JP3971861B2 - Cdma受信信号の位相補正装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CDMA方式により受信した信号の位相回転を補正するCDMA受信信号の位相補正装置及びCDMA受信機に関し、特に、位相回転が比較的大きな場合であっても当該位相回転を正しく補正する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばDS−CDMA(Direct Sequence Code Division Multiple Access:直接拡散符号分割多元接続)方式を用いた移動通信システムでは、通信する各チャネル毎に個別の拡散符号を割り当てて多重化通信することが行われる。
このような移動通信システムでは、一例として、CDMA送信機が送信シンボルにパイロットシンボルを挿入してこれらのシンボルを無線で送信する一方、CDMA受信機が当該シンボルを受信して、受信したパイロットシンボルの逆拡散信号から振幅位相変動量を検出し、検出した振幅位相変動量を用いて受信シンボルの振幅や位相を補正することが行われる。
【0003】
図4には、上記のようなCDMA送信機から送信される通信フレームの一例を示してあり、この通信フレームの構成では、送信対象のデータシンボル中にパイロットシンボルが周期的に挿入されている。なお、パイロットシンボルのパターンは、CDMA送信機とCDMA受信機とで同じパターンとして設定されている。
【0004】
図5には、CDMA受信機の構成例を示してあり、このCDMA受信機には、信号(搬送波)を出力する発振器41と、直交検波を行う直交検波部42と、送信チャネルで用いられている拡散符号を生成する拡散符号生成部43と、逆拡散を行うマッチドフィルタ(MF)44と、パスタイミングを検出するパスタイミング検出部45と、パスタイミング時の逆拡散シンボル(逆拡散後の受信シンボル)を出力するパス抽出部46と、逆拡散シンボルからデータを復調、復号、判定等する復調部Fとが備えられている。
【0005】
また、復調部Fには、同期検波を行う複数の同期検波部D1〜Dmと、複数の同期検波部D1〜Dmから出力される振幅位相補償後の逆拡散シンボルを合成する合成部52と、合成後の逆拡散シンボルを判定する判定部53とが備えられている。ここで、同期検波部D1〜Dmは、複数のパスに対応して複数備えられている。
【0006】
また、各同期検波部D1〜Dmには、参照用のパイロットシンボルを生成する参照用パイロットシンボル生成器47と、逆拡散シンボルと参照用パイロットシンボルとを複素共役乗算した結果を振幅位相変動量として出力する複素共役乗算器48と、当該振幅位相変動量を複数のシンボルにわたって平均化したものを振幅位相補償値として出力する平均化部49と、逆拡散シンボルを遅延させる遅延器50と、遅延した逆拡散シンボルと振幅位相補償値とを複素共役乗算して当該逆拡散シンボルを補償する複素共役乗算器51とが備えられている。なお、各同期検波部D1〜Dmの構成は同様であるため、上記図5では第1同期検波部D1の構成のみを示し、第2同期検波部D2〜第m同期検波部Dmの構成については図示を省略した。
【0007】
次に、上記の構成から成るCDMA受信機により行われる処理の一例を示すとともに、受信信号に生じる位相回転について説明する。
すなわち、CDMA方式により受信された無線周波数帯の信号(RF信号)が直交検波部42に入力されるとともに、発振器41から出力される搬送波が直交検波部42に入力され、直交検波部42では、当該搬送波を用いて前記受信信号をベースバンドの同相信号と直交信号とに変換(ダウンコンバート)し(すなわち、ベースバンドの同相成分と直交成分とに分解し)、変換した同相信号と直交信号をマッチドフィルタ44へ出力する。
【0008】
マッチドフィルタ44には上記した同相信号と直交信号が入力されるとともに、符号生成部43により生成された同相用及び直交用の拡散符号が参照用の拡散符号として入力され、マッチドフィルタ44では、入力した同相信号と当該同相信号と対応する拡散符号との相関をとることにより当該同相信号を逆拡散するとともに、入力した直交信号と当該直交信号と対応する拡散符号との相関をとることにより当該直交信号を逆拡散する。
【0009】
マッチドフィルタ44により逆拡散された信号はパスタイミング検出部45及びパス抽出部46へ出力され、パスタイミング検出部45では、入力される逆拡散信号の中から相関ピークが現れるタイミングを検出し、検出したタイミングをパスタイミングとしてパス抽出部46へ出力する。
パス抽出部46では、マッチドフィルタ44から出力される逆拡散信号の中でパスタイミング検出部45から入力されるパスタイミングでの逆拡散信号を逆拡散シンボルとして復調部Fへ出力する。
【0010】
ここで、パス抽出部46から復調部Fへ出力される逆拡散シンボルには、例えばフェージングによる位相誤差や発振器41の精度に起因した周波数誤差(発振器の発振周波数の誤差)が含まれており、こうした誤差が含まれることにより、当該逆拡散シンボルでは同相信号や直交信号に位相回転(位相ずれ)が生じている。また、逆拡散シンボルには例えば振幅変動が生じている。
【0011】
ここでは、説明の便宜上から、上記した逆拡散シンボルには振幅変動が生じていないものと仮定して、上記した位相回転を更に具体的に説明する。
例えば、位相回転が全く生じていない場合の逆拡散シンボルの座標点をA(I,Q)とし、位相Φの位相回転が生じた場合の逆拡散シンボルの座標点をA’(I’,Q’)とすると、I’やQ’は式1のように示される。なお、座標点のX座標に対応するIやIは逆拡散シンボルの同相成分(同相信号の成分)を表しており、座標点のY座標に対応するQやQ’は逆拡散シンボルの直交成分(直交信号の成分)を表している。
【0012】
【数1】
【0013】
上記式1に示されるように、互いに直交している同相信号と直交信号から構成される逆拡散シンボルは、直交座標(X−Y座標)上で示すと、位相回転がない場合に比べて位相回転Φの分だけ回転している。
なお、図6には、上記した一方の座標点Aの一例を黒丸で示すとともに他方の座標点A’の一例を白丸で示してあり、上記のように他方の座標点A’は一方の座標点Aに対して位相回転Φの分だけ回転している。
【0014】
上記したようにパス抽出部46から出力される逆拡散シンボルでは同相成分や直交成分に位相回転が生じており、このような位相回転が生じた逆拡散シンボルが復調部Fの同期検波部D1〜Dmに入力される。そして、同期検波部D1〜Dmでは、次のようにして、参照用のパイロットシンボルを用いて逆拡散シンボルの位相回転を抽出して補償(補正)する。
【0015】
例えば、受信シンボル(逆拡散シンボル)がパイロットシンボルであるとして、本来上記した座標点Aにあるべきパイロットシンボルが位相回転Φにより座標点A’のシンボルとなって同期検波部D1〜Dmに入力されたとする。
同期検波部D1〜Dmの参照用パイロットシンボル生成器47では、座標点Aに対応するシンボルを参照用のパイロットシンボルとして出力し、この参照用パイロットシンボル(座標点A)とパス抽出部46から入力されるパイロットシンボル(座標点A’)とが複素共役乗算器48により複素共役乗算される。
【0016】
上記した複素共役乗算器48による複素共役乗算では、座標点Aのシンボルに対する座標点A’のシンボルの位相変動量B(cosΦ,sinΦ)が算出され、この位相変動量Bは座標点A’の位相回転Φと対応している。なお、図7には、位相変動量Bの一例を示してある。
また、平均化部49には複素共役乗算器48により算出された位相変動量Bが入力され、平均化部49では、入力される位相変動量Bを複数のパイロットシンボルにわたって平均化することにより雑音の影響を低減させ、位相変動量の平均値を位相補償量として複素共役乗算器51へ出力する。
【0017】
一方、パス抽出部46から出力されるパイロットシンボル(座標点A’)は、遅延器50に入力され、この遅延器50により上記した平均化部49による平均化時間だけ遅延させられて複素共役乗算器51へ出力される。
複素共役乗算器51では、遅延器50から入力される遅延したパイロットシンボルと平均化部49から入力される位相補償量とが複素共役乗算され、すなわち、当該パイロットシンボルが位相Φだけ逆回転されて元のシンボル(座標点Aのシンボル)が再生される。
【0018】
また、例えば、受信シンボル(逆拡散シンボル)がパイロットシンボル以外のデータシンボルである場合には、受信シンボルに生じる位相回転がパイロットシンボルの周期にわたって一定であるとみなして、上記のようにしてパイロットシンボルを用いて算出した位相補償量をデータシンボルの補償量としてそのまま用いることで、当該データシンボルを補償して元のデータシンボルを再生する。
【0019】
なお、同期検波部D1〜Dmでは、上記した位相補償量をパイロットシンボルの周期毎に更新しながらデータシンボルを補償していき、元のデータシンボルを再生する。
また、上記のように同期検波部D1〜Dmは複数備えられており、各同期検波部D1〜Dmでは逆拡散の過程で分離されたそれぞれのパスについての同期検波が行われ、各同期検波部D1〜Dmにより位相変動が補償された複数のデータシンボルが合成部52へ出力される。
【0020】
そして、合成部52では、複数の同期検波部D1〜Dmから入力されるパス毎のデータシンボルを合成して判定部53へ出力する。
判定部53では、合成後のデータシンボルが“0”値であるか“1”値であるかを判定することにより、判定したバイナリデータ(“0”値、又は、“1”値)を取得する。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなCDMA受信機により行われる位相補正では、例えば発振器の精度に起因した周波数誤差が大きいために受信シンボル(逆拡散シンボル)に生じる位相回転がパイロットシンボル周期にわたって一定であるとみなすことができないくらい大きくなってしまうような場合には、当該位相回転を正しく補正することができないといった不具合があった。また、このように位相回転を正しく補正することができないため、復調等したデータの特性が大きく劣化してしまうといった不具合があった。
【0022】
ここで、位相回転がパイロットシンボル周期にわたって一定であるとみなすことができないくらい大きくなってしまうような場合を図8を用いて説明する。
例えば、図8(a)に示すように、位相回転のない(本来の)パイロットシンボルが座標P(1,1)のシンボルに固定されて設定されているとする。なお、上記した座標A、A’の場合と同様に、座標点のX座標はシンボルの同相成分を表しており、座標点のY座標はシンボルの直交成分を表している。
【0023】
また、図8(b)に示すように、上記したパイロットシンボルPが或る周波数誤差をもって受信された場合の受信シンボルを座標点Lのシンボルとし、この受信シンボルに生じた位相回転をΔθ1(例えば0<Δθ1<+π/2)とする。この場合、図8(c)に示すように、受信シンボルの位相変動量はL’(a1,a2)で表され、a1=cos(Δθ1)であり、a2=sin(Δθ1)である。
【0024】
また、図8(d)に示すように、上記したパイロットシンボルPが他の周波数誤差をもって受信された場合の受信シンボルを座標点Tのシンボルとし、この受信シンボルに生じた位相回転をΔθ2(例えば+3π/2<Δθ2<+2π)とする。この場合、図8(e)に示すように、受信シンボルの位相変動量はT’(b1,b2)で表され、b1=cos(Δθ2)であり、b2=sin(Δθ2)である。
【0025】
ここで、上記図8(b)に示したように、例えば位相回転Δθ1の値が0〜+πの値や0〜−πの値となる場合には、上記従来例で示した位相補正により位相回転を正しく補正することができる。
しかしながら、上記図8(d)に示したように、例えば位相回転Δθ2の値が+πや−πを超えてしまった場合には、位相回転を正しく補正することができない。具体的には、上記図8(d)のような場合には、実際の位相回転Δθ2の値が+3π/2〜+2πの値であるにもかかわらず、誤って−π/2〜0の値であるΔθ3(|Δθ3|=2π−Δθ2)の位相回転が生じたものとして検出されてしまい、このため、位相回転を正しく補正することができない。
【0026】
このように、上記従来例で示したような位相補正では、位相の誤差検出範囲(検出補償することが可能な誤差範囲)が±πであり、すなわち、位相回転の値が±π以内の値であれば位相回転を正しく補正することができるが、位相回転の値が±πを超えてしまう場合には実際の位相変動量と検出される位相変動量(位相補償量)との誤差が大きくなってしまい、位相回転を正しく補正することができなくなってしまう。
【0027】
以上のように、上記した位相回転がパイロットシンボル周期にわたって一定であるとみなすことができないくらい大きくなってしまうような場合とは、例えば1通信フレーム時間で位相回転が±πを超えてしまうような場合のことであり、このような場合には、受信シンボルのベクトル(例えば上記した座標Tのベクトル)と参照用パイロットシンボルのベクトル(例えば上記した座標Pのベクトル)との間の位相回転が正確に検出されないため、位相回転を正しく補正することができない。
【0028】
なお、上記したように受信シンボルにはフェージングによる位相誤差も生じるが、この位相誤差については一般にパイロットシンボル周期にわたって一定であるとみなすことができるため、上記のような不具合はほとんど生じない。
また、上記従来例で示したような位相補正では、通信フレーム中のパイロットシンボルを用いて位相補正を行うものであるため、パイロットシンボル以外のシンボル(例えばデータシンボル)を用いて位相補正を行うことができないといった不具合があった。
【0029】
なお、例えば特開平6−244820号公報には、直交検波を用いて受信信号から検出された同相信号(Ich信号)と直交信号(Qch信号)のそれぞれに対して同相信号の拡散符号(又は直交信号の拡散符号)を乗算し、当該乗算結果から受信信号の位相回転(周波数偏差値)を求めて自動周波数制御(AFC:Automatically Frequency Control)により位相補正を行う信号処理回路が記載されているが、この信号処理回路では、拡散系列1周期当たり(1拡散符号分)の位相がほぼ一定であるとみなせるときにしか位相回転を正しく補正することができなかった。すなわち、位相の誤差検出範囲が1拡散符号分(1シンボル分)の時間で±π以内であり、この時間で±πを超えてしまう位相回転を正しく補正することができなかった。
【0030】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、例えばパイロットシンボル以外のシンボルを用いてCDMA方式により受信した信号の位相回転を補正することができ、また、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすることができ、これにより、受信信号の位相回転が比較的大きな場合であっても当該位相回転を正しく補正することができるCDMA受信信号の位相補正装置及びCDMA受信機を提供することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置では、例えばCDMA方式により受信した信号から発振器の出力信号を用いて検出された同相信号と直交信号とを入力し、これらの信号を用いて次のようにして当該受信信号の位相回転を補正する。
すなわち、まず、部分相関値取得手段が検出された1拡散符号分の同相信号中から長さの等しい隣接する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得するとともに、検出された1拡散符号分の直交信号中から前記2つの信号部分のそれぞれと対応する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得する。
【0032】
なお、具体例として、(1/2)拡散符号分((1/2)シンボル分)の信号部分を選択する場合を示すと、この場合には、1拡散符号分の同相信号を2等分してできる2つの信号部分が選択されるとともに、1拡散符号分の直交信号を2等分してできる2つの信号部分が選択され、これら4つの信号部分についての部分相関値が取得される。
【0033】
次に、位相回転検出手段が相関ピーク時の同相信号から取得した一方の部分相関値と当該相関ピーク時の直交信号から取得した当該部分相関値と対応する一方の部分相関値とから構成されるベクトルと当該同相信号から取得した他方の部分相関値と当該直交信号から取得した他方の部分相関値とから構成されるベクトルとの間の位相回転を検出する。
【0034】
なお、具体的に示すと、例えば(同相信号から取得した一方の部分相関値、直交信号から取得した一方の部分相関値)といった成分から構成されるベクトルと(同相信号から取得した他方の部分相関値、直交信号から取得した他方の部分相関値)といった成分から構成されるベクトルとの間の位相回転が検出される。
そして、補正手段が上記のようにして検出した位相回転に基づいて前記受信信号の位相回転を補正する。
【0035】
従って、本発明では、上記した2つのベクトル間の位相回転の値が±π以内であれば受信信号の位相回転を正しく補正することができ、すなわち、上記した同相信号中や直交信号中から選択する信号部分(例えば1/2シンボル分や1/4シンボル分等)に対応する時間で±π以内の位相回転であれば正しく補正することができ、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすることができる。このため、受信信号の位相回転が比較的大きな場合であっても当該位相回転を正しく補正することができ、これにより、復調等したデータの特性が位相回転によって大きく劣化してしまうのを防止することができる。また、本発明では、例えばパイロットシンボル以外のシンボルを用いて位相回転を補正することもできる。
【0036】
また、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置では、前記位相回転検出手段が3以上のベクトルから複数の位相回転を検出し、平均値検出手段がこれら複数の位相回転の平均値を検出し、前記補正手段が当該平均値検出手段により検出した平均値に基づいて補正を行う。
【0037】
従って、例えば位相回転を検出する精度が雑音により多少劣化している場合であっても、上記のような平均化を行うことにより、当該劣化の影響を低減させて位相補正の精度を向上させることができる。
なお、上記した3以上のベクトルとしては、例えば1拡散符号分の受信信号(同相信号と直交信号)中のみから検出されてもよく、また、例えば複数の拡散符号分にわたった受信信号中から検出されてもよい。
【0038】
また、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置では、前記補正手段が前記発振器から出力される信号の周波数をフィードバック制御することにより補正を行う。
このように、発振器から出力される信号の周波数を制御して調整することにより、当該出力信号を用いて受信信号から検出される同相信号や直交信号の位相を調整することができ、これにより、当該受信信号の位相回転を補正(例えば当該発振器の発振周波数誤差がある場合には当該誤差による位相回転を防止)することができる。
【0039】
また、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置では、逆拡散手段が前記同相信号と前記直交信号とをそれぞれ対応する拡散符号により逆拡散し、前記補正手段が逆拡散された信号の位相回転を補正することにより前記受信信号の位相回転を補正する。
このように、逆拡散後の信号の位相回転を補正することによっても、受信信号の位相回転を補正することができる。
なお、上記した部分相関値取得手段と逆拡散手段とは、いずれも受信信号(同相信号や直交信号)と拡散符号との相関をとるものであるため、これらの手段を共通の回路等により構成して装置の簡易化を図ることもできる。
【0040】
また、本発明に係るCDMA受信機では、CDMA方式により送信された信号を受信し、受信した信号を発振器から出力される信号を用いて直交検波するに際して、次のようにして当該受信信号の位相回転を補正する。
すなわち、まず、直交検波手段が発振器から出力される信号を用いて受信信号から同相信号と直交信号とを検出し、部分相関値取得手段が検出した1拡散符号分の同相信号中から長さの等しい隣接する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得するとともに、検出した1拡散符号分の直交信号中から前記2つの信号部分のそれぞれと対応する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得する。
【0041】
次に、位相回転検出手段が相関ピーク時の同相信号から取得した一方の部分相関値と当該相関ピーク時の直交信号から取得した当該部分相関値と対応する一方の部分相関値とから構成されるベクトルと当該同相信号から取得した他方の部分相関値と当該直交信号から取得した他方の部分相関値とから構成されるベクトルとの間の位相回転を検出する。そして、補正手段が検出した位相回転に基づいて前記受信信号の位相回転を補正する。
【0042】
従って、本発明に係るCDMA受信機では、上記した本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置の場合と同様に、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすることができことから、受信信号の位相回転が比較的大きな場合であっても当該位相回転を正しく補正することができ、また、例えばパイロットシンボル以外のシンボルを用いて位相回転を補正することもできる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1実施例を図面を参照して説明する。
なお、本発明に係るCDMA受信機は本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置を受信機に適用したものであるため、本例では、本発明に係るCDMA受信機についての実施例を示すことにより、併せて本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置の実施例を示す。
【0044】
図1には、本発明に係るCDMA受信機の一例を示してあり、このCDMA受信機には、信号(搬送波)を出力する電圧制御発振器1と、直交検波を行う直交検波部2と、アナログ−デジタル変換を行うA/Dコンバータ3と、受信信号の位相回転を補正等する補正部(AFC回路部)C1と、パスタイミング時の逆拡散シンボル(逆拡散後の受信シンボル)を出力するパス抽出部11と、逆拡散シンボルからデータを復調、復号、判定等する復調部12とが備えられている。
【0045】
ここで、上記した補正部C1は、例えば本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置の一例に相当し、この補正部C1には、送信チャネルで用いられている拡散符号を生成する拡散符号生成部4と、逆拡散や部分相関値の演算を行うマッチドフィルタ(MF)5と、複素共役乗算を行う複素共役乗算器6と、パスタイミングを検出するパスタイミング検出部7と、アークタンジェント演算を行うArctan演算部8と、平均化処理を行う平均化部9と、上記した電圧制御発振器1を制御する周波数制御部10とが備えられている。
【0046】
電圧制御発振器1は、信号(搬送波)を発振し、発振した信号を直交検波部2へ出力する機能を有している。また、電圧制御発振器1から出力される信号の周波数は後述する周波数制御部10からの制御により変更することが可能な構成となっている。
【0047】
直交検波部2は、CDMA方式により受信された無線周波数帯の信号(RF信号)を入力するとともに、電圧制御発振器1から出力される搬送波を入力し、当該搬送波を用いて前記受信信号をアナログベースバンドの同相信号と直交信号とに変換(ダウンコンバート)してA/Dコンバータ3へ出力する機能を有している。
本例では、このような直交検波部2の機能により、発振器から出力される信号を用いて受信信号から同相信号と直交信号とを検出する直交検波手段が構成されている。
【0048】
A/Dコンバータ3は、直交検波部2から入力されたアナログベースバンド信号である同相信号や直交信号をデジタル信号へ変換してマッチドフィルタ5へ出力する機能を有している。
符号生成部4は、送信チャネルで用いられている同相信号用の拡散符号(同相用拡散符号)と直交信号用の拡散符号(直交用拡散符号)とを参照用の拡散符号としてマッチドフィルタ5へ出力する機能を有している。なお、同相信号用の拡散符号と直交信号用の拡散符号としては、例えば同一の拡散符号が用いられてもよく、また、異なる拡散符号が用いられてもよい。
【0049】
マッチドフィルタ5は、A/Dコンバータ3から入力される同相信号や直交信号と符号生成部4から入力されるそれぞれの参照用拡散符号との相関をとる機能を有しており、1拡散符号分(1シンボル分)の相関値を逆拡散信号としてパスタイミング検出部7やパス抽出部11へ出力するとともに、選択された部分相関値を複素共役乗算器6へ出力する機能を有している。
【0050】
ここで、上記した本例のマッチドフィルタ5の詳しい構成例を図2を参照して示す。
図2には、本例のマッチドフィルタ5の構成例や、複素共役乗算器6やパスタイミング検出部7やArctan演算部8や平均化部9を示してある。
同図に示されるように、本例のマッチドフィルタ5には、同相信号を処理する同相用処理部Z1と、直交信号を処理する直交用処理部Z2と、外部からの相関ベクトル選択信号に従って部分相関値を選択して出力するセレクタSとが備えられている。
【0051】
同相用処理部Z1には、A/Dコンバータ3から入力された同相信号を格納する同相用のレジスタR1(本例ではタップ数をnとする)と、同相用拡散符号を格納する同相用のシフトレジスタ(図示せず)と、同相用レジスタR1に格納された同相信号と同相用シフトレジスタに格納された同相用拡散符号とを乗算するための複数(本例ではn個)の乗算器J1〜Jnと、これら複数の乗算器J1〜Jnによる乗算結果をトーナメント式に加算するための複数の加算器K1〜K9とが備えられている。
【0052】
同相用レジスタR1は1拡散符号分(1シンボル分)の同相信号を格納する機能を有しており、本例では、n個のタップに格納される同相信号が1拡散符号分の信号に相当する。すなわち、本例の同相用拡散符号はn個の値(“0”値、又は、“1”値)を並べて構成されている。
同相用シフトレジスタは例えば同相用レジスタR1と同様にタップ数がnであり、格納する同相用拡散符号を順次シフトさせていく機能を有している。
【0053】
各乗算器J1〜Jnは同相用レジスタR1の各タップに対応してn個備えられており、同相用レジスタR1の各タップに格納されている同相信号の値と同相用シフトレジスタの各タップに格納されている同相用拡散符号の値とを乗算する機能を有している。この乗算により、n個の乗算結果が得られる。
【0054】
加算器K1〜K9は例えば上記図2に示されるように複数段にわたって備えられており、乗算器J1〜Jnによるn個の乗算結果をトーナメント式に加算する機能を有している。
具体的には、1段目の加算器K1〜K4では、例えば上記図2に示した同相用レジスタR1の左から1番目と2番目のタップの乗算結果が加算器K1により加算され、3番目と4番目のタップの乗算結果が加算器K2により加算され、また、(n−1)番目とn番目のタップの乗算結果が加算器K4により加算されるといったようにして、(n/2)個の加算結果が得られる。
【0055】
また、同様に、2段目の加算器K5、K6では、例えば上記図2に示した1段目の加算器K1〜K4の内の左から1番目と2番目の加算器K1、K2による加算結果が加算器K5により加算され、また、右から1番目と2番目の加算器K3、K4による加算結果が加算器K6により加算されるといったようにして、(n/4)個の加算結果が得られる。
また、同様にして、各段の加算器により加算結果が得られ、例えば最終段から2つ前の段の加算器(図示せず)では4個の加算結果が得られ、最終段から1つ前の段の加算器K7、K8では2個の加算結果が得られ、最終段の加算器K9では1個の加算結果が得られる。
【0056】
ここで、一般に、nタップ(チップ)分の拡散符号を用いて変調された信号を当該拡散符号により逆拡散する場合に、上記したトーナメント方式でuタップ分の乗算結果の総和をとるとuタップ分の部分相関値が得られ、当該部分相関値が1拡散符号分の相関値(1シンボル相関値)のu/n倍の値(u/nシンボル相関値)となることが知られている。具体的には、例えば1段目の各加算器K1〜K4からは(2/n)シンボル相関値が出力され、同様に、例えば最終段から2つ前の段の各加算器からは(1/4)シンボル相関値が出力され、最終段から1つ前の各加算器K7、K8からは(1/2)シンボル相関値が出力され、最終段の加算器K9からは1シンボル相関値が出力される。
【0057】
上記図1に示されるように、本例では、最終段の加算器K9から出力される1シンボル相関値はパスタイミング検出部7及びパス抽出部11に入力される。
また、上記図2に示されるように、本例では、最終段以外の段の各加算器K1〜K8から出力される部分相関値はセレクタSに入力される。
【0058】
また、直交用処理部Z2には、上記した同相用処理部Z1と同様に、A/Dコンバータ3から入力された直交信号を格納するレジスタR2(本例ではタップ数をnとする)と、直交用拡散符号を格納するシフトレジスタ(図示せず)と、レジスタR2に格納された直交信号とシフトレジスタに格納された直交用拡散符号とを乗算するための複数(本例ではn個)の乗算器Gと、これら複数の乗算器Gの乗算結果をトーナメント式に加算するための複数の加算器Hとが備えられている。なお、乗算器Gと加算器Hについては1つのもののみに符号(G、H)を付し、他のものについては符号を省略してある。
【0059】
直交用処理部Z2に備えられたレジスタR2や乗算器Gや加算器H等の構成は、上記した同相用処理部Z1に備えられたものと同様であり、同相用処理部Z1の場合と同様に、直交用処理部Z2では、直交信号について得られた1シンボル相関値をパスタイミング検出部7やパス抽出部11へ出力し、直交信号について得られた部分相関値をセレクタSへ出力する。
【0060】
セレクタSは、例えば外部から入力される相関ベクトル選択信号に従って、同一の信号部分から得られた同相信号についての部分相関値と直交信号についての部分相関値とを選択して組合せ、これを第1の被選択相関ベクトルとして複素共役乗算器6へ出力するとともに、当該信号部分と長さの等しい隣接する信号部分から得られた同相信号についての部分相関値と直交信号についての部分相関値とを選択して組合せ、これを第2の被選択相関ベクトルとして複素共役乗算器6へ出力する機能を有している。
【0061】
ここで、本例では、好ましい態様として、セレクタSにより(1/2)シンボル相関値が選択される場合を示す。具体的には、例えば同相用レジスタR1の左半分から得られた部分相関値をVLとするとともに右半分から得られた部分相関値をVRとし、直交用レジスタR2の左半分から得られた部分相関値をWLとするとともに右半分から得られた部分相関値をWRとすると、(VL,WL)という第1の被選択相関ベクトルと(VR,WR)という第2の被選択相関ベクトルが複素共役乗算器6へ出力される。なお、これらのベクトルはX−Y直交座標で表しており、X座標に対応するVLやVRは同相信号についての成分を表しており、Y座標に対応するWLやWRは直交信号についての成分を表している。
【0062】
また、上記した相関ベクトル選択信号は例えばCDMA受信機で行われる各処理を制御する制御部から出力される。なお、セレクタSによりいずれの部分相関値を選択するかを指定する仕方としては、必ずしも本例のように相関ベクトル選択信号が用いられなくともよく、例えばいずれの部分相関値を選択するかがセレクタSに予め設定されている態様等を用いることもできる。
【0063】
本例では、上記した同相用処理部Z1や直交用処理部Z2やセレクタSの機能により、1拡散符号分の同相信号中から長さの等しい隣接する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得するとともに、1拡散符号分の直交信号中から前記2つの信号部分のそれぞれと対応する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得する部分相関値取得手段が構成されている。
【0064】
また、本例では、上記した同相用処理部Z1や直交用処理部Z2が同相信号や直交信号と拡散符号との相関値(1シンボル相関値)を取得して当該同相信号や当該直交信号を逆拡散することにより、同相信号と直交信号とをそれぞれ対応する拡散符号により逆拡散する逆拡散手段が構成されている。
【0065】
複素共役乗算器6は、セレクタSから入力される2つの被選択相関ベクトルを複素共役乗算し、当該乗算結果をArctan演算部8へ出力する機能を有している。ここで、このような複素共役乗算では、2つの被選択相関ベクトルの間の位相回転ベクトル(位相変動量)が乗算結果として得られる。
【0066】
具体的には、本例では、例えば上記した第2の被選択相関ベクトルに対する第1の被選択相関ベクトルの位相回転ベクトルが乗算結果として得られ、この位相回転の値をΔθとすると、(cos(Δθ),sin(Δθ))という位相回転ベクトルが得られる。本例では、この位相回転の値Δθは(1/2)シンボル時間での発振器1の周波数誤差による位相回転量であり、すなわち、後ろ側の信号部分から得られた第1の被選択相関ベクトルには前側の信号部分から得られた第2の被選択相関ベクトルに対して(1/2)シンボル時間での位相回転Δθがかかっている。
【0067】
パスタイミング検出部7は、マッチドフィルタ5から入力される1シンボル相関値がピークとなるタイミング位置をパスのタイミングとして検出し、検出したパスタイミングをArctan演算部8及びパス抽出部11へ出力する機能を有している。なお、一般に、1シンボル相関値にピークが現れるときには(1/2)シンボル相関値や(1/4)シンボル相関値等にもピークが現れる。
【0068】
Arctan演算部8は、複素共役乗算器6から入力される位相回転ベクトル及びパスタイミング検出部7から入力されるパスタイミングに基づいてパスタイミング時(相関ピーク時)の位相回転Δθを算出して平均化部9へ出力する機能を有している。なお、具体的には、位相回転Δθは式2により算出することができる。
【0069】
【数2】
【0070】
本例では、上記した複素共役乗算器6やパスタイミング検出部7やArctan演算部8の機能により、相関ピーク時の同相信号から取得した一方の部分相関値と当該相関ピーク時の直交信号から取得した当該部分相関値と対応する一方の部分相関値とから構成されるベクトルと当該同相信号から取得した他方の部分相関値と当該直交信号から取得した他方の部分相関値とから構成されるベクトルとの間の位相回転を検出する位相回転検出手段が構成されている。
【0071】
平均化部9は、Arctan演算部8から入力される位相回転Δθを平均化する機能を有しており、本例では、連続する複数の相関ピーク時に取得された複数の位相回転Δθを平均化して当該平均値を周波数制御部10へ出力する機能を有している。
本例では、このような平均化部9の機能により、複数の位相回転の平均値を検出する平均値検出手段が構成されている。なお、このような平均化を行うため、前記位相回転検出手段は3以上のベクトルに基づいて複数の位相回転を検出している。
【0072】
周波数制御部10は、例えば平均化部9から入力される位相回転Δθの平均値に基づいて電圧制御発振器1の周波数誤差を算出し、当該誤差がなくなるように電圧制御発振器1の発振周波数をフィードバック制御する機能を有している。なお、本例では、このフィードバック制御は、周波数制御部10から電圧制御発振器1へ周波数制御信号を出力することにより行われ、このような制御により、上記した位相回転Δθがゼロに近づけられる。
【0073】
本例では、このような周波数制御部10の機能により、前記位相回転検出手段により検出した位相回転に基づいて受信信号の位相回転を補正する補正手段が構成されており、本例では、上記したように発振器から出力される信号の周波数をフィードバック制御することにより補正を行っており、また、前記平均値検出手段により検出した平均値に基づいて補正を行っている。
【0074】
パス抽出部11は、マッチドフィルタ5から1シンボル相関値を入力するとともに、パスタイミング検出部7からパスタイミングを入力し、入力した1シンボル相関値を当該パスタイミングでラッチして、ラッチした1シンボル相関値(逆拡散シンボル)を復調部12へ出力する機能を有している。
【0075】
復調部12は、パス抽出部11から入力された逆拡散シンボルを復調、判定、復号して、復号したデータを出力する機能を有している。また、本例の復調部12は、例えば受信信号(同相信号と直交信号)の振幅補償処理をパイロットシンボル等を用いて行う機能や、フェージングにより短期間に(例えば複数フレームにわたらずに)生じる位相回転を補償する機能を有している。なお、本例のCDMA受信機に備えられた補正部C1は、主として比較的長時間にわたって(例えば複数フレームにわたって)一定の回転を補償するのに適したものである。
【0076】
次に、上記の構成から成る本例のCDMA受信機により行われる処理の一例を示す。
すなわち、CDMA方式により受信された無線周波数帯の信号(RF信号)が直交検波部2に入力されるとともに、電圧制御発振器1から出力される搬送波が直交検波部2に入力され、直交検波部2では、当該搬送波を用いて前記受信信号をベースバンドの同相信号と直交信号とにダウンコンバートする。
【0077】
A/Dコンバータ3では直交検波部2によりダウンコンバートされた同相信号及び直交信号をデジタル化してマッチドフィルタ5へ出力する。
マッチドフィルタ5では、上記したように、A/Dコンバータ3から入力した同相信号や直交信号と参照用の拡散符号との相関をとって逆拡散を行うことにより、同相信号や直交信号の1シンボル相関値をパスタイミング検出部7やパス抽出部11へ出力するとともに、2つの被選択相関ベクトルを複素共役乗算器6へ出力する。
【0078】
パスタイミング検出部7では、マッチドフィルタ5から入力した1シンボル相関値に基づいてパスタイミングを検出し、検出したパスタイミングをArctan演算部8やパス抽出部11へ出力する。
パス抽出部11ではパスタイミング時のマッチドフィルタ出力(1シンボル相関値)をラッチして逆拡散シンボルとして出力し、復調部12では当該逆拡散シンボルを復調等してデータを再生する。
【0079】
また、上記したように、複素共役乗算部6やArctan演算部8や平均化部9がパスタイミング時における受信信号(同相信号と直交信号)の位相回転Δθの平均値を算出し、周波数制御部10が当該平均値に基づいて受信信号の位相回転を補正する。
【0080】
以上のように、本例のCDMA受信機では、CDMA方式により送信された信号を受信し、受信した信号を発振器1から出力される信号(搬送波)を用いて直交検波し、検出した同相信号及び直交信号と拡散符号との相関をとって逆拡散等を行うに際して、上記したように1拡散符号分より短い信号部分についての部分相関値に基づいて位相回転Δθを検出し、当該位相回転Δθに基づいて発振器1の発振周波数を自動制御(AFC)して受信信号の位相回転を補正するようにした。
【0081】
従って、本例のCDMA受信機では、上記した2つの被選択相関ベクトル間(本例では、1/2シンボル時間)の位相回転の値が±π以内であれば受信信号の位相回転を正しく補正することができ、このように、位相の誤差検出範囲(検出補償することが可能な誤差範囲)を実質的に広くすることができる。このため、受信信号の位相回転が比較的大きな場合であっても当該位相回転を正しく補正することができ、これにより、復調等したデータの特性が例えば発振器1の精度に起因した位相回転によって大きく劣化してしまうのを防止することができる。また、本例のCDMA受信機では、例えばパイロットシンボル以外のシンボルを用いて位相回転を補正することもできる。
【0082】
また、本例のCDMA受信機では、検出した位相回転Δθの平均値に基づいて受信信号の位相回転を補正するようにしたため、例えば位相回転Δθを検出する精度が雑音により多少劣化している場合であっても、平均化により当該劣化の影響を低減させて位相補正の精度を向上させることができる。
また、本例のCDMA受信機では、上記した部分相関値を取得する部分相関値取得手段と逆拡散を行う逆拡散手段とを共通の回路から構成したため、装置の簡易化等を図ることができる。
【0083】
なお、本例では、上記したようにCDMA受信機を例として説明を行ったが、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置についても同様に、CDMA方式により受信した信号から発振器の出力信号を用いて検出された同相信号と直交信号とを用いて当該受信信号の位相回転を補正するに際して、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすること等ができ、これにより、復調等したデータの特性が位相回転によって大きく劣化してしまうのを防止すること等ができる。
【0084】
次に、本発明に係る第2実施例を図3を参照して説明する。
図3には、本発明に係るCDMA受信機の一例を示してあり、このCDMA受信機の構成は、検出した位相回転Δθを用いて受信信号の位相回転を補正する構成が異なるといった点を除いては、上記第1実施例で示したCDMA受信機の構成と同様である。
【0085】
本例のCDMA受信機には、信号(搬送波)を出力する発振器21と、受信信号の位相回転を補正等する補正部C2と、上記第1実施例で示したCDMA受信機に備えられたものと同様な直交検波部22、A/Dコンバータ23、パス抽出部31、復調部32とが備えられている。なお、本例の発振器21は必ずしも発振周波数が可変なものでなくともよい。
【0086】
また、補正部C2には、逆拡散シンボルの位相回転を補正する周波数誤差補正部30と、上記第1実施例で示した補正部C1に備えられたものと同様な符号生成部24、マッチドフィルタ25、複素共役乗算器26、パスタイミング検出部27、Arctan演算部28、平均化部29とが備えられている。
【0087】
本例では、上記第1実施例で示したCDMA受信機の構成と同様な部分についての説明は省略し、以下では、上記第1実施例で示したCDMA受信機の構成とは異なっている周波数誤差補正部30の構成等を説明する。
すなわち、本例では、パス抽出部31と復調部32との間に周波数誤差補正部30が備えられており、平均化部29により算出された位相回転Δθの平均値が当該周波数誤差補正部30に入力される。
【0088】
本例では、パス抽出部11から出力される逆拡散シンボルには位相回転が含まれており、このような逆拡散シンボルが周波数誤差補正部30に入力される。
周波数誤差補正部30は、平均化部29から入力した位相回転Δθの平均値に基づいてパス抽出部31から入力した逆拡散シンボルの位相回転を補正し、補正した逆拡散シンボルを復調部32へ出力する機能を有している。具体的には、例えば上記第1実施例の場合と同様に(1/2)シンボル相関値を用いた場合には、(1/2)シンボル時間で−Δθ程度の位相回転を逆拡散シンボルに施すことにより、当該逆拡散シンボルの位相回転(位相ずれ)をゼロに近づけることができる。
【0089】
本例では、このような周波数誤差補正部30の機能により、位相回転検出手段により検出した位相回転に基づいて受信信号の位相回転を補正する補正手段が構成されており、本例では、平均値検出手段により検出した位相回転の平均値に基づいて補正を行っており、また、逆拡散された信号(本例では、上記した逆拡散シンボル)の位相回転を補正することにより受信信号の位相回転を補正している。
【0090】
以上のように、本例のCDMA受信機においても、例えば上記第1実施例で示したCDMA受信機の場合と同様に、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすること等ができ、これにより、復調等したデータの特性が位相回転によって大きく劣化してしまうのを防止すること等ができる。
また、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置についても、同様な効果を得ることができる。
【0091】
ここで、上記した第1実施例や第2実施例では、位相補正の精度をよくするために好ましい態様として、(1/2)シンボル相関値を用いて受信信号の位相回転Δθを検出して補正を行う態様を示したが、例えば(1/4)シンボル相関値等を用いて受信信号の位相回転Δθを検出して補正を行う態様が用いられてもよい。
【0092】
なお、(1/2)シンボル相関値を用いると位相補正の精度が比較的よくなる理由は、(1/2)シンボル相関値が(1/4)シンボル相関値等に比べて大きいために信号対雑音比(SN比)がよくなるためであるが、このようなSN比を考慮しないとすれば、(1/4)シンボル相関値等を用いた場合の方が(1/2)シンボル相関値を用いた場合に比べて周波数誤差の引込み範囲(位相の誤差検出範囲)を実質的に広くすることができる。すなわち、例えば(1/4)シンボル相関値等を用いた場合には、(1/4)シンボル時間等での位相回転が±π以内であれば受信信号の位相回転を正しく補正することができ、(1/2)シンボル相関値を用いた場合に比べて引込み範囲が広くなる。
【0093】
このようなことから、一例として、受信信号の位相回転が比較的大きなときには(1/4)シンボル相関値等を用いた補正により受信信号の位相回転を大まかに補正し、これにより受信信号の位相回転が比較的小さくなってきたときに(1/2)シンボル相関値を用いた補正に切替えて受信信号の位相回転を精度よく補正するといった態様を用いることも好ましい態様である。
なお、検出した位相回転Δθを用いて受信信号の位相回転を補正する仕方としては、特に限定はなく、要は、誤差による受信信号の位相回転をゼロに近づけることができればよい。
【0094】
また、CDMA送信機とCDMA受信機との間での通信に用いられる変調方式としては特に限定はなく、例えばPSK変調方式や振幅変調方式等の種々な方式が用いられてもよい。
また、本発明は、必ずしも例えばQPSK変調方式のようにCDMA送信機とCDMA受信機との間で同相信号と直交信号とを同時に通信するようなシステムのCDMA受信機に適用される必要はなく、例えばCDMA送信機から片相のみの信号(同相信号、或いは、直交信号)が送信されるシステムのCDMA受信機に適用することもできる。
【0095】
具体的には、例えばCDMA送信機から片相のみの信号が送信される場合であっても、当該信号が無線区間を通るに際して当該信号に位相回転が生じることもあるため、このような場合に、CDMA受信機に本発明を適用して上記第1実施例や第2実施例で示したような位相補正を行うようにすれば、CDMA受信機では受信した当該片相の信号の位相回転を精度よく補正することができる。
【0096】
また、上記第1実施例や第2実施例では、平均化部9、29により連続する複数の相関ピーク時における受信信号の位相回転Δθを平均化する態様を示したが、例えば(1/4)シンボル相関値等を用いて受信信号の位相回転を補正する場合には、1拡散符号分の受信信号(同相信号と直交信号)中から3以上のベクトルを取得することも可能なため、これらのベクトルを用いて2以上の位相回転Δθを検出することもできる。
また、位相回転Δθの検出精度が雑音によりそれほど影響されない場合等には、必ずしも検出した位相回転Δθの平均化が行われなくともよい。
【0097】
また、上記第1実施例や第2実施例で示したCDMA受信信号の位相補正処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサが制御プログラムを実行することにより制御される構成であってもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されていてもよい。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置によると、CDMA方式により受信した信号から発振器の出力信号を用いて検出された同相信号と直交信号とを用いて、例えば上記実施例で示したように当該同相信号や当該直交信号の部分相関値に基づいて受信信号の位相回転(位相ずれ)を検出するようにしたため、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすること等ができ、これにより、復調等したデータの特性が位相回転によって大きく劣化してしまうのを防止すること等ができる。
【0099】
また、本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置では、複数の位相回転を検出して平均化し、当該平均値に基づいて受信信号の位相回転を補正するようにしたため、例えば位相回転を検出する精度が雑音により多少劣化している場合であっても、当該劣化の影響を低減させて位相補正の精度を向上させることができる。
【0100】
また、本発明に係るCDMA受信機によると、CDMA方式により送信された信号を受信し、受信した信号を発振器から出力される信号を用いて直交検波等するに際して、上記した本発明に係るCDMA受信信号の位相補正装置と同様な処理により受信信号の位相回転を補正するようにしたため、上記と同様に、位相の誤差検出範囲を実質的に広くすること等ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るCDMA受信機の一例を示す図である。
【図2】マッチドフィルタの構成例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施例に係るCDMA受信機の一例を示す図である。
【図4】通信フレームの一例を示す図である。
【図5】従来のCDMA受信機の構成例を示す図である。
【図6】受信信号の位相回転を説明するための図である。
【図7】位相変動量の一例を示す図である。
【図8】従来の課題を説明するための図である。
【符号の説明】
1、 、21・・発振器、 2、22・・直交検波部、
3、23・・A/Dコンバータ、 4、24・・符号生成部、
5、25・・マッチドフィルタ、 6、26・・複素共役乗算器、
7、27・・パスタイミング検出部、 8、28・・Arctan演算部、
9、29・・平均化部、 10・・周波数制御部、
11、31・・パス抽出部、 12、32・・復調部、
30・・周波数誤差補正部、 C1、C2・・補正部、
R1、R2・・レジスタ、 Z1・・同相用処理部、 Z2・・直交用処理部、
J1〜Jn、G・・乗算器、 K1〜K9、H・・加算器、 S・・セレクタ、
Claims (5)
- CDMA方式により受信した信号から発振器の出力信号を用いて検出された同相信号と直交信号とを用いて当該受信信号の位相回転を補正するCDMA受信信号の位相補正装置であって、
検出された1拡散符号分の同相信号中から長さの等しい隣接する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得するとともに、検出された1拡散符号分の直交信号中から前記2つの信号部分のそれぞれと対応する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得する部分相関値取得手段と、
相関ピーク時の同相信号から取得した一方の部分相関値と当該相関ピーク時の直交信号から取得した当該部分相関値と対応する一方の部分相関値とから構成されるベクトルと当該同相信号から取得した他方の部分相関値と当該直交信号から取得した他方の部分相関値とから構成されるベクトルとの間の位相回転を検出する位相回転検出手段と、
検出した位相回転に基づいて前記受信信号の位相回転を補正する補正手段と、
を備え、
前記部分相関値取得手段は、前記選択する信号部分として、受信信号の位相回転に応じて、異なる長さの信号部分を切替えて選択するセレクタを有する、
ことを特徴とするCDMA受信信号の位相補正装置。 - 請求項1に記載のCDMA受信信号の位相補正装置において、
前記位相回転検出手段は3以上のベクトルから複数の位相回転を検出し、
これら複数の位相回転の平均値を検出する平均値検出手段を備え、
前記補正手段は当該平均値検出手段により検出した平均値に基づいて補正を行うことを特徴とするCDMA受信信号の位相補正装置。 - 請求項1又は請求項2に記載のCDMA受信信号の位相補正装置において、
前記補正手段は前記発振器から出力される信号の周波数をフィードバック制御することにより補正を行うことを特徴とするCDMA受信信号の位相補正装置。 - 請求項1又は請求項2に記載のCDMA受信信号の位相補正装置において、
前記同相信号と前記直交信号とをそれぞれ対応する拡散符号により逆拡散する逆拡散手段を備え、
前記補正手段は逆拡散された信号の位相回転を補正することにより前記受信信号の位相回転を補正することを特徴とするCDMA受信信号の位相補正装置。 - CDMA方式により送信された信号を受信し、受信した信号を発振器から出力される信号を用いて直交検波するCDMA受信機において、
発振器から出力される信号を用いて受信信号から同相信号と直交信号とを検出する直交検波手段と、
検出した1拡散符号分の同相信号中から長さの等しい隣接する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得するとともに、検出した1拡散符号分の直交信号中から前記2つの信号部分のそれぞれと対応する2つの信号部分を選択し、選択した各信号部分と当該各信号部分と対応する拡散符号との部分相関値を取得する部分相関値取得手段と、
相関ピーク時の同相信号から取得した一方の部分相関値と当該相関ピーク時の直交信号から取得した当該部分相関値と対応する一方の部分相関値とから構成されるベクトルと当該同相信号から取得した他方の部分相関値と当該直交信号から取得した他方の部分相関値とから構成されるベクトルとの間の位相回転を検出する位相回転検出手段と、
検出した位相回転に基づいて前記受信信号の位相回転を補正する補正手段と、
を備え、
前記部分相関値取得手段は、前記選択する信号部分として、受信信号の位相回転に応じて、異なる長さの信号部分を切替えて選択するセレクタを有する、
ことを特徴とするCDMA受信機。
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