JP3966020B2 - 加速度センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電素子を用いた加速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電セラミックスを利用した加速度センサとして、図11の(a)に示すように、2枚の圧電セラミックス層21,22を張り合わせ、2層を直列に接続したバイモルフ構造の圧電素子20をその片側で保持したものが知られている。23,24は主面電極、25は層間電極、26は支持部、27,28は取出電極である。図11の(b)は回路図である。この場合、加速度Gが印加された時に発生する電圧が加算されるように、各層21,22の分極方向Pは厚み方向で逆向きにしてある。
【0003】
このような構造の加速度センサに温度変化が加わると、各層21,22には焦電によって電圧が発生する。
図11の(a)に温度が低下した場合の各層21,22に発生する電位を表す。この場合、2層21,22で電位の方向が逆になるため、各層21,22に発生した電位はキャンセルされることなく保持される。これはセンサとして両端の電極を短絡しても変わらない。この電位の向きは、分極時の電位方向と逆向きとなり、脱分極を起こす電圧となる。特に、リフロー実装を行う表面実装型の加速度センサでは、リフロー槽から出た後、急激に温度が低下するため、大きな焦電電圧が発生し、分極低下により感度が下がるという問題が発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、図12の(a)は2枚の圧電セラミックス層31,32を並列に接続したバイモルフ構造の圧電素子30の例を示し、(b)はその回路図である。この場合、加速度Gが印加された時の電圧の極性が同一となるよう、分極方向Pは厚み方向で同じ向きにしてある。表裏主面の電極33,34は相互に接続されて一方の取出電極35に接続され、層間電極36は他方の取出電極37に接続されている。
【0005】
この場合も、温度変化によって各層31,32に焦電による電圧が発生するが、電位の方向が並列接続でキャンセルされる向きであるため、発生した焦電電圧はセンサ内でキャンセルされ、結果的に各層31,32とも電位が発生しない。
しかし、2層31,32が並列接続されているため、図11のような直列接続タイプに比べて電圧感度が低いという問題がある。また、いずれかの層内の一箇所でも絶縁抵抗が低下すると、圧電素子全体の感度が低下してしまう。センサの感度を上げるには、各層の厚みを薄くすることが有効であることは周知であるが、上記のように絶縁抵抗が低下する恐れがあると、各層の厚みを薄くすることができず、感度を上げることが難しい。
【0006】
上記のように各層を直列接続した場合には、電圧感度が高いという利点はあるが、焦電電圧による分極低下が起こる問題があり、各層を並列接続した場合には、焦電電圧による分極低下を防止できる利点はあるが、電圧感度が低く、かつ絶縁抵抗の低下の恐れにより厚みを薄くできないため、感度を上げることができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、直列接続型と並列接続型のそれぞれの問題点を解消し、電圧感度が高く、焦電電圧による分極低下を防止できる加速度センサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の実施形態は、圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、上記圧電素子は3層の圧電体層を積層したものであり、中央部の層は加速度が加わった時に電荷を発生しないダミー層であり、外側の2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、上記外側の2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、上記外側の2層の圧電体層と中央のダミー層との層間には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない層間電極がそれぞれ形成され、上記圧電素子の表裏主面には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された主面電極がそれぞれ形成され、上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサを提供する。
本発明の第2実施形態は、圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、上記圧電素子は3層の圧電体層を積層したものであり、中央部の層は加速度が加わった時に電荷を発生しないダミー層であり、外側の2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、上記外側の2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、上記外側の2層の圧電体層と中央のダミー層との層間には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された4つの層間電極が形成され、上記圧電素子の表裏主面には、上記4つのセルに亘って長さ方向に亘って連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない主面電極がそれぞれ形成され、上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された2つの上記層間電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された2つの上記層間電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサである。
【0009】
本発明の第3実施形態は、圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、上記圧電素子は2層の圧電体層を積層したものであり、上記2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、上記2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、上記2層の圧電体層の層間には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない層間電極が形成され、上記圧電素子の表裏主面には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された主面電極がそれぞれ形成され、上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサを提供する。
本発明の第4実施形態は、圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、上記圧電素子は2層の圧電体層を積層したものであり、上記2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、上記2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、上記2層の圧電体層の層間には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された2つの層間電極が形成され、上記圧電素子の表裏主面には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない主面電極がそれぞれ形成され、上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された一方の上記層間電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された他方の上記層間電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサである。
【0010】
第1,第2の実施形態に係る加速度センサの場合、温度変化が加わると、各圧電体層には焦電によって電圧が発生する。例えば、長さ方向中央部の境界を間にして片側の2つのセルについて考えると、これら2つのセルの分極方向が逆方向であるから、焦電電圧の極性はこれら分極方向と逆方向であり、脱分極をさせる方向である。しかし、2つのセルが並列に接続されているので、焦電により発生した電荷は2つのセルの領域内で直ちにキャンセルされる。そのため、分極低下による感度の低下がない。
また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルと、他方側の2つのセルとが直列接続されるので、並列接続タイプのものに比べて電圧感度を高めることができる。
また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルの電極間で絶縁抵抗が低下しても、同じ圧電体層の他方側の2つのセルに影響を与えない。しかも、他の圧電体層とはダミー層を介して絶縁分離されているので、他の圧電体層にも影響を与えない。そのため、センサ全体として特性への影響を低減できる。このことは、耐湿性の高いセンサを実現できることを意味し、換言すれば同程度の耐湿性であれば、各圧電体層の厚みをより薄くすることができ、より感度の高いセンサを構成できる。
さらに、中性面に比べて応力変化の大きな外側表面に近いところで検出セルを構成することができるので、感度が高く、しかも強度に影響するセンサの厚みを確保したまま、検出セル部分の厚みを薄くできるので、より高い感度のセンサを実現可能である。
【0011】
第3,第4の実施形態に係る加速度センサの場合も、第1,第2の実施形態と同様に、温度変化による焦電電圧が発生しても、長さ方向中央部の境界を間にして片側の2つのセル同士が並列に接続されているので、焦電により発生した電荷は2つのセルの領域内で直ちにキャンセルされる。そのため、分極低下による感度の低下がない。
また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルと、他方側の2つのセルとが直列接続されるので、並列接続タイプのものに比べて電圧感度を高めることができる。
また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルの電極間で絶縁抵抗が低下した時、同じ圧電体層の他方側の2つのセルに影響を与えない。
さらに、圧電体層の積層数および電極数を少なくできるので、製造コストを低減できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は本発明にかかる加速度センサの第1実施例を示す。
この加速度センサ1Aは、圧電素子2の長さ方向両端部を断面コ字形の一対の支持枠(支持部材)10,11で両端支持したものである。支持枠10,11は圧電素子2と熱膨張係数がほぼ等しい絶縁性セラミック等で構成されている。支持枠10,11の内面には、加速度Gが作用した時に圧電素子2が撓み得る空間を形成するための凹部10a,11aが形成されている。
【0013】
この実施例の圧電素子2は、短冊形状の薄肉な圧電セラミックよりなる3層の圧電体層2a,2b,2cを積層し、一体に焼成したものである。3層の厚みは同一であってもよいし、外側の層2a,2cを中間層2bより薄くしてもよい。圧電素子2の層間には電極3,4が設けられ、表裏主面に電極5a,5bおよび6a,6bが設けられている。中間層2bは加速度Gが加わった時に電荷を発生しないダミー層である。外側の2つの圧電体層2a,2cは、加速度Gが印加されたときに応力が逆転する2つの境界B1と長さ方向中央部の境界B2とによって長さ方向に4つの領域に分割されており、それぞれの領域が8個のセル(1) 〜(8) を構成している。そして、長さ方向に隣合うセルの分極方向Pが逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向Pが同方向となるように、各セル(1) 〜(8) は厚み方向に分極されている。すなわち、セル(1),(3),(5),(7) の分極方向と、セル(2),(4),(6),(8) の分極方向とが互いに逆方向である。図1,図2に分極方向Pを太線矢印で示してある。
なお、中間層2bは分極しないのが望ましいが、仮に分極したとしても、中間層2bの厚み方向中央部に撓みの中性面があり、この中性面の上下で応力が逆になり、電位がキャンセルされる。
【0014】
層間電極3,4は圧電素子2の長さ方向両端部を除く領域に4つのセルにわたって連続的に形成されている。表裏主面の電極5a,5bおよび6a,6bはそれぞれ長さ方向中央部の境界B2付近で2つに分断されており、これら表面電極5a,5bと6a,6bは発生した電荷を取り出すために、それぞれ圧電素子2の長さ方向の異なる端部に引き出されている。
【0015】
支持枠10,11の両端面を含む圧電素子2の長さ方向両端面には、外部電極7,8が形成されている。一方の端面に形成された外部電極7は、表主面の電極5aおよび裏主面の電極6aと導通しており、他方の端面に形成された外部電極8は、表主面の電極5bおよび裏主面の電極6bと導通している。
【0016】
上記のように層間電極3,4、表裏電極5a,5b、6a,6b、外部電極7,8を設けることで、図3に示されるような回路が構成される。すなわち、一方の圧電体層2aにおいて、長さ方向中央部の境界B2を間にしてその一方側の2つのセル(1),(2) と、他方側の2つのセル(3),(4) とがそれぞれ並列に接続され、かつ並列接続された両側の2組のセル(1),(2) と(3),(4) とが直列に接続されている。同様に、他方の圧電体層2cにおいても、長さ方向中央部の境界B2を間にしてその一方側の2つのセル(5),(6) と、他方側の2つのセル(7),(8) とがそれぞれ並列に接続され、かつ並列接続された両側の2組のセル(5),(6) と(7),(8)とが直列に接続されている。そして、一方の層2aに設けられたセル(1) 〜(4)で構成される回路と、他方の層2cに設けられたセル(5) 〜(8) で構成される回路とが電気的に並列接続されている。
【0017】
上記加速度センサ1Aに加速度Gが作用した場合の発生電荷について、図4を参照して説明する。
図4に矢印で示すように下向きの加速度Gが作用すると、慣性によって圧電素子2の中央部が図4の上方へ凸となるよう変位する。そのため、上側の圧電体層2aの中央部のセル(2),(3) には引張応力が作用し、両端部のセル(1),(4) には圧縮応力が作用する。逆に、下側の圧電体層2cの中央部のセル(6),(7) には圧縮応力が作用し、両端部のセル(5),(8) には引張応力が作用する。上記応力と分極方向Pとの関係に基づいて、表主面の一方の電極5aにはプラスの電荷が発生し、他方の電極5bにはマイナスの電荷が発生する。他方、裏主面の一方の電極6aにはプラスの電荷が発生し、他方の電極6bにはマイナスの電荷が発生する。これと対応する層間電極3の境界B2を間にして片側半分にはマイナスの電荷が発生し、他側半分にはプラスの電荷が発生する。同様に、層間電極4にも、境界B2を間にして片側半分にはマイナスの電荷が発生し、他側半分にはプラスの電荷が発生する。これら層間電極3,4の発生電荷は互いにキャンセルし合う。
その結果、プラスの電荷は電極5a,6aと接続された外部電極7から取り出され、マイナスの電荷は電極5b,6bと接続された外部電極8から取り出される。
【0018】
このように加速度センサ1Aでは、圧電体層2a内でセル(1),(2) の組と、セル(3),(4) の組とが直列接続され、圧電体層2c内でセル(5),(6) の組と、セル(7),(8) の組とが直列接続されるので、両組の電圧が加算され、各層毎の発生電位が高くなる。そのため、電圧感度を並列接続型に比べて高めることができる。
また、中間層2bを設けることで、中性面に比べて応力の大きな表裏面に近いところに検出用の圧電体層2a,2cを設けることができる。そのため、圧電体層2a,2cに発生する電荷量が多く、センサの感度を上げることができる。
さらに、圧電素子2は機械的強度を考慮してある程度の厚みが必要であるが、3層構造とすることで、機械的強度を確保しながら、両側の圧電体層2a,2cを相対的に薄くすることができ、センサの感度を上げることができる。
【0019】
また、加速度センサ1Aが湿度の高い環境で使用されると、対向する電極間で絶縁抵抗が低下することがある。しかしながら、例えば組を構成するセル(1),(2)の電極5a,3間で絶縁抵抗が低下しても、同じ層の別の組を構成するセル(3),(4)に影響を与えることがない。さらに、一方の層2aと他方の層2cとはダミー層である中間層2bで絶縁分離されているので、他方の層2cにも影響を与えない。そのため、センサ全体の特性への影響を小さくできる。換言すると、各層2a,2cの厚みを薄くして感度を上げながら、耐湿性の高いセンサを構成できる。
【0020】
図5は温度低下時におけるセル(1) と(2) に発生する焦電による電位を示す。
セル(1) についてみると、表面電極5a側にプラスの電荷、層間電極3側にマイナスの電荷が発生する。また、セル(2) についてみると、表面電極5a側にマイナスの電荷、層間電極3側にプラスの電荷が発生する。これら電界の向きは分極時の電圧の極性と逆向きであり、脱分極をさせる方向である。しかし、セル(1)と(2) は並列接続され、接続された電極5a,3で発生する電位は逆向きであるから、焦電により発生した電荷はセル(1),(2) の領域内で直ちにキャンセルされ、結果として電位は発生しない。
同様に、他のセル(3) 〜(8) についても焦電電位は発生しない。
表面実装型の加速度センサの場合、基板などにリフロー実装されるが、リフロー槽から出た後、急激に温度が低下した時、焦電電圧が発生する。しかし、上記のようにセル内で電荷がキャンセルされるため、分極低下による感度の劣化がない。また、使用時の繰り返しの温度変化に対しても、同様に焦電電圧による分極低下がなく、長期に安定なセンサが可能になる。
【0021】
図6は本発明に係る加速度センサの第2実施例を示す。
この実施例の加速度センサ1Bは、圧電素子2に設けられる層間電極と表裏主面の電極の形状を、第1実施例の加速度センサ1Aと逆としたものである。第1実施例と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
層間電極3a,3bおよび4a,4bは、それぞれ長さ方向中央部の境界B2付近で2つに分断されており、これら層間電極3a,3bおよび4a,4bは発生した電荷を取り出すために、それぞれ圧電素子2の長さ方向の異なる端部に引き出され、外部電極7,8と接続されている。表裏主面の電極5,6は、圧電素子2の長さ方向両端部を除く領域に4つのセル(1) 〜(4) 、(5) 〜(8) にわたって連続的に形成されている。
この場合、8個のセル(1) 〜(8) で構成される回路は、図3と同様であり、各セル(1) 〜(8) の分極方向Pも、第1実施例と同様である。
この加速度センサ1Bも、第1実施例の加速度センサ1Aと同様に、感度の向上、焦電電圧による分極低下の防止、絶縁抵抗の低下による特性劣化への影響の低減といった作用効果を達成できる。
【0022】
図7〜図9は本発明に係る加速度センサの第3実施例を示す。
この実施例の加速度センサ1Cは、ダミー層を省略し、2層構造の圧電素子2を用いるとともに、層間電極を1つの電極9で共通化したものである。第1実施例と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例では、圧電体層2aと2cの各セル(1) 〜(8) の分極Pの向きは第1実施例(図2参照)と同じ向きであり、中央の層間電極9は第1実施例における層間電極3,4と同様に、長さ方向に並んだ4つのセルに連続的に延びている。
【0023】
この加速度センサ1Cでは、上記のように層間電極9、表裏電極5a,5b、6a,6b、外部電極7,8を設けることで、図8に示されるような回路が構成される。すなわち、長さ方向中央部の境界B2を間にしてその一方側の4つのセル(1),(2),(5),(6) が互いに並列接続され、他方側の4つのセル(3),(4),(7),(8)が互いに並列に接続され、かつ並列接続された両側の2組のセル(1),(2),(5),(6) と(3),(4),(7),(8) とが直列に接続されている。
【0024】
この場合も、加速度Gが作用すると、図9に示すように、上側の圧電体層2aの中央部のセル(2),(3) には引張応力が作用し、両端部のセル(1),(4) には圧縮応力が作用する。逆に、下側の圧電体層2cの中央部のセル(6),(7) には圧縮応力が作用し、両端部のセル(5),(8) には引張応力が作用する。上記応力と分極方向との関係に基づいて、表主面の一方の電極5aにはプラスの電荷が発生し、他方の電極5bにはマイナスの電荷が発生する。他方、裏主面の一方の電極6aにはプラスの電荷が発生し、他方の電極6bにはマイナスの電荷が発生する。また、層間電極9の境界B2を間にして片側半分にはマイナスの電荷が発生し、他側半分にはプラスの電荷が発生するので、層間電極9の発生電荷は互いにキャンセルされる。その結果、プラスの電荷は電極5a,6aと接続された外部電極7から取り出され、マイナスの電荷は電極5b,6bと接続された外部電極8から取り出される。
この実施例では、セル(1),(2),(5),(6) と(3),(4),(7),(8) とが直列に接続されていることから、高い電圧感度が得られる。また、温度変化によって焦電電圧が発生しても、セル(1) と(2) 、セル(5) と(6) が並列接続され、セル(3) と(4)セル(7) と(8) が並列接続されているので、各セルで発生する逆向きの電荷がセル内で直ちにキャンセルされ、電位は発生しない。
また、例えばセル(1) の絶縁性が低下した場合、セル(2),(5),(6) は影響を受けるが、他のセル(3),(4),(7),(8) は影響を受けない。つまり、セルの半分は有効であり、センサ全体としての特性への影響を低減でき、耐湿性の高いセンサを実現できる。
また、圧電素子2が2層2a,2cで構成されるので、積層数および電極数が少なく、低コストで製造できる利点がある。
【0025】
図10は本発明に係る加速度センサの第4実施例を示す。
この実施例の加速度センサ1Dは、第2実施例における加速度センサ1Bの圧電素子2のダミー層を省略して2層構造とし、層間電極を長さ方向の2つの電極9a,9bに分割したものである。第1実施例と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
層間電極9a,9bは長さ方向中央部の境界B2付近で2つに分断されており、これら層間電極9a,9bは発生した電荷を取り出すために、それぞれ圧電素子2の長さ方向の異なる端部に引き出され、外部電極7,8と接続されている。
表裏主面の電極5,6は、圧電素子2の長さ方向両端部を除く領域に4つのセル(1) 〜(4) 、(5) 〜(8) にわたって連続的に形成されている。
この場合、8個のセル(1) 〜(8) で構成される回路は、図3と同様であり、各セル(1) 〜(8) の分極方向Pも、第1実施例と同様である。
この加速度センサ1Dも、第1実施例の加速度センサ1Aと同様に、直列接続による感度の向上、焦電電圧による分極低下の防止といった作用効果を達成できる。そして、圧電体層の積層数および電極数が少ないので、低コストで製造できる利点がある。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に係る加速度センサによれば、温度変化によって各圧電体層に焦電電圧が発生しても、長さ方向中央部の境界を間にして2つのセル同士が並列接続されているので、焦電により発生した電荷は2つのセルの領域内で直ちにキャンセルされ、分極低下による感度の低下を防止できる。また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の組のセルと、他方側の組のセルとが直列接続されるので、両組の電圧が加算され、各層毎の発生電位が高くなる。そのため、電圧感度を並列接続型に比べて高めることができる。
さらに、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルの電極間で絶縁抵抗が低下しても、同じ圧電体層の他方側の2つのセルに影響を与えず、しかも他の圧電体層とはダミー層を介して絶縁分離されているので、他の圧電体層にも影響を与えない。そのため、センサ全体として特性への影響を低減でき、耐湿性の高いセンサを実現できる。
また、中性面に比べて応力変化の大きな外側表面に近いところで検出セルを構成することができるので、感度が高く、しかも強度に影響するセンサの厚みを確保したまま、検出セル部分の厚みを薄くできるので、より高い感度のセンサを実現できる。
【0027】
請求項2に係る加速度センサによれば、請求項1と同様に、温度変化による焦電電圧が発生しても、長さ方向中央部の境界を間にして片側の2つのセル同士が並列に接続されているので、焦電により発生した電荷は2つのセルの領域内で直ちにキャンセルされ、分極低下による感度の低下がない。
また、長さ方向中央部の境界を間にして一方側のセルの組と、他方側のセルの組とが直列接続されるので、並列接続タイプのものに比べて電圧感度を高めることができる。
さらに、長さ方向中央部の境界を間にして一方側の2つのセルの電極間で絶縁抵抗が低下しても、同じ圧電体層の他方側の2つのセルに影響を与えない。
また、圧電体層の積層数および電極数を少なくできるので、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる加速度センサの第1実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した加速度センサの正面図である。
【図3】図1に示した加速度センサの回路図である。
【図4】図1に示した加速度センサの加速度Gの印加時における作動説明図である。
【図5】図1に示した加速度センサの温度低下時の焦電電位を示す図である。
【図6】本発明にかかる加速度センサの第2実施例の正面図である。
【図7】本発明にかかる加速度センサの第3実施例の斜視図である。
【図8】図7に示す加速度センサの回路図である。
【図9】図7に示す加速度センサの加速度Gの印加時における作動説明図である。
【図10】本発明にかかる加速度センサの第4実施例の正面図である。
【図11】従来の加速度センサの一例の側面図および回路図である。
【図12】従来の加速度センサの他の例の側面図および回路図である。
【符号の説明】
1A〜1D 加速度センサ
2 圧電素子
3,3a,3b,4,4a,4b 層間電極
5,5a,5b,6,6a,6b 主面電極
7,8 外部電極
10,11 支持枠(支持部材)
(1) 〜(8) セル
Claims (4)
- 圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、
上記圧電素子は3層の圧電体層を積層したものであり、
中央部の層は加速度が加わった時に電荷を発生しないダミー層であり、
外側の2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、
上記外側の2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、
上記外側の2層の圧電体層と中央のダミー層との層間には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない層間電極がそれぞれ形成され、
上記圧電素子の表裏主面には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された主面電極がそれぞれ形成され、
上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサ。 - 圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、
上記圧電素子は3層の圧電体層を積層したものであり、
中央部の層は加速度が加わった時に電荷を発生しないダミー層であり、
外側の2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、
上記外側の2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、
上記外側の2層の圧電体層と中央のダミー層との層間には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された4つの層間電極が形成され、
上記圧電素子の表裏主面には、上記4つのセルに亘って長さ方向に亘って連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない主面電極がそれぞれ形成され、
上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された2つの上記層間電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された2つの上記層間電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサ。 - 圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、
上記圧電素子は2層の圧電体層を積層したものであり、
上記2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、
上記2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、
上記2層の圧電体層の層間には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない層間電極が形成され、
上記圧電素子の表裏主面には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された主面電極がそれぞれ形成され、
上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された上記表裏主面の主面電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサ。 - 圧電素子と、この圧電素子の長さ方向両端部を支持する支持部材とを備え、
上記圧電素子は2層の圧電体層を積層したものであり、
上記2層の圧電体層は、加速度が加わった時に長さ方向に応力が逆転する2つの境界と長さ方向中央部の境界とによって長さ方向に4つのセルに分割されており、
上記2層の圧電体層は、長さ方向に隣合うセルの分極方向が逆方向で、厚み方向に対応するセルの分極方向が同方向となるように、厚み方向に分極されており、
上記2層の圧電体層の層間には、長さ方向両端部から長さ方向中央部付近まで延び、かつ長さ方向中央部で分離された2つの層間電極が形成され、
上記圧電素子の表裏主面には、上記4つのセルに亘って長さ方向に連続的に延び、かつ長さ方向両端部まで至らない主面電極がそれぞれ形成され、
上記圧電素子の長さ方向の一方の端部に引き出された一方の上記層間電極が一方の引出電極に接続され、上記圧電素子の長さ方向の他方の端部に引き出された他方の上記層間電極が他方の引出電極に接続されていることを特徴とする加速度センサ。
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