JP3973170B2 - リチウムイオン二次電池およびリチウム二次電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できる炭素質材料を負極に用いたリチウム二次電池、およびリチウムイオン二次電池用電極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化が進み、これに伴い電池の高エネルギー密度化が求められ、種々の非水電解液電池が提案されている。
例えば、従来より非水電解液電池として、その負極に、金属リチウム、アルミニウム/リチウム合金に代表されるリチウム合金、炭素負極などを用いたリチウム二次電池が知られている。
しかしながら、金属リチウムを負極として用いたリチウム二次電池は、デンドライトの生成などに起因してサイクル安定性に劣ることが知られている。
また、アルミニウム/リチウム合金に代表されるリチウム合金を負極として用いたリチウム二次電池も、金属リチウムを用いたものよりはサイクル安定性の向上はみられるものの、リチウム二次電池の性能を充分に引き出すものとはいえない。
【0003】
このような問題を解決するため、リチウムを吸脱着するものとして、リチウムの炭素層間化合物が電気化学的に容易にできることを利用した炭素質材料を負極材料に用いたリチウム二次電池が提案されている。その炭素質材料としては、黒鉛や、リチウムをクラスターとして吸蔵する非晶質カーボンが用いられており、これらは、金属リチウムやリチウム合金に較べ、充電状態、すなわち炭素にリチウムがインターカレーションされた状態においても、水との反応が充分に穏やかで、充放電にともなうデンドライトの形成もほとんどみられず優れたものである。
しかし、これらの炭素質材料は、リチウムを吸蔵した状態で電解液と共存する場合、温度上昇によって急激な発熱反応を起こすことがある。
このような急激な発熱反応は、負極活物質の性能を著しく劣化させる。また、電気自動車などに用いる大型のリチウム二次電池においては、特に急激な発熱反応は防止しなければならない。
【0004】また、黒鉛などの従来の炭素質材料には、理論容量(充電時にLiC6の状態を最大容量と仮定)と比較して容量が極端に低かったり、また、初期容量は比較的大きくても、充放電を繰り返すことで容量が急激に低下したり、比較的充放電容量が大きくても、高電流密度で充放電を繰り返すと劣化が激しいなど、負極活物質としての性能においても問題があった。
このため、かかる急激な発熱反応を起こさず、二次電池としての性能に優れるリチウム二次電池の開発が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これを受けて、本発明者らは、従来の炭素質材料が昇温により急激な発熱反応を起こす原因を検討したところ、黒鉛の場合は、リチウムは安定なイオンとして吸蔵されているが、負の電荷を受け取った黒鉛マトリックスは、電解液との反応性が高まっていることであり、一方、リチウムをクラスターとして吸蔵する非晶質カーボンの場合は、高比表面積のリチウムクラスターが金属リチウムと同等またはそれ以上の活性を有しており、かかる活性の高さが原因であることに想到した。
本発明は、以上のような従来の技術課題を背景になされたものであり、高容量でサイクル安定性に優れ、高出力(高電流密度)の充放電にも対応でき、常に安定なリチウム二次電池を得ることを目的とする。しかして、充電状態において、電解液と共存しても急激な昇温時の発熱反応が穏和なリチウムイオン二次電池用電極材料を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、縮環芳香族構造を有し、かつその構造が無秩序積層構造である炭素質材料を電極に用いたリチウム二次電池を提供するものであり、該電極は、炭素質材料に有機繊維を混抄し、フィルムまたはシートを形成した後、該フィルムまたはシートに熱硬化性樹脂を含浸、硬化して繊維薄板とし、該繊維薄板を構成する有機繊維、熱硬化性樹脂をアモルファスの状態で炭素化(焼成)することにより得られる。
ここで、上記炭素質材料は、5mg±0.5mgの試料について昇温速度60℃/分で行った示差熱分析法による熱分析曲線に現れる発熱ピークの立ち上がり温度が141℃以上であり、かつ該発熱ピークの立ち上がり部分の傾きが30μV/(s・mg)以下のものであることが好ましい。
また炭素質材料としては、ポリフェニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンキシレン)、ポリスチレン、ノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種の有機高分子化合物を焼成してなるものであることが好ましく、さらには有機高分子化合物がポリフェニレンであることが好ましい。
上記ポリフェニレンは、コバチック法により製造されたものであり、焼成温度が、650〜900℃であることが好ましい。
さらに、上記有機繊維としては、セルロース繊維、レーヨン繊維、ピッチ繊維、リグニン繊維、フェノール繊維およびアクリル樹脂繊維の群から選ばれた少なくとも1種であり、炭素質材料に対する有機繊維の混抄割合が、10〜70重量%であることが好ましい。
上記フィルムまたはシートの厚さとしては、0.05〜1mmであることが好ましい。
上記繊維薄板の焼成は600〜1,200℃で0.5〜4時間、非酸化性雰囲気下で、該繊維薄板を平らな黒鉛板で挟んで行うことが好ましい。
次に本発明は、上記炭素質材料に、有機繊維を混抄し、フィルムまたはシートを形成した後、該フィルムまたはシートに熱硬化性樹脂を含浸、硬化して繊維薄板とし、該繊維薄板を構成する有機繊維、熱硬化性樹脂を600〜1,200℃で0.5〜4時間、非酸化性雰囲気下で、該繊維薄板を平らな黒鉛板で挟むことによりアモルファスの状態で炭素化(焼成)するリチウム二次電池用電極の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のリチウム二次電池において、電極に用いる炭素質材料は縮環芳香族構造を有し、かつその構造が無秩序積層構造の炭素質材料である。無秩序積層構造とは、縮芳香族環平面の配向が全く無秩序であるか、もしくは4枚、好ましくは3枚を超えての配向を有しない構造をいう。
これらの炭素質材料の中でも、リチウムを充電した炭素質材料の熱分析による熱分析曲線に現れる、熱重量測定により該炭素質材料の重量減少が最大の発熱ピークの立ち上がり温度が、リチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料の該立ち上がり温度よりも高く、かつ発熱ピークの立ち上がり部分の傾きが、リチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料の該傾きよりも小さいものが好ましい。ここで、熱分析による熱分析曲線に現れる発熱ピークは、温度上昇に伴う熱分解や一次転移などによる発熱反応をとらえたものである。そして、熱分析曲線に現れる発熱ピークの立ち上がり部分の傾きは、該熱分解などによる発熱反応の急峻性の度合いを示す。
また、リチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料とは、前記した黒鉛や、リチウムをクラスターとして吸蔵する非晶質カーボンなどを包含する炭素材料の総称である。
【0008】
熱分析法としては、例えば示差熱分析(DTA)による方法、示差走査熱量測定(DSC)による方法などがあるが、特に限定されるものではない。
ただし、DTAにより熱分析する場合には、試料の量を一定にして各試料間の大小関係やオーダーの差を修正するなど、測定結果に定量性をもたせることが好ましい。また、DSCによる熱分析を行う場合には、通常の方法により定量的に発熱量を測定すればよい。
【0009】
リチウム二次電池の電極においては、リチウムを担持した状態における炭素質材料の安定性が問題となるため、熱分析は、リチウムを担持した状態の炭素質材料に対して行うことが必要である。
リチウムを担持する方法としては、従来より行われているどのような方法でもよいが、電気化学的にリチウムをドープさせる方法として、例えば、対極に金属リチウムを用いて、外部で電気的に短絡した状態で放置し充電する方法(以下、「短絡法」という)が挙げられる。
本発明では、急速昇温に対する熱的応答を見るために、熱分析時の昇温速度は、30℃/分以上が好ましく、特に50〜100℃/分がより好ましい。
【0010】
発熱ピークが複数存在する場合には、熱重量測定(TG)による重量減少が最も大きい発熱ピークの立ち上がり温度および傾きである。重量減少が最も大きい発熱ピークは、最も激しい発熱反応を示すからである。
【0011】
リチウムを充電した炭素質材料の熱分析による熱分析曲線に現れる、熱重量測定による該炭素質材料の重量減少が最大の発熱ピークの立ち上がり温度がリチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料よりも高く、かつ発熱ピークの立ち上がり部分の傾きがリチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料よりも小さい炭素質材料は、リチウムをリチウム分子として吸蔵できない炭素質材料と比較して、より高温にならないと熱分解などが起こらず、かつ発熱がより穏やかなものであるということができる。
従って、かかる炭素質材料は、電解質との反応性においても、反応が起こりにくく、かつ反応がより穏やかであると見なすことができる。
【0012】
このような炭素質材料には、例えば本願実施例および比較例より5mg±0.5mgの試料について昇温速度60℃/分で行った示差熱分析法による熱分析曲線に現れる発熱ピークの立ち上がり温度が141℃以上であり、かつ該発熱ピークの立ち上がり部分の傾きが30μV/(s・mg)以下の炭素質材料が該当する。
【0014】
炭素質材料として、縮環芳香族構造を有し、かつその構造が無秩序積層構造の炭素質材料を用いる理由としては、このような構造の炭素質材料は、リチウムを層間にインターカレーションによって吸蔵するのみならず、共有結合分子Li2としても吸蔵するため、炭素網面への電荷移動が、インターカレーションのみによるものより少ないことから、リチウムを担持した状態においても構造的に安定であることが挙げられる。
【0015】
リチウムが共有結合性Li2分子として吸蔵される炭素質材料かどうかは、リチウムを担持した状態の炭素質材料をNMRスペクトルにより確認することができる。すなわち、リチウムが共有結合性Li2分子として吸蔵されている炭素質材料は、7Li−NMRスペクトルの化学シフトδのピークが少なくとも2値存在する。
そして、一方のピーク(B)は0±2ppmに、また他方のピーク(A)は、該ピーク(B)よりプラス側に存在する。ここにおいて、観測核は7Li、化学シフトの基準はLiClの1モル/l水溶液のピークを0としたときのものである。
化学シフトδのピーク(B)が上記の範囲にあるということは、リチウムイオン上の不対電子密度が殆ど0となっている、すなわちリチウムイオンが共有結合性のLi2分子になっていることを意味している。
【0016】
一方、インターカレートしたリチウムは、該化学シフトにおいて正の値をとり、これは上記ピーク(A)に該当する(田中ら、1992年電気化学秋季大会講演要旨集p129)。
この正の化学シフトの原因は、炭素質材料のラジカルによる常磁性シフトである。リチウムが吸蔵されると同時に炭素質材料は電子を受取り、電気的な中性を保つ。電子を受け取った炭素は、ラジカルアニオンとなる。従って、リチウムを吸蔵した炭素質材料は不対電子を持ち、電子の磁気モーメントと核の磁気モーメントの相互作用により、化学シフトが生じる。理論によれば、電子スピンとの相互作用による化学シフトの符号は、電子と当該核の超微細結合定数の符号と一致する。7Liの超微細結合定数の符号は正であり、ラジカルによる化学シフトは正となる。化学シフトの大きさは、測定核上の不対電子密度に比例する。インターカレートしたリチウムイオンは黒鉛層間に閉じ込められているため、黒鉛層がラジカルアニオン化するとリチウムイオン上にもある程度の不対電子密度が存在し正の化学シフトをもたらす。
ここで、ピーク(A)としては、好ましくは4〜100ppm、さらに好ましくは10±7ppmであることがよい。
【0017】
縮環芳香族構造を有し、かつその構造が無秩序積層構造の炭素質材料は、炭素質材料の積層構造を阻害する因子を有する有機高分子化合物を焼成することにより得られる。
【0018】
炭素質材料の積層構造を阻害する因子を有する有機高分子化合物としては、例えば、o−結合もしくはm−結合を含む屈曲構造、枝分かれ構造および架橋構造の群から選ばれる少なくとも一種の構造を含む芳香族構造を有する有機高分子化合物が挙げられる。また、5員環、7員環を持つ有機化合物を含んでいる有機高分子化合物でもよい。
このような有機高分子化合物としては、共役高分子構造の発達したノンヘテロサイクリックポリマーが好ましい。かかるポリマーは、ポリフェニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−フェニレンキシレン)(PPX)、ポリスチレン、ノボラック樹脂などであり、特にポリフェニレンが好適である。
【0019】
これらの有機高分子化合物の中でも、結晶化度の低いものが好ましく、X線回折の2θ=20°付近の回折ピークの半値幅が好ましくは0.75°以上、さらに好ましくは0.95°以上であることが望ましい。
また、有機高分子化合物には、キノイド構造を含むことが好ましい。ここで、キノイド構造を含むことは、有機高分子化合物の粉末の拡散反射スペクトルにおいて600〜900nmの範囲に吸収端が観測されることで確認できる。
【0020】
このような有機高分子化合物として好ましいものとしては、ある程度重合度の高いポリフェニレンが挙げられる。本発明においては、ポリフェニレンの重合度の目安として次式で定義されるR値を適用するが、なかでもこのR値が好ましくは2以上、さらに好ましくは2.3〜20のものが望ましい。
R=A〔δ(para)〕/{A〔δ(mono1)〕+A〔δ(mono2)〕}
ここにおいて、A〔δ(para)〕は赤外吸収スペクトルにおける804cm−1付近のC−H面外変角振動モードの吸収帯の吸光度、A〔δ(mono1)〕、A〔δ(mono2)〕はそれぞれ760cm−1付近、690cm−1付近の末端フェニル基の吸収帯の吸光度を示す。
【0021】
ポリフェニレンの合成法としては、種々の方法が知られている。例えば、ルイス酸触媒および酸化剤を種々組み合わせて用い、ベンゼンを温和な反応条件で重合しポリフェニレンを得る方法(P.Kovacic;A.Kyriakis;J.Am.Chem.Soc.85,454〜458,1963)(以下、「コバチック法」という)、ポリ(1,3−シクロヘキサジエン)を脱水素化することによりポリフェニレンを得る方法(J.Am.Chem.Soc.81,448〜452,1959)、ニッケル触媒を用いるジハロベンゼンの脱ハロゲン化重合である山本法(T.Yamamoto;A.Yamamoto;Chemistry Letters,353〜356,1977)などである。なお、上記コバチック法による場合には、触媒として、塩化アルミニウム−塩化第II銅系を用いると、35℃、30分間程で、ポリフェニレンを高収率に得ることができる。
【0022】
本発明において、ポリフェニレンの合成法は特に限定されないが、製造コストが低く、部分的に架橋しているため炭化収率に優れるなどの理由から、コバチック法が好適である。コバチック法によれば、縮環構造を持つポリフェニレンが得られることが、ESR(G.Froyer et al.,Polymer,23,1103,1982)、および質量分析(C.E.Brown et al.,J.Polymer Science,Polym.Chem.Ed.,24,255,1986)により実証されている。
これに対し、山本法により得られるポリ(p−フェニレン)は縮環構造を持たず、これを焼成した非晶質炭素質材料はリチウムを共有結合性Li2分子として吸蔵し得ないため好ましくない。
【0023】
有機高分子化合物の焼成は、その炭化温度付近の温度、すなわち炭化温度から炭化温度+300℃程度の範囲の温度で行うことが好ましい。炭化温度とは、出発原料の有機高分子化合物から水素などの脱離が起こる温度であり、TG(熱重量測定)、DTA(示差熱分析)により測定することができるものである。
焼成温度が、炭化温度よりも低いと炭化がなされず、一方この範囲より温度が高いと炭化が進みすぎ、有機成分が残存しなくなる。この範囲で焼成されると、完全に炭化されず炭素成分と有機成分とが混在している炭素質材料となる。
有機高分子化合物がポリフェニレンの場合は、650〜900℃、好ましくは670〜780℃の焼成温度が好ましい。焼成温度が650℃未満であると、炭素化が不充分でリチウムを吸蔵することができず、一方、900℃を超えると、黒鉛化が進行してしまい、リチウムを共有結合性Li2分子として吸蔵することができない。
【0024】
炭素質材料において、炭素成分と有機成分とが混在していることは、サイクル安定性に優れた電極を得るために重要である。炭素質材料において、炭素成分と有機成分とが混在していると、充放電反応による体積変化が生じても構造崩壊が起こりにくいからである。
炭素質材料において炭素成分は80〜99重量%が好ましく、特に90〜99重量%がより好ましい。また、有機成分は1〜20重量%が好ましく、特に1〜10重量%程度がより好ましい。ここでいう炭素成分とは、元素分析による炭素の量である。また、有機成分とは、水素、チッ素、イオウ、酸素などの出発原料中に含まれていた炭素を除く元素の量である。
【0025】
有機高分子化合物の焼成雰囲気は、不活性雰囲気でも還元雰囲気でもよく、例えばチッ素、アルゴン、水素雰囲気が挙げられる。また、焼成時間は、0.5〜3時間が好ましい。ここで、焼成時間は、設定温度到達後の時間である。
【0026】
この具体的な焼成方法としては、原料の有機化合物の重量減少開始温度まではどのような昇温速度でもよいが、重量減少開始温度から焼成温度までは5℃/時間〜200℃/時間、好ましくは20℃/時間〜100℃/時間の昇温速度で昇温することが好ましい。
【0027】
焼成により得られた炭素質材料の水素/炭素原子比(H/C)は、0.05〜0.6であることが好ましく、特に0.15〜0.6がより好ましい。0.05未満では、グラファイト構造が発達し、充放電にともなうリチウムのドープ・脱ドープ反応時の結晶の膨張収縮により結晶構造が破壊され、サイクル安定性が低下し、一方0.6を超えると放電容量が著しく低下する。
【0028】
このように焼成して得られる炭素質材料は、通常、粉体または固体であり、電極材料として用いる場合は、この炭素質材料を機械的に粉砕して用いる。
この場合の粒径は必ずしも制限されるものではないが、平均粒径が5μm以下とすることにより高性能の電極が得られる。
【0029】
電極体の作製方法は、焼成によって得られた炭素質材料に、さらに有機繊維を混抄して電極体を得ることができる。
【0030】
炭素質材料に混抄する有機繊維としては、例えばセルロース繊維、レーヨン繊維、ピッチ繊維、リグニン繊維、フェノール樹脂繊維、アクリル樹脂繊維などが挙げられるが、中でも水への分散性がよく、コスト的にも優れるセルロース繊維が好ましい。
有機繊維の形状も、特に限定されるものではなく、チョップドヤーン、ストランド、ウェーブ状のものなど様々な形状のものを用いることができる。このような有機繊維は、炭素質材料をフィルムまたはシートに形成する際の支持体となるばかりでなく、フィルムまたはシートに一定の厚みを持たせる機能をも有する。
また、有機繊維の長さとしては、0.2〜10mm、特に0.2〜2mmが好ましい。有機繊維の長さが0.2mm未満であると、有機繊維の嵩高性が発揮されず、一方、10mmを超えると、成形性が低下する恐れがある。
【0031】
有機繊維は、使用時によく乾燥していることが好ましい。
さらに、有機繊維をあらかじめ加熱処理しておくことにより、有機繊維に収縮が与えられ、後の加熱の際の収縮を少なくすることができる。加熱の温度としては、有機繊維の強度を損なわない温度であることが必要であり、120〜250℃の範囲が好ましい。
【0032】
炭素質材料と有機繊維とをフィルムまたはシートに形成する方法としては、抄紙法が最も好ましい。抄紙法は、炭素質材料および有機繊維と、有機溶媒との混濁液を作成し、所定の厚さに広げたのち、有機溶媒を蒸発させることにより、フィルムまたはシートとなす方法である。
【0033】
炭素質材料に対する有機繊維の混抄割合は、10〜70重量%、特に15〜40重量%が好ましい。有機繊維が10重量%未満であると、成形性が低下し、一方、70重量%を超えると、電極としての放電容量が低下する恐れがある。
【0034】
抄紙するにあたり、まず、炭素質材料と有機繊維を溶媒中で混和して懸濁液とする。このとき用いる溶媒としては、適宜、選択することができるが、有機繊維としてセルロース繊維を用いた場合には、水、エタノール、水とエタノールの混合物が好ましい。
【0035】
懸濁液に占める炭素質材料と有機繊維の総計の割合は、1〜5重量%、特に1.7〜3.3重量%が好ましい。該割合が1重量%未満であると、懸濁液が均質化しにくい。一方、5重量%を超えると、粘度が高くなり過ぎてフィルムまたはシートとして形成する際、均一な厚さに抄紙することが困難となる恐れがある。炭素質材料、有機繊維と有機溶媒との混和に用いる装置は、どのようなものでもよいが、ボールミル、ミキサーを用いることが好ましい。
【0036】
このとき、必要に応じて、有機溶媒には、界面活性剤、結着剤または強化繊維を添加してもよい。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシオクチルフェニルエーテル、エタノール、メタノールなどが挙げられる。
結着剤としては、カチオン化澱粉、カチオンまたはアニオン化ポリアクリルアマイド、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化アマイド、カルボキシ変性ポリビニルアルコールなどのほか、合成樹脂エマルジョンが挙げられる。
強化繊維としては、塩化ビニル繊維、抄紙用レーヨンなどが挙げられる。
【0037】
このようにして得られたフィルムまたはシートは、50〜80℃で乾燥処理して溶媒を蒸発させる(以下、乾燥処理後のフィルムまたはシートを「繊維フィルムまたはシート」という)。繊維フィルムまたはシートの厚さは、0.05〜1mmがよく、特に0.2〜1mmが好ましい。本発明において、繊維フィルムまたはシートの厚さの調節は、従来の抄紙法と同様に、目付量を変えることにより可能となる。
ここで、繊維フィルムまたはシートには前記有機繊維が混抄されていることから、溶媒が蒸発して除去されても、厚みはさほど変わらずに、繊維フィルムまたはシートには空隙が形成される。
【0038】
得られた繊維フィルムまたはシートに、熱硬化性樹脂を含浸させたのち、加熱して、該樹脂を硬化させる。このようにすることで、含浸した熱硬化性樹脂が加熱により硬化して、薄板(以下「繊維薄板」という)を形成する。
【0039】
ここで、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられるが、コストが安いことから、レゾール系フェノール樹脂が好ましい。
レゾール系フェノール樹脂は、フェノール類とホルマリンとの付加縮合反応をアルカリ性で行うことにより製造されるものであるが、LiOH触媒あるいはNH4OHで合成したものが好ましい。LiOH触媒あるいはNH4OHで合成したものは、電極中の不純物が僅かであるかあるいは存在しても有害とならない。これに対し、NaOH触媒で合成されたものは、電極中にナトリウム分が残留するので好ましくない。
また、熱可塑性樹脂を用いると、後述する焼成の際に薄板としての形状を維持することができず好ましくない。
【0040】
繊維フィルムまたはシートに含浸させる熱硬化性樹脂は、繊維フィルムまたはシートに対して、不揮発分で10〜200重量%、特に50〜150重量%が好ましい。熱硬化性樹脂が10重量%未満であると、結着剤としての効果が得難く、一方、200重量%を超えると、炭素質材料を覆いすぎて、活物質としての機能を低下させる恐れがある。
【0041】
次いで、繊維薄板は焼成されて、リチウム二次電池の電極として用いられる炭素薄板となる。
ここで、焼成は、繊維薄板を構成する有機繊維、熱硬化性樹脂がアモルファスの状態で炭素化する程度でよい。このため、焼成条件は、600〜1,200℃で0.5〜4時間が好ましく、特に650〜800℃で0.5〜2時間が好ましい。このとき、昇温は、徐々に行うのがよく、好ましくは3℃/分以下である。焼成雰囲気は、非酸化性雰囲気、特に不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。なお、炭素薄板を平らに維持するために、焼成の際は、繊維薄板を平らな黒鉛板で挟んで行うことが好ましい。
【0042】
このようにして得られた電極体に対し、リチウムを担持させることで、リチウム二次電池用電極とする。
担持させる方法としては、リチウム箔を接触させ熱拡散させたり、リチウム塩溶液中で電気化学的にリチウムをドープさせたり、あるいは溶融リチウムに浸漬させ炭素中にリチウムを拡散させるなど、従来より行われているどのような方法でもよい。
【0043】
得られたリチウム二次電池用電極は、層間のみにリチウムイオンが出入りするのではないので、吸脱着に伴う材料の構造変化が少なく、さらに積層構造が発達していないので、リチウムイオンは積層している方向と平行な一方向に限定されず、どの方向からも侵入でき、吸脱着反応速度が大きいという利点をも有する。
【0044】
一方、本発明のリチウム二次電池に用いる正極活物質としては、特に限定されるものではなく、例えば二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどの金属酸化物やポリピロールなどの有機高分子、そのほか色々な正極を使用することができる。
【0045】
また、本発明のリチウム二次電池に使用する非水系の電解質としては、正極材料および負極材料に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが正極活物質と電気化学反応をするために移動できる非水物質であればどのようなものでも使用でき、特にカチオンとアニオンの組み合わせよりなる化合物であって、カチオンとしてはLi+、またアニオンの例としてはPF6 −、AsF6 −、SbF6 −のようなVa族元素のハロゲン化物アニオン、I−、I3 −、Br−、Cl−のようなハロゲンアニオン、ClO4 −のような過塩素酸アニオン、HF2 −、CF3SO3 −、SCN−などのアニオンを有する化合物を挙げることができるが、必ずしもこれらのアニオンに限定されるものではない。このようなカチオン、アニオンを持つ電解質の具体例としては、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiHF2、LiSCN、LiCF3SO3などが挙げられる。これらのうちでは、特にLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3が好ましい。
【0046】
なお、非水系の電解質は、通常、溶媒に溶解された状態で使用され、この場合、溶媒は特に限定されないが、比較的極性の大きい溶媒が良好に用いられる。具体的にはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグライム類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、トリエチルホスフェートなどのリン酸エステル類、ホウ酸トリエチルなどのホウ酸エステル類、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどのイオウ化合物、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、硫酸ジメチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ジクロロエタンなどの1種または2種以上の混合物を挙げることができる。これらのうちでは、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキソランおよびγ−ブチロラクトンから選ばれた1種または2種以上の混合物が好適である。
【0047】
さらに、この非水電解質としては、上記非水電解質を、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドのイソシアネート架橋体、エチレンオキサイドオリゴマーを側鎖に持つホスファゼンポリマーなどの重合体に含浸させた有機固体電解質、Li3N、LiBCl4などの無機イオン誘導体、Li4SiO4、Li3BO3などのリチウムガラスなどの無機固体電解質を用いることもできる。
【0048】
本発明のアルカリ金属吸蔵炭素質材料からなる電極材料を使用したリチウム二次電池を、図面を参照してさらに詳細に説明する。
すなわち、本発明の正極材料を使用したリチウム二次電池は、図5に示すように開口部10aが負極蓋板20で密封されたボタン形の正極ケース10内を微細孔を有するセパレータ30で区画し、区画された正極側空間内に正極集電体40を正極ケース10側に配置した正極50が収納される一方、負極側空間内に負極集電体60を負極蓋板20側に配置した負極70が収納されたものである。
【0049】
なお、セパレータ30としては、多孔質で電解液を通したり含んだりすることのできる、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂製の不織布、織布および編布、ガラスフィルムなどを使用することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
コバチック法(Kovacic法)により、ベンゼンを塩化第二銅と塩化アルミニウムにより重合してポリフェニレンを得た。これを乾燥、分級し粒子径が300μm以下の粉末を得た。この粉末をチッ素中で室温から500℃まで2時間で昇温したのち、500℃から700℃まで5時間で昇温し、700℃で1時間保持し焼成を行った。得られた焼成粉は、元素分析の結果、炭素と水素のみで構成されており、H/Cの原子比は0.24、真密度は、2.02g/cm3であった。X線回折ではピークが観測されず、非晶質であることが分かった。
【0051】
この焼成粉を1.4g、セルロースを0.6g、デンカブラック〔電気化学工業(株)製〕を0.1g、エタノールを20ml、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.5%水溶液を20ml計り、これらをミキサーで10分間混合し、次いで130×130mmのステンレス製のバットに流し込み、乾燥して紙状の炭素フィルムを得た。
【0052】
一方、500mlのセパラブルフラスコに、フェノールを94g、アンモニア水を4ml、LiOH・H2Oを10g、37重量%ホルムアルデヒド水溶液を97gの順に入れ、混合しながら60分沸騰させた。反応終了後、約20mmHgの減圧下で加温脱水を行い、樹脂温度が70℃になったところで脱水を中止した。放冷後、樹脂温度が65℃になったところで、200mlのメタノールを加え、レゾール系フェノール樹脂のワニスを得た。
【0053】
炭素フィルムに上記ワニスを4ml含浸させ、80℃で一昼夜保持し硬化させた。硬化後さらに160℃で100kgf/cm2の圧力を加えながら10分間保持した。これを黒鉛板で挟み、チッ素雰囲気中で室温から160℃まで30分間で昇温し、その後640℃まで3時間で昇温して640℃で1時間保持し、焼成を行った。焼成後、40mm×40mmに切り出し炭素電極を得た。
【0054】
得られた電極を、対極に40mm角のLi箔、セパレータにはガラス繊維ろ紙、電解液にはLiPF6の1モル/lの炭酸エチレン/1,2−ジメトキシエタン(体積比1:1)溶液を用いてセルを組み、外部で電気的に短絡し、一晩放置し、対極と同電位になるまで炭素電極を充電した(短絡法)。充電により、炭素電極の単位重量当たり、680Ah/kgの初期放電容量が得られた。なお、放電条件は、1.6mA/cm2の定電流放電、放電終止電位は3V(対Li/Li+)と、セルの組み立てと短絡による充電は、アルゴン置換グローブボックス中で行った。
【0055】
充電された電極を、1,2−ジメトキシエタンで洗浄して塩を除去したのち、7Li−NMRスペクトルを図1に示す。図1において、ガウス曲線とローレンツ曲線とに波形分離を試みた。化学シフトが−0.62ppmのローレンツ曲線の波形を持つバンドは共有結合性Li2分子に対応する。化学シフトが9,85ppmのガウス曲線の波形を持つバンドは、イオン性リチウムに対応する。
【0056】
充電された電極について、サンプル量を5mgとし、昇温速度60℃/分でDTA測定を行った。電極は、セル中の状態との差異が出ないように、アルゴン置換グローブボックス中でセルから取り出したのち速やかにTG−DTA測定を行った。従って、炭素電極に吸収された電解液量もほぼセル中と同じである。なお、熱分析は、示差熱分析装置〔理学電機(株)製TAS−200〕を用いて行った。
【0057】
図2に、本実施例のDTA信号の経時的変化をDTA曲線として示す。なお、DTA信号は、試料と標準物質の温度差により熱電対に生じた電位差を示したものである。
図2によると、89.5℃、169.1℃、270.0℃の3つの発熱ピークが現れている。これらの発熱ピークのうち、激しい重量減少と対応している2番目のピーク(169.1℃)の立ち上がりの温度と立ち上がり部分の傾きを、昇温時の発熱反応の急峻さの指標として採用した。
このとき、立ち上がりの温度は、DTA装置付属の解析プログラムにより求めた。該傾きは、DTA曲線は該当部分を拡大図から算出し、試料の単位重量当たりの値に換算した。これらの結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
人造黒鉛をPVDFバインダー〔呉羽化学工業(株)社製〕を用いて40mm角の電極とし、電解液として、1モル/lのLiPF6の炭酸エチレン/炭酸ジメチル(体積比1:1)溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセルを組み、短絡法で充電した。初期放電容量は330Ah/kgであった。
実施例1と同様にしてDTA測定を行った。DTA曲線を図3に示した。
図3によると、87.9℃、170.6℃の2つの発熱ピークと、606.4℃の吸熱ピークが観察され、急激な重量減少と対応している2番目の発熱ピーク(170.6℃)は非常に急峻な立ち上がりを見せている。
2番目の発熱ピーク(170.6℃)についての立ち上がり温度および立ち上がり部分の傾きを表1に示す。
【0059】
比較例2
リチウムをクラスターとして吸蔵するタイプのピッチを原料とする非晶質炭素質材料を用いて、40mm角の電極を作製し、実施例1と同様にしてセルを組み、短絡法で充電した。初期放電容量は、550Ah/kgであった。
実施例1と同様にしてDTA測定を行った。そのDTA曲線を図4に示した。
図4によると、2つの発熱ピークと1つの吸熱ピークが観測された。そのうち、急激な重量減少と対応している2番目の発熱ピーク(172.4℃)は非常に急峻な立ち上がりを見せている。
2番目の発熱ピーク(172.4℃)についての立ち上がり温度および立ち上がり部分の傾きを表1に示す。
【0060】
また、図6によると、比較例2に吸蔵された7LiのNMRスペクトルにおいて、化学シフト=0ppm付近の共有結合性のバンドが観測されない。最大のバンドは100ppm付近にあり、これはリチウムクラスターに帰属されるものである。30ppm付近には、インターカレーションバンドも観察される。270ppm付近のバンドは、金属イオンによるものである。
このスペクトルから、比較例2の炭素はリチウムを共有結合性Li2分子として吸蔵できないことが分かる。
【0061】
【表1】
【0062】
表1によると、実施例1の発熱ピーク立ち上がり部分の傾きが、比較例1〜2のものと比べて格段に小さいことが分かった。また、発熱ピーク立ち上がり温度も実施例1が最も高い。
以上のことから、リチウム吸蔵量の最も多い実施例1の炭素質材料は、急激な温度上昇によっても反応が穏やかであることが分かった。
【0063】
【発明の効果】
本発明のリチウム二次電池に用いた炭素質材料は、リチウムを担持した状態でも構造的に安定である上、リチウムイオンの吸蔵量を大幅に増大することができる。また、吸脱着の際の構造変化もなく、リチウムイオン吸蔵放出反応速度も速い。このため、本発明のリチウム二次電池は、高容量でサイクル安定性に優れ、高出力(高電流密度)の充放電にも対応でき、常に安定なリチウム二次電池となる。
さらに、本発明のリチウム二次電池は、特に電気自動車用のように大型の非水電界液二次電池の安定性をなお一層高める上で非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の炭素質材料の7Li−NMRスペクトルのチャートである。
【図2】 実施例1のDTA曲線およびTG曲線のチャートである。
【図3】 比較例1のDTA曲線およびTG曲線のチャートである。
【図4】 比較例2のDTA曲線およびTG曲線のチャートである。
【図5】 本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面構成図である。
【図6】 比較例2の非晶質材料に300Ah/kgのリチウムを吸蔵させたものの7Li−NMRスペクトル図である。
【符号の説明】
1 ケース(Cu)
2 封口板(Al)
3 負極
4 セパレータ(電界液含有)
5 正極
6 集電体(Al)
7 O−リング
Claims (10)
- 縮環芳香族構造を有し、かつその構造が無秩序積層構造である炭素質材料を電極に用いたリチウム二次電池であって、該電極が、該炭素質材料に有機繊維を混抄し、フィルムまたはシートを形成した後、該フィルムまたはシートに熱硬化性樹脂を含浸、硬化して繊維薄板とし、該繊維薄板を構成する有機繊維、熱硬化性樹脂をアモルファスの状態で炭素化(焼成)することにより得られたものである、リチウム二次電池。
- 炭素質材料が、5mg±0.5mgの試料について昇温速度60℃/分で行った示差熱分析法による熱分析曲線に現れる発熱ピークの立ち上がり温度が141℃以上であり、かつ該発熱ピークの立ち上がり部分の傾きが30μV/(s・mg)以下のものである請求項1項記載のリチウム二次電池。
- 炭素質材料が、ポリフェニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンキシレン)、ポリスチレン、ノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種の有機高分子化合物を焼成してなるものである請求項1〜2のいずれか1項記載のリチウム二次電池。
- 有機高分子化合物が、ポリフェニレンである請求項3記載のリチウム二次電池。
- ポリフェニレンが、コバチック法により製造されたものであり、焼成温度が、650〜900℃である請求項4項記載のリチウム二次電池。
- 有機繊維がセルロース繊維、レーヨン繊維、ピッチ繊維、リグニン繊維、フェノール繊維およびアクリル樹脂繊維の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5いずれか1項記載のリチウム二次電池。
- 炭素質材料に対する有機繊維の混抄割合が、10〜70重量%である請求項1〜6いずれか1項記載のリチウム二次電池。
- フィルムまたはシートの厚さが0.05〜1mmである請求項1〜7いずれか1項記載のリチウム二次電池。
- 繊維薄板の焼成を600〜1,200℃で0.5〜4時間、非酸化性雰囲気下で、該繊維薄板を平らな黒鉛板で挟んで行う請求項1〜8いずれか1項記載のリチウム二次電池。
- 請求項1〜5いずれかに記載の炭素質材料に、有機繊維を混抄し、フィルムまたはシートを形成した後、該フィルムまたはシートに熱硬化性樹脂を含浸、硬化して繊維薄板とし、該繊維薄板を構成する有機繊維、熱硬化性樹脂を600〜1,200℃で0 . 5〜4時間、非酸化性雰囲気下で、該繊維薄板を平らな黒鉛板で挟むことによりアモルファスの状態で炭素化(焼成)するリチウム二次電池用電極の製造方法。
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