JP3972613B2 - 原動機始動用制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原動機始動用制御装置に関し、特に、非接触式ポジションセンサを用いてレンジ位置の検出を行う形式の駆動機における動力源としての原動機の始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機を搭載した車両では、周知のように、自動変速機のレンジ位置を検出するポジションセンサが非走行レンジ(N(ニュートラル)レンジ及びP(パーキング)レンジ)位置を検出した状態でのみスタータモータの起動を可能とするニュートラルスタートスイッチが装備されている。このニュートラルスタートスイッチは、通常、多数の同心円上に配置された多数の接点の開閉の組合せから自動変速機のレンジ位置を制御装置により判定する形式のポジションセンサと一体化され、同様の接点で構成される接触式のスイッチとされる。そして、このスイッチは、回路構成上は、スタータモータの駆動回路を開閉するリレー回路か、駆動回路自体に介挿される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような接触式の接点構成を用いる限り、ポジションセンサと一体のニュートラルスタートスイッチの小型化には自ずと限界がある。そこで、ポジションセンサを非接触式のものに換えると、抜本的な小型化が可能であることから、こうした方式を採用する場合、ニュートラルスタートスイッチ部分も電子制御装置のレンジポジション判定に基づく信号で作動するスイッチング回路で構成されることになる。こうした非接触式のスイッチは、スタータモータの駆動回路にニュートラルスタートスイッチとして介装することはできないため、自動変速機の非走行レンジにおいてスタータモータを駆動させることが困難となる。
【0004】
また、ニュートラルスタートスイッチを非接触式のスイッチとした場合、電子制御装置に供給される電圧が一時的に低下することで、レンジポジション判定に基づいて出力されるべきスイッチオン信号が途絶えることで、スタータモータを駆動させることができなくなる事態も想定される。
【0005】
更に、非接触式のニュートラルスタートスイッチを構成する電子制御装置の出力信号は、電子制御装置がフェ−ルした場合には、出力不可能となるため、この状態でもスタータモータを駆動させることができなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、非接触式ポジションセンサを用いることによるこうした障害を解決して、確実なスタータモータ駆動を可能とする原動機始動用制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の原動機始動用制御装置は、請求項1に記載のように、動力源である原動機と連結される駆動機のレンジ位置を検出する非接触式のポジションセンサと、少なくとも該ポジションセンサが検出するレンジ位置に基づきレンジ位置を判定する制御装置と、イグニションスイッチからの信号と、前記ポジションセンサが検出するレンジ位置に基づき制御装置が出力する信号とにより、スタータ信号を発生させるエンジン制御モジュールと、原動機を駆動させる駆動手段と、駆動手段及び制御装置に電源を供給する電源装置とを有する。
そして、前記制御装置は、エンジン制御モジュールに出力する信号を保持する信号保持回路を備えることを基本的特徴とする。
【0009】
上記の構成において、請求項2に記載のように、前記信号保持回路は、次の信号が与えられるまでの間、現在の信号を保持し、次の信号により現在の信号をキャンセルして次の信号を保持する回路で構成されるのが有効である。
【0010】
具体的には、上記の構成において、請求項3に記載のように、前記信号保持回路はラッチ回路で構成される。
【0011】
上記の構成において、請求項4に記載のように、前記信号保持回路は、制御装置によるレンジ位置の判定に要する作動電圧より低い電圧で作動して、制御装置の作動電圧の降下によるレンジ位置の判定のリセット前に出力した信号を保持する回路で構成されると更に有効である。
【0012】
具体的には、上記の構成において、請求項5に記載のように、前記信号保持回路は、制御装置がレンジ位置の判定に基づき出力する信号の出力回路に介挿される構成とされる。
【0013】
上記の構成において、請求項6に記載のように、前記制御装置においてレンジ位置の判定を行うマイクロコンピュータと並列に制御保障手段が設けられ、該制御保障手段は、少なくともポジションセンサが検出するレンジ位置に基づく信号を信号保持回路に出力可能とされる構成とすると更に有効である。
【0014】
更に、上記の構成において、請求項7に記載のように、前記制御保障手段は、ポジションセンサが検出するレンジ位置に基づき信号を出力する補助制御装置から成り、該補助制御装置は、マイクロコンピュータによるレンジ位置の判定がリセットされたときの信号保持回路への信号の出力を保障する構成とすることができる。
【0018】
上記の構成において、請求項8に記載のように、前記信号保持回路は、フリップフロップ回路で構成することができる。
【0019】
具体的には、上記の構成において、請求項9に記載のように、前記フリップフロップ回路は、レンジ位置の判定信号と、該判定信号の変更ごとに出力されるポジション変更信号とを入力とし、該ポジション変更信号の立上がりにより出力されるレンジ位置の判定信号をエンジン制御モジュールへの信号として出力とする構成とされる。
【0020】
上記の構成において、請求項10に記載のように、前記レンジ位置は、非走行レンジ位置とされる。
【0030】
【発明の作用及び効果】
本発明の請求項1に記載の構成では、レンジ位置を非接触式のポジションセンサで検出する駆動機の原動機始動用制御装置において、レンジ位置に応じて確実に原動機を始動させることができる。
【0031】
また、制御装置によるレンジ位置判定が何等かの理由でリセットされた場合の原動機始動を、それまで制御装置から出力されていた信号の保持のみで可能とすることができる。
【0032】
また、請求項2に記載の構成では、信号保持回路が次の信号が与えられるまで確実に前の信号を保持するため、制御装置によるレンジ位置判定が何等かの理由でリセットされた場合でも、当初に制御装置から出力された信号により確実に原動機を始動させることができる。しかも、制御装置によるレンジ位置判定が回復した場合の信号の更新も支障なく行なわれる。
【0033】
また、請求項3に記載の構成では、信号保持回路による信号の保持が、制御装置の出力信号で作動するラッチ回路の作動のみでなされるため、制御装置のメモリの消費や演算処理への負荷を与えることなく、制御装置のレンジ位置判定のリセットによる原動機始動不能を解消できる。
【0034】
次に、請求項4に記載の構成では、制御装置によるレンジ位置判定のリセット理由が電圧降下である場合の原動機始動を可能とすることができ、しかも電源装置の電圧が回復した場合の、信号保持回路を設けたことによるレンジ位置判定への影響もなくすことができる。
【0035】
また、請求項5に記載の構成では、信号保持回路を制御装置の出力信号で作動する簡単な回路構成とすることができる。
【0036】
また、請求項6に記載の構成では、マイクロコンピュータが何等かの理由でフェールして信号出力不能となった場合でも、制御保障手段が出力する信号により原動機始動不能を解消できる。
【0037】
また、請求項7に記載の構成では、マイクロコンピュータが何等かの理由でフェールして信号出力不能となった場合でも、補助制御装置がマイクロコンピュータの作動を保障するため、原動機始動不能を解消できる。また、補助制御装置によりマイクロコンピュータの作動を監視することもできる。
【0041】
また、請求項8に記載の構成では、信号保持回路を既存のICチップを用いて構成することができる。
【0042】
また、請求項9に記載の構成では、信号保持回路による制御装置の出力信号の保持を、回路のスイッチング作動のみで達成することができる。
【0043】
また、請求項10に記載の構成では、駆動機の非走行レンジ位置での確実な原動機始動が可能となる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の原動機始動用制御装置のシステム構成を概念化したブロックで示す。この始動装置による制御対象としての原動機Eは、形式を問わない内燃又は外燃機関(以下、実施形態の説明において、エンジンという)若しくは電気自動車の駆動用電気モータであり、駆動機Tは、発進操作及び変速操作を自動的に行なう有段又は無段の自動変速機、発進操作を自動化して変速段の切換えを手動で行なう半自動変速機、変速段の変速比が連続制御可能な無段変速機、エンジンと電気モータを併載するハイブリッド車の電気モータである。
【0054】
この装置は、駆動機Tのレンジ位置を検出する非接触式のポジションセンサ(PS)1と、駆動機Tの制御装置3と、エンジン(原動機)Eを駆動させるための駆動手段7と、駆動手段7と制御装置3に電源を供給する電源装置8と、イグニションスイッチ(本明細書において、一般にイグニションスイッチに内蔵されるスタータスイッチを含めて、イグニションスイッチという)Sからの信号と、ポジションセンサ1が検出するレンジ位置に基づく制御装置3からの信号とにより、駆動手段7と電源装置8とを導通させる導通手段2,4,5,6とを備える。
【0055】
図2は本発明のエンジン始動装置の第1実施形態のシステム構成をブロックで示す。この装置における非接触式のポジションセンサ1は、自動変速機を駆動機とする場合、その油圧制御装置のマニュアルバルブの操作軸に連結する可動部材であるマニュアルシャフトにより回転変位する磁石と、その磁力線を検出するホールICとを検出部とし、マニュアルシャフトの角度位置の変化を電圧値の変化として出力するアナログ出力のアクティブセンサで構成されている。このポジションセンサ1の電源は、制御装置3の電源と共通とされ、その電圧(Vcc)を供給されて作動する。
【0056】
制御装置3は、自動変速機を制御する電子制御装置に組込まれる変速機制御モジュール(TCM)に内蔵され、同様に電子制御装置に組込まれるポジションセンサ1の信号を取込む入力回路31と、マイクロコンピュータ(CPU)32と、制御装置3の出力回路を構成するとともに、ニュートラルスタートスイッチとして機能するスイッチング回路6を包含するものとされている。この制御装置3では、入力回路31に入力されるポジションセンサ1の出力電圧をマイクロコンピュータ32でマニュアルシャフトの角度位置として認識し、角度位置とマニュアルバルブの切換え位置との対応関係から自動変速機のP、R(リバース)、N、D(ドライブ)、L(ロー)等のレンジポジションを判定するものとされている。この制御装置3は、駆動手段としてのスタータモータ7の駆動回路2に介挿されたスタータリレー21を作動させるべく、エンジン制御モジュール(ECM)5に接続されている。
【0057】
スタータモータ7の駆動回路2は、スタータモータ7のパワーライン20に介挿されたスタータリレー21をスタータ信号(Vst)で制御して、バッテリ電源8で作動させる回路とされている。この形態において導通手段として利用されるエンジン制御モジュール(ECM)は、図示しないイグニションスイッチのスタータ・オン(イグニション電圧VI G の印可)に連動して導通する回路に内蔵された検出抵抗51の接地側の電圧を検出してリレー回路作動のためのスタータ信号(Vst)を出力する検出回路と、このスタータ信号(Vst)のハイ・ローによりリレーコイル23の駆動電流のオン・オフを制御するリレー駆動回路を備えている。このエンジン制御モジュール(ECM)に対して、この形態において自動変速機制御モジュール(TCM)に内蔵される制御装置3に付随するスイッチング回路6が検出抵抗51の接地側に接続されている。したがって、このシステム構成では、スタータモータ駆動回路2と、エンジン制御モジュール(ECM)と、スイッチング回路6が、駆動手段としてのスタータモータ7と電源装置としてのバッテリ8とを導通させる導通手段を構成する。
【0058】
こうした構成からなる装置により、ポジションセンサ1の信号を入力回路31を経て取込むマイクロコンピュータ32によりマニュアルシャフトの角度位置とマニュアルバルブの切換え位置との対応関係から自動変速機のP、R(リバース)、N、D(ドライブ)、L(ロー)等のレンジポジションが判定される。そして、この判定がPレンジ又はNレンジのときに、マイクロコンピュータ32からスイッチング回路6に始動許可信号の出力がなされ、スイッチング回路6が作動して、それにより検出抵抗51の接地がつなげられることで、スタータリレー作動のためのスタータ信号(Vst)が出力される。そこで、イグニションスイッチのスタータ・オンで、リレーコイル23にリレー駆動電流が出力される。これによりパワーライン20のスタータリレー21の接点が閉成し、スタータモータ7が駆動される。
【0059】
こうして、このエンジン始動制御装置によれば、レンジ位置を非接触式のポジションセンサ1で検出する駆動機Tにおいて、Pレンジ又はNレンジ位置に応じて確実にエンジンEを始動させることができる。
【0060】
ところで、上記のように制御装置3のマイクロコンピュータ32によるレンジ位置の判定でエンジン始動が可能となるが、スタータモータ7の始動時に、エンジンEの始動当初のクランキング負荷により、スタータモータ7が大電流を消費することから、バッテリ8を共通の電源とするレンジ位置判定のためのマイクロコンピュータ32を作動させる電源電圧(Vcc)を数ミリsecと極短時間ではあるが降下させる。それが前記のように一瞬であっても、制御装置3への電圧が低下し、一旦得られたマイクロコンピュータ32のレンジ判定がリセットされてしまうため、始動許可信号が出力されなくなり、エンジン始動が困難となる。特に、バッテリ8の充電不足等が甚だしい場合は、この電圧降下は顕著となる。
【0061】
そこで、この実施形態では、導通手段としてのスイッチング回路6に始動許可信号を保持するための信号保持回路(以下、実施形態の説明においてラッチ回路という)4が設けられている。このラッチ回路4は、制御装置3の出力回路に介挿されている。すなわち、この装置において、ポジションセンサ1と、制御装置3のマイクロコンピュータ32と、ラッチ回路4は、その順序で互いに直列に接続されている。ラッチ回路4は、制御装置3のマイクロコンピュータ32によるレンジ位置の判定に要する作動電圧より低い電圧、又はバッテリ8とは別の図示しないバックアップ電源で作動して、制御装置3の作動電圧の降下によるレンジ位置の判定のリセット時でも始動許可信号のスイッチング回路6への出力(以下、実施形態の説明において、ラッチ回路4を経て出力される信号をスタータロック信号という)を保持する回路で構成される。こうしたマイクロコンピュータ32とラッチ回路4の作動電圧領域は、それらを構成する素子により変更可能なものである。この面から、ラッチ回路4の作動電圧領域は、エンジンEを制御するエンジン制御装置又は車両制御装置が作動している電圧領域では少なくとも作動するものとして、スタータロック信号を保持し、スタータモータの駆動状態を確保するものとされる。
【0062】
図3はラッチ回路4の具体例を示すもので、この例では、ラッチ回路4は、フリップフロップ回路で構成されている。具体的には、フリップフロップ回路は、D−フリップフロップICで構成され、この回路の電源(LVcc)を制御装置3の電源と共通とする場合は、マイクロコンピュータ32のレンジ位置判定がある電圧でリセット状態に入るとすると、それより低い電圧駆動のICを用いれば、レンジ位置判定のリセット状態中でもスタータロック信号を保持することができる。
【0063】
図4はD−フリップフロップICの作動原理をタイムチャートで示すもので、CKピンの入力をハイとする度にDピンの入力がQピンに出力される。したがって、Dピンへの入力を、マイクロコンピュータ32によるPレンジ又はNレンジ判定がなされた時にハイ入力とし、CKピンへは、シフトポジション変更後にレンジ切換え信号としてのパルス信号をハイとして入力することで、Qピンからは、パルス信号の立上がり時のDピン信号が出力される。そこで、この回路では、この信号をスイッチング回路6の切換え信号とすることで、Qピンの出力のハイをスタータロック信号とすることができる。
【0064】
こうした回路構成において、ポジションセンサ1のホールICへの供給電圧(Vcc)が著しく降下して、ポジションセンサ1からの信号によりレンジ位置を判定する制御装置3への供給電圧が降下することで、その信号を判断するマイクロコンピュータ32がリセット状態に入ると、フリップフロップICのDピンとCKピンへの信号が共に出力されなくなる(この状態が生じる位置を図4のタイムチャート上でCPUリセットと表示する)ので、フリップフロップICはQピンのハイ信号を出力し続けることになる。これによりスタータロック信号が維持され、スイッチング回路6の切換えは生じず、スタータモータ7の駆動は、マイクロコンピュータ32のリセットにより中断されないことになる。そして、この状態は、電源電圧の回復を条件として、シフトポジション変更により再びCKピンへ信号が入力されることで、そのときのDピンの信号にリセットされる。
【0065】
かくしてこのエンジン始動制御装置では、Pレンジ又はNレンジへの設定によりマイクロコンピュータ32から始動許可信号が出力されることでスタータリレー21が作動し、リレー接点の閉成でパワーライン20が通じてスタータモータ7が駆動され、それにより極端な電圧降下が生じてマイクロコンピュータ32がレンジポジション判定のリセット状態に入っても、フリップフロップ回路4によるスタータロック信号の保持でスイッチング回路6によるスタータリレー作動のスタータモータ駆動回路2の導通が維持されるため、パワーライン20の導通も維持され、一旦起動したスタータモータ7の駆動状態がマイクロコンピュータ32のレンジポジションのリセットに影響されずに継続される。
【0066】
次に、図5は導通手段の変更例を示す。先の第1実施形態では、導通手段の一部にエンジン制御モジュール(ECM)の信号(Vst)をイグニションスイッチSのスタータオン信号として用いたが、この形態では、導通手段に接点式のイグニションスイッチSと無接点式のニュートラルスタートスイッチ6を直列に配置した構成が採られている。すなわち、バッテリ8に対して、直列接続でイグニションスイッチSとニュートラルスタートスイッチ6とリレーコイル23とを配している。パワーライン20については、バッテリ電源(B+ )に対して、スタータスイッチ22と、スタータリレー21と、スタータモータ7を直列に接続して接地させている。なお、図面上ではニュートラルスタートスイッチ6をスイッチ記号で略示しているが、詳しくは、このスイッチは、先の図3に示すラッチ回路4からのスタートロック信号で作動するスイッチング回路6からなる無接点スイッチとして構成される。
【0067】
この回路構成の場合、イグニションスイッチSとニュートラルスタートスイッチ6が共に閉成されることで、駆動回路2のスタータリレー21の作動によりパワーライン20がスタータモータ7の駆動待機状態となる。したがって、イグニションスイッチSのスタータスイッチ22のオン作動でパワーライン20が導通することで、実際にスタータモータ7が起動され、エンジン始動が開始される。
【0068】
次に、図6は導通手段の他の変更例を示す。この変更例では、リレー回路が省略され、スタータモータ7に対してイグニションスイッチSのスタータスイッチ22とニュートラルスタートスイッチ6を直列に配置した構成が採られている。すなわち、電源装置としてのバッテリ8に対して、直列接続でスタータスイッチ22とニュートラルスタートスイッチ6とスタータモータ7とを配している。したがって、この構成では、駆動回路2がパワーラインのみで構成されている。この場合も、図面上ではニュートラルスタートスイッチ6をスイッチ記号で略示しているが、詳しくは、このスイッチは、先の図3に示すラッチ回路4からのスタートロック信号で作動するスイッチング回路6からなる無接点スイッチとして構成される。この変更例の場合、スイッチング回路6で直接パワーラインの大電流を導通させることになるが、導通手段の構成は簡略化される。
【0069】
次に、図7は導通手段の更に他の変更例を示す。この変更例は、先の図5に示す変更例に対して、リレー回路上のイグニションスイッチを省いたものである。その余の構成については、図5に示す変更例と実質的に同様であるので、対応する要素の同様の符号を付して説明に代える。この場合も、図面上ではニュートラルスタートスイッチ6をスイッチ記号で略示しているが、詳しくは、このスイッチは、先の図3に示すラッチ回路4からのスタートロック信号で作動するスイッチング回路6からなる無接点スイッチとして構成される。
【0070】
前記第1実施形態の構成により、制御装置3の電圧降下に対するスタータモータ駆動の保障は可能となるが、制御装置自体が何等かの原因でフェ−ルしてレンジ位置の判定やそれによる始動許可信号の出力が不能となった場合、それに対するスタータモータ駆動の保障はなされない。そこで、次に、こうした事態での駆動保障も可能なシステム構成の実施形態を説明する。
【0071】
次に示す図8は、前記第1実施形態に対してシステム構成を変更した本発明の第2実施形態を示す。この形態は、マイクロコンピュータ32に対する保障手段を設けたものである。この形態の場合、入力回路31とラッチ回路4との間にマイクロコンピュータ32と、それに並列する補助制御装置としてのサブマイクロコンピュータ34とを配し、これらの出力をロジックICからなるORロジック回路35を経てラッチ回路4に接続した構成が採られている。すなわち、この形態では、ポジションセンサ1と、制御装置3のマイクロコンピュータ32及びサブマイクロコンピュータ34と、ラッチ回路4が互いに直列に接続されている。この場合のサブマイクロコンピュータ34は、マイクロコンピュータ32と同様のものでも、また、機能を絞ったものでもよい。また、サブマイクロコンピュータ34の電源は、ラッチ回路4の場合と同様に、構成の簡素化を重視する場合は、マイクロコンピュータ32の電源と共通とされ、作動保障の一層の確実化を重視する場合は、独自のバックアップ電源を持つものとされる。その余の構成については、前記第1実施形態と同様であるので、対応する要素に同様の参照符号を付して説明に代える。このシステム構成の場合、スタータモータのパワーラインを制御する導通手段については、先に例示した各導通手段のうちのいずれかを用いることができる。
【0072】
これら両マイクロコンピュータ32,34のレンジ位置判定作動については、先の第1実施形態の場合と同様であるので、説明を省略する。こうした両マイクロコンピュータ32,34の並列配置で、いずれか一方から出力される始動許可信号がORロジック回路35を経てラッチ回路4に出力され、スタータロック信号が生成される。この形態によると、バッテリ電圧降下時のラッチ回路4による低電圧作動保障と、サブマイクロコンピュータ34によるマイクロコンピュータ32のフェ−ル保障とを併せて行なうことができるようになり、スタータロック信号の維持が一層確実に行なわれるようになる。なお、この形態の場合、サブマイクロコンピュータ34によりマイクロコンピュータ32の動作を監視するフェール確認も可能となる。
【0073】
次に、図9は本発明の第3実施形態を示す。この形態は、マイクロコンピュータ32に対する保障手段をコンパレータ回路36に変更したものである。この形態の場合、入力回路31とORロジック回路35に対して、マイクロコンピュータ32と並列に4つのコンパレータ回路36が設けられている。このシステム構成においても、ポジションセンサ1と、制御装置3のマイクロコンピュータ32及びコンパレータ回路36と、ラッチ回路4が互いに直列に接続された構成は踏襲されている。この場合のコンパレータ回路36は、入力がしきい値を超えるたびに印可電圧の出力をオンオフするロジックICで構成され、この動作を利用してレンジ位置のPポジション及びNポジションを特定し、特定にしたがって始動許可信号をORロジック回路35の一方の入力とする回路作動を行なう。この作動のために、2つのしきい値それぞれの下限と上限を定める一対ずつ2組の並列するコンパレータ回路36の出力側が、それぞれのANDロジック回路36P,36Nの入力端子に接続され、両ANDロジック回路36P,36Nの出力側がORロジック回路36PNの両入力端子に接続され、ORロジック回路36PNをゲートとする出力をORロジック回路35の一方の入力とする回路接続がなされている。これに対して、マイクロコンピュータ32では、同様の処理をメモリのプログラムに従う演算により行い、始動許可信号をORロジック回路35の他方の入力とする。なお。その余の構成については、前記各実施形態と同様であるので、対応する要素に同様の参照符号を付して説明に代える。このシステム構成の場合も、スタータモータのパワーラインを制御する導通手段については、先に例示の各導通手段のいずれかを用いることができる。
【0074】
図10は、4つのコンパレータ回路36による信号処理内容を示す。前記のようにアナログ出力とされるポジションセンサ1の信号電圧(センサ出力)は、図に右上がりの実線で示すように、回転角につれて高くなる関係にあるため、この電圧をレンジポジションの並び順に従い最低電圧側をPポジションとして、以下順次R、N(D以後図示を省略)ポジションに割り当てると、図に縦の破線で示すレンジ幅に対応する電圧幅が各ポジションに対応する関係が成立する。これに対して、更にレンジ位置の判定確度を高める意味で、各ポジションの電圧範囲内に更に判定電圧の下限及び上限としてのしきい値(図に示す縦の実線と右上がりの実線の交点に対応する電圧)をコンパレータの入力電圧として設定する。こうすることによって、コンパレータ回路36は、この入力電圧値の範囲で印可電圧の出力をオンオフするので、この信号のオンを始動許可信号とすることができる。ちなみに、センサ出力の電圧値が図に●印で示す値の場合、レンジ判定がPとなり、このときコンパレータ出力オンによる始動許可信号出力状態となる。このセンサ出力とコンパレータ出力オンの関係は、Nレンジについても全く同様である。
【0075】
この形態によっても、マイクロコンピュータ32が何等かの原因でポジションセンサ1からの信号によるレンジ判定をリセットし始動許可信号を出力しなくなった場合に、コンパレータ回路36のスイッチング動作のみの純回路作動で、始動許可信号がORロジック回路35経由で出力されるため、ラッチ回路4経由でスタータロック信号が維持され、マイクロコンピュータ32の作動フェールがコンパレータ回路36により保障される。
【0076】
次に、図11は本発明の第4実施形態を示す。この形態は、非接触式のポジションセンサ1をデジタル出力のセンサに変更したものである。この形態の場合、ポジションセンサ1Aは、4つのホールICを検出素子として4つのオンオフ信号を出力するアクティブセンサとされている。その変更に伴い、入力回路31Aも4系統の信号を処理するものとされ、それらの出力がマイクロコンピュータ32とデコーダ37に並列的に入力される構成としている。このシステム構成においても、ポジションセンサ1Aと、制御装置3のマイクロコンピュータ32及びデコーダ37と、ラッチ回路4が互いに直列に接続された構成は踏襲されている。この場合のデコーダ37は、ロジックICで構成され、4系統の入力の組合せから、Pポジション又はNポジション若しくはそれら両ポジションを特定する組合せを判別し、判別にしたがって始動許可信号をORロジック回路35への一方の入力とする回路作動を行なう。これに対して、マイクロコンピュータ32では、メモリのプログラムに従う演算により、4つの信号の組合せから全てのレンジ位置を判定し、Pポジション又はNポジション若しくはそれら両ポジションを判定したときの始動許可信号をORロジック回路35への他方の入力とする処理を行なう。なお。その余の構成については、前記各実施形態と同様であるので、対応する要素に同様の参照符号を付して説明に代える。このシステム構成の場合も、スタータモータのパワーラインを制御する導通手段については、先に例示の各導通手段のいずれかを用いることができる。
【0077】
この形態によっても、マイクロコンピュータ32が何等かの原因でポジションセンサ1Aからの信号によるレンジ判定をリセットした場合でも、デコーダ37のロジックによるスイッチング動作のみの純回路作動で、始動許可信号がORロジック回路35経由で出力されるため、ラッチ回路4経由のスタータロック信号の維持で、マイクロコンピュータ32の作動フェールがデコーダ37により保障される。
【0078】
次に、図12は本発明の第5実施形態を示す。この形態は、始動レンジ位置検出用のスイッチを接点式のスイッチとして実装することで、始動許可信号のリセットを保障するシステム構成を採るものである。この場合のスイッチは、如何なる個所に設けてもよいが、図示の形態の場合、ポジションセンサ1BにPポジション及びNポジションで閉成するスイッチ6Bを内蔵させ、信号電源(Vcc)の電圧をスイッチ6Bを介してORロジック回路35の一方の入力としている。その余の構成については、前記各実施形態と同様であるので、対応する要素に同様の参照符号を付して説明に代える。このシステム構成の場合も、スタータモータのパワーラインを制御する導通手段については、先に例示の各導通手段のいずれかを用いることができる。
【0079】
この形態によっても、バッテリ電圧降下を含めて、何等かの原因でマイクロコンピュータ32から始動許可信号が出力されない場合でも、スイッチ6Bを介する始動許可信号がORロジック回路35経由でラッチ回路4に出力され、スタータロック信号がスイッチング回路6に出力されるため、スイッチング回路6の作動が得られる。
【0080】
最後に、図13は本発明の第6実施形態を示す。この形態は、前記第3実施形態と実質的に同様のものであるが、回路構成を簡略化すべく、コンパレータ回路36を2回路とし、Pレンジ位置に対応する下限と上限の一組のしきい値に基づくコンパレータ出力が、始動許可信号としてORロジック回路35経由でスイッチング回路6に出力される構成が採られている。その余の構成については、前記第3実施形態と同様であるので、対応する要素に同様の参照符号を付して説明に代える。
【0081】
以上、本発明を6つの実施形態に基づき詳説したが、本発明はこれらの実施形態に限るものではなく、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で種々に具体的構成を変更して実施することができる。例えば、この発明の制御装置は、自動変速機を制御するための制御装置の他に、先に挙げた半自動変速機の制御装置、無段変速機の制御装置、それら各変速機搭載車両の車両制御装置、ハイブリッド車の電気モータの制御装置又は車両制御装置に内蔵される構成としてもよい。また、本発明の適用対象をハイブリッド車のエンジン始動とする場合、エンジン始動を行なうレンジ位置は、非走行レンジに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエンジン始動装置の基本的システム構成を概念化して示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【図3】エンジン始動装置の始動許可信号保持回路を示す模式回路図である。
【図4】始動許可信号保持回路の作動を示すタイムチャートである。
【図5】スタータモータ駆動回路の変形形態を示すシステム構成図である。
【図6】スタータモータ駆動回路の他の変形形態を示すシステム構成図である。
【図7】スタータモータ駆動回路の更に他の変形形態を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【図10】第3実施形態のコンパレータによるレンジ位置判定の手法を示すグラフである。
【図11】本発明の第4実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係るエンジン始動装置のシステム構成図である。
【符号の説明】
E 原動機
T 駆動機
S イグニションスイッチ
1,1A,1B ポジションセンサ
2 スタータモータ駆動回路(導通手段)
3 制御装置
4 フリップフロップ回路(信号保持回路)
5 車両制御モジュール(導通手段)
6 スイッチング回路(導通手段)
7 スタータモータ(駆動手段)
8 バッテリ(電源装置)
34 サブマイクロコンピュータ(補助制御装置、制御保障手段)
36 コンパレータ回路(制御保障手段)
37 デコーダ(制御保障手段)

Claims (10)

  1. 動力源である原動機と連結される駆動機のレンジ位置を検出する非接触式のポジションセンサと、
    少なくともポジションセンサが検出するレンジ位置に基づきレンジ位置を判定する制御装置と、
    イグニションスイッチからの信号と、前記ポジションセンサが検出するレンジ位置に基づき制御装置が出力する信号とにより、スタータ信号を発生させるエンジン制御モジュールと、
    原動機を駆動させる駆動手段と、
    駆動手段及び制御装置に電源を供給する電源装置とを有するとともに、
    前記制御装置は、エンジン制御モジュールに出力する信号を保持する信号保持回路を備えることを特徴とする原動機始動用制御装置
  2. 記信号保持回路は、次の信号が与えられるまでの間、現在の信号を保持し、次の信号により現在の信号をキャンセルして次の信号を保持する回路である請求項1に記載の原動機始動用制御装置。
  3. 前記信号保持回路はラッチ回路で構成される請求項1に記載の原動機始動用制御装置。
  4. 前記信号保持回路は、制御装置によるレンジ位置の判定に要する作動電圧より低い電圧で作動して、制御装置の作動電圧の降下によるレンジ位置の判定のリセット前に出力した信号を保持する回路で構成される請求項1に記載の原動機始動用制御装置。
  5. 前記信号保持回路は、制御装置がレンジ位置の判定に基づき出力する信号の出力回路に介挿される請求項又は2に記載の原動機始動用制御装置。
  6. 前記制御装置においてレンジ位置の判定を行うマイクロコンピュータと並列に制御保障手段が設けられ、該制御保障手段は、少なくともポジションセンサが検出するレンジ位置に基づく信号を信号保持回路に出力可能とされる請求項1〜のいずれか1項記載の原動機始動用制御装置。
  7. 前記制御保障手段は、ポジションセンサが検出するレンジ位置に基づき信号を出力する補助制御装置からり、該補助制御装置は、マイクロコンピュータによるレンジ位置の判定がリセットされたときの信号保持回路への信号の出力を保障する請求項6に記載の原動機始動用制御装置
  8. 記信号保持回路は、フリップフロップ回路で構成される請求項のいずれか1項記載の原動機始動用制御装置。
  9. 前記フリップフロップ回路は、レンジ位置の判定信号と、該判定信号の変更ごとに出力されるポジション変更信号とを入力とし、該ポジション変更信号の立上がりにより出力されるレンジ位置の判定信号をエンジン制御モジュールへの信号として出力とする請求項8に記載の原動機始動用制御装置。
  10. 前記レンジ位置は、非走行レンジ位置である請求項1〜のいずれか1項記載の原動機始動用制御装置
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