JP6798878B2 - 複合材 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂成分およびセルロース系成分を含む複合材に関し、特に、建材として好適に用いることができるとともに、原料として廃材を多く使用することができる複合材に関する。
近年、熱可塑性樹脂成分およびセルロース系成分を含む複合材が注目されている。当該複合材は、環境調和性や成形加工性等に優れており、特に建材としてその需要が大きく伸びている。
上記複合材の原料となる熱可塑性樹脂成分としては、日々大量に消費されて廃棄されている廃プラスチック材等を利用することができる。また、上記複合材の原料となるセルロース系成分としては、廃木材や未利用木材等が利用できる。そのため、当該複合材は、環境への負荷が少ない高い環境調和性(リサイクル性)を有することになる。
また、上記複合材は、プラスチック材料と木質材料とを混練したものを原料として用いるため、各種の成形法等によって容易にその成形を行なうことができ、木材と比較した場合に、その高い物性、異形形状の成形加工性等の点において優れたものとなる。
したがって、上記複合材は、木材に近い質感を有しつつも、木材よりも上述した環境調和性や成形加工性等において優れた特性を発揮するものであるため、特に建材として好適に利用することができる。例示的には、上記複合材は、デッキ、テラス、バルコニー等に好適に利用することができ、さらには屋内外を問わず建物の床面、壁面の化粧材等としても好適に利用することができる。
なお、この種の複合材が具体的に開示された文献としては、たとえば特開2015−9374号公報(特許文献1)等がある。
特開2015−9374号公報
しかしながら、上記複合材は、木材に近い質感を出すために多くの木質材料(すなわちセルロース系成分)を含んでいるため、たとえば雨水等の水分に長期間にわたって晒された場合に、水分を多く吸収してしまって膨張する場合がある。この吸水膨張は、複合材のひび割れの原因となってしまうため、より耐久性に優れた複合材とするためには、この吸水膨張を抑制する必要がある。
ここで、吸水膨張を抑制する一般的な技術として、無機材料を複合材に添加する技術が知られている。しかしながら、単に無機材料を複合材に添加した場合には、木質に近い質感および匂いが実現できなくなるばかりでなく、上述した環境調和性も大幅に損なわれてしまう結果となってしまう。
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、高い環境調和性を有しつつ吸水膨張を抑制することができ、さらには木材に近い質感を実現することができる新たな複合材を提供することを目的とする。
本発明に基づく複合材は、基層部と、上記基層部の一部または全部を覆うことで化粧面を構成する表層部とを備えたものである。上記表層部は、熱可塑性樹脂成分およびセルロース系成分を含んでおり、上記基層部は、熱可塑性樹脂成分粉末状の卵殻およびセルロース系成分を含んでいる。上記基層部における粉末状の卵殻の配合量は、上記基層部における熱可塑性樹脂成分および上記基層部における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、71.43重量部以上95重量部以下である。上記基層部におけるセルロース系成分の配合量は、上記基層部における熱可塑性樹脂成分および上記基層部における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、0重量部を超え14.29重量部以下である。
上記本発明に基づく複合材は、外表面として、相対して位置するおもて面およびうら面と、これらおもて面およびうら面を接続する一対の側面とを有する長尺状の部材であってもよい。その場合には、上記おもて面および上記一対の側面において上記表層部が露出することにより、当該複合材の上記おもて面および上記一対の側面が上記化粧面として構成されていることが好ましく、また、上記基層部が、上記うら面の少なくとも一部において露出していることが好ましい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記表層部に含まれる熱可塑性樹脂成分および上記基層部に含まれる熱可塑性樹脂成分が、いずれもポリオレフィンであることが好ましく、また、上記表層部に含まれるセルロース系成分が、木粉であることが好ましい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記基層部に含まれるセルロース系成分が、木粉であることが好ましい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記表層部が、粉末状の卵殻をさらに含んでいてもよい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記基層部および上記表層部が、いずれも相溶化剤を含んでいることが好ましい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記基層部における相溶化剤の配合量が、上記基層部における熱可塑性樹脂成分、上記基層部における粉末状の卵殻および上記基層部におけるセルロース系成分の総重量100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましい。
上記本発明に基づく複合材にあっては、上記基層部と上記表層部とが、相互に接した状態で固着していることが好ましい。
本発明によれば、高い環境調和性を有しつつ吸水膨張を抑制することができ、さらには木材に近い質感を実現することができる複合材とすることができる。
本発明の実施の形態における複合材をおもて面側から見た場合の概略斜視図である。 本発明の実施の形態における複合材をうら面側から見た場合の概略斜視図である。 本発明の実施の形態における複合材の断面図である。 本発明の実施の形態における複合材の製造方法を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1および図2は、本発明の実施の形態における複合材をそれぞれおもて面側およびうら面側から見た場合の概略斜視図である。また、図3は、本発明の実施の形態における複合材の断面図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本発明の実施の形態における複合材1の構成について説明する。本実施の形態における複合材1は、建材の一種であるデッキ材であるが、本発明の適用対象は、これに限定されるものではない。
図1ないし図3に示すように、複合材1は、外表面として、相対して位置するおもて面2およびうら面3と、これらおもて面2およびうら面3を接続する一対の側面4とを有する長尺状の部材からなり、基層部10と表層部20とを備えている。基層部10は、複合材1の骨格となる基部を構成しており、表層部20は、基層部10の外表面を部分的に覆うことによって複合材1の化粧面を構成している。基層部10と表層部20とは、相互に接した状態で固着している。
基層部10は、断面視した場合の外形が略矩形状となるように長尺状に構成されている。基層部10の内部には、軽量化のために、長手方向に沿って互いに並行して位置する複数の中空部5が設けられている。
表層部20は、基層部10の外表面のうち、複合材1のおもて面2および一対の側面4に対応する部分を覆っており、さらに、基層部10の外表面のうち、複合材1のうら面3に対応する部分の両端部を覆っている。これにより、複合材1のおもて面2および一対の側面4において表層部20が露出することになり、これら外表面が複合材1の化粧面として構成されることになる。
一方、基層部10が露出する複合材1のうら面3は、施工時において根太等の被取付部材に対して対向配置される取付面となる。ただし、複合材1の取付面側において基層部10が必ずしも露出している必要はなく、複合材1のうら面3をすべて表層部20にて覆うこととしてもよい。
複合材1の一対の側面4の各々には、複合材1の長手方向に沿って溝部6が設けられている。当該溝部6は、施工時において複合材1を根太等の被取付部材に対して取付ける際に利用される部位である。
後述するように、上述した複合材1は、好適には共押出し成形を利用して製造される。当該複合材1の長さは、特にこれが制限されるものではないが、2mないし3m程度とされることが一般的である。
本実施の形態における複合材1は、基層部10および表層部20のいずれもが、原料として廃材を多く含むように構成されてなるものである。基層部10は、熱可塑性樹脂成分と粉末状の卵殻とを主成分としており、さらにこれに加えてセルロース系成分を含んでいてもよい。一方、表層部20は、熱可塑性樹脂成分とセルロース系成分とを主成分としている。
基層部10および表層部20に含まれる熱可塑性樹脂成分は、融点がおおよそ200℃以下ものであることが好ましく、特にポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、たとえばポリプロピレンやポリエチレンが好適に利用できる。その他にも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等を用いることができる。なお、これらは、単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
ここで、環境調和性の観点から、上記熱可塑性樹脂成分は、そのすべてが廃プラスチック材を原料としたものであることが好ましいが、必ずしもそのように構成されている必要はなく、より高い割合で廃プラスチック材が原料とされていればよい。また、廃プラスチック材を原料として用いないことも可能である。
基層部10および表層部20に含まれるセルロース系成分としては、木粉、竹粉、パルプ、バカス、ケナフ、おが屑、木質繊維、籾殻、破砕チップ材、果実殻粉、古紙等の木質材料であることが好ましい。なお、これらは、単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。ここで、上記セルロース系成分は、粉末の状態でこれらが基層部10および表層部20に含まれていることが好ましく、特に廃木材や未利用木材等を粉砕することで得られた木粉であることが好ましい。
上記粉末としては、より小さい粒径のものであることが好ましい。これは、当該粉末の粒径が小さければ小さい程、製造時における混練の際に、混合材料中においてより均一に混ざり合うことになり、また共押出し成形の際の成形性が向上し、さらには、複合材1の外観が向上するためである。
当該観点から、上記粉末は、メッシュ数が40である篩を通過する粒径のものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、より大きい粒径の粉末を利用することもできる。なお、上記メッシュ数は、JIS規格(JIS G 3556,JIS G 4309)において規定されたものである。
これら原料となる木質材料は、その含水率が5%以下とされていることが好ましい。これは、含水率が5%を超える場合に、共押出し成形の際の成形性が低下したり、複合材1の外観が損なわれたりすることがあるためである。
また、これら原料となる木質材料においては、テルペン、木酢、松脂等の抽出成分が予め揮発させられて可能な限りその含有量が低下させられているものであることが好ましい。これは、テルペン、木酢、松脂等を多く含む場合に、水分の場合と同様に、共押出し成形の際の成形性が低下したり、複合材1の外観が損なわれたりすることがあるためである。
当該観点から、具体的には、原料となる木質材料に予め加熱処理や真空脱気処理等を行なうことにより、水分および上記抽出成分を合わせた揮発成分の、当該原料となる木質材料における含有率が、0.5重量%以下とされることが好ましい。
ここで、環境調和性の観点から、上記セルロース系成分は、そのすべてが廃木材や未利用木材等を原料としたものであることが好ましいが、必ずしもそのように構成されている必要はなく、より高い割合で廃木材や未利用木材等が原料とされていればよい。また、廃木材や未利用木材等を原料として用いないことも可能である。
本実施の形態における複合材1は、上述したように、基層部10が、粉末状の卵殻を主成分として含んでいる。卵殻は、好適には鶏卵の卵殻であり、食品の製造工場等において廃棄されるものを利用することができる。
卵殻には、主成分として炭酸カルシウムが含有されている。基層部10が炭酸カルシウムを多く含有する粉末状の卵殻を含むことにより、複合材1の吸水膨張を効果的に抑制することが可能になる。
ここで、卵殻の他にも、貝殻等の海産物に多くの炭酸カルシウムが含まれていることが知られているが、海産物には、海藻などの成分が多く付着している場合が多い。そのため、これらを利用する場合には、洗浄工程が別途必要になる。したがって、上述したように卵殻を使用することにより、別途洗浄工程を設ける必要がなくなり、製造コストを削減することができる。
一方で、卵殻には、サルモネラ菌をはじめとする菌が付着している場合があるため、殺菌処理や除菌処理が施されたものを使用することが好ましい。ここで、上述したように、食品の製造工場等において廃棄された卵殻を利用することとすれば、既に殺菌処理や除菌処理が施されているため、これら処理を別途行なう必要もなく、製造コストを削減することができる。
また、卵殻には、卵殻膜等の蛋白質などからなる成分が付着している場合があるが、これら成分が付着した卵殻をそのまま使用しても、何ら問題はない。したがって、食品の製造工場等において廃棄された卵殻を特に洗浄することなくそのまま原料として用いることができ、これにより製造コストを削減することができる。
粉末状の卵殻の平均粒径は、好ましくは500μm未満とされ、より好適には100μm以下とされ、特に好適には20μm以上50μm以下とされる。一例としては、平均粒径が20μmでかつ最大粒径が100μmである粉末状の卵殻が好適に使用できる。これは、当該粉末状の卵殻の粒径が小さければ小さい程、製造時における混練の際に、混合材料中においてより均一に混ざり合うことになり、また共押出し成形の際の成形性が向上し、さらには、複合材1の外観が向上するためである。
なお、本実施の形態においては、基層部10にのみ粉末状の卵殻が含まれることとし、表層部20に粉末状の卵殻が含まれないように構成しているが、吸水膨張をさらに低下させるためには、表層部20に粉末状の卵殻を添加してもよい。
基層部10および表層部20は、上述した主成分の他に、相溶化剤および滑剤を含有していてもよく、また、基層部10および表層部20は、成形性と質感向上のためにさらに顔料を含有していてもよい。
相溶化剤は、親油性の熱可塑性樹脂成分と、親水性のセルロース系成分とを馴染ませてこれらを良好に混合させるための添加剤である。相溶化剤としては、酸変成した熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。具体的には、主成分としての熱可塑性樹脂の分子側鎖あるいは末端をマレイン酸等の不飽和酸で置換した樹脂を利用することができる。特にポリオレフィン系樹脂との親和性を向上させるためには、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂を添加するとよい。不飽和カルボン酸としては、たとえば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等が挙げられる。なお、これらは、単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
滑剤としては、たとえばステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛を用いることができる。滑材は、共押出し成形時において、金型と間の滑りを向上させるための添加剤である。したがって、滑材を添加することにより、成形性が向上するとともに、複合材1の外観が向上することになる。
顔料としては、各種の着色剤を用いることができ、たとえば二酸化チタン、酸化コバルト、群青、紺青、弁柄、銀朱、鉛白、鉛丹、黄鉛、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、エメラルドグリーン、ギネー緑、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青、アゾ顔料、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンペリレン等を利用することができる。なお、これらは、単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
また、基層部10および表層部20は、この他にも、必要に応じて耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、導電剤等を含有していてもよい。
ここで、本実施の形態における複合材1においては、基層部10における粉末状の卵殻の配合量が、基層部10における熱可塑性樹脂成分および基層部10における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、5重量部以上95重量部以下とされていることが好ましい。
これは、基層部10における粉末状の卵殻の配合量が、上記総重量100重量部に対して95重量部よりも多い場合に、原料としての混合材料の調製時において、熱可塑性樹脂と粉末状の卵殻とを十分に混練することができなくなり、造粒が困難になるためである。一方で、基層部10における粉末状の卵殻の配合量が、上記総重量100重量部に対して5重量部よりも少ない場合には、複合材1の線膨張(熱膨張)を効果的に抑制することができなくなるためであり、また共押出し成形時において押出した混合材料がドローダウンしてしまうといった成形性の点において悪影響が生じるためでもある。
また、本実施の形態における複合材1においては、基層部10におけるセルロース系成分の配合量が、基層部10における熱可塑性樹脂成分および基層部10における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、0重量部を超え150重量部以下とされていることが好ましい。
これは、基層部10におけるセルロース系成分の配合量が、上記総重量100重量部に対して150重量部よりも多い場合には、複合材1の吸水膨張を効果的に抑制することができなくなるためである。なお、基層部10には、必ずしもセルロース系成分が含まれている必要はなく、これを含めない構成としてもよい。しかしながら、吸水膨張を抑制しつつ造粒性や成形性を保つためには、基層部10におけるセルロース系成分の配合量が、上記総重量100重量部に対して0重量部を超え10重量部以下であることが好ましい。
また、本実施の形態における複合材1においては、基層部10および表層部20のいずれにも相溶化剤が含まれるようにしつつ、さらに、基層部10における相溶化剤の配合量が、基層部10における熱可塑性樹脂成分、基層部10における粉末状の卵殻、基層部10におけるセルロース系成分の総重量100重量部に対して、3重量部以下とされていることが好ましい。
これは、このように構成することにより、複合材1の吸水膨張が効果的に抑制できるためである。より詳細には、基層部10および表層部20のいずれにも相溶化剤が含まれることにより、共押出し成形時において基層部10と表層部20との密着性が向上し、表層部20が水分に晒されて吸水膨張しようとした場合にも、当該表層部20を支持する基層部10がこれを強固に保持することでその吸水膨張を抑制するためと推察される。なお、相溶化剤を上記総重量100重量部に対して3重量部を超えて配合した場合には、複合材1の強度を増大させる効果が得難くなり、さらに成形性が低下してしまうおそれがある。
以上において説明したように、本実施の形態における複合材1とすることにより、高い環境調和性を有しつつ吸水膨張を抑制することができ、さらには木材に近い質感を実現することができる複合材とすることができる。
図4は、上述した本発明の実施の形態における複合材の製造方法を説明するための模式図である。次に、この図4を参照して、本発明の実施の形態における複合材1の製造方法について説明する。
図4に示すように、本実施の形態における複合材1は、基層部10の原料である混合材料M1を押出す第1押出し装置110と、表層部20の原料である混合材料M2を押出す第2押出し装置120と、第1押出し装置110から押し出された混合材料M1および第2押出し装置120から押し出された混合材料M2を重ね合わせて密着させつつこれを成形する成形用金型130とを備えた共押出し機100によって製造される。
第1押出し装置110は、内部にスクリュー111aを具備してなる装置本体111と、混合材料M1が投下され、投下された混合材料M1を装置本体111に供給するホッパー112とを有している。ホッパー112に投下される混合材料M1は、共押出し成形後において基層部10となる、原料としての熱可塑性樹脂成分、粉末状の卵殻、セルロース系成分および各種の添加剤が予めミキサーによって混練されたものである。このうち、熱可塑性樹脂成分、粉末状の卵殻およびセルロース系成分は、いずれも各種のミルによって粉砕された後に上述したミキサーによって混練される。
第1押出し装置110の装置本体111の内部には、スクリュー111aが設置された搬送路が設けられている。ホッパー112から装置本体111に供給された混合材料M1は、スクリュー111aによって混練されながら当該搬送路中を図中矢印AR1方向に向けて搬送されることにより、成形用金型130へと導入される。
第2押出し装置120は、内部にスクリュー121aを具備してなる装置本体121と、混合材料M2が投下され、投下された混合材料M2を装置本体121に供給するホッパー122とを有している。ホッパー122に投下される混合材料M2は、共押出し成形後において表層部20となる、原料としての熱可塑性樹脂成分、セルロース系成分および各種の添加剤が予めミキサーによって混練されたものである。このうち、熱可塑性樹脂成分およびセルロース系成分は、いずれも各種のミルによって粉砕された後に上述したミキサーによって混練される。
第2押出し装置120の装置本体121の内部には、スクリュー121aが設置された搬送路が設けられている。ホッパー122から装置本体121に供給された混合材料M2は、スクリュー121aによって混練されながら当該搬送路中を図中矢印AR2方向に向けて搬送されることにより、成形用金型130へと導入される。
なお、第1押出し装置110および第2押出し装置120には、適所に図示しない加熱装置が付設されており、これによって混合材料M1,M2が適宜加熱される。
成形用金型130に導入された混合材料M1,M2は、当該成形用金型130の内部において重ね合わされるとともに、当該成形用金型130によって成形され、その後、成形用金型130から図中矢印AR3方向に向けて押し出される。押し出された押出し成形品Pは、上記成形用金型130および必要に応じて別途設けられた冷却装置によって冷却されることで硬化し、硬化した押出し成形品Pが切断されることで上述した複合材1が製造される。
以下、本発明の効果を検証した検証試験について説明する。下記の表1は、当該検証試験における試験条件および試験結果を示した表である。
表1に示すように、検証試験においては、実施例1〜5および比較例の合計で6種類の複合材を実際に製造し、これらのそれぞれを用いて各種の評価試験を行なった。実施例1〜5および比較例に係る複合材は、いずれも図1ないし図3において示した構造を有するものであり、共通の形状および共通の寸法を有するものとした。なお、表1においては、各種成分の配合量を、熱可塑性樹脂成分と粉末状の卵殻との総重量100重量部(粉末状の卵殻が含まれない比較例においては、熱可塑性樹脂成分の重量100重量部)に対する比率(重量部)として表わしている。
実施例1〜5および比較例に係る複合材においては、表層部における各種成分の配合量をいずれも共通とした。具体的には、熱可塑性樹脂成分(ポリプロピレン樹脂)を44.55重量%とし、セルロース系成分(木粉)を47.52重量%とし、相溶化剤を0.5重量%とし、滑剤を1.0重量%とした。表層部に含まれる残る成分は、耐候剤、酸化防止剤等である。
実施例1〜5に係る複合材においては、基層部における各種成分の配合量を種々変更した。具体的には、熱可塑性樹脂成分(ポリプロピレン樹脂)と、卵殻(鶏卵の卵殻)と、セルロース系成分(木粉)と、相溶化剤と、滑剤と、顔料との配合比率を表1に示すように変更した。なお、基層部にも耐候剤、酸化防止剤等が配合されているが、これらの配合量は共通とした。
ここで、実施例1〜5に係る複合材の基層部に添加した粉末状の卵殻の平均粒径は、実施例1,3〜5が20μmであり、実施例2が60μmである。
比較例に係る複合材は、実施例1〜5に係る複合材と比較した場合に、卵殻(鶏卵の卵殻)を配合していない点において大きく相違しており、熱可塑性樹脂成分(ポリプロピレン樹脂)と、セルロース系成分(木粉)と、相溶化剤と、滑剤と、顔料との配合比率は、表1に示すとおりである。なお、比較例の基層部に含まれる耐候剤、酸化防止剤等の配合量は、上述した実施例1〜5と同じにした。
なお、実施例1〜5および比較例に係る複合材は、いずれも共押出し成形によって製造したものである。
一方、実施例1および比較例に係る複合材の吸水膨張率は、高温高湿槽(温度70℃、湿度95%)内にこれら実施例1および比較例に係る複合材(長さ200mm、幅145mm、厚み30mm)を吸水膨張に伴う変形が飽和する状態となるまで放置し、その前後における寸法変化率を測定することで行なった。
また、実施例1〜5および比較例に係る複合材の曲げ強度および曲げ弾性率は、JIS K 7171に規定される「プラスチック−曲げ特性試験方法」に基づいてその測定を行なった。
また、実施例1〜5および比較例に係る複合材のシャルピー衝撃強さは、JIS K 7111−1に規定される「プラスチック−シャルピー衝撃特性の求め方」に基づいてその測定を行なった。
その結果、表1に示すように、基層部に粉末状の卵殻を含む実施例1に係る複合材において、基層部に粉末状の卵殻を含まない比較例に係る複合材に比べ、その吸水膨張率を約1/3にまで抑制できることが確認できた。
また、表1に示すように、基層部に粉末状の卵殻を含む実施例1〜5に係る複合材において、基層部に粉末状の卵殻を含まない比較例に係る複合材に比べ、曲げ強度が向上しているとともに、耐衝撃性についてもこれが向上していることが確認できた。
以上において説明した検証試験の結果から理解されるように、基層部に粉末状の卵殻を含ませることにより、高い環境調和性を有しつつ吸水膨張を抑制することができ、さらには木材に近い質感を実現することができる複合材とすることができることが、実験的にも確認されたと言える。
上述した本発明の実施の形態においては、共押出し成形にて製造される複合材に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、他の方法にて製造される複合材に本発明を適用することも可能である。たとえば、基層部と表層部とを別々に押出し成形し、その後これらを加圧プレスして接合することで製造される複合材や、混練後の混合材料を押出し成形せずに直接プレス成形することで製造される複合材にも、本発明の適用が可能である。また、その場合には、基層部と表層部とが互いに接して固着している必要はなく、これらの間に接着剤層等の他の層が位置していてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態においては、表層部が基層部の一部(すなわち、基層部の外表面のうち、複合材のおもて面および一対の側面に対応する部分ならびに複合材のうら面に対応する部分の両端部)を覆うように構成した場合を例示して説明を行なったが、表層部が基層部の他の一部(たとえば、基層部の外表面のうち、複合材のおもて面に対応する部分のみ等)を覆うように構成してもよいし、表層部が基層部の全部(すなわち、基層部の外表面のうち、複合材のおもて面、うら面および一対の側面に対応する部分のすべて)を覆うように構成することもできる。
また、上述した本発明の実施の形態においては、基層部が粉末状の卵殻を含んでいる場合を例示して説明を行なったが、基層部が粉末状の卵殻を含まず、表層部が粉末状の卵殻を含むように構成することもできる。すなわち、基層部および表層部の少なくともいずれか一方に粉末状の卵殻を添加することにより、高い環境調和性を有しつつ、吸水膨張を抑制することができ、さらには木材に近い質感を実現することができる複合材とすることができる。
また、上述した本発明の実施の形態においては、複合材としてのデッキ材に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、当然に他の複合材としての建材や、建材以外の複合材に本発明を適用することも可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 複合材、2 おもて面、3 うら面、4 側面、5 中空部、6 溝部、10 基層部、20 表層部、100 共押出し機、110 第1押出し装置、111 装置本体、111a スクリュー、112 ホッパー、120 第2押出し装置、121 装置本体、121a スクリュー、122 ホッパー、130 成形用金型、M1,M2 混合材料、P 押出し成形品。

Claims (8)

  1. 基層部と、
    前記基層部の一部または全部を覆うことで化粧面を構成する表層部とを備えた複合材であって、
    前記表層部が、熱可塑性樹脂成分およびセルロース系成分を含み、
    前記基層部が、熱可塑性樹脂成分粉末状の卵殻およびセルロース系成分を含み、
    前記基層部における粉末状の卵殻の配合量が、前記基層部における熱可塑性樹脂成分および前記基層部における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、71.43重量部以上95重量部以下であり、
    前記基層部におけるセルロース系成分の配合量が、前記基層部における熱可塑性樹脂成分および前記基層部における粉末状の卵殻の総重量100重量部に対して、0重量部を超えて14.29重量部以下である、複合材。
  2. 当該複合材が、外表面として、相対して位置するおもて面およびうら面と、これらおもて面およびうら面を接続する一対の側面とを有する長尺状の部材からなり、
    前記おもて面および前記一対の側面において前記表層部が露出することにより、当該複合材の前記おもて面および前記一対の側面が前記化粧面として構成され、
    前記基層部が、前記うら面の少なくとも一部において露出している、請求項1に記載の複合材。
  3. 前記表層部に含まれる熱可塑性樹脂成分および前記基層部に含まれる熱可塑性樹脂成分が、いずれもポリオレフィンであり、
    前記表層部に含まれるセルロース系成分が、木粉である、請求項1または2に記載の複合材。
  4. 前記基層部に含まれるセルロース系成分が、木粉である、請求項1から3のいずれかに記載の複合材。
  5. 前記表層部が、粉末状の卵殻をさらに含んでいる、請求項1からのいずれかに記載の複合材。
  6. 前記基層部および前記表層部が、いずれも相溶化剤を含んでいる、請求項1からのいずれかに記載の複合材。
  7. 前記基層部における相溶化剤の配合量が、前記基層部における熱可塑性樹脂成分、前記基層部における粉末状の卵殻および前記基層部におけるセルロース系成分の総重量100重量部に対して、3重量部以下である、請求項に記載の複合材。
  8. 前記基層部と前記表層部とが、相互に接した状態で固着している、請求項1からのいずれかに記載の複合材。
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