JP3973084B2 - 平面トランス、多層基板およびスイッチング電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センタータップを有する平面トランス、平面トランスの少なくとも一部を含む多層基板、および平面トランスを含むスイッチング電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源は、例えばIC(集積回路)を含むような種々の電子機器に使用されている。絶縁型のスイッチング電源はトランスを含んでいる。近年、ICの集積度の増大に伴うICの動作電圧の低下、大電流化等により、スイッチング電源には小型化、高効率化と共に大電流化が求められている。そのため、スイッチング電源に使用されるトランスにも、小型化、伝送効率の向上および損失の低減が求められている。最近は、トランスの小型化のために、ワイヤーをボビンに巻回して構成された巻線型コイルに代わって、プリントコイルや平面コイルが用いられるようになってきた。プリントコイルは、例えば、それぞれ、両面にパターン化導体よりなるコイルが形成された複数の両面プリント基板を、絶縁層を介して積層して構成されたものである。また、平面コイルは、例えば、コイル形状に打ち抜かれた複数の薄い銅板を、絶縁層を介して積み重ねて構成されたものである。更に、最近は、スイッチング電源におけるスイッチング周波数を高くして、トランスに用いられるコアにおける最大磁束密度を下げることによって、コアを小型化することも図られている。
【0003】
ところで、スイッチング電源における出力電流の増大は、トランスにおいて、巻線による損失である銅損を増大させる。また、スイッチング電源におけるスイッチング周波数の上昇は、表皮効果の影響により、トランスのコイルを構成する導体の交流抵抗の増大を引き起こす。そのため、これも上記銅損を増大させる。更に、スイッチング電源における出力電流の増大とスイッチング周波数の上昇は、トランスの二次巻線に接続されるパターン化導体における損失も増大させる。
【0004】
トランスにおける銅損を低減させる技術として、特開平5−226155号公報には、コイルの巻線の各ターン毎の部分の幅を、中心から遠ざかるに従って増大させることによって、コイル全体の抵抗値を下げる技術が開示されている。また、特開平4−5808号公報には、平面コイルの厚さを、この平面コイルを構成する導体のスキンディプス(表皮効果による表皮の厚さ)の〔π×0.4〕倍以上、〔π×0.6〕倍以下とすることによって、一次コイルと二次コイルとを含むコイル部の損失を低減する技術が開示されている。
【0005】
また、特開平4−73911号公報には、銅箔を用いた一次巻線および二次巻線を交互に配置した高周波用トランスが開示されている。この高周波用トランスでは、電流の流れる方向が互いに逆になる一次巻線と二次巻線とを交互に配置することで、近接効果の影響が低減され、銅損が低減される。
【0006】
ところで、ICの動作電圧の低下、大電流化により、スイッチング電源では、出力の低電圧化および大電流化が求められるようになってきた。そのため、スイッチング電源に用いられるトランスでは、二次巻線の巻数は少なくなり、1ターンとされることも多くなってきた。
【0007】
例えば、特開平11−354342号公報には、2つの1ターンの低圧側コイルと、この2つの低圧側コイルを挟むように配置された一対の高圧側コイルとを有するトランスが開示されている。このトランスにおいて、高圧側コイルは一次巻線に相当し、低圧側コイルは二次巻線に相当する。この公報に示されたトランスでは、2つの低圧側コイルが直列に接続され、その接続部はセンタータップととして外部の回路に接続されるようになっている。また、2つの低圧側コイルにおいて、センタータップとなる端部とは反対側の端部には、それぞれ、外部の回路に接続される出力端子が設けられている。また、センタータップには端子が接続され、この端子は2つの出力端子の間に配置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように二次巻線の巻数が少なくなると、二次巻線の巻線部分のみならず、二次巻線をトランスの外部の回路へ接続するための接続部分の構造が、トランス全体の特性に与える影響が大きくなってくる。
【0009】
例えば、特開平11−354342号公報に示されたトランスでは、直列に接続された2つの低圧側コイルは、2つの出力端子の間で2ターンの巻線を構成するのが理想的である。しかしながら、このトランスでは、センタータップに接続された端子が2つの出力端子の間に配置されているため、センタータップに接続された端子を配置するためのスペースの分だけ、2つの出力端子の間の距離が大きくなっている。そのため、このトランスでは、直列に接続された2つの低圧側コイルは完全な2ターンの巻線を構成していない。その結果、このトランスでは、2つの低圧側コイルにおいて、磁束の漏れに起因する漏れインダクタンスが大きくなり、このことが、トランスの伝送効率を低下させるという問題点がある。
【0010】
また、特開平11−354342号公報に示されたトランスでは、前述のように、2つの低圧側コイルは完全な2ターンの巻線を構成していない。そのため、このトランスでは、電流の流れる方向が互いに逆になる高圧側コイルと低圧側コイルとを積層しても、近接効果の影響を十分に低減することができず、その結果、トランスにおける損失を十分に低減することができないという問題点がある。
【0011】
従来、特開平5−226155号公報や特開平4−5808号公報や特開平4−73911号公報に示されるように、コイルの巻線部分における損失を低減する技術は提案されていた。しかしながら、従来は、トランスの二次巻線における接続部分の構造がトランスの特性に与える影響については考慮されていなかった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、伝送効率を向上でき、且つ損失を低減できるようにした平面トランス、この平面トランスの少なくとも一部を含む多層基板、および平面トランスを含むスイッチング電源装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の平面トランスは、
一次巻線と、
平面的に配置された導体によって形成された第1の二次巻線と、
第1の二次巻線に対して、第1の二次巻線の厚さ方向に隣接するように配置された絶縁層と、
平面的に配置された導体によって形成され、第1の二次巻線に対して絶縁層を介して重ね合わされた第2の二次巻線と、
第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、
第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、
第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを備え、
第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に第3の出力端子部が配置されることなく、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されているものである。
【0014】
本発明の平面トランスでは、第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に第3の出力端子部が配置されることなく、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。これにより、第1の出力端子部と第2の出力端子部の間に第3の出力端子部が配置される場合に比べて、第1および第2の二次巻線における漏れインダクタンスが小さくなると共に、平面トランスにおける損失が低減される。
【0015】
本発明の平面トランスにおいて、第3の出力端子部は、第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置されていてもよい。
【0016】
また、本発明の平面トランスにおいて、第3の出力端子部は、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、第2の出力端子部に隣接するように配置され、第2の二次巻線の一端部は、第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、平面トランスは、更に、第2の二次巻線の一端部と第2の出力端子部とを接続する端子接続部を備えていてもよい。
【0017】
また、本発明の平面トランスは、厚さ方向に積層された複数組の絶縁層、第1の二次巻線および第2の二次巻線を備え、複数の第1の二次巻線同士は並列に接続され、複数の第2の二次巻線同士は並列に接続されていてもよい。
【0018】
本発明の多層基板は、本発明の平面トランスのうちの少なくとも第1の二次巻線、絶縁層、第2の二次巻線、第1の出力端子部、第2の出力端子部および第3の出力端子部を含み、スイッチング電源装置を構成するために用いられるものである。本発明の多層基板は、複数の第1の整流素子が搭載される複数の第1の整流素子搭載部と、複数の第2の整流素子が搭載される複数の第2の整流素子搭載部とを備え、第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部は、多層基板の面に平行な方向に沿って交互に配置されている。本発明の多層基板は、更に、複数の第1の整流素子搭載部に搭載される複数の第1の整流素子と第1の出力端子部とを接続するための第1の接続部を含む第1の接続層と、複数の第2の整流素子搭載部に搭載される複数の第2の整流素子と第2の出力端子部とを接続するための第2の接続部を含む第2の接続層とを備えている。
【0019】
本発明の多層基板では、第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に第3の出力端子部が配置されることなく、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。これにより、第1の出力端子部と第2の出力端子部の間に第3の出力端子部が配置される場合に比べて、第1の接続部および第2の接続部において、第1の接続部および第2の接続部を流れる電流の交流成分の方向が一つの方向のみとなる領域の長さが短くなる。その結果、第1の接続部および第2の接続部における損失が低減される。
【0020】
本発明の多層基板において、第3の出力端子部は、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、第2の出力端子部に隣接するように配置され、第2の二次巻線の一端部は、第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、多層基板は、更に、第2の二次巻線の一端部と第2の出力端子部とを接続する端子接続部を備えていてもよい。
【0021】
また、本発明の多層基板は、厚さ方向に積層された複数組の絶縁層、第1の二次巻線および第2の二次巻線を備え、複数の第1の二次巻線同士は並列に接続され、複数の第2の二次巻線同士は並列に接続されていてもよい。
【0022】
また、本発明の多層基板において、第1の接続層と第2の接続層は、多層基板の厚さ方向に交互に配置されていてもよい。
【0023】
本発明のスイッチング電源装置は、本発明の平面トランスと、入力直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧を平面トランスの一次巻線に供給するスイッチング回路と、平面トランスの第1の二次巻線および第2の二次巻線より出力される交流電圧を整流する整流回路とを備え、整流回路は、第1の出力端子部に接続される複数の第1の整流素子と、第2の出力端子部に接続される複数の第2の整流素子とを含むものである。
【0024】
また、本発明のスイッチング電源装置は、平面トランスのうちの少なくとも第1の二次巻線、絶縁層、第2の二次巻線、第1の出力端子部、第2の出力端子部および第3の出力端子部を含む多層基板を備えている。多層基板は、複数の第1の整流素子が搭載される複数の第1の整流素子搭載部と、複数の第2の整流素子が搭載される複数の第2の整流素子搭載部とを有し、第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部は、多層基板の面に平行な方向に沿って交互に配置されている。多層基板は、更に、複数の第1の整流素子搭載部に搭載される複数の第1の整流素子と第1の出力端子部とを接続するための第1の接続部を含む第1の接続層と、複数の第2の整流素子搭載部に搭載される複数の第2の整流素子と第2の出力端子部とを接続するための第2の接続部を含む第2の接続層とを有している。
【0025】
本発明のスイッチング電源装置において、第3の出力端子部は、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、第2の出力端子部に隣接するように配置され、第2の二次巻線の一端部は、第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、多層基板は、更に、第2の二次巻線の一端部と第2の出力端子部とを接続する端子接続部を有していてもよい。
【0026】
また、本発明のスイッチング電源装置において、多層基板は、厚さ方向に積層された複数組の絶縁層、第1の二次巻線および第2の二次巻線を有し、複数の第1の二次巻線同士は並列に接続され、複数の第2の二次巻線同士は並列に接続されていてもよい。
【0027】
また、本発明のスイッチング電源装置において、第1の接続層と第2の接続層は、多層基板の厚さ方向に交互に配置されていてもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る平面トランスの構成の概略について説明する。図1は本実施の形態に係る平面トランスの平面図、図2は本実施の形態に係る平面トランスの正面図である。
【0029】
本実施の形態に係る平面トランス1は、それぞれ平面的に配置された導体によって形成された一次巻線と二次巻線とを備えている。また、平面トランス1は、複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層されて構成された積層体10と、この積層体10に装着されたE型のコア2A,2Bとを備えている。積層体10の中央部には、積層体10を厚さ方向に貫通する孔10aが形成されている。コア2A,2Bは、中央の凸部同士が孔10aを通って突き合わされるように配置されている。
【0030】
積層体10は端子領域11,12を有している。端子領域11,12は、互いに反対側の位置に配置され、且つコア2A,2Bの外側に配置されている。端子領域11には一次巻線に接続された入力端子部13,14が設けられている。入力端子部13,14は、それぞれスルーホール13a,14aを有している。スルーホール13a,14aには、それぞれ導体からなる端子部材13b,14bが挿入されている。端子領域12には二次巻線に接続された第1の出力端子部15、第2の出力端子部16および第3の出力端子部17が設けられている。
【0031】
第1の出力端子部15と第2の出力端子部16は、積層体10の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部17は、出力端子部15,16よりも、積層体10の孔10aに近い位置に配置されている。出力端子部15,16,17は、それぞれスルーホール15a,16a,17aを有している。スルーホール15a,16aには、それぞれ導体からなる端子部材15b,16bが挿入されている。スルーホール17aには、導体からなるバスバー17bが挿入されている。コア2A,2Bは、第3の出力端子部17の上側および下を覆わない形状になっている。
【0032】
積層体10は、S11層、S12層、P11層、P12層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層30とを有している。4種類の導体層は、それぞれ箔状を含む平板状の導体によって形成されている。
【0033】
図3はS11層とその下の絶縁層30とを示す平面図、図4はS12層とその下の絶縁層30とを示す平面図、図5はP11層とその下の絶縁層30とを示す平面図、図6はP12層とその下の絶縁層30とを示す平面図である。
【0034】
図3に示したように、S11層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第1の二次巻線21と、それぞれスルーホール13a,14a,16aに接続された端子層33,34,36を有している。第1の二次巻線21の一端部は、スルーホール15aを有する第1の出力端子部15に接続されている。第1の二次巻線21の他端部は、スルーホール17aを有する第3の出力端子部17に接続されている。第1の二次巻線21は、一端部から他端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0035】
図4に示したように、S12層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第2の二次巻線22と、それぞれスルーホール13a,14a,15aに接続された端子層33,34,35を有している。第2の二次巻線22の一端部は、スルーホール16aを有する第2の出力端子部16に接続されている。第2の二次巻線22の他端部は、スルーホール17aを有する第3の出力端子部17に接続されていると共に、スルーホール17aを介して第1の二次巻線21の他端部に接続されている。このようにして、第1の二次巻線21と第2の二次巻線22は直列に接続されている。第1の二次巻線21と第2の二次巻線22の接続部はセンタータップとなる。第2の二次巻線22は、一端部から他端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0036】
図5に示したように、P11層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線23と、それぞれスルーホール13a,15a,16aに接続された端子層33,35,36を有している。巻線23の一端部は、スルーホール14aを有する入力端子部14に接続されている。巻線23の内側の1ターン分の巻線部分における両端部の位置には、スルーホール25,26が設けられている。巻線23は、内側の端部から外側の端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0037】
図6に示したように、P12層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線24と、それぞれスルーホール14a,15a,16aに接続された端子層34,35,36を有している。巻線24の一端部は、スルーホール13aを有する入力端子部13に接続されている。巻線24の内側の1ターン分の巻線部分における両端部は、それぞれスルーホール25,26に接続されている。巻線24は、内側の端部から外側の端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0038】
後で説明するように、P11層とP12層は、1つの絶縁層30を介して隣接するように配置される。スルーホール25,26は、P11層とP12層の間に配置された絶縁層30にのみ形成されている。
【0039】
巻線23の内側の1ターン分の巻線部分と巻線24の内側の1ターン分の巻線部分は、スルーホール25,26によって並列に接続されている。従って、巻線23,24によって3ターンの一次巻線が構成されている。
【0040】
積層体10は12層の導体層を有している。この12層の導体層を、積層体10の一方の面側から順に、第1層、第2層、第3層、…、第11層、第12層と呼ぶ。図3に示したS11層は第1層、第5層および第9層に用いられている。図4に示したS12層は第4層、第8層および第12層に用いられている。図5に示したP11層は第2層、第6層および第10層に用いられている。図6に示したP12層は第3層、第7層および第11層に用いられている。このような配置により、電流の流れる方向が互いに逆になる一次巻線と二次巻線が厚さ方向に交互に配置されることになる。これにより、近接効果の影響を低減することができる。
【0041】
本実施の形態では、第1の二次巻線21および第2の二次巻線22と、これらの間の絶縁層30は、3組設けられている。3つの第1の二次巻線21同士はスルーホール15a,17aを介して並列に接続され、3つの第2の二次巻線22同士はスルーホール16a,17aを介して並列に接続されている。
【0042】
各導体層は、例えば、絶縁基板の両面に導体層が形成された両面プリント基板における各導体層をエッチングすることによって形成してもよいし、導体板を打ち抜いて形成してもよい。また、各導体層は、スパッタ法等の薄膜形成技術によって形成してもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態では、第1の二次巻線21と第2の二次巻線22は、絶縁層30を介して重ね合わされている。第1の二次巻線21の一端部には第1の出力端子部15が接続され、第2の二次巻線22の一端部には第2の出力端子部16が接続されている。第1の二次巻線21の他端部および第2の二次巻線22の他端部は、第3の出力端子部17に接続されている。
【0044】
図1に示したように、第1の出力端子部15と第2の出力端子部16は、両者の間に第3の出力端子部17が配置されることなく、第1の二次巻線21の面および第2の二次巻線22の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部17は、第1の出力端子部15および第2の出力端子部16よりも、第1の二次巻線21および第2の二次巻線22の内周部に近い位置に配置されている。
【0045】
本実施の形態によれば、第1の出力端子部15と第2の出力端子部16の間に第3の出力端子部17が配置される場合に比べて、第1の出力端子部15と第2の出力端子部16の間の距離を短くすることができる。従って、本実施の形態によれば、第1の二次巻線21と第2の二次巻線22とで、完全に近い2ターンの巻線を形成することができる。その結果、本実施の形態によれば、第1の二次巻線21および第2の二次巻線22における漏れインダクタンスを小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、トランス1における伝送効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、第1の二次巻線21と第2の二次巻線22とで、完全に近い2ターンの巻線を形成することができる。従って、本実施の形態によれば、電流の流れる方向が互いに逆になる一次巻線と二次巻線とを交互に配置することによって、近接効果の影響を十分に低減することが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、高周波電流に対するトランス1の交流抵抗を低減して、トランス1における損失を低減することができる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、図7および図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る平面トランスの構成の概略について説明する。図7は本実施の形態に係る平面トランスの平面図、図8は本実施の形態に係る平面トランスの正面図である。
【0048】
本実施の形態に係る平面トランス41は、それぞれ平面的に配置された導体によって形成された一次巻線と二次巻線とを備えている。また、平面トランス41は、複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層されて構成された積層体50と、この積層体50に装着されたE型のコア42A,42Bとを備えている。積層体50の中央部には、積層体50を厚さ方向に貫通する孔50aが形成されている。コア42A,42Bは、中央の凸部同士が孔50aを通って突き合わされるように配置されている。
【0049】
積層体50は端子領域51,52を有している。端子領域51,52は、互いに反対側の位置に配置され、且つコア42A,42Bの外側に配置されている。端子領域51には一次巻線に接続された入力端子部53,54が設けられている。入力端子部53,54は、それぞれスルーホール53a,54aを有している。スルーホール53a,54aには、それぞれ導体からなる端子部材53b,54bが挿入されている。端子領域52には二次巻線に接続された第1の出力端子部55、第2の出力端子部56および第3の出力端子部57が設けられている。
【0050】
第1の出力端子部55と第2の出力端子部56は、積層体50の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部57は、第2の出力端子部56における第1の出力端子部55とは反対側に配置されている。出力端子部55,56,57は、それぞれスルーホール55a,56a,57aを有している。スルーホール55a,56a,57aには、それぞれ導体からなる端子部材55b,56b,57bが挿入されている。
【0051】
積層体50は、S21層、S22層、P21層、P22層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層70とを有している。4種類の導体層は、それぞれ箔状を含む平板状の導体によって形成されている。
【0052】
図9はS21層とその下の絶縁層70とを示す平面図、図10はS22層とその下の絶縁層70とを示す平面図、図11はP21層とその下の絶縁層70とを示す平面図、図12はP22層とその下の絶縁層70とを示す平面図である。
【0053】
図9に示したように、S21層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第1の二次巻線61と、それぞれスルーホール53a,54aに接続された端子層73,74と、スルーホール56aに接続された端子接続部67を有している。第1の二次巻線61の一端部は、スルーホール55aを有する第1の出力端子部55に接続されている。第1の二次巻線61の他端部は、スルーホール57aを有する第3の端子部57に接続されている。第1の二次巻線61は、一端部から他端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。端子接続部67は、スルーホール56aが配置された位置から孔50aの近傍にかけて形成されている。端子接続部67における孔50aの近傍の位置には、スルーホール68が設けられている。このスルーホール68は、積層体50を貫通するように形成されている。
【0054】
図10に示したように、S22層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第2の二次巻線62と、それぞれスルーホール53a,54a,55a,56aに接続された端子層73,74,75,76を有している。第2の二次巻線62の一端部は、スルーホール68に接続され、このスルーホール68を介して、図9に示した端子接続部67に接続されている。端子接続部67はスルーホール56aを有する第2の出力端子部56に接続されている。従って、第2の二次巻線62の一端部は、スルーホール68および端子接続部67を介して第2の出力端子部56に接続されている。第2の二次巻線62の他端部は、スルーホール57aを有する第3の端子部57に接続されていると共に、スルーホール57aを介して第1の二次巻線61の他端部に接続されている。このようにして、第1の二次巻線61と第2の二次巻線62は直列に接続されている。第2の二次巻線62は、一端部から他端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0055】
図11に示したように、P21層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線63と、それぞれスルーホール53a,55a,56a,57aに接続された端子層73,75,76,77を有している。巻線63の一端部は、スルーホール54aを有する入力端子部54に接続されている。巻線63の内側の1ターン分の巻線部分における両端部の位置には、スルーホール65,66が設けられている。巻線63は、内側の端部から外側の端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0056】
図12に示したように、P22層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線64と、それぞれスルーホール54a,55a,56aに接続された端子層74,75,76を有している。巻線64の一端部は、スルーホール53aを有する入力端子部53に接続されている。巻線64の内側の1ターン分の巻線部分における両端部は、それぞれスルーホール65,66に接続されている。巻線64は、内側の端部から外側の端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0057】
後で説明するように、P21層とP22層は、1つの絶縁層70を介して隣接するように配置される。スルーホール65,66は、P21層とP22層の間に配置された絶縁層70にのみ形成されている。
【0058】
巻線63の内側の1ターン分の巻線部分と巻線64の内側の1ターン分の巻線部分は、スルーホール65,66によって並列に接続されている。従って、巻線63,64によって3ターンの一次巻線が構成されている。
【0059】
積層体50は12層の導体層を有している。この12層の導体層を、積層体50の一方の面側から順に、第1層、第2層、第3層、…、第11層、第12層と呼ぶ。図9に示したS21層は第1層、第5層および第9層に用いられている。図10に示したS22層は第4層、第8層および第12層に用いられている。図11に示したP21層は第2層、第6層および第10層に用いられている。図12に示したP22層は第3層、第7層および第11層に用いられている。
【0060】
従って、本実施の形態では、第1の二次巻線61および第2の二次巻線62と、これらの間の絶縁層70は、3組設けられている。3つの第1の二次巻線61同士はスルーホール55a,57aを介して並列に接続され、3つの第2の二次巻線62同士はスルーホール56a,57aを介して並列に接続されている。
【0061】
各導体層は、例えば、絶縁基板の両面に導体層が形成された両面プリント基板における各導体層をエッチングすることによって形成してもよいし、導体板を打ち抜いて形成してもよい。また、各導体層は、スパッタ法等の薄膜形成技術によって形成してもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態では、第1の二次巻線61と第2の二次巻線62は、絶縁層70を介して重ね合わされている。第1の二次巻線61の一端部には第1の出力端子部55が接続され、第2の二次巻線62の一端部には第2の出力端子部56が接続されている。第1の二次巻線61の他端部および第2の二次巻線62の他端部は第3の端子部57に接続されている。
【0063】
図7に示したように、第1の出力端子部55と第2の出力端子部56は、両者の間に第3の出力端子部57が配置されることなく、第1の二次巻線61の面および第2の二次巻線62の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部57は、第1の二次巻線61の面および第2の二次巻線62の面に平行な方向に沿って、第2の出力端子部56に隣接するように配置されている。また、第2の二次巻線62の一端部は、第1の出力端子部55および第2の出力端子部56よりも、第1の二次巻線61および第2の二次巻線62の内周部に近い位置に配置されている。第2の二次巻線62の一端部と第2の出力端子部56とは、第1の二次巻線61と同一平面上に配置された端子接続部67によって接続されている。
【0064】
本実施の形態では、第3の出力端子部57が第2の出力端子部56に隣接するように配置されているので、第1の実施の形態に比べて、第3の出力端子部57に対する他の回路の接続が容易になる。本実施の形態におけるその他の作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
ここで、第1の実施の形態に係る平面トランスおよび第2の実施の形態に係る平面トランスとの比較のための比較例を挙げる。この比較例の平面トランスの構成について、図13ないし図17を参照して説明する。
【0066】
図13は比較例のトランスの平面図である。比較例の平面トランス101は、それぞれ平面的に配置された導体によって形成された一次巻線と二次巻線とを備えている。また、比較例の平面トランス101は、複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層されて構成された積層体110と、この積層体110に装着された2つのE型のコア102とを備えている。積層体110の中央部には、積層体110を厚さ方向に貫通する孔110aが形成されている。2つのコア102は、中央の凸部同士が孔110aを通って突き合わされるように配置されている。
【0067】
積層体110は端子領域111,112を有している。端子領域111,112は、互いに反対側の位置に配置され、且つコア102の外側に配置されている。端子領域111には一次巻線に接続された入力端子部113,114が設けられている。入力端子部113,114は、それぞれスルーホール113a,114aを有している。端子領域112には二次巻線に接続された第1の出力端子部115、第2の出力端子部116および第3の出力端子部117が設けられている。
【0068】
第3の出力端子部117は、出力端子部115,116の間に配置されている。出力端子部115,116,117は、それぞれスルーホール115a,116a,117aを有している。
【0069】
積層体110は、S31層、S32層、P31層、P32層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層130とを有している。4種類の導体層は、それぞれ箔状を含む平板状の導体によって形成されている。
【0070】
図14はS31層とその下の絶縁層130とを示す平面図、図15はS32層とその下の絶縁層130とを示す平面図、図16はP31層とその下の絶縁層130とを示す平面図、図17はP32層とその下の絶縁層130とを示す平面図である。
【0071】
図14に示したように、S31層は、1ターンの第1の二次巻線121と、それぞれスルーホール113a,114a,116aに接続された端子層133,134,136を有している。第1の二次巻線121の一端部は、スルーホール115aを有する第1の出力端子部115に接続されている。第1の二次巻線121の他端部は、スルーホール117aを有する第3の出力端子部117に接続されている。第1の二次巻線121は、一端部から他端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0072】
図15に示したように、S32層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第2の二次巻線122と、それぞれスルーホール113a,114a,115aに接続された端子層133,134,135を有している。第2の二次巻線122の一端部は、スルーホール116aに接続され、このスルーホール116aを介して第2の出力端子部116に接続されている。第2の二次巻線122の他端部は、スルーホール117aを有する第3の出力端子部117に接続されていると共に、このスルーホール117aを介して第1の二次巻線121の他端部に接続されている。このようにして、第1の二次巻線121と第2の二次巻線122は直列に接続されている。第2の二次巻線122は、一端部から他端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0073】
図16に示したように、P31層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線123と、それぞれスルーホール113a,115a,116a,117aに接続された端子層133,135,136,137を有している。巻線123の一端部は、スルーホール114aを有する入力端子部114に接続されている。巻線123の内側の1ターン分の巻線部分における両端部の位置には、スルーホール125,126が設けられている。巻線123は、内側の端部から外側の端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0074】
図17に示したように、P32層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線124と、それぞれスルーホール114a,115a,116a,117aに接続された端子層134,135,136,137を有している。巻線124の一端部は、スルーホール113aを有する入力端子部113に接続されている。巻線124の内側の1ターン分の巻線部分における両端部は、スルーホール125,126に接続されている。巻線124は、内側の端部から外側の端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0075】
P31層とP32層は、1つの絶縁層130を介して隣接するように配置される。スルーホール125,126は、P31層とP32層の間に配置された絶縁層130にのみ形成されている。
【0076】
巻線123の内側の1ターン分の巻線部分と巻線124の内側の1ターン分の巻線部分は、スルーホール125,126によって並列に接続されている。従って、巻線123,124によって3ターンの一次巻線が構成されている。
【0077】
積層体110は12層の導体層を有している。この12層の導体層を、積層体110の一方の面側から順に、第1層、第2層、第3層、…、第11層、第12層と呼ぶ。図14に示したS31層は第1層、第5層および第9層に用いられている。図15に示したS32層は第4層、第8層および第12層に用いられている。図16に示したP31層は第2層、第6層および第10層に用いられている。図17に示したP32層は第3層、第7層および第11層に用いられている。
【0078】
次に、第1の実施の形態に係る平面トランスと第2の実施の形態に係る平面トランスと比較例の平面トランスとで、トランスの特性を測定した結果を示す。ここでは、周波数200kHzにおける一次巻線の端子間のインダクタンスLp(200kHz)と、周波数200kHzにおけるトランスの漏れインダクタンスLleak(200kHz)と、周波数200kHzにおける一次巻線側から見たトランスの交流抵抗値Rac(200kHz)、周波数600kHzにおける一次巻線側から見たトランスの交流抵抗値を測定した。なお、この測定の際には、コア2A,2B,42A,42B,102として、フェライトコアを用いた。測定結果を以下の表に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
この測定結果では、第1の実施の形態に係る平面トランスおよび第2の実施の形態に係る平面トランスでは、比較例の平面トランスと比較して、漏れインダクタンスがそれぞれ23.4%、16.1%減少しており、また、交流抵抗値も200kHzにおいてはそれぞれ10.5%、9.2%減少しており、600kHzにおいてはそれぞれ14.4%、10.3%減少している。
【0081】
この測定結果から、第1の実施の形態に係る平面トランスおよび第2の実施の形態に係る平面トランスでは、比較例の平面トランスと比較して、漏れインダクタンスが小さく、結合がよいことから、伝送効率が向上することが分かる。また、第1の実施の形態に係る平面トランスおよび第2の実施の形態に係る平面トランスでは、比較例の平面トランスと比較して、周波数200kHzおよび周波数600kHzにおける交流抵抗が小さいことから、高周波電流が流れる巻線における損失が小さくなることが分かる。
【0082】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る多層基板およびスイッチング電源装置について説明する。まず、図18を参照して、本実施の形態に係るスイッチング電源装置の回路構成の一例について説明する。図18に示した例では、スイッチング電源装置は、直流電圧を入力する入力端子201a,201bと、この入力端子201a,201bより入力される直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路202と、このスイッチング回路202によって変換された後の交流電圧を伝送する平面トランス203と、この平面トランス203によって出力される交流電圧を整流して、直流電圧に変換する整流平滑回路204と、この整流平滑回路204より出力される直流電圧を外部の装置に対して出力するための出力端子205a,205bとを備えている。整流平滑回路204は、本発明における整流回路を含んでいる。
【0083】
平面トランス203は、一次巻線260と、それぞれ1ターンの2つの二次巻線261,262とを備えている。一次巻線260の各端部には入力端子部253,254が設けられている。二次巻線261の一端部には第1の出力端子部255が設けられ、二次巻線262の一端部には第2の出力端子部256が設けられている。2つの二次巻線261,262の他端部同士は接続され、両者の接続部はセンタータップとなる。また、このセンタータップには、第3の出力端子部257が接続されている。
【0084】
スイッチング回路202は、入力端子201a,201bの間に設けられたキャパシタ211と、一端が入力端子201aに接続され、他端が平面トランス203の入力端子部254に接続されたキャパシタ212と、一端が入力端子201bに接続され、他端が平面トランス203の入力端子部254に接続されたキャパシタ213と、入力端子201aと平面トランス203の入力端子部253との間に設けられたスイッチ214と、入力端子201bと平面トランス203の入力端子部253との間に設けられたスイッチ215とを有している。
【0085】
整流平滑回路204は、カソードが平面トランス203の第1の出力端子部255に接続され、アノードが出力端子205bに接続された第1の整流素子(ダイオード)221と、カソードが平面トランス203の第2の出力端子部256に接続され、アノードが出力端子205bに接続された第2の整流素子(ダイオード)222と、平面トランス203の第3の出力端子部257と出力端子205aとの間に設けられたチョークコイル223と、出力端子205a,205bの間に設けられたキャパシタ224とを有している。
【0086】
後で詳しく説明するが、第1の整流素子221は3個設けられ、これらは並列に接続されている。同様に、第2の整流素子222も3個設けられ、これらは並列に接続されている。
【0087】
図18に示したスイッチング電源装置では、スイッチング回路202において、スイッチ214,215の一方がオンのときに他方がオフになるように、スイッチ214,215のオン、オフが繰り返される。これにより、スイッチング回路202によって、入力端子201a,201bに入力された直流電圧が交流電圧に変換されて、平面トランス203の一次巻線260に供給される。この交流電圧は、平面トランス203によって伝送されて、二次巻線261,262より出力される。二次巻線261,262より出力された交流電圧は、整流平滑回路204によって全波整流され、更に平滑化されて直流電圧に変換される。この直流電圧は、出力端子205a,205bより出力される。
【0088】
次に、図19ないし図22を参照して、本実施の形態に係る多層基板250について説明する。この多層基板250は、平面トランス203のうちの少なくとも第1の二次巻線261、絶縁層、第2の二次巻線262、第1の出力端子部255、第2の出力端子部256および第3の出力端子部257を含む。ここでは、多層基板250は、一次巻線260および入力端子部253,254も含むものとする。また、多層基板には、第2の実施の形態におけるE型のコア42A,42Bが装着される。
【0089】
本実施の形態に係る多層基板250は、S41層、S42層、P41層、P42層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層とを有している。4種類の導体層は、それぞれ箔状を含む平板状の導体によって形成されている。
【0090】
図19はS41層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図20はP41層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図21はP42層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図22はS42層とその下の絶縁層270とを示す平面図である。S41層は多層基板250の最上層に用いられるため、図19は多層基板250の平面図でもある。
【0091】
図19に示したように、本実施の形態に係る多層基板250には、第2の実施の形態におけるE型のコア42A,42Bの中央の凸部が挿入される孔250aと、コア42A,42Bの両側の凸部が挿入される孔250b,250cが設けられている。これらの孔250a,250b,250cは多層基板250を厚さ方向に貫通している。
【0092】
また、図19に示したように、多層基板250には、第1の出力端子部255、第2の出力端子部256および第3の出力端子部257が設けられている。第1の出力端子部255と第2の出力端子部256は、多層基板250の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部257は、第2の出力端子部256における第1の出力端子部255とは反対側に配置されている。出力端子部255,256,257は、それぞれスルーホール255a,256a,257aを有している。
【0093】
また、図19に示したように、多層基板250は、3つの第1の整流素子221が搭載される3つの第1の整流素子搭載部281と、3つの第2の整流素子222が搭載される3つの第2の整流素子搭載部282とを備えている。これらの第1の整流素子搭載部281と第2の整流素子搭載部282は、多層基板250の面に平行な方向に沿って交互に配置されている。
【0094】
また、図19に示したように、S41層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第1の二次巻線261と、スルーホール256aに接続された端子接続部267を有している。第1の二次巻線261の一端部は、スルーホール255aを有する第1の出力端子部255に接続されている。第1の二次巻線261の他端部は、スルーホール257aを有する第3の出力端子部257に接続されている。第1の二次巻線261は、一端部から他端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。端子接続部267は、スルーホール256aが配置された位置から孔250aの近傍にかけて形成されている。端子接続部267における孔250aの近傍の位置には、スルーホール268が設けられている。このスルーホール268は、多層基板250を貫通するように形成されている。
【0095】
S41層は、更に、3つの第1の整流素子搭載部281に搭載される3つの第1の整流素子221と第1の出力端子部255とを接続するための第1の接続部291を有している。第1の接続部291は、くし形に形成されている。第1の接続部291において、第1の整流素子搭載部281の近傍の位置には、スルーホール293が設けられている。このスルーホール293は第1の接続部291に接続されている。第1の接続部291と第2の整流素子搭載部282の間の位置には、スルーホール294が設けられている。このスルーホール294は第1の接続部291に接続されていない。
【0096】
図20に示したように、P41層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線263を有している。巻線263の一端部は、図20では図示しない入力端子部254に接続されている。巻線263の内側の1ターン分の巻線部分における両端部の位置には、スルーホール265,266が設けられている。巻線263は、内側の端部から外側の端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0097】
P41層は、更に、3つの第2の整流素子搭載部282に搭載される3つの第2の整流素子222とスルーホール256aとを接続するための第2の接続部292を有している。第2の接続部292は、くし形に形成されている。スルーホール294は第2の接続部292に接続されている。スルーホール293は第2の接続部292に接続されていない。
【0098】
図21に示したように、P42層は、平面的に配置された導体によって形成された2ターンの巻線264を有している。巻線264の一端部は、図21では図示しない入力端子部253に接続されている。巻線264の内側の1ターン分の巻線部分における両端部は、スルーホール265,266に接続されている。巻線264は、内側の端部から外側の端部にかけて反時計回り方向に巻回されている。
【0099】
P42層は、更に、3つの第1の整流素子搭載部281に搭載される3つの第1の整流素子221とスルーホール255aとを接続するための第1の接続部291を有している。スルーホール293は第1の接続部291に接続されている。スルーホール294は第1の接続部291に接続されていない。
【0100】
後で説明するように、P41層とP42層は、1つの絶縁層270を介して隣接するように配置される。スルーホール265,266は、P41層とP42層の間に配置された絶縁層270にのみ形成されている。
【0101】
巻線263の内側の1ターン分の巻線部分と巻線264の内側の1ターン分の巻線部分は、スルーホール265,266によって並列に接続されている。従って、巻線263,264によって3ターンの一次巻線260が構成されている。
【0102】
図22に示したように、S42層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第2の二次巻線262を有している。第2の二次巻線262の一端部は、スルーホール268に接続され、このスルーホール268を介して、図19に示した端子接続部267に接続されている。端子接続部267は、スルーホール256aを介して、S42層における第2の出力端子部256に接続されている。従って、第2の二次巻線262の一端部は、スルーホール268、端子接続部267およびスルーホール256aを介して、第2の出力端子部256に接続されている。第2の二次巻線262の他端部は、スルーホール257aを有する第3の出力端子部257に接続されている。このようにして、第1の二次巻線261と第2の二次巻線262は、第3の出力端子部257を介して直列に接続されている。第2の二次巻線262は、一端部から他端部にかけて時計回り方向に巻回されている。
【0103】
S42層は、更に、3つの第2の整流素子搭載部282に搭載される3つの第2の整流素子222と第2の出力端子部256とを接続するための第2の接続部292を有している。スルーホール294は第2の接続部292に接続されている。スルーホール293は第2の接続部292に接続されていない。
【0104】
多層基板250は12層の導体層を有している。この12層の導体層を、多層基板250の上面側から順に、第1層、第2層、第3層、…、第11層、第12層と呼ぶ。図19に示したS41層は第1層、第5層および第9層に用いられている。図20に示したP41層は第2層、第6層および第10層に用いられている。図21に示したP42層は第3層、第7層および第11層に用いられている。図22に示したS42層は第4層、第8層および第12層に用いられている。
【0105】
従って、本実施の形態では、第1の二次巻線261および第2の二次巻線262と、これらの間の絶縁層270は、3組設けられている。3つの第1の二次巻線261同士はスルーホール255a,257aを介して並列に接続され、3つの第2の二次巻線262同士はスルーホール256a,257aを介して並列に接続されている。
【0106】
本実施の形態に係る多層基板250では、第2の実施の形態に係る平面トランス41と同様に、第1の二次巻線261と第2の二次巻線262は、絶縁層270を介して重ね合わされている。第1の二次巻線261の一端部には第1の出力端子部255が設けられ、第2の二次巻線262の一端部には第2の出力端子部256が設けられている。第1の二次巻線261の他端部および第2の二次巻線262の他端部は第3の出力端子部257に接続されている。
【0107】
図19に示したように、第1の出力端子部255と第2の出力端子部256は、両者の間に第3の出力端子部257が配置されることなく、第1の二次巻線261の面および第2の二次巻線262の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。第3の出力端子部257は、第1の二次巻線261の面および第2の二次巻線262の面に平行な方向に沿って、第2の出力端子部256に隣接するように配置されている。また、第2の二次巻線262の一端部は、第1の出力端子部255および第2の出力端子部256よりも、第1の二次巻線261および第2の二次巻線262の内周部に近い位置に配置されている。第2の二次巻線262の一端部と第2の出力端子部256とは、第1の二次巻線261と同一平面上に配置された端子接続部267によって接続されている。
【0108】
また、本実施の形態に係る多層基板250は、3つの第1の整流素子221が搭載される3つの第1の整流素子搭載部281と、3つの第2の整流素子222が搭載される3つの第2の整流素子搭載部282とを備えている。これらの第1の整流素子搭載部281と第2の整流素子搭載部282は、多層基板250の面に平行な方向に沿って交互に配置されている。
【0109】
また、図19に示したS41層および図21に示したP42層は、3つの第1の整流素子搭載部281に搭載される3つの第1の整流素子221と第1の出力端子部255とを接続するための第1の接続部291を含んでいる。以下、S41層およびP42層を、第1の接続層とも言う。また、図20に示したP41層および図22に示したS42層は、3つの第2の整流素子搭載部282に搭載される3つの第2の整流素子222と第2の出力端子部256とを接続するための第2の接続部292を含んでいる。以下、P41層およびS42層を、第2の接続層とも言う。第1の接続層と第2の接続層は、多層基板250の厚さ方向に交互に配置されている。
【0110】
以下、本実施の形態における第1の出力端子部255、第2の出力端子部256および第3の出力端子部257の配置と、第1の接続層および第2の接続層の配置とに基づく作用、効果について説明する。
【0111】
まず、本実施の形態に係る多層基板との比較のための比較例を挙げる。この比較例の多層基板の構成について、図23ないし図26を参照して説明する。比較例の多層基板は、本実施の形態におけるS41層、S42層、P41層、P42層に対応するS51層、S52層、P51層、P52層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層とを有している。
【0112】
図23はS51層とその下の絶縁層370とを示す平面図、図24はP51層とその下の絶縁層370とを示す平面図、図25はP52層とその下の絶縁層370とを示す平面図、図26はS52層とその下の絶縁層370とを示す平面図である。
【0113】
図23に示したように、比較例の多層基板には、本実施の形態における第1の出力端子部255、第2の出力端子部256、第3の出力端子部257に対応する第1の出力端子部355、第2の出力端子部356、第3の出力端子部357が設けられている。ただし、比較例の多層基板では、第3の出力端子部357は、第1の出力端子部355と第2の出力端子部356との間に配置されている。
【0114】
また、図23に示したように、比較例の多層基板は、本実施の形態と同様に、3つの第1の整流素子221が搭載される3つの第1の整流素子搭載部281と、3つの第2の整流素子222が搭載される3つの第2の整流素子搭載部282とを備えている。
【0115】
図23に示したように、S51層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第1の二次巻線361を有している。第1の二次巻線361の一端部は第1の出力端子部355に接続され、他端部は第3の出力端子部357に接続されている。S51層は、更に、3つの第1の整流素子搭載部281に搭載される3つの第1の整流素子221と第1の出力端子部355とを接続するための第1の接続部391を有している。この第1の接続部391の形状は、本実施の形態における第1の接続部291と同様である。
【0116】
図24に示したように、P51層は、本実施の形態における巻線263とほぼ同様の形状の巻線363を有している。P51層は、更に、3つの第2の整流素子搭載部282に搭載される3つの第2の整流素子222と第2の出力端子部356とを接続するための第2の接続部392を有している。
【0117】
図25に示したように、P52層は、本実施の形態における巻線264とほぼ同様の形状の巻線364を有している。P52層は、更に、3つの第1の整流素子搭載部281に搭載される3つの第1の整流素子221と第1の出力端子部355とを接続するための第1の接続部391を有している。
【0118】
図26に示したように、S52層は、平面的に配置された導体によって形成された1ターンの第2の二次巻線362を有している。第2の二次巻線362の一端部は第2の出力端子部356に接続され、他端部は第3の出力端子部357に接続されている。S52層は、更に、3つの第2の整流素子搭載部282に搭載される3つの第2の整流素子222と第2の出力端子部356とを接続するための第2の接続部392を有している。
【0119】
ここで、図27および図28を参照して、本実施の形態に係る多層基板における第1の接続部291および第2の接続部292と、比較例の多層基板における第1の接続部391および第2の接続部392とについて、それらを流れる電流の交流成分の方向について考える。
【0120】
図27は、本実施の形態に係る多層基板における第1の接続部291および第2の接続部292を流れる各電流の交流成分の方向を示す説明図である。図27中の(a)は、第1の接続部291のうち、第1の出力端子部255と図27において最も上に配置された第1の整流素子221との間で流れる電流の交流成分の方向を示している。また、図27中の(b)は、第2の接続部292のうち、第2の出力端子部256と図27において最も上に配置された第2の整流素子222との間で流れる電流の交流成分の方向を示している。なお、(a)と(b)は、ある同一の時点における電流の交流成分の方向を表わしている。
【0121】
第1の接続部291および第2の接続部292において、第1の出力端子部255の近傍位置から第2の整流素子222の近傍位置までの領域A1では、交互に配置された接続部291,292を流れる各電流の交流成分の方向は、互いに逆方向になる。これに対し、第1の接続部291および第2の接続部292において、第1の出力端子部255の近傍位置から第2の出力端子部256の近傍位置までの領域A2では、接続部291,292を流れる電流の交流成分の方向は一つの方向しか存在しない。
【0122】
領域A1では、第1の接続部291を流れる電流が発生する磁界と第2の接続部292を流れる電流が発生する磁界とが互いに打ち消されるため、表皮効果および近接効果の影響が低減され、その結果、交流抵抗が低減され、損失も低減される。しかし、領域A2では、電流の交流成分の方向が一つの方向しか存在しないので、表皮効果および近接効果の影響が大きく、その結果、交流抵抗が大きく、損失も大きくなる。
【0123】
図28は、比較例の多層基板における第1の接続部391および第2の接続部392を流れる各電流の交流成分の方向を示す説明図である。図28中の(a)は、第1の接続部391のうち、第1の出力端子部355と図28において最も上に配置された第1の整流素子221との間で流れる電流の交流成分の方向を示している。また、図28中の(b)は、第2の接続部392のうち、第2の出力端子部356と図28において最も上に配置された第2の整流素子222との間で流れる電流の交流成分の方向を示している。なお、(a)と(b)は、ある同一の時点における電流の交流成分の方向を表わしている。
【0124】
第1の接続部391および第2の接続部392において、第1の出力端子部355の近傍位置から第2の整流素子222の近傍位置までの領域A1では、交互に配置された接続部391,392を流れる各電流の交流成分の方向は、互いに逆方向になる。これに対し、第1の接続部391および第2の接続部392において、第1の出力端子部355の近傍位置から第2の出力端子部356の近傍位置までの領域A2では、接続部391,392を流れる電流の交流成分の方向は一つの方向しか存在しない。
【0125】
前述のように、領域A1では、表皮効果および近接効果の影響が低減され、その結果、交流抵抗および損失が低減される。しかし、領域A2では、表皮効果および近接効果の影響が大きく、その結果、交流抵抗および損失が大きくなる。
【0126】
図27と図28を比較すると分かるように、本実施の形態に係る多層基板における領域A2の電流通過方向の長さは、比較例の多層基板における領域A2の電流通過方向の長さよりも短くなる。従って、本実施の形態によれば、スイッチング電源装置において、平面トランス203と整流素子221,222との間の接続部291,292における交流抵抗および損失を低減することができる。
【0127】
ここで、絶縁層を介して積層された複数の導体層における電流の方向と交流抵抗との関係を調べた解析結果について説明する。この解析では、幅3mm、厚さ0.1mmの銅箔よりなる導体層を12層重ねて構成された積層体をモデルとし、有限要素法による磁場解析により電流分布を求めて損失を計算し、積層体全体の交流抵抗を求め、更に、直流抵抗値(Rdc)と交流抵抗値(Rac)との比(Rac/Rdc)を解析した。また、この解析では、12層の全ての導体層に対して同一方向の電流を流した場合と、12層の導体層に対して交互に逆方向の電流を流した場合とを比較している。図29に解析結果を示す。図29において、横軸は交流電流の周波数、縦軸はRac/Rdcである。また、図29において、破線は、12層の全ての導体層に対して同一方向の電流を流したときの解析結果を示し、実線は、12層の導体層に対して交互に逆方向の電流を流したときの解析結果を示している。
【0128】
図29から分かるように、12層の全ての導体層に対して同一方向の電流を流した場合には、周波数が高くなるほど、表皮効果および近接効果の影響により、積層体全体における表面近傍にしか電流が流れなくなる。その結果、周波数が高いほど交流抵抗値が増加する。これに対し、12層の導体層に対して交互に逆方向の電流を流した場合には、表皮効果および近接効果の影響が小さくなり、その結果、交流抵抗値が低減される。
【0129】
上記の解析結果によれば、例えば、直流抵抗値(Rdc)と周波数200kHzの交流電流に対する交流抵抗値(Rac)との比(Rac/Rdc)は、12層の全ての導体層に対して同一方向の電流を流した場合には3.90となるのに対し、12層の導体層に対して交互に逆方向の電流を流した場合には1.03となる。また、例えば、直流抵抗値(Rdc)と周波数600kHzの交流電流に対する交流抵抗値(Rac)との比(Rac/Rdc)は、12層の全ての導体層に対して同一方向の電流を流した場合には6.12となるのに対し、12層の導体層に対して交互に逆方向の電流を流した場合には1.06となる。
【0130】
以上の解析結果から、図27および図28における領域A1では交流抵抗値が小さく、領域A2では交流抵抗値が大きくなることが分かる。本実施の形態によれば、第3の出力端子部が2つの出力端子部の間に配置される場合に比べて、領域A2の電流通過方向の長さを短くすることができる。その結果、本実施の形態によれば、第1の接続部291および第2の接続部292における交流抵抗値を低減して、第1の接続部291および第2の接続部292における損失を低減することができる。
【0131】
また、本実施の形態では、第1の接続部291と第2の接続部292を厚さ方向に交互に配置している。これにより、効果的に表皮効果および近接効果の影響を低減することができる。しかし、例えば、隣接する複数(例えば2つ)の第1の接続部291の組と、隣接する複数(例えば2つ)の第2の接続部292の組とを交互に配置してもよい。この場合にも、表皮効果および近接効果の影響を低減して、第1の接続部291および第2の接続部292における損失を低減することが可能である。
【0132】
本実施の形態におけるその他の作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0133】
[第4の実施の形態]
次に、図30ないし図33を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る多層基板およびスイッチング電源装置について説明する。本実施の形態に係る多層基板300は、第3の実施の形態における多層基板250に、第3の出力端子部257に接続された導体部を加えた構成になっている。本実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成は、多層基板の構成の相違を除いて、第3の実施の形態にかかるスイッチング電源装置と同様である。
【0134】
本実施の形態に係る多層基板300は、S61層、S62層、P61層、P62層の4種類の導体層と、隣接する導体層の間に配置された絶縁層とを有している。4種類の導体層は、それぞれ箔状を含む平板状の導体によって形成されている。
【0135】
図30はS61層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図31はP61層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図32はP62層とその下の絶縁層270とを示す平面図、図33はS62層とその下の絶縁層270とを示す平面図である。S61層は多層基板300の最上層に用いられるため、図30は多層基板300の平面図でもある。
【0136】
図30に示したように、S61層は、図19に示したS41層の構成に、第3の出力端子部257に接続された導体部258を加えた構成になっている。
【0137】
図31に示したように、P61層は、図20に示したP41層の構成に、第3の出力端子部257に接続された導体部258を加えた構成になっている。
【0138】
図32に示したように、P62層は、図21に示したP42層の構成に、第3の出力端子部257に接続された導体部258を加えた構成になっている。
【0139】
図33に示したように、S62層は、図22に示したS42層の構成に、第3の出力端子部257に接続された導体部258を加えた構成になっている。
【0140】
上記の各導体部258は、第1の接続部291および第2の接続部292を迂回するように配置されている。この導体部258には、例えば図18に示したスイッチ電源装置におけるチョークコイル223を接続したり、整流平滑回路の構成によっては出力端子等を接続したりすることが可能である。
【0141】
図23ないし図26に示した比較例の多層基板では、第3の出力端子部357が、第1の出力端子部355、第2の出力端子部356、第1の接続部391および第2の接続部392によって囲まれた位置に配置されている。そのため、この多層基板では、第3の出力端子部357にスイッチング電源装置のチョークコイルや出力端子等を接続する場合、これらを、多層基板に形成された導体部を用いて接続することができない。そのため、この多層基板では、例えば、第3の出力端子部357に設けられたスルーホールにバスバーを挿入し、このバスバーにチョークコイルや出力端子等を接続することになる。その結果、スイッチング電源装置の構造が複雑になる。
【0142】
これに対し、本実施の形態では、多層基板300に設けられた導体部258を用いて、第3の出力端子部257にチョークコイルや出力端子等を接続することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、スイッチング電源装置の構造を簡単になる。
【0143】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
【0144】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第3および第4の実施の形態では、第1の整流素子221と第2の整流素子222をそれぞれ3個ずつとしたが、これらはそれぞれ複数であればよい。
【0145】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし3のいずれかに記載の平面トランスは、第1の二次巻線および第2の二次巻線と、第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを備えている。第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に第3の出力端子部が配置されることなく、第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置されている。これにより、第1の二次巻線および第2の二次巻線における漏れインダクタンスおよび平面トランスにおける損失が低減される。従って、本発明によれば、平面トランスにおける伝送効率を向上させ、且つ損失を低減することができるという効果を奏する。
【0146】
また、請求項4ないし7のいずれかに記載の多層基板、もしくは請求項8ないし11のいずれかに記載のスイッチング電源装置は、上記平面トランスと同様の特徴を有している。従って、本発明によれば、上記平面トランスと同様の効果を奏する。また、本発明の多層基板、もしくは本発明のスイッチング電源装置における多層基板は、複数の第1の整流素子が搭載される複数の第1の整流素子搭載部と、複数の第2の整流素子が搭載される複数の第2の整流素子搭載部とを備え、第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部は、多層基板の面に平行な方向に沿って交互に配置されている。多層基板は、更に、複数の第1の整流素子搭載部に搭載される複数の第1の整流素子と第1の出力端子部とを接続するための第1の接続部を含む第1の接続層と、複数の第2の整流素子搭載部に搭載される複数の第2の整流素子と第2の出力端子部とを接続するための第2の接続部を含む第2の接続層とを備えている。本発明によれば、第1の出力端子部と第2の出力端子部の間に第3の出力端子部が配置される場合に比べて、第1の接続部および第2の接続部において、第1の接続部および第2の接続部を流れる電流の交流成分の方向が一つの方向のみとなる領域の長さが短くなる。従って、本発明によれば、第1の接続部および第2の接続部における損失を低減することができるという効果を奏する。
【0147】
また、請求項7記載の多層基板または請求項11記載のスイッチング電源装置によれば、第1の接続層と第2の接続層が、多層基板の厚さ方向に交互に配置されているので、第1の接続部および第2の接続部における損失をより一層低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る平面トランスの平面図である。
【図2】図1に示した平面トランスの正面図である。
【図3】図1に示した平面トランスにおけるS11層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図4】図1に示した平面トランスにおけるS12層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図5】図1に示した平面トランスにおけるP11層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図6】図1に示した平面トランスにおけるP12層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る平面トランスの平面図である。
【図8】図7に示した平面トランスの正面図である。
【図9】図7に示した平面トランスにおけるS21層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図10】図7に示した平面トランスにおけるS22層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図11】図7に示した平面トランスにおけるP21層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図12】図7に示した平面トランスにおけるP22層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図13】比較例の平面トランスの平面図である。
【図14】図13に示した平面トランスにおけるS31層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図15】図13に示した平面トランスにおけるS32層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図16】図13に示した平面トランスにおけるP31層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図17】図13に示した平面トランスにおけるP32層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る多層基板におけるS41層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る多層基板におけるP41層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る多層基板におけるP42層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る多層基板におけるS42層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図23】比較例の多層基板におけるS51層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図24】比較例の多層基板におけるP51層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図25】比較例の多層基板におけるP52層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図26】比較例の多層基板におけるS52層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図27】本発明の第3の実施の形態に係る多層基板における第1の接続部および第2の接続部を流れる各電流の交流成分の方向を示す説明図である。
【図28】比較例の多層基板における第1の接続部および第2の接続部を流れる各電流の交流成分の方向を示す説明図である。
【図29】絶縁層を介して積層された複数の導体層における電流の方向と交流抵抗との関係を調べた解析結果を示す特性図である。
【図30】本発明の第4の実施の形態に係る多層基板におけるS61層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態に係る多層基板におけるP61層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図32】本発明の第4の実施の形態に係る多層基板におけるP62層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【図33】本発明の第4の実施の形態に係る多層基板におけるS62層とその下の絶縁層とを示す平面図である。
【符号の説明】
1…平面トランス、2A,2B…コア、10…積層体、13,14…入力端子部、15…第1の出力端子部、16…第2の出力端子部、17…第3の出力端子部、21…第1の二次巻線、22…第2の二次巻線、23,24…巻線。
Claims (11)
- 一次巻線と、
平面的に配置された導体によって形成された第1の二次巻線と、
前記第1の二次巻線に対して、第1の二次巻線の厚さ方向に隣接するように配置された絶縁層と、
平面的に配置された導体によって形成され、前記第1の二次巻線に対して前記絶縁層を介して重ね合わされた第2の二次巻線と、
前記第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、
前記第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、
前記第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを備え、
前記第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に前記第3の出力端子部が配置されることなく、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置され、
前記第3の出力端子部は、前記第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、前記第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、
前記第3の出力端子部は、前記第1の二次巻線の他端部と第2の二次巻線の他端部とを接続するスルーホールと、このスルーホールに挿入された導体からなるバスバーとを有することを特徴とする平面トランス。 - 一次巻線と、
平面的に配置された導体によって形成された第1の二次巻線と、
前記第1の二次巻線に対して、第1の二次巻線の厚さ方向に隣接するように配置された絶縁層と、
平面的に配置された導体によって形成され、前記第1の二次巻線に対して前記絶縁層を介して重ね合わされた第2の二次巻線と、
前記第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、
前記第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、
前記第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを備え、
前記第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に前記第3の出力端子部が配置されることなく、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置され、
前記第3の出力端子部は、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、前記第2の出力端子部における第1の出力端子部とは反対側において第2の出力端子部に隣接するように配置されていることを特徴とする平面トランス。 - 前記第2の二次巻線の一端部は、前記第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、前記第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、
更に、前記第2の二次巻線の一端部と前記第2の出力端子部とを接続する端子接続部を備えたことを特徴とする請求項2記載の平面トランス。 - 一次巻線と、平面的に配置された導体によって形成された第1の二次巻線と、前記第1の二次巻線に対して、第1の二次巻線の厚さ方向に隣接するように配置された絶縁層と、平面的に配置された導体によって形成され、前記第1の二次巻線に対して前記絶縁層を介して重ね合わされた第2の二次巻線と、前記第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、前記第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、前記第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを備え、前記第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に前記第3の出力端子部が配置されることなく、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置された平面トランスのうちの少なくとも前記第1の二次巻線、絶縁層、第2の二次巻線、第1の出力端子部、第2の出力端子部および第3の出力端子部を含み、スイッチング電源装置を構成するために用いられる多層基板であって、
複数の第1の整流素子が搭載される複数の第1の整流素子搭載部と、複数の第2の整流素子が搭載される複数の第2の整流素子搭載部とを備え、前記第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部は、多層基板の面に平行な方向に沿って交互に配置され、
更に、複数の前記第1の整流素子搭載部に搭載される複数の第1の整流素子と前記第1の出力端子部とを接続するための第1の接続部を含む第1の接続層と、複数の前記第2の整流素子搭載部に搭載される複数の第2の整流素子と前記第2の出力端子部とを接続するための第2の接続部を含む第2の接続層とを備え、
前記第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部が並ぶ方向は、前記第1の出力端子部と第2の出力端子部が並ぶ方向と平行であり、
前記第1の接続層と第2の接続層は、それらの間に配置された絶縁層を介して重ね合わされ、前記第1の接続部と第2の接続部は、前記第1の接続層と第2の接続層の間に配置された絶縁層を介して重ね合わされていることを特徴とする多層基板。 - 前記第3の出力端子部は、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、前記第2の出力端子部における第1の出力端子部とは反対側において前記第2の出力端子部に隣接するように配置され、
前記第2の二次巻線の一端部は、前記第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、前記第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、
更に、前記第2の二次巻線の一端部と前記第2の出力端子部とを接続する端子接続部を備えたことを特徴とする請求項4記載の多層基板。 - 厚さ方向に積層された複数組の絶縁層、第1の二次巻線および第2の二次巻線を備え、複数の第1の二次巻線同士は並列に接続され、複数の第2の二次巻線同士は並列に接続されていることを特徴とする請求項4または5記載の多層基板。
- 前記第1の接続層と第2の接続層は、多層基板の厚さ方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の多層基板。
- 一次巻線と、平面的に配置された導体によって形成された第1の二次巻線と、前記第1の二次巻線に対して、第1の二次巻線の厚さ方向に隣接するように配置された絶縁層と、平面的に配置された導体によって形成され、前記第1の二次巻線に対して前記絶縁層を介して重ね合わされた第2の二次巻線と、前記第1の二次巻線の一端部に接続された第1の出力端子部と、前記第2の二次巻線の一端部に接続された第2の出力端子部と、前記第1の二次巻線の他端部および第2の二次巻線の他端部に接続された第3の出力端子部とを有し、前記第1の出力端子部と第2の出力端子部は、両者の間に前記第3の出力端子部が配置されることなく、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、互いに隣接するように配置された平面トランスと、入力直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧を前記平面トランスの一次巻線に供給するスイッチング回路と、前記平面トランスの第1の二次巻線および第2の二次巻線より出力される交流電圧を整流する整流回路とを備え、前記整流回路は、前記第1の出力端子部に接続される複数の第1の整流素子と、前記第2の出力端子部に接続される複数の第2の整流素子とを含むスイッチング電源装置であって、
前記平面トランスのうちの少なくとも前記第1の二次巻線、絶縁層、第2の二次巻線、第1の出力端子部、第2の出力端子部および第3の出力端子部を含む多層基板を備え、
前記多層基板は、複数の前記第1の整流素子が搭載される複数の第1の整流素子搭載部と、複数の前記第2の整流素子が搭載される複数の第2の整流素子搭載部とを有し、前記第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部は、多層基板の面に平行な方向に沿って交互に配置され、
前記多層基板は、更に、複数の前記第1の整流素子搭載部に搭載される複数の第1の整流素子と前記第1の出力端子部とを接続するための第1の接続部を含む第1の接続層と、複数の前記第2の整流素子搭載部に搭載される複数の第2の整流素子と前記第2の出力端子部とを接続するための第2の接続部を含む第2の接続層とを有し、
前記第1の整流素子搭載部と第2の整流素子搭載部が並ぶ方向は、前記第1の出力端子部と第2の出力端子部が並ぶ方向と平行であり、
前記第1の接続層と第2の接続層は、それらの間に配置された絶縁層を介して重ね合わされ、前記第1の接続部と第2の接続部は、前記第1の接続層と第2の接続層の間に配置された絶縁層を介して重ね合わされていることを特徴とするスイッチング電源装置。 - 前記第3の出力端子部は、前記第1の二次巻線の面および第2の二次巻線の面に平行な方向に沿って、前記第2の出力端子部における第1の出力端子部とは反対側において前記第2の出力端子部に隣接するように配置され、
前記第2の二次巻線の一端部は、前記第1の出力端子部および第2の出力端子部よりも、前記第1の二次巻線および第2の二次巻線の内周部に近い位置に配置され、
前記多層基板は、更に、前記第2の二次巻線の一端部と前記第2の出力端子部とを接続する端子接続部を有することを特徴とする請求項8記載のスイッチング電源装置。 - 前記多層基板は、厚さ方向に積層された複数組の絶縁層、第1の二次巻線および第2の二次巻線を有し、複数の第1の二次巻線同士は並列に接続され、複数の第2の二次巻線同士は並列に接続されていることを特徴とする請求項8または9記載のスイッチング電源装置。
- 前記第1の接続層と第2の接続層は、多層基板の厚さ方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
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