JP3970568B2 - 模様付複合樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

模様付複合樹脂成形体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、模様付複合樹脂成形体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、樹脂と屈折率の異なる物質を含み、個々の模様部近傍と他の部分で該物質の濃度及び/又は大きさが異なる押出成形された複合樹脂成形体であって、押出方向に対して直角方向に模様があり、かつ該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されているため、天然の木材に近い外観を与え、かつ表面の樹脂層を除去することで木質感を作出することができ、さらには研削、研磨、切断、彫刻を施すことによって、サッシ、枠材、壁材、床材、ドア、パネル、笠木、腰板、すのこ、濡れ縁、額縁、デッキ材、屋根、しきり板、雨戸、雨樋、柱、柱カバー、突き板、室内建具用框材、花壇、フェンス、ベンチ、門扉、看板、ルーバー、ドアハンドル、クレセント、手摺、家具、船舶のデッキ材、電車の床材、自動車の内外装材、家電製品のハウジングなどに利用することのできる模様付複合樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からこの種の複合樹脂成形体の開発は種々行なわれ、特に充填材にセルロース系粉体を用いることは木屑、木質系建築廃材、古紙等の資源の再利用を図るために有効な方法である。また、複合樹脂成形体中のセルロース系粉体の割合を多くし、樹脂の割合を少なくすることが経済的に有利であり、さらに木粉が多くなるに従って、優れた木質感が得られる。
このような組成の複合樹脂成形体は、例えば、特公昭59−30176号に開示されている。
【0003】
しかしながら、前記複合樹脂成形体においては、表面に樹脂のスキン層を有するため、そのままではプラスチック様の触感がある。表面のスキン層を除去することにより内部のセルロース系粉体が表面に露出し、木質様の触感が得られる。しかし、この方法では、表面の質感は木材に近付くが、外観は模様の無い均一なものであった。
【0004】
従来、押出成形品に木目模様を付与する方法として、印刷による方法や、ベース樹脂と色が異なり、かつ混ざり難い樹脂を適量加え、流れ模様を利用する方法等がある。例えば、粉体を含有する複合樹脂成形体を研削によりスキン層を除去し、傷条を多数形成した後、傷条の凹部に着色層を残すように、木目柄を印刷する方法がある。しかしながら、このような方法では、木目模様は印刷により得られるものであり、木目柄自体は印刷インクによる着色である。印刷インクを用いた場合、溶剤の揮発による作業環境の悪化が問題となり、排気設備が必要となる。また、乾燥まで養生する必要があり、工程が煩雑となる。さらには、木目模様が表面のみであるため、表面が摩耗した場合、木目模様が消去するといった問題がある。
【0005】
また、押出材料にベース樹脂と色が異なり、かつ混ざり難い樹脂を適量配合し、これを押出成形した際の流れ模様により木目を形成する方法がある。しかしながら、このような流れ模様を利用する方法では、模様は押出方向に平行なものとなり、柾目以外の模様を形成することはできない。さらに、これによって形成される木目は、人工的な木目で、一目にして本来の木目でないことが察知されるため、木目自体に深みがない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記したような問題に鑑みなされたものであり、その目的は、母材が樹脂からなる模様付複合樹脂成形体において、材料自体によって模様が形成されていると共に、押出方向に対して直角方向に模様があり、さらには該模様が深さ方向にまで及ぶため、表面が摩耗しても板目模様が消去せず、天然の木材に近い外観を与える模様付複合樹脂成形体を提供することにある。
さらに本発明の目的は、このような模様付複合樹脂成形体を簡便な方法により、生産性良く低コストで製造できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)を含み、個々の模様部近傍と他の部分で該物質(B)の濃度及び/又は大きさが異なる押出成形された複合樹脂成形体であって、押出方向に対して直角方向に模様があり、かつ該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されていることを特徴とする模様付複合樹脂成形体が提供される。
好適な態様においては、樹脂(A)と屈折率の異なる物質(B)が無機系粉体及び/又は有機系粉体であり、その割合がA:B=90〜20:10〜80、好ましくはA:B=40〜60:60〜40の比率(質量比)で含有してなる。
【0008】
さらに本発明によれば、前記模様付複合樹脂成形体の製造方法も提供され、その第一の態様は、樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)又は該物質(B)及び他の添加剤と共に混練し、次いでこれを押出成形する工程において、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御し、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が残るようにしたことを特徴としており、第二の態様は、用いる樹脂と屈折率の異なる物質(B)を他の添加剤と共に混合し、次いでこれを樹脂(A)と混練した後、これを押出成形する工程において、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御し、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が残るようにしたことを特徴としている。
上記いずれの態様においても、混合工程又は混練工程に先立って、無機系粉体及び/又は有機系粉体を130℃で測定した時の揮発成分が0.5質量%以下となるように乾燥することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、複合樹脂成形体の模様について鋭意研究の結果、スクリューピッチ毎の積層模様が成形体の模様に大きな影響を及ぼすことを見出した。すなわち、本発明者らの研究によると、樹脂(A)とこれと屈折率の異なる物質(B)を含むコンパウンドを押出成形する工程において、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御すれば、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が現われると共に、個々の模様部近傍と他の部分で該物質(B)の濃度及び/又は大きさ(粒径もしくは粒径分布)が異なり、また、押出方向に対して直角方向に模様があり、さらには該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
さらにまた、上記のような物質(B)を含有する場合、複合樹脂成形体表面のスキン層を除去することにより、さらに優れた木質感を有する成形体が得られる。
【0010】
本発明の模様付複合樹脂成形体は、物体表面における光の反射及び透過の状態に着目し、樹脂と屈折率の異なる物質の濃度及び/又は大きさ(粒径もしくは粒径分布)が変わっているときに異なる色に見える原理を利用している。以下、この点について説明する。
入射した白色光は、物体の表面で反射光と内部へ侵入する光の2つに分かれる。金属等の自由電子を持つ物質ではほとんどの入射光は表面で反射され、その他の物質では内部へ侵入する。内部へ侵入した光は吸収がなければそのまま直進し、物質の他端で物質の外へ出て行く。ガラスは可視領域に吸収がないため透明に見えるが、色付きガラスの場合には、ガラスの中を光が透過する過程で特定の光の波長が吸収されるため、入射した白色光がガラスを透過することで着色する。物質中に散乱要素がある場合、入射した光は物質中で散乱され、直進することなく入射面へ戻る。従って、吸収がなければ、入射光と同じスペクトルを持つ光が散乱光として観察される。
【0011】
物質中に光を吸収する要素がある場合には、光が物質中を進む間に着色が起こる。このため、観察される散乱光は着色光となり、この着色光でもって物質の色を見ている。物質の光吸収が可視領域で波長による選択性がなければ黒又はねずみ色の彩度0の色となり、選択性がある場合には彩度を持つ色となる。このとき着色の程度は単位長さ当たりの吸収強度、散乱要素の濃度によって決まる。物質がより多くの有色顔料、染料を含有する場合、単位長さ当たりの吸収強度が増加し、より彩度の高い、濃く、深い色となる。一方、散乱要素を加えると、白味の強い、彩度の低い色となる。これは散乱要素の密度が増えることで、より表面近くで散乱され、入射光が物質中を透過する距離が短くなるため、吸収要素による着色が小さくなるためである。ここで、散乱要素とは、物質との屈折率の違いにより光散乱を起こす成分又は要素を指し、白色顔料、充填剤、さらには樹脂中に形成された結晶、球晶等がこれにあたる。
本発明では、成形体が樹脂と屈折率の異なる物質を含み、個々の模様部近傍と他の部分で該物質の濃度及び/又は大きさ(粒径もしくは粒径分布)が異なることで、表面に散乱性の異なる部分を設け、散乱性の違いから異なる色として見せる方法を提供するものである。
【0012】
以下、本発明の模様付複合樹脂成形体の各成分について説明する。
前記樹脂と屈折率の異なる物質(B)としては如何なるものであってもよく、例えば気泡、無機系粉体及び有機系粉体等が挙げられる。無機系粉体としては如何なるものであってもよく、例えば水酸化物、酸化物、無機塩、ケイ酸化合物等が挙げられる。また、前記有機系粉体としては如何なるものであってもよく、例えばセルロース系粉体の木粉、竹粉、パルプ、バカス、ケナフ、おが屑、木質繊維、籾殻、破砕チップ材、果実穀粉、古紙等が挙げられる。これら無機系粉体及び/又は有機系粉体は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
樹脂と屈折率の異なる物質(B)としては気泡でもよいが、無機系粉体及び/又は有機系粉体と同時に存在すると、著しい強度の低下がおこるため、極端な割合で同時に存在することは好ましくない。
また、無機系粉体及び/又は有機系粉体が水分等の揮発成分を含んでいると、これが加工工程で発泡し、製品不良の原因となる。そのため、セルロース系粉体が揮発成分を含んでいる場合、予め乾燥して、130℃で測定したときの揮発成分が0.5質量%以下となるように調整することが好ましい。
【0014】
前記樹脂(A)としては、如何なるものであってもよく、例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの樹脂の中でも、特に、安価で工業的に量産性があること、軽量でかつ剛性に優れ、比較的耐熱性が良好なこと、及び成形性が良いことから、ポリオレフィンが好ましく、その中でも特にポリプロピレンが好適である。
【0015】
前記樹脂(A)と無機系粉体及び/又は有機系粉体(B)の配合比率は、A:B=90〜20:10〜80(質量比)、好ましくは40〜60:60〜40(質量比)である。ここで、無機系粉体及び/又は有機系粉体が上記比率よりも多くなると、樹脂が無機系粉体及び/又は有機系粉体の各部周囲に周りきらないため、強度に問題のある模様付複合樹脂成形体が得られるので好ましくない。一方、樹脂が無機系粉体及び/又は有機系粉体との比率で90:10よりも多くなると、経済的に不利であり、かつ天然に近い木質感も極端に損なわれるので好ましくない。
【0016】
なお、本発明においては、前記各成分の他に、必要に応じて、無機系粉体及び/又は有機系粉体と樹脂、特にポリオレフィンとの親和性を向上させるための不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された樹脂や、着色剤、等の各種添加剤を加えることができる。上記不飽和カルボン酸としては、如何なるものであってもよく、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、如何なるものであってもよく、前記不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等の中の1つ或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
着色剤としては、如何なるものであってもよく、例えば二酸化チタン、酸化コバルト、群青、紺青、弁柄、銀朱、鉛白、鉛丹、黄鉛、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、カーボンブラック、エメラルドグリーン、ギネー緑、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青、アゾ顔料、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンペリレン等の中の1つ或いは2種類以上である混合物等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
その他必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤等の各種添加剤を加えることができる。
【0018】
本発明の複合樹脂成形体は、母材の樹脂(A)中に樹脂と屈折率の異なる物質(B)を含み、個々の模様部近傍と他の部分で該物質(B)の濃度及び/又は大きさ(粒径もしくは粒径分布)が異なる押出成形された複合樹脂成形体において、押出方向に対して直角方向に模様があり、さらには該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されていることを特徴としている。このような複合樹脂成形体は、樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)を必要に応じて他の添加剤と共に混練し、次いでこれを押出成形することによっても製造できるし、或いはまた、用いる樹脂と屈折率の異なる(B)物質を必要に応じて他の添加剤と共に混合し、次いでこれを樹脂(A)と混練した後、これを押出成形することによっても製造できる。
【0019】
本発明における樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)を必要に応じて他の添加剤と共に混練する製造方法、及び樹脂と屈折率の異なる物質(B)を必要に応じて他の添加剤と共に混合し、次いでこれを樹脂(A)と混練する製造方法としては、如何なる方法であってもよく、例えばヘンシェルミキサーによる混練、ニーダーによる混練、ボールミルによる混練、木粉製造機等が挙げられる。さらに、押出機でペレタイズしてペレットを製造する方法等が挙げられる。
【0020】
本発明の模様付複合樹脂成形体の製造装置の一例を図1に示す。図1は、二軸押出機を用いた場合を示しており、フィード装置11から押出機10のホッパー12内に供給された材料(前記樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)と、必要に応じて他の添加剤との混練物)Aは、押出機10のシリンダー13内をスクリュー14により混練、輸送されている間に樹脂が溶融し、ダイ15から模様付複合樹脂成形体Bが成形されて押出される。材料Aの投入量は、フィード装置11の回転数を変えることで制御される。二軸押出スクリューは、一般に供給部、可塑化部、圧縮部、ベント部、計量部の5つのゾーンからなるが、本発明の模様付複合樹脂成形体の製造方法においては、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御することが重要となる。
【0021】
すなわち、押出成形工程において、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御し(すなわち、圧縮部においてスクリューピッチ間の任意の部分に空隙部(未充填部)が存在するように制御し)、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が残るようにする。この制御は、例えば、フィード量(単位時間当りの供給量(容積量))をスクリュー圧縮部の容積に対して100%未満(容積%、以下同様)となるように制御することによって行なうことができる。但し、フィード量は、スクリュー圧縮部の容積に対して30%以上となるように制御することが好ましい。フィード量が30%よりも少なくなると、混練が不充分となるため好ましくない。
【0022】
また、圧縮部の容積に対するフィード量を制御する方法とは異なる方法として、スクリューの圧縮比と材料Aの嵩比重を制御することでも同様の制御を行なうことができる。例えば、圧縮比1.5のスクリューを用い、真比重の66.6%未満(2/3未満)の嵩比重の材料Aを用いても、樹脂の溶融、圧縮部内での圧縮により材料Aの容積は圧縮部容積未満となるため、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在することになる。なお、上記制御は、スクリューの圧縮比の制御のみ、あるいは材料Aの嵩比重の制御のみによっても同様に行なうことができる。
つまり、スクリュー圧縮部に供給された材料(スクリュー圧縮部内の材料)が、スクリュー圧縮部の容積に対し100%未満(好ましくは30%以上)となるように制御すればよく、このような制御は、具体的には前記したようにフィード量、スクリューの圧縮比、材料Aの嵩比重等をコントロールすることにより達成できる。
上記フィード量や他の押出条件等を適切に設定することにより、模様が板目であり、かつ該板目の筋と筋の間隔が1mm以上、100mm以下である模様付複合樹脂成形体が得られる。
【0023】
前記のような製造方法により、図2及び図3に示すような模様部1からなる模様を持つ板状成形品2、図2及び図3に示すような模様部1からなる模様を持つ図4に示すような中空部4を有する板状成形品3等の各種形状、構造の複合樹脂成形体を製造できる。また、得られる成形品は、表面の樹脂層を除去することで樹脂と屈折率の異なる物質が表面に露出するので、木質感を作出することができ、さらには、研削、研磨、切断、彫刻等の加工を施すことによって、サッシ、枠材、壁材、床材、パネル、ドア、笠木、腰板、すのこ、濡れ縁、額縁、デッキ材、屋根、仕切り板、雨戸、雨樋、柱、柱カバー、突き板、室内建具用框材及び枠材、花壇、フェンス、ベンチ、門扉、看板、ルーバー、ドアハンドル、クレセント、手摺、家具、船舶のデッキ材、電車の床材、自動車の内外装材、家電製品のハウジングなど製品に仕上げることができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてより具体的に説明するが、当然のことながら、本発明は、下記実施例によって何ら限定されるものではない。尚、とくに断りのない限り、実施例に記載の「部」は「質量部」を示す。下記実施例においては、押出機としては二軸押出機及び単軸押出機を用いているが、多軸押出機或いはその組み合わせのいずれを用いてもよく、ベントの使用の制限もとくにない。さらに、押出機に用いられるスクリュー形状もとくに制限はない。
【0025】
実施例1
130℃における揮発成分を0.5wt%以内に調整した100メッシュを70wt%以上通過した木粉100部、弁柄3部、酸化チタン7部を投入した後、ポリプロピレン100部及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン1部を加え、ヘンシェルミキサーで混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドを造粒し、粒径を調整した。粒径を調整したコンパウンドを、二軸押出機及び金型を用い、幅140mm、高さ50mmの板状に押出成形した。この際、コンパウンドのフィード量をスクリュー圧縮部の容積の95%(容積%)になるように調整した。押出機の温度条件は、シリンダー温度183℃、金型温度190℃とした。この際、金型部での樹脂温度は190℃であった。190℃で押出成形された成形体を冷却金型で冷却し、形状を保持した。冷却金型から押出された直後の成形体の表面温度は40℃であった。以上の方法により、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0026】
実施例2〜5
実施例1において、コンパウンドのフィード量を表1に記載した容積%に変更した以外は、実施例1と同様の押出条件及び操作を行なうことにより、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0027】
実施例6
130℃における揮発成分を0.5wt%以内に調整した100メッシュを70wt%以上通過した木粉100部、弁柄3部、酸化チタン7部を投入した後、ポリプロピレン100部及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン1部を加え、ヘンシェルミキサーで混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドを造粒し、粒径を調整した。粒径を調整したコンパウンドを、単軸押出機及び金型を用い、幅140mm、高さ50mmの板状に押出成形した。この際、コンパウンドのフィード量をスクリュー圧縮部の容積の95%(容積%)になるように調整した。押出機の温度条件は、シリンダー温度183℃、金型温度190℃とした。この際、金型部での樹脂温度は190℃であった。190℃で押出成形された成形体を冷却金型で冷却し、形状を保持した。冷却金型から押出された直後の成形体の表面温度は40℃であった。以上の方法により、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0028】
実施例7〜10
実施例6において、コンパウンドのフィード量を表1に記載した容積%に変更した以外は、実施例6と同様の押出条件及び操作を行なうことにより、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0029】
実施例11
130℃における揮発成分を0.5wt%以内に調整した100メッシュを70wt%以上通過した木粉100部、弁柄3部、酸化チタン7部を投入した後、ポリプロピレン100部、無水マレイン酸変性ポリプロピレン1部及び塩基性金属石鹸mMgO・(C1735COO)Mg(式中、mは0.05<m<2)1部を加え、ヘンシェルミキサーで混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドを造粒し、粒径を調整した。粒径を調整したコンパウンドを、二軸押出機及び金型を用い、幅140mm、高さ50mmの板状に押出成形した。この際、コンパウンドのフィード量をスクリュー圧縮部の容積の95%(容積%)になるように調整した。押出機の温度条件は、シリンダー温度183℃、金型温度190℃とした。この際、金型部での樹脂温度は190℃であった。190℃で押出成形された成形体を冷却金型で冷却し、形状を保持した。冷却金型から押出された直後の成形体の表面温度は40℃であった。以上の方法により、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0030】
実施例12〜15
実施例11において、コンパウンドのフィード量を表1に記載した容積%に変更した以外は、実施例11と同様の押出条件及び操作を行なうことにより、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0031】
実施例16
130℃における揮発成分を0.5wt%以内に調整した100メッシュを70wt%以上通過した木粉100部、弁柄3部、酸化チタン7部を投入した後、ポリプロピレン100部及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン1部を加え、ヘンシェルミキサーで混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドを造粒し、粒径を調整した。粒径を調整したコンパウンドを、二軸押出機及び金型を用い、幅140mm、高さ50mmの図4に示すような中空板状に押出成形した。この際、コンパウンドのフィード量をスクリュー圧縮部の容積の95%(容積%)になるように調整した。押出機の温度条件は、シリンダー温度183℃、金型温度190℃とした。この際、金型部での樹脂温度は190℃であった。190℃で押出成形された成形体を冷却金型で冷却し、形状を保持した。冷却金型から押出された直後の成形体の表面温度は40℃であった。以上の方法により、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0032】
実施例17〜20
実施例16において、コンパウンドのフィード量を表1に記載した容積%に変更した以外は、実施例16と同様の押出条件及び操作を行なうことにより、本発明に係る模様付複合樹脂成形体を作製した。
【0033】
前記実施例1〜20の組成及び得られた成形体の板目状模様の有無について表1にまとめて示す。
【表1】
Figure 0003970568
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明の模様付複合樹脂成形体は、従来のように模様が表面のみに止まらず、またベース樹脂と色が異なり、かつ混ざり難い樹脂を適量配合し、これを押出成形した際の流れ模様を利用するものではなく、材料自体によって模様が形成され、押出方向に対して直角方向に模様があり、さらには該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されていることを特徴としている。これによって形成される模様は、天然の木材に近い模様であるため、木目自体に深みがある。
さらに本発明によれば、押出成形工程において、スクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御することにより、このような複合樹脂成形体を生産性よく低コストで製造でき、またサンディング等の簡単な表面処理により木材様の触感を容易に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の模様付複合樹脂成形体の二軸押出機を用いた製造装置の一例を概略的に示す部分断面側面図である。
【図2】 本発明の模様付複合樹脂成形体の一例を示す平面図である。
【図3】 図2に示す模様付複合樹脂成形体の断面図である。
【図4】 本発明の模様付複合樹脂成形体の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 模様部
2,3 板状成形品
4 中空部
10 押出機
11 フィード装置
12 ホッパー
13 シリンダー
14 スクリュー
15 ダイ
A 材料
B 模様付複合樹脂成形体

Claims (13)

  1. 樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)を含み、個々の模様部近傍と他の部分で該物質(B)の濃度及び/又は大きさが異なる押出成形された複合樹脂成形体であって、押出方向に対して直角方向に模様があり、かつ該模様が押出方向に垂直な断面全体に亘って形成されていることを特徴とする模様付複合樹脂成形体。
  2. 樹脂(A)と屈折率の異なる物質(B)が無機系粉体及び/又は有機系粉体であり、その割合がA:B=90〜20:10〜80の比率(質量比)で含有してなることを特徴とする請求項1に記載の模様付複合樹脂成形体。
  3. 樹脂(A)と屈折率の異なる物質(B)が無機系粉体及び/又は有機系粉体であり、その割合がA:B=40〜60:60〜40の比率(質量比)で含有してなることを特徴とする請求項1に記載の模様付複合樹脂成形体。
  4. 模様が板目であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  5. 模様が板目であり、かつ該板目の筋と筋の間隔が1mm以上、100mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  6. 樹脂と屈折率の異なる物質(B)が、水酸化物、酸化物、無機塩及びケイ酸化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の無機系粉体及び/又はセルロース系粉体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の有機系粉体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  7. セルロース系粉体が、木粉、竹粉、パルプ、バカス、ケナフ、おが屑、木質繊維、籾殻、破砕チップ材、果実穀粉及び古紙よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の模様付複合樹脂成形体。
  8. 樹脂(A)がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  9. 樹脂(A)がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  10. さらに不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された樹脂、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び滑剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の模様付複合樹脂成形体。
  11. 樹脂(A)と、これと屈折率の異なる物質(B)又は該物質(B)及び他の添加剤と共に混練し、次いでこれを押出成形する工程において、材料を圧縮するスクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御し、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が残るようにしたことを特徴とする模様付複合樹脂成形体の製造方法。
  12. 用いる樹脂と屈折率の異なる物質(B)を他の添加剤と共に混合し、次いでこれを樹脂(A)と混練した後、これを押出成形する工程において、材料を圧縮するスクリュー圧縮部容積内に部分的に空隙部が存在するように制御し、押出される成形体にスクリューピッチ毎の積層模様が残るようにしたことを特徴とする模様付複合樹脂成形体の製造方法。
  13. 混合工程又は混練工程に先立って、樹脂と屈折率の異なる物質(B)を130℃で測定したときの揮発成分が0.5質量%以下となるように乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の模様付複合樹脂成形体の製造方法。
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