JP3969347B2 - 弾性表面波装置、通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不平衡型−平衡型変換機能を有するフィルタ等に用いられる弾性表面波装置及びそれを用いた通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機等の通信装置の小型化、軽量化に対する技術的進歩は目覚しいものがある。このような通信装置に用いられるフィルタとしては、使用周波数帯域が高くなるに従い、小型化が可能な弾性表面波装置が用いられるようになっている。さらに、通信装置における、各構成部品数の削減、小型化のために、複数の機能を複合した部品の開発も進んできた。
【0003】
このような状況を背景に、携帯電話機のRF段に使用する弾性表面波フィルタに平衡−不平衡変換機能、いわゆるバラン(balun)の機能を備えたものも近年盛んに研究され、GSM(Global System for Mobile communications)などを中心に使用されるようになってきた。このような平衡−不平衡変換機能を備えた弾性表面波フィルタに関する特許も、いくつか出願されている。
【0004】
入力インピーダンスと出力インピーダンスがほぼ等しい、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタとしては、図67に示すような構成が知られている。
【0005】
図67に記載の弾性表面波装置は、圧電基板100上に、くし型電極部(すだれ状電極部ともいう、Inter-Digital Transducer、以下、IDTという)101が設けられ、上記IDT101の左右(弾性表面波の伝搬方向に沿って)にIDT102、IDT103がそれぞれ配置されている、平衡−不平衡変換機能を有する3IDTタイプの縦結合共振子型の弾性表面波装置である。
【0006】
上記弾性表面波装置には、さらに、上記各IDT102、101、103を左右から挟み込むように、反射器(リフレクタ)104、反射器105がそれぞれ配置されており、平衡信号端子として各端子106、107と、不平衡信号端子として端子108とが設けられている。
【0007】
また、入力インピーダンスと出力インピーダンスとを互いに、例えば4倍異ならせ、平衡−不平衡変換機能を有する、他の弾性表面波装置としては、例えば特開平10−117123号公報に記載の構成が挙げられる。
【0008】
上記公報に記載の弾性表面波装置は、図68に示すように、圧電基板上に、第1の弾性表面波フィルタ111と、第1の弾性表面波フィルタ111とは出力信号の位相が180度異なる第2の弾性表面波フィルタ112とを有している。なお、図68において、圧電基板の記載は省略されている。これにより、上記弾性表面波装置は、フィルタ機能と共に、平衡−不平衡変換機能を発揮できる。
【0009】
第1の弾性表面波フィルタ111は、3IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ118と、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ118に対して、弾性表面波の伝搬方向に沿った対称線を挟んで鏡面対称となる3IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ124とを、カスケード接続、つまり2段縦続接続したものである。
【0010】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ118は、中央のIDT113の左右(弾性表面波の伝搬方向に沿って)に各IDT114、115をそれぞれ配置し、これらのIDT114、113、105をさらに左右の両側から挟み込むように、反射器116、117がそれぞれ配置されたものである。縦結合共振子型弾性表面波フィルタ124は、同様に、中央のIDT119の左右に各IDT120、121をそれぞれ配置し、これらのIDT120、119、121を挟み込むように、反射器122、123が配置されたものである。
【0011】
第2の弾性表面波フィルタ112は、3IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ124と同じ縦結合共振子型弾性表面波フィルタ128と、3IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ118に対して、中央のIDT103の向きを反転させて位相を反転させた(つまり約180°)IDT133を備えている縦結合共振子型弾性表面波フィルタ127とを2段縦続接続したものである。
【0012】
第1、第2の弾性表面波フィルタ111、112のそれぞれ一方の各端子129、130を電気的に並列に接続し、もう一方の各端子131、132を電気的に直列に接続し、並列に接続した端子で不平衡端子108、直列に接続した端子で各平衡端子106、107を構成している。
【0013】
平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置において、不平衡端子108と各平衡端子106、107のそれぞれの端子との間の通過帯域内での伝送特性には、振幅特性が相等しく、かつ位相特性が互いに180度反転していることが要求されている。それらの特性は、振幅平衡度及び位相平衡度とそれぞれ呼ばれている。
【0014】
振幅平衡度及び位相平衡度とは、前記平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置を3ポートのデバイスと考え、例えば不平衡入力端子をポート1、各平衡出力端子のそれぞれをポート2、ポート3としたとき、
振幅平衡度=|A|、A=|20 log (S21)|−|20 log (S31)| …式(1)
位相平衡度=|B|、B=|∠S21−∠S31| …式(2)
で定義する。なお、S21はポート1からポート2への伝達係数を、S31はポート1からポート3への伝達係数を示している。このような平衡度は、理想的には、弾性表面波装置のフィルタ特性における、通過帯域内で振幅平衡度が0dB、位相平衡度は180度とされている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような、平衡信号端子を有する弾性表面波装置においては、平衡信号端子間の平衡度が悪化しているという問題があった。平衡度が悪い原因はいくつか挙げられるが、その1つとして、平衡信号端子106に接続されている電極指とIDT102のシグナル電極指との距離(図67の109)と、平衡信号端子107に接続されている電極指とIDT103のシグナル電極指との距離(図67の110)が、電極指のピッチで決まる波長の0.5倍異なることが挙げられる。
【0016】
これにより、各平衡信号端子106、107のそれぞれに接続されている電極指の総容量が異なる、電気信号と弾性表面波との間での変換効率が異なるといった弊害が発生し、結果、平衡度の悪化につながっていた。
【0017】
そこで、図70のように、図67の平衡信号端子107をアースに接続して平衡信号端子106から出力される周波数に対する振幅特性と、図71のように、図67の平衡信号端子106をアースに接続して平衡信号端子107から出力される振幅特性とを測定し、それらの結果としての上記振幅特性の差を図69に示す。2つの振幅特性は互いに大きく異なっており、この差が平衡度の悪化につながっている。
【0018】
また、図68に示した、カスケード接続した弾性表面波装置では、2つの互いに隣り合う各IDTにおける、互いに対面する2箇所の各電極指の極性が左右非対称な状態であることに起因して、平衡度が悪化するという問題を生じている。
【0019】
つまり、IDT113が、隣り合う各IDT114、115と各箇所(図68の125)では、互いに隣り合う各IDT113、114、115の最外電極指がどちらもアース電極指であるのに対し、IDT133が、隣り合う各IDT134、135と隣り合う各箇所(図68の126)においては、シグナル電極指とアース電極となっている。このように隣り合う各IDTの最外電極指における極性の組み合わせが変わると、電気信号と弾性表面波との間での変換により、図72に示す共振モードの周波数や振幅レベルが変化する。
【0020】
図68のように、上記のような、互いに隣り合う各IDTにおける各最外電極指の組み合わせが相異なる2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを組み合わせて、平衡−不平衡変換機能を備えた弾性表面波装置を構成した場合、この共振モードのずれが平衡信号端子間の平衡度悪化の原因となっていた。
【0021】
この現象は、図73に示すような、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いて、平衡−不平衡変換機能を備えた弾性表面波装置を構成した場合においても、上記の共振モードのずれが同様に発生し、平衡信号端子間の平衡度悪化の原因となっていた。
【0022】
本発明の目的は、平衡信号端子間の平衡度悪化の一因である上記の平衡信号端子間の差を是正することで、平衡信号端子間の平衡度が良好な、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置、及びそれを用いた通信装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波装置は、以上の課題を解決するために、圧電基板上に、複数の電極指を有する入力用IDTと、複数の電極指を有する出力用IDTとが、縦結合共振子型を形成するように弾性表面波の伝搬方向に沿って設けられ、前記入力用IDT及び出力用IDTの一方は、平衡用であり、平衡側の少なくとも一方の各電極指の最外電極指と異なる内側電極指に、重み付けされた重み付け電極指を有していることを特徴としている。上記弾性表面波装置においては、不平衡型−平衡型変換機能を有していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、入力用IDT及び出力用IDTの少なくとも一方の各電極指に、重み付け電極指を設けたことにより、出力信号、特に平衡用の各出力信号間の各特性(振幅バランス、位相バランス、伝送特性)のバランスを調整できるので、各特性のバランス性を改善できる。
【0025】
上記弾性表面波装置では、前記重み付け電極指は、一つのIDTにおける最外電極指の次から全電極指の1/2以内までの範囲内に設けられていることが好ましい。上記弾性表面波装置においては、前記重み付け電極指は、他の電極指より短く設定されていることが好ましい。
【0026】
上記弾性表面波装置では、前記入力用IDT及び出力用IDTの少なくとも一方の各電極指に、別のIDTと互いに対面する位置の最外電極指を含む2本以上、連続したアース電極指が形成されていることが望ましい。
【0027】
上記構成によれば、一方の各電極指に、互いに対面する位置の最外電極指を含む2本以上、連続したアース電極指を形成することによって、例えば平衡用の各出力信号のように位相差を180°に近く設定することを簡素な構成により確実化できる。
【0028】
上記弾性表面波装置においては、前記重み付け電極指は、前記入力用IDT及び出力用IDTの少なくとも一方の接地された電極指である各アース電極指の隣り合う間にて形成される無電界部を、平衡用の2つのIDTが共に有するように設定されていることが望ましい。
【0029】
上記弾性表面波装置では、前記重み付け電極指は、平衡用の2つのIDTに、それぞれ、2本以上互いに連続したア−ス電極指からなる無電界部を有するように設定されていてもよい。
【0030】
上記弾性表面波装置においては、平衡用の2つのIDTで、前記無電界部の大きさが、ほぼ同一となるように設定されていることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、重み付け電極指を、無電界部の大きさを制御、より好ましくは平衡用の2つのIDTで、前記無電界部の大きさを、ほぼ同一となるように設定することにより、各IDT、特に出力用IDTでの弾性エネルギーから電気エネルギーへの変換のバランスを調整できるから、バランス性を向上できる。
【0032】
上記弾性表面波装置においては、前記重み付け電極指に向かって、接地された第一バランス用電極指が上記重み付け電極指の長さに合わせて延びるように形成されていることが望ましい。
【0033】
上記構成によれば、短く設定された重み付け電極指により形成される無電極指部分が、第一バランス用電極指によりある程度カバーできるので、上記無電極指部分によるバランス性の劣化を回避できる。
【0034】
上記弾性表面波装置では、前記重み付け電極指と異なる位置に向かって、接地された第二バランス用電極指が上記重み付け電極指の長さに合わせて形成され、上記第二バランス用電極指と、重み付け電極指とに対面するように折れ曲がって形成されるダミー電極が設けられていてもよい。
【0035】
上記構成によれば、ダミー電極を設けることによって、良好なバランス性を維持しながら、伝送特性をさらに向上できる。
【0036】
本発明の他の弾性表面波装置は、前記の課題を解決するために、圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つのIDTを有する弾性表面波フィルタを少なくとも1つと、上記弾性表面波フィルタのための入力信号端子及び出力信号端子とを備えている弾性表面波装置であって、入力信号端子及び出力信号端子の少なくとも一方は平衡信号端子に接続されており、かつ、上記IDTにおける、最外電極指以外の電極指が、電極指の交叉幅を他の電極指と異ならせる交叉幅重み付けされていることを特徴としている。
【0037】
上記弾性表面波装置では、前記交叉幅重み付けは、電極指が他の電極指より短く設定されて施されていることが好ましい。前記交叉幅重み付けは、交叉方向の略中央部にて施されていてもよい。前記IDTには上記交叉幅重み付けされた電極指に対向するようにダミー電極が設けられていてもよい。上記ダミー電極は、アースに接続されていていてもよい。
【0038】
上記構成によれば、上記IDTにおける、最外電極指以外の電極指が、電極指の交叉幅を他の電極指と異ならせる交叉幅重み付けされているので、出力信号、特に平衡用の各出力信号間の各特性(振幅バランス、位相バランス、伝送特性)のバランスを調整できるので、各特性のバランス性を改善できる。
【0039】
上記弾性表面波装置においては、前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うIDTのうち少なくとも一方における、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指から数本の電極指に対して施されていてもよい。
【0040】
上記弾性表面波装置では、前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うIDTのうち少なくとも一方における、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指の近傍に位置する数本の電極指に対して施されていてもよい。
【0041】
上記弾性表面波装置においては、前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うIDTのうち少なくとも一方における、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指から上記IDTの弾性表面波の伝搬方向の1/2以内までの範囲の電極指に対して施されていてもよい。
【0042】
上記弾性表面波装置では、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うIDTの互いに隣り合う箇所の電極指がそれぞれアース電極指とシグナル電極指とであり、上記アース電極指及びシグナル電極指の少なくとも一方に対して前記重み付けが施されていてもよい。
【0043】
上記弾性表面波装置においては、前記重み付けされる電極指は、前記弾性表面波フィルタのシグナル電極指であってもよい。
【0044】
上記弾性表面波装置では、前記重み付けは、前記弾性表面波フィルタの平衡信号端子に接続されているIDTの電極指に施されていてもよい。
【0045】
上記弾性表面波装置においては、前記弾性表面波フィルタは、少なくとも1つのIDTを他のIDTに対して位相反転して有し、前記重み付けは、上記位相反転したIDTの電極指に対して施されていてもよい。
【0046】
本発明のさらに他の弾性表面波装置は、前記の課題を解決するために、圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された、それぞれ互いに隣り合う少なくとも3つのIDTを有する弾性表面波フィルタを少なくとも1つと、上記弾性表面波フィルタのための入力信号端子及び出力信号端子とを備えている弾性表面波装置であって、入力信号端子及び出力信号端子の少なくとも一方は平衡信号端子に接続されており、互いに隣り合うIDTの少なくとも一方において、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指のdutyを他の電極指と異ならせるduty重み付けが施されており、かつ、異なる互いに隣り合うIDTの少なくとも一方において、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指に対して間引き重み付けされていると共に、上記間引き重み付けされた箇所には、上記間引き重み付けされた電極指が接続されたバスバーと対向する対向バスバーに接続されたダミー電極が設けられていることを特徴としている。
【0047】
上記弾性表面波装置では、前記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていてもよい。
【0048】
上記弾性表面波装置においては、前記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−不平衡信号出力フィルタ機能、又は不平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていてもよい。
【0049】
上記弾性表面波装置においては、前記IDTの少なくとも1つは、交叉幅方向に2分割されていてもよい。
【0050】
上記弾性表面波装置では、前記の対となる平衡信号端子が、1つのIDTにおける両極のくし歯状電極にそれぞれ接続されていてもよい。
【0051】
上記弾性表面波装置においては、前記IDTの少なくとも1つは、弾性表面波の伝搬方向に2分割されていてもよい。
【0052】
上記弾性表面波装置では、前記の対となる平衡信号端子間に、接地された電気的中性点を有さないものであってもよい。
【0053】
上記弾性表面波装置においては、前記弾性表面波フィルタが、2つにて、平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていてもよい。
【0054】
上記弾性表面波装置では、前記弾性表面波フィルタが、2つ、入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせるように設けられ、上記各記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−不平衡信号出力フィルタ機能、又は不平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていてもよい。
【0055】
上記弾性表面波装置においては、不平衡信号端子側に、さらに弾性表面波フィルタがカスケード接続されていてもよい。
【0056】
上記弾性表面波装置では、前記弾性表面波フィルタは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタであってもよい。
【0057】
上記弾性表面波装置においては、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、奇数個のIDTを有していてもよい。
【0058】
上記弾性表面波装置では、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つのIDTを有していてもよい。
【0059】
上記弾性表面波装置においては、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、少なくとも1つのIDTの総電極指本数が偶数本であってもよい。
【0060】
上記弾性表面波装置では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つ又は3つ以上のIDTのうち、少なくとも平衡信号端子に接続されている、IDTの電極指の総本数が偶数本であってもよい。
【0061】
上記弾性表面波装置においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つ又は3つ以上のIDTのうち、少なくとも中央部に位置する、IDTの電極指の総本数が偶数本であってもよい。
【0062】
上記弾性表面波装置では、前記弾性表面波フィルタに、直列及び並列の少なくとも一方にて、弾性表面波共振子が少なくとも1つ接続されていてもよい。
【0063】
上記弾性表面波装置においては、前記弾性表面波フィルタは、2つ以上の弾性表面波フィルタ部をカスケード接続したものであってもよい。
【0064】
本発明の通信装置は、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の弾性表面波装置を用いたことを特徴としている。上記構成によれば、優れたバランス性を備えた弾性表面波装置を用いたので、通信性能を向上できる。
【0065】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の各形態について図1乃至図65に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0066】
(実施の第一形態)
本発明の実施の第一形態に係る弾性表面波装置は、図1に示すように、不平衡型−平衡型変換機能とフィルタ機能とを有するものであり、入力用のIDT1と、その両側(弾性表面波の伝搬方向に沿って)にそれぞれ配置された出力用の各IDT2、3と、さらにそれらの外側にそれぞれ配置された各反射器4とを、圧電基板8上に有している。なお、上記の入力と出力とは相互に入れ換え可能である。
【0067】
つまり、出力用の各IDT2、3は、それらの間に入力用のIDT1を挟むように配置されている。さらに、各反射器4は、それらの間にIDT2、IDT1及びIDT3を挟むように配置されており、伝搬してくる弾性表面波を反射するようになっている。上記圧電基板8は、例えば40±5°YcutX伝搬LiTaO3 からなるものである。
【0068】
IDT1、2、3は、帯状の基端部(バスバー)と、その基端部の一方の側部から直交する方向に延びる複数の、互いに平行で等間隔な帯状の各電極指とを備えた電極指部を2つ備えており、上記各電極指部の電極指の側部を互いに対面するように互いの電極指間に入り組んだ状態にて上記各電極指部を有するものである。
【0069】
このようなIDT1、2、3では、各電極指の長さや幅、隣り合う各電極指の間隔、互いの電極指間での入り組んだ状態の対面長さを示す交叉幅を、それぞれ設定することにより信号変換特性や、通過帯域の設定が可能となっている。本実施の第一形態では、IDT1の電極指の本数は39本に設定され、IDT2、3の電極指の本数が23本に設定されている。
【0070】
また、上記の各電極指やバスバーや、各反射器4は、フォトリソグラフィー法等により圧電基板8上に形成された、例えばアルミニウム(Al)電極(箔)によって形成されている。
【0071】
そして、本実施の第一形態では、不平衡型信号を入力して、平衡型信号を出力するために、入力用のIDT1においては、不平衡用の入力端子5に接続された各シグナル電極指11と、接地された各アース電極指12が前述したように互いに入り組んだ状態にて設けられている。
【0072】
また、上記IDT1では、弾性表面波の伝搬方向での両端部にある、最外電極指が、それぞれアース電極指となるようにアース電極指12は設定されている。上記最外電極指は、IDT2、3の各最外電極指の一方とそれぞれ対面する位置にある。
【0073】
一方、IDT2においては、各アース電極指21と、平衡用の出力端子6に接続されたシグナル電極指22とが前述したように互いに入り組んだ状態にて設けられている。また、各アース電極指21につながるバスバー23は、入力用のIDT1の各シグナル電極指11につながるバスバー13に対しほぼ直線状となるように配置されている。また、IDT2では、弾性表面波の伝搬方向での両端部の各電極指となる各最外電極指がそれぞれアース電極指21となっている。
【0074】
IDT3では、各アース電極指31と、平衡用の出力端子7に接続されたシグナル電極指32とが前述した互いに入り組んだ状態にて設けられている。各アース電極指31につながるバスバー33は、入力用のIDT1の各シグナル電極指11につながるバスバー13に対しほぼ直線状となるように配置されている。
【0075】
また、IDT1の各アース電極指12のバスバー14は、IDT2の各シグナル電極指22のバスバー24と、IDT3の各シグナル電極指32のバスバー34とをそれぞれ直線状となるように設定されている。
【0076】
さらに、本実施の第一形態では、出力用の各IDT2、3は、構造上において互いに反転して設けられている。つまり、IDT2においては、IDT1に近い方から、アース電極指より始まり、シグナル電極指、アース電極指と、交互に設定されている一方、IDT3では、IDT1に近い方から、シグナル電極指より始まり、アース電極指、シグナル電極指と、交互に設定されしている。
【0077】
これにより、本実施の第一形態においては、各IDT2、3間での振幅差が0、位相差が180°に近くなるように設定されているので、平衡−不平衡変換機能を発揮できることになる。
【0078】
そして、本実施の第一形態では、IDT1と、IDT3とが隣り合う箇所において、IDT3の最外電極指が間引き重み付けされている。間引き重み付けされた電極指の位置には、接地されたダミー電極31aが形成されている。これにより、IDT1と、IDT3との間の近傍となるIDT3では、アース電極指が、ダミー電極31a及びアース電極指31bというように2本連続で並ぶようになっている。
【0079】
さらに、本実施の第一形態では、出力用のIDT2におけるシグナル電極指22のうち入力用のIDT1に近い側(最外電極指)のアース電極指21の次となるシグナル電極指22の位置に交叉重み付け電極指22aを設定した。上記交叉重み付け電極指22aでは、交叉重み付け電極指22aの長さが、他のシグナル電極指22の長さに対して、例えば約半分に、つまり交叉幅を調節した交叉重み付となるように設定されている。
【0080】
その上、短く設定された重み付け電極指22aにより生じた空間をうめるように、接地されているバスバー23から延びる、オフセット電極指である帯状のダミー電極(第一バランス用電極指)21aが形成されている。ダミー電極21aは、互いに隣り合う各アース電極指21に対し等間隔にてほぼ平行に、交叉重み付け電極指22aの先端部に向かって延びている。
【0081】
次に、本実施の第一形態の作用・効果について説明する、まず、比較として、図2に、上記の間引き重み付け、及び交叉重み付けを行っていない、第一比較例の平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置の各IDTの概略構成図を示す。第一比較例の構成では、IDT1とIDT40との隣り合う箇所にはアース電極同士が並ぶのに対し、IDT1とIDT41との間には、シグナル電極とアース電極とが並んでいた。よって、IDT1とIDT40との間には、電気と弾性表面波の変換が行われない無電界部9が存在するのに対し、IDT1とIDT41との間では、電気信号(シグナル)と弾性表面波との間の変換が行われる。そのため平衡信号端子6、7から出力される信号の周波数や振幅レベルが異なり、さらに位相も完全に180度反転されず、結果、平衡信号端子間の平衡度が悪くなっていた。
【0082】
本実施の第一形態では、まず、第一比較例に示したシグナル電極とアース電極が並んでいたIDT1、IDT41が互いに隣り合う箇所の電極指を、図3に示すように、間引き重み付けし、さらに間引き重み付けされた電極指の位置に、ダミー電極31aを形成した。つまり、IDT1とIDT3との間の近傍のIDT3には、2本のアース電極指が並ぶようにした。これにより、IDT1とIDT3との間、IDT1とIDT40との間の電気信号と弾性表面波との間での変換効率の差が是正され、平衡信号端子6、7間の平衡度が改善された弾性表面波装置が得られる。
【0083】
さらに、ダミー電極31aを形成することで、弾性表面波がバルク波に変換されることによる損失の増加を防ぎ、通過帯域内の挿入損失の良好な弾性表面波装置が得られる。また、ダミー電極31aは接地せずに浮き電極としてもよいが、浮き電極は平衡信号端子6、7間の平衡度が悪化する原因となるので、接地しておいた方が良い。
【0084】
しかし、図3の構成では、間引き重み付けを行うことにより、無電界部9がIDT1とIDT40とが並ぶ側より、IDT1とIDT3とが並ぶ側の方が大きくなってしまう。これではまだ、十分な平衡信号端子6、7間の平衡度が得られない。そこで、図4に示すように、IDT1とIDT2とが並ぶ側のシグナル電極指22に交叉幅重み付けを施した交叉重み付け電極指22aを設定し、さらにダミー電極21aを設けた。これによりIDT1とIDT2との間の境界部X1 、及び、IDT1とIDT3との間の境界部X2 における各無電界部9、9の大きさが互いに略一致し、平衡信号端子間の平衡度がさらに改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0085】
さらにダミー電極21aを形成することで、弾性表面波がバルク波に変換されることによる損失の増加を防ぎ、通過帯域内の挿入損失の良好な、弾性表面波装置が得られる。
【0086】
このような接地されたダミー電極21a、31aは、互いに隣り合う各アース電極指21、31bとの間で無電界部9をそれぞれ形成しており、後述するように上記各無電界部9の形成領域(容量の形成領域)の大きさを制御できるようになっている。
【0087】
以上説明したような交叉重み付けは、シグナル電極に施す方が少ない重み付けで無電界部を調整できるので効率的であるが、もちろんアース電極に重み付けされていてもよい。
【0088】
また、重み付けは本実施の第一形態においては入力用のIDT1と出力用のIDT2、3が互いに隣り合う箇所の電極指、及び、その電極指から2本目の電極指で行ったが、これはIDTのどの部分で行ってもよい。しかし、IDTが隣り合う電極指の極性の差によって影響が大きい、通過帯域の最も高周波側にある共振モード(図72のCの共振モード)は、図72(b)で示すようにIDTが隣り合う箇所において電流の分布が大きいので、図4に示すように、各IDT1、2が互いに隣り合う箇所から、IDT2における弾性表面波の伝搬方向長さaの1/2の範囲内までで行うのが、効果的である。
【0089】
また、交叉幅重み付けは、実施の第一形態では、シグナル電極指22を略中央部まで短くした交叉重み付け電極指22aを設定することにより実施されているが、交叉幅重み付けの量は、必要に応じて調整すればよい。例えば、IDT1側のシグナル電極指22に約1/4の交叉幅重み付けを行い、さらに、次のシグナル電極指22にも約1/4の交叉幅重み付けを実施しても、同様な効果が得られる。
【0090】
図5に、本実施の第一形態の構成での周波数に対する平衡信号端子6、7間の振幅平衡度、図6に位相平衡度を示す。また比較として、図2に示した第一比較例の構成における周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度を図7に、位相平衡度を図8に示す。EGSM送信用フィルタの通過帯域の周波数範囲は880MHz〜915MHzである。
【0091】
この範囲での周波数に対する平衡信号端子6、7間の振幅平衡度は、第一比較例では−1.6dB〜+1.5dB(偏差3.1dB、偏差が小さければ、振幅平衡度は良い)であるのに対し、本実施の第一形態では−0.7dB〜+1.2dB(偏差1.9dB)と、約1.2dB改善されている。平衡信号端子6、7間の位相平衡度は第一比較例では172度〜189度(偏差17度、偏差が小さければ、位相平衡度は良い)であるのに対し、本実施の第一形態では178度〜184度(偏差6度)と、約11度改善されている。
【0092】
以上説明したように本実施の第一形態では、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いて平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置の構成に重み付けを施すことで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子6、7間の平衡度が改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0093】
本実施の第一形態では、3つのIDTを有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタを1つ用いる構成で説明したが、本発明はこの構成に限らず、平衡信号端子6、7を有する弾性表面波フィルタを用いた弾性表面波装置であれば、どのような構成においても、同様な効果が得られる。
【0094】
例えば図9は、5つのIDTを有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いた平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置であるが(平衡信号端子401、402、不平衡信号端子403)、このように3つ以上のIDTを有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いた構成や、2つのIDTを有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いた構成においても、本発明の効果は得られる。もちろん、縦結合共振子型弾性表面波フィルタだけに限らず、トランスバーサル型の弾性表面波フィルタや、横結合共振子型弾性表面波フィルタを用いた弾性表面波装置においても、同様に効果が得られる。
【0095】
また本実施の第一形態では、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置で説明したが、例えば図10(平衡信号端子501と平衡信号端子502とが対、平衡信号端子503と平衡信号端子504とが対となっている)や図11(平衡信号端子601と平衡信号端子602とが対、平衡信号端子603と平衡信号端子604とが対となっている)に示した、平衡信号入力−平衡信号出力の弾性表面波装置においても、本発明の効果は得られる。
【0096】
また、本実施の第一形態では、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いて平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置を構成する例で説明したが、本発明はこの構成だけではなく、あらゆる平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置において、効果が得られる。
【0097】
例えば図12のように、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおける1つのIDTの両極のくし歯状電極にそれぞれ平衡信号端子701、702が接続され(703が不平衡信号端子)、アースに接地された電気的中性点を有さない構成、さらに図13のように、いずれかのIDTが交叉幅方向に分割され、インピーダンスが変更された構成(801、802が平衡信号端子、803が不平衡信号端子)、さらに図14のように、弾性表面波の伝搬方向に分割され、分割したくし歯状電極のそれぞれに平衡信号端子901、902を接続する構成(903が不平衡信号端子)においても、本発明の効果は得られる。
【0098】
その際、図15に示すように、不平衡信号端子1003を左右のIDTにおいてそれぞれ別方向のくし歯状電極に接続することで、さらに通過帯域外の減衰量が改善された、弾性表面波装置が得られる(1001、1002が平衡信号端子)。
【0099】
さらに、複数の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを組み合わせて、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置の構成においても、本発明の効果は得られる。
【0100】
例えば図16のように、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1104に対して縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1105の入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせ、かつ、平衡信号端子1101、1102につながるIDTを直列接続、不平衡信号端子1103につながるIDTを並列接続して、平衡−不平衡変換機能を備えた弾性表面波装置の構成、さらに図17のように図16の構成に1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1201をカスケード接続した構成、また、図18のように、図68の構成に重み付けを施しても、本発明の効果は得られる。
【0101】
このように、さらに縦結合共振子型弾性表面波フィルタをカスケード接続する構成では、平衡信号端子間の平衡度が改善されるだけではなく、通過帯域外の減衰量が大きい弾性表面波装置が得られる。その際、図19のように、カスケード接続しているそれぞれ2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを接続している各シグナルライン1301、1302を伝送する電気信号の位相が互いに約180度異なるように、各IDT1303、1304を互いに反転させ、同様に、各シグナルライン1305、1306を伝送する電気信号の位相が互いに約180度異なるように、各IDT1307、1308を互いに反転させることで、さらに平衡信号端子間の平衡度を改善した、弾性表面波装置が得られる。
【0102】
さらに図20のように、図12の弾性表面波装置にさらに1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1401をカスケード接続した構成でも、本発明の効果は得られる。この構成では、平衡信号端子間の平衡度が改善されるだけではなく、通過帯域外の減衰量が大きい弾性表面波装置が得られる。このとき図21のように、図19の構成と同様に各シグナルライン1501、1502を伝送する電気信号の位相が互いに約180度異なるように各IDT1503、1504を互いに反転させることで、さらに平衡信号端子間の平衡度を改善した、弾性表面波装置が得られる。
【0103】
また、2つ以上の縦結合共振子型弾性表面波フィルタをカスケード接続する場合は、特に同じ構成の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いる必要はなく、例えば入出力でインピーダンスを調整したい場合は交叉幅を調整する、或いは、通過帯域外の減衰量を大きくしたい場合はIDTの対数や隣り合うIDT同士の中心間距離、IDTと反射器の中心間距離を異ならせるなど、各弾性表面波フィルタで設計を異ならせてもよい。
【0104】
また、本実施の第一形態では、いずれの縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいても、各IDTの電極指総本数を奇数本としたが、これは偶数本であってもよく、特に図22のように、3つあるIDTの中央部に位置し、さらに平衡信号端子に接続されるIDTの電極指の総本数を偶数本とすることでも、本発明の効果が得られる。
【0105】
この場合、縦結合共振子型弾性表面波フィルタの中心に対して左右の対称性が向上し、さらに平衡信号端子に接続されている電極指の本数が等しくなるので、より平衡信号端子間の平衡度が改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0106】
また図23に示すように、弾性表面波共振子1601、1602を直列接続した構成や、図示しないが弾性表面波共振子を並列接続した構成、あるいはその両方を接続した構成においても、本発明の効果は得られる。この構成の場合、平衡信号端子間の平衡度が改善されるだけではなく、特に通過帯域近傍の減衰量が大きい弾性表面波装置が得られる。
【0107】
(実施の第二形態)
本実施の第二形態について、図24乃至図28に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施の第二形態においては、図1にて示した弾性表面波装置と同様な機能を有する部材については同一の部材番号を付与してその説明を省いた。
【0108】
本実施の第二形態に係る弾性表面波装置では、重み付けの方法として、図24に示すように、上記実施の第一形態での、間引き重み付け及び交叉幅での交叉重み付けに代えて、直列重み付けが用いられている。つまり、上記実施の第一形態に記載のIDT2に代えて、IDT25が設けられている。
【0109】
IDT25では、前述のIDT2のダミー電極21aに代えて、交叉重み付け電極指22aの内側の(次の)アース電極指21を交叉重み付け電極指22aと同様に短くした交叉重み付け電極指(第二バランス用電極指)21bが設けられ、さらに、上記両者と離間(つまり浮いた状態)しているダミー電極25aが設けられている。
【0110】
上記ダミー電極25aは、交叉重み付け電極指22aと同幅にて、交叉重み付け電極指22aと次のシグナル電極指22との間を、それらとほぼ平行に延び、続いて、交叉重み付け電極指22aの先端部と交叉重み付け電極指21bの先端部との間を通り、さらに、交叉重み付け電極指21bと最外のアース電極指21との間を、それらとほぼ平行に延びるように折れ曲がって形成される電極指である。
【0111】
このようなIDT25を有する弾性表面波装置について、通過帯域近傍の、振幅平衡度及び位相平衡度をそれぞれ測定した。それらの結果を図25及び図26にそれぞれ示した。それらの結果から明らかなように、EGSM送信用フィルタの通過帯域の範囲における周波数−平衡信号端子間の振幅平衡度は−0.7dB〜+1.2dB(偏差1.9dB)と実施の第一形態と同じであるが、平衡信号端子間の位相平衡度は177度〜182度(偏差5度)と、実施の第一形態よりもさらに1度改善されている。
【0112】
さらに、実施の第一形態における周波数に対する通過帯域内の伝送特性を図27に示し、実施の第二形態における周波数に対する通過帯域内の伝送特性を図28に示した。上記両者を比較すると、実施の第一形態では通過帯域内にリップルA(図27参照)が発生しているが、実施の第二形態においては、上記リップルAが発生しておらず(図28参照)、実施の第一形態よりも通過帯域内の偏差が小さい弾性表面波装置が得られている。
【0113】
以上説明したように、交叉幅重み付けをさらに拡張した直列重み付けを実施することで、さらに平衡信号端子間の平衡度、および通過帯域内の偏差が改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0114】
その上、本実施の第二形態では、前記実施の第一形態と比べても、伝送特性においてリップルの発生が抑制されており、より優れた伝送特性を有していることが判る。
【0115】
(実施の第三形態)
本発明の実施の第三形態について図29乃至図32に基づいて説明すれば、以下の通りである。図29に、本発明の実施の第一形態に係る構成を示す。なお、本実施の第三形態では、PCS受信用フィルタを例にとって説明を行う。
【0116】
本実施の第三形態の弾性表面波装置では、圧電基板200上に、3IDTの縦結合共振子型の弾性表面波フィルタ201と、弾性表面波フィルタ201に直列接続された各弾性表面波共振子202、203とがフォトリソグラフィー法等により形成されたアルミニウム(Al)電極(箔)によって形成されている。上記圧電基板200の素材としては、40±5°YcutX伝搬LiTaO3 が挙げられる。このような弾性表面波フィルタ201は、前述の図10に示したものとほぼ同一のものである。
【0117】
弾性表面波フィルタ201においては、中心となり、平衡信号端子側となるIDT205を左右から挟み込むように(弾性表面波の伝搬方向に沿って)各IDT204、206がそれぞれ形成されている。さらに、各IDT204、206の両外側(弾性表面波の伝搬方向に沿って)に、上記各IDT204〜206からの弾性表面波を反射する各反射器207、208がそれぞれ形成されている。つまり、各IDTや反射器は、各電極指の幅方向が弾性表面波の伝搬方向に沿うように、かつ、上記弾性表面波の伝搬路上に設定されている。
【0118】
さらに、弾性表面波フィルタ201では、図29から明らかなように、IDT204とIDT205とが互いに隣り合う箇所およびそれらの近傍、並びにIDT205とIDT206とが互いに隣り合う箇所およびそれらの近傍の、数本の電極指(狭ピッチ電極指)のピッチを、前述と同様に、上記各IDTの他の部分よりも小さくなるように設定している(図29の213と214の箇所)。
【0119】
上記弾性表面波装置においては、各端子210、211が平衡信号端子、端子209が不平衡信号端子である。よって、IDT204、IDT206は、不平衡信号側となり、それぞれ、シグナル電極指204aおよびアース電極指204b、シグナル電極指206aおよびアース電極指206bを備えている。一方、IDT205は、平衡信号端子側となり、各シグナル電極指205a、205bを備えていることになる。よって、本実施の第三形態は、アースに接地された電気的中性点を有さない構成に重み付けを施した例である。
【0120】
各弾性表面波共振子202、203は、シグナルライン212を介して、不平衡信号端子209と各IDT204、206の間に直列接続されている。弾性表面波共振子202は、IDT202aと、それを挟むように弾性表面波の伝搬方向に沿って各反射器202b、202cとを有している。弾性表面波共振子203は、IDT203aと、それを挟むように弾性表面波の伝搬方向に沿って各反射器203b、203cとを有している。
【0121】
本実施の第三形態の特徴は、IDT205とIDT206とが互いに隣り合って、弾性表面波の伝搬方向にて対面している箇所における、IDT206の電極指219の箇所にて間引き重み付けされている点である。
【0122】
本実施の第三形態では、上記間引き重み付けとして、IDT206のシグナル電極指206aにおける、IDT205に隣り合う箇所(最も近い方)の電極指が間引き重み付けされている。
【0123】
かつ、本実施の第三形態では、各電極指のピッチを確保して、互いに隣り合う各IDT、つまり、各IDT205、206の間の間隔を維持するために、アース電極指206bに電極指219が、狭ピッチ側のアース電極指206bと同じ交叉幅、同ピッチ、同duty、および同じ線幅にて設けられている。これにより、IDT206では、IDT205に隣り合う箇所にて、アース電極指206bが複数、例えば2本、互いに隣り合って存在することになる。
【0124】
弾性表面波フィルタ201の詳細な設計は、狭ピッチ電極指のピッチで決まる波長をλI2 (図29の213、214の箇所)、その他の電極指のピッチで決まる波長をλI1 とすると、
交叉幅W:60.6λI1
IDT本数(204、205、206の順):29(4)/(4)44(4)/(4)29本(カッコ内はピッチを小さくした電極指の本数)
IDT波長λI1:2.06μm、λI2:1.88μm
反射器波長λR:2.07μm
反射器本数:100本
IDT−IDT間隔:0.50λI2
波長λI1と波長λI2との各電極指にて挟まれた箇所の間隔(図29の215、216、217、218):0.25λI1+0.25λI2
IDT−反射器間隔:0.47λR
duty:0.60(IDT、反射器共)
電極膜厚:0.080λI1
弾性表面波共振子202の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅W:40.6λ
IDT本数:241本
波長λ(IDT、反射器共):1.97μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λ
duty:0.60(IDT、反射器共)
電極膜厚:0.084λ
弾性表面波共振子203の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅W:49.1λ
IDT本数:401本
波長λ(IDT、反射器共):2.04μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λ
duty:0.60(IDT、反射器共)
電極膜厚:0.080λ
上記の「間隔」とは、互いに隣り合う2本の電極指の中心(幅方向での中心)間距離のことである。
【0125】
次に、本実施の第三形態の各特性を測定し、それらの結果を図30および図31に示す。本実施の第三形態の構成における、周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度の測定結果を示すグラフを図30に、位相平衡度のグラフを図31に示す。
【0126】
比較として、図32に示す、2つのIDTが隣り合っている箇所において間引き重み付けが施されていないIDT206cを、IDT206に代えて有する、第二比較例の構成での振幅平衡度、位相平衡度も図30及び図31に合わせて示す。
【0127】
図32の第二比較例の構成は、実施の第三形態に対して、間引き重み付けを施していないIDT206cをIDT206に代えて有する以外は全く同じ構成である。PCS受信用フィルタにおける通過帯域の周波数範囲は1930MHz〜1990MHzである。
【0128】
この範囲での最大の振幅平衡度は、第二比較例では、−1.6dB〜+0.7dB(偏差2.3dB)であるのに対し、実施の第三形態では−1.5dB〜+0.7dB(偏差2.2dB)と、約0.1dB振幅平衡度が改善している。次に位相平衡度は、第二比較例では、162度〜182度(偏差20度)であるのに対し、実施の第三形態では162度〜181度(偏差19度)と、約1度位相平衡度が改善している。
【0129】
これは間引き重み付けを施すことで、IDT205とIDT206とが互いに隣り合う箇所での電極指の極性が、第二比較例では+と+でどちらもシグナル電極指であったのが、本実施の第三形態では、IDT204とIDT205とが互いに隣り合う箇所の極性と同じ−と+となり、左右の非対称性が改善された効果である。
【0130】
以上説明したように、本実施の第三形態では、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタにおいて、2つのIDTが互いに隣り合う箇所の電極指を間引き重み付けすることで、従来の弾性表面波フィルタよりも平衡信号端子間の平衡度が改善された弾性表面波フィルタが得られる。
【0131】
(実施の第四形態)
本発明の実施の第四形態を図33乃至図41に基づいて説明する。実施の第四形態では、EGSM受信用フィルタを例にとって説明を行っていく。
【0132】
実施の第四形態に係る弾性表面波装置は、図18に示した、入力信号に対する出力信号の位相が約180度相異なる2つの各縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920を平衡信号端子1906、1907側は直列接続、不平衡信号端子1905側は並列接続して平衡−不平衡変換機能を持たせ、さらに、2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920それぞれに1つずつの新たな縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1918をカスケード接続した構成とし、上記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1920に、間引き重み付けを施し、ダミー電極1901bを有している例である。
【0133】
実施の第四形態では、圧電基板8上に4つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920がAl電極により形成されている。4つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920は、入力信号に対する出力信号の位相が約180度異なる点、及び重み付けされている点以外は、すべて同じ設計である。また、実施の第四形態では実施の第三形態と同様に、2つのIDTが隣り合う間に、数本狭ピッチ電極指が設けられている。実施の第四形態の構成は、重み付けの点以外、基本的には図68に示した第二従来例の構成と同じである。
【0134】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918の詳細な設計は、狭ピッチ電極指のピッチで決まる波長をλI2 、その他の電極指のピッチで決まる波長をλI1 とすると、
交叉幅:25.2λI1
IDT本数(1902、1901、1903の順):23(4)/(4)26(4)/23(4)本(カッコ内はピッチを狭くした電極指の本数)
IDT波長λI1 :4.204μm、λI2 :3.854μm
反射器波長λR:4.279μm
反射器本数:90本
IDT−IDT間隔:
波長λI1 と波長λI2 の電極指に挟まれた箇所:0.25λI1 +0.25λI2
波長λI2 の電極指に挟まれた箇所:0.50λI2
IDT−反射器間隔:0.470λR
IDTduty:0.720
反射器duty:0.55
電極膜厚:0.08λI1 である。
【0135】
実施の第四形態の特徴は、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918に対して縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1920の入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせるために反転させたIDT1901aの両端に位置し、不平衡信号端子1905と接続された電極指の片方が間引かれてその部分にアースに接続されたダミー電極1901bを設けている点である。
【0136】
次に、本実施の第四形態の作用・効果について説明する。図34に、実施の第四形態の構成での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度を示す。比較として、図68の第二従来例での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度も図34に示す。図68の第二従来例の構成は実施の第四形態に対して、間引き重み付けを施していない以外は、全く同じ構成である。EGSM受信用フィルタにおける通過帯域の周波数範囲は925MHz〜960MHzである。
【0137】
この範囲での平衡信号端子間の振幅平衡度は、第二従来例では−0.2dB〜+1.3dB(偏差1.5dB)であるのに対し、実施の第四形態では−0.7dB〜+0.2dB(偏差0.9dB)と、約0.6dB振幅平衡度が改善している。
【0138】
以下に、実施の第四形態の効果が得られた理由を説明する。弾性表面波の励振は、極性の異なる電極指が隣接する場合に、その電極指問で行われる。図35に、図68に記載の各弾性表面波フィルタ118、127における、IDT同士が隣接する周辺(図68で○で囲った部分)での弾性表面波の励振状態について図示する。
【0139】
図35では、それぞれIDTが隣接する部分の端から3本の電極指のみを示し、その他については省略している。図68の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ118、127は、図35では縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007、2008に、図68のIDT113、114、115は、図35においてはIDT2001、2002、2003に、図68のIDT133,134、135は、図35のIDT2004、2005、2006にそれぞれ対応している。図中で○をつけている部分では、弾性表面波が励振され、×をつけている部分では、弾性表面波は励振されないことを示す。
【0140】
第二従来例の場合、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007において、IDT2001、2002、2003それぞれの最外電極指はアース電極であるため、それぞれの隣接する電極指間では弾性表面波の励振は行われない。
【0141】
一方、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2008においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007のIDT2001と向きを反転させたIDT2004によって、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007との入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせているため、IDT2004の最外電極指はシグナル電極であり、IDT2005、2006の最外電極指はアース電極である。
【0142】
そのため、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2008においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007の場合とは異なり、それぞれの隣接する電極指間においても弾性表面波の励振が行われ、全体で比較すると、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007に比べて、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2008では弾性表面波の励振が行われる箇所が2箇所多くなる。
【0143】
これにより、第二従来例においては、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2007と縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2008とで、隣接する電極指間隔部における弾性表面波の有効電流の強度分布が異なり、その結果、図72に示す3つの共振モードのうち、中央に位置する共振モードと最も高域側に位置する共振モードの間隔が異なり、平衡信号端子間の平衡度が悪化していた。
【0144】
次に、図36に、図33に示す縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920における、IDT同士が隣接する周辺(図中で○で囲った部分)での弾性表面波の励振状態について図示する。図36においても図35と同様に、それぞれIDTが隣接する部分の端から3本の電極指のみを示し、その他については省略している。
【0145】
図33における縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918、1920は、図36の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2107、2108に、また、図33における縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1918のIDT1902、1901、1903は、図36のIDT2102、2101、2103に、図33における縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1920のIDT1901a、1902、1903は、図36のIDT2104、2105、2106にそれぞれ対応している。
【0146】
実施の第四形態の場合には、入力側に接続されたIDTの向きを反転することで、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2107と入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせた縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2108において、IDT2104の最外電極指を間引き重み付けし、その部分にダミーの電極2109(図33のダミー電極1901b)を設け、アースに接続している。
【0147】
このため、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2108では、一方の2つのIDTが隣接する部分2110において、シグナル電極指とアース電極指が交互に並ぶため弾性表面波が励振されるのに対し、もう一方の2つのIDTが隣接する部分2111において、アース電極指が3本並ぶために弾性表面波が励振されない部分が2箇所発生する。
【0148】
その結果、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2107と縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2108において、電極指間で弾性表面波が励振されない箇所の総数、すなわち電極指間で弾性表面波が励振される箇所の総数が等しくなるため、第二従来例と比較して共振モードの間隔の差が小さくなり、平衡信号端子間での振幅平衡度が改善される。
【0149】
例えば、図37に示すような縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2201を2段縦続に接続した第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2202と、第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2202に対して2段目の出力側に接続される縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2201aのIDT2203の向きを反転することで、第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2202とは入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせた第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2204とを有し、1段目の各縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2201における中央のIDTを並列に接続し不平衡信号端子2205を、2段目の各縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2201、2201aの中央のIDTを直列に接続し平衡信号端子2206を構成した場合がある。
【0150】
上記場合でも、IDT2203の最外電極指を間引き重み付けして、その部分にダミー電極2207を設けアースに接続することで、出力側の縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおける2つのIDTが隣接する周辺(図37中の○で囲った部分)での弾性表面波の励振状態は図38のようになり、第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2202と第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2204において、電極指間で弾性表面波が励振されない箇所の総数、すなわち電極指間で弾性表面波が励振される箇所の総数が互いに等しくなるため、平衡信号端子間の振幅平衡度が改善される。
【0151】
また、図39に示すように、2段目の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの中央IDTではなく、外側のIDTの向きを反転することで入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせる場合もある。
【0152】
上記場合においても、向きを反転させたIDT2301の片方のIDTの最外電極指を間引き重み付けして、その部分にダミーの電極指2302を設けてアースに接続することで、出力側の縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおける2つのIDTが隣接する周辺(図39の○で囲った部分)での弾性表面波の励振状態は、図40に示すように、第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2303と第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2304とにおいて、電極指間で弾性表面波が励振されない箇所の総数、すなわち電極指間で弾性表面波が励振される箇所の総数が互いに等しくなるため、平衡信号端子間での振幅平衡度が改善される。
【0153】
また、図41に示すように、図33における3IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタの代わりに5IDTタイプの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いて構成した場合においても、向きを反転させたIDT2401のIDTの片側の最外電極指を間引き重み付けして、その部分にダミーの電極指2402を設けてアースと接続することで、第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2403と第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2404において、電極指間で弾性表面波が励振されない箇所の総数、すなわち電極指間で弾性表面波が励振される箇所の総数が互いに等しくなるため、平衡信号端子間での振幅平衡度が改善される。
【0154】
以上、説明したように実施の第四形態では、入力信号に対する出力信号の位相が約180度異なる2つの弾性表面波フィルタを平衡信号端子側は直列接続、不平衡信号端子側は並列接続して平衡−不平衡変換機能を持たせ、さらに2つの弾性表面波フィルタそれぞれに1つずつの弾性表面波フィルタをカスケード接続した構成に間引き重み付けを施すことで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子間の平衡度が改善された弾性表面波装置が得られる。
【0155】
(実施の第五形態)
本発明の実施の第五形態を図42乃至図46に基づいて説明する。本実施の第五形態では、DCS受信用フィルタを例にとって説明を行っていく。
【0156】
実施の第五形態は図16に示した、入力信号に対する出力信号の位相が約180度異なる2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを平衡信号端子側は直列接続、不平衡信号端子側は並列接続して平衡−不平衡変換機能を持たせた構成に、重み付けを施した例である。
【0157】
実施の第五形態では、前述の圧電基板8上に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2501と、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2501に直列接続された弾性表面波共振子2502と2503が、Al電極により形成されている。2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、入力信号に対する出力信号の位相が約180度異なる以外は、すべて同じ設計である。また、実施の第五形態では実施の第三形態と同様に、2つのIDTが隣り合う間に、数本の狭ピッチ電極指が設けられている。
【0158】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタの詳細な設計は、狭ピッチ電極指のピッチで決まる波長をλI2 、その他の電極指のピッチで決まる波長をλI1 とすると、
交叉幅:37.12λI1
IDT本数(2504、2505、2506の順):(4)19/(4)31(4)/19(4)本(カッコ内はピッチを狭くした電極指の本数)
IDT波長λI1 :2.156μm、λI2 :1.926μm
反射器波長λR:2.177μm
反射器本数:150本
IDT−IDT間隔:波長λI1 とλI2 の電極指に挟まれた箇所:0.25λI1 +0.25λI2 、波長λI2 の電極指に挟まれた箇所:0.50λI2
IDT−反射器間隔:0.50λR
IDTduty:0.63
反射器duty:0.60
電極膜厚:0.09λI1
弾性表面波共振子2502の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅:14.3λI
IDT本数:241本
IDT波長および反射器波長:2.102μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λR
弾性表面波共振子2503の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅:37.1λI
IDT本数:241本
IDT波長および反射器波長:2.023μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λRである。
【0159】
実施の第五形態の特徴は、弾性表面波フィルタ2507に対して弾性表面波フィルタ2508の入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせるために反転させた、IDT2509の端に位置するシグナル電極指の片方が間引かれて、その部分にアースに接続されたダミー電極2510を設けており、さらにダミー電極2510を介して3つの各IDTのアース電極を共通化している点である。
【0160】
次に、本実施の第五形態の作用・効果について説明する。まず、図43に実施の第五形態の構成での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度を示す。比較として図44に示す、第三比較例での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度も図43に合わせて示す。図44の第三比較例の構成は実施の第五形態に対して、間引き重み付けを施していない以外は、全く同じ構成である。
【0161】
DCS受信用フィルタにおける通過帯域の周波数範囲は1805MHz〜1880MHzである。この範囲での平衡信号端子間の振幅平衡度は、第三比較例では、−1.0dB〜+3.2dB(偏差4.2dB)であるのに対し、実施の第五形態では−0.5dB〜+1.5dB(偏差2.0dB)と、約2.2dB振幅平衡度が改善している。
【0162】
実施の第五形態の効果が得られた理由を説明すると、図44に示す第三比較例では図45に示すように、IDT同士が隣接する周辺(図44の○で囲った部分)での弾性表面波が励振される箇所の数が第1の弾性表面波フィルタ2601と第2の弾性表面波フィルタ2602とで異なるのに対し、実施の第五形態の場合には、図46に示すように、IDT同士が隣接する周辺(図42の○で囲った部分)での弾性表面波が励振される箇所の数が第1の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2511と第2の弾性表面波フィルタ2512とで同じになる。このために、図72に示す3つの共振モードのうちにおける、帯域中央に見られる共振モードと帯域高域側に見られる共振モードの間隔が、2つの平衡信号端子から出力される信号間で、第三比較例より一致したためである。
【0163】
以上の様に実施の第五形態では、入力信号に対する出力信号の位相が約180度異なる2つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタを平衡信号端子側は直列接続、不平衡信号端子側は並列接続して平衡−不平衡変換機能を持たせた構成に間引き重み付けを施すことで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子間の平衡度が改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0164】
さらに間引かれた位置に設けられたダミー電極2510も含めて3つの各IDTのアースを共通化することで、弾性表面波装置のアースが強化され、通過帯域内の挿入損失や通過帯域外の減衰量が改善される。さらに、中央部のIDTのアース端子を省略することも可能となる。
【0165】
(実施の第六形態)
本発明に係る実施の第六形態を図47乃至図54に基づいて説明する。本実施の第六形態では、DCS受信用フィルタを例にとって説明を行っていく。
【0166】
実施の第六形態は実施の第三形態と同じく、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701における1つのIDT2704の両極となるくし歯状電極にそれぞれ平衡信号端子2711、2712が接続され、各平衡信号端子2711、2712においては、アースに接地された電気的中性点を有さない構成に重み付けを施した例である。
【0167】
実施の第六形態では、前述した圧電基板8上に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701と、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701に直列接続された弾性表面波共振子2702と2703がAl電極により形成されている。
【0168】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701の構成は、IDT2704の左右にIDT2705、2706を配置し、これらのIDTを挟み込むように、反射器2707、2708が形成されている。
【0169】
実施の第六形態では実施の第三形態と同様に、2つのIDTが隣り合う間に、数本の狭ピッチ電極指が設けられている(図47の2709と2710の箇所)。端子2711と2712は平衡信号端子、2713は不平衡信号端子である。図48に、図47のIDT2704と2705の間を拡大した図を示す。
【0170】
平衡信号端子2711に接続されたIDT2704の最外電極指2704aが交叉幅重み付けされ、さらに重み付けされて、削除された箇所にダミー電極2705aが設けられ、アースに接続されている。
【0171】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701の詳細な設計は、狭ピッチ電極指のピッチで決まる波長をλI2、その他の電極指のピッチで決まる波長をλI1とすると、
交叉幅:交叉幅重み付けしない部分(図48の2805):71.2λI1
交叉幅重み付けした部分(図48の2806):35.6λI1
IDT本数(2705、2704、2706の順):21(4)/(4)35(4)/(4)21本(カッコ内はピッチを小さくした電極指の本数)
IDT波長λI1:2.18μm、λI2:1.96μm
反射器波長λR:2.18μm
反射器本数:150本
IDT−IDT間隔:波長λI1とλI2の電極指に挟まれた箇所(図47の2714):0.25λI1+0.25λI2
波長λI2の電極指に挟まれた箇所(図47の2715):0.50λI2
IDT−反射器間隔:0.460λR
IDTduty:ピッチを狭くしていない部分:0.63、ピッチを狭くした部分:0.60
反射器duty:0.57
電極膜厚:0.09λI1
弾性表面波共振子2702の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅:23.6λI
IDT本数:241本
IDT波長および反射器波長:2.12μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λR
弾性表面波共振子2703の詳細な設計を、以下に示す。
交叉幅:58.5λI
IDT本数:241
IDT波長および反射器波長:2.04μm
反射器本数:30本
IDT−反射器間隔:0.50λRである。
【0172】
実施の第六形態の特徴は、アース電極指と隣接し、平衡信号端子に接続された中央のIDT2704の両端に位置する電極指をそれぞれ交叉幅重み付けした交叉重み付け電極指2704aを形成し、さらに交叉幅重み付けされた箇所にダミー電極2705a、2706aがそれぞれ設けられて、アースに接続されている点である。
【0173】
次に、本実施の第六形態の作用・効果について説明する。図49に、実施の第六形態の構成での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度を示す。比較として図50に示す、第四比較例での周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度も図49に合わせて示す。図50の第四比較例の構成は、実施の第六形態に対して中央IDTの両端の電極指が交叉幅重み付けされていない、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2701aを用いた以外は、全く同じ構成である。DCS受信用フィルタにおける通過帯域の周波数範囲は1805MHz〜1880MHzである。
【0174】
この範囲での平衡信号端子間の振幅平衡度は、第四比較例では−1.3dB〜+3.3dB(偏差4.6dB)であるのに対し、実施の第六形態では−2.0dB〜+1.9dB(偏差3.9dB)と、約0.7dB振幅平衡度が改善している。
【0175】
さらに第四比較例では、平衡信号端子間の振幅平衡度が+側に大きく外れているが、実施の第六形態では+方向と−方向のずれがほぼ均等になっている。実施の第六形態のように+方向と−方向のずれがほぼ均等な方が、+側か−側のどちらか一方に大きく外れているよりも同相信号のノイズレベルが小さくなるというメリットがあり、実施の第六形態の方が、この点でも優れている。
【0176】
実施の第六形態の効果が得られた理由は、アース電極指と隣接する中央IDT2704の両端の電極指を交叉幅重み付けし、さらに交叉幅重み付けされた箇所にダミー電極を設けてアースに接続することにより、平衡信号端子2711に接続されるIDTと平衡端子2712に接続されるIDTの両端の電極指がアース電極指と隣接するようになるため、それぞれに隣接する電極指との極性の関係が同じになったためである。
【0177】
次に、交叉幅重み付けの最適値を調査した結果について説明する。調査の方法は、図47、図48の構成で、交叉幅重み付けしない部分の交叉幅2805に対する重み付けする部分の交叉幅2806の割合(以後、交叉幅重み付けの比)を変化させていき、それに伴う通過帯域内で平衡信号端子間の振幅平衡度の変化を調査した。
【0178】
交叉幅重み付けの比は、重み付けしない図50の場合を1、図47の場合を1/2として、交叉幅重み付けの比が1/4、1/2、3/4の場合について、平衡信号端子間の振幅平衡度を調査した。図51に、交叉幅重み付けの比を変化させたときの平衡信号端子間における振幅平衡度の結果値を示す。図51では、平衡信号端子間の振幅平衡度は、+側のずれ分をプロットしている。
【0179】
図51より、交叉幅重み付けの比を略0.5とした場合、すなわち、電極指の略中央の位置で重み付けした場合に通過帯域内の平衡信号端子間の振幅平衡度は最小となる。これは、中央IDTの両端の電極指を略中央の位置で重み付けし、重み付けされた電極指をアースに接続したことにより、平衡信号端子2711に接続されるIDTと平衡信号端子2712に接続されるIDTの両端の電極指に、アース電極指がそれぞれ全体の交叉幅の略半分で隣接するため、それぞれに隣接する電極指との極性の関係が同じになった効果である。
【0180】
以上、説明したように実施の第六形態では、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおける1つのIDT(好ましくは中央のIDT)の、両極のくし歯状電極に、それぞれ平衡信号端子が接続され、アースに接地された電気的中性点を有さない構成において、中央IDTの両端の電極指を略中央の位置で交叉幅重み付けし、重み付けにより削除された位置に設けられたダミー電極をアースに接続することで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子間の振幅平衡度を改善した、弾性表面波装置が得られる。
【0181】
実施の第六形態では、平衡信号端子に接続されたIDTの両端の電極指が、両側でアース電極指と隣接している構成で説明したが、例えば、図52のように片側ではアース電極指と、もう片側ではシグナル電極指と隣接している構成においても、アース電極指と隣接している側のシグナル電極指のみを交叉幅重み付けし、重み付けにより削除された位置に設けたダミー電極をアースにIDTを介して接続することで、平衡信号端子間の振幅平衡度を改善した弾性表面波装置が得られる。
【0182】
また、図53のように、2つ以上のIDTの両極から平衡信号を取り出す構成においても、2つのIDTそれぞれの最外電極指を交叉幅重み付けし、重み付けされた電極指をIDTおよび反射器を介してアースに接続することで、平衡信号端子間の振幅平衡度を改善できる。
【0183】
実施の第六形態では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタが3IDTタイプの構成で説明したが、例えば4つ以上のIDTを有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタの場合にも、図54のように平衡信号を取り出すIDTの両端の電極指を交叉幅重み付けし、重み付けにより削除された位置に設けたダミー電極をアースにIDTを介して接続することにより、平衡信号端子間の振幅平衡度を改善できる。
【0184】
(実施の第七形態)
本発明に係る実施の第七形態について図55乃至図61に基づいて説明する。本実施の第七形態では、PCS受信用フィルタを例にとって説明を行っていく。
【0185】
実施の第七形態は実施の第三形態と同じく、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタの1つのIDTの両極のくし歯状電極にそれぞれ平衡信号端子が接続され、アースに接地された電気的中性点を有さない構成に重み付けを施した例である。
【0186】
実施の第七形態では、前述の圧電基板8上に縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2901と、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ2901に直列接続された、各弾性表面波共振子2902、2903が、Al電極により形成されている。実施の第七形態の構成は、基本的には実施の第三形態の図29と同じ構成である。
【0187】
実施の第七形態の特徴は、電極指2919、2920のdutyが、0.40とされている点である。また、実施の第七形態ではシグナルライン2912と平衡信号端子2910の間に、アースに接続されたシールドライン2921が挿入されている。このようにシグナル電極同士が隣り合う箇所に、アースに接続されたシールドラインを挿入することで、シグナル電極間の橋絡容量が低減され、さらに平衡信号端子間の平衡度が改善された、弾性表面波装置が得られる。
【0188】
以下に、本実施の第七形態の作用・効果について説明する。図56に実施の第七形態の構成での、周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度、図57に位相平衡度を示す。比較として図32に示す、第二比較例の構成での平衡信号端子間の振幅平衡度、位相平衡度も図56及び図57に合わせて示す。図32の第二比較例の構成は実施の第七形態に対して、IDT2905のIDT2904、2906に隣り合っている電極指のdutyを変えていない以外は、全く同じ構成である。PCS受信用フィルタにおける通過帯域の周波数範囲は1930MHz〜1990MHzである。
【0189】
この範囲での平衡信号端子間の位相平衡度の偏差は実施の第七形態と第二比較例でほとんど変わっていないが、平衡信号端子間の振幅平衡度は、第二比較例では−0.5dB〜+2.3dB(偏差2.8dB)であるのに対し、実施の第七形態では−0.6dB〜+2.0dB(偏差2.6dB)と、約0.2dB振幅平衡度が改善している。
【0190】
さらに第二比較例では、平衡信号端子間の振幅平衡度および位相平衡度が+側が−側のどちらか一方に大きく外れているが、実施の第七形態では+方向と−方向のずれの差が、小さくなっている。実施の第七形態のように+方向と−方向のずれの差が小さい方が、+側か−側のどちらか一方に大きく外れているよりも同相信号のノイズレベルが小さくなるというメリットがあり、実施の第七形態の方が、この点でも優れている。
【0191】
実施の第七形態の効果が得られた理由は、IDT2905の各IDT2904、2906に隣り合っている電極指のdutyを、他の電極指のdutyより小さくすることで、各平衡信号端子2910、2911につながっている電極指の総容量や、電気信号と弾性表面波との間の変換効率を是正したことによる効果である。
【0192】
この電極指の総容量等の異なりは、特に2つのIDTが隣り合っている箇所で大きいので、実施の第七形態のようにこの部分の電極指のdutyを調整することで、最も大きな効果が得られる。さらに効果を得るためには、図58のように、2つのIDTが隣り合っている箇所に近い数本の電極指のdutyを調整すればよい。
【0193】
次に、実施の第七形態における別の構成として、図59のようにIDT2904aとIDT2906aとの、IDT2905bと隣り合っている電極指(図59の3001と3002)のdutyを、他の電極指のdutyよりも小さくした場合の、周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度を図60に、位相平衡度を図61に示す。このとき電極指3001と電極指3002のdutyは0.40としている。
【0194】
比較として、図32の第二比較例の構成での平衡信号端子間の振幅平衡度、位相平衡度も図60及び図61に合わせて示す。この範囲での平衡信号端子問の位相平衡度の偏差は、実施の第七形態の変形例と第二比較例とでほとんど変わっていないが、平衡信号端子間の振幅平衡度は、第二比較例では−0.5dB〜+2.3dB(偏差2.8dB)であるのに対し、実施の第七形態の変形例では−0.5dB〜+2.0dB(偏差2.5dB)と、約0.3dB振幅平衡度が改善している。
【0195】
このように、図59のように不平衡信号端子に接続されているIDTの電極指のdutyを調整することでも、本発明の効果は得られる。もちろんこれに加えて、IDT2905bにdutyの調整を加えても、本発明の効果は得られる。
【0196】
以上、説明したように実施の第七形態では、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおけるの1つのIDTの両極となるくし歯状電極にそれぞれ平衡信号端子が接続され、アースに接地された電気的中性点を有さない構成において、IDTの一部、特に2つのIDTが隣り合っている箇所をduty重み付けすることで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子間の振幅平衡度を改善した、弾性表面波装置が得られる。
【0197】
(実施の第八形態)
本発明に係る実施の第八形態について、図62乃至図64に基づいて説明する。実施の第八形態の構成は、実施の第七形態のようにIDT2905のIDT2904、IDT2906と隣り合っている電極指のみのdutyを0.40とするだけではなく、実施の第八形態では、平衡信号端子2910に接続されているIDT2905の電極指のdutyをすべて、他の電極指と変えて、例えば、より小さく、0.40としている。その他の構成は、すべて実施の第七形態の構成と同じである。
【0198】
以下に、本実施の第八形態の作用・効果について説明する。図63に、実施の第八形態の構成での、周波数に対する平衡信号端子間の振幅平衡度、図64に位相平衡度を示す。比較として、図32に示す第二比較例の構成での、平衡信号端子間の振幅平衡度、位相平衡度も図63及び図64に合わせて示す。PCS受信用フィルタの通過帯域の周波数範囲では、平衡信号端子間の位相平衡度は第二比較例よりわずかに悪化しているが、平衡信号端子間の振幅平衡度は、第二比較例より約0.5dB改善している。
【0199】
さらに第二比較例では、平衡信号端子間の振幅平衡度および位相平衡度が+側が−側のどちらか一方に大きく外れているが、実施の第八形態では+方向と−方向のずれの差が、小さくなっている。実施の第八形態のように+方向と−方向のずれの差が小さい方が、+側か−側のどちらか一方に大きく外れているよりも同相信号のノイズレベルが小さくなるというメリットがあり、実施の第八形態の方が、この点でも優れている。
【0200】
以上、説明したように実施の第八形態では、1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタの1つのIDTの両極のくし歯状電極にそれぞれ平衡信号端子が接続され、アースに接地された電気的中性点を有さない構成において、平衡信号端子の一方に接続されていの電極指をすべてduty重み付けすることで、従来の弾性表面波装置よりも平衡信号端子間の振幅平衡度を改善した、弾性表面波装置が得られる。
【0201】
図62のように、平衡信号端子2910に接続されているIDT2905cの電極指のdutyをすべて調整すると、平衡信号端子間の振幅平衡度を更に改善することができるが、位相平衡度は逆に悪化してしまう。しかし、図55や図58のようにすべての電極指は調整せずに必要な本数だけ調整したり、あるいは電極指毎にdutyの調整量を異ならせたりすることで、平衡信号端子間の位相平衡度を悪化させずに、振幅平衡度を改善することは可能である。
【0202】
(実施の第九形態)
本発明に係る実施の第九形態について、図65に基づいて説明する。実施の第九形態は基本的には実施の第七形態と同じ構成であるが、IDT2904とIDT2905dとが互いに隣り合う箇所においてIDT2905dの電極指3003のdutyを小さくし、さらにIDT2905dとIDT2906bとが隣り合う箇所においてIDT2906bの最外のシグナル電極指が間引かれ、その間引かれた位置にアースに接続されたダミー電極3004が設置された、間引き重み付けされている。
【0203】
次に、本実施の第九形態の作用・効果について説明する。このように1つの縦結合共振子型弾性表面波フィルタ内に2種類の重み付け方法を混在したりさらに数種類の重み付け方法を混在させたりすることで、平衡信号端子間の平衡度の調整自由度が向上し、所望の平衡信号端子間の平衡度を有した、平衡信号端子を有する弾性表面波装置が得られる。
【0204】
以上の実施の各形態では、圧電基板として、40±5°YcutX伝搬LiTaO3 基板を用いたが、効果が得られる原理からもわかる通り、本発明はこの基板に限らず、64〜72°YcutX伝搬LiNbO3 、41°YcutX伝搬LiNbO3 などの基板でも同様な効果が得られる。
【0205】
また、3以上のIDTを備える弾性表面波フィルタを2つ用いて、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波装置においては、弾性表面波フィルタの電極指に対して、弾性表面波の励振が強くなる方向に重み付けすることが好ましい。これにより、通過帯域幅が狭くなることを抑制しながら、通過帯域内の振幅平衡度を改善できる。
【0206】
このような弾性表面波の励振が強くなる方向の重み付けの例としては、一方の弾性表面波装置(第1の弾性表面波装置)には重み付けせず、他方の弾性表面波装置(第2の弾性表面波装置)の中央のIDTの最外電極指(より望ましくはシグナル電極指)の双方に対して、間引き重み付け、交叉重み付け(ダミー電極の形成も含む)、または直列重み付け(最も好ましい)を施すことが挙げられる。
【0207】
さらに、上記の実施の各形態では、それぞれ種々な重み付けについて説明したが、それらは互いに独立した作用・効果を備えており、それらを二以上、どのように組み合わせて用いても、本願発明の効果を得ることができる。
【0208】
本発明に係る、上記の実施の各形態に記載の弾性表面波装置を搭載したの通信装置について、図66に基づいて説明すると以下の通りである。図66に示すように、実施の第一乃至第九の何れかに記載の弾性表面波装置を搭載した通信機3100は、受信を行うレシーバ側(Rx側)として、アンテナ3101、アンテナ共用部/RFTopフィルタ3102、アンプ3103、Rx段間フィルタ3104、ミキサ3105、1stIFフィルタ3106、ミキサ3107、2ndIFフィルタ3108、1st+2ndローカルシンセサイザ3111、TCXO(Temperature Compensated crystal Oscillator(温度補償型水晶発振器))3112、デバイダ3113、ローカルフィルタ3114を備えて構成されている。Rx段間フィルタ3104からミキサ3105へは、図66にて二本線で示したように、平衡信号端子間の平衡度を確保するために、各平衡信号にて送信することが好ましい。
【0209】
また、上記通信装置3100は、送信を行うトランシーバ側(Tx側)として、上記アンテナ3101および上記アンテナ共用部/RFTopフィルタ3102を共用するとともに、TxIFフィルタ3121、ミキサ3122、Tx段間フィルタ3123、アンプ3124、カプラ3125、アイソレータ3126、APC(Automatic Power Control(自動出力制御))3127を備えて構成されている。
【0210】
そして、上記のRx段間フィルタ3104には、上述した実施の第一乃至第九形態の何れかに記載の弾性表面波装置が好適に利用できる。
【0211】
よって、上記通信装置3100は、用いた弾性表面波装置が小型化を図りながら、伝送特性に優れているので、小型化、特にGHz帯域以上において小型化を図りながら、伝送特性(通信性能)に優れたものとなっている。
【0212】
【発明の効果】
本発明の弾性表面波装置は、以上のように、圧電基板上に、複数の電極指を有する入力用IDTと、複数の電極指を有する出力用IDTとが、縦結合共振子型を形成するように弾性表面波の伝搬方向に沿って設けられ、前記入力用IDT及び出力用IDTの一方は、平衡用であり、平衡側の少なくとも一方の各電極指の最外電極指と異なる内側電極指に、重み付けされた重み付け電極指を有している構成である。
【0213】
それゆえ、上記構成では、平衡側の少なくとも一方の各電極指の最外電極指と異なる内側電極指に、重み付けされた重み付け電極指を有していることにより、平衡側の平衡度を改善できるという効果を奏する。
【0214】
本発明の他の弾性表面波装置は、以上のように、圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つのIDTを有する弾性表面波フィルタを少なくとも1つと、上記弾性表面波フィルタのための入力信号端子及び出力信号端子とを備えている弾性表面波装置であって、入力信号端子及び出力信号端子の少なくとも一方は平衡信号端子に接続されており、かつ、上記IDTにおける、最外電極指以外の電極指が、電極指の交叉幅を他の電極指と異ならせる交叉幅重み付けされている構成である。
【0215】
それゆえ、上記構成は、上記IDTにおける、最外電極指以外の電極指が、電極指の交叉幅を他の電極指と異ならせる交叉幅重み付けされていることにより、例えば、各平衡端子間での平衡度(バランス性)を改善できるという効果を奏する。
【0216】
本発明のさらに他の弾性表面波装置は、以上のように、互いに隣り合うIDTの少なくとも一方において、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指のdutyを他の電極指と異ならせるduty重み付けが施されており、かつ、異なる互いに隣り合うIDTの少なくとも一方において、上記IDTが互いに隣り合う箇所の最外電極指に対して間引き重み付けされていると共に、上記間引き重み付けされた箇所には、上記間引き重み付けされた電極指が接続されたバスバーと対向する対向バスバーに接続されたダミー電極が設けられている構成である。
【0217】
それゆえ、上記構成は、duty重み付け、間引き重み付けを施し、かつ、ダミー電極を設けたことによって、各平衡端子間での平衡度(バランス性)を改善できるという効果を奏する。
【0218】
本発明の通信装置は、以上のように、上記弾性表面波装置を用いたことを特徴としている。
【0219】
それゆえ、上記構成は、小型化、特にGHz帯域以上において小型化を図りながら、伝送特性(通信性能)に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図2】第一比較例の弾性表面波装置の要部構成を示す説明図である。
【図3】上記実施の第一形態の一変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図4】上記実施の第一形態の弾性表面波装置での重み付け領域を説明するための要部構成図である。
【図5】上記弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図6】上記弾性表面波装置の位相平衡度(位相バランス)を示すグラフである。
【図7】上記第一比較例の弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図8】上記第一比較例の弾性表面波装置の位相平衡度(位相バランス)を示すグラフである。
【図9】上記実施の第一形態における他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図10】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図11】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図12】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図13】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図14】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図15】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図16】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図17】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図18】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図19】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図20】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図21】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図22】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図23】上記実施の第一形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図24】本発明の実施の第二形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図25】上記弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図26】上記弾性表面波装置の位相バランスを示すグラフである。
【図27】上記実施の第一形態に係る弾性表面波装置の伝送特性を示すグラフである。
【図28】上記実施の第二形態に係る弾性表面波装置の伝送特性を示すグラフである。
【図29】本発明の実施の第三形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図30】上記実施の第三形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図31】上記実施の第三形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の位相バランスを示すグラフである。
【図32】上記第二比較例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図33】本発明の実施の第四形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図34】上記実施の第四形態と、第二従来例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図35】上記第二従来例におけるバランス劣化を示すための要部構成図である。
【図36】上記実施の第四形態におけるバランス改善を示すための要部構成図である。
【図37】上記実施の第四形態における一変形例の弾性表面波装置の要部構成図である。
【図38】上記実施の第四形態の一変形例におけるバランス改善を示すための要部構成図である。
【図39】上記実施の第四形態における他の変形例である弾性表面波装置の要部構成図である。
【図40】上記実施の第四形態における他の変形例におけるバランス改善を示すための要部構成図である。
【図41】上記実施の第四形態におけるさらに他の変形例である弾性表面波装置の要部構成図である。
【図42】本発明の実施の第五形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図43】上記実施の第五形態と、第三比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図44】上記第三比較例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図45】上記第三比較例におけるバランス劣化を示すための要部構成図である。
【図46】上記実施の第五形態におけるバランス改善を示すための要部構成図である。
【図47】本発明の実施の第六形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図48】上記実施の第六形態に係る弾性表面波装置の要部拡大構成図である。
【図49】上記実施の第六形態と、第四比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図50】上記第四比較例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図51】上記実施の第六形態に係る弾性表面波装置における、交叉幅の変化に伴う振幅平衡度(振幅バランス)の変化を示すグラフである。
【図52】上記実施の第六形態の一変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図53】上記実施の第六形態における他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図54】上記実施の第六形態におけるさらに他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図55】本発明の実施の第七形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図56】上記実施の第七形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図57】上記実施の第七形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の位相バランスを示すグラフである。
【図58】上記実施の第七形態の一変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図59】上記実施の第七形態における他の変形例に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図60】上記実施の第七形態における他の変形例と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図61】上記実施の第七形態における他の変形例と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の位相バランスを示すグラフである。
【図62】本発明の実施の第八形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図63】上記実施の第八形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の振幅平衡度(振幅バランス)を示すグラフである。
【図64】上記実施の第八形態と、第二比較例とに係る弾性表面波装置の位相バランスを示すグラフである。
【図65】本発明の実施の第九形態に係る弾性表面波装置の要部構成図である。
【図66】本発明の通信装置の要部ブロック図である。
【図67】第一従来例の弾性表面波装置の要部構成図である。
【図68】第二従来例の弾性表面波装置の要部構成図である。
【図69】従来における平衡信号端子間での挿入損失の違いを示すためのグラフである。
【図70】上記従来における平衡信号端子間での挿入損失の違いを示すための、一方の弾性表面波装置の要部構成図である。
【図71】上記従来における平衡信号端子間での挿入損失の違いを示すための、他方の弾性表面波装置の要部構成図である。
【図72】弾性表面波装置における共振モードを説明するものであって、(a)は共振モードの周波数関係を示すグラフであり、(b)は共振モードの有効電流分布を示す、概略構成図及びそれに対応する電流分布のグラフである。
【図73】第三従来例の弾性表面波装置の要部構成図である。
【符号の説明】
1 IDT(くし型電極部)
2 IDT(くし型電極部)
3 IDT(くし型電極部)
22 シグナル電極指(内側電極指)
21a ダミー電極
22a 交叉重み付け電極指(重み付け電極指)
31a ダミー電極
Claims (39)
- 圧電基板上に、複数の電極指を有する入力用くし型電極部と、複数の電極指を有する出力用くし型電極部とが、縦結合共振子型を形成するように弾性表面波の伝搬方向に沿って設けられ、
前記入力用くし型電極部及び出力用くし型電極部の一方は、平衡用であり、平衡側の少なくとも一方の各電極指の最外電極指と異なる内側電極指に、重み付けされた重み付け電極指を有しており、
前記重み付け電極指は、他の電極指より短く設定されていることを特徴とする弾性表面波装置。 - 前記重み付け電極指は、一つのくし型電極部における最外電極指の次から全電極指の1/2以内までの範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
- 前記入力用くし型電極部及び出力用くし型電極部の少なくとも一方の各電極指に、別のくし型電極部と互いに対面する位置の最外電極指を含む2本以上、連続したアース電極指が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付け電極指は、前記入力用くし型電極部及び出力用くし型電極部の少なくとも一方の接地された電極指である各アース電極指の隣り合う間にて形成される無電界部を、平衡用の2つのくし型電極部が共に有するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付け電極指は、平衡用の2つのくし型電極部に、それぞれ、2本以上互いに連続したア−ス電極指からなる無電界部を有するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 平衡用の2つのくし型電極部で、前記無電界部の大きさが、ほぼ同一となるように設定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付け電極指に向かって、接地された第一バランス用電極指が上記重み付け電極指の長さに合わせて延びるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付け電極指と異なる位置に向かって、接地された第二バランス用電極指が上記重み付け電極指の長さに合わせて形成され、
上記第二バランス用電極指と、重み付け電極指とに対面するように折れ曲がって形成されるダミー電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の弾性表面波装置。 - 不平衡型−平衡型変換機能を有していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された少なくとも2つのくし型電極部を有する弾性表面波フィルタを少なくとも1つと、上記弾性表面波フィルタのための入力信号端子及び出力信号端子とを備えている弾性表面波装置であって、
入力信号端子及び出力信号端子の少なくとも一方は平衡信号端子に接続されており、かつ、上記くし型電極部における、最外電極指以外の電極指が、電極指の交叉幅を他の電極指と異ならせる交叉幅重み付けされており、
前記交叉幅重み付けは、電極指が他の電極指より短く設定されて施されていること特徴とする弾性表面波装置。 - 前記交叉幅重み付けは、交叉方向の略中央部にて施されていることを特徴とする請求項10に記載の弾性表面波装置。
- 前記くし型電極部には上記交叉幅重み付けされた電極指に対向するようにダミー電極が設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の弾性表面波装置。
- 前記ダミー電極は、アースに接続されていることを特徴とする請求項12に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うくし型電極部のうち少なくとも一方における、上記くし型電極部が互いに隣り合う箇所の最外電極指から数本の電極指に対して施されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うくし型電極部のうち少なくとも一方における、上記くし型電極部が互いに隣り合う箇所の最外電極指の近傍に位置する数本の電極指に対して施されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付けが、前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うくし型電極部のうち少なくとも一方における、上記くし型電極部が互いに隣り合う箇所の最外電極指から上記くし型電極部の弾性表面波の伝搬方向の1/2以内までの範囲の電極指に対して施されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタの互いに隣り合うくし型電極部の互いに隣り合う箇所の電極指がそれぞれアース電極指とシグナル電極指とであり、
上記アース電極指及びシグナル電極指の少なくとも一方に対して前記重み付けが施されていることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項に記載の弾性表面波装置。 - 前記重み付けされる電極指は、前記弾性表面波フィルタのシグナル電極指であることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記重み付けは、前記弾性表面波フィルタの平衡信号端子に接続されているくし型電極部の電極指に施されていることを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタは、少なくとも1つのくし型電極部を他のくし型電極部に対して位相反転して有し、
前記重み付けは、上記位相反転したくし型電極部の電極指に対して施されていることを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項に記載の弾性表面波装置。 - 前記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−不平衡信号出力フィルタ機能、又は不平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていることを特徴とする請 求項1乃至20の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記くし型電極部の少なくとも1つは、交叉幅方向に2分割されていることを特徴とする請求項21又は22に記載の弾性表面波装置。
- 前記の対となる平衡信号端子が、1つのくし型電極部における両極のくし歯状電極にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項21乃至23の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記くし型電極部の少なくとも1つは、弾性表面波の伝搬方向に2分割されていることを特徴とする請求項21又は22に記載の弾性表面波装置。
- 前記の対となる平衡信号端子間に、接地された電気的中性点を有さないことを特徴とする請求項21乃至25の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタが、2つにて、平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタが、2つ、入力信号に対する出力信号の位相を約180度異ならせるように設けられ、
上記各記弾性表面波フィルタは、平衡信号入力−不平衡信号出力フィルタ機能、又は不平衡信号入力−平衡信号出力フィルタ機能を有するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1項に記載の弾性表面波装置。 - 不平衡信号端子側に、さらに弾性表面波フィルタがカスケード接続されていることを特徴とする請求項28に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタは、縦結合共振子型弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1乃至29の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、奇数個のくし型電極部を有していることを特徴とする請求項30に記載の弾性表面波装置。
- 前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つのくし型電極部を有していることを特徴とする請求項31に記載の弾性表面波装置。
- 前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、少なくとも1つのくし型電極部の総電極指本数が偶数本であることを特徴とする請求項30乃至32の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つ以上のくし型電極部のうち、少なくとも平衡信号端子に接続されている、くし型電極部の電極指の総本数が偶数本であることを特徴とする請求項33に記載の弾性表面波装置。
- 縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、3つ以上のくし型電極部のうち、少なくとも中央部に位置する、くし型電極部の電極指の総本数が偶数本であることを特徴とする請求項33又は34に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタに、直列及び並列の少なくとも一方にて、弾性表面波共振子が少なくとも1つ接続されていることを特徴とする請求項1乃至35の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波フィルタは、2つ以上の弾性フィルタ部をカスケード接続したものであることを特徴とする請求項1乃至36の何れか1項に記載の弾性表面波装置。
- 請求項1乃至37の何れか1項に記載の弾性表面波装置を用いたことを特徴とする通信装置。
- 圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って形成された、それぞれ互いに隣り合う少なくとも3つのくし型電極部を有する弾性表面波フィルタを少なくとも1つと、上記弾性表面波フィルタのための入力信号端子及び出力信号端子とを備えている弾性表面波装置であって、
入力信号端子及び出力信号端子の少なくとも一方は平衡信号端子に接続されており、
不平衡信号端子が圧電基板上に設けられ、不平衡信号用端子とくし型電極部とを接続するシグナルラインが圧電基板上に設けられ、
不平衡信号端子とシグナルラインとの間の圧電基板上に、アースに接続されたシールドラインが設けられており、
互いに隣り合うくし型電極部の少なくとも一方において、上記くし型電極部が互いに隣り合う箇所の最外電極指のdutyを他の電極指より小さくするduty重み付けが施されており、
かつ、異なる互いに隣り合うくし型電極部の少なくとも一方において、上記くし型電極部が互いに隣り合う箇所の最外電極指に対して間引き重み付けされていると共に、
上記間引き重み付けされた箇所には、上記間引き重み付けされた電極指が接続されたバスバーと対向する対向バスバーに接続されたダミー電極が設けられていることを特徴とする弾性表面波装置。
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