JP3967287B2 - インクカートリッジ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は，インクジェットプリンタ，ファクシミリ，コピー機などの印刷機器に使用されるインクカートリッジに関し，より詳しくは，印刷機器の運搬の際に，カートリッジの揺れ，外部温度の上昇等によりインクが膨張して逆流したり，印刷の際の微細な埃等が流入したりしても詰まることのない，負圧保持のための外気流入経路を有するインクカートリッジに関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に，印刷機器は，マゼンタ，シアン，イエロー，及びブラックの４色のインクを使用してカラーイメージを印刷する。印刷の際，これら４種のインクを印刷機器の印刷ヘッドに供給するために，印刷機器，特にインクジェットプリンタは，通常，マゼンタ，シアン，及びイエローのインクを貯蔵するカラーインクカートリッジと，ブラックインクを貯蔵するブラックインクカートリッジを使用する。
【０００３】
図１及び図２を参照すると，従来の一般のインクジェットプリンタ用カラーインクカートリッジ２０が概略的に例示されている。
【０００４】
この種のインクカートリッジ２０は，マゼンタ，シアン，及びイエローの３色の色に相応する三つのインク貯蔵室６０を備える。インク貯蔵室６０のそれぞれは，その底部に連通孔８３ａが形成されている仕切り壁８３により，インク貯蔵所の機能を行うインク室６０ａと気泡室６０ｂとに構成される。
【０００５】
気泡室６０ｂには，多孔性部材８４が充填されており，フィルタ７１が，その多孔性部材８４とインク供給ポート２８との間に配置される。
【０００６】
インクカートリッジ２０のカバー部材２２には，複数の突出部７２を含むリブ部が形成され，各突出部７２は，所定の間隔をもって互いに隔てられている。突出部７２は，多孔性部材８４とカバー部材２２との間に所定の空間を提供する。
【０００７】
また，インク供給ポート２８の一部は，気泡室６０ｂの内側に突出するように形成されている。
【０００８】
図３に示すように，カバー部材２２は，インク注入孔７４，外気流入孔７６，外気への露出のための外気流入溝８０，及び外気流入孔７６を外気流入溝８０に接続する蛇形溝７８を有する。
【０００９】
図１に示すように，外気流入溝８０は，インクカートリッジ２０を使用する前は，フィルム８２でシールし，使用のためにフィルム８２を剥がすと外気に露出される。フィルム８２は，使用の際にフィルム８２の一部を剥がし易くするための舌部８２ａを有する。
【００１０】
このように構成されたインクカートリッジ２０の作用をみると，先ず，インクカートリッジ２０を使用する前に，フィルム８２の舌部８２ａを引っ張って該フィルムを剥がすことにより，外気流入溝８０が開放される。この結果，インク貯蔵室６０は，蛇形溝７８及び外気流入溝８０により外気に露出される。
【００１１】
次いで，インクカートリッジ２０をプリンタのカートリッジホルダー（図示せず）に搭載し，印刷ヘッド（図示せず）との流体の連通が行われた後，印刷を開始する。すると，印刷ヘッドで発生する負圧により多孔性部材８４により貯められていたインクが吸引される。この時，インク貯蔵室６０は，外気流入孔７６，蛇形溝７８，及び外気流入溝８０を通って外気に露出することで一定の負圧を保持する。この結果，インクがフィルタ７１により気泡，埃等が除去され，インクのみが印刷ヘッドに供給される。
【００１２】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら，このように構成されたインクカートリッジ２０は，このカートリッジ内に負圧を保持するために外気を流入する蛇形溝７８が細長く延びているため，プリンタの運搬の際，インクカートリッジ２０が揺れたり外部温度の上昇等でインクが膨張したりする場合に，インクが逆流して蛇形溝７８の一部または全部を詰まらせてしまうおそれがある。
【００１３】
特に，印刷ヘッドにより形成される負圧により外部の微細な埃が蛇形溝７８に流入し，逆流したインクと合流して乾燥する場合は，蛇形溝７８の外気流入機能は元の機能を果たすことができなくなる。
【００１４】
このように，蛇形溝７８の一部または全部がインク及び／または埃等により詰まってしまう場合，印刷ヘッドでインクを噴射するための負圧が形成されても，インク貯蔵室６０内では負圧が形成されない。このため，インクがスムーズに供給できなくなり，この結果，画質が劣化したり，印刷が行えなかったりする。
【００１５】
本発明は，従来のインクカートリッジに関する上記問題点に鑑みてなされたものであり，本発明の目的は，インクの蒸発を最大限に抑えつつ，運搬の際の印刷機器の揺れまたは外部温度の上昇によりインクが逆流したり，周囲の微細な埃等が流入したりしても，負圧保持のための外気流入経路が詰まらないようにすることにより，製品の信頼性とインクの吐き出しの安定性を増大させたインクカートリッジを提供することにある。
【００１６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために，本発明は，インクを貯蔵する少なくとも１つのインク貯蔵室と，インク貯蔵室にインクを注入するための少なくとも１つのインク注入孔およびインク貯蔵室を外部に連通させる少なくとも１つの第１外気流入孔を備え，インク貯蔵室を封止するシール部と，シール部と共に第１外気流入孔とインク貯蔵室の外部との間に外気流入経路を形成し，インク注入孔を封止するカバー部と，第１外気流入孔と共に外気流入経路の一部を形成し，第１外気流入孔と共にインクが第１外気流入孔を介して漏れないように一次的に遮断するインク遮断部と，インク遮断部に形成された外気流入経路の一部とインク貯蔵室の外部とを連通させる外気流入経路の他部を形成し，インク遮断部を通過したインクを一次的に貯蔵するインク貯蔵部と，を含む。
【００１７】
ここで，上記インク遮断部は，第１外気流入孔に挿入されるようにカバー部に形成された第１円筒部材と，第１円筒部材が第１外気流入孔に挿入された状態でインク貯蔵室とインク貯蔵部とを連通するように，第１円筒部材，第１外気流入孔の内壁，および内壁と第１円筒部材との間の少なくともいずれか１つに形成された微細隙間と，を含むことを特徴とする。
【００１８】
好適な実施の形態において、インク貯蔵部は，第１外気流入孔の周囲を取り囲むようにカバー部に向けてシール部上に突出形成され，シール部がカバー部により封止された状態でインク貯蔵空間を構成する第１壁と，インクが漏れないように第１壁の一側上部に形成され，第１外気流入孔をインク貯蔵室の外部に連通させる第２外気流入孔と，第２外気流入孔とインク遮断部との間で第１壁の内側に配置され，インク貯蔵室の外部から流入する埃がインク遮断部に流入しないように一次的に遮断し，かつインク遮断部を通過したインクがインク貯蔵室の外部に漏れないように二次的に遮断するインク・埃遮断部材と，を含む。
【００１９】
また，インク貯蔵室に連通される印刷ヘッドを含み，第２外気流入孔は，印刷時の印刷ヘッドの移動によりインク遮断部に埃が流入しないように，印刷ヘッドの移動方向と異なる方向で第１外気流入孔をインク貯蔵室の外部に連通させるように配置されることが好ましい。また，インク・埃遮断部材は，インク貯蔵空間を第１外気流入孔と第２外気流入孔に各々に相応する２つの空間に分割構成する，連通開口を伴う第２壁を含むことが好ましい。
【００２０】
更に，カバー部は，インク注入孔を封止するようにシール部のインク注入孔に向けて突出して形成され，インク注入孔に挿入される第２円筒部材と，第１および第２円筒部材を第１外気流入孔およびインク注入孔から取り外せるように，インクカートリッジの外側に延びるノブと，を含むことが好ましい。
【００２１】
また，カバー部とシール部とのシールを容易にするために，シール部の第１壁と，第２壁の上端には融着ガイドが形成されることが好ましい。
【００２２】
【発明の実施の形態】
以下に，添付図面を参照しながら，本発明にかかるインクカートリッジの好適な実施の形態について詳細に説明する。なお，本明細書及び図面において，実質的に同一の機能構成を有する構成要素については，同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【００２３】
図４を参照すると，本実施の形態にかかるカラーインクカートリッジ１００が概略的に例示されている。
【００２４】
本実施の形態のインクカートリッジ１００は，一例として，マゼンタ，シアン，及びイエローの３色のインクを貯蔵する三つのインク貯蔵室（図示せず）を構成する本体１１０を備える。
【００２５】
本体１１０内のそれぞれのインク貯蔵室は，インク室（図示せず）と気泡室（図示せず）とで構成されており，気泡室の底部には，インク供給ポート１１８が形成されている。インク貯蔵室の細部構成は，従来のインクカートリッジ２０と同一のものでも適用できるため，ここではその詳細な説明を省略する。
【００２６】
本体１１０の上部には，三つのインク貯蔵室を封止するためのシール部１２０が，その周縁部から下方に向けて突設された固定突条１２５を介して本体１１０と結合されている。
【００２７】
図５，図７，図８，及び図９に詳しく示すように，シール部１２０は，それぞれのインク貯蔵室を外部と連通するための三つの第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク貯蔵室内にインクを注入するための三つのインク注入孔１７４，１７４’，１７４”を備えた板状の部材からなる。
【００２８】
シール部１２０の第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”には，カートリッジの衝撃また揺れ，外部温度の上昇等によりインクが膨張して第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”から漏れることを１次に遮断するように，後述するカバー部１４０に形成された第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”がそれぞれ挿入される。カバー部１４０の第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”は，後述するインク遮断部１４９（図６及び図８）を形成する。
【００２９】
また，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の周りのシール部１２０の上面には，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”がそれぞれ形成されている。
【００３０】
図５に示すように，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”は，それぞれシール部１２０の第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の周りから上面の上方に突出して形成された，略長方形の長方形壁１２２，１２２’，１２２”，この長方形壁１２２，１２２’，１２２”の一側に形成された外気１６２を流入するための第２外気流入孔または開口１２６，１２６’，１２６”，及び長方形壁１２２，１２２’，１２２”内において第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”とインク遮断部１４９との間に配置されたインク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”を含む。
【００３１】
長方形壁１２２，１２２’，１２２”は，シール部１２０がカバー部１４０により封止されると，インク遮断部１４９を通って逆流したインクを貯蔵するための空間を形成する。
【００３２】
第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”は，インク遮断部１４９を通ってインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に逆流したインクが外部に漏れないように，長方形壁１２２，１２２’，１２２”の上部に形成される。
【００３３】
また，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”は，印刷の際の印刷ヘッド（図示せず）の移動により周りの埃１６４が流入しないように，印刷ヘッドの移動方向と異なる方向，例えば，印刷ヘッドの移動方向と対向しないように配置することが好ましい。
【００３４】
インク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”は，それぞれインク貯蔵空間を二つの小空間に分割構成する，連通開口１２９，１２９’，１２９”を有する仕切り壁からなる。このようなインク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”は，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”を通って外部から流入した埃１６４が第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク遮断部１４９に流入しないようにし，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク遮断部１４９を１次的に通ったインクが外部に漏れないように２次的に遮断する役割を果たす。
【００３５】
このように，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”は，インクが蒸発することを最大限に遅延し，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク遮断部１４９を１次的に通ったインクが外部に漏れないように貯蔵すると共に，外部から流入した埃１６４がインク貯蔵室の内部に流入することを遮断する。
【００３６】
また，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”の周りのシール部１２０の上面には，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止するように，後述するカバー体１４０の第２円筒部材１４８，１４８’，１４８”を収容するための円筒形壁１２４，１２４’，１２４”がそれぞれ突出して形成されている。
【００３７】
図４及び図７に示すように，シール部１２０上に配置されたカバー部１４０は，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止するようにインク注入孔１７４，１７４’，１７４”の周りにおいてシール部１２０の上面から上方に突出して形成されている円筒形壁１２４，１２４’，１２４”に挿入できるように形成された第２円筒部材１４８，１４８’，１４８”，及びインクの詰め替え時や，インクカートリッジ１００内における問題の発生時に，後述する第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”，及び第２円筒形部材１４８，１４８’，１４８”を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク注入孔１７４，１７４’，１７４”から容易に取り外せるように，本体１１０の外側に延びている舌部またはノブ１４２を備える。
【００３８】
また，カバー部１４０は，上述したように，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”からインクが漏れないように第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入され，インクを１次的に遮断するインク遮断部１４９を形成している。
【００３９】
図７及び図８に示すように，インク遮断部１４９は，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入できるように，カバー部１４０の底面に突設される第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”，及びこの第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”が第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入されると，インク貯蔵室とインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”との間が互いに連通するように，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外周面に対し垂直に第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の垂直長より若干長く形成された微細溝または隙間（図示せず）で構成される。
【００４０】
選択的に，インク遮断部１４９の微細隙間を，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外周面に形成する代わりに，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の内周面に対し垂直に形成することもできる。
【００４１】
また，微細隙間は，このような形態の他にも，インクが通ってから乾燥しても詰まり難い形態，例えば，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外形を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の内径より小さくし，その間に微細な環状隙間を形成するか，または，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入する時，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”と当接しない上側部分においてその内部中空部とインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”とが互いに連通するように微細通孔を形成するといった形態等で代替することができる。
【００４２】
このように，カバー部１４０は，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”と共に第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク貯蔵室の外部との間の外気流入経路を形成する役割とインク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止する役割を果たすようになる。
【００４３】
カバー部１４０とシール部１２０とを結合する際，即ち，カバー部１４０の第１及び第２円筒部材１５０，１５０’，１５０”，１４８，１４８’，１４８”を，それぞれインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入するに際して，カバー部１４０とシール部１２０とのシールを容易くするために，シール部１２０の円筒形壁１２４，１２４’，１２４”と長方形壁１２２，１２２’，１２２”の上端には，超音波による融着時にカバー部１４０の底面と融着され易いように略三角形断面の融着ガイド１６０が形成される。
【００４４】
従って，カバー部１４０の第１及び第２円筒部材１５０，１５０’，１５０”，１４８，１４８’，１４８”を，それぞれインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入した後，カバー部１４０の底面をシール部１２０の融着ガイド１６０に超音波により融着すると，それぞれのインク貯蔵室と外部との間には，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”，円筒開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４９の微細隙間からなる外気流入経路が形成される。
【００４５】
インクカートリッジ１００を使用する前に外気流入経路からのインクの蒸発を抑えるように，外気流入経路の入口を構成するカバー部１４０のノブ１４２の下部空間は，適宜のシールフィルムで封止される。
【００４６】
以上，本発明の実施の形態では，カラーインクカートリッジ１００への適用を例に挙げて説明してきたが，本発明は，これに限定されることではなく，同一の構成でブラックインクカートリッジにも適用し得る。
【００４７】
上記のように構成された本実施の形態のカラーインクカートリッジ１００の作用を，図４〜図９を参照して詳述すると，次の通りである。
【００４８】
先ず，インクカートリッジ１００を使用する前に，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間の入口を封止しているシールフィルムを剥がす。すると，マゼンタ，シアン，イエローの３色のインク貯蔵室のそれぞれが，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”，連通開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４０の微細隙間からなる外気流入経路から外気に露出される。
【００４９】
次いで，インクカートリッジ１００をプリンタのカートリッジホルダー（図示せず）に搭載し，印刷ヘッドとの流体の連通が行われた後，印刷を開始すると，印刷ヘッドで発生する負圧によりインク貯蔵室に貯蔵されているインクが吸引される。
【００５０】
この時，外気１６２が，図５に示すように，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間及び第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”から流入した後，仕切り壁１２８，１２８’，１２８”により埃１６４等が除去されてから，連通開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４０の微細隙間を通ってそれぞれのインク貯蔵室内に流れ込む。この結果，インク貯蔵室内には一定の負圧が保持されるため，インクが印刷ヘッドに供給される。
【００５１】
インクカートリッジ１００内のインクを使い切った後，インクを詰め替える際，またはインクカートリッジ１００内に詰り等の問題が発生した時は，カバー部１４０の底面が円筒形壁１２４，１２４’，１２４”，及び長方形壁１２２，１２２’，１２２”の融着ガイド１６０から分離されるようにノブ１４２を上方に押し上げると，シール部１２０のインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”等が開放され，ここからインクを注入したり，問題を解決したりすることができる。
【００５２】
また，プリンタの運搬の際の揺れ，または外部温度の上昇によりインクカートリッジ１００の内部のインクが膨張して，インク遮断部１４９の微細隙間を通ってインクが逆流する場合，この逆流したインクが，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”の仕切り壁１２８，１２８’，１２８”により遮断され，外部に漏れることなくインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に仮貯蔵される。その後，インクが正常状態に戻ると，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に貯蔵されていたインクが，再び微細隙間を通ってインク貯蔵室に戻る。この時，それぞれ異なる色相のインクを貯蔵しているインク貯蔵室が，それぞれ相応するインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”を備えることにより，インクが混ざり合うことがない。
【００５３】
以上，添付図面を参照しながら本発明のインクカートリッジの好適な実施の形態について説明したが，本発明はかかる例に限定されない。いわゆる当業者であれば，特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり，それらについても当然に本発明の技術的思想に属するものと了解される。
【００５４】
【発明の効果】
以上で説明したように，本発明にかかるインクカートリッジは，インクの蒸発を最大限に抑えつつ，運搬の際のプリンタの揺れまたは外部温度の上昇によりインクが逆流したり，周りの微細な埃等が流入したりしても，負圧保持のための外気流入経路が詰まらないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は，従来のインクカートリッジの斜視図である。
【図２】図２は，図１に示すインクカートリッジの断面図である。
【図３】図３は，図１に示すインクカートリッジのカバー部材の斜視図である。
【図４】図４は，本実施の形態のインクカートリッジの好適な実施の形態を示す斜視図である。
【図５】図５は，図４に示すインクカートリッジのシール部の断面図である。
【図６】図６は，図４に示すインクカートリッジのシール部とカバー部の平面図である。
【図７】図７は，図６の線Ａ−Ａに沿う断面図である。
【図８】図８は，図６の線Ｂ−Ｂに沿う断面図である。
【図９】図９は，図６の線Ｃ−Ｃに沿う断面図である。
【符号の説明】
２０，１００：インクカートリッジ
２２：カバー部材
２８，１１８：インク供給ポート
６０：インク貯蔵室
７４，１７４，１７４’，１７４”：インク注入孔
７６，１２６，１２６’，１２６”，１７６，１７６’，１７６”：外気流入孔
７８：蛇形溝
８０：外気流入溝
８２：フィルム
８２ａ：舌部
１１０：本体
１２０：シール部
１２１，１２１’，１２１”：インク貯蔵部
１２２，１２２’，１２２”：長方形壁
１２４，１２４’，１２４”：円筒形壁
１２８，１２８’，１２８”：インク／埃遮断部材
１２９，１２９’，１２９”：連通開口
１４８，１４８’，１４８”，１５０，１５０’，１５０”：円筒部材
１４０：カバー部
１４２：ノブ
１４９：インク遮断部
１６０：融着ガイド
【発明の属する技術分野】
本発明は，インクジェットプリンタ，ファクシミリ，コピー機などの印刷機器に使用されるインクカートリッジに関し，より詳しくは，印刷機器の運搬の際に，カートリッジの揺れ，外部温度の上昇等によりインクが膨張して逆流したり，印刷の際の微細な埃等が流入したりしても詰まることのない，負圧保持のための外気流入経路を有するインクカートリッジに関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に，印刷機器は，マゼンタ，シアン，イエロー，及びブラックの４色のインクを使用してカラーイメージを印刷する。印刷の際，これら４種のインクを印刷機器の印刷ヘッドに供給するために，印刷機器，特にインクジェットプリンタは，通常，マゼンタ，シアン，及びイエローのインクを貯蔵するカラーインクカートリッジと，ブラックインクを貯蔵するブラックインクカートリッジを使用する。
【０００３】
図１及び図２を参照すると，従来の一般のインクジェットプリンタ用カラーインクカートリッジ２０が概略的に例示されている。
【０００４】
この種のインクカートリッジ２０は，マゼンタ，シアン，及びイエローの３色の色に相応する三つのインク貯蔵室６０を備える。インク貯蔵室６０のそれぞれは，その底部に連通孔８３ａが形成されている仕切り壁８３により，インク貯蔵所の機能を行うインク室６０ａと気泡室６０ｂとに構成される。
【０００５】
気泡室６０ｂには，多孔性部材８４が充填されており，フィルタ７１が，その多孔性部材８４とインク供給ポート２８との間に配置される。
【０００６】
インクカートリッジ２０のカバー部材２２には，複数の突出部７２を含むリブ部が形成され，各突出部７２は，所定の間隔をもって互いに隔てられている。突出部７２は，多孔性部材８４とカバー部材２２との間に所定の空間を提供する。
【０００７】
また，インク供給ポート２８の一部は，気泡室６０ｂの内側に突出するように形成されている。
【０００８】
図３に示すように，カバー部材２２は，インク注入孔７４，外気流入孔７６，外気への露出のための外気流入溝８０，及び外気流入孔７６を外気流入溝８０に接続する蛇形溝７８を有する。
【０００９】
図１に示すように，外気流入溝８０は，インクカートリッジ２０を使用する前は，フィルム８２でシールし，使用のためにフィルム８２を剥がすと外気に露出される。フィルム８２は，使用の際にフィルム８２の一部を剥がし易くするための舌部８２ａを有する。
【００１０】
このように構成されたインクカートリッジ２０の作用をみると，先ず，インクカートリッジ２０を使用する前に，フィルム８２の舌部８２ａを引っ張って該フィルムを剥がすことにより，外気流入溝８０が開放される。この結果，インク貯蔵室６０は，蛇形溝７８及び外気流入溝８０により外気に露出される。
【００１１】
次いで，インクカートリッジ２０をプリンタのカートリッジホルダー（図示せず）に搭載し，印刷ヘッド（図示せず）との流体の連通が行われた後，印刷を開始する。すると，印刷ヘッドで発生する負圧により多孔性部材８４により貯められていたインクが吸引される。この時，インク貯蔵室６０は，外気流入孔７６，蛇形溝７８，及び外気流入溝８０を通って外気に露出することで一定の負圧を保持する。この結果，インクがフィルタ７１により気泡，埃等が除去され，インクのみが印刷ヘッドに供給される。
【００１２】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら，このように構成されたインクカートリッジ２０は，このカートリッジ内に負圧を保持するために外気を流入する蛇形溝７８が細長く延びているため，プリンタの運搬の際，インクカートリッジ２０が揺れたり外部温度の上昇等でインクが膨張したりする場合に，インクが逆流して蛇形溝７８の一部または全部を詰まらせてしまうおそれがある。
【００１３】
特に，印刷ヘッドにより形成される負圧により外部の微細な埃が蛇形溝７８に流入し，逆流したインクと合流して乾燥する場合は，蛇形溝７８の外気流入機能は元の機能を果たすことができなくなる。
【００１４】
このように，蛇形溝７８の一部または全部がインク及び／または埃等により詰まってしまう場合，印刷ヘッドでインクを噴射するための負圧が形成されても，インク貯蔵室６０内では負圧が形成されない。このため，インクがスムーズに供給できなくなり，この結果，画質が劣化したり，印刷が行えなかったりする。
【００１５】
本発明は，従来のインクカートリッジに関する上記問題点に鑑みてなされたものであり，本発明の目的は，インクの蒸発を最大限に抑えつつ，運搬の際の印刷機器の揺れまたは外部温度の上昇によりインクが逆流したり，周囲の微細な埃等が流入したりしても，負圧保持のための外気流入経路が詰まらないようにすることにより，製品の信頼性とインクの吐き出しの安定性を増大させたインクカートリッジを提供することにある。
【００１６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために，本発明は，インクを貯蔵する少なくとも１つのインク貯蔵室と，インク貯蔵室にインクを注入するための少なくとも１つのインク注入孔およびインク貯蔵室を外部に連通させる少なくとも１つの第１外気流入孔を備え，インク貯蔵室を封止するシール部と，シール部と共に第１外気流入孔とインク貯蔵室の外部との間に外気流入経路を形成し，インク注入孔を封止するカバー部と，第１外気流入孔と共に外気流入経路の一部を形成し，第１外気流入孔と共にインクが第１外気流入孔を介して漏れないように一次的に遮断するインク遮断部と，インク遮断部に形成された外気流入経路の一部とインク貯蔵室の外部とを連通させる外気流入経路の他部を形成し，インク遮断部を通過したインクを一次的に貯蔵するインク貯蔵部と，を含む。
【００１７】
ここで，上記インク遮断部は，第１外気流入孔に挿入されるようにカバー部に形成された第１円筒部材と，第１円筒部材が第１外気流入孔に挿入された状態でインク貯蔵室とインク貯蔵部とを連通するように，第１円筒部材，第１外気流入孔の内壁，および内壁と第１円筒部材との間の少なくともいずれか１つに形成された微細隙間と，を含むことを特徴とする。
【００１８】
好適な実施の形態において、インク貯蔵部は，第１外気流入孔の周囲を取り囲むようにカバー部に向けてシール部上に突出形成され，シール部がカバー部により封止された状態でインク貯蔵空間を構成する第１壁と，インクが漏れないように第１壁の一側上部に形成され，第１外気流入孔をインク貯蔵室の外部に連通させる第２外気流入孔と，第２外気流入孔とインク遮断部との間で第１壁の内側に配置され，インク貯蔵室の外部から流入する埃がインク遮断部に流入しないように一次的に遮断し，かつインク遮断部を通過したインクがインク貯蔵室の外部に漏れないように二次的に遮断するインク・埃遮断部材と，を含む。
【００１９】
また，インク貯蔵室に連通される印刷ヘッドを含み，第２外気流入孔は，印刷時の印刷ヘッドの移動によりインク遮断部に埃が流入しないように，印刷ヘッドの移動方向と異なる方向で第１外気流入孔をインク貯蔵室の外部に連通させるように配置されることが好ましい。また，インク・埃遮断部材は，インク貯蔵空間を第１外気流入孔と第２外気流入孔に各々に相応する２つの空間に分割構成する，連通開口を伴う第２壁を含むことが好ましい。
【００２０】
更に，カバー部は，インク注入孔を封止するようにシール部のインク注入孔に向けて突出して形成され，インク注入孔に挿入される第２円筒部材と，第１および第２円筒部材を第１外気流入孔およびインク注入孔から取り外せるように，インクカートリッジの外側に延びるノブと，を含むことが好ましい。
【００２１】
また，カバー部とシール部とのシールを容易にするために，シール部の第１壁と，第２壁の上端には融着ガイドが形成されることが好ましい。
【００２２】
【発明の実施の形態】
以下に，添付図面を参照しながら，本発明にかかるインクカートリッジの好適な実施の形態について詳細に説明する。なお，本明細書及び図面において，実質的に同一の機能構成を有する構成要素については，同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【００２３】
図４を参照すると，本実施の形態にかかるカラーインクカートリッジ１００が概略的に例示されている。
【００２４】
本実施の形態のインクカートリッジ１００は，一例として，マゼンタ，シアン，及びイエローの３色のインクを貯蔵する三つのインク貯蔵室（図示せず）を構成する本体１１０を備える。
【００２５】
本体１１０内のそれぞれのインク貯蔵室は，インク室（図示せず）と気泡室（図示せず）とで構成されており，気泡室の底部には，インク供給ポート１１８が形成されている。インク貯蔵室の細部構成は，従来のインクカートリッジ２０と同一のものでも適用できるため，ここではその詳細な説明を省略する。
【００２６】
本体１１０の上部には，三つのインク貯蔵室を封止するためのシール部１２０が，その周縁部から下方に向けて突設された固定突条１２５を介して本体１１０と結合されている。
【００２７】
図５，図７，図８，及び図９に詳しく示すように，シール部１２０は，それぞれのインク貯蔵室を外部と連通するための三つの第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク貯蔵室内にインクを注入するための三つのインク注入孔１７４，１７４’，１７４”を備えた板状の部材からなる。
【００２８】
シール部１２０の第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”には，カートリッジの衝撃また揺れ，外部温度の上昇等によりインクが膨張して第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”から漏れることを１次に遮断するように，後述するカバー部１４０に形成された第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”がそれぞれ挿入される。カバー部１４０の第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”は，後述するインク遮断部１４９（図６及び図８）を形成する。
【００２９】
また，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の周りのシール部１２０の上面には，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”がそれぞれ形成されている。
【００３０】
図５に示すように，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”は，それぞれシール部１２０の第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の周りから上面の上方に突出して形成された，略長方形の長方形壁１２２，１２２’，１２２”，この長方形壁１２２，１２２’，１２２”の一側に形成された外気１６２を流入するための第２外気流入孔または開口１２６，１２６’，１２６”，及び長方形壁１２２，１２２’，１２２”内において第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”とインク遮断部１４９との間に配置されたインク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”を含む。
【００３１】
長方形壁１２２，１２２’，１２２”は，シール部１２０がカバー部１４０により封止されると，インク遮断部１４９を通って逆流したインクを貯蔵するための空間を形成する。
【００３２】
第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”は，インク遮断部１４９を通ってインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に逆流したインクが外部に漏れないように，長方形壁１２２，１２２’，１２２”の上部に形成される。
【００３３】
また，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”は，印刷の際の印刷ヘッド（図示せず）の移動により周りの埃１６４が流入しないように，印刷ヘッドの移動方向と異なる方向，例えば，印刷ヘッドの移動方向と対向しないように配置することが好ましい。
【００３４】
インク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”は，それぞれインク貯蔵空間を二つの小空間に分割構成する，連通開口１２９，１２９’，１２９”を有する仕切り壁からなる。このようなインク／埃遮断部材１２８，１２８’，１２８”は，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”を通って外部から流入した埃１６４が第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク遮断部１４９に流入しないようにし，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク遮断部１４９を１次的に通ったインクが外部に漏れないように２次的に遮断する役割を果たす。
【００３５】
このように，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”は，インクが蒸発することを最大限に遅延し，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク遮断部１４９を１次的に通ったインクが外部に漏れないように貯蔵すると共に，外部から流入した埃１６４がインク貯蔵室の内部に流入することを遮断する。
【００３６】
また，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”の周りのシール部１２０の上面には，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止するように，後述するカバー体１４０の第２円筒部材１４８，１４８’，１４８”を収容するための円筒形壁１２４，１２４’，１２４”がそれぞれ突出して形成されている。
【００３７】
図４及び図７に示すように，シール部１２０上に配置されたカバー部１４０は，インク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止するようにインク注入孔１７４，１７４’，１７４”の周りにおいてシール部１２０の上面から上方に突出して形成されている円筒形壁１２４，１２４’，１２４”に挿入できるように形成された第２円筒部材１４８，１４８’，１４８”，及びインクの詰め替え時や，インクカートリッジ１００内における問題の発生時に，後述する第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”，及び第２円筒形部材１４８，１４８’，１４８”を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”，及びインク注入孔１７４，１７４’，１７４”から容易に取り外せるように，本体１１０の外側に延びている舌部またはノブ１４２を備える。
【００３８】
また，カバー部１４０は，上述したように，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”からインクが漏れないように第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入され，インクを１次的に遮断するインク遮断部１４９を形成している。
【００３９】
図７及び図８に示すように，インク遮断部１４９は，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入できるように，カバー部１４０の底面に突設される第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”，及びこの第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”が第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入されると，インク貯蔵室とインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”との間が互いに連通するように，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外周面に対し垂直に第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の垂直長より若干長く形成された微細溝または隙間（図示せず）で構成される。
【００４０】
選択的に，インク遮断部１４９の微細隙間を，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外周面に形成する代わりに，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の内周面に対し垂直に形成することもできる。
【００４１】
また，微細隙間は，このような形態の他にも，インクが通ってから乾燥しても詰まり難い形態，例えば，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”の外形を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”の内径より小さくし，その間に微細な環状隙間を形成するか，または，第１円筒部材１５０，１５０’，１５０”を第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入する時，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”と当接しない上側部分においてその内部中空部とインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”とが互いに連通するように微細通孔を形成するといった形態等で代替することができる。
【００４２】
このように，カバー部１４０は，第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”と共に第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”とインク貯蔵室の外部との間の外気流入経路を形成する役割とインク注入孔１７４，１７４’，１７４”を封止する役割を果たすようになる。
【００４３】
カバー部１４０とシール部１２０とを結合する際，即ち，カバー部１４０の第１及び第２円筒部材１５０，１５０’，１５０”，１４８，１４８’，１４８”を，それぞれインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入するに際して，カバー部１４０とシール部１２０とのシールを容易くするために，シール部１２０の円筒形壁１２４，１２４’，１２４”と長方形壁１２２，１２２’，１２２”の上端には，超音波による融着時にカバー部１４０の底面と融着され易いように略三角形断面の融着ガイド１６０が形成される。
【００４４】
従って，カバー部１４０の第１及び第２円筒部材１５０，１５０’，１５０”，１４８，１４８’，１４８”を，それぞれインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”に挿入した後，カバー部１４０の底面をシール部１２０の融着ガイド１６０に超音波により融着すると，それぞれのインク貯蔵室と外部との間には，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”，円筒開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４９の微細隙間からなる外気流入経路が形成される。
【００４５】
インクカートリッジ１００を使用する前に外気流入経路からのインクの蒸発を抑えるように，外気流入経路の入口を構成するカバー部１４０のノブ１４２の下部空間は，適宜のシールフィルムで封止される。
【００４６】
以上，本発明の実施の形態では，カラーインクカートリッジ１００への適用を例に挙げて説明してきたが，本発明は，これに限定されることではなく，同一の構成でブラックインクカートリッジにも適用し得る。
【００４７】
上記のように構成された本実施の形態のカラーインクカートリッジ１００の作用を，図４〜図９を参照して詳述すると，次の通りである。
【００４８】
先ず，インクカートリッジ１００を使用する前に，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間の入口を封止しているシールフィルムを剥がす。すると，マゼンタ，シアン，イエローの３色のインク貯蔵室のそれぞれが，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間，第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”，連通開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４０の微細隙間からなる外気流入経路から外気に露出される。
【００４９】
次いで，インクカートリッジ１００をプリンタのカートリッジホルダー（図示せず）に搭載し，印刷ヘッドとの流体の連通が行われた後，印刷を開始すると，印刷ヘッドで発生する負圧によりインク貯蔵室に貯蔵されているインクが吸引される。
【００５０】
この時，外気１６２が，図５に示すように，カバー部１４０のノブ１４２の下部空間及び第２外気流入孔１２６，１２６’，１２６”から流入した後，仕切り壁１２８，１２８’，１２８”により埃１６４等が除去されてから，連通開口１２９，１２９’，１２９”，及びインク遮断部１４０の微細隙間を通ってそれぞれのインク貯蔵室内に流れ込む。この結果，インク貯蔵室内には一定の負圧が保持されるため，インクが印刷ヘッドに供給される。
【００５１】
インクカートリッジ１００内のインクを使い切った後，インクを詰め替える際，またはインクカートリッジ１００内に詰り等の問題が発生した時は，カバー部１４０の底面が円筒形壁１２４，１２４’，１２４”，及び長方形壁１２２，１２２’，１２２”の融着ガイド１６０から分離されるようにノブ１４２を上方に押し上げると，シール部１２０のインク注入孔１７４，１７４’，１７４”，及び第１外気流入孔１７６，１７６’，１７６”等が開放され，ここからインクを注入したり，問題を解決したりすることができる。
【００５２】
また，プリンタの運搬の際の揺れ，または外部温度の上昇によりインクカートリッジ１００の内部のインクが膨張して，インク遮断部１４９の微細隙間を通ってインクが逆流する場合，この逆流したインクが，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”の仕切り壁１２８，１２８’，１２８”により遮断され，外部に漏れることなくインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に仮貯蔵される。その後，インクが正常状態に戻ると，インク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”に貯蔵されていたインクが，再び微細隙間を通ってインク貯蔵室に戻る。この時，それぞれ異なる色相のインクを貯蔵しているインク貯蔵室が，それぞれ相応するインク貯蔵部１２１，１２１’，１２１”を備えることにより，インクが混ざり合うことがない。
【００５３】
以上，添付図面を参照しながら本発明のインクカートリッジの好適な実施の形態について説明したが，本発明はかかる例に限定されない。いわゆる当業者であれば，特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり，それらについても当然に本発明の技術的思想に属するものと了解される。
【００５４】
【発明の効果】
以上で説明したように，本発明にかかるインクカートリッジは，インクの蒸発を最大限に抑えつつ，運搬の際のプリンタの揺れまたは外部温度の上昇によりインクが逆流したり，周りの微細な埃等が流入したりしても，負圧保持のための外気流入経路が詰まらないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は，従来のインクカートリッジの斜視図である。
【図２】図２は，図１に示すインクカートリッジの断面図である。
【図３】図３は，図１に示すインクカートリッジのカバー部材の斜視図である。
【図４】図４は，本実施の形態のインクカートリッジの好適な実施の形態を示す斜視図である。
【図５】図５は，図４に示すインクカートリッジのシール部の断面図である。
【図６】図６は，図４に示すインクカートリッジのシール部とカバー部の平面図である。
【図７】図７は，図６の線Ａ−Ａに沿う断面図である。
【図８】図８は，図６の線Ｂ−Ｂに沿う断面図である。
【図９】図９は，図６の線Ｃ−Ｃに沿う断面図である。
【符号の説明】
２０，１００：インクカートリッジ
２２：カバー部材
２８，１１８：インク供給ポート
６０：インク貯蔵室
７４，１７４，１７４’，１７４”：インク注入孔
７６，１２６，１２６’，１２６”，１７６，１７６’，１７６”：外気流入孔
７８：蛇形溝
８０：外気流入溝
８２：フィルム
８２ａ：舌部
１１０：本体
１２０：シール部
１２１，１２１’，１２１”：インク貯蔵部
１２２，１２２’，１２２”：長方形壁
１２４，１２４’，１２４”：円筒形壁
１２８，１２８’，１２８”：インク／埃遮断部材
１２９，１２９’，１２９”：連通開口
１４８，１４８’，１４８”，１５０，１５０’，１５０”：円筒部材
１４０：カバー部
１４２：ノブ
１４９：インク遮断部
１６０：融着ガイド
Claims (10)
- インクを貯蔵する少なくとも１つのインク貯蔵室と，
前記インク貯蔵室にインクを注入するための少なくとも１つのインク注入孔および前記インク貯蔵室を外部に連通させる少なくとも１つの第１外気流入孔を備え，前記インク貯蔵室を封止するシール部と，
前記シール部と共に前記第１外気流入孔と前記インク貯蔵室の外部との間に外気流入経路を形成し，前記インク注入孔を封止するカバー部と，
前記第１外気流入孔と共に前記外気流入経路の一部を形成し，前記第１外気流入孔と共にインクが前記第１外気流入孔を介して漏れないように一次的に遮断するインク遮断部と，
前記インク遮断部に形成された前記外気流入経路の一部と前記インク貯蔵室の外部とを連通させる前記外気流入経路の他部を形成し，前記インク遮断部を通過したインクを一時的に貯蔵するインク貯蔵部と，
を含み，
前記インク遮断部は，前記第１外気流入孔に挿入されるように前記カバー部に形成された第１円筒部材と，前記第１円筒部材が前記第１外気流入孔に挿入された状態で前記インク貯蔵室と前記インク貯蔵部とを連通するように，前記第１円筒部材，前記第１外気流入孔の内壁，および前記内壁と前記第１円筒部材との間の少なくともいずれか１つに形成された微細隙間と，を含むことを特徴とするインクカートリッジ。 - 前記インク貯蔵部は，
前記第１外気流入孔の周囲を取り囲むように前記カバー部に向けて前記シール部上に突出形成され，前記シール部が前記カバー部により封止された状態でインク貯蔵空間を構成する第１壁と，
インクが漏れないように前記第１壁の一側上部に形成され，前記第１外気流入孔を前記インク貯蔵室の外部に連通させる第２外気流入孔と，
前記第２外気流入孔と前記インク遮断部との間で前記第１壁の内側に配置され，前記インク貯蔵室の外部から流入する埃が前記インク遮断部に流入しないように一次的に遮断し，かつ前記インク遮断部を通過したインクが前記インク貯蔵室の外部に漏れないように二次的に遮断するインク・埃遮断部材と，
を含むことを特徴とする，請求項１に記載のインクカートリッジ。 - 前記インク貯蔵室に連通される印刷ヘッドを含み，前記第２外気流入孔は，印刷時の前記印刷ヘッドの移動により前記インク遮断部に埃が流入しないように，前記印刷ヘッドの移動方向と異なる方向で前記第１外気流入孔を前記インク貯蔵室の外部に連通させるように配置されることを特徴とする，請求項２に記載のインクカートリッジ。
- 前記インク・埃遮断部材は，前記インク貯蔵空間を前記第１外気流入孔と第２外気流入孔に各々に相応する２つの空間に分割構成する，連通開口を伴う第２壁を含むことを特徴とする，請求項２または３に記載のインクカートリッジ。
- 前記カバー部は，
前記インク注入孔を封止するように前記シール部の前記インク注入孔に向けて突出形成され，前記インク注入孔に挿入される第２円筒部材と，
前記第１および第２円筒部材を前記第１外気流入孔および前記インク注入孔から取り外せるように，前記インクカートリッジの外側に延びるノブと，
を含むことを特徴とする，請求項１〜４のいずれかに記載のインクカートリッジ。 - 前記シール部の前記第１壁および第２壁の上端には，前記カバー部と前記シール部との封止を容易にする融着ガイドが形成されることを特徴とする，請求項５に記載のインクカートリッジ。
- インクを貯蔵するインク貯蔵室を構成する本体と，
前記インク貯蔵室を封止するように前記本体の一面を形成し，前記インク貯蔵室にインクを注入するためのインク注入孔を構成する第１内壁および前記インク貯蔵室を外部に連通させる第１外気流入孔を構成する第２内壁を備えるシール部と，
前記シール部の前記インク注入孔および第１外気流入孔を封止し，前記シール部と共に前記第１外気流入孔と前記インク貯蔵室の外部との間に外気流入経路を形成するカバー部と，
前記第１外気流入孔を介して前記インク貯蔵室の外部にインクが漏れないように，前記カバー部と前記シール部との間で前記第２内壁を取り囲むように前記シール部上に突出形成される壁であって，前記インク貯蔵室の外部から前記外気流入経路に外気が導かれるように前記外気流入経路の一部を形成する第２外気流入孔を一側上部に備える壁と，
前記第２内壁に挿入されるように前記カバー部に形成される第１円筒部材と，
前記第１円筒部材が前記第２内壁に挿入された状態で前記インク貯蔵室と前記第２外気流入孔とを互いに連通させるように，前記第１円筒部材，前記第２内壁，および前記第２内壁と前記第１円筒部材との間の少なくともいずれか１つに形成される微細隙間と，
を含むことを特徴とするインクカートリッジ。 - 前記壁は，前記シール部と前記カバー部との間に配置され，前記外気流入経路をインク貯蔵部と埃貯蔵部との２つの空間に分割構成するように前記壁の内側に配置されるインク・埃遮断部材を含むことを特徴とする，請求項７に記載のインクカートリッジ。
- 前記インク・埃遮断部材は，前記インク貯蔵部と前記埃貯蔵部とを互いに連通させる，前記外気流入経路の他部を形成する連通開口を含むことを特徴とする，請求項８に記載のインクカートリッジ。
- 相応するインクを貯蔵する複数のインク貯蔵室を構成する本体と，
前記インク貯蔵室を封止するように前記本体の一面を形成し，前記インク貯蔵室の各々に相応するインクを注入するための複数のインク注入孔を構成する複数の第１内壁および前記インク貯蔵室を外部に連通させる複数の第１外気流入孔を構成する複数の第２内壁を備えるシール部と，
前記シール部の前記インク注入孔および前記第１外気流入孔を封止し，前記シール部と共に前記第１外気流入孔と相応する前記インク貯蔵室の外部との間に外気流入経路を形成するカバー部と，
前記第１外気流入孔を介して相応する前記インク貯蔵室の外部にインクが漏れないように，前記カバー部と前記シール部との間で前記第２内壁の各々を取り囲むように前記シール部上に突出形成される複数の壁であって，前記インク貯蔵室の外部から前記外気流入経路に外気が導かれるように前記外気流入経路の他部を形成する第２外気流入孔を一側上部に備える複数の壁と，
前記第２内壁に挿入されるように前記カバー部に形成される第１円筒部材と，
前記第１円筒部材が前記第２内壁に挿入された状態で前記インク貯蔵室と前記第２外気流入孔とを互いに連通させるように，前記第１円筒部材，前記第２内壁，および前記第２内壁と前記第１円筒部材との間の少なくともいずれか１つに形成される微細隙間と，
を含むことを特徴とするインクカートリッジ。
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