JP3970460B2 - 水熱電気分解方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リグニン含有廃液を処理する方法及び装置に関する。特に、リグニン含有廃液を水熱電気分解反応により分解して処理する方法及び装置に関する。より好ましくは、パルプ廃液中に含有されるリグニン又はその誘導体を処理するに適する水熱電気分解方法及び装置に関する。
【0002】
本明細書において、「水熱電気分解反応」とは、水熱反応と電気分解反応とを同時に行うことを意味し、「水熱酸化反応」とは、積極的に外部から投入した酸化剤により水熱雰囲気下で還元性物質を酸化する反応を意味する。
【0003】
【従来の技術】
一般に、パルプ工場等から排出される廃液には大量のリグニンが含まれており、TOC、BOD,CODが非常に高い。リグニンは、木材、タケ、ワラなど木化した植物体の主成分の一つで、フェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してできた網状高分子化合物である。
【0004】
パルプ工場等において、パルプを製造する際には、木材等の植物体原料に薬剤を添加し、1〜5気圧、90〜160℃において処理することで、リグニンが蒸解され、繊維質と分離される。パルプの製造方法には、硫化ソーダと苛性ソーダを使う硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)方法と、亜硫酸塩(亜硫酸ソーダ、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウムなど)を用いる亜硫酸パルプ方法と、がある。蒸解廃液(以下パルプ廃液と称す)中に含有されるリグニンは、クラフトパルプ方法の場合には、チオリグニンの形で、また亜硫酸パルプ方法の場合にはリグニンスルホン酸塩の形で、それぞれ溶存している。これらのパルプ廃液にはリグニン誘導体以外にヘキソース、ペントース、糖誘導体、揮発性有機物、無機化合物などが含まれている。
【0005】
パルプ廃液の処理方法としては、濃縮燃焼方法がある。この濃縮燃焼方法は、パルプ廃液の可燃性物質濃度を減圧多重効用缶等の濃縮器を用いて、5〜10倍に濃縮して、ついでボイラー等の蒸気回収機構を設けた噴霧燃焼炉で燃焼させるものである。しかし、この濃縮燃焼方法は、パルプ廃液に含有される水分(約90%)を燃焼可能な程度まで濃縮するために必要な熱量が膨大である、という欠点がある。
【0006】
また、濃縮の際には、水蒸気に随伴されて揮発性悪臭成分等も発生する、という欠点がある。この揮発性悪臭成分を除去するためには、別個の凝縮水処理設備が必要となり、設備投資が高額となってしまう、という欠点もある。
【0007】
さらにパルプの蒸解工程でもメチルサルファイト、硫化水素、メチルメルカプタン類の悪臭成分が発生する、という欠点がある。この悪臭成分を処理するためには、別個のガス処理設備が必要となり、設備投資が高額となってしまう、という欠点もある。
【0008】
そこで、パルプ廃液の処理方法として、水熱酸化方法(湿式酸化、ジンマーマン法とも呼ばれている)が提案されている。この水熱酸化方法は、パルプ廃液のような水分を多く含んだ溶液に対して、水分が蒸発しないように適当な圧力をかけて、空気等の酸化剤を圧入し、約200℃〜300℃の温度範囲で液相酸化させる方法である。しかし、この水熱酸化方法のみでは、酢酸等で代表される難分解性の低級脂肪酸はほとんど分解されず、パルプ廃液の高度処理が不可能である、という欠点がある。
【0009】
したがって、高額な設備投資を必要としない簡易なパルプ廃液処理方法及び装置が必要となっているのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、低コストで簡易に且つ効率的に、リグニン又はその誘導体、特にパルプ廃液中に含有されているリグニン又はその誘導体を処理する方法及び装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、高エネルギーを必要とする濃縮工程を排除し、安価で安全なパルプ廃液処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、水と、リグニン又はその誘導体と、強電解質と、を含有する水媒体を、100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、前記水媒体が液相を維持する圧力の下、直流電流を供給する水熱電気分解工程、を有することを特徴とする水熱電気分解方法が提供される。
【0013】
上記水熱電気分解工程において、上記水媒体の温度は、180℃〜350℃の範囲に維持され、上記圧力は、10気圧〜220気圧の範囲に維持されることが好ましい。また、電気分解の際には、陽極の表面の電流密度は、0.1mA/dm2〜500A/dm2であることが好ましい。電流密度が500A/dm2より高い場合には、陽極の表面が剥離したり、溶出し易くなる。一方、電流密度が0.1mA/dm2より低い場合には、陽極の面積を大きくする必要があり、装置が大型化する。電流密度は、10mA/dm2〜100A/dm2であることが更に好ましく、100mA/dm2〜50A/dm2であることが更になお好ましい。なお、陽極の新材料が開発された場合などには、陽極の電流密度を更に高くすることもできる。
【0014】
さらに、上記水熱電気分解工程の前に、水と、リグニン又はその誘導体と、酸化剤とを含有する水媒体を、100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度で、上記水媒体が液相を維持する圧力に維持して処理する水熱酸化反応工程を行うことが好ましい。上記水熱酸化反応工程において、上記水媒体の温度は、180℃〜350℃の範囲に維持され、上記圧力は、10気圧〜220気圧の範囲に維持されることが好ましい。この水熱酸化反応工程を備えることで、リグニン又はその誘導体を含有する処理水のうち易分解性物質成分をあらかじめ酸化分解することができ、水熱電気分解工程で処理すべき成分を減少させることにより、負荷電気量を減少させることができ、より低コスト化を図ることができる。また、この場合には、上記酸化剤として安価で且つ安全性の高い空気を用いることが好ましい。また、上記酸化剤は、前記リグニン又はその誘導体を含有する処理水中の還元性物質を完全酸化するに必要な化学量論以上、好ましくは0.01当量以上含まれていることが好ましい。また、酸化剤としては、酸素ガス、オゾンガス、過酸化水素、次亜ハロゲン酸が好ましく、酸素ガスが更に好ましい。酸素ガスとしては、酸素ガスを含有する気体を用いてもよく、例えば、空気が好適に用いられる。
【0015】
また、上記強電解質としては、ハロゲン化物塩、硫酸塩、リン酸塩等の水媒体中で溶解する塩類を好ましく用いることができる。特に好ましくは、ハロゲン化物塩を用いることができる。この場合、ハロゲン化物塩濃度は、50ppm〜20wt%の範囲になることが好ましい。ハロゲン化物イオン源としては、食塩、岩塩、塩化カリウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム又はその他のハロゲン塩類を好ましく挙げることができる。
【0016】
本発明の水熱電気分解方法は、特に、パルプ廃液由来のリグニン又はその誘導体の処理に適する。本発明の水熱電気分解方法をパルプ廃液由来のリグニン又はその誘導体の処理に用いる場合には、上記水熱酸化反応工程の前に、酸化剤を供給する酸化剤供給工程を備え、この酸化剤供給工程にパルプ廃液由来の悪臭成分を含有する気体を添加する工程を備えることがさらに好ましい。この場合には、廃液処理のみならず、排ガス処理も同時に行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、水と、リグニン又はその誘導体と、強電解質とを含有する水媒体を調整する水媒体調整部と、少なくとも上記水媒体を100℃以上該水媒体の臨界温度以下の温度において、上記水媒体が液相を維持する圧力の下、直流電流を供給する水熱電気分解部と、上記水熱電気分解部に水媒体を供給する水媒体供給ラインと、上記水熱電気分解部から処理物を排出する処理物排出ラインと、を備える水熱電気分解装置が提供される。ここで、上記水熱電気分解部に酸化剤を供給する酸化剤供給ラインをさらに備えることが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態においては、上記水媒体調整部は、水供給ラインと、リグニン又はその誘導体を含有する処理物供給ラインと、強電解質源を供給する強電解質源供給ラインと、これらの供給ラインと接続されており、これらの供給ラインから供給された水と処理物と強電解質とを攪拌混合する調整タンクとを有する。上記水熱電気分解部は、陽極と、陰極と、を有する。電気分解の際には、陽極の表面の電流密度は、0.1mA/dm2〜500A/dm2であることが好ましい。電流密度が500A/dm2より高い場合には、陽極の表面が剥離したり、溶出し易くなる。一方、電流密度が0.1mA/dm2より低い場合には、陽極の面積を大きくする必要があり、装置が大型化する。電流密度は、10mA/dm2〜100A/dm2であることが更に好ましく、100mA/dm2〜50A/dm2であることが更になお好ましい。なお、陽極の新材料が開発された場合などには、陽極の電流密度を更に高くすることもできる。水熱電気分解部において、水媒体は180℃〜350℃の範囲の温度に維持され、10気圧〜220気圧の範囲の圧力に維持される。陽極の材料としては、放電電極又は陽極の表面が、ルテニウム、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、錫若しくはこれらの酸化物又はフェライトを有することが好ましい。例えば、放電電極そのものがこれらの物質で構成されていてもよい。あるいは、放電電極の基材の表面がこれらの物質で被覆されていてもよい。ルテニウム、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、錫は、金属元素そのものであってもよいし、酸化物であってもよい。また、これらの金属の合金も好適に用いられる。合金としては、例えば、白金−イリジウム、ルテニウム−錫、ルテニウム−チタンなどが挙げられる。上記した金属等は、防食性に優れており、陽極として用いる場合に優れた不溶性を示す。実施態様によっては、特に、パラジウム、ルテニウム、白金とイリジウムとの合金を主成分とするものが好ましい。
【0019】
さらに、上記水熱電気分解部の上流側に、水と、リグニン又はその誘導体と、酸化剤とを含有する水媒体を、100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、前記水媒体が液相を維持する圧力に維持する水熱酸化反応部を備えることが好ましい。この場合には、上記水熱電気分解部及び上記水熱酸化反応部に酸化剤を供給する酸化剤供給ラインをさらに設けることが好ましい。上記酸化剤としては、酸素ガス、オゾンガス、過酸化水素、次亜ハロゲン酸が好ましく、酸素ガスが更に好ましい。酸素ガスとしては、酸素ガスを含有する気体を用いてもよく、例えば、空気が好適に用いられる。
【0020】
また、上記水熱酸化反応部において酸化される水媒体は強電解質を含有しているため、水熱酸化反応部は強い腐食雰囲気にさらされることになる。そこで、水熱酸化反応部の腐食を防止するため、防食用電極を設けることが好ましい。好ましい実施形態においては、水熱酸化反応室の壁面を陰極とし、水熱酸化反応室内に陽極用金属を位置付けている。この防食用電極は、上記水熱電気分解部とは異なり、大きな電流密度を必要としない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す概略図である。図1において、本発明の水熱電気分解装置1は、水とリグニン又はその誘導体と強電解質とを含有する水媒体を100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、上記水媒体が液相を維持する圧力の下、直流電流を供給する水熱電気分解部20と、上記水熱酸化反応部10及び上記水熱電気分解部20に水媒体を供給する第1水媒体供給ライン30a及び第2水媒体供給ライン30bからなる水媒体供給ライン30と、上記水熱電気分解20から処理物を排出する処理物排出ライン40と、を有する。
【0023】
また、図1に示す水熱電気分解装置1は、上記水熱電気分解部20の上流側に、水とリグニン又はその誘導体と酸化剤とを含有する水媒体を100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、上記水媒体が液相を維持する圧力に維持する水熱酸化反応部10と、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20に酸化剤を供給する酸化剤供給ライン50と、を設けている。なお、水熱酸化反応を行わない場合には、水熱酸化反応部10は、不要である。
【0024】
さらに、図1に示す水熱電気分解装置1は、上記水媒体供給ライン30に連結されており、処理すべきリグニン含有廃液を水及び強電解質と混合させて水媒体を調整する水媒体調整タンク60を有する。
【0025】
上記水媒体調整タンク60には、リグニン含有廃液流入ライン61と、強電解質供給ライン62と、水供給ライン63と、水媒体供給ライン30と、が連結されており、水媒体調整タンク60内部には、攪拌装置66が設けられている。本実施形態において、強電解質供給ライン62は、ホッパー64及びスクリューコンベヤ65を含み、強電解質が固体状態でホッパー64及びスクリューコンベヤ65を介して供給される場合を示す。なお、強電解質が液体状態で供給される場合には、ホッパー64及びスクリューコンベヤ65に代えて、導管を設けることができる。各ライン61,62及び63から供給されたリグニン含有廃液、強電解質及び水は、水媒体調整タンク60内において、攪拌装置66により、十分に攪拌されて水媒体に調整され、水媒体供給ライン30に流出して、水熱電気分解部20又は水熱酸化反応部10に送られる。本実施形態においては、まず水熱酸化反応部10に送られ、次いで、水熱電気分解部20に送られる形態を示す。
【0026】
上記水媒体供給ライン30は、本実施形態においては、上記水媒体調整タンク60にて調整された水媒体を水熱酸化反応部10に供給する第1の水媒体供給ライン30aと、水熱電気分解部20に供給する第2の水媒体供給ライン30bと、を有する。しかし、水熱電気分解装置1が水熱酸化反応部10を具備しない場合には、第1の水媒体供給ライン30aは、第2の水媒体供給ライン30bと同じラインでよい。水媒体供給ライン30には、水媒体調整タンク60にて調整された水媒体を加圧するための加圧ポンプ31と、水媒体用熱交換器32と、が設けられており、水媒体を水熱電気分解に適する圧力及び温度条件に維持する。しかし、水熱酸化反応部10を備える場合には、水熱電気分解装置1の運転初期に、水媒体用熱交換器32のみで水熱酸化反応に必要な温度まで水媒体を上昇させることは困難であるので、水媒体用熱交換器32の下流側、好ましくは水熱酸化反応器10に加熱器(図示せず)を設けることもできる。
【0027】
上記酸化剤供給ライン50は、酸化剤導入ライン51と、酸化剤導入ライン51に連結されており導入された酸化剤を圧縮(一次圧縮)する第1のコンプレッサー52と、一次圧縮された酸化剤に含有されている水分を凝縮分離する第1のアキュムレーター53と、アキュムレーター53により分離された気体成分をさらに圧縮(二次圧縮)する第2のコンプレッサー54と、二次圧縮された酸化剤に含有されている水分を凝縮分離する第2のアキュムレーター55と、第2のアキュムレーター55により分離された気体成分を予熱する酸化剤用熱交換器56と、酸化剤用熱交換器56にて予熱された酸化剤を水熱酸化反応部10に供給する水熱酸化用酸化剤供給ライン50a及び水熱電気分解部20に供給する水熱電気分解用酸化剤供給ライン50bと、を有する。もちろん、水熱酸化反応部10を設けていない場合には、水熱酸化用酸化剤供給ライン50aは、不要である。上記第1のアキュムレーター53及び第2のアキュムレーター55には、凝集分離された液体成分をそれぞれ水媒体供給ライン30の高圧ポンプ31の前後に供給する凝縮分離液体供給ライン53a及び55aが連結されている。すなわち、第1のアキュムレーター53で凝縮分離された液体成分は、水媒体供給ライン30の高圧ポンプ31で再度圧縮されることになる。また、この凝縮分離液体供給ライン53a及び55aには、それぞれバルブ53b及び55bが設けられており、水媒体供給ライン30に供給する凝縮分離液体の量を調整するようになされている。こうして、酸化剤供給ライン50において得られる液体成分は、水媒体供給ライン30に導入され、水媒体の組成成分となる。
【0028】
上記水熱酸化反応部10は、水媒体供給ライン30aを受け入れる水媒体導入口11と、酸化剤供給ライン50aを受け入れる酸化剤導入口12と、水熱酸化反応を行う水熱酸化反応室13と、水熱酸化反応後の水媒体を第2の水媒体供給ライン30bを介して水熱電気分解部20に流出させるための水媒体排出口14と、を有する。水熱酸化反応室13は、適当なシール手段によって密封されており、耐圧構造となされている。水熱酸化反応室13内部では、水熱酸化反応が強電解質存在下で行われるため、反応室13内部を耐食雰囲気とする必要がある。このため、水熱酸化反応室13の内壁13aは導電性金属から形成され、内部には防食用電極13bが配置されている。内壁13aは、外部直流電源13cから少量の負の電流を与えられて陰極として作用し、防食用電極13bは、外部直流電源13cから少量の正の電流を与えられて陽極として作用するようになされている。なお、ここで与えられる電流密度は、0.01mA/dm2〜1A/dm2の範囲とすることが好ましい。0.01mA/dm2以下であれば十分な防食効果が得られず、また1A/dm2以上であれば水熱電気分解反応が活発的に進行し始め、本来水熱酸化反応で十分分解できる還元性物質も高価な酸化剤で分解され、ランニングコストを高めることになるので好ましくない。
【0029】
上記水熱電気分解部20は、水媒体供給ライン30bを受け入れる水媒体導入口21と、酸化剤供給ライン50bを受け入れる酸化剤導入口22と、水熱電気分解反応を行う水熱電気分解反応室23と、水熱電気分解反応後の処理水を処理水排出ライン40に流出させるための処理水排出口24と、を有する。水熱電気分解室23は、適当なシール手段によって密封されており、耐圧構造となされている。水熱電気分解反応室23は、導電性金属製の内壁23aを有し、内部には放電性電極23bが配置されている。内壁23aは外部直流電源23cの負極に接続されており、放電電極23bは外部直流電源23cの正極に接続されている。なお、水熱電気分解効率を上げるためには、水媒体に与える電流密度を大きくすればよい。例えば、本実施形態においては、一対の陰極23aと陽極23bとの組み合わせであるが、水熱電気分解室23に、内壁を陰極とし内部に陽極を具備する電気分解ユニット(図示せず)を複数本設けて、この電気分解ユニット内部にそれぞれ水媒体を流入させて、水熱電気分解反応を行わせる構成にすることもできる。なお、ここで与えられる電流密度は、0.01mA/dm2〜500A/dm2の範囲とすることが好ましい。
【0030】
上記処理物排出ライン40は、気体用熱交換器41と、液体用熱交換器42と、気液分離器43と、気体回収ライン44と、濾過器45と、液体回収ライン46と、固体回収ライン47と、処理水貯蔵タンク48と、を有する。濾過器45は、液体と固体とを分離するフィルター45aを有する。なお、処理水を水熱電気分解装置1の水媒体調整用の水として再利用するため、処理水貯蔵タンク48から水供給ライン63に接続する処理水供給ライン48aを設けてもよい。また、気体用熱交換器41は上記酸化剤用熱交換器56と、液体用熱交換器42は上記水媒体用熱交換器42と、それぞれ同一の熱交換器を併用してもよい。ただし、この強電解質を含む水媒体と酸化剤とが熱交換器で混合状態にあるため、腐食が起こる可能性がある。そのため、熱交換器の構成材料を耐食性材料とするか、あるいは防食電極を挿入することが好ましい。
【0031】
次に、図1に示す水熱電気分解装置1を用いて、パルプ廃液を処理する方法について説明する。
本実施形態の水熱電気分解方法は、水媒体調整工程と、酸化剤供給工程と、水熱酸化反応工程と、水熱電気分解工程と、処理水排出工程と、からなる。
【0032】
まず、水媒体調整工程において、リグニン又はその誘導体を含有するパルプ廃液を被処理物流入ライン61より、強電解質源を強電解質供給ライン62より、水を水供給ライン63より、それぞれ水媒体調整タンク60に流入させる。一般的に、パルプ廃液には、悪臭を発生する成分、特に硫黄系の成分(硫化水素、メチルメルカプタン類)が含まれていることが多いので、水媒体調整タンク60は呼吸ベント(図示せず)を設ける以外、基本的には密閉構造とされていることが好ましい。
【0033】
上記強電解質源は、後の水熱電気分解工程で触媒として作用するものであり、固体又は液体の状態で添加される。固体状態の強電解質源としては、例えば食塩、岩塩、塩化カリウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム又はその他のハロゲン塩類を用いることができる。これらの固体状態の強電解質源は、ホッパー64に一次貯蔵され、スクリューコンベヤ65により、定量的に、水媒体調整タンク60に添加される。これは、強電解質源を搬送するスクリューコンベヤ65の搬送速度を、被処理物供給ライン61から流入されるパルプ廃液の負荷量に応じて調節することによりなされる。すなわち、水媒体調整タンク60における強電解質濃度が50ppm〜20wt%の範囲になるように、スクリューコンベヤ65の搬送速度を調節することが好ましい。なお、パルプ工場によっては、パルプ廃液中に、蒸解廃液と漂白廃液とが混合されている場合がある。この漂白廃液が混合されている場合には、パルプ廃液にすでに塩素イオンが含まれているので、添加する強電解質源は少量でよい。
【0034】
また、上記水は、パルプ廃液を適切な可燃性物質濃度に維持するために利用される。パルプ廃液には通常10%前後の可燃性物質が含まれているが、水熱酸化工程で自燃により反応温度を維持できる廃液中の最低可燃性物質量は1%前後である。すなわち、9%以上の可燃性物質は余剰な熱量を発生することになる。しかし、水熱酸化反応部10又は水熱電気分解反応部20に、この余剰な可燃性物質をすべて投入すると、反応温度が暴走し、温度制御が困難となる場合がある。したがって、水媒体調整タンク60内であらかじめパルプ廃液を調整して、安定運転ができる適切な可燃性物質濃度に維持してから、水熱酸化反応部10又は水熱電気分解反応部20に投入することが好ましい。これは、水媒体調整タンク60に、水を水供給ライン63から添加することによりなされる。ここで、本実施形態の水熱電気分解装置1による処理水の有効利用のために、水供給ライン63に水熱電気分解後の処理水を添加する処理水供給ライン48aが設けられている。この場合には、処理水供給ライン48aから添加される処理水には、すでに強電解質が含まれているので、新たに添加する強電解質源は少量で足りることになる、という利点もある。
【0035】
次に、水媒体調整工程により調整された水媒体は、水媒体供給ライン30を介して、水熱酸化反応部10及び/又は水熱電気分解部20に供給される。水媒体は、水媒体供給ライン30に設けられている高圧ポンプ31により所定圧力まで加圧され、次いで、水媒体用熱交換器32において所定温度まで予熱される。しかし、水熱電気分解装置20の運転初期には、水媒体用熱交換器32における熱交換のみでは、水熱電気分解反応に必要な温度まで昇温されないので、別に設けた加熱器(図示せず)により予熱するか又は水熱酸化反応部10を直接加熱することにより、所定温度まで昇温させることが必要となる。
【0036】
水媒体を水熱酸化反応部10に供給する際に、同時に、酸化剤供給ライン50から、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20に、酸化剤を添加する。酸化剤は、酸化剤導入ライン51を介してコンプレッサー52に導入され、5〜10気圧の範囲まで、一次加圧される。このとき、酸化剤導入ライン51から、酸化剤と共にパルプ工場で発生する悪臭気体成分を導入することが好ましい。この悪臭気体成分としては、パルプ蒸解時に発生する揮発性成分等がある。悪臭が少量の水蒸気に随伴されている場合においてもコンプレッサー52により取り込むことができる。なお、パルプ工場においては、蒸解工程はバッチ操作であり、蒸解工程からバッチ式に悪臭成分が発生するため、水封されたタンク等に悪臭成分含有気体を一次貯蔵しておいて、酸化剤導入ライン50に取り入れることができる。コンプレッサー52で圧縮された空気、悪臭成分、少量の水蒸気は、次いで第1のアキュムレーター53において、凝縮分離される。すなわち、第1のアキュムレーター53において、水蒸気の一部は、悪臭成分を伴った状態で凝縮され、凝縮した液体は、第1のアキュムレーター53の下部に溜まり、気体と分離されるのである。分離された凝縮液体は、第1の凝縮分離液体供給ライン53aを介して、水媒体供給ライン30に供給される。このとき、バルブ53bを調整することによって、水媒体供給ライン30に供給される凝縮分離液体の量は調節することができる。なお、第1の凝縮分離液体供給ライン53aは、高圧ポンプ31の上流側に接続されており、凝縮分離液体は高圧ポンプ31により圧縮される。一方、第1のアキュムレーター53において分離された酸化剤を含む気体は、さらに、第2のコンプレッサー54によって、後続の工程である水熱酸化反応工程及び水熱電気分解工程で必要な圧力、10〜220気圧まで加圧される。次いで、加圧された酸化剤を含む気体は、第2のアキュムレーター55において、凝縮分離される。第2のアキュムレーター55において凝縮した液体は、第2のアキュムレーター55の下部に溜まり、バルブ55bの調整により、第2の凝縮分離液体供給ライン55aを介して、水媒体供給ライン30に供給される。なお、第2の凝縮分離液体供給ライン55aは、高圧ポンプ31の下流側に接続されている。一方、第2のアキュムレーター55において凝縮されなかった悪臭成分は、酸化剤に随伴されて、酸化剤用熱交換器56にて予熱されてから、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20に供給される。このとき、本装置の初期運転時には、上述の水媒体の場合と同様に、酸化剤用熱交換器56のみでは水熱酸化反応工程及び水熱電気分解工程で必要とされる温度まで昇温できないので、上記別の加熱器(図示せず)又は水熱酸化反応部10を直接加熱することが好ましい。この加熱の方法は特に限定するものではなく、電気ヒーター、オイルバーナー、熱媒体を用いた加熱方法のいずれも利用可能である。
【0037】
このように、本発明の水熱電気分解装置1において、酸化剤供給ライン50にパルプ工場から排出される排ガスを取り込むことにより、パルプ廃液ばかりでなく、パルプ排ガスを処理することも可能となる。ただし、臨界点が常温より低い成分は、凝縮した水に溶解している分を除いては、基本的に凝縮分離できない。また、凝縮液をまったく分離しなかった場合には、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20までの各ライン50a及び50b、酸化剤用熱交換器56等で液ためなどができ、ウォーターハンマー現象等の装置の破損の原因、不安定な運転の原因となるので、好ましくない。さらに、悪臭成分には可燃性の物質が多いため、悪臭成分を随伴する酸化剤の組成によっては、酸化剤供給ライン50の途中で酸化発熱し、破損等も起こりうるため、凝縮した悪臭成分は分離することが好ましい。また、酸化剤としては、空気などが好ましい。純酸素など、空気より酸化能力が高い酸化剤は、特に加圧後、可燃性の悪臭成分と反応しやすく、危険であるから好ましくない。
【0038】
次いで、水媒体は水媒体供給ライン30から水媒体流出口11を介して、酸化剤は酸化剤供給ライン50から酸化剤導入口12を介して、それぞれ水熱酸化反応部10に供給される。水熱酸化反応部10に供給された水媒体及び酸化物は、水熱酸化反応室13内で、250℃で、70気圧で、0.5時間、水熱酸化され、酸化剤とパルプ廃液に溶存している可燃性物質及び酸化剤に随伴されてきた悪臭成分とが反応して炭酸ガス、窒素、硫酸イオン、リン酸イオンと水などに分解される。なお、水熱酸化反応部10ではいわゆる湿式酸化反応しか起こらないので、例えば酢酸、アンモニア等の難分解性物質は分解されず、分子状の溶存酸素で分解可能な易分解性物質のみが分解される。
【0039】
次に、水熱酸化反応部10で分解されずに残存する難分解性物質を多く含む水媒体は、排出口14を介して第2の水媒体供給ライン30bより水熱電気分解部20に供給される。水熱電気分解部20には、酸化剤供給ライン50bから酸化剤も供給される。水媒体及び酸化剤は、水熱電気分解室23において、例えば250℃、70気圧、0.5時間、水熱電気分解される。ここでの酸化分解反応は、陽極23bにおいて生成する次亜ハロゲン酸など発生基状態の酸化剤と、陰極23a近辺で生成される活性酸素等の非常に活性の高い酸化剤で促進される。水媒体調整タンク60で添加された強電解質源すなわちハロゲンイオンは、この発生基状態の次亜ハロゲン酸を生成するために必要である。なお、ハロゲンイオン以外の電解質が含まれていてもよく、この場合には、陽極23bと陰極23aとに所定の電流を通電するために電解質が多いほど負荷電圧が低減できるので好ましい。なお、本発明においては、必ずしも酸化剤を水熱電気分解部20に供給する必要はないが、酸化剤として空気を用いた場合には、陰極23aにおいて、空気に含まれていた分子状の酸素が電気化学的に活性酸素等の高活性酸化剤に変換され、パルプ廃液の可燃性物質や悪臭成分を分解できる、という利点がある。さらに、水素生成を抑制させる、という利点もある。本来、水を電気分解した場合には、水素の発生が進行するが、水熱電気分解を行い、さらに酸化剤を外部から投入した場合には、水素の発生が著しく抑制されるのである。ただし、水素発生を抑制させるために、酸化剤は、パルプ廃液中に含有される可燃性物質および悪臭成分を完全酸化するのに必要な化学当量以上を添加する必要がある。酸化剤が当該化学当量未満であると、水熱電気分解反応により水素の発生が促進されるので、好ましくない。これは、水熱電気分解部20において、外部から酸化剤がほとんど供給されない場合には、被処理物である水媒体から酸素原子を抽出して還元性物質を酸化させるため、余った水の水素原子が水素ガスとして発生するおそれがある。なお、水熱酸化反応部10に導入され残存した酸化剤は水媒体と共に流路30bから水熱電解分解部20に供給されるので、水熱電気分解部20に導入する酸化剤は、この残存した酸化剤を考慮して導入することが好ましい。いずれにしても、水熱酸化反応部10と、水熱電気分解部20とに導入する酸化剤の合計量は水媒体に含まれている還元性物質を完全酸化するのに必要な当量以上であることが好ましい。
【0040】
次に、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20にて水熱酸化及び水熱電気分解された処理水は、処理物排出ライン40に排出される。処理排出ライン40において、処理水は、気体熱交換器41にて気体成分の熱交換が行われ、次いで液体熱交換器42にて液体成分の熱交換が行われ、さらに気液分離器43にて気体成分と液体成分とに分離される。炭酸ガス、窒素、残存酸素等の気体成分は、気体回収ライン44を介して処理水貯蔵タンク48に導入される。水、硫酸イオン、リン酸イオンその他溶解している電解質イオン及び微細な粒子を含有する液体は、気液分離器43の下部から、濾過器45に導入される。濾過器45において、固体成分はフィルター45aにより捕捉され、液体成分は液体回収ライン46を介して処理水貯蔵タンク48に導入される。パルプ原料として、特にわら類を用いた場合、微細なSiO2(シリカ)がパルプ廃液に含まれているが、このSiO2の粒子は、水熱酸化反応工程及び水熱電気分解工程で特に変換されることがないため、フィルター45aに捕捉され、回収されたシリカ粒子47aは比較的純度が高いため、各種セラミックス材料、半導体原料等として再利用され得る。一方、処理水貯蔵タンク48に導入された液体には、強電解質源として添加した電解質物質がそのまま含まれているため、水媒体調整タンク60に戻して、パルプ廃液の希釈水及び電解質源として再利用が可能となり、外部から添加すべき水及び強電解質源を少量化することができる。
【0041】
次に、水熱酸化反応部110と水熱電気分解部120とが同一の反応器101内に設けられている実施形態を図2に示す。
図2において、水熱酸化反応部110と水熱電気分解部120とは、一つの反応器101内に配置されており、両者の間に特に物理的な境界を設けずに分割されている。水熱酸化反応部110は、水熱電気分解部120の上流側すなわち図2においては反応器101の下部に配置されている。これは、反応器101の壁面123aを導電性金属から形成して、外部電極123cの負極と連結させ、反応器101の上部にのみ放電電極123bを位置付けて、外部電極123cの正極と連結させ、反応器101の下部には電極を配置しないことによってなされる。このとき、水熱酸化反応部110の反応器内壁は、水熱電気分解部120の反応器内壁と同じ電位を有するので、防食される。図2においては、1枚の電極123bのみが示されているが、複数の電気分解ユニットを設けてもよいことは上述の図1に示す実施形態の場合と同様である。
【0042】
反応器101は、水媒体供給ライン30に連結されており水媒体を導入する水媒体導入口121及び酸化剤供給ライン50に連結されており酸化剤を導入する酸化剤導入口122を有する。また、反応器101は、適当なシール手段によって密封されて、耐圧構造となされている。
【0043】
図2に示す水熱酸化反応部110及び水熱電気分解部120を有する水熱電気分解装置を用いてパルプ廃液を処理する方法についても、水熱酸化反応部110と水熱電気分解部120とが同一の反応器101内部に配置されているため、水熱酸化反応部110から水熱電気分解部120に水媒体を供給するラインを別に経由する必要がなく、酸化剤を水熱電気分解部120に別途導入する必要がない点を除いて、水熱電気分解装置1で処理する方法と同じ方法である。
【0044】
次に、複数の電気分解ユニットを用いる場合の反応器201の内部構造を図3を用いて説明する。
反応器201は、容器下方部201aと容器中間部201bと容器上方部201cとからなる。容器下方部201aには、水媒体導入口221と、酸化剤導入口222と、導入された水媒体及び酸化剤を混合する混合室223と、が設けられている。容器中間部201bには、それぞれ酸化剤と混合された水媒体を加圧・加熱状態で酸化する水熱酸化反応部210及び加圧・加熱状態で電気分解する水熱電気分解部220を含む複数の反応室231が設けられている。容器上方部201cには、各反応室231に対応した電流導入端子242が設けられている。
【0045】
電流導入端子242は、反応器201と絶縁するための絶縁材料を有することが好ましい。各々の電流導入端子242には、放電電極241が接続されており、放電電極241は反応室231のほぼ上半分まで内部に延びている。放電電極241は、反応室231の内径よりも径の細い棒状体であり、各反応室231に一つずつ挿入されるように所定位置に配置されている。もっとも、放電電極は、メッシュ又は網を円筒形状に形成したものでもよいし、軸方向に中空部が形成されている円筒形状であってもよい。一方、各反応室231の内壁231aは、例えばステンレス鋼製などの導電性金属から形成されており、導電性金属からなる容器中間部201bと一体成形若しくは別体として成形し嵌め込むなどして一体化されており、容器中間部201bには外部の直流定電流電圧電源の負極が接続されている。このように、反応室231の内壁231aが陰極として作用するため、電気分解による腐食が防止される。
【0046】
なお、陽極(放電電極241)と陰極(反応室内壁231a)との距離は、均等であることが好ましい。この距離にばらつきがある場合には、距離が短い部分に局部的に過大な電流が流れ、その部分の陽極の劣化が促進されるからである。本実施態様では、反応室231の内壁231aが、円筒形状を有することが好ましい。また、放電電極241の外周面も円筒形状を有し、放電電極241の中心軸が反応室231の内壁231aの中心軸と実質的に一致することが好ましい。
【0047】
そして、反応室231の内面231aと放電電極241との間に、水熱電気分解チャンバー207が形成されており、水熱電気分解チャンバー207は、容器中間部201bと容器上方部201cとの連結部分に形成された排出流路208に連通されている。排出流路208は、容器中間部201bの上端側に設けられている処理終了後の被処理物を反応器201から排出する処理物排出口234に連通されている。
【0048】
水熱酸化反応部210と水熱電気分解部220の容積比率は本発明において特に限定されない。難分解性物質が多く含まれている場合、水熱電気分解反応を行う水熱電気分解部210の容積を大きくし、易分解性物質が多い場合には水熱酸化工程を行う水熱酸化反応部210の容積を大きくすればよい。さらに、水熱酸化反応部210はなくてもよい。
【0049】
混合室223は、抵抗板224で仕切られており、内部に撹拌機225が設置されている。抵抗板224は、水媒体の流れを乱すことにより混合するものであり、公知のものを特に制限なく用いることができる。また、撹拌機225は、混合を促進するために用いられるものであり、撹拌羽225aを有する通常のもので、モータ一(図示せず)に連結されている。
【0050】
容器下方部201aと容器中間部201bとの連結部分には、混合室223で酸化剤と混合された水媒体を反応室231にスムーズに導入するための導入室206が設けられている。
【0051】
【実施例】
図1に示す装置を用いて、リグニンを含有する模擬パルプ廃液の処理実験を行う場合を実施例に沿って説明する。ここで、模擬パルプ廃液は、市販の可溶性リグニンスルフォン酸ナトリウム塩粉を蒸留水に2.5g/lとなるように溶解して調整する。
【0052】
この模擬パルプ廃液を水媒体調整タンク60に流入させ、さらに、強電解質供給ライン62から強電解質源としてNaCl及び水供給ライン63から水を添加して、模擬パルプ廃液中にNaCl濃度が2wt%となるように調整する。また、リグニンスルフォン酸のスルフォン基は酸化反応後硫酸として安定化するので、中和剤としてNaOHを添加し、模擬パルプ廃液中のNaOH濃度が0.7g/lとなるように調整する。
【0053】
ここで、模擬パルプ廃液のTOCは950mg/l、pHは12.09、色は濃いこげ茶色〜黒色である。
水媒体供給ライン30における加圧ポンプ31の流量は100cc/min(6l/h)に設定し、酸化剤供給ライン50における第1のコンプレッサーの流量は5Nl/min(0.3m3/h)とした。酸化剤としては、空気を用いる。
【0054】
水熱酸化反応部10の内容積は6lとし、耐食用電極13bとして円筒状のイリジウム焼成電極を装備している。水熱電気分解部20の内容積は6lとし、放電電極23bとして円筒状のイリジウム焼成電極を装備している。水熱酸化反応部10と水熱電気分解部20とは、図1に示すように直列に連結されている。
【0055】
上記の模擬パルプ廃液の処理を行う前に、水熱酸化反応部10及び水熱電気分解部20を処理条件に適するよう環境条件設定を行う。すなわち、水道水を高圧ポンプのサクションにつなぎ、100cc/minの水道水を圧入しながら、水熱酸化反応部10及び水熱電解反応部20に水を注入し、ついで、バックプレッッシャー弁を7MPaに設定し、5Nl/minの空気、100cc/minの水道水を圧入しつつ、水熱酸化反応部10及び水熱電解反応部20内の圧力を7Mpaまで加圧し、さらに、空気、水道水を流通しつつ、水熱酸化反応部10及び水熱電解反応部20の周りに設置した電気ヒーター(図示せず)を作動させ、各反応部10及び20の上部に設けてある温度制御用熱伝対(図示せず)で測温しながら250℃となるまで加熱し、各反応部10及び20の温度を250℃に維持する、ことにより、環境条件設定を完了する。7MPa、250℃の反応条件に達した後、水道水の注入を止め、模擬パルプ廃液を含む水媒体の供給を開始し、水熱酸化反応部10に0.1A、水熱電解反応部20に20Aの直流電流の通電を開始する。
【0056】
こうして、水媒体を供給しながら連続運転3時間経過後、処理物排出ライン40に排出される処理水の水質は一定となる。水熱酸化反応部10の出口14で水媒体は黄色、TOCは421mg/l(TOC分解率55.7%)、pHは5.71である。水熱電気分解反応部20の出口24で処理水は無色透明、TOCは14mg/l(TOC分解率98.5%)、pHは5.50である。
【0057】
以上の実験結果より、本発明の処理方法により、リグニンが非常に良好に分解されたことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、低コストで、且つ簡易にリグニン又はその誘導体を処理する水熱電気分解方法及び装置が提供される。すなわち、本発明をパルプ廃液処理に適用する場合には、高エネルギー消費を必要とする多量の水分を含有するパルプ廃液の濃縮蒸発工程を排除して、高い分解効率でパルプ廃液を処理することができ、パルプ廃液中のTOC、BOD、CODを低減することができる。
【0059】
また、あらかじめ外部酸化剤を投入することによる水熱酸化工程をさらに有することにより、電力消費の高い水熱電気化学工程に供される被処理物を予め減少させることができ、より安価で安全な水熱電気分解方法及び装置が提供される。すなわち、本発明をパルプ廃液処理に適用する場合には、より安価で安全な処理が可能となる。
【0060】
さらに、酸化剤として空気を用いることにより、薬品酸化剤の前使用を排除し、安価で且つ安全なパルプ廃液処理に適する水熱電気分解方法及び装置が提供される。
【0061】
また前記酸化剤を少なくともリグニン含有廃液に含まれる還元性物質を完全酸化するのに必要な化学量論以上添加することにより、水熱電解酸化工程で爆発性の高い水素発生を防ぐことができ、より安全性に優れる水熱電気分解方法及び装置が提供される。
【0062】
さらに本発明の水熱電気分解方法及び装置をパルプ廃液の処理に適用する場合には、水熱酸化反応工程において、パルプ蒸解工程において発生する悪臭成分を含む気体を酸化剤とともに添加することにより、悪臭成分の処理も同時に行うことができる。
【0063】
さらに水熱電気分解工程で必要な電流より低い電流を供給する直流電源を設けることにより、水熱電気分解部の腐蝕を防止することができ、水熱電気分解部の寿命を長期化することができる。
【0064】
パルプ蒸解工程で発生する悪臭成分を加圧圧縮後、凝集する悪臭成分をリグニン含有廃液と混合し、安定的な運転処理が可能なパルプ工場廃液および排ガスの処理方法及び装置が提供される。さらに水熱電気分解後の処理水はパルプ廃液の希釈液として用いることが可能であり、パルプ工場廃液および排ガスを処理するに当り水資源の節約ができる方法を提供する。
【0065】
すなわち、本発明では今まで、濃縮操作及び燃焼が必要であったリグニン含有廃液の処理に、濃縮操作無しで高い分解率が得られる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の水熱電気分解装置の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】図2は、水熱酸化反応部と水熱電気分解部とを1つの反応器内に設けた水熱電気分解装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【図3】図3は、水熱酸化反応部及び水熱電気分解部を有する複数の電気分解ユニットが1つの反応器内に設けられている実施形態における反応器の拡大図である。
【符号の説明】
1:水熱電気分解装置
10、110、210:水熱酸化反応部
20、120、220:水熱電気分解部
30:水媒体供給ライン
40:処理物排出ライン
50:酸化剤供給ライン
60:水媒体調整タンク

Claims (3)

  1. 水と、リグニン又はその誘導体と、ハロゲン化物とを含有する水媒体及び酸化剤を、100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度で、前記水媒体が液相を維持する圧力に維持して処理する水熱酸化反応工程を行い、
    次いで、得られた水媒体に対して、100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、前記水媒体が液相を維持する圧力の下、直流電流を供給する水熱電気分解工程を行うことを特徴とする水熱電気分解方法。
  2. 前記水熱酸化反応工程において、前記酸化剤として空気を用いることを特徴とする請求項に記載の水熱電気分解方法。
  3. リグニンを含有する廃液を水熱電気分解するための装置であって、
    水と、リグニン又はその誘導体と、ハロゲン化物とを含有する水媒体を調整する水媒体調整部と、
    前記水媒体及び酸化剤を100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、前記水媒体が液相を維持する圧力に維持する水熱酸化反応部と、
    前記水熱酸化反応部の下流側に設けられていて、少なくとも前記水媒体を100℃以上前記水媒体の臨界温度以下の温度において、前記水媒体が液相を維持する圧力の下、直流電流を供給する水熱電気分解部と、
    前記水熱酸化反応部に、前記水媒体を供給する水媒体供給ラインと、
    前記水媒体に酸化剤を供給する酸化剤供給ラインと、
    前記水熱電気分解部から、前記水媒体を処理した処理物を排出する処理物排出ラインと、
    を備えることを特徴とする水熱電気分解装置。
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