JP3969543B2 - 紙質向上剤 - Google Patents

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Description

本発明は、パルプシートの紙質向上に有用な内添用の添加剤に関する。
近年、環境への負担軽減や輸送コスト削減等の目的による紙の軽量化、抄造速度の高速化、脱墨パルプの増配合等により、紙の厚みが低下している。嵩高い紙が望まれる一方で、紙の剛度は厚みの3乗に比例するため、紙厚の低下は剛度の低下を引き起こす。
紙の剛度は、高級感、抄造時や印刷時等の操業性、箱などの耐久性等に大きく影響を与え、剛度の低下は低級感を与える、操業時の紙詰まり、箱などの膨れを引き起こす。
剛度を向上させる技術として、(1)単位パルプ量(坪量)を多くする、(2)紙力剤を用いる、等の方法が挙げられるが、(1)では必要なパルプ量が増加することや紙が重くなること、(2)は紙力(紙の破れにくさ)は向上し、剛度もある程度向上するが、満足するレベルには到達しない、等の問題がある。
特許文献1には、紙の内添剤としてメルカプト基を有するカチオン性のポリビニルアルコールを分散剤としたビニルモノマーあるいはジエン系モノマーの重合体微粒子からなる紙用の内添剤が開示されており、特許文献2では、デンプンを糊化することなくデンプン粒子の形態を保持しつつ、(メタ)アクリルアミドを含むモノマーをグラフト共重合して得られるグラフト化デンプンを主成分とする製紙用添加剤が開示されているが、これらは、剛度に関しては或る程度の改善はされるものの、未だ不十分であった。
また、紙の嵩を向上させる技術として、特許文献3には多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物が、特許文献4には離水度が4%以上でかつ嵩、白色度、不透明度の2つ以上を向上する紙質向上剤が開示されているが、剛度の向上も望まれている。
特開平8−170296号公報 特開平11−302992号公報 特許第2971447号公報 特許第3283248号公報
本発明の課題は、パルプシートの剛度、嵩などを向上させる内添用紙質向上剤を提供することである。特に、剛度向上剤として有用な内添用紙質向上剤を提供することである。
本発明は、天然系カチオン性ポリマー(A)と、少なくともビニルモノマー由来の構成単位を含有するポリマー粒子(B)とを含むポリマーエマルションからなる内添用紙質向上剤に関する。
また、本発明は、パルプシートの表面及び/又は内部に、上記本発明の内添用紙質向上剤を存在させたパルプシートに関する。
また、本発明は、上記本発明の内添用紙質向上剤とパルプを接触させるパルプシートの紙質向上方法に関する。
カチオン基を有する天然系カチオン性ポリマー(A)と少なくともビニルモノマー由来の構成単位を含有するポリマー粒子(B)とを含むエマルションからなる内添用紙質向上剤を添加して抄紙することにより、剛度又は嵩の高い、あるいは両者とも高いパルプシート、特に剛度の高いパルプシートを得ることができる。
本発明の内添用紙質向上剤は、天然系カチオン性ポリマー(A)と少なくともビニルモノマー由来の構成単位を含有するポリマー微粒子(B)とを含むエマルションからなる。本発明の内添用紙質向上剤が、剛度や嵩を著しく向上させる理由は必ずしも明らかではないが、天然系ポリマーは、パルプと類似構造であるために、パルプとの親和力が非常に強く、従来技術であるポリビニルアルコールに代表される合成系ポリマーとビニルモノマーを重合した微粒子からなる剤に比べ、著しい定着量の向上、定着後もしくは乾燥加熱時の剤のパルプ表面での濡れ拡がり性の向上による効率向上、剤/パルプ界面の固定化力向上等により、剛度や嵩が向上しているものと推察される。本発明の内添用紙質向上剤は剛度を向上効果が顕著であるので、剛度向上の目的で用いることが好ましい。
<天然系カチオン性ポリマー(A)>
本発明において使用される天然系カチオン性ポリマー(A)は、天然物より抽出や精製等の操作で得られるポリマー及びそのポリマーを化学的に修飾したものである。ポリマー骨格にグルコース残基を有するもの(澱粉残基やセルロース残基等)が好ましく、例えば、カチオン性澱粉若しくはカチオン性セルロース(特に水溶性でカチオン基が4級アンモニウムカチオン基であるものが好ましい)などが挙げられ、一種以上を単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。
カチオン基とは、アンモニウム基、又はアミノ基が酸で中和されたものを含む。好ましくは、アミノ基が塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、乳酸等により、中和されたものを含む。
カチオン性澱粉又はカチオン性セルロースとしては例えば次式(1)に表わされるものが好ましい。
Figure 0003969543
(式中、
A:澱粉残基又はセルロース残基、
R:アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基、
1、R2、R3:同じか又は異なって、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい。
-:アンモニウム塩の対イオンを示す。
i:正の整数を示す。)
澱粉残基又はセルロース残基としては、澱粉又はセルロースから水酸基をi個除いたものが好ましく挙げられる。
Rとしては、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基が好ましく、ヒドロキシプロピレン基が特に好ましい。
1、R2、R3は、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基等が挙げられる。X-の具体例としては、塩素、ヨウ素、臭素等のハロゲンイオン、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等の有機アニオン等が挙げられる。iは、前述のカチオン置換度に対応して、決められる。
本発明において、天然系カチオン性ポリマーは公知の方法で製造される。例えばカチオン化剤を用い、コーンスターチ等を水/アルコール系にてカチオン化した後、酢酸中和、水洗、乾燥する。分子量(水溶液粘度)調整は一般的には、カチオン化されたスラリーに塩酸等の強酸を加え、加温することにより容易に行われる。
カチオン性澱粉は例えばアルカリ性条件下で、とうもろこし、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等からの生澱粉や化工澱粉にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド又は3−クロル−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを反応させて得る事ができる。又、ジメチルアミノエチル化澱粉を4級化して得ることもできる。更に、澱粉に4−クロルブテントリメチルアンモニウムクロライドを反応させて得ることもできる。一方、カチオン性セルロースは例えばヒドロキシエチルセルロースに上記の反応を行うことにより得ることができる。
天然系カチオン性ポリマーの窒素含量は、剛度向上の観点から0.05〜1重量%が好ましく、0.07〜0.9重量%が特に好ましい。剛度向上効果の点で、窒素重量%(以下、N%と表記する)は0.05重量%以上が好ましく、また剛度向上効果の点で、1重量%以下が好ましい。N%はケルダール法(JIS K 8001)で分析する。
天然系カチオン性ポリマーは、取り扱いの利便性やハンドリング性の他、生産性等を考慮した場合、エマルションの高固形分化が望まれることから、本発明の効果を阻害しない範囲で低分子量化することができる。天然系カチオン性ポリマーの分子量を水溶液粘度に置き換えて表した場合、50℃、7重量%水溶液粘度(B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)として40〜10,000mPa・sが好ましく、50〜8,000mPa・sがより好ましい。
天然系カチオン性ポリマーは、本発明の効果を阻害しない限り、老化防止等のためにヒドロキシアルキル基などのエーテル基やアセチル基などのエステル基などの官能基を導入してもよい。
本発明において、重合安定性や機械的安定性の向上を図る目的で、天然系カチオン性ポリマーに天然系カチオン性ポリマー以外の、例えば合成系カチオン性ポリマーや非イオン性ポリマーを併用し用いても良い。合成系カチオン性ポリマーとしてはカチオン化ポリビニルアルコール、非イオン性ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、可溶性澱粉等の半合成水溶性高分子;ポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子が好ましい。天然系カチオン性ポリマー以外のポリマーの使用量は、ポリマー粒子(B)を構成するビニルモノマー100重量部に対して、0〜100重量部用いることが好ましく。0〜50重量部用いることがさらに好ましい。
<ポリマー粒子(B)>
本発明で用いられるポリマー粒子(B)は、ガラス転移温度(Tg)が90℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましい。ポリマーのTgが90℃以下であると、紙の製造工程において、紙に含有された内添用紙質向上剤の一部ないし全量が溶融するため、剛度向上性能の点から好ましい。Tgの下限は特に制限ないが、−10℃以上が好ましい。
共重合体のTgは、「高分子の力学的性質」(化学同人出版 1969)の「2.4 共重合体のガラス転移の式」に基づいて、算出することが出来る。Tgは、「POLYMER HANDBOOK Fourth Edition 1999 by John Wiley & Sons, Inc.」記載の数値を用いた。
1/Tg=ΣWn/Tgn
(Tg:共重合体のガラス転移温度
Tgn:単独重合体のガラス転移温度
Wn:重量分率)
本発明で用いられるポリマー粒子は、ビニルモノマー由来の構成単位を含有するものである。構成するビニルモノマーのポリマー粒子中の含有量は特に限定はないが、50〜100モル%が好ましく、特に80〜100モル%が好ましい。ビニルモノマーとしては、ビニル化合物、ビニレン化合物、ビニリデン化合物、環状オレフィンが含まれ、下記に記載するものが好ましく挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸メチル((メタ)アクリルとは、アクリル、メタクリル又はその混合物を示す。以下同じ。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(2)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びピバリン酸ビニル等の炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸とビニルアルコールとのエステルからなる脂肪酸ビニルエステル類;
(3)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、等の重合性不飽和基を有するアニオン性モノマー又はその塩が挙げられる。マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなポリカルボン酸は、酸無水物、部分エステル、並びに部分アミド又はそれらの混合物を含む。「塩」としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アンモニウム塩(第四級アンモニウム塩、第四級アルキルアンモニウム塩等)等が挙げられる。中でもナトリウム塩が最も安価であり好ましい。
(4)(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド等の重合性不飽和基を有するノニオン性親水性基含有モノマーが挙げられる。
(5)N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等の重合性不飽和基を有するアミノ基含有モノマー又はその酸中和物もしくはその四級化物等を具体的に挙げることができる。酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、乳酸等が挙げられ、四級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
(6)スチレン、α−メチルスチレン
上記のビニルモノマー中、低級脂肪酸ビニルエステル類を用いるのが、紙の剛度を向上させるのに最も好ましい。本発明に用いられるポリマー粒子の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合又は分散重合により得ることが出来る。
(ポリマーエマルション)
本発明において、エマルションには、前述のポリマー粒子(B)を、取り扱い易さの点から、固形純分(固形分濃度)で、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは15〜55重量%含有する。ポリマー粒子(B)の平均粒子径は、エマルションの安定性、パルプへの吸着性等の点から0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmが更に好ましく、特に0.2〜20μmが好ましい。固形分濃度は、後述の実施例記載の方法で測定する。
本発明の紙質向上剤では、ポリマー粒子(B)の重合安定性の点と、ポリマー粒子(B)をパルプに効果的に吸着させ、パルプシートの剛度を向上させるために、エマルション中の天然系カチオン性ポリマー(A)の比率が、ポリマー粒子(B)100重量部に対して5〜200重量部、更に5〜150重量部、特に7〜120重量部であることが好ましい。この比率において、ポリマー粒子(B)の重量は、ポリマーを構成する全モノマーの合計の重量とする。
また、ポリマー粒子(B)をパルプに効果的に吸着させると共に天然系カチオン性ポリマー(A)による剛度向上の補助的効果も得るためには、エマルション中の天然系カチオン性ポリマー(A)の比率が、ポリマー粒子(B)100重量部に対して5〜500重量部であることが好ましく、更に7〜500重量部、特に10〜500重量部であることが好ましい。
本発明のエマルションは、分散媒を好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは45〜85重量%含有する。分散媒は水であることが好ましいが、炭素数1〜4の低級アルコールを含有していてもよい。低級アルコールとしては、炭素数1〜3のメチル、エチル、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
更に、防腐剤、殺菌剤の他、添加剤として炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン等の充填剤、顔料等を含有していてもよい。
(内添用紙質向上剤の製造)
本発明の内添用紙質向上剤には、前述のビニルモノマーを重合して得られるポリマー粒子(B)のエマルション(サスペンション、水分散体)を用いる。
ポリマー粒子(B)の重合方法は、分散又は乳化安定剤として、一般のアニオン性、カチオン性、ノニオン性又は両性の界面活性剤、天然、半合成若しくは合成のアニオン性、ノニオン性、又は前述のカチオン性ポリマー等を用いる、乳化重合法、懸濁重合法、又は分散重合法が好ましい。
例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;トリメチルステアリルアンモニウムクロリド及びカルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽イオン性及び両性の界面活性剤;ショ糖モノステアレート、ショ糖ジラウレート等のショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート等のソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のソルビタンエステルのポリオキシアルキレン付加物、脂肪族アルコールのポリオキシアルキレン付加物等のノニオン性界面活性剤;デンプン及びその誘導体、エチルセルロース等のセルロースエーテル、セルロースアセテート等のセルロースエステル、セルロース誘導体等の天然及び半合成ポリマー;ポリビニルアルコール及びその誘導体、マレイン化ポリブタジエン等の合成ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、前述の天然系カチオン性ポリマー(A)の存在下で、ビニルモノマーを重合する乳化重合法、懸濁重合法、又は分散重合法により製造されたものが好ましく、特に乳化重合法が好ましい。
ビニルモノマーは、反応溶媒100重量部に対して、1〜70重量部、更に1.5〜60重量部、特に8〜57重量部用いることが好ましい。反応溶媒としては、水又は低級アルコールが好ましく挙げられる。
重合開始剤としては、溶媒中に均一に溶解する過酸化物、有機又は無機過酸若しくはその塩、アゾビス系化合物の単独或いは還元剤との組合せによるレドックス系のものが用いられ、それらの代表的な例としては、例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルイソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキシルハイドロパーオキサイド、テトラリンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せ等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、用いる系により異なるが、ビニルモノマー100重量部に対して、0.05〜3重量部用いることが好ましい。
反応温度は、好ましくは30〜90℃、反応時間は、好ましくは30分〜10時間位である。
本発明では、反応終了後のエマルションを、そのまま内添用紙質向上剤として用いることが出来る。
天然系カチオン性ポリマー(A)以外の分散又は乳化安定剤を用いた場合、重合後、エマルション中に、天然系カチオン性ポリマー(A)を、好ましくは室温で添加し、混合する。天然系カチオン性ポリマー(A)を分散剤又は乳化安定化剤に用いた場合でも、重合後、エマルション中にさらに天然系カチオン性ポリマー(A)を添加しても良い。
本発明において、重合安定性や機械的安定性、貯蔵安定性等を向上させるため、重合時にpH調整剤等の添加剤を用いてもよい。pH調整剤としてはリン酸、酒石酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が重合系に添加される。
(紙質向上方法)
本発明において前述のエマルションを、パルプと、好ましくは室温で混合し、抄紙することにより、ポリマー粒子(B)を含むエマルションと天然系カチオン性ポリマー(A)とを別々にパルプに添加し抄紙することでも、本発明の内添用紙質向上剤を、パルプシートの表面及び/又は内部に含有させたパルプシートが得られる。
内添用紙質向上剤の使用量(添加量)としては固形分換算で、パルプ100重量部に対し0.05〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。剛度と嵩向上性能の点から内添量が0.05重量部以上が好ましく、またパルプシート本来の性能の点から20重量部以下が好ましい。
後述する測定法により、剛度の向上率は、紙質剛度向上剤未添加のパルプシートを対照として、パルプ100重量部に対して内添用紙質向上剤を0.5〜1.0重量部用いた時に、剛度が少なくとも1%向上することが好ましく、少なくとも2.5%向上することが更に好ましい。
本発明の内添とは、パルプシートを製造する過程、つまり抄紙時において、パルプスラリーに添加する剤として用いられることを意味する。その添加場所としては、パルプ原料の稀薄液が金網上を進む間に濾水されて紙層を形成する抄紙工程以前で、パルパーやリファイナー等の離解機や叩解機、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、あるいはこれらの設備と接続された配管中に添加してもよいが、リファイナー、マシンチェスト、ヘッドボックスで添加する等、均一にパルプ原料にブレンドできる場所が望ましい。
本発明の内添用紙質向上剤を用いて得られたパルプシートは、新聞用紙、非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、情報用紙、段ボール用紙、白板紙に好適に用いられる。
以下の製造例、実施例において、%及び部は、特に記載しなければ重量%、重量部を表わす。
<エマルションの製造例>
・エマルションI
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹き込み口、攪拌機を備えた2Lフラスコに、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕48.2g、イオン交換水695.0gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)29.3gと、あらかじめイオン交換水17.2gに75%リン酸水溶液1.9gと4%水酸化ナトリウム45.0gを混合した水溶液を添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)20.4g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.1gをイオン交換水29.6gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル409.3g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)11.0gの混合物、及び開始剤(V−50)0.9gをイオン交換水210gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
固形分濃度30.8%、平均粒子径2.63μmのカチオン性エマルションIを得た。
・エマルションII
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕48.2g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)8.1g、イオン交換水585.2gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)29.3gと、あらかじめイオン交換水17.2gに75%リン酸水溶液1.9gと4%水酸化ナトリウム45.0gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)20.4g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.1gをイオン交換水29.6gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル205.0g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)5.5g、ジメチルアクリルアミド(試薬、和光純薬(株)製)6.6gの混合物、及び開始剤(V−50)0.35gをイオン交換水101gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
固形分濃度23.5%、平均粒子径0.52μmのカチオン性エマルションIIを得た。
・エマルションIII〜XIII、XV〜XVII
エマルションIIに準じ、カチオン性ポリマー及びポリマー粒子(B)のモノマー組成を表1、表2に示すように変更しそれぞれを合成した(なお、ポリビニルアルコールはカチオン性ポリマー100重量部に対して16.8重量部の比率で用い、イオン交換水の量は適宜変更した)。
・エマルションXIV
カチオン性ポリマーを除いた以外は、エマルションIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度17.7%、平均粒子径1.85μmのエマルションXIVを得た。
・エマルションXVIII
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕28.9g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)4.8g、イオン交換水539.7gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)21.3gと、あらかじめイオン交換水10.2gに75%リン酸水溶液1.1gと4%水酸化ナトリウム26.6gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)10.7g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.0gをイオン交換水9.0gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温し、1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
固形分濃度7.9%、平均粒子径0.20μmのカチオン性エマルションXVIIIを得た。
・エマルションXIX
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕28.9g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)4.8g、イオン交換水539.7gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)21.3gと、あらかじめイオン交換水10.2gに75%リン酸水溶液1.1gと4%水酸化ナトリウム26.6gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)10.7g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.0gをイオン交換水9.0gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル54.3g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)1.6g、ジメチルアクリルアミド(試薬、和光純薬(株)製)1.9gの混合物、及び開始剤(V−50)0.85gをイオン交換水130gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
固形分濃度13.1%、平均粒子径0.43μmのカチオン性エマルションXIXを得た。
・エマルションII−I
イオン交換水を468.0g、エマルゲン150を175.8g用いた以外はエマルジョンXVIIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度19.5%、平均粒子径0.22μmのエマルジョンII−Iを得た。
・エマルションII−II
イオン交換水556.8g、エマルゲン150の代わりにポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル35.2gを用いた以外はエマルジョンXVIIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度20.7%、平均粒子径0.23μmのエマルジョンII−IIを得た。
<物性測定方法>
(1)固形分濃度
エマルション中の固形分濃度は、試料1gを、赤外水分計(Kett、Infrared Moisture Determination Balance、FD−240)にて、150℃、20分間加熱条件で測定した。
(2)平均粒子径の測定方法
エマルション中の分散粒子の平均粒子径は、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910((株)堀場製作所製)にて測定した。平均粒子径はメジアン径を用いた。但しこの測定法方法で0.4μm未満の粒子は測定精度の点から動的光散光粒径分布測定装置N4Plus(ベックマンコールター(株))で測定した。この場合、平均粒子径はユニモーダル法(キュウムラント法)により求めた。
実施例1〜28及び比較例1〜7
上記エマルションからなる紙質向上剤(以下、剤ともいう)を用いて、下記パルプ原料により抄紙した場合の剛度と嵩高性の向上を評価した。結果を表1、2に示す。
〔パルプ原料〕
パルプ原料としては、LBKP(広葉樹晒パルプ)を、25℃で叩解機にて離解、叩解して1%のLBKPスラリーとしたヴァージンパルプを用いた。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は410mlであった。
〔抄紙方法〕
ヴァージンパルプスラリーを抄紙後のパルプシートのパルプ坪量が70g/m2±1g/m2になるように量り取り、次いで表1に示すように、本発明の実施例又は比較例の内添用紙質向上剤をパルプ100部当たり有効分〔天然系カチオン性ポリマー(A)とポリマー粒子(B)の総量〕で0.5%〜5%内添し、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤー(面積625cm2)で抄紙し、パルプシートを得た。抄紙後のシートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿してから紙の緊度、クラークこわさを以下の方法で測定した。抄紙は各5枚、測定値は10回/紙1枚の平均値である。
〔評価項目・方法〕
・剛度向上率
紙質向上剤を内添した紙と無添加の紙について、それぞれクラークこわさ(JIS P8143法による)を求め、下式にて算出する。結果を表1、2に示すが、実施例では内添量5%で剛度が7.6%以上、内添量0.5%では剛度が2.6%以上向上しているのに対し、比較例では内添量5%で剛度の向上は4.8%以下、内添量0.5%では剛度の向上は1.6%以下である。
剛度向上率(%)=(剤を内添した紙のクラークこわさ/剤無添加紙のクラークこわさ−1)×100
・嵩向上率:
紙質向上剤を内添した紙と無添加の紙について、それぞれ緊度(JIS P8118による)を求め、下式にて算出する。
嵩向上率(%)=(1/剤を内添した紙の緊度−1/剤無添加紙の緊度)/(1/剤無添加紙の緊度)×100
Figure 0003969543
Figure 0003969543
(注)
1)各カチオン性ポリマーは以下の通りである。
・カチオン化HEC:和光純薬(株)製
・カチオン化セルロース:和光純薬(株)製
・エースK−36、K−100、K−250、K−500:カチオン化澱粉(王子コーンスターチ(株)製)
・カチオン化澱粉B:N%=0.8%、7%水溶液粘度2000mPa・s
・PVA−1:メルカプト変性ポリビニルアルコール(M−115、重合度1500、クラレ(株)製)
・PVA−2:カチオン化ポリビニルアルコール(C−506、重合度600、クラレ(株)製)
2)各モノマーは以下の通りである。
・VAc:酢酸ビニル
・St:スチレン
・MAA:メタクリル酸
・AA:アクリルアミド
・GMAC:メタクリル酸ヒドロキシプロピルメチルアンモニウムクロライド
・DMAAm:ジメチルアクリルアミド
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・BA:アクリル酸ブチル
3)(A)の添加量は、ポリマー粒子(B)のモノマー組成におけるビニルモノマーに対する重量%である。
またエマルションII−I、II−IIを用いても、実施例1〜28と同程度の剛度向上率、嵩向上率が得られると予想される。

Claims (8)

  1. 天然系カチオン性ポリマー(A)と、少なくともビニルモノマー由来の構成単位を含有するガラス転移温度(Tg)が−10℃以上90℃以下のポリマー粒子(B)とを含むポリマーエマルションからなる内添用紙質向上剤。
  2. 天然系カチオン性ポリマー(A)が、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースである請求項1記載の内添用紙質向上剤。
  3. ビニルモノマーが脂肪酸ビニルエステルである、請求項1又は2記載の内添用紙質向上剤。
  4. 天然系カチオン性ポリマー(A)の窒素含量が0.05〜1重量%である、請求項1〜の何れか1項記載の内添用紙質向上剤。
  5. 天然系カチオン性ポリマー(A)の比率が、ポリマー粒子(B)100重量部に対して5〜500重量部である、請求項1〜の何れか1項記載の内添用紙質向上剤。
  6. パルプシートの表面及び/又は内部に、請求項1〜の何れか1項記載の内添用紙質向上剤を存在させたパルプシート。
  7. パルプ100重量部に対して、内添用紙質向上剤を固形分換算で、0.05〜20重量部含有する請求項記載のパルプシート。
  8. 請求項1〜の何れか1項記載の内添用紙質向上剤とパルプを接触させるパルプシートの紙質向上方法。
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