JP3973204B2 - 正極原料焼成用耐火物とその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム電池の正極原料を焼成するのに適した正極原料焼成用耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム電池の正極活物質として、リチウムと遷移金属(コバルト、ニッケル、マンガン等の一種又は二種以上)との複合酸化物が知られている。この種の正極活物質は、例えば、酸化リチウム粉末と他の金属酸化物粉末(酸化コバルト粉末等)とを任意の量比で混合した正極原料を匣鉢等の焼成治具に収容し、これを焼成炉により所定温度で焼成して製造される(特開2001−35492号公報等)。得られた活物質(焼結体)は、任意の大きさに粉砕されて電池材料として用いられる。
【0003】
従来、このようなリチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物としては、アルミナ、ムライト、コージェライト、アンダリューサイト、コランダム等の汎用耐火物が使用されている。例えば、特開2001−35492号公報の実施例では、比較的安価なムライト−コージェライト系耐火物からなる鞘箱を用いてリチウム二次電池用の正極原料を焼成し、リチウム二次電池用正極活物質を製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の耐火物を焼成治具として用いた場合、リチウム電池の正極原料を焼成する際に生じるアルカリ成分等によって当該焼成治具の劣化(腐蝕)が激しく、十分な耐久寿命(表面剥離等により使用不可となるまでの使用回数)が得られ難い。特に、ムライト−コージェライト系耐火物(特許第2582443号公報、特開平7−243771号公報等)から成る焼成治具は、正極原料の焼成による劣化(変色、表面剥離等)が著しく、耐久寿命が短いという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべく創出されたものであり、その目的の一つは、リチウム電池の正極原料を焼成する際に生じるリチウムその他のアルカリ成分等に対する耐蝕性(以下、単に「耐蝕性」という。)を高め、従来の焼成治具よりも耐久性(寿命)が向上した正極原料焼成用耐火物を提供することである。また、他の一つの目的は、そのような耐火物から実質的に構成される焼成治具を提供することである。また、他の一つの目的は、そのような耐火物および焼成治具を製造する方法を提供することである。また、他の一つの目的は、そのような耐火物および焼成治具を用いて、安価に効率よくリチウム電池用正極活物質を製造することである。
【0006】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
本発明者らは、リチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物として、種々の化合物を配合したサンプルを作成し、リチウム電池の正極原料を焼成したときの耐蝕性の評価を行った。そして、耐火物を製造するための焼成用原料(以下「セラミック原料」という。)には従来配合されなかったリチウム化合物およびコバルト化合物を適量添加したセラミック原料から形成された耐火物では、正極原料焼成時における腐蝕の進行スピードが低下し、当該耐火物の劣化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によって提供される耐火物の一つは、リチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物であって、リチウムおよびコバルトを含有することを特徴とする。ここで、耐火物(乾燥重量)におけるリチウムの含有率は2〜5質量%であり、コバルトの含有率は2〜5質量%である。
なお、本明細書において「リチウム電池」とは、負極にリチウムを使用した電池の総称である。例えば、リチウムイオン蓄電池(二次電池)や二酸化マンガンリチウム電池(一次電池)は、本明細書における「リチウム電池」に包含される典型例である。
【0008】
リチウム電池の正極原料としては、リチウム化合物と遷移金属化合物との混合物が用いられる。これらの化合物を反応させることにより、リチウムと遷移金属との複合酸化物(正極活物質)が生成する。本発明の耐火物は、かかる正極原料を焼成して正極活物質を製造するのに適したものである。
すなわち、上記構成の耐火物は、リチウムとコバルトとを両方含有する結果、正極原料を焼成する際に劣化(腐蝕)し難く、耐火物としての耐久寿命が向上する。特にリチウム化合物とコバルト化合物とからなる正極原料(例えば炭酸リチウム又は酸化リチウムと酸化コバルトとの組み合わせ)に対し優れた耐蝕性を示し、耐火物の耐久寿命がきわめて良好になる。
従って、本構成の耐火物を用いると、耐久寿命に優れたリチウム電池正極活物質製造用焼成治具を作製することができる。
【0009】
本発明の正極原料焼成用耐火物は、耐火物(乾燥重量)におけるリチウムの含有率が2〜5質量%であり、コバルトの含有率が2〜5質量%であることを特徴としている。リチウムおよびコバルトの含有率がそれぞれ2質量%以上5質量%以下(多少の変動はあり得る)であることにより、特に高い耐蝕性が得られる。
【0010】
本発明の正極原料焼成用耐火物として好ましいものの他の一つは、リチウムとコバルトとのモル比Li/Coが、8/10〜10/8であることを特徴としている。特に好ましいものは、リチウムとコバルトのモル比Li/Coが1に近似する(例えば9/10〜10/9)。かかるモル比で示されるように、リチウムとコバルトが略同量存在することにより特に高い耐蝕性が得られ、効果的にアルカリ腐蝕による劣化を防止することができる。
【0011】
また、リチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物として好ましいものは、リチウム化合物およびコバルト化合物を含むセラミック原料を焼成することによって製造され得る。
本発明によって提供される上記の耐火物は、そのセラミック原料にリチウム化合物およびコバルト化合物が含まれ、これらリチウム元素およびコバルト元素の相乗効果によって、リチウム電池の正極原料に対する耐蝕性を向上させることができる。
【0012】
本発明の耐火物として、アルミナ、ムライトおよびコージェライトから成る群から選択される少なくとも一種を主体に構成されているものが提供される。
アルミナは、耐熱性、耐熱衝撃性、耐蝕性等に優れたセラミック材料である。従って、アルミナの含有率が高いと、正極原料に対する耐蝕性がより向上することになり、耐熱性、耐熱衝撃性、耐蝕性等に優れた高品質の正極原料焼成用耐火物が得られる。
一方、ムライトおよびコージェライトは低熱膨張性であるため、耐火物の耐熱衝撃性、耐スポーリング性を向上させることができる。また、ムライトやコージェライトは一般に安価である。このため、ムライト及び/又はコージェライトを主成分とすることにより、正極原料焼成用耐火物を安価に製造することができる。従って、かかる安価で耐久寿命の長い耐火物を用いると、リチウム電池の正極活物質を低コストで効率よく製造することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、上記したいずれかの耐火物から実質的に構成された焼成治具を提供する。かかる焼成治具(匣鉢、棚板、支柱、等)は、耐蝕性に優れることからリチウム電池の正極活物質を製造するのに好適に使用することができる。
【0014】
また、本発明は、耐火物の製造方法を提供する。本製造方法は、アルミナ、ムライトおよびコージェライトから成る群から選択される少なくとも一種を主体とし、リチウム化合物およびコバルト化合物を含有するセラミック材料を調製する工程と、該セラミック材料を焼成する工程とを包含する。
この製造方法によると、耐蝕性に優れ、リチウム電池の正極材料を焼成する(即ち正極活物質を製造する)のに好適な耐火物を得ることができる。
【0015】
好ましい本発明の製造方法では、所定のリチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物を製造する場合、上記リチウム化合物として該正極原料に含まれるリチウム化合物と実質同一の化合物(典型的には化学組成が同一若しくは相互に近似するものをいう。以下同じ)を使用する。及び/又は、前記コバルト化合物として、該正極原料に含まれるコバルト化合物と実質同一の化合物を使用する。
このように、正極原料に含まれるリチウム化合物及び/又はコバルト化合物と、耐火物製造用セラミック原料に含ませるリチウム化合物及び/又はコバルト化合物とを実質的に一致させることにより、得られる耐火物の当該正極材料(焼成時)に対する耐蝕性をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明は、リチウム電池の正極活物質を製造する方法を提供する。この方法は、本発明によって提供されるいずれかの耐火物で実質的に構成された焼成治具を準備する工程と、その焼成治具にリチウム電池用正極原料を収容する工程と、その焼成治具に収容された正極原料を窯炉内で焼成する工程とを包含する。
この方法では、使用する焼成治具が耐蝕性に優れ且つ耐久性が良好であることから、焼成治具に要するコストや焼成治具の交換等のメンテナンスが容易になる。このため、低コストで高効率に所望するリチウム電池用正極活物質を製造することができる。すなわち、正極活物質を大量かつ安価に提供し易くなり、リチウム電池の製造コストを低減することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば本発明に係る耐火物の物理的及び/又は化学的特徴)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、耐火物を製造するためのセラミック原料を焼成するプロセスに関わる一般的な事項)は、いずれも従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
本発明の耐火物は、リチウムおよびコバルトを含有するように調製されたセラミック原料を焼成することによって得ることができる。典型的には、アルミナ、ムライト、コージェライト等のセラミック材料にリチウム化合物およびコバルト化合物を含有させることによりセラミック原料を調製し、それを所定の条件で焼成することによって製造することができる。
上述のとおり、アルミナは耐火物として優れた性能を有するが、アルミナの含有率が高まると比較的コスト高となる。他方、ムライトやコージェライトは、低熱膨張性であるため耐火物の耐熱衝撃性を向上させ得るとともに比較的安価である。このことから、本発明の耐火物を製造するためのセラミック原料の主体たるセラミック材料としては、アルミナとムライト及び/又はコージェライトとを含有するものが好ましい。セラミック原料に占めるこれらセラミックの好ましい含有率は、アルミナ30〜40質量%、ムライト及び/又はコージェライト50〜70質量%である。
【0019】
また、セラミック原料に含ませ得る好ましいリチウム化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム等が挙げられる。一方、セラミック原料に含ませ得る好ましいコバルト化合物としては、酸化コバルト(CoO、Co3O4、Co2O3)、炭酸コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。
なお、耐火物製造のために使用するリチウム化合物及び/又はコバルト化合物は、当該耐火物を用いて焼成しようとする正極原料と実質同一の化合物であることが好ましい。使用するリチウム化合物及び/又はコバルト化合物の化学組成が、焼成しようとする正極原料に含まれるリチウム化合物及び/又はコバルト化合物の化学組成と同じであることが特に好ましい。
例えば、焼成対象の正極原料が炭酸リチウム(Li2CO3)と酸化コバルト(CoO、Co3O4又はCo2O3)との混合物である場合には、セラミック原料に加えるリチウム化合物およびコバルト化合物も同様に炭酸リチウムおよび酸化コバルトであるとよい。このように、正極原料に含まれるリチウム化合物及び/又はコバルト化合物と、耐火物を製造するセラミック原料に含まれるリチウム化合物及び/又はコバルト化合物とを一致させることにより、正極原料焼成時におけるリチウムおよびコバルトを含むリチウム複合酸化物(LiCoO2等)の耐火物内への浸透を抑制する効果を著しく向上させ得る。
【0020】
本発明の耐火物を製造するためのセラミック原料には、上述した主要成分の他、種々の副成分(無機粉末等)を含有させてもよい。例えば、成形性や焼結性の向上、耐火物の機械的強度(曲げ強度等)や耐熱衝撃性の向上等を図るための従来公知の種々の物質を副成分として含ませ得る。副成分の割合は、適宜設定し得る。
上記副成分の例として、ジルコン、クロミア、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン等の無機材料が挙げられる。これらのうちの一種または二種以上をセラミック原料に適量配合させることにより、得られる耐火物の特性(耐蝕性、耐熱衝撃性等)をさらに向上させることが可能となる。
例えば、ジルコン(ZrSiO4)は、ジルコニアがリチウム含有物質(LiCoO2等)に対する濡れ性が低いので、耐火物の組織中へ正極材料由来のリチウム成分が浸透するのを抑制する効果を発揮し得る。また、酸化ニッケルの添加もリチウム成分の浸透抑制に寄与し得る。
【0021】
また、上記副成分の他の例として、粘土(典型的にはカオリン系粘土)が挙げられる。セラミック原料に粘土を含有させることにより、耐火物製造時の成形性等を向上させることができる。また、得られた耐火物がクラックの少ないものとなりやすいので、耐蝕性、耐熱衝撃性等を向上させ得る。セラミック原料に対する粘土の配合量は、セラミック原料の内容に応じて適宜設定され得る。特に限定しないが、セラミック原料に占める粘土の好ましい含有率は、15〜25質量%程度である。粘土の使用量が多すぎると、耐火物(焼成治具)をリチウム成分に曝される条件で使用した場合に、その表面に膨れ等の異常を生じる場合があり、好ましくない。
【0022】
また、本発明の耐火物は、目的の形状に成形されて種々の焼成治具として用いられる。匣鉢、棚板(セッター等)、支柱、タイル等が焼成治具に包含される典型例である。特に正極材料を収容する匣鉢として、本発明の耐火物が好適に用いられる。なお、焼成治具の形状は、特に限定されず、用途に応じて設計される。例えば、箱状、皿状、碗状、有底筒状、すり鉢状等のいずれの形状の匣鉢を製造・使用してもよい。
【0023】
次に、本発明の耐火物から成る焼成治具の製造例につき、図1を用いて説明する。
先ず、リチウム化合物およびコバルト化合物を含むセラミック原料を調製する。この調製工程には、典型的には秤量工程10と混合工程20とが包含される。秤量工程10において、セラミック材料の各々と成形助材、必要に応じてさらに他の添加剤等をそれぞれ秤量しておく。次に、混合工程20において、工程10で秤量した各材料をニーダー、フレットミル等の混合機を用いて例えば8〜10分程度混合する。このとき、適当なタイミングで所定量の水(例えば、セラミック原料100重量部に対して5〜20重量部)を添加するとよい。
【0024】
続いて、上記で調製(調合)されたセラミック原料を焼成する。この焼成工程50には典型的には乾燥工程40が包含される。目的の形状の焼成治具(匣鉢等)を製造する場合にはさらに成形工程30が包含される。
典型的には、成形工程30において、上記混合工程20で得られた調合原料から、例えば成形圧力450kgf/cm2(4413N/cm2)程度(好ましくは4000〜4500N/cm2程度)のフリクションプレス、あるいはロクロ成形等の手段により、所定形状の成形体を作製する。次に、乾燥工程40において、この成形体を例えば常温で15時間程度乾燥させた後、さらに50℃程度(好ましくは40〜70℃)の温度で24時間程度乾燥させる。その後、焼成工程50において、工程40で乾燥された成形体をトンネルキルン等の焼成炉により例えば1450℃(好ましくは1350〜1600℃)で3時間程度焼成する。
【0025】
次に、本発明に係る焼成治具(匣鉢)を用いてリチウム電池の正極活物質を製造する方法の一例を説明する。
この製造方法は、従来公知のリチウム電池用正極活物質、例えば、リチウム−コバルト複合酸化物系(LiCoO2等)、リチウム−ニッケル複合酸化物系(LiNiO2等)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物系(LiNi0.8Co0.2O2等)、リチウム−マンガン化合物系(LiMnO2等)のいずれの組成を有する正極活物質の製造にも適用することができる。
【0026】
まず、これらの活物質組成に対応した組成の金属酸化物粉末、または焼成により金属酸化物となる化合物粉末を含む混合物(正極原料)を匣鉢に収容し、所定の条件で窯炉内で焼成する。この焼成により目的とする複合酸化物(即ち正極活物質)を生成させる。正極原料の好ましい焼成条件は、製造しようとする活物質の組成等によって異なり得るものであり、特に限定するものではないが、典型的には最高焼成温度900〜1500℃で0.5〜6時間程度である。なお、かかる焼成条件自体は、従来と同様であればよく、特に本発明を特徴付けるものではない。
その後、焼成により得られた活物質を匣鉢から取り出し、必要に応じて粉砕処理する。そして、得られた粉砕物(活物質粉末)に有機ビヒクル等を加えてペーストを調製し、金属等からなる集電体の表面に付着(塗布)させることにより、リチウム電池(例えばリチウム二次電池)の電極(正極)とする。
【0027】
【実施例】
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0028】
[正極原料焼成用耐火物の製造例]
コージェライト、ムライトおよびアルミナ等を含むセラミック粉末に、粉末状の炭酸リチウムおよび酸化コバルトを添加することによりセラミック原料を調製した。原料配合比を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す組成のセラミック原料100重量部に対して、14重量部の水と、0.8重量部のリグニン製品(日本製紙株式会社製品「サンエキス(登録商標)」)とを加え、ニーダーにより混練し、成形圧力450kgf/cm2(4413N/cm2)のフリクションプレスにより、セッター(焼成後の目標寸法:366mm×341mm×15mm厚)、および匣鉢(焼成後の目標寸法:366mm×341×125mm×10〜15mm厚)用の成形体を作製した。
また、ロクロ成形によってロクロ匣鉢(焼成後の目標寸法:350φmm×10〜15mm厚)用の成形体を作製した。
その後、トンネルキルンにより1380℃で3時間焼成して各種形状の耐火物(セッター、匣鉢およびロクロ匣鉢)を得た。
【0031】
[耐蝕性試験]
次に、正極原料焼成用耐火物について耐蝕性試験を行った。
すなわち、この試験に使用する焼成治具として、上述した製造例に準じて5cm角(厚み:約1cm)の板状の試験台(実施例1)を作製した。試験台(実施例1)製造用セラミック原料には、所定量の炭酸リチウムおよび酸化コバルトが添加されている。なお、比較例として、リチウムおよびコバルトを含まないセラミック原料から同様の条件で試験台(比較例1〜5)を作製した。これらセラミック原料の配合比を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
次いで、炭酸リチウムと酸化コバルトとの混合物からなる正極原料4gを25φ×7mm程度の円柱形状に成形したものを各試験台に積載し、電気炉にて焼成した。なお、使用した正極材料における炭酸リチウムおよび酸化コバルトの配合比は、重量比(炭酸リチウム/酸化コバルト)で約1/2、モル比(Li/Co)では約1/1とした。
【0034】
図2に示すように、正極原料を以下の(a)〜(c)の温度プログラムで焼成した。すなわち、(a)常温から1100℃まで一定速度で4時間昇温する;(b)1100℃で4時間保持する;(c)1100℃から常温まで炉内冷却する。炉内冷却後、試験台から正極原料を取り除き、試験台の表面の剥離状況を観察した。
かかる耐蝕性試験は、上記(a)〜(c)を1サイクル/日の条件で繰り返し、試験台の状態(耐蝕性)をその都度評価した。なお、各試験台に載せる正極原料は、1サイクル毎に新しいものに更新した。
評価の結果を表3に示す。なお、表3中の「◎」は試験台から焼成体(正極活物質)を良好に除去できたものを示し、「○」は焼成体を除去する際に試験台の表層部分が一緒に剥がれたもの、換言すればリチウム成分等が耐火物の内部に浸透することにより当該耐火物に構造スポーリングを発生させて表面剥がれが起こったものを示し、「△」は試験台に焼成体(正極活物質)が付着したまま残るもの、即ちリチウム成分等の耐火物内部への浸透が著しいものを示している。
【0035】
【表3】
【0036】
表3に示すように、比較例1〜5に係る試験台(焼成治具)は、腐蝕の進行が速く、7〜8サイクル後には焼成体(正極活物質)が試験台に付着して試験台の表層部ごと剥離し易くなっていた。
これに対し、実施例1に係る試験台(焼成治具)では、20サイクルの焼成を繰り返しても、焼成体(正極活物質)の除去が良好であった。また、各試験台について表面の変化を観察したところ、実施例1の試験台は1サイクル後に目立った損傷は見あたらず、表面がわずかに青色に変色する程度であった。10サイクル後には試験台の変色の度合いが幾分大きくなったものの依然目立った損傷は認められなかった。20サイクル後には、試験台の表面にわずかな侵蝕が見られたものの、表層剥離は認められなかった。
以上の結果から、実施例1に係る試験台は、各比較例のものと比較して正極原料に対する耐蝕性が極めて高いことが確認された。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る正極原料焼成用耐火物の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】 本発明に係る正極原料焼成用耐火物の耐蝕性試験の条件を示す温度チャートである。
Claims (5)
- リチウム電池の正極原料を焼成するための耐火物であって、
リチウムおよびコバルトを含有し、
ここで、リチウムの含有率が2〜5質量%であり、且つ、コバルトの含有率が2〜5質量%である、耐火物。 - リチウムとコバルトとのモル比Li/Coが、8/10〜10/8である、請求項1に記載の耐火物。
- アルミナ、ムライトおよびコージェライトから成る群から選択される少なくとも一種を主体に構成されている、請求項1または2に記載の耐火物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物で実質的に構成された、リチウム電池の正極原料を焼成するための焼成治具。
- リチウム電池の正極活物質を製造する方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物で実質的に構成された焼成治具を準備する工程と、
前記焼成治具にリチウム電池用正極原料を収容する工程と、
前記焼成治具に収容された正極原料を窯炉内で焼成する工程と、
を包含する、リチウム電池用正極活物質製造方法。
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