JP3968025B2 - 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、不活性ガス雰囲気中でフッ化物フラックスを用いたろう付けによって、エバポレータ、コンデンサ、ラジエータ、ヒータコア、オイルクーラ、インタークーラ等のアルミニウム製熱交換器を製造するに際し、その構造部材であるチューブ材やプレート材として好適なアルミニウム合金クラッド材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用熱交換器のエバポレータ、コンデンサ、ラジエータ、ヒーターコア、オイルクーラ、インタークーラ等のプレート材は、プレス加工や曲げ加工等を経た後、ろう付け接合され、チューブ材は、ロールフォーミング加工を経た後、溶接またはろう付け接合される。
【0003】
従来、プレート材やチューブ材としては、JIS A3003 などのAl-Mn 系合金を芯材とし、この芯材にAl-Si 合金ろう材をクラッドした材料が用いられているが、近年における熱交換器の軽量化の要請から部材の薄肉化がますます進行しており、芯材についても、JIS A3003 合金に対して、強度向上のためにCuの添加が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、高強度の芯材を用いたクラッド材においては、プレス加工、曲げ加工あるいはロールフォーミング加工時にスプリングバックにより所定の寸法精度が得られない等の問題がある。また、芯材への多量のCuの添加は融点を低下させ、ろう付け加熱時にエロージョンなどのろう付け不良が生じ易くなり、ろう付け不良率の増加により製造コストを高める要因となっている。
【0005】
さらに、芯材のCuは芯材の自己耐食性を低下させる。ろう材に犠牲陽極効果を付与する手法として、ろう材にZnを添加した場合には、ろう付け加熱中に芯材のCuがろう材中に拡散するため、ろう材の電位が犠牲陽極効果を発揮し得るほど十分に卑にはならず、ろう材の犠牲陽極効果が得られない。また、ろう付け加熱中にろう材のZnが芯材中に拡散してZnの濃度勾配が形成され、その結果板厚方向に電位勾配が形成されるが、芯材にCuが存在すると電位勾配が打ち消されてしまい、Znによる犠牲陽極効果を得ることができないという問題もあり、芯材にCuが添加されているクラッド材では十分な耐食性の向上が期待できない。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−21233号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平8−134547公報(請求項1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは、チューブ材やプレート材用のクラッド材について、プレス加工、曲げ加工やロールフォーミング時のスプリングバックの低減、ろう付け性、耐食性の向上を達成するための芯材および犠牲陽極材の組成の組合わせについて多角的に試験、検討を加えた結果、芯材にCuを添加することなく多量のSi、Feを添加することにより 芯材中にAl-Mn-Fe-Si 系化合物を多量に晶出させて、芯材中のSiやMnの固溶度を低下させることにより、加工時のスプリングバック量が低減し、成形性が向上することを見出した。
【0008】
また、芯材にFeを添加することにより芯材マトリックス中にAl-Mn-Fe-Si 系化合物が多数晶出し、該化合物が腐食の起点となるため腐食形態が全面腐食型となり、孔食の発生が抑制されて板厚方法への腐食の進行が遅くなること、ろう材にZnを添加することにより、ろう材が犠牲陽極材として有効に作用するとともに、ろう材のZnがろう付け加熱中に芯材中に拡散して、ろう材と芯材の界面から芯材中心部にかけてZnの濃度勾配が生じ、その結果板厚方向に電位勾配が形成されて芯材の一部も犠牲陽極効果を発揮するようになること、この電位勾配による芯材の一部の犠牲陽極効果は、前記芯材へのFe添加による全面腐食型の腐食形態によりより強固なものとなること、ろう材にFeを添加した場合には、ろう材中にAl-Fe-Si系の晶出物が形成され、この晶出物が腐食の起点となるため腐食形態が全面腐食型となり、孔食の発生が抑制されて板厚方法への腐食の進行が遅くなることを見出した。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、優れた成形性、ろう付け性および耐食性をそなえ、熱交換器、とくにエバポレータ、コンデンサ、ラジエータ、ヒーターコア、オイルクーラ、インタークーラなどの自動車用熱交換器のチューブ材、ヘッダプレート材として好適に使用することができる熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の請求項1による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、ろう材がSi:6 〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
【0011】
請求項2による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、ろう材がSi:6 〜13%、Zn:0.5 〜5.0 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
【0012】
請求項3による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、芯材の一方の面にクラッドされるろう材がSi:6 〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、他方の面にクラッドされるろう材がSi:6 〜13%、Zn:0.5 〜5.0 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
【0013】
請求項4による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜3のいずれかにおいて、芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにIn:0.001 〜0.05%、Sn:0.001 〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
【0014】
請求項5による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜4のいずれかにおいて、芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにSr:0.005 〜0.1 %を含有することを特徴とする。
【0015】
請求項6による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜5のいずれかにおいて、芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにFe:0.8 〜2.0 %を含有することを特徴とする。
【0016】
請求項7による熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記芯材が、さらにV :0.01〜0.3 %、Mg:0.01〜0.5 %、B :0.01〜0.3 %のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のアルミニウム合金クラッド材における合金成分の意義および限定理由について説明する。
【0018】
1.芯材について;
Si:0.7 〜2.0 %
Siは、芯材の強度を向上させる機能を有するとともに、Mn、FeとともにAl-Mn-Fe-Si 系化合物を多量に晶出させて芯材中のSi、Mnの固溶度を低下させ、成形時のスプリングバック量を低減する。Siの好ましい含有量は0.7 〜2.0 %の範囲であり、0.7 %未満ではその効果が十分でなく、2.0 %を越えると耐食性が低下するとともに、芯材の融点を下げ、ろう付け時に局部溶融が生じ易くなる。Siのさらに好ましい含有範囲は0.8 〜1.1 %、最も好ましい含有範囲は0.8 〜1.0 %である。
【0019】
Fe:0.5 〜1.0 %
Feは、芯材の強度を向上させる機能を有するとともに、Mn、SiとともにAl-Mn-Fe-Si 系化合物を多量に晶出させ、芯材中のSi、Mnの固溶度を低下させ、成形時のスプリングバック量を低減する。さらに、Al-Mn-Fe-Si 系化合物が腐食の起点となり孔食が分散されることで耐食性が向上する。Feの好ましい含有量は0.5 〜1.0 %の範囲であり、0.5 %未満ではその効果が十分でなく、1.0 %を越えると芯材の自己耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.5 〜0.8 %である。
【0020】
Mn:0.8 〜1.8 %
Mnは、芯材の強度を向上させるよう機能する。Mnの好ましい含有量は0.8 〜1.8 %の範囲であり、Mn含有量が0.8 %未満ではその効果が小さく、1.8 %を越えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が低下して健全な板材が得難くなる。Mnのさらに好ましい含有量は1.0 〜1.3 %である。
【0021】
Cr、Zr:0.02〜0.3 %
Cr、Zrは、芯材の強度を向上させるよう機能するとともに、芯材の結晶粒度を粗大化して、ろう付け加熱中のろう材Siの粒界拡散を抑制する。Cr、Zrの好ましい含有量は、それぞれ0.02〜0.3 %の範囲であり、0.02%未満ではその効果が小さく、0.3 %を越えると効果が飽和する。Cr、Zrのさらに好ましい含有範囲は、それぞれ0.05〜0.2 %である。
【0022】
Ti:0.05〜0.3 %
Tiは、芯材の厚さ方向にTi濃度の高い領域と低い領域に分かれ、これらの領域が交互に層状に分布するよう機能する。Ti濃度の低い領域は高い領域に比べて優先的に腐食するため腐食形態が層状となり、厚さ方向への腐食の進行が妨げられる結果、耐孔食性が向上する。Tiの好ましい含有量は0.05〜0.3 %の範囲であり、0.05%未満ではその効果が小さく、0.30%を越えると鋳造が困難となり、加工性が低下して健全なクラッド板材の製造が難しくなる。Tiのさらに好ましい含有範囲は0.1 〜0.2 %である。
【0023】
V 、B :0.01〜0.3 %
V とB は、芯材の結晶粒度を粗大化して、ろう付け加熱時におけるろう材の粒界拡散を抑制する。V 、B の好ましい含有量は、それぞれ0.01〜0.3 %の範囲であり、0.01%未満ではその効果が十分でなく、0.3 %を越えると効果が飽和してそれ以上の効果の向上が得られない。
【0024】
Mg:0.5 %以下
Mgは、芯材の強度を向上させる効果を有するが、ろう付け性低下の観点から0.5 %以下に制限する。Mgが0.5 %を越えて含有すると、フッ化物を使用する不活性雰囲気ろう付けにおいて、Mgがフッ化物系フラックスと反応してろう付け性を低下させるとともに、Mgのフッ化物が生成してろう付け部の外観がわるくなる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.15%以下である。
【0025】
2.ろう材について;
Si:6 〜13%
Siは、Alの融点を下げて流動性を高め、ろうの機能を発揮させる元素である。Siの好ましい含有量は6 〜13%の範囲であり、Si含有量が6 %未満では流動性が低下して、ろうとして有効に作用しない。13%を超えると融点が低下して、圧延で割れなどの欠陥が生じ、健全な板材の製造が難しくなる。
【0026】
Z n :0.5 〜5.0 %
Znは、ろう材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。Znの好ましい含有量は0.5 〜5.0 %の範囲であり、Znの含有量が0.5 %未満ではその効果が小さく、5.0 %を超えて含有するとろう材の自己腐食量が増大する。Znのさらに好ましい含有範囲は0.9 〜1.5 %である。
【0027】
In、S n :0.001 〜0.05%以下
InまたはSnは、微量の添加によってろう材の電位を卑とし、芯材に対する犠牲陽極効果によって芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。In、Snの好ましい含有範囲は、それぞれ0.001 〜0.05%であり、0.001 %未満ではその効果が小さく、0.05%を超えて含有するとろう材の自己腐食量が増大する。In、Snのさらに好ましい含有量は、それぞれ0.01〜0.03%である。
【0028】
Sr:0.005 〜0.1 %
Srは、ろう材中のSi粒子を微細かつ均一に分散させる効果がある。Si粒子が微細かつ均一に分散することにより、ろうの溶融が均一になり、ろう付け性が改善される。Srの好ましい含有量は0.005 〜0.1 %のい範囲であり、0.005 %未満ではその効果が少なく、0.1 %を越えると効果が飽和する。Srのさらに好ましい含有量は0.01〜0.03%である。なお、Na:1 〜100ppm、Sb:0.001 〜0.5 %を添加しても同等の効果が得られる。
【0029】
Fe:0.8 〜2.0 %
Feは、Al-Fe 系またはAl-Fe-Si系化合物を形成し、これらの化合物が腐食の起点となり孔食を分散させる結果、外面の耐食性が向上する。Feの好ましい含有量は0.8 〜2.0 %の範囲であり、0.8 %未満ではその効果が十分でなく、2.0 %を越えると耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.8 〜1.0 %である。In、Sn、Sr、Feは、芯材の両面にクラッドされるろう材において、両面側のろう材に添加することもでき、片面側のろう材( 一方のろう材) にのみ添加することもできる。
【0030】
本発明のアルミニウム合金クラッド材は、芯材およびろう材を構成するアルミニウム合金を、たとえば、連続鋳造により造塊し、必要に応じて均質化処理後、ろう材用アルミニウム合金の鋳塊については所定厚さまで熱間圧延し、ついで、芯材用アルミニウム合金鋳塊と組み合わせて、常法に従って熱間圧延によりクラッド材とし、その後冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延により所定の厚さとすることによって製造される。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
連続鋳造によって表1〜2に示す芯材用合金、表3〜4に示すろう材用合金のそれぞれの鋳魂を鋳造し、芯材用鋳塊については均質化処理を行った。ろう材用鋳塊は、熱間圧延を施して所定の厚さとし、これらと芯材用鋳塊とを合わせて熱間圧延し、クラッド素材を得た。その後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延によって厚さ0.25mmの板(クラッド板材、H14 )を得た。クラッドの構成は、芯材の両面にろう材を配し、ろう材の厚さはそれぞれ0.025mm とした。
【0033】
【表1】
Figure 0003968025
【0034】
【表2】
Figure 0003968025
【0035】
【表3】
Figure 0003968025
【0036】
【表4】
Figure 0003968025
【0037】
得られたクラッド板材(試験材)から、幅 20mm 、長さ150mm の試験片を採取し、先端部r1.3mm の治具で180°曲げ加工(JIS Z2248 押曲げ法)を行い、曲げ加工後のスプリングバック量(開いた角度)を測定した。
【0038】
また、得られたクラッド材(試験材)を、窒素ガス中でフッ化物フラックスを用いて600 ℃(材料温度、ろう付け温度)に加熱した後、引張試験および腐食試験を行った。腐食試験はCASS試験により行い、最大腐食深さを測定した。供試面を上皮面とし、下皮面と端面はシール(シリコン樹脂でシーリング)した。試験期間は10日とした。
【0039】
さらに、ろう付け試験として、図1に示すように、得られたクラッド板(試験材)で、Al-1.2%Mn-1.0%Zn合金からなる厚さ0.1mm のコルゲートフィン材を挟んだ形のミニコアを作製し、窒素ガス中でフッ化物フラックスを用いて600 ℃(材料温度、ろう付け温度)に加熱した後、クラッド材(試験材)とフィン材とのろう付け状態を確認し、完全にろう付けされたものは合格(○)、ろう付けされない個所が生じたものを不良(×)とした。
【0040】
曲げ加工後のスプリングバック量、引張性質、腐食試験およびろう付け試験の結果を表3〜5に示す。表3〜5にみられるように、本発明に従う試験材番号1 から番号59のクラッド材は、成形性、ろう付け性に優れ、130MPa以上の高強度を有し、最大腐食深さが0.060mm 以下の良好な耐食性をそなえている。
【0041】
【表5】
Figure 0003968025
【0042】
【表6】
Figure 0003968025
【0043】
【表7】
Figure 0003968025
【0044】
比較例1
連続鋳造によって表8に示す芯材用合金および表9に示すろう材用合金のそれぞれの鋳魂を鋳造し、実施例1と同一の工程により厚さ0.25mmの板(クラッド板材、H14 )を得た。クラッドの構成は、実施例1と同様、芯材の両面にろう材を配し、ろう材の厚さは0.025mm とした。なお、表8〜9において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0045】
得られたクラッド板材(試験材)について、実施例1と同じ方法により、曲げ加工後のスプリングバック量(開いた角度)を測定し、引張試験、腐食試験およびろう付け試験を行った。結果を表10に示す。
【0046】
【表8】
Figure 0003968025
【0047】
【表9】
Figure 0003968025
【0048】
【表10】
Figure 0003968025
【0049】
表10に示すように、番号60のクラッド材は、上皮材のSi含有量が5.0 %と低いため、ろう付け試験でろう付けができない個所が生じた。番号61のクラッド材は、上皮材のSi含有量が14.0%と高いため、健全なクラッド材が得られなった。番号62のクラッド材は上皮材のZn含有量が多いため、番号63のクラッド材は上皮材のIn含有量が多いため、番号64のクラッド材は上皮材のSn含有量が多いため、また番号65のクラッド材は上皮材のFe含有量が多いため、いずれも耐食性が劣っている。
【0050】
番号66のクラッド材は、芯材のSi含有量が0.6 %と少ないため、曲げ試験後のスプリングバック量が大きい。番号67のクラッド材は、芯材のSi含有量が1.5 %と多いため耐食性が劣り、ろう付け時に局部溶融が生じた。番号68のクラッド材は、芯材のFe含有量が0.3 %と少ないため、曲げ試験後のスプリングバック量が大きい。番号69のクラッド材は、芯材のFe含有量が1.5 %と多いため、耐食性が劣っている。
【0051】
番号70のクラッド材は、芯材のMn含有量が0.50%と少ないため引張強さが劣っている。番号71のクラッド材は芯材のMn含有量が2.00%と多いため、また番号74のクラッド材は、芯材のTi含有量が0.50%と多いため、圧延加工性が悪く健全なクラッド材が得られなかった。番号72のクラッド材は、芯材のCrの含有量が少ないため、また番号73のクラッド材は、芯材のZrの含有量が少ないため、いずれもろう付け試験でろう付けされない個所が生じた。番号75のクラッド材は、芯材がCuを含有するため、曲げ試験後のスプリングバック量が大きく、腐食試験で貫通孔が生じ、ろう付け性も劣っている。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた成形性、ろう付け性および耐食性をそなえ、アルミニウム合金製熱交換器、とくに自動車用熱交換器のチューブ材、プレート材の素材として好適に使用することができる高強度のアルミニウム合金クラッド材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ろう付け試験における試験材(クラッド材)の配置を示す図である。

Claims (7)

  1. 芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %(質量%、以下同じ)、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、ろう材がSi:6 〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  2. 芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、ろう材がSi:6 〜13%、Zn:0.5 〜5.0 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  3. 芯材の両面にAl-Si 系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド材であって、芯材がSi:0.7 〜2.0 %、Fe:0.5 〜1.0 %、Mn:0.8 〜1.8 %、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3 %およびTi:0.05〜0.3 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、芯材の一方の面にクラッドされるろう材がSi:6 〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であり、他方の面にクラッドされるろう材がSi:6 〜13%、Zn:0.5 〜5.0 %を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  4. 芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにIn:0.001 〜0.05%、Sn:0.001 〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  5. 芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにSr:0.005 〜0.1 %を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  6. 芯材の両面にクラッドされた前記ろう材または芯材の両面にクラッドされた前記ろう材のうち一方のろう材が、さらにFe:0.8 〜2.0 %を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  7. 前記芯材が、さらにV :0.01〜0.3 %、Mg:0.01〜0.5 %、B :0.01〜0.3 %のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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