以下、この発明の実施の一形態について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における車載用電動開閉体の開閉制御方法を適用したサンルーフの開閉制御装置を示す回路図である。図において11は電動機、30は電動機の駆動回路であり、電動機11の通電回路を切り替えるリレー接点31、32と、リレー接点を駆動するリレーコイル33、34で構成されている。40は電動機11の駆動電流を検出するために電動機11に接続されたシリーズ抵抗、60はシリーズ抵抗40の両端に発生する電圧の高周波成分をカットするフィルタ回路、70はフィルタ回路60の出力信号を増幅する増幅回路である。
また、1は車両に搭載されたバッテリ、2はバッテリ1に接続されたイグニッションスイッチ、3はサンルーフパネル開放始動信号を出力する開放スイッチ、4はサンルーフパネルの閉成始動信号を出力する閉成スイッチ、5はサンルーフパネル全閉状態となった時にオンする全閉位置スイッチ、6はサンルーフパネルが全開状態になった時オンする全開位置スイッチ、7はサンルーフパネルがチルト最高位置に達した時にオンするチルト最高位置スイッチである。8はこれら各スイッチ3〜7の状態に基づいて駆動回路30より電動機11を駆動し、サンルーフパネルの摺動を制御する制御処理回路で、例えば、マイクロコンピュータなどが用いられる。9はこの制御処理回路8にクロックパルスを供給する振動子、10は制御処理回路8に電源を供給する電源回路である。
12a〜12dは前記開放スイッチ3、閉成スイッチ4、全閉位置スイッチ5、全開位置スイッチ6およびチルト最高位置スイッチ7の各出力信号をそれぞれ制御処理回路8の入力ポートI1〜I5に入力するインタフェース回路、20は電動機11の印加電圧を制御処理回路8のA/D1ポートに入力するインタフェース回路であり、電動機11の印加電圧を分圧する抵抗21、22とノイズ吸収用のコンデンサ23にて構成されている。
なお、上記駆動回路30には、制御処理回路8のO1ポートあるいは、O2ポートから出力される信号に基づいてリレーコイル33、または、リレーコイル34に供給される電流をオン/オフする駆動トランジスタ35、36を設けられている。また、増幅回路70の出力信号は制御処理回路8のA/D2ポートに入力されている。160はサーミスタ161と抵抗162とで構成された温度測定回路であり、その出力信号は制御処理回路8のA/D3ポートに入力されている。なおA/D1ポート、A/D2ポートおよびA/D3ポートは、制御処理回路8のアナログ・ディジタル変換ポートである。
図2はサンルーフのアクチュエータの一部切欠斜視図、図3はサンルーフパネルの開放/閉成動作およびチルト上昇/下降動作を説明する断面図であり、その具体的構成は周知であるので図示を省略する。図2に示したサンルーフのアクチュエータ211は、図3(a)に矢印Aで示すようにサンルーフパネル(車載用開閉体)210をガイドレール212に沿って移動させることにより、サンルーフの開放(点線状態)および閉成(実線状態)を行なう。また、図3(b)の矢印Bで示すような全閉状態のサンルーフパネルの後部を上下させてチルト上昇/下降動作を行う。なお、前述のチルト上昇/下降動作とは、サンルーフパネルの後部を上下させる動作のことである。
次に動作について説明する。イグニッションスイッチ2をオンすると、バッテリ1が電源回路10に接続され、制御処理回路8はこの電源回路10より電圧が供給される。さらにこの電源回路10は、パワーオン時、およびウォッチドッグ不具合の時にはリセット信号を発生させて制御処理回路8の初期化を行なう。また駆動回路30のリレーコイル33、34にはバッテリ1より電圧が印加されており、この印加電圧は、さらに、インタフェース回路20の抵抗21と22で分圧され、コンデンサ23によってノイズが除去されて制御処理回路8のA/D1ポートに入力されている。
電動機11の正転駆動即ちサンルーフパネル開放動作、及びチルト下降動作を行なう場合、制御処理回路8はそのO1ポートをハイレベル、O2ポートをローレベルにする。これによって駆動回路30の駆動トランジスタ35がオンとなり、リレーコイル33に電流が流れてそのリレー接点31が、電源側に接続される。従ってリレー接点31、電動機11、リレー接点32、シリーズ抵抗40の経路を通ってバッテリ1から駆動電流が電動機11に順方向に流れ、電動機11が正転する。
また、反転駆動、即ちサンルーフパネル閉成動作、及びチルト上昇動作を行なう場合制御処理回路8はそのO2ポートをハイレベル、O1ポートをローレベルにする。これによって駆動回路30の駆動トランジスタ36がオンとなり、リレーコイル34に電流が流れてそのリレー接点32が、電源側に接続される。従ってリレー接点32、電動機11、リレー接点31、シリーズ抵抗40の経路を通ってバッテリ1から駆動電流が電動機11に逆方向に流れ、電動機11が逆転する。
開放スイッチ3、閉成スイッチ4、全閉位置スイッチ5、全開位置スイッチ6およびチルト最高位置スイッチ7のオン/オフ信号は、それぞれ対応するインタフェース回路12a〜12dに一旦入力される。各インタフェース回路12は、接続されているスイッチ3〜7がオンであればハイレベル信号を、オフであればローレベル信号を制御処理回路8のI1ポート〜I5ポートの中の対応付けられたものに入力する。前述のように、制御処理回路8のA/D1ポートには、電動機11の印加電圧をインタフェース回路20の抵抗21と22との分圧した信号が入力されており、A/D2ポートには、シリーズ抵抗40による電圧降下を増幅した信号、即ち電動機11の駆動電流量に相関した信号が入力されている。
次に基本動作を図6に示したフローチャートに従って説明する。電源投入後のイニシャルスタート後のステップST1では、制御処理回路8の初期設定であり制御上使用する測定値や計算値データおよびフラグを初期化する。次のステップST2では、電動機11が駆動している間に過負荷(挟まれ)発生しているか否かを判定する。過負荷判定の方法は、後に説明する過負荷発生フラグで行なう。過負荷が発生していなければステップST3移行する。過負荷が発生しているならばステップST4へ移行して過負荷発生処理を行なう。ステップST4の処理は、後に説明する。ステップST3では、各スイッチ3〜7による入力レベルを検出し、それに基づいて電動機11の駆動処理を行なう。
ステップST5では、ステップST3の処理結果を判定し、電動機11が駆動の場合は、ステップST6へ移行し、駆動しない場合は、再度ステップST3に戻る。
ステップST6では、駆動中の電動機11の過負荷が発生をしたかを検出する。ステップST7では、過負荷発生処理を実行するか否かを判定する。前記ステップST6で過負荷を検出していれば前記ステップST4の過負荷発生処理へ移行し、検出していなければステップST8へ移行する。なおステップST7は前記ステップST4と同じ過負荷発生フラグで判定する。ステップST8、ステップST9では、電動機11駆動中にクランキングが発生したか否かを検出する。図5は、図4の電圧、電流クランキング波形のクランキング部分の拡大図である。
まず、ステップST8では、電動機11の印加電圧(A/D1)値がクランキング電圧しきい値(例えば8V)を下回ったか否かを検出する。印加電圧がクランキング電圧しきい値を下回った場合ステップST9へ移行する。ステップST9では、電動機11の電流(A/D2)値がクランキング電流しきい値(例えば、2A)を下回ったか否かを検出する。電流がクランキング電流しきい値を下回った場合ステップST10へ移行する。
ステップST10ではクランキングが発生として電動機11の停止処理を行ない反転動作を防止し再びステップST2に戻る。ステップST8、ステップST9でクランキング電圧しきい値、及びクランキング電流しきい値を下回らなかった場合は、ステップST11へ移行しクランキング検出を抜ける。ステップST11では、各スイッチ3〜7のスイッチ入力レベルに基づいて電動機11の停止検出処理を行い、次のステップST12においてステップST11の処理結果を判定する。その結果電動機11が停止でない場合は、電動機11は、駆動中であるからステップST6に戻り、電動機11が停止の場合には、ステップST2に戻る。
以下にステップST3、ステップST4、ステップST6、ステップST10及びステップST11の詳細を説明する。
まず、ステップST3における電動機11の駆動処理を、図7のフローチャートを用いて説明する。当該処理が開始されるとサンルーフパネルの位置を検出する。チルト最高位置スイッチ7、全開位置スイッチ6のオン/オフがステップST20及びステップST21で判定される。それらがいずれもオフの場合には、サンルーフパネルが、摺動途中で停止している状態であり、ステップST22に移行する。ステップST22で開放スイッチ3の状態を検出し、それがオンであれば、ステップST23に移行する。ステップST23では駆動回路30の駆動トランジスタ35をオンして電動機11を正転させ、サンルーフパネルを開放側へ摺動させてRTSに移行する。
またステップST22で開放スイッチ3が、オフであることが検出された場合にはステップST24に移行する。ステップST24では、閉成スイッチ4の状態を検出し、それがオンであれば、ステップST25へ移行する。ステップST25では、駆動回路30の駆動トランジスタ36をオンにして電動機11を逆転させ、サンルーフパネルを閉成側へ摺動させRTSに移行する。一方閉成スイッチ4がオフであれば、ステップST26に移行し、駆動回路30の駆動トランジスタ35と36とをオフの状態のまま維持しRTSに移行する。
なおステップST20にてチルト最高位置スイッチ7のオンが検出された場合には、サンルーフパネルはチルト最高位置状態であり、ステップST27に移行する。ステップST27では、閉成スイッチ4の状態を検出し、それがオンであってもサンルーフパネルを閉成側に摺動させることができないため、処理をステップST26に移行して、駆動回路30の駆動トランジスタ35と36とをオフの状態のまま維持する。また、閉成スイッチ4がオフであれば、ステップST28へ移行して開放スイッチ3の状態を検出し、それがオンであれば、ステップST23へ移行しサンルーフパネルを開放側に摺動させてRTSに移行する。一方、開放スイッチ3がオフであれば、ステップST26へ移行して駆動回路30の駆動トランジスタ35と36とをオフの状態のまま維持しRTSに移行する。
また、ステップST21にて全開位置スイッチ6のオンが検出された場合には、サンルーフパネルは全開状態であり、ステップST29に移行する。ステップST29では、サンルーフパネルは全開状態であり、開放スイッチ4の状態を検出し、それがオンであってもサンルーフパネルを開放側に摺動させることができないため、処理をステップST26に移行して、駆動回路30の駆動トランジスタ35と36とをオフの状態のまま維持しRTSに移行する。また、開放スイッチ3がオフであれば、ステップ24へ移行して閉成スイッチ4の状態を検出し、そのオン/オフに応じてステップST25あるいは、ステップST26に移行し前述の処理を実行する。なおRTSは、基本動作図6の処理ステップST3に戻る処理である。
次に図6のステップST11における電動機11の停止処理を図8のフローチャートに従って説明する。当該処理が開始されると、まずステップST30において開放側駆動回路の状態、すなわち駆動回路30の駆動トランジスタ35の状態が検出される。検出結果がオフであればステップST31へ移行して、閉成側駆動回路の状態、すなわち駆動回路30の駆動トランジスタ36の状態が検出される。この検出結果でもオフであれば、ステップST32へ移行して、駆動回路30のオフ状態を維持しRTSに移行する。
ステップST30において開放側駆動回路がオンしていることが検出された場合、即ちサンルーフパネルが開放側へ摺動している場合には、ステップST33に移行して全開位置スイッチ6の状態を検出する。その結果全開位置スイッチ6がオンであれば、サンルーフパネルは、全開位置に到達したことからステップST32へ移行し駆動回路30をオフする。また全開位置スイッチ6がオフの場合には、ステップST34に移行して全閉位置スイッチ5の状態を検出する。その結果、全閉位置スイッチ5がオンであればサンルーフパネルは、チルトが上昇した位置から全閉位置に到達したことから、ステップST32に移行し駆動回路30をオフ状態とする。
一方、全閉位置スイッチ5がオフであれば、ステップST35に移行する。このステップST35では閉成スイッチ4の状態が検出される。検出の結果、閉成スイッチ4がオフであれば、ステップST36に移行して、開放側駆動回路のオン状態を維持して、サンルーフパネルを開放側への摺動を続行しRTSに移行する。また、閉成スイッチ4がオンであれば、ステップST32に移行して、駆動回路30をオフ状態にしてサンルーフパネルの摺動を停止する。即ち電動機11の回転と逆方向のスイッチを操作することによって該電動機を停止する。
また、ステップST31において、閉成側駆動回路がオンしていることが検出された場合、即ちサンルーフパネルが閉成側に摺動中している場合には、ステップST37に移行してチルト最高位置スイッチ7の状態を検出する。その結果、チルト最高位置スイッチ7がオンであれば、サンルーフパネルは、チルト最高位置に到達したことから、ステップST32に移行し駆動回路30をオフ状態とする。また、チルト最高位置スイッチ7がオフの場合には、ステップST38に移行して全閉位置スイッチ5の状態が検出される。その結果全閉位置スイッチ5がオンならば、サンルーフパネルは全閉位置に到達したことからステップST32に移行し駆動回路30をオフ状態とする。一方、全閉位置スイッチ5がオフであればステップST39に移行する。
ステップST39では、開放スイッチ3の状態が検出される。その結果、開放スイッチ3がオフであれば、ステップST40に移行して、閉成側駆動回路のオン状態を維持しRTSに移行する。すなわち、サンルーフパネルの閉成側への摺動を続行する。また、開放スイッチ3がオンであれば、ステップST32に移行して駆動回路30をオフ状態としRTSに移行する。なおRTSは、基本動作図6の処理ステップST11に戻る処理である。
次に図6のステップST6における負荷検出の概略を説明する。過負荷の検出は、電動機11の駆動電流を監視することによって行なわれる。すなわち電動機11の駆動電流は、負荷の増大に伴って増加することから所定量の過負荷における駆動電流の増加をしきい値として予め設定しておき、一定のタイミング時間毎における駆動電流の増加を検出して、しきい値を超えた駆動電流の増加が検出された場合に過負荷(挟まれ、又は異物の摺動部噛み込み)と判定するものである。
図9はこの負荷検出の概略動作を説明するための線図である。同図(a)は電動機11の駆動が開始されてから停止するまでの駆動電流の変化を示したものであり、同図(b)は一定のタイミング時間毎の駆動電流の増加量としきい値との関係を示したものである。
電動機11が駆動開始してからしばらくの間(約200ms)は、過渡電流が流れるため、負荷検出はマスクしている。マスク時間経過後Δt(例えば20ms)毎ごとに電動機11の駆動電流の変化量を検出している。図9(a)に示すΔt1〜Δt4間でのサンルーフパネルの摺動負荷は、滑らかな状態であり駆動電流変化量はほとんど無い。しかし、Δt5から過負荷が発生しΔt5、Δt6、Δt7とそれぞれ駆動電流変化量Δi1、Δi2、Δi3が生じている。同図(b)に示すようにΔt7以降では、駆動電流変化量Δi1、Δi2、Δi3の総和がしきい値を上回ったため過負荷検出を実行している。
次に、サンルーフパネルの負荷特性について説明する。サンルーフパネルの摺動負荷は、温度、塵埃による経年変化によって影響される。すなわち低温ほどサンルーフパネル摺動部のグリスが硬化し摺動抵抗が大きくなる。同様に塵埃が多い環境下でのサンルーフパネルも摺動部の異物混入により摺動抵抗が大きくなり、また摺動する各部分の抵抗値のバラツキ(摺動抵抗のムラ)も大きくなる。これに伴い電動機11の駆動電流値や、電流の変化量も大きくなる。
また、低温、塵埃環境下での経年変化での電動機11の負荷の上昇と該電動機の印加電圧が低い場合は、電動機11のトルク低下により該電動機の回転速度が低下する。このことによりサンルーフパネルの摺動速度は低下し、過負荷時の電動機11の駆動電流の変化に要する時間が長くなる特性がある。
以上の概略と特性を踏まえて負荷検出の制御方法の詳細を説明する。図10は、常温及び通常負荷と低温、塵埃環境下での経年変化とを識別し、挟まれ検出を行なっている電動機11の駆動電流波形である。同図(a)は常温及び通常負荷の状態、同図(b)は低温、塵埃環境下での経年変化での状態を検出し、常温及び通常負荷の過負荷しきい値I1(例えば1.5A)からI2(例えば2A)に変更していることを示している。このことにより、前記摺動抵抗ムラによりしきい値I1より大きな電流変化があった場合、誤った過負荷検出でサンルーフパネルが止まったり、或いは、反転動作が発生することを防止している。
図11は、常温及び通常負荷と低温、塵埃環境下での経年変化及び低電圧とを識別し、電動機11の駆動電流のサンプリング間隔の変更を行なっている電動機11の駆動電流波形であり、同図(a)は常温、通常負荷の状態、同図(b)は低温、塵埃環境下での経年変化での状態及び電動機11の低電圧時を示しており同図(a)のサンプリング時間△T1の2倍△T2に変更して、サンプリング時間当りの駆動電流変化量を大きくし確実に変化量を検出できるようにしている。
これらの制御を図12に示すフローチャートに従って説明する。当該処理が、開始されると、まずステップST41において、過負荷検出準備が完了しているか否かを判定する。過負荷検出準備が完了していなければ、ステップST42に移行し過負荷検出準備を続行する。この過負荷検出準備とは、過負荷検出のしきい値I1、I2の選択、サンプリング時間間隔△T1、△T2の選択を決定する処理である。この処理は、後に説明する。
ステップST41にて過負荷検出準備が終了していればステップST43に移行する。ステップST43では、ステップST42で決定されたサンプリング時間が△T2であるか否かを判定する、サンプリング時間が△T2であれば、ステップST44へ移行し、△T2でなければ、ステップST45へ移行し制御処理回路8のA/D2値(駆動電流値)を測定し制御処理回路8のメモリに記憶する。
ステップST44では、過負荷検出準備のステップST42にてセットされたサンプリングフラグの値を判定する。サンプリングフラグがセット状態ならば、ステップST46にてサンプリングフラグをクリアして前述のステップST45に移行する。ステップST44にてサンプリングフラグがクリア状態の場合は、ステップST47でサンプリングフラグをセットしステップST48に移行する。すなわちサンプリング時間が△T2に設定された場合、電動機11の駆動電流の測定間隔は、負荷検出処理の1回おきにされる。また、△T2に設定されない場合は、毎回負荷検出処理での駆動電流の測定になり、その時間間隔は△T1である。
ステップST48では、前回に測定したA/D2値データの有無を判定し、前回のA/D2値のデータが無い場合は、RTSに移行し図6の基本動作の処理ステップST6に戻る。前回のA/D2値のデータが有る場合は、ステップST49に移行する。ステップST49では、今回測定したA/D2の測定データと前回のA/D2の測定データとの差を差分データとして制御処理回路8のメモリに記憶する。次のステップST50では、算出した差分データを積算データに加算し、その和を積算データに記憶する。すなわち積算データは負荷検出処理ごとに更新される。
次のステップST51では、今回更新された積算データが、挟まれしきい値I1と比較し過負荷が発生か否かを判定する処理を行ない、続いてRTSに移行する。なおRTSは、基本動作の処理ステップST6に戻る処理である。過負荷検出処理の詳細は、後述する。
ここで先に述べたステップST42である負荷検出準備の詳細を図13のフローチャートに従って説明する。
当該処理が開始されると、まずステップST60において図10に示す電動機11が駆動開始時に発生する過渡電流であるか否かを判定する。過渡電流発生中の場合は、RTSへ移行する。
すなわち過渡電流発生中(約200ms間)は、図12のステップST51の過負荷検出は行なわれず過負荷検出はマスク状態になる。
ステップST60にて当該タイマが終了した場合、ステップST61に移行する。ステップST61では、制御処理回路8のA/D3の入力値(温度)と制御処理回路8が予め記憶している温度しきい値TS(例えば0℃)と比較する。前記温度がしきい値TSより低いときは図10(b)と図11(b)の低温状態としてステップST62に移行する。ステップST62では、挟まれしきい値I2とサンプリング時間ΔT2に設定しステップST63に移行する。ステップST63ではサンプリングフラグをセットしRTSに移行する。サンプリングフラグは、前述した図12のフローチャートステップST44、46、47での処理に使用されるフラグである。
ステップST61にて前記温度が温度しきい値TSより高い場合はステップST64に移行する。ステップST64では、制御処理回路8のA/D2の入力値(駆動電流)と図10(a)(b)に示す制御処理回路8が予め記憶している電流しきい値IS(例えば7A)と比較する。前記駆動電流値がしきい値ISより低いときは図10(b)と図11(b)の高負荷状態としてステップST62に移行する。ステップST62移行後の処理は、前述しているので省略する。ステップST64にて前記駆動電流がしきい値ISより小さい場合は、ステップST65へ移行する。
ステップST65では、制御処理回路8のA/D1の入力(電圧)値と制御処理回路8が予め記憶している電圧しきい値VS(例えば10V)と比較する。前記電圧値がしきい値VSより小さいときはステップST66に移行する。ステップST66では図11(b)の低電圧状態として、サンプリング時間は△T2に設定し、低温、高負荷状態ではないので、しきい値I1に設定してステップST67に移行する。ステップST67では、前処理ST66にて△T2を設定したことによりサンプリングフラグをセットし、RTSに移行する。
ステップST65にて電圧値がしきい値VSより大きい場合は、ステップST68に移行する。ステップST68では、サンルーフの状態が図10(a)、図11(a)の常温、通常負荷、通常電圧であるためサンプリング時間を△T1、しきい値I1に設定する。次のステップST69では、ステップST68でサンプリング時間を△T1に設定したことによりサンプリングフラグをクリアし、RTSに移行する。以上のようにして負荷検出準備処理では、過負荷しきい値I1と駆動電流データサンプリングリング時間△T1又は△T2を決定する。なおRTSは、図12の負荷検出処理ステップST42に戻る処理である。
次に図12の負荷検出処理におけるステップST51の過負荷検出処理の詳細を図14のフローチャートに従って説明する。
当該処理が開始されると、まずステップST71において図12での負荷検出処理ステップST50で算出した積算データと前記負荷検出準備処理で決定したしきい値I1を比較する。
積算データがしきい値I1より大きい場合は、ステップST72に移行する。ステップST72では、前記積算データすなわち電動機11の駆動電流の増加量が挟まれしきい値I1より大きくなったことから、過負荷状態が発生として過負荷発生フラグをセットしRTSに移行する。
なお図6の基本動作でのステップST2における過負荷発生の判定は、上記過負荷発生フラグの状態で行なっている。
ステップST71にて積算データがしきい値I1より小さい場合は、ステップST73に移行する。ステップST73では、モータタイマカウンタ値を判定する。モータタイマカウンタは、負荷検出処理中、所定時間内での電動機11の駆動電流の変化量を検出するためのタイマカウンタであり、動作及び当該カウンタの設置の目的を図15に用いて説明する。同図(a)は電動機11の駆動電流変化量が、しきい値I1を上回っていないにもかかわらず過負荷検出により電動機11が停止した波形である。同図(b)に示すように電動機11の駆動電流は、サンルーフパネルの摺動抵抗ムラにより脈流になる。この脈流をサンプリング時間△T1もしくは△T2ごとに検出した時に前述した積算データが徐々に蓄積されていきついには、前記しきい値I1を上回ってしまい誤動作してしまう場合がある。
このことを防ぐ方法としては、同図(b)に示すような負荷検出中、所定時間T(例えば80ms)内での積算データが、所定の電流しきい値I3(例えば1A)より小さい場合は、通常動作と判断し蓄積された積算データをクリアする。また、同図(c)に示すように所定時間T内での積算データが前記しきい値I3より大きい場合は、近々に過負荷発生の可能性があり前記積算データを保持し過負荷検出の検出能力を維持する。
以上の制御を行なうため、前記所定時間Tを制御処理回路8に含まれるモータタイマカウンタで検知する。なお上記の誤動作は、サンルーフパネルの摺動負荷抵抗が大きくなる低温、塵埃による経年変化や、電動機11のトルクが低下する低電圧時に生じやすい。
以上の説明に基づいて、再び図14のフローチャートの各ステップの処理を説明する。ステップST73にてモータタイマカウンタ値が所定時間Tより小さい場合は、ステップST74に移行する。ステップST74では、モータタイマカウンタをインクリメントしRTSに移行する。ステップST73にてモータタイマカウンタ値が所定時間Tより大きいか又は等しい場合は、ステップST75に移行する。ステップST75では、積算データ値としきい値I3と比較する。その結果、積算データがしきい値I3より小さい場合は、ステップST76に移行する。ステップST76では、モータタイマカウンタをクリアし、続いてステップST77で積算データをクリアしてRTSに移行する。ステップST75にて積算データがしきい値I3より大きい場合は、モータタイマカウンタ及び積算データを保持したままRTSに移行する。以上のような処理を行ない過負荷状態以外のサンルーフパネルの停止及び反転する誤動作を防止する。
なおRTSは、図12の負荷検出フローチャートステップST51に戻る処理である。
次に図6の基本動作フローチャートステップST4における過負荷発生処理を図16のフローチャートに従って説明する。当該処理が開始されると、まずステップST81で過負荷検出処理での反転動作中か判定する。反転動作中でない場合は、ステップST82では、オープン動作での過負荷状態か判定する。オープン動作での過負荷は、挟まれ状態ではないため電動機11の反転動作は、必要としない。ステップST82でオープン動作ならば、ステップST83に移行し電動機11の停止処理を行なう。続いてステップST84にて過負荷発生フラグをクリアしRTSへ移行する。以上のようにオープン動作では、挟まれての過負荷ではなく、サンルーフパネル摺動部の噛み込み等によるものなので、反転動作はせず過負荷発生処理は終了する。
ステップST82にてクローズ動作の場合には、ステップST85に移行する。ステップST85では、駆動トランジスタ36をオフ、駆動トランジスタ35をオンし電動機11を反転させる。続いてステップST86にて過負荷反転フラグをセットしRTSへ移行する。この過負荷反転フラグが、前記ステップST81にて過負荷反転動作を判定するフラグである。
次にステップST81にて反転動作中の場合は、ステップST88に移行する。ステップST88では、反転動作時間を制御する反転タイマカウンタ値を判定する。反転動作タイマカウンタの値が設定値より小さい場合ステップST89に移行し反転タイマカウンタをインクリメントした後RTSに移行する。
ステップST88にて反転タイマカウンタが設定値より大きいか等しい場合は、ステップST90に移行する。ステップST90では、サンルーフパネルが所定時間反転動作したとしてステップST83と同じ電動機11を停止処理を行なう。続いてステップST91では、反転タイマカウンタ、ステップST92では、過負荷反転フラグ、ステップST93では、過負荷発生フラグをそれぞれクリアしてRTSに移行し過負荷発生処理を終了する。なおRTSは、図6の基本動作フローチャートステップST4に戻る処理である。
ここで図6の基本動作ステップST10における前出の電動機停止処理について図17のフローチャートに従って説明する。当該処理が開始されると、まずステップST101にて駆動回路30をオフし電動機11の駆動を停止する。続いてステップST102では、図14のステップST74でカウント中のモータタイマカウンタをクリアしステップST103に移行する。ステップST103では、図12のステップST49で記憶された演算データをクリアし、次のステップST104にて図12のステップST51で記憶された差分データをクリアしRTSに移行し当該処理を終了する。なお、RTSは当該処理を呼び出したステップSTに戻る処理である。
以上のように、この実施の形態1によれば、タイミング時間より長い第2の所定時間毎の電流変化量が予め設定した設定値より小さいときは該電流変化量を消去し、前記電流変化量が予め設定した設定値より大きいときは該電流変化量を保持し続いて検出された電流変化量を加算するように構成したので、過負荷以外でサンルーフパネルが反転する誤動作を防ぎ確実に過負荷の判定ができる。
また、この発明によれば、温度変化によってサンルーフパネルの摺動負荷抵抗が変動しても、過負荷検出のための前記タイミング時間と該タイミング時間より長い第2の所定時間を設定するように構成したので、過負荷状態以外でサンルーフパネルが反転する誤動作を防止し確実に過負荷判定ができる。
また、この発明によれば、電圧変動によるサンルーフパネルの電動機の回転速度及びトルクが変動しても、過負荷検出のためのタイミング時間と該タイミング時間より長い第2の所定時間を設定するように構成したので、過負荷状態以外でサンルーフパネルが反転する誤動作を防止し確実に過負荷判定ができる。
また、この発明によれば、電動機の駆動電流値の経年変化によってサンルーフパネルの摺動負荷抵抗が変動しても、過負荷検出のためのタイミング時間と該タイミング時間より長い第2の所定時間を設定するように構成したので、過負荷状態以外でサンルーフパネルが反転する誤動作を防止し確実に過負荷判定ができる。
実施の形態2.
他のクランキング検出の方法を図18に示す。図18は、図5と同じクランキング発生時の電動機11の印加電圧と駆動電流の拡大図である。図18では、クランキング発生時の印加電圧と駆動電流の減少量を検出しクランキング判定を行なっている。図18の制御方法を図19のフローチャートに従って説明する。
なお図19は、図6のクランキング検出部分を抜き出した図であり、図19でのステップST7以前の処理及び、ステップST10、ステップST11に続く処理は、図6と同じであるので省略する。
従ってステップST111から説明する。まずステップST111では、現時点(今回)の制御処理回路8のA/D1(印加電圧)値を測定し当該回路のメモリに記憶する。続くステップST112では、今回の制御処理回路8のA/D2(駆動電流)値を測定し当該回路のメモリに記憶してステップST113に移行する。ステップST113では、現時点以前(前回)のA/D1とA/D2の測定値データが有るか無いかを判定する。この処理でA/D1とA/D2の前回測定値データが無ければ、ステップST114に移行する。ステップST114では、今回A/D1測定値を前回A/D1測定値として制御処理回路8のメモリに記憶する。続くステップST115では、今回A/D2測定値を前回A/D2測定値として制御処理回路8のメモリに記憶しステップST11に移行する。
ステップST113で前回のA/D1とA/D2の測定値データが有る場合は、ステップST116に移行する。ステップST116では、前回A/D1記憶値と今回A/D1記憶値の差を電圧差データとして記憶しステップST117に移行する。ステップST117では、該電圧差データが電圧クランキング減少量しきい値−ΔV(例えば、3V)より大きいか否かを比較する。その結果、電圧差データが電圧クランキング減少量しきい値−ΔVより小さい場合、ステップST114に移行する。ステップST114以降の処理は、前述しているので省略する。ステップST117で電圧差データが電圧クランキング減少量しきい値−ΔVより大きい場合は、ステップST118に移行する。
ステップST118では、前回A/D2記憶値と今回A/D2記憶値の差を電流差データとして記憶してステップST119に移行する。ステップST119では、この電流差データが電流クランキング減少量しきい値−Δi(例えば、2A)より大きいか否かを比較する。その結果、電流差データが電流クランキング減少量しきい値−Δiより小さい場合、ステップST114に移行する。ステップST114以降の処理は、前述しているので省略する。ステップST119で電流差データが電流クランキング減少量しきい値−Δiより大きい場合は、ステップST10に移行し電動機11を停止しクランキング検出処理を実行する。
以上のように、この実施の形態2によれば、スタータ信号を取り込まず、確実にクランキング検出でき、過負荷以外でサンルーフパネルが反転する誤動作を防止できる。
実施の形態3.
図20は図1の回路図にスタータ信号を入力する回路を追加した他のクランキング検出の方法を示す実施の形態3の回路図である。前記図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図20において、201はスタータスイッチ、202はスタータコイルである。210は制御処理回路8のA/D4ポートに入力するインタフェース回路であり、スタータスイッチ201オン時のスタータコイル202の電圧を分圧する抵抗211、212とノイズ吸収用コンデンサ213で構成されている。A/D4は制御処理回路8のアナログ・ディジタル変換ポートである。
次に図20のスタータ部分のみの動作を説明する。スタータスイッチ201は通常オフであり、車両エンジン始動時のみオンする。従って制御処理回路8のA/D4の入力電圧は、抵抗212でプルダウンされておりグランドレベルになっているが、スタータスイッチ201がオンすることによりスタータコイル202に電流が流れ、スタータコイル202に電圧が生じる。この電圧を抵抗211、212で分圧しコンデンサ213で平滑化した後、A/D4ポートに入力することによりスタータスイッチ201のオン/オフを検出する。
スタータスイッチ201のオン/オフを検出することによるクランキング検出の制御方法を図21のフローチャートに従って説明する。
なお、図21は、図6のクランキング検出部分を抜き出した図であり、図21でのステップST7以前の処理及び、ステップST10、ステップST11に続く処理は、図6と同じであるので省略する。
従ってステップST120のみ説明する。ステップST120では、A/D4ポートの入力電圧を検出する。A/D4値がグランドレベルならば、スタータスイッチ201がオンしていないことからステップST11に移行する。A/D4値に電圧が入力されたならば、スタータスイッチ201がオンしていることからステップST10に移行し、電動機11を停止してクランキング検出処理を行なう。
以上のように、この実施の形態3によれば、クランキング検出は、電動機11を停止する制御方法で説明した。この理由は、クランキング状態では、バッテリ1の電圧低下が、著しい時、当該制御装置や、電動機11が動作できる電圧を供給できない場合は、電動機11は停止してしまうからであり、この現象に合せた。しかし当該制御装置と電動機11が充分動作できる範囲での電圧低下であれば電動機11を停止せず駆動を続行することも可能である。