
以下、回転体である整流子の母線に対して平行に並設された整流子片の配置を、「ストレート配置」と称する。ストレート配置においては、整流子が円筒体の場合は整流子片が整流子回転軸と平行となるが、後述する形態のように整流子が円すい台状または円錐状の場合は、整流子片は整流子回転軸と平行とはいえない(ただし、当接面上への投影においては、整流子回転軸とブラシ回転軸は同一直線上にある)。しかしながら、いずれの場合も、回転体である整流子の母線に対して整流子片が平行となる。
図6ではさらに、回転可能に軸支された一対の円筒体のブラシ21C、21Dが、それぞれ整流子13の内周面と当接している。ブラシ21Cと21Dは、モータ回転シャフト12を中心に互いに反対側に位置する。詳細構成は図示しないが、ブラシ21C、21Dは、それぞれ整流子13の内周面に対して押し付けられるように押圧力を負荷されている(以下の各形態においても同様)。
なお、初期のブラシ形状を円筒体とした場合であっても、使用開始後に整流子13の内周面との摩擦によってブラシの両端部分が摩耗して図示のように回転楕円体に類似した形状となる。そして、ブラシ21C、21Dが整流子13の内周面にほぼ沿う形状となった後は、ブラシの摩耗はほとんどなくなる。
また、図6では、ブラシ21C及び21Dの回転軸(回転シャフト22)は、整流子13の回転軸(回転シャフト12)に対して所定の角度をなして配置されている。すなわち、ブラシの配置は第1配置である。ブラシ回転シャフト22の両端に設けたベアリング22aは、適宜の支持部材28a及び28bによりそれぞれ支持されている。一方の支持部材28aは、整流子13の内周面に嵌合するように配置されている。図示しないが、一参考例として、支持部材28aの外周にベアリング28a1を設け、適宜の連結部材により支持部材28aと支持部材28bとを連結して支持部材28aを支持部材28bに固定する構成とする。このような構成とすれば、支持部材28aは整流子13の回転には影響されない。他方の支持部材28bは適宜の手段により筐体5に固定される。なお、ブラシの支持機構は、図示の構成に限定されず多様な構成が可能である。図1の形態と同様に、導電体片23を介してブラシ回転シャフト22に対し給電される。
図6の形態においても、ブラシ21C、21Dが整流子13の回転力を受けて回転することによりブラシの摩擦が低減される。また、ブラシ回転軸が整流子回転軸と平行でないことにより、ブラシが複数の整流子片14aにまたがって当接するためスパークの発生度合いが少なくなる。さらに、ブラシ回転軸が整流子回転軸と平行でないことにより、ブラシと整流子の当接状態に回転のみでなく適度な摺動も付加される結果、ごみや錆が削り取られ接触抵抗の劣化等を防止できる。また、図6では、整流子片14aが内面に配設されているため、整流子13が高速回転しても整流子片14aが遠心力で飛び散ることはない。
図7(A)〜(C)はそれぞれ、モータのさらに別の参考形態を示す斜視図であり、概略的に整流子及びブラシの周囲のみを示している。その他の部分の構成は、例えば、図1または図6と同様である。
図7(A)の形態は、円筒体である整流子13が円筒状の外周面及び内周面を備えており、外周面上に複数の帯状の整流子片13aがストレート配置で並設されるとともに、内周面上にも複数の帯状の整流子片14aがストレート配置で並設されている。外周面上の整流子片13aと内周面上の整流子片14aのように互いに対応する整流子片同士は、1つの電機子に巻装された電機子コイル群のうち任意の1つの同一電機子コイル(電機子コイル中の部分的巻き線)に接続されている(以下の参考形態についても同様であり、この表裏関係にある整流子片の接続状態の概念を、以下単に「導通している」と表現する)。互いに対応する整流子片同士は、典型的には整流子13の周壁の表裏に位置するが、厳密に表裏の位置でなくともよい。両面に整流子片を設けた場合は、片面のみに設けた場合に比べて、2系統から給電されるため総合して2倍の導電率となる。外周面上の隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が、そして内周面上の隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。
図7(A)ではさらに、整流子13の外周面上に図1と同様の一対の円筒体のブラシ21A、21Bが当接しており、内周面上に図6と同様の一対の円筒体のブラシ21C、21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されており、整流子との摩擦を低減する効果がある。
また、外周面上のブラシ21Aと内周面上のブラシ21Cは、電気的に接続され同一の給電を受けて整流子13の周壁のほぼ表裏に位置する。ブラシ21Aが当接する複数の整流子片の各々と、ブラシ21Cが当接する複数の整流子片の各々とは、概ね互いに表裏に位置して導通している。同様に、外周面上のブラシ21Bと内周面上のブラシ21Dは、整流子13の周壁のほぼ表裏に位置する。このように、整流子13の両面に設けた整流子片にブラシから給電することにより、ブラシと整流子の接触面積が大きくなり総合して接触抵抗が低減されるためモータの効率が向上する(以下、外周面上及び内周面上の両面に整流子片及びブラシを設けた他の形態においても同様である)。
さらに、各ブラシは、整流子13に対して第1配置である。よって、各ブラシは複数の整流子片にまたがって当接することになり、スパーク抑止効果があると同時に、各ブラシと整流子とが摺動することでごみ・錆の削ぎ取り効果がある。
図7(B)の形態は、円筒体である整流子13の外周面上に複数の帯状の整流子片13aが並設され、そして各整流子片13aは、整流子13の円筒体の母線に対して所定の角度をなすように並設されている。すなわち、整流子片13aは、整流子13の回転軸に対して螺旋状に配置されている。隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が形成されている。
以下、回転体である整流子の母線に対して所定の角度をなして並設された整流子片の配置を、「スキュー配置」と称する。
図7(B)ではさらに、整流子13の外周面上に一対の円筒体のブラシ21A、21Bが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。さらに、これらのブラシ21A、21Bの各々の回転軸は、整流子13の回転軸と平行である。すなわち、各ブラシの回転軸と整流子13の回転軸は、各ブラシと整流子との当接面上への投影において同一直線上にある。
以下、ブラシ回転軸と整流子回転軸とが、ブラシと整流子との当接面上への投影において同一直線状にあるブラシの配置を「ブラシの第2配置」と称することとする。
図7(B)では、ブラシ回転軸は整流子回転軸と平行であるが、整流子片13aがスキュー配置であるので、ブラシが複数の整流子片13aにまたがって当接することになる。これは、整流子片がストレート配置(整流子円筒体の母線に平行)でブラシ軸が整流子軸に対して角度をなしている図1の構成に、ブラシが複数の整流子片に当接するという観点から類似する。これによりスパーク抑制の効果がある。なお、図7(B)では、ブラシと整流子が円筒体でありかつブラシ回転軸と整流子回転軸が平行であるため、ブラシと整流子の当接状態は、回転のみであり摺動の要素はない。
しかしながら、ブラシ外周面と整流子外周面の摺動摩擦を得るための一例として次の構成が可能である。図示しないが、整流子軸に第1のギアを備え、ブラシ21Aと21Bのブラシ軸にそれぞれ第2のギアを備え、第1のギアと第2の各ギアを噛合することにより、整流子軸の回転をブラシ軸に伝達する。さらに、整流子外周面の周速度とブラシ外周面の周速度に若干の差を与えることにより摺動摩擦を得る。これは公知技術であり、ギア比の設定で適度な周速度差が得られる。この構成では、整流子外周面の回転方向とブラシ外周面の当接面において両者の回転方向が同一となるため好適である。なお、整流子軸とブラシ軸の回転方向は逆である。
上記と同様に図示しないが、また別の例として、整流子軸に第1のプーリーを備え、ブラシ21Aと21Bのブラシ軸にそれぞれ第2のプーリーを備え、第1のプーリーと第2の各プーリーにベルト等で第1のプーリーから第2のプーリーに回転を伝達する。さらに、このベルトを第1のプーリーと第2のプーリーにたすき掛けとし、第1のプーリーと第2のプーリーの回転方向を逆とし、整流子外周面とブラシ外周面の当接面において両者が同方向にとなるようにする。これにより、上記のギアの例と同じようにブラシが整流子の回転を受けて回転することとなる。加えて、第1のプーリーの径と第2のプーリー径において、整流子外周面とブラシ外周面の当接する面の周速度に若干の差を与えるようプーリー径を設定する。この結果、適度な摺動摩擦が得られ、ごみ・錆等を除去可能となる。
以上、図7(B)に関し、整流子外周面の形態を説明したが、図7(A)やその他の形態での外周・内周に整流子片及びブラシを配設するものと同様に、この形態においても整流子内周面に整流子片を配設し内面ブラシを設けてもよい。この場合も、整流子片とブラシの接触面積が増してモータの効率が向上する。
図7(C)の形態は、円筒体である整流子13が円筒状の外周面及び内周面を備えており、外周面上に複数の帯状の整流子片13aがスキュー配置で並設されるとともに、内周面上にも複数の帯状の整流子片14aがスキュー配置で並設されている。外周面上の整流子片13aと内周面上の整流子片14aは、整流子13の周壁のほぼ表裏に位置するもの同士が互いに導通している。外周面上の隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が、そして内周面上の隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。
図7(C)ではさらに、整流子13の外周面上及び内周面上に、図7(A)同様の一対の円筒体のブラシ21A、21B及び一対の円筒体のブラシ21C、21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。また、整流子13の両面に設けた整流子片に対してブラシから給電することにより、ブラシと整流子の接触面積が大きくなり総合して接触抵抗が低減され、モータの効率が向上する。
さらに、各ブラシは、整流子13に対して第1配置である。好適には、ブラシが複数の整流子片にまたがることができるような向きで第1配置とする。すなわち、当接面上への投影において整流子軸に対して所定の角度をなすブラシ回転軸の方向は、整流子13の母線に対して所定の角度をなす整流子片13aまたは14aの方向とは逆方向(言い換えると、当接面上へ投影されたブラシ軸と、整流子片とがX状に交差する)であることが好ましい。これにより、スパークを抑制することができる。加えて、図7(C)では整流子片がスキュー配置であるため、図7(A)の整流子片がストレート配置の場合に比べて、整流子とブラシのなす角度を大きくすることなく適度な角度において、ブラシが適度な数の整流子片と当接することが可能となる。
なお、当接面上においてブラシ回転軸と整流子片とが、それぞれ整流子軸に対して同じ方向に角度をなす場合でも、ブラシ回転軸と整流子片とのなす角度を必要程度確保することが好ましい。つまり、当接面上でブラシ回転軸と整流子片とが平行とならないようにする。
図7(C)では、ブラシ回転軸と整流子回転軸が平行でないことから当接状態に回転のみでなく適度の摺動も含まれ、ごみや錆の削り取り効果がある。
図8は、モータのさらに別の参考形態であり、概略的に整流子及びブラシの周囲のみ示している。図8(A)は一部切り欠き斜視図であり、図8(B)は、整流子の回転軸Aの方向から見た正面図である。その他の部分の構成は、例えば、図1または図6とほぼ同様である。
図8(A)に示すように、円筒体である整流子13が円筒状の外周面及び内周面を備えており、外周面上に複数の帯状の整流子片13aがストレート配置で並設されるとともに、内周面上にも複数の帯状の整流子片14aがストレート配置で並設されている。外周面上の整流子片13aと内周面上の整流子片14aは、互いに対応する整流子片同士が導通している。互いに対応する整流子片同士は、典型的には整流子13の周壁の表裏に位置するが、厳密に表裏の位置でなくともよい。外周面上の隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が、そして内周面上の隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。
図8(A)ではさらに、整流子13の外周面上に図1と同様の一対の円筒体のブラシ21A、21Bが当接しており、内周面上に図6と同様の一対の円筒体のブラシ21C、21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。また、図8(B)の正面図に示すように、4つのブラシ21A、21B、21C、21Dの各々の回転軸は、整流子13の回転軸と平行に配置されている。
但し、外周面上のブラシ21Aが整流子片13a1に当接するとき、内周面上のブラシ21Cは、整流子片13a1と導通する内周面側の整流子片14a1には当接せず、近傍の整流子片14a2(外周面上の整流子片13a2と導通)に当接しているかまたはいずれの整流子片にも当接していない(すなわち整流子片間を移行中)。「近傍」とは、整流子片の分割数にもよるので厳密に規定できないが、外周面と内周面においてそれぞれ給電される各整流子片の電気角が大きく異なると電機子コイルへの給電状態により電機子が発生する磁束に影響を及ぼすことになるため、このような影響を及ぼさない程度とする。
同様に、外周面上のブラシ21Bが整流子片13a3に当接するとき、内周面上のブラシ21Dは、整流子片13a3と導通する内周面側の整流子片14a3には当接せず、近傍の整流子片14a4(外周面上の整流子片13a4と導通)に当接しているかまたはいずれの整流子片にも当接していない(すなわち整流子片間を移行中)。
図8では、整流子13の外周面上のブラシと内周面上のブラシの各々が、周方向にずれて配置されているため、1つのブラシが複数の整流子片にまたがって当接する場合と同じ効果を奏することができる。すなわち、外面ブラシ21Aは、外周整流子片13a1に対して左寄り(図8(B)において反時計方向寄り)に、そして内面ブラシ21Cは内周整流子片14a2に対して右寄り(同図において時計方向寄り)に当接するように配設される。これにより、整流子が回転(左右どちらでもよい)し、一方のブラシが一の整流子片から次の整流子片へと移行するとき(このとき、この一方のブラシはいずれの整流子片にも当接していない場合がある)、他方のブラシは必ずいずれかの整流子片との当接状態を維持したままとする構成が可能である。つまり、いずれのブラシも整流子片と当接しない瞬間が発生しない。この結果、スパークの発生を抑制できる。
このように、図8の形態によれば、ブラシ回転軸を整流子回転軸に対して第1配置とすることなく、また、整流子片をスキュー配置とすることなく、スパーク抑制の効果を得ることができる。
図8では、ブラシと整流子の回転軸が互いに平行であるので、ブラシが整流子の回転力を受けて自由に回転するのみでは、当接状態に摺動の要素はない。そこで、各ブラシの自由回転をある程度妨げるような所定の制動力を負荷すれば、各ブラシと整流子の当接面上での周速度に差が生じ、摺動を生じさせることができる。ブラシと整流子の摺動により、ごみ・錆の削り取り効果が得られる。図示しないがこの場合も、上記図7(B)で記載した例と同様にして整流子面とブラシ面に摺動摩擦を得ることができる。または、例えば、ブラシ21Aと21C(及びブラシ21Bと21D)の径に差を設け、両ブラシの回転軸間にベルト等による巻掛け伝導機構を設ければよい。または、ブラシの径を同じくする場合、表裏両方のブラシの回転軸にプーリー等を設け、この両プーリーの径を異ならせ、これらのプーリ間にベルト等で回転を伝達する方法(公知技術)がある。この場合も、外面ブラシと内面ブラシの回転軸の回転方向を逆とするようベルトをたすき掛けにし、整流子面と当接するブラシ面の回転方向を合わせるようにする。なお、後述する参考形態に示すように、ブラシがテーパ部を有する形状(例えば円すい台状)であれば摺動摩擦を得ることもできる。
図9(A)〜(D)はそれぞれ、モータのさらに別の参考形態を示す斜視図であり、概略的に整流子及びブラシの周囲のみを示している。その他の部分の構成は、例えば、図1または図6とほぼ同様であり、図9において省略している外面・内面ブラシも図1、6のようなブラシ保持及び給電機構を用いることができる。
図9(A)の形態は、円筒体である整流子13が円筒状の外周面及び内周面を備えており、外周面上及び内周面上に複数の帯状の整流子片13a、14aがそれぞれストレート配置で並設されるている。外周面上の整流子片13aと内周面上の整流子片14aは、互いに対応する整流子片同士が導通している(同一の電機子コイルに接続されている)。互いに対応する整流子片同士は、典型的には整流子13の周壁の表裏に位置するが、厳密に表裏の位置でなくともよい。外周面上の隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が、そして内周面上の隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。
図9(A)ではさらに、整流子13の外周面上に、一対の円すい台状の回転体であるブラシ21A、21Bが当接しており、また、内周面上には一対の円すい台状の回転体であるブラシ21C、21Dが当接している。ここで、ブラシ保持及び給電機構は、図1(外周面上の整流子及びブラシ)及び図6(内周面上の整流子及びブラシ)と同様とすることができる。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。また、整流子13の両面に設けた整流子片及びブラシを設けたことにより、給電回路が2系統となり接触抵抗が半減することになる。
各ブラシの回転軸と整流子13の回転軸とは、各ブラシと整流子13との当接面上への投影において同一直線上にあり、各ブラシは第2配置である。よって、図示のようにブラシ21Cの回転軸B1とブラシ21Dの回転軸B2は、整流子13の回転軸Aと交わる(図示しないがブラシ21A、21Bの各回転軸も同様)。
図9(A)では、ブラシ形状が円すい台状、すなわちテーパ部を有する回転体である。テーパ部とは、ブラシ回転軸に垂直な断面である円の径がブラシ軸方向に線形に変化している部分である(径の変化する方向をテーパ方向とする)。ブラシがテーパ部を有する一方、整流子13は円筒体であるため、ブラシの周速度と整流子13の周速度は、双方の当接面において少なくとも部分的に異なることになる。これは、当接面において、ブラシ側ではそのテーパ方向に沿って周速度が変化するのに対し、円筒体である整流子13側では周速度は一定だからである。この結果、当接面においてブラシと整流子13との摺動が生じる。つまり、各ブラシは、整流子13の回転力が伝達されて回転するが、同時に摺動も伴う。これにより、回転による摩擦低減の効果と、摺動によるごみ・錆等の削ぎ取り効果が得られる。ブラシ形状は円すい台状に限られず、テーパ部を有する回転体であれば、円筒体の整流子との間で摺動が生じる。なお、図9(A)では、外周面及び内周面にそれぞれ整流子及びブラシを配設した例を示したが、外周面または内周面のみに整流子及びブラシを配設する形態も存在する。これは上記または後述する形態についても同様である。
ブラシがテーパ部を有する形状の場合は、ブラシを傾斜配置としなくとも当接面上での周速度差を生じさせることができ、摺動による効果が得られる。
図9(B)の形態は、整流子13が円筒体であり、4つのブラシ21A、21B、21C、21Dが円すい台状の回転体であり、整流子片が両面にストレート配置で並設されている点は、図9(A)と同じである。図9(A)と相違する点は、4つのブラシが、整流子13に対して第1配置となっている点である。ブラシがテーパ部を有することに加えて、ブラシ回転軸が当接面上への投影において整流子回転軸に対し所定の角度をなしていることにより、整流子13との間の摺動がさらに大きくなり、ごみ・錆等の削ぎ取り効果がさらに大きくなる。また、ブラシが第1配置であることにより、ブラシが複数の整流子片にまたがって当接することになり、スパーク抑制の効果も得られる。
図9(C)の形態は、整流子13が円筒体であり、4つのブラシ21A、21B、21C、21Dが円すい台状の回転体であり、各ブラシが第2配置である点は、図9(A)と同じである。図9(A)と相違する点は、整流子13の外周面上及び内周面上における整流子片をスキュー配置で並設したことである。これにより、ブラシ回転軸と整流子回転軸が当接面上への投影において同一直線上にあってもブラシが複数の整流子片にまたがって当接することができ、スパーク抑制の効果が得られる。
図9(D)では、整流子13が円筒体であり、4つのブラシ21A、21B、21C、21Dが円すい台状の回転体であり、外周面上及び内周面上における整流子片をスキュー配置で並設した点は、図9(C)と同じである。図9(C)と相違する点は、各ブラシが、整流子13に対して第1配置となっている点である。但し、当接面上への投影においてブラシ回転軸が整流子回転軸に対してなす角度は、整流子片が整流子の母線に対してなす角度とは逆方向に開く(言い換えると、当接面上に投影されたブラシ回転軸と整流子片とがX状に交差する)ことが好ましい。すなわち、一対のブラシ回転軸は互いに逆方向に向いていることが好ましい。ブラシがテーパ部を有すること及び整流子片がスキュー配置であることに加えて、ブラシが第1配置であることにより、整流子回転軸とブラシ回転軸の当接面上への投影においてなす角度を大きくすることなく適度な角度において、適度な摺動摩擦が得られまた適度な数の整流子片と当接することが可能となる。ごみ・錆等の削ぎ取り効果も良好であり、スパーク抑制効果も良好となる。
図10(A)〜(D)はそれぞれ、モータのさらに別の形態を示す斜視図であり、概略的に整流子及びブラシの周囲のみを示している。その他の部分の構成は、例えば、図1または図6とほぼ同様である。
図10(A)の形態は、円すい台状の回転体である整流子13の外周面上に複数の帯状の整流子片13aがスキュー配置で並設されている。隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が形成されている。整流子13の外周面上に、一対の円筒体のブラシ21A、21Bが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、従来の固定・押圧型ブラシと比較して整流子との摩擦を低減できる。
各ブラシは、整流子13に対して第2配置である。よって、図示のようにブラシ21Aの回転軸B1とブラシ21Bの回転軸B2は、整流子13の回転軸Aと交わる。このブラシ配置に対し、整流子片はスキュー配置されているので、各ブラシが複数の整流子片13aにまたがって当接することができ、スパークを抑制できる。
図10(A)では、ブラシ21A、21Bは円筒体であるが、整流子13がテーパ部を有する回転体であるため、ブラシの周速度と整流子13の周速度は、双方の当接面において少なくとも部分的に異なる。これは、当接面において、ブラシ側ではその周速度が一定であるのに対し、整流子13側ではテーパ方向に沿って周速度が変化するからである。この結果、当接面においてブラシと整流子13との摺動が生じる。よって、各ブラシは、整流子13の回転力を受けて回転するが、同時に摺動も発生する。これにより、回転による摩擦低減の効果と、摺動によるごみ・錆等の削ぎ取り効果が得られる。なお、各ブラシを円すい台状としてもよい。
整流子がテーパ部を有する形状の場合は、ブラシを第1配置としなくとも当接面上での周速度差を生じさせることができ、摺動による効果が得られる。なお、この形態においても、他の形態と同様に、整流子の内面に整流子片をさらに配設して内面ブラシを設けることができ、それによる上記の効果も得られる。
図10(B)の形態は、円すい台状の回転体である整流子13の外周面上及び内周面上にそれぞれ複数の帯状の整流子片13a、14aがストレート配置で並設されている。隣り合う整流子片13a、14a間にはそれぞれ絶縁部13a、14bが絶縁を構成するための溝が形成されている。整流子13の外周面上には一対の円すい台状の回転体であるブラシ21Aと21Bが、内周面上には一対の円すい台状の回転体であるブラシ21Cと21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。
各ブラシは、整流子13に対して第1配置である。一方、整流子片13a、14aはストレート配置であるが、各ブラシが複数の整流子片13a、14aにまたがって当接することができ、スパークを抑制できる。
また、ブラシのテーパ方向(例えば径の小さくなる方向とする)と整流子13のテーパ方向が、逆となるようにブラシを配置している。これにより、ブラシと整流子13の当接面においてそれぞれの周速度が異なることとなって摺動が生じ、ごみ・錆等の削ぎ取り効果が得られる。この整流子が円すい台状であってブラシが第1配置である形態において、別の例として、円筒体のブラシを用いてもよい。円筒体のブラシの場合も、複数の整流子片にまたがり、かつ適度な摺動摩擦が生じるためである。
図10(C)の形態は、円すい台状の回転体である整流子13の内周面上に複数の帯状の整流子片14aがスキュー配置で並設されている。隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。整流子13の内周面上に、一対の円筒体であるブラシ21C、21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。
各ブラシは、整流子13に対して第2配置である。よって、図示のようにブラシ21Cの回転軸B1とブラシ21Dの回転軸B2は、整流子13の回転軸Aと交わる。このブラシの第2配置に対し、整流子片はスキュー配置されているので、各ブラシが複数の整流子片14aにまたがって当接することができ、スパークを抑制できる。
図10(C)では、ブラシ21C、21Dは円筒体であるが、整流子13がテーパ部を有する回転体であるため、ブラシの周速度と整流子13の周速度は、双方の当接面において少なくとも部分的に異なる。この結果、当接面においてブラシと整流子13との摺動が生じる。よって、各ブラシは、整流子13の回転力を受けて回転するが、同時に摺動も伴う。これにより、回転による摩擦低減の効果と、摺動によるごみ・錆等の削ぎ取り効果が得られる。なお、各ブラシが円すい台状でもよい。なお、この形態においても、他の形態と同様に、整流子の外面に整流子片をさらに配設し、外面ブラシを設けることができ、それによる上記の効果も得られる。
図10(D)の形態は、円すい台状の回転体である整流子13の外周面上及び内周面上に複数の帯状の整流子片13a、14aがスキュー配置で並設されている。隣り合う2つの整流子片13a間には絶縁部13bとしての溝が形成され、隣り合う2つの整流子片14a間には絶縁部14bとしての溝が形成されている。整流子13の外周面上に一対の円すい台状のブラシ21A、21Bが当接し、内周面上にも一対の円すい台状のブラシ21C、21Dが当接している。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。
各ブラシは、整流子13に対して第2配置である。一方、整流子片はスキュー配置であるので、各ブラシが複数の整流子片13a、14aにまたがって当接することができ、スパークを抑制できる。
また、ブラシのテーパ方向(例えば径の小さくなる方向とする)と整流子13のテーパ方向が、逆となるようにブラシを配置している。これにより、ブラシと整流子13の当接面においてそれぞれの周速度が異なることとなって摺動が生じ、ごみ・錆等の削ぎ取り効果が得られる。なお、各ブラシが円筒体でもよい。
図6〜図10に示した形態の構成と作用効果との関係をまとめると、次の通りである。
図6、図7、図9及び図10に示した円筒状または円すい台状の整流子をもつ各形態において、ブラシの摩擦低減効果を得るには、ブラシが整流子との当接状態を保持しつつ回転可能であれば足り、そのためには回転体のブラシが回転可能に軸支されていればよい。
また、図6、図7、図9及び図10に示した円筒状または円すい台状の整流子をもつ各形態において、スパーク抑制効果を得るには、ブラシが複数の整流子片にまたがって当接できれば足りる。ブラシが複数の整流子片にまたがって当接できるならば、整流子片の配置並びにブラシの形状及び配置はいずれを組み合わせてもよい。
またさらに、図6、図7、図9及び図10に示した円筒状または円すい台状の整流子をもつ各形態において、摺動によるごみ・錆等の削ぎ取り効果を得るには、ブラシ回転軸と整流子回転軸が当接面上への投影において所定の角度をなすか、または、ブラシの周速度と整流子の周速度とが当接面上で少なくとも部分的に異なっていれば足りる。これを実現できるならば、ブラシの形状及び配置はいずれを組み合わせてもよい。
加えて、整流子の内面に整流子片を配設するか、外面に整流子片を配設するか、または整流子の表裏両面に整流子片を配設するか、それに合わせて、内面ブラシ、外面ブラシを配設するか、または表裏両面にブラシを配設するかは、それぞれ用途に適合するよう選択できる。
図11(A)〜(D)はそれぞれ、モータのさらに別の参考形態を示す図であある。
図11(A)は、モータの主要部のみを示す斜視図である。電機子11、回転シャフト12及び固定子31A、31Bは、図1または図6の形態と同様である。本形態では、整流子15が回転シャフト12に対して垂直な面をもつ平板を備えている。この平板の一方の面を整流子面とし、複数の整流子片15aを配置している。複数の整流子片15aは、整流子回転軸Aを中心とする放射方向に並設されている。各整流子片15aの中心側端部は電機子11の方へ曲げられ、電機子11内の所定の電機子コイルと電気的に接続されている。隣り合う2つの整流子片15a間には絶縁部15bとしての溝が放射方向に形成されている。
一対の円筒体であるブラシ21A、21Bが整流子面上に当接している。ブラシ21Aと21Bは、整流子回転軸Aを中心として互いに反対側に配置されている。各ブラシは、各々の回転軸周りに回転可能に軸支されていることにより、整流子との摩擦を低減できる。また、各ブラシは、整流子面に対して押し付けられる押圧力を負荷されることにより当接状態を保持する。
各ブラシの回転軸B1、B2は、整流子面上への投影において放射方向と所定の角度をなしている。これは、上述の整流子が円筒状または円すい台状の場合におけるブラシの第1配置に相当する。よって、整流子が平板状の場合において、ブラシ回転軸が整流子面上への投影において放射方向と所定の角度をなすようなブラシの配置を「ブラシの第1配置」と称することとする。所定の角度は、放射方向に対して正または負のいずれでもよい。このブラシの第1配置により、各ブラシが複数の整流子片15aにまたがって当接することができ、スパークを抑制できる。また、ブラシの第1配置に加えて、円筒体であるブラシの周速度と整流子15の周速度が当接面上で異なるため、ブラシと整流子の当接状態に摺動の要素が含まれることになる。これにより、ごみ・錆の削ぎ取り効果が得られる。
平板の整流子は、図11(A)のように正面のみに整流子面を設ける場合は、背面を電機子11の前面と接合させてもよい。また平板の厚さは任意である。
図11(B)の形態は、図11(A)の形態における整流子及びブラシの変形例である。整流子15の正面上には、図11(A)と同様に円筒体のブラシ21A、21Bが配置され、各ブラシの位置に対応する背面上に一対の支持材29A、29bがそれぞれ設けられている。なお、整流子15の背面上には整流子片は設けられていない)。支持材29A、29Bは、ブラシ21A、21Bが整流子15の整流子面に対して及ぼす押圧力に抗するために設置されている。支持材29A、29Bは、円すい台状の回転体であり、回転軸C1、C2周りに回転可能に軸支されている。各支持材の回転軸は、整流子背面上への投影において放射方向である。また、各支持材のテーパ部は整流子回転軸Aへ向かって径が小さくなっており、整流子15との当接面上で互いに周速度が一致するように形成されている。これにより、各支持材は、ほとんど摩擦を生じることなく整流子15の面上を回転する。すなわち、各支持材は、整流子の背面上においてブラシと表裏関係の位置で移動を伴わない自転(回転)運動を行ない整流子平板を支持する。
図11(C)の形態は、図11(A)の形態における整流子及びブラシの別の変形例である。この例では、整流子15の両面が整流子面となっている。図には現れてないが、背面上の整流子片も正面上の整流子片と同様に整流子回転軸を中心として放射方向に並設されている。典型的には、整流子15の両面においてほぼ表裏に位置する整流子片同士が同一の電機子コイルに接続されている。
整流子15の正面上には、図11(A)と同様に円筒体のブラシ21A、21Bが当接している(但し、ブラシ21Bが放射方向となす所定の角度の向きが反対向きである)。さらに、ブラシ21A、21Bの位置に対応する背面上にも円筒体のブラシ21C、21Dが当接している。表裏に位置するブラシ21Aと21C、あるいは、ブラシ21Bと21Dは、互いに支持材の役割も果たす。平板の整流子15の両面を整流子面とし、両面のブラシから給電することにより接触面積がほぼ2倍となり接触抵抗が半減する。
図11(D)の形態は、図11(A)の形態における整流子及びブラシの別の変形例である。この例では、ブラシ21A、21Bの形状が円すい台状の回転体となっている。各ブラシは、第1配置とされており、ブラシが複数の整流子片にまたがることによりスパーク抑制効果が得られる。また、ブラシの第1配置に加えて、ブラシのテーパ部が、整流子回転軸Aへ向かって径が大きくなる向きで配置されているため、ブラシと整流子15との当接面上での周速度が異なる。これにより、各ブラシと整流子15の当接状態に摺動の要素が付加され、ごみ・錆等の削り取り効果が得られる。
図12(A)〜(E)はそれぞれ、モータのさらに別の参考形態を示す図であある。ブラシと整流子の部分のみを概略的に示している。
図12(A)の形態は、図11(A)の形態における整流子及びブラシの別の変形例である。本例では、整流子面上において整流子片15aが、放射方向に対し所定の角度をなすように並設されている。隣り合う2つの整流子片15a間には絶縁部15bとしての溝が形成されている。
ブラシ21A、21Bは円すい台状の回転体であり、ブラシ回転軸は、整流子面上への投影において放射方向に配置されている。これは、上述の整流子が円筒状または円すい台状の場合におけるブラシの第2配置に相当する。よって、整流子が平板状の場合において、ブラシ回転軸が整流子面上への投影において放射方向であるようなブラシの配置を「ブラシの第2配置」と称することとする。
整流子片15aが放射方向に対して傾斜しているため、各ブラシが複数の整流子片15aにまたがって当接でき、スパークを抑制できる。
ブラシのテーパ部は、整流子回転軸Aに向かって太くなる向きで配置されているため、ブラシと整流子15との当接面上での周速度が異なる。これにより、各ブラシと整流子15の当接状態に摺動の要素が付加され、ごみ・錆等の削り取り効果が得られる。なお、図12(A)において、ブラシを第1配置としてもよいが、ブラシが複数の整流子片にまたがることができるように、ブラシと整流子片とが略平行とならないようにする。また、図12(A)において、ブラシを円筒上としてもよい。
図12(B)の形態は、図11(A)の形態における整流子及びブラシの別の変形例である。本例では、整流子面上において整流子片15aが、中心から周囲に向かって渦巻き状に並設されている。隣り合う2つの整流子片15a間には絶縁部15bとしての溝が形成されている。ブラシ21A、21Bは円筒体であり、ブラシは、整流子15に対して第2配置とされている。
整流子片15aが渦巻き状であるため、各ブラシが複数の整流子片15aにまたがって当接でき、スパークを抑制できる。
ブラシは円筒体であるので、ブラシと整流子15との当接面上での周速度が異なる。これにより、各ブラシと整流子15の当接状態に摺動の要素が付加され、ごみ・錆等の削り取り効果が得られる。
図12(C)の形態は、図12(A)の形態において、さらに図11(B)で示した支持材29A、29Bを設けたものである。
図12(D)の形態は、図12(A)または(B)に示した整流子面を、整流子15の両面に設け、4つのブラシ21A、21B、21C、21Dをそれぞれ当接させている。
図12(E)の形態は、図11及び図12(A)〜(D)の形態の変形例であり、円錐状の回転体である整流子15’を有する形態である。外周面上の整流子片15’aは、整流子回転軸を中心として放射方向に並設され、各整流子片の間に絶縁部15’bの溝が形成されている。円筒体のブラシ21A、21Bは、第1配置とされ、各ブラシの位置に対応する裏面側には支持材29A、29B(テーパ状にして整流子15‘の裏面の周速度と一致させる)がそれぞれ設置されている。図12(E)の形態の効果は、上述の図11(B)とほぼ同じである。なお、図12(E)の円錐状の整流子15’は、上述の図10に示した円すい台状の整流子の変形とみなすこともできる。
図11及び図12に示した各形態の構成と作用効果との関係をまとめると、次の通りである。
図11及び図12に示した平板状または円錐状の整流子をもつ各形態において、ブラシの摩擦低減効果を得るには、ブラシが整流子との当接状態を保持しつつ回転可能であれば足り、そのためには回転体のブラシが回転可能に軸支されていればよい。
また、図11及び図12に示した平板の整流子をもつ各形態において、スパーク抑制効果を得るには、ブラシが複数の整流子片にまたがって当接できれば足りる。ブラシが複数の整流子片にまたがって当接できるならば、整流子片の配置並びにブラシの形状及び配置はいずれを組み合わせてもよい。
またさらに、図11及び図12に示した平板の整流子をもつ各形態において、摺動によるごみ・錆等の削ぎ取り効果を得るには、ブラシ回転軸の整流子面上への投影において放射方向に対し所定の角度をなすか、または、ブラシの周速度が整流子面上で少なくとも部分的に異なっていれば足りる。これを実現できるならば、ブラシの形状及び配置はいずれを組み合わせてもよい。
加えて、整流子の一方の面に整流子片を配設するか、他方の面にも整流子片を配設するか、または整流子の両面に整流子片を配設するか、それに合わせて、一方の面のブラシ、他方の面のブラシを配設するか、または両面にブラシを配設するかは、それぞれ用途に適合するよう選択できる。
(4−2)歯車の整流子及びブラシを有する形態
図13は、整流子とブラシを歯車で構成した、モータの別の参考形態を示す斜視図であり、概略的に整流子及びブラシのみを示している。その他の部分の構成は、例えば、図1と同様である。
整流子161は、回転シャフト12に取り付けられた第1の歯車からなり、整流子回転軸Aを軸として回転する。第1の歯車における各歯がそれぞれ整流子片16aを構成している。整流子片16aは導電体であり、その表面は歯先面16a1とその両側面16a2及び16a3とから形成されている。隣接する歯と歯の間の歯溝部分は絶縁部16bであり全整流子片16aは電気的に絶縁されている。図13では、第1の歯車は平歯車であり、整流子片16a及び絶縁部16bは、整流子回転軸Aに平行である。第1の歯車の歯数は、整流子片16aの数で決定され、図示のものは一例である。
一対のブラシ61A、61Bは、それぞれブラシ回転シャフト22に取り付けられた第2の歯車からなる。これらの第2の歯車も平歯車である。ブラシ61A、61Bは、全体または少なくとも外面が導電体である。ブラシ61A、61Bは、整流子回転軸Aを中心に互いに反対側に配置され、それぞれブラシ回転軸B1、B2を軸として回転可能である。ブラシである第2の歯車は、整流子である第1の歯車と噛合するように形成される。第1と第2の歯車は双方とも平歯車であるから、整流子回転軸Aとブラシ回転軸B1、B2とは平行である。第2の歯車の径及び歯数は適宜設定される。ブラシ61A、61Bは、それぞれ整流子161に対して押し付けられるように押圧力を負荷される(以下の、他の形態においても同じ)。
図13の形態では、ブラシ61A、61Bと整流子161とを互いに噛合する歯車としたことにより、双方の接触が確実となり電気的接続が安定する。
また、図13に示すように、2つの歯車が完全に噛合するときには、当接面r1、r2が形成され、整流子161(第1の歯車)の歯の2つの側面16a2及び16a3(但し谷を構成する)が、それぞれブラシ61A(第2の歯車)の歯の2つの側面6b2及び6b3(但し山を構成する)と当接する。通常、2つの歯車が完全に噛合するとき、一方の歯車の歯先面16a1または6a1と、他方の歯車の歯溝面6bまたは16bとが対向するが、その間には若干の間隙がある。
2つの歯車の動力伝達には、互いに噛合する2つの歯部分の側面同士の摺動接触(滑り接触)を伴う。両歯車の回転に伴い、噛合部分における2つの歯の側面同士の当接状態は変化するが、当接面r1(整流子片の側面16a2とブラシの側面6a2との当接)、r2(整流子片の側面16a3とブラシの側面6a3との当接)のうち少なくとも一方は維持される。つまり、いずれかの整流子片16aの側面16a2とブラシ61Aのいずれかの歯部分6aの側面6a2とが接触状態にあるか、または、いずれかの整流子片16aの側面16a3とブラシ61Aのいずれかの歯部分6aの側面6a3が接触状態にある(ブラシ61Bについても同様)。よって、ブラシ61A、61Bと電機子コイルとの遮断状態は発生せず、スパークを抑制できる。また、この2つの歯の側面同士の滑り接触により、表面のごみ・錆等を削り取る効果がある。
さらに、2つの歯車の径及び歯のピッチを適宜設定すれば、同時に複数の整流子片16aにブラシ61A、61Bが接触することができる。例えば、同じ径の歯車の場合歯のピッチを細かく(歯数を多く)するほど、同時に接触する歯数が増える。このように複数の歯同士が噛合することによって、ブラシ61A、61Bと整流子片16aとの接触状態を確実に維持でき、スパークを抑制できる。
図14は、ブラシと整流子を歯車で構成した別の形態を示し、(A)は斜視図であり、(B)は模式的な平面図である。
整流子161である第1の歯車は、図13の形態と同じ平歯車であり、各歯が整流子片16aであり、各歯溝部分が絶縁部16bである。一方、一対のブラシ62A、62Bである第2の歯車は、斜歯歯車であり、各歯部分6a及び各歯溝部分6bが螺旋状にねじれている。ブラシ62A、62Bは、整流子回転軸Aを中心に互いに反対側に配置され、それぞれブラシ回転軸を軸とし回転可能である。ブラシである第2の歯車は、整流子である第1の歯車と噛合するように形成される。第1の歯車は平歯車であり、第2の歯車は斜歯歯車であるから、図14(B)の平面図に示すように、ブラシ62A、62Bの回転軸B1、B2は、整流子161の回転軸Aと所定の角度をなす。図示の例では、ブラシ回転軸B1とB2がそれぞれ整流子回転軸Aに対して反対方向に所定の角度をなしているが、同じ方向に所定の角度をなしてもよい。以下、整流子及び2つのブラシを、図14(B)の平面図のように見た場合を「平面視」と称することとする(他の参考形態及び実施形態でも同じ)。
図14の形態においてもブラシ62A、62Bは整流子161の回転に伴って整流子と噛合しつつ回転するため、ブラシと整流子の間の確実な電気的接続が得られる。特に、斜歯歯車を用いたことにより軸力が働くため、軸力が作用する当接面での押圧・摩擦が大きくなり、より確実な接続状態となる。また、噛合部分においては、歯と歯の当接面において滑り接触するため、ごみ・錆等の削り取り効果がある。
また、ブラシが斜歯歯車であることから、回転時には、ブラシの1つの歯は整流子の1つの歯の一方の端部側から徐々に当たり始め、その当接部分が次第に整流子の歯の中央部に移行し、そして他方の端部側に最後に当たることとなる。例えば、図14(A)のように、ブラシ62Aの任意の隣り合う3つのブラシ歯を符号s1、s2及びs3で示し、これらと噛合する整流子161の隣り合う3つの整流子歯をそれぞれ符号t1、t2、t3で示す。また、図14(B)の矢印で示すように回転し、整流子161の軸方向の一方の端部を符号16dで、他方の端部を符号16eで示す。ブラシ歯s3が整流子歯t3の一方の端部16dの近傍に当たっているとき、ブラシ歯s2は整流子歯t2の中央部に当たっており、ブラシ歯s1は整流子歯t1の他方の端部16e近傍に当たっている。このことは、ブラシ62Aの複数の歯が、整流子161の複数の歯すなわち複数の整流子片16aに同時に接触することを意味する。ブラシ62Bについても同様である。これにより、ブラシが常に複数の整流子片と接触しており、電機子コイルとの遮断が発生しないためスパークを抑制できる。図14の形態では、ブラシが斜歯歯車であるので、図13の形態に比べてブラシを複数の整流子片と接触させることが容易である。
なお、図14の形態の変形形態として、ブラシを平歯車とし、整流子を斜歯歯車としても同様の効果が得られる。また、図14の形態では、平面視における2つのブラシの各回転軸が整流子回転軸となす角度が逆方向であるが、同じ方向であってもよい(但し、一方のブラシの斜歯の向きが図14の場合とは逆になる)。
図15は、ブラシと整流子を歯車で構成した別の形態を示す斜視図である。
整流子162である第1の歯車は、斜歯歯車であり、整流子片16aである各歯及び絶縁部16bである各歯溝部分が螺旋状にねじれている。そして、一対のブラシ62A、62Bである第2の歯車もまた斜歯歯車であり、各歯部分6a及び各歯溝部分6bが螺旋状にねじれている。ブラシ62A、62Bは、整流子回転軸Aを中心に互いに反対側に配置され、それぞれブラシ回転軸を軸として回転可能である。ブラシである第2の歯車は、整流子である第1の歯車と噛合するように形成される。第1と第2の歯車は双方とも斜歯歯車であるから、ブラシ62A、62Bの回転軸B1、B2を、整流子161の回転軸Aと平行にしてもブラシは複数の整流子片と接触できる。回転軸の平行配置は、設定が容易であるので好ましい。あるいは、図13の形態のように、平面視にて回転軸同士が所定の角度をなすようにも配置できる。
図15の形態においてもブラシ62A、62Bは整流子162の回転に伴って整流子と噛合しつつ回転するため、ブラシと整流子の間の確実な電気的接続が得られる。また、ブラシと整流子の双方が斜歯歯車であることから、軸力が働くため、軸力が作用する当接面での押圧・摩擦が大きくなり、より確実な接続状態となる。また、噛合部分においては、歯と歯の当接面において滑り接触するため、ごみ・錆等の削り取り効果がある。
さらに、ブラシと整流子の双方が斜歯歯車であることから、ブラシの1つの歯は、整流子の1つの歯の一方の端部から徐々に当たり始め、その当接部分が次第に中央部に移行し、そして他方の端部に最後に当たることとなる。よって、図14の形態と同様にブラシ62A、62Bの複数の歯が、整流子162の複数の歯すなわち複数の整流子片に同時に接触することができる。この結果、スパークを抑制できる。図14の形態と図15の形態とは、2つの歯車の径及び歯のピッチを同等に設定すれば、同じ効果が得られる。
図15の変形形態として、整流子162を斜歯歯車のままで、ブラシ62A、62Bを図13の形態の平歯車に替え、平面視にて各ブラシ回転軸が整流子回転軸と所定の角度をなすようにしてもよい(図14の形態の変形形態と同じになる)。
(4−3)整流子及びブラシに凹凸を有する形態
図16は、本発明によるモータの一形態を示し、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。概略的に整流子及びブラシのみを示すが、その他の部分の構成は、例えば、図1と同様である。
整流子171は、回転シャフト12に取り付けられた略円筒体の外周面上に複数の整流子片17aがストレート配置で設けられ、隣り合う整流子片17aの間には絶縁部17bが設けられている。図16の整流子171の基本形状は図13に示した平歯車の整流子に類似しているが、図1〜図12に示した各整流子のうち、外周面上に整流子片をストレート配置したものであれば、いずれを基本形状としてもよい。
整流子171の外周面上には、各整流子片17aと交差する方向(整流子の円周方向)に所定の幅w1の複数の凹部17cが延在し、そして凹部17cに沿って所定の幅w2の複数の凸部17dが延在している。図16では、各整流子片17aと交差する凹部17c及び凸部17dは、整流子171の回転軸Aを中心とする円形状に形成されている。
なお、1つの整流子片17a上においては、複数の凹部17cと凸部17dが交互に存在し、1つの整流子片17aを構成する全ての凹部17c及び凸部17dの少なくとも表面は導電体から構成され導通している。図16(B)に示す通り、1つの整流子片17a上にある凹部17cと凸部17dの間には側面17d1、17d2が存在する。1つの凸部17dの両側面17d1、17d2(1つの凹部17cの両側面でもある)は、凸部17dの頂面に向かって先細となるように斜面とすることが好適であるが、両側面が垂直(凹部17cの底面に対して)でもよい。
一方、ブラシ71A、71Bでは、略円筒体の外周面上に所定の幅W3の複数の凸部7dが延在し、そして凸部7dに沿って所定の幅w4の複数の凹部7cが延在している。ブラシ71A、71Bはそれぞれ回転可能に軸支されている。図16(B)に示すように、平面視において、ブラシ71Aの回転軸B1は整流子回転軸Aに対して所定の角度をなしている。ブラシ71Aと整流子171との当接部分においては、ブラシ71Aにおける凸部7d及び凹部7cが、整流子171における凹部17c及び凸部17dと、互い違いに組み合っている。ブラシ71Bについても同様である。
図16(B)に示すように、ブラシ71Aと整流子171の各々の凹部と凸部は、必ずしも全く隙間無く嵌合する必要はないが、ブラシ71Aの1つの凸部7dの両側面は、凸部7dの頂面の頂面に向かって幅が狭くなるように斜面とすることが好適であるが、両側面が垂直(凹部7cの底面に対して)でもよい。
整流子に対しブラシをスプリング等で押圧しているので、当接部分においては、ブラシ71Aの凸部7dの両側面(斜面状が好適である)が、整流子171のいずれかの凹部17cの側面17d1、17d2にそれぞれ当接することが可能である。これにより、ブラシと整流子との接触面積が大きくなり接触抵抗を低減できる。
なお、ブラシ71Aの凸部7dの頂面と、整流子171の凹部17cの底面とは、接触させないことが好ましい。これは、ブラシ71Aの凸部7dの頂面と、整流子171の凹部17cの底面を接触させると、側面での接触が安定的に確保できなくなるためである。図16(B)にはブラシ71Bを示していないが、ブラシ71Aと同様であり、ブラシ71Bの回転軸も整流子回転軸Aに対して平面視にて所定の角度をなしている。この角度は回転軸B1のなす角度に対して同方向または逆方向でもよい。
また、平面視にてブラシ回転軸と整流子回転軸とが所定の角度をなすようにブラシを配置したことにより、ブラシが複数の整流子片17aと当接するためスパークを抑制できる。
また、ブラシが整流子の回転力を受けて回転することにより摩擦を低減できると同時に、ブラシが整流子に対して摺動もすることによりごみ・錆等の除去効果が得られる。この摺動は、平面視にてブラシ回転軸と整流子回転軸とが所定の角度をなすようにブラシを配置したことにより発生する。加えて、この摺動は、整流子及びブラシにおける凹部と凸部の径の違いにより当接する凹部と凸部の斜面部分において周速度差を生じることによっても発生する。
図16の変形形態として、ブラシ回転軸を整流子回転軸と平行に配置した形態がある。この場合も、整流子及びブラシの径及び整流子片の数を適切に設定すれば、ブラシの凸部が隣合う2つの整流子片の凹部と常に接触するように形成できる。ブラシが2つの整流子片に渡って接触できれば、スパーク抑制効果が十分得られる。また、回転軸同士が平行であっても、凹部と凸部における上記の周速度差により摺動を生じ、ごみ・錆等の除去効果が得られる。
図17は、図16の変形形態を示す斜視図である。
図17の形態では、整流子片17aは整流子172の外周面において軸方向に延在し、この整流子片17aには隣接する整流子片17a同士と交差する方向(すなわち、略円周方向)に延在する傾斜状の両側面を有する凹部17c及び凸部17dが複数形成され、よって、これらが整流子軸方向に交互に配置される結果、2つの斜面17d1及び17d2から形成されることになる。凹部17cの最深部及び凸部17dの最頂部は、それぞれ線状若しくは幅の狭い面状である。なお、整流子片の凹部及び凸部の少なくとも表面は、すべて導通している導電体から構成されている。また、他の形態と同様に、各整流子片17aを絶縁する絶縁部17bも備えている。
一方ブラシ72A、72Bはそれぞれ、整流子172に設けた凹部17c及び凸部17dと互い違いに組み合うことができる凸部7d及び凹部7cを外周面上に形成している。よって、整流子172の凸部17dと凹部17cが共有するの2つの斜面17d1及び17d2は、ブラシ72Aの凹部7cと凸部7dが共有する斜面7c1及び7c2とは、当接する。このブラシ及び整流子の各斜面同士の当接状態は、斜面全体での当接状態ではなく部分的な当接状態でもよい。また、凹部の最深部と凸部の最頂部の間に隙間があってもよい。また、図17では、ブラシと整流子における凹部及び凸部の各斜面を略平坦面で示しているが、これは一例であり、別の例としては、各斜面を凸部の頂点から凹部の底部にかけて凹曲面で形成してもよい(すなわち、最頂部17dと最深部17cとの間を渡る部分を凹曲面とする)。この場合、ブラシに形成されている斜面7c1、7c2も整流子片の各斜面に嵌合するように凸曲面とする。すなわち、ブラシの凸部の頂点7dから凹部の底部7cかけて凸曲面とする。これは、変形形態として後述するブラシ軸が整流子軸と平行な場合であり、整流子片とブラシの接触面積が増すことになる。
凹部と凸部の斜面形状によって当接面の大きさが調整でき、ブラシと整流子との当接状態を適宜設定することができる。ただし、図17のようにブラシ軸と整流子軸が平面視にて所定の角度をなす場合であっても、ブラシが整流子の回転力を受けて回転できるような斜面形状とする。よって、ブラシ軸を整流子軸に対して所定の角度をなして当接させる場合は、歯の噛み合いに少し余裕をもたせる(この場合、斜面全体での当接状態ではなく部分的な当接状態となる)。なお、この整流子軸に対してブラシ軸に所定の角度を与えて当接する場合の具体的一例として、ブラシの頂部7dと軸方向に隣り合う頂部7dの間隔を、整流子片の頂部17dと軸方向に隣り合う頂部17dの間隔よりも大きくすることにより実現できる。なお、整流子に対してブラシはスプリング等の弾性材により適度に押圧されている。
図17の形態においても、整流子及びブラシの接触面積が大きくなるため接触抵抗が低減され、図16の形態よりもさらに大きな接触面積が得られる。また、図16の形態と同様にブラシ回転軸は、平面視にて整流子回転軸に対し所定の角度をなしているため、ブラシが複数の整流子片にまたがることができ、スパークを抑制できる。さらに、ブラシが整流子の回転力を受けて回転することにより摩擦を低減できると同時に、整流子及びブラシの双方の当接面に周速度差が発生することからブラシが整流子に対して摺動もすることによりごみ・錆等の削ぎ取りの効果が得られる。
図17の変形形態として、ブラシ回転軸を整流子回転軸と平行に配置した形態がある。この場合も、整流子及びブラシの径及び整流子片の数を適切に設定すれば、ブラシの凸部が隣合う2つの整流子片の凹部と常に接触するように形成できる。具体的一例として、整流子の円周方向に並ぶ整流子片の本数を多くして、この円周方向に隣り合う整流子片の間隔を狭くすることにより、ブラシが複数の整流子片に接触できるようにする。ブラシが2つの整流子片に渡って接触できれば必要にして充分であり、スパーク抑制効果が十分得られる。また、回転軸同士が平行であっても、凹部と凸部における周速度差により摺動を生じ、ごみ・錆等の除去効果が得られる。
図18は、図16の変形形態を示し、(A)は整流子の斜視図であり、(B)は整流子と一対のブラシの側面図である。
図18の形態では、整流子173の略円筒体の外周面上に複数の整流子片17aがスキュー配置で設けられ、隣り合う整流子片17aの間には絶縁部17bが設けられている。整流子173の基本形状は、図15に示した斜歯歯車の整流子に類似しているが、図1〜図12に示した各整流子のうち、外周面上に整流子片をスキュー配置したものを基本形状としてもよい。
図18の形態においても、図16の形態と同様に、整流子173が、整流子片17aと交差する方向(すなわち、整流子の円周方向)に延在する凹部17c及び凸部17dを備え、凹部17c及び凸部17dは整流子回転軸Aを中心とする円形状に形成されている。ブラシ71A、71Bは、図16の形態におけるブラシと同じであり、凸部7d及び凹部7cがブラシ回転軸B1、B2を中心とする円形状に形成されている。
図18(B)の側面図に示すように、ブラシ71A、71Bの回転軸B1、B2は、整流子回転軸Aと平行である。ブラシ71A、71Bの各々と整流子173との当接部分においては、ブラシにおける凸部7d及び凹部7cが、整流子における凹部17c及び凸部17dと、互い違いに組み合っている。
図18の形態では、図16の形態と同様にブラシと整流子との接触面積が大きくなり、接触抵抗を低減できる。この場合も、ブラシと整流子のそれぞれ凸部7d、17dと凹部7c、17cの側面が斜面であってこれらの斜面同士が当接することが好適であり、凸部の頂面と凹部の底面とは非接触とする。
また、整流子片17aがスキュー配置であるため、ブラシが複数の整流子片17aに渡って当接でき、スパークを抑制できる。図18(B)は側面図であるが、その中央部分に破線のブラシ71Aを示している。これは、ブラシが複数の整流子片に渡ることを理解しやすいように、平面視におけるブラシ71Aの位置を示したものである。
また、ブラシは、整流子の回転力を受けて回転可能であるため摩擦を低減できる。同時にブラシの凸部と凹部はそれぞれ、整流子の凹部と凸部に対して摺動する(凹凸の周速度差による)ため、ごみ・錆等の削ぎ取り効果も得られる。なお、この形態も他の形態と同様にブラシは整流子に適度に押圧されている。
図19は、図16の形態の変形形態であり、一対のブラシの一方のみと整流子とを示す平面図である。
図19の形態では、整流子181の略円筒体の外周面上に複数の整流子片18aがストレート配置で設けられ、隣り合う整流子片18aの間には絶縁部18bが設けられている。図示の整流子181は略円筒体であるが、図1〜図15に示した各整流子のうち、外周面上に整流子片をストレート配置したものを基本形状としてもよい。
図19の形態では、整流子181が、整流子片18aと交差する方向に延在する凹部18c及び凸部18dを備え、凹部18c及び凸部18dは整流子回転軸Aに対し螺旋状に形成されている。一対のブラシのうちの一方であるブラシ81Aの外周面上には、ブラシ回転軸B1に対し螺旋状に凸部8d及び凹部8cが形成されている。ブラシ81Aと整流子181との当接部分においては、ブラシにおける凸部8d及び凹部8cが、整流子における凹部18c及び凸部18dと、互い違いに組み合っている。平面視において、ブラシ回転軸B1は、整流子回転軸Aに対して所定の角度をなしている。図19には現れないが、一対のブラシのうち整流子181を挟んで反対側に位置する他方のブラシについても同様である。
図19の形態では、ブラシ及び整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が、当接部分において互い違いに組み合うことにより、ブラシと整流子との接触面積が大きくなり、接触抵抗を低減できる。また、ブラシと整流子は、ブラシ及び整流子に螺旋状の凸部及び凹部を形成した場合においても、ブラシと整流子のそれぞれの凸部8d、18dと凹部8c、18cの側面(斜面とすることが好適)同士が当接し、凸部の頂面と凹部の底面は非接触であることが好適である。
また、ブラシと整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が螺旋状であるので、ブラシと整流子の間に軸力が作用するため摺動摩擦が大きくなり、さらに整流子及びブラシの凹部と凸部に起因する周速度差によっても摺動摩擦を生じるため、ごみ・錆等を取り除く効果がある。
また、整流子片18aがストレート配置であるのに対し、平面視にてブラシ回転軸が整流子回転軸に対し所定の角度をなしているので、ブラシが複数の整流子片18aに渡って当接でき、スパークを抑制できる。
また、螺旋状の凹部と凸部が互い違いに組み合うことにより、ブラシは、整流子の回転に伴って確実に回転し、ブラシと整流子の電気的接続が安定する。
図19の変形形態として、ブラシ回転軸を整流子回転軸と平行に配置した形態がある。この場合も、整流子及びブラシの径及び整流子片の数を適切に設定すれば、ブラシの凸部が隣合う2つの整流子片の凹部と常に接触するように形成できる。ブラシが2つの整流子片に渡って接触できれば、スパーク抑制効果が十分得られる。また、回転軸同士が平行であっても、凹部と凸部における周速度差により摺動を生じ、ごみ・錆等の除去効果が得られる。
図20は、図19の形態の変形形態であり、一対のブラシと整流子とを示す側面図である。
図20の形態では、整流子182の略円筒体の外周面上に複数の整流子片18aがスキュー配置で設けられ、隣り合う整流子片18aの間には絶縁部18bが設けられている。図示の整流子182は略円筒体であるが、図1〜図15に示した各整流子のうち、外周面上に整流子片をスキュー配置したものを基本形状としてもよい。
図20の形態では、図19の形態と同様に、整流子182が、整流子片18aと交差する方向に延在する凹部18c及び凸部18dを備え、凹部18c及び凸部18dは整流子回転軸Aに対し螺旋状に形成されている。また、一対のブラシ82A、82Bの外周面上には、ブラシ回転軸B1、B2に対し螺旋状に凸部8d及び凹部8cがそれぞれ形成されている。ブラシ82A、82Bと整流子182との当接部分においては、ブラシにおける凸部8d及び凹部8cが、整流子における凹部18c及び凸部18dと、互い違いに組み合っている。
図20の形態では、ブラシ及び整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が、当接部分において互い違いに組み合うことにより、ブラシと整流子との接触面積が大きくなり、接触抵抗を低減できる。この形態でも、ブラシと整流子のそれぞれの凸部8d、18dと凹部8c、18cの側面同士が当接し、凸部の頂面と凹部の底面は非接触であることが好適である。
また、ブラシと整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が螺旋状であるので、ブラシと整流子の間に軸力が作用するため摺動摩擦が大きくなり、さらに整流子及びブラシの凹部と凸部に起因する周速度差によっても摺動摩擦を生じるため、ごみ・錆等を取り除く効果がある。
また、ブラシ回転軸B1、B2が整流子回転軸Aと平行であるのに対し、整流子片18aがスキュー配置であるので、ブラシが複数の整流子片18aに渡って当接でき、スパークを抑制できる。
また、螺旋状の凹部と凸部が互い違いに組み合うことにより、ブラシは、整流子の回転に伴って確実に回転するため電気的接続が安定する。
図21は、図19の形態の変形形態であり、一対のブラシの一方のみと整流子とを示す平面図である。
図21の形態は、整流子片18aをスキュー配置とした点が図19の形態と相違する。平面視におけるブラシ回転軸B1の、整流子回転軸Aに対する角度は、整流子片18aのスキュー配置の方向と逆向き(または同方向であって、スキュー方向とブラシ軸方向に適度な角度をもたせる)とする。これにより、図19の整流子片がストレート配置の場合に比べて、ブラシがさらに多くの整流子片18aにまたがることができ、スパーク抑制効果が向上する。図示されていない他方のブラシについても同様である。
図21の形態においても、ブラシ及び整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が、当接部分において互い違いに組み合うことにより、ブラシと整流子との接触面積が大きくなり、接触抵抗を低減できる。この形態でも、ブラシと整流子のそれぞれの凸部8d、18dと凹部8c、18cの側面同士が当接し、凸部の頂面と凹部の底面は非接触であることが好適である。
また、ブラシと整流子にそれぞれ設けた凹部と凸部が螺旋状であるので、ブラシと整流子の間に軸力が作用するため摺動摩擦が大きくなり、さらに整流子及びブラシの凹部と凸部に起因する周速度差によっても摺動摩擦を生じるため、ごみ・錆等を取り除く効果がある。
(4−4)整流子及びブラシの外形の変形形態
図22(A)〜(D)はそれぞれ、本発明のモータにおけるブラシ及び整流子の基本形状である回転体の変形形態を概略的に示す斜視図である。上述の各形態の中で、主として円筒体または略円筒体の整流子またはブラシに対して適用できる。
図22では、一例として、図15に示した略円筒体の斜歯歯車からなるブラシ62A、62B及び整流子162に適用した例を示す。
図22(A)の形態では、整流子162の外形が、中央部の径が大きく両端部の径が小さくかつ曲線からなる母線をもつ回転体である。実際には、整流子162の外周面上には、歯車の歯である整流子片16aと歯溝部分である絶縁部16bが設けられる(以下の形態において同じ)。斜歯歯車であるので、整流子片16aがスキュー配置となる。
一方、ブラシ62A、62Bの外形は、中央部の径が小さく両端部の径が大きくかつ母線が曲線である回転体であり、当接部分において整流子162の外周面に沿うことができる。ブラシ62A、62Bの外周面上には、歯車の歯部分6aと、歯溝部分6bが設けられる。
なお図22(A)に示したブラシ及び整流子の各外形は、ブラシ及び整流子が歯車でない場合、例えば、図1〜9に示したブラシ及び整流子が円筒体の形態における外形の変形として適用でき、また、図16〜21に示したブラシ及び整流子が略円筒体で凹部及び凸部を有する形態の外形の変形としても適用できる。外形を除くブラシ及び整流子としての構成は各形態で前述した通りとする。(以下の(B)〜(D)の形態において同じ)。
図22(B)の形態では、整流子162の外形が、中央部の径が小さく両端部の径が大きくかつ曲線からなる母線をもつ回転体である。
一方、ブラシ62A、62Bの外形は、中央部の径が大きく両端部の径が小さくかつ曲線からなる母線をもつ回転体であり、当接部分において整流子162の外周面に沿うことができる。
図22(C)の形態では、整流子162の外形が、中央部の径が大きく両端部の径が小さくかつ中央で折れた2直線からなる母線をもつ回転体である。
一方、ブラシ62A、62Bの外形は、中央部の径が小さく両端部の径が大きくかつ中央で折れた2直線からなる母線をもつ回転体であり、当接部分において整流子162の外周面に沿うことができる。
図22(D)の形態では、整流子162の外形が、中央部の径が小さく両端部の径が大きくかつ中央で折れた2直線からなる母線をもつ回転体である。
一方、ブラシ62A、62Bの外形は、中央部の径が大きく両端部の径が小さくかつ中央で折れた2直線からなる母線をもつ回転体であり、当接部分において整流子162の外周面に沿うことができる。
図22(A)〜(D)のような外形とした場合、整流子とブラシの外周面同士が嵌り合う状態となるため、互いに安定に支持される効果がある。また、特に斜歯歯車の整流子とブラシの場合、歯の螺旋状の捻れを外形の曲面形状と合致させることにより良好な噛合状態が実現される。
図22(A)〜(D)において、図6〜10に示すように整流子の内面に整流子片を設け、ブラシを整流子内面に配設してもよい。この場合、(A)の形態の整流子に対し(B)の形態のブラシを組合せ、(B)形態の整流子に対し(A)の形態のブラシを組み合わせる。(C)及び(D)についても同様である。