JP3967904B2 - 粒状金属結晶の製造装置と製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粒状シリコン結晶の製造装置と製造方法に関し、特に光電変換装置に用いられるシリコン粒子の作製に用いる粒状シリコン結晶の製造装置と製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
太陽電池の開発では、性能面での効率、資源の有限性、あるいは製造コストなどといった市場ニーズを捉えて開発がされている。その有望な太陽電池の一つとして、球状シリコンを用いた光電変換素子が活発に開発されている。
現在、粒状シリコンを作製するための原料は、単結晶シリコン材料を粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法によって気相合成された高純度シリコンを用いている。それら原料のサイズあるいは重量による分別を行った後に、赤外線や高周波コイルを用いて原料を容器内で再度溶融し、その後に自由落下させることで球状化させるという方法(例えばWO99/22048号公報、USP4188177号公報等を参照)であったり、同じく高周波プラズマ加熱溶融(特開平5−78115号)により球状化させるといった方法が用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの方法では原料の重量の均一化や不純物量の制御といった点から問題があった。すなわち、重量のバラツキは、作られる球の大きさにそのまま反映されてしまため、均一な重量の原料が望まれる。しかしながら、粉砕や分球などの手法により効率よく、ボールソーラー太陽電池向けに有効なある大きさに対応する重量の原料を得ることは、シリコンなど金属材料においては困難である。
【0004】
また、そのように粉砕や分球された原料に半導体材料として一定の不純物を添加するには、初めから原料中に混入させておく必要がある。従って、その原料を作製する段階で例えば単結晶作製時に不純物を添加する方法や、粉砕後気相中にて添加する方法など、複雑で高価な設備を用るためコスト増加が避けられない。
【0005】
この問題を解決する方法として、原料へ一定の純度となるように添加する微量不純物を予め調合して坩堝の中で一旦溶融し、それを排出させると同時に粒子化する方法が取られている(米国特許第6074476号参照)。しかしながら、製造されるシリコン粒子は1mmをこえる大きさの粒子であり、その結晶性を上げるために溶融、例えば一旦作製した球状粒子の表面へ酸化皮膜を合成するといった工夫すると同時に、冷却工程においても十分な冷却の温度プロファイルの制御を必要とするプロセスであり、その条件を安定に維持することが困難なものである。しかも球一つづつを時間をかけて作製しており、その生産性は極めて低いものである。すなわち、大量の粒子を必要とする太陽電池素子を形成するための粒子の作製工程としては不向きなものである。
【0006】
また、これらの方法とは別に、米国特許第4430150号や特開平11−12091号にあるように、球状の金属粒子を用いて、その金属が溶融したときの形状を維持するために、その周囲を酸化皮膜で覆った後、熱処理をすることにより再結晶化させて単結晶を作製しようとするものが提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法であっても、一旦は、一定重量の球状シリコンあるいはシリコン粉末を安定して作製する必要があるため、製造過程では造粒あるいは粉砕と分球といった工程をとり入れる必要があり、製造プロセスは煩雑で長くなり、生産性が低いものとなってしまう。
【0008】
本発明では、太陽電池向けに用いる球状シリコンを製造する場合に、その球状シリコンを安定して高効率に作製すると同時に、高い結晶性をもったシリコン粒子を低コストで製造可能な粒状シリコン結晶の製造装置と製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る粒状シリコン結晶の製造装置は、坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させるとともに、この滴状のシリコン融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造装置において、前記坩堝を円筒状の本体部材とこの本体部材の底部に取り付けられる円盤状のノズル部材とで構成し、このノズル部材に前記シリコン融液を滴状に排出するノズル孔を設けており、前記円筒状の本体部材を外壁部材と、この外壁部材の内側に配設される、シリコンとの反応を抑える材料から成る内壁部材とで形成するとともに、この外壁部材の底部に小径部を設け、このフランジ部上に前記ノズル部材を載置して前記内壁部材で押圧して前記ノズル部材を固定することを特徴とする。
【0011】
また、上記粒状シリコン結晶の製造装置では、前記ノズル孔が直径5μm以上100μm以下であることが望ましい。
【0012】
また、上記粒状シリコン結晶の製造装置では、前記ノズル部材に前記ノズル孔が複数形成されていることが望ましい。
【0013】
また、上記粒状シリコン結晶の製造装置では、前記ノズル部材が炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化珪素、もしくはダイヤモンドのうちのいずれかから成ることが望ましい。
【0014】
また、請求項6に係る粒状シリコン結晶の製造方法は、坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させるとともに、この滴状のシリコン融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造方法において、前記坩堝内のシリコン融液に圧力を印加して前記ノズル部から滴状に排出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に係る粒状シリコン結晶の製造方法は、坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させるとともに、この滴状のシリコン融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造方法において、シリコン融液を排出するノズル孔の直径を5μm以上100μm以下にするとともに、前記坩堝内のシリコン融液に0.01MPa以上0.7MPa以下の圧力を印加して前記ノズル孔から前記シリコン融液を滴状に排出することを特徴とする。
【0016】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記坩堝内でシリコン材料を溶融して前記シリコン融液を形成することが望ましい。
【0017】
【作用】
本発明では、太陽電池向けに用いる粒状シリコン結晶の供給に関して、その生産性の高さ、結晶の品質に関して、鋭意実験と考察を重ねた結果次のように考えるに至った。即ち、▲1▼粒子径の小さい結晶粒子としていくほどに、その結晶性は向上し、やがてはその粒子其々を単結晶とすることが可能となってくる。すなわち、粒子径の大きな溶融粒子ほどその結晶中での結晶の種となる核はいくつも生じてしまうため、結晶成長の温度コントロールを厳密に制御しないと結果として多結晶となってしまう。また、▲2▼太陽電池素子において、その求められる結晶粒子の大きさは、光学的吸収効率の観点からはバルク多結晶の厚みである300μm程度があれば十分である。
【0018】
以上より、太陽電池素子向けに用いる粒状シリコン結晶では粒子径をバルク結晶程度以下にまで小粒径化することにより、特性確保のために必要な材料は確保され、効率的なシリコン材料の利用を可能にすると同時にその結晶性向上を図ることができるものである。
【0019】
これにより、造粒と結晶化の複雑な過程を経ることなく、簡便に太陽電池素子向けの結晶粒子を大量に作製でき、製造コストを抑えることが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る粒状シリコン形成用坩堝の一実施形態を示す図であり、1は全体として坩堝、2は本体部材、3はノズル部材である。
【0021】
坩堝1は、円筒状の本体部材2とこの本体部材2の底部に取り付けられる円盤状のノズル部材3とで構成される。
【0022】
坩堝の本体部材2は、例えばシリコンとの反応を抑えるための内壁部材2aとこの内壁部材2aの外側に配設される外壁部材2bとから構成される。この外側部材2bは、強度を確保するために設ける。この内壁部材2aと外壁部材2bは、鋳込み成形法やホットプレス法などで緻密化された焼結体で構成されている。シリコンとの反応を抑えるには、酸化アルミニウム、炭化珪素、グラファイトなどが適するが、加工のしやすさの点ではホットプレスで焼結したグラファイトなどが適する。グラファイトで形成する場合、加工した後にその純度を上げるために、酸による洗浄を行なった後、水洗と乾燥を行なって使用する。例えば内壁部材2aの外側と外壁部材2bの内側にネジ4を設けて組み立てる。
【0023】
また、坩堝1の先端側にはノズル孔3aを有するノズル部材3が設けられている。つまり、一方端に小径部2cを有する坩堝1の外壁部材2aとは別体にシリコン融液を排出するためのノズル孔3aを有するノズル部材3を設け、このノズル部材3を坩堝1の本体部材2の先端小径部2cの内側に配設したものである。このノズル部材3は、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、立方晶窒化ボロンなどからなる。この各材料は単結晶を加工したものか、焼結条件によりその緻密度を設定して形成される。
【0024】
このノズル部材3はノズル孔3aの摩耗を防止して安定した粒状シリコン結晶を形成するために、真比重3.0g/cc以上の炭化珪素、3.30g/cc以上の酸化アルミニウム、3.15g/cc以上の立方晶窒化ホウ素、3.35g/cc以上のダイヤモンドのうちのいずれかからなることが望ましい。また、このノズル部材3が、単結晶炭化珪素、単結晶酸化アルミニウム(サファイヤ)、単結晶立方晶窒化ホウ素、単結晶ダイヤモンドのうちのいずれかから形成されると、さらにノズル孔3aの摩耗を防止して安定した粒状シリコン結晶を形成することができる。
【0025】
ノズル部材3のノズル孔3aはその直径を5μm〜100μmに形成することが望ましい。このノズル孔3aを5μm未満に形成することは現在の技術では困難であり、また100μmを超えるとシリコン融液の粒子径が大きくなって良好な結晶を得にくくなる。
【0026】
このノズル部材3には設けられるノズル孔3aは、複数設けてもよい。このことにより孔の数量だけ生産性の向上が図れるため、製造上のメリットは大きなものである。この場合、孔径とガス圧により融液の噴出量(速度)が決まり、そのときの表面張力との関係から球径が決まる。そのため、孔数が増えれば、速度を維持するために若干の圧力増はしなければならない。ノズル孔3aの加工は、機械加工あるいはレーザー加工により、同じ孔径に仕上げを行なう。なお、ノズル孔3aの加工径に対するノズル部材3の厚みも一定となるように厚みを揃えて加工する。
【0027】
上述のように坩堝1の本体部材2とノズル部材3とを別部材で形成して、それを組立てることができる構造にすることで、ノズル部材3のみを差し替えることが可能となり、高価な坩堝1の本体部材2は繰り返して使用することができる。
【0028】
このような坩堝1にシリコン原料を投入して、誘導加熱または抵抗加熱ヒータ(不図示)でシリコン原料全体を溶融させる。溶解したシリコン融液の上部をアルゴンガスなどで例えば0.7MPa以下で加圧してノズル部材3のノズル孔3aから押し出すことにより、シリコン融液を噴霧して、多数の滴状にする。多数の滴状に噴出したシリコン融液は、自由落下すると、落下中に凝固して単結晶シリコンまたは多結晶シリコンとなって容器に収容される。
【0029】
この圧力が0.01MPa未満の場合は、シリコン融液を噴出することができず、また0.7MPaを超えると噴出するシリコン融液の粒子径が大きくなって良好な結晶を得にくくなる。
【0030】
このようなシリコン粒子は、太陽電池を形成するために使用される。したがって、溶解させるシリコンには、所望の半導体用添加不純物を含有させておくのが望ましい。
【0031】
【実施例】
上述のように構成された坩堝を、ArまたはHeなどの不活性ガス雰囲気に維持可能な炉の中にセットして、全体の温度を設定する。この坩堝へ同じく不活性雰囲気に保たれた経路を通じて原料を供給して完全に溶融させた。レーザ加工により開口した各種ノズル孔3aの径をもつノズル部材を作製してシリコン原料の溶融と粒子作製を行ないその粒子径と結晶性評価を行なった。試験は次のように行った。
【0032】
不活性雰囲気中で1450℃の温度に維持した状態の坩堝へシリコン原料を18g充填して溶解した。坩堝は、内径19.0mmφ、外径25.0mmφ、長さ143mmの寸法に加工されたグラファイト(ポコ社グラファイトEDP−2など)で構成されている。十分に溶解した状態の原料に種々に変更したガス圧力をかけて、ノズル孔より一気に全量噴霧して排出した。
【0033】
このとき、0.01MPa以下の圧力ではいずれの径においても融液を噴出することはできなかった。
【0034】
この噴出により作製した球の粒度分布を求めると共に、結晶化率を求めた。なお、ここに於ける粒度分布は、篩で分球し、その個数分布の比率から算出したものである。また結晶化率は、各粒子を樹脂に埋め込み断面を鏡面研磨した後、フッ酸と硝酸、酢酸の混酸によるエッチング処理を行なって断面観察により、その構成する結晶粒子が3〜5個程度であるものの割合をもって評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1より孔径が100μm以下の場合には、粒子の大部分が850μm未満であり、その結晶の結晶化率も50%を超えて良好であった。但し、加工上30μm未満のノズル孔開け加工は困難でその加工自体が行なえなかった。一方、100μmを超える場合には、作製される粒子の粒子径が850μmを超える粒子となり、その結晶化率も急激に悪化している。また、実施例2から噴出圧力としては0.7MPa以下望ましくは0.5MPa以下、0.01MPa以上であることが適する。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る粒状シリコン結晶の製造装置では、シリコン融液を排出する坩堝を円筒状の本体部材とこの本体部材の底部に取り付けられる円盤状のノズル部材とで構成し、このノズル部材に前記シリコン融液を滴状に排出するノズル孔を設けたことから、ノズル孔が摩耗して拡大した場合は、ノズル部のみを取り替えることができ、もって粒径の揃った粒状シリコン結晶を製造することができる。
【0038】
また、請求項6に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させる際に、坩堝内のシリコン融液に0.5MPa以下の圧力を印加してノズル部から滴状に排出することから、ノズル孔を調整することによって、排出されるシリコン融液を滴状にすることで結晶化を進めることが可能となり、工業的価値は極めて高いものであるとともに、シリコン融液を粒径の揃った滴状にすることができ、もって粒状シリコン結晶の粒径を極力揃えることができる。
【0039】
また、請求項7に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、シリコン融液を排出するノズル孔の直径を5μm以上100μm以下にするとともに、前記坩堝内のシリコン融液に0.01MPa以上0.7MPa以下の圧力を印加して前記ノズル孔から前記シリコン融液を滴状に排出することから、作製される粒子の大きさが850μm未満の結晶化率の高いシリコン粒子を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粒状シリコン形成用坩堝の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 坩堝
2 本体部材
2a 内壁部材
2b 外壁部材
3 ノズル部材
3a ノズル孔
Claims (8)
- 坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させるとともに、この滴状のシリコン融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造装置において、前記坩堝を円筒状の本体部材とこの本体部材の底部に取り付けられる円盤状のノズル部材とで構成し、このノズル部材に前記シリコン融液を滴状に排出するノズル孔を設けており、前記円筒状の本体部材を外壁部材と、この外壁部材の内側に配設される、シリコンとの反応を抑える材料から成る内壁部材とで形成するとともに、この外壁部材の底部に小径部を設け、このフランジ部上に前記ノズル部材を載置して前記内壁部材で押圧して前記ノズル部材を固定することを特徴とする粒状シリコン結晶の製造装置。
- 前記内壁部材は酸化アルミニウム、炭化珪素またはグラファイトから成ることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造装置。
- 前記ノズル孔が直径5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粒状シリコン結晶の製造装置。
- 前記ノズル部材に前記ノズル孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造装置。
- 前記ノズル部材が炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化珪素、もしくはダイヤモンドのうちのいずれかから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造装置。
- 請求項1または請求項2に記載の粒状シリコン結晶の製造装置を用いて粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造方法において、前記坩堝内のシリコン融液に圧力を印加して前記ノズル孔から前記シリコン融液を滴状に排出することを特徴とする粒状シリコン結晶の製造方法。
- 請求項3に記載の粒状シリコン結晶の製造装置を用いて粒状シリコン結晶を製造する粒状シリコン結晶の製造方法において、前記坩堝内のシリコン融液に0.01MPa以上0.7MPa以下の圧力を印加して前記ノズル孔から前記シリコン融液を滴状に排出することを特徴とする粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記坩堝内でシリコン材料を溶融して前記シリコン融液を形成することを特徴とする請求項7に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
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