JP3969543B2 - 紙質向上剤 - Google Patents
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Description
本発明において使用される天然系カチオン性ポリマー(A)は、天然物より抽出や精製等の操作で得られるポリマー及びそのポリマーを化学的に修飾したものである。ポリマー骨格にグルコース残基を有するもの(澱粉残基やセルロース残基等)が好ましく、例えば、カチオン性澱粉若しくはカチオン性セルロース(特に水溶性でカチオン基が4級アンモニウムカチオン基であるものが好ましい)などが挙げられ、一種以上を単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。
A:澱粉残基又はセルロース残基、
R:アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基、
R1、R2、R3:同じか又は異なって、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい。
X-:アンモニウム塩の対イオンを示す。
i:正の整数を示す。)
本発明で用いられるポリマー粒子(B)は、ガラス転移温度(Tg)が90℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましい。ポリマーのTgが90℃以下であると、紙の製造工程において、紙に含有された内添用紙質向上剤の一部ないし全量が溶融するため、剛度向上性能の点から好ましい。Tgの下限は特に制限ないが、−10℃以上が好ましい。
1/Tg=ΣWn/Tgn
(Tg:共重合体のガラス転移温度
Tgn:単独重合体のガラス転移温度
Wn:重量分率)
(2)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びピバリン酸ビニル等の炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸とビニルアルコールとのエステルからなる脂肪酸ビニルエステル類;
(3)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、等の重合性不飽和基を有するアニオン性モノマー又はその塩が挙げられる。マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなポリカルボン酸は、酸無水物、部分エステル、並びに部分アミド又はそれらの混合物を含む。「塩」としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アンモニウム塩(第四級アンモニウム塩、第四級アルキルアンモニウム塩等)等が挙げられる。中でもナトリウム塩が最も安価であり好ましい。
上記のビニルモノマー中、低級脂肪酸ビニルエステル類を用いるのが、紙の剛度を向上させるのに最も好ましい。本発明に用いられるポリマー粒子の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合又は分散重合により得ることが出来る。
本発明において、エマルションには、前述のポリマー粒子(B)を、取り扱い易さの点から、固形純分(固形分濃度)で、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは15〜55重量%含有する。ポリマー粒子(B)の平均粒子径は、エマルションの安定性、パルプへの吸着性等の点から0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmが更に好ましく、特に0.2〜20μmが好ましい。固形分濃度は、後述の実施例記載の方法で測定する。
本発明の内添用紙質向上剤には、前述のビニルモノマーを重合して得られるポリマー粒子(B)のエマルション(サスペンション、水分散体)を用いる。
本発明において前述のエマルションを、パルプと、好ましくは室温で混合し、抄紙することにより、ポリマー粒子(B)を含むエマルションと天然系カチオン性ポリマー(A)とを別々にパルプに添加し抄紙することでも、本発明の内添用紙質向上剤を、パルプシートの表面及び/又は内部に含有させたパルプシートが得られる。
・エマルションI
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹き込み口、攪拌機を備えた2Lフラスコに、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕48.2g、イオン交換水695.0gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)29.3gと、あらかじめイオン交換水17.2gに75%リン酸水溶液1.9gと4%水酸化ナトリウム45.0gを混合した水溶液を添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)20.4g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.1gをイオン交換水29.6gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル409.3g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)11.0gの混合物、及び開始剤(V−50)0.9gをイオン交換水210gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕48.2g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)8.1g、イオン交換水585.2gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)29.3gと、あらかじめイオン交換水17.2gに75%リン酸水溶液1.9gと4%水酸化ナトリウム45.0gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)20.4g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.1gをイオン交換水29.6gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル205.0g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)5.5g、ジメチルアクリルアミド(試薬、和光純薬(株)製)6.6gの混合物、及び開始剤(V−50)0.35gをイオン交換水101gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
エマルションIIに準じ、カチオン性ポリマー及びポリマー粒子(B)のモノマー組成を表1、表2に示すように変更しそれぞれを合成した(なお、ポリビニルアルコールはカチオン性ポリマー100重量部に対して16.8重量部の比率で用い、イオン交換水の量は適宜変更した)。
カチオン性ポリマーを除いた以外は、エマルションIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度17.7%、平均粒子径1.85μmのエマルションXIVを得た。
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕28.9g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)4.8g、イオン交換水539.7gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)21.3gと、あらかじめイオン交換水10.2gに75%リン酸水溶液1.1gと4%水酸化ナトリウム26.6gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)10.7g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.0gをイオン交換水9.0gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温し、1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
エマルションIの製造法に準じ、同様の装置を用い、カチオン性澱粉A〔N%=0.6%、7%水溶液粘度260mPa・s(50℃、B型粘度計、ローターNo.2、60rpm)〕28.9g、ポリビニルアルコール(GL−05、重合度500、鹸化度88mol%、日本合成化学(株)製)4.8g、イオン交換水539.7gを仕込み、90℃に加熱し溶解した。冷却後、エマルゲン150(非イオン性界面活性剤、20%水溶液、花王(株)製)21.3gと、あらかじめイオン交換水10.2gに75%リン酸水溶液1.1gと4%水酸化ナトリウム26.6gを混合した水溶液とを添加した後、120rpmで攪拌し、窒素を吹き込みながら、60℃に昇温し、30分間保持した。次いで、酢酸ビニル(信越酢酸ビニル(株)製)10.7g、開始剤(V−50、アゾ系開始剤、和光純薬(株)製)1.0gをイオン交換水9.0gに溶解したものを添加し、15分間保持した。次いで、77℃に昇温した後、酢酸ビニル54.3g、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)1.6g、ジメチルアクリルアミド(試薬、和光純薬(株)製)1.9gの混合物、及び開始剤(V−50)0.85gをイオン交換水130gに溶解したものを、それぞれ別々の滴下ロートから3時間かけ滴下、重合を行った。次いで82℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、取り出した。
イオン交換水を468.0g、エマルゲン150を175.8g用いた以外はエマルジョンXVIIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度19.5%、平均粒子径0.22μmのエマルジョンII−Iを得た。
イオン交換水556.8g、エマルゲン150の代わりにポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル35.2gを用いた以外はエマルジョンXVIIIの重合法及びモノマー組成に準じ、合成した。固形分濃度20.7%、平均粒子径0.23μmのエマルジョンII−IIを得た。
(1)固形分濃度
エマルション中の固形分濃度は、試料1gを、赤外水分計(Kett、Infrared Moisture Determination Balance、FD−240)にて、150℃、20分間加熱条件で測定した。
エマルション中の分散粒子の平均粒子径は、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910((株)堀場製作所製)にて測定した。平均粒子径はメジアン径を用いた。但しこの測定法方法で0.4μm未満の粒子は測定精度の点から動的光散光粒径分布測定装置N4Plus(ベックマンコールター(株))で測定した。この場合、平均粒子径はユニモーダル法(キュウムラント法)により求めた。
上記エマルションからなる紙質向上剤(以下、剤ともいう)を用いて、下記パルプ原料により抄紙した場合の剛度と嵩高性の向上を評価した。結果を表1、2に示す。
パルプ原料としては、LBKP(広葉樹晒パルプ)を、25℃で叩解機にて離解、叩解して1%のLBKPスラリーとしたヴァージンパルプを用いた。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は410mlであった。
ヴァージンパルプスラリーを抄紙後のパルプシートのパルプ坪量が70g/m2±1g/m2になるように量り取り、次いで表1に示すように、本発明の実施例又は比較例の内添用紙質向上剤をパルプ100部当たり有効分〔天然系カチオン性ポリマー(A)とポリマー粒子(B)の総量〕で0.5%〜5%内添し、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤー(面積625cm2)で抄紙し、パルプシートを得た。抄紙後のシートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿してから紙の緊度、クラークこわさを以下の方法で測定した。抄紙は各5枚、測定値は10回/紙1枚の平均値である。
・剛度向上率
紙質向上剤を内添した紙と無添加の紙について、それぞれクラークこわさ(JIS P8143法による)を求め、下式にて算出する。結果を表1、2に示すが、実施例では内添量5%で剛度が7.6%以上、内添量0.5%では剛度が2.6%以上向上しているのに対し、比較例では内添量5%で剛度の向上は4.8%以下、内添量0.5%では剛度の向上は1.6%以下である。
剛度向上率(%)=(剤を内添した紙のクラークこわさ/剤無添加紙のクラークこわさ−1)×100
紙質向上剤を内添した紙と無添加の紙について、それぞれ緊度(JIS P8118による)を求め、下式にて算出する。
嵩向上率(%)=(1/剤を内添した紙の緊度−1/剤無添加紙の緊度)/(1/剤無添加紙の緊度)×100
1)各カチオン性ポリマーは以下の通りである。
・カチオン化HEC:和光純薬(株)製
・カチオン化セルロース:和光純薬(株)製
・エースK−36、K−100、K−250、K−500:カチオン化澱粉(王子コーンスターチ(株)製)
・カチオン化澱粉B:N%=0.8%、7%水溶液粘度2000mPa・s
・PVA−1:メルカプト変性ポリビニルアルコール(M−115、重合度1500、クラレ(株)製)
・PVA−2:カチオン化ポリビニルアルコール(C−506、重合度600、クラレ(株)製)
2)各モノマーは以下の通りである。
・VAc:酢酸ビニル
・St:スチレン
・MAA:メタクリル酸
・AA:アクリルアミド
・GMAC:メタクリル酸ヒドロキシプロピルメチルアンモニウムクロライド
・DMAAm:ジメチルアクリルアミド
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・BA:アクリル酸ブチル
3)(A)の添加量は、ポリマー粒子(B)のモノマー組成におけるビニルモノマーに対する重量%である。
Claims (8)
- 天然系カチオン性ポリマー(A)と、少なくともビニルモノマー由来の構成単位を含有するガラス転移温度(Tg)が−10℃以上90℃以下のポリマー粒子(B)とを含むポリマーエマルションからなる内添用紙質向上剤。
- 天然系カチオン性ポリマー(A)が、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースである請求項1記載の内添用紙質向上剤。
- ビニルモノマーが脂肪酸ビニルエステルである、請求項1又は2記載の内添用紙質向上剤。
- 天然系カチオン性ポリマー(A)の窒素含量が0.05〜1重量%である、請求項1〜3の何れか1項記載の内添用紙質向上剤。
- 天然系カチオン性ポリマー(A)の比率が、ポリマー粒子(B)100重量部に対して5〜500重量部である、請求項1〜4の何れか1項記載の内添用紙質向上剤。
- パルプシートの表面及び/又は内部に、請求項1〜5の何れか1項記載の内添用紙質向上剤を存在させたパルプシート。
- パルプ100重量部に対して、内添用紙質向上剤を固形分換算で、0.05〜20重量部含有する請求項6記載のパルプシート。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の内添用紙質向上剤とパルプを接触させるパルプシートの紙質向上方法。
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