JP3965945B2 - 車両用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
シートバックの骨格部材となるシートバックフレームの幅方向両側間に、厚手の布状部材のみを張架して構成されるようにした車両用シートが特開2000−52829号公報によって提案されている。
【0003】
このように布状部材のみで背もたれ部分が構成されることにより、その布状部材の背面には従来用いられてきた発砲ウレタンやバネ等を用いたクッション体が不要となるため、車体の軽量化に寄与するとともに、比較的簡単な構造とすることができて車内空間を確保することができるようになる。
【0004】
ところで、近年の車両用シートには乗員の頭部を受けるヘッドレストが、車両後面衝突時に前方に移動して、乗員の頭部が大きく後方移動するのを阻止して、鞭打ち症になるのを防止できるようにした車両用シートが特開2000−39194号公報によって提案されている。
【0005】
この車両用シートは、シートバックフレームの幅方向両側間にヘッドレストの取付部材を前後回動可能に取付けるとともに、この取付部材の下端部から一体に延設した受圧部分を、シートバックの上下中央部分で幅方向に差し渡すようにしてクッション体内に配置し、後面衝突時に乗員の慣性力がシートバックに作用したときに、この受圧部分を後方に押圧して回動し、これによって取付部材の上端部に設けたヘッドレストが前方に移動される構造となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者に示した従来のシートバックが布状部材のみで形成される車両用シートでは、これに後者に示したヘッドレストの移動構造を適用しようとした場合、前記受圧部分が布状部材の背面に配置されることになるが、この受圧部分が布状部材のみを介して乗員の背中に当たることになる。このため、乗員はその受圧部分を異物として感じてしまい、これが違和感となって着座状態での安定性が損なわれてしまう。
【0007】
また、前記受圧部分は布状部材の背面に露出されるため、これを覆うためのカバー部材が余分に必要になるとともに、布状部材が荒いメッシュ編みである場合には、車両前方からも受圧部分が透けて見えるため、シートの外観性が損なわれてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、サイドフレーム自体にヘッドレストの前方移動機能を持たせることにより、構造を簡単にしつつ乗員の着座性能やシート自体の外観性が損なわれるのを防止できる車両用シートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、シートバックフレームの幅方向両側間に布状部材を張設した車両用シートにおいて、前記シートバックフレームを、上端部が車体側に上下動可能かつ前後回動可能に支持されるとともに、ヘッドレストを一体に形成したサイドフレームアッパと、下端部が車体側に回動可能に支持されるサイドフレームロアと、で構成し、これらサイドフレームアッパとサイドフレームロアとを、これら両者の車体側に対する上,下方支持点を結ぶ直線よりも車両前方に配置される屈曲部を境にして連設したことを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記屈曲部は、前記サイドフレームアッパと前記サイドフレームロアとを車両前後方向に相対回動可能に連結するジョイント部分であることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明にあっては、請求項1,2に記載の車両用シートおいて、前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点には、このサイドフレームアッパに設けられる可動レールと、この可動レールを上下方向に案内する固定レールとからなるスライドガイドを設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明にあっては、請求項1,2に記載の車両用シートにおいて、前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点には、鉛直軸まわりの断面2次モーメントよりも水平軸まわりの断面2次モーメントが小さく形成されて車体側に結合されるシートクロスメンバを設け、このシートクロスメンバにサイドフレームアッパを前後回動可能に取り付けたことを特徴としている。
【0013】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、車両の後面衝突時に着座乗員の慣性力が布状部材に相対的な後方押力として作用すると、この後方押力は布状部材を介してシートバックフレームに入力され、サイドフレームアッパとサイドフレームロアは後方に押圧されて屈曲部が伸展方向に変位する。すると、サイドフレームアッパの上端部とサイドフレームロアの下端部との間の距離が拡大されようとするが、サイドフレームロアの下端部は車体側に回動可能に支持されてその前後移動が阻止されるため、上端部が車体側に上下動可能かつ前後回動可能に支持されたサイドフレームアッパは、上下方向に起立しつつ上端部が上方に移動しながら回動する。このため、このサイドフレームアッパに一体に形成されたヘッドレストは上方に迫り上がりつつ車両前方に移動し、後面衝突時に後方に移動する着座乗員の後頭部をいち早く支持することができる。従って、ヘッドレストの前方移動機能をシートバックフレームに持たせることができるため、これによって構造の簡素化および軽量化を達成できるとともに、乗員の着座性およびシート自体の外観性を向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記屈曲部を、サイドフレームアッパとサイドフレームロアとを車両前後方向に相対回動可能に連結するジョイント部分として構成したので、着座乗員の慣性力による相対的な後方押圧力が作用したときに、サイドフレームアッパとサイドフレームロアとの連結部分を車両後方に円滑に変位させることができ、ひいては、車両の後面衝突時にヘッドレストを迅速に前方移動させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1,2の発明の効果に加えて、前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点に、このサイドフレームアッパに設けられる可動レールと、この可動レールを上下方向に案内する固定レールとからなるスライドガイドを設けたので、後面衝突時に屈曲部が後方に押圧されて屈曲部が変位したときに、前記スライドガイドを介してサイドフレームアッパの上端部を確実に上方に移動させることができるため、ヘッドレストは斜めになることなく車両前方に移動して着座乗員の頭部を確実に支持することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1,2の発明の効果に加えて、前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点に、鉛直軸まわりの断面2次モーメントよりも水平軸まわりの断面2次モーメントが小さく形成されたシートクロスメンバを車体側に結合し、このシートクロスメンバにサイドフレームアッパを前後回動可能に取り付けたので、後面衝突時に屈曲部が後方に押圧されて屈曲部が変位したときに、前記シートクロスメンバは、鉛直軸まわりの断面2次モーメントが大きいため後方への変形が阻止され、水平軸まわりの断面2次モーメントが小さいため上方への変形が許容される。また、サイドフレームアッパは、このシートクロスメンバに前後回動可能となっているため、結果的にヘッドレストは上方に迫り上がりつつ前方に移動することになる。従って、この屈曲部の変位に伴うヘッドレストの前方移動機能を、前記シートクロスメンバを設けるという構造の簡素化をもって達成できるため、大きな衝撃を受けた場合にも、作動不良を生ずることなく確実にヘッドレストを前方に移動させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0018】
(第1実施形態)
図1〜図6は本発明にかかる車両用シートの第1実施形態を示し、図1は車両用シートのシートバック部分を示す斜視図、図2は図1中A−A線からの拡大断面図、図3は図1中B−B線からの拡大断面図、図4は図1中C−C線からの要部拡大断面図、図5は通常状態における車両用シートの作用説明図、図6は後面衝突時における車両用シートの作用説明図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の車両用シート1は、図外のシートクッションと、このシートクッションの後端部から立設するシートバック2とを備えて構成される。このシートバック2は、これの幅方向(車両左右方向)両側に配置されるシートバックフレーム3間に、キャンバス地などで形成される布状部材4が張設されている。この布状部材4は厚手織布であり、着座乗員M(図5参照)の荷重に十分に耐え得る素材が選ばれる。
【0020】
前記シートバックフレーム3は、上端部にヘッドレストフレーム5が連続して一体形成され、このヘッドレストフレーム5とともに全体的に逆U字状に形成されたサイドフレームアッパ3aと、上端部がサイドフレームアッパ3aの下端部に連続する幅をもってU字状に形成されたサイドフレームロア3bとで構成される。
【0021】
前記サイドフレームアッパ3aの下端部と前記サイドフレームロア3bの上端部とは、1対のセンタージョイント6を介して車両前後方向に相対回動可能に連結されるとともに、このことによってシートバックフレーム3は全体的に矩形状として構成される。
【0022】
シートバックフレーム3は、幅方向両側が車両前方に突出するように滑らかに湾曲されると共にこの湾曲の略頂部に屈曲部としての前記センタージョイント6が配設され、図1に示すように、サイドフレームロア3bの下端部が略鉛直方向に起立した状態からサイドフレームアッパ3aの上端部が除々に傾斜される。サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとは、それぞれの全体的な方向性を捉えた場合に、センタージョイント6に対して所定角度η1(図5参照)が形成されている。
【0023】
前記センタージョイント6は、図2に示すように、サイドフレームロア3bの上端部に形成された二股部6aに、サイドフレームアッパ3aの下端部に形成された回動部6bが嵌合されて、それぞれがボルト6cおよびナット6dを介して回動自在に連結されることにより構成される。二股部6aと回動部6bとの間には、両者のガタ付きやこれによって発生する異音を低減するために樹脂製のカラー6eが介在される。勿論、二股部6aと回動部6bとを連結するボルト6cの中心軸は、幅方向に設けられた1対のセンタージョイント6の対向方向を指向することになる。
【0024】
前記サイドフレームアッパ3aのヘッドレストフレーム5が接続される上端部間には、このサイドフレームアッパ3aの後側に溶接された1対のブラケット7a間に、回転可能に車体10側への上方支持点となるアッパピボットバー7が取り付けられる。そして、前記ヘッドレストフレーム5は、図5に示すように、アッパピボットバー7部分から上方に向かって所定角度θをもって折曲され、その上端部にはクッション材を内蔵したヘッドレスト8が取り付けられる。
【0025】
前記アッパピボットバー7は、その車両後方側がスライドガイド9を介して車体10側に上下動自在に取り付けられる。このスライドガイド9は、図3に示すように、アッパピボットバー7から車両後方に突出される可動レール9aと、この可動レール9aを摺動自在に係合して車体10側に上下方向に指向して取り付けられた固定レール9bと、を備えて構成される。可動レール9aの係合突起部9cと、固定レール9bの溝部9dとの間には、これら両者間のガタ付きやこれによって発生する異音を低減するために樹脂製のカラー9eが介在される。
【0026】
前記サイドフレームロア3bの下端部には、車体10側への下方支持点となるロアフレーム3cが設けられ、このロアフレーム3cの左右両側部分が1対の取付けブラケット11を介して車体10側に回動自在に取り付けられる。
【0027】
ここで、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとを連結した前記センタージョイント6は、車両前方に突出するように湾曲された前記シートバックフレーム3の中間部分に設けられるが、このセンタージョイント6は、サイドフレームアッパ3aの上方支持点となるアッパピボットバー7と、サイドフレームロア3bの下方支持点となるロアフレーム3cとを結ぶ直線L(図5参照)よりも車両前方に配置されるようになっている。
【0028】
前記布状部材4は、アッパピボットバー7とロアフレーム3cとの間のシートバックフレーム3の内側部分を覆い、この布状部材4の上端部両側が第1生地4aを介してシートバックフレーム3の両側部分に取り付けられる。また、布状部材4の中間部両側は、センタージョイント6を跨いでその上下に設けられる第2生地4bを介してシートバックフレーム3の両側部分に取り付けられる。更に、布状部材4の下端部は、第3生地4cを介してサイドフレームロア3bのロアフレーム3cの中央部分に取り付けられる。
【0029】
前記第1,第2,第3生地4a,4b,4cは、布状部材4より伸縮率や弾性率に優れた素材で形成され、布状部材4に適度なクッション性を付与するようになっている。これら第1,第2,第3生地4a,4b,4cは、図4に示すように、その中間部分4dをシートバックフレーム3に周回させた後、両端部分4e,4f間に布状部材4の周縁部を挟み込み、それらの重なり部分を縫製して構成している。
【0030】
以上の構成により本実施形態の車両用シート1にあっては、車両が後面衝突された場合、図5に示したように、シート1に着座した乗員Mには相対的に車両後方に向かう慣性力が働くことになるが、この慣性力がシートバック2の布状部材4に相対的な後方押力として作用する。この後方押力は布状部材4および第1,第2,第3生地4a,4b,4cを介してシートバックフレーム3に入力される。
【0031】
すると、センタージョイント6は、図6に示すように、特に第2生地4bを介して入力される後方押力により、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとの角度がη1からη2(η1>η2)となる方向に回動し、これらサイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとが伸展する方向に変位される。
【0032】
この伸展方向の変位によって、サイドフレームアッパ3aの上端部のアッパピボットバー7とサイドフレームロア3b下端部のロアフレーム3cとの間の距離Lが拡大されようとするが、サイドフレームロア3bの下端部はロアフレーム3cが車体側に回動可能に支持されてその前後移動が阻止されているため、サイドフレームアッパ3a上端部のアッパピボットバー7は、図6に示すように、スライドガイド9を介して上方にスライドする。
【0033】
これによって、サイドフレームアッパ3aの上端部に所定角度θをもって一体に形成されたヘッドレスト8は、図6に示すように、上方に迫り上がりつつ車両前方に移動し、後面衝突時に後方に移動する着座乗員Mの後頭部をいち早く支持することができる。
【0034】
従って、本実施形態の車両用シート1では、ヘッドレスト8の前方移動機能をシートバックフレーム3に持たせることができる。このため、かかる前方移動機能を達成するために他の機能部材や機構を用いる必要が無く、これによって構造の簡素化および軽量化を達成できるとともに、他の機能部材や機構などの障害物が存在しないことから、乗員Mの着座性およびシート1自体の外観性を向上することができる。
【0035】
また、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとの間の屈曲部をセンタージョイント6として構成したので、着座乗員Mの慣性力による相対的な後方押圧力が作用したときにこのセンタージョイント6が回動して、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとの連結部分を車両後方に円滑に変位させることができ、ひいては、後面衝突時にヘッドレスト8を迅速に前方移動させることができる。これによって、乗員Mの頭部が後方移動する初期段階でいち早くヘッドレスト8が前方移動してその頭部を支持することができる。
【0036】
更に、後面衝突時に上方移動するサイドフレームアッパ3aの上端部は、スライドガイド9を介して車体10側に取り付けたので、後面衝突時にこのスライドガイド9を介してサイドフレームアッパ3aの上端部を確実に上方に移動させることができる。このため、ヘッドレスト8は斜めになることなく車両前方に移動され、これによって着座乗員Mの頭部を確実に支持することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図7〜図9は本発明の第2実施形態を示し、前記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。図7はシートバックの要部斜視図、図8は通常状態における車両用シートの作用説明図、図9は後面衝突時における車両用シートの作用説明図である。
【0038】
この実施形態の車両用シート1aは、図7に示すように、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとを連続させて車両前方に向けて湾曲形成するとともに、この湾曲の略頂部をサイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとの境界部分となる屈曲部20としている。
【0039】
勿論、シートバックフレーム3の屈曲部20の形成部分は、後面衝突時に入力される着座乗員Mの後方押力によって適度に変形される断面構造となっており、かつ、湾曲部分によって屈曲部20は、図8に示すように、サイドフレームアッパ3aのアッパピボットバー7とサイドフレームロア3bのロアフレーム3cとを結ぶ直線Lより車両前方に配置されるようになっている。
【0040】
従って、この実施形態の車両用シート1aにあっては、前記第1実施形態と同様に、車両の後面衝突時に着座乗員Mの後方押力がシートバックフレーム3に入力されると、屈曲部20はサイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとが伸展される方向に変形される。これによって、サイドフレームアッパ3aのアッパピボットバー7は、図9に示すように、スライドガイド9を介して上方に移動するため、ヘッドレスト8を上方に迫り上げつつ前方に移動させることができる。
【0041】
ところで、この実施形態ではシートバックフレーム3自体に屈曲部20を設けて、後面衝突時に着座乗員Mに作用する後方押力でこの屈曲部20を変形させるようにしたので、屈曲部20にジョイント部を付加する必要が無くなるため構造を簡素化できるとともに、部品点数や組付け工数の削減によりシート1aの軽量化やコストの低減を図ることができる。
【0042】
(第3実施形態)
図10〜図19は本発明の第3実施形態を示し、前記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。図10は車両用シートの取付け状態を示す斜視図、図11は車両用シートの取付け状態を示す側面図、図12は図10中D−D線からの拡大断面図、図13は図10中E−E線からの拡大断面図、図14は車両用シートの基本構造を示す説明図、図15は車両用シートのサイドメンバアッパの車体側支持構造を示す説明図、図16はサイドメンバアッパの車体側への支持点部分を詳細に示す斜視図、図17は通常状態における車両用シートの作用説明図、図18は後面衝突時における車両用シートの作用説明図、図19はシートバックフレームの上端部を支持するシートクロスメンバアッパの基本構造を示す説明図である。
【0043】
この実施形態の車両用シート1bは、図10に示すように、車幅方向に2つのシートバックS1,S2が並設された2連式シートとして構成され、2つのシートバックS1,S2は、共通のアッパピボットバー7およびロアフレームブレース3cに並設されるとともに、両シートバックS1,S2間に配置されるセンターフレーム3dが共用化される。
【0044】
アッパピボットバー7には1対のヘッドレスト8を取付けるためのヘッドレストフレーム5が、図11に示すように、サイドフレームアッパ3aとの間に所定の角度θをもって立設される。
【0045】
管状に形成された前記アッパピボットバー7には、車幅方向に水平に延びる中空状のシートクロスメンバアッパ21が相対回転自在、つまりアッパピボットバー7の前後回動を可能として挿通され、このシートクロスメンバアッパ21の両端部は車体側であるロックピラー22に取り付けられる。このとき、図13に示すように、アッパピボットバー7とシートクロスメンバアッパ21との間には、両者のガタ付きやこれによって発生する異音を低減するために樹脂製のカラー23が介在される。
【0046】
また、サイドフレームロア3bのロアフレームブレース3cは、図12に示すように、各シートバックS1,S2に1個づつ設けられるブラケット11を介して車体側となるシートクロスメンバロア24に回動可能に取り付けられる。ロアフレームブレース3cとブラケット11との間には、両者のガタ付きやこれによって発生する異音を低減するために樹脂製のカラー25が介在される。
【0047】
この実施形態の車両用シート1bは、前記第2実施形態と同様に、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとは、車両前方に滑らかに湾曲形成されるように連続して一体に形成され、その境界部分に屈曲部20が形成されるようになっている。勿論、図17に示すように、屈曲部20はアッパピボットバー7とロアフレームブレース3cとを結ぶ直線Lよりも車両前方に配置される。
【0048】
ところで、前記シートクロスメンバアッパ21は、図13に示すように上下方向の肉厚t1よりも前後方向の肉厚t2を十分に大きく形成(t1≪t2)し、これによって鉛直軸Xまわりの断面2次モーメントIxよりも水平軸Yまわりの断面2次モーメントIyを小さく(Ix≫Iy)形成してある。また、この実施形態ではシートクロスメンバアッパ21の鉛直軸Xまわりの断面2次モーメントIxを更に増大するために、前後方向の対向面は水平方向に配置されるリブ21aで連結される。
【0049】
即ち、前記シートクロスメンバアッパ21の基本的な構造としては、図19に示すように、考え方を簡単にするために断面矩形状として捉えると、X軸からの距離HがY軸からの距離bよりも大きく(H≫b)なる位置において、断面の板厚を大きくする。つまり、X軸方向の板厚をt1とし、Y軸方向の板厚をt2とすると、t1≪t2となるように設定することにより、鉛直軸Xまわりの断面2次モーメントIxよりも水平軸Yまわりの断面2次モーメントIyを小さく(Ix≫Iy)形成することができる。
【0050】
このように、前記シートクロスメンバアッパ21が、鉛直軸Xまわりの断面2次モーメントIxよりも水平軸Yまわりの断面2次モーメントIyが小さく形成されたことにより、このシートクロスメンバアッパ21は、車両前後方向の剛性を高めてY軸近傍断面の座屈を抑えるとともに、上下方向にはその剛性を低くしてその方向の変形が許容されるようになっている。
【0051】
前記シートクロスメンバアッパ21の両端部は、図14に示すように、上下方向の回動を許容しつつ軸方向の移動を可能とするジョイント部26を介して取り付けられる。即ち、このジョイント部26は、図15に示すように、シートクロスメンバアッパ21が上方に撓むと、ジョイント部26で支持されたその端部は、傾斜が許容されつつ引き出される機能を備える。
【0052】
図16は前記ジョイント部26の詳細構造を示し、ロックピラー22に固定される1対のブラケット26aを備え、これらブラケット26a間にシートクロスメンバアッパ21の端部21bを挟み込んでボルト26b結合し、このボルト26bを中心にシートクロスメンバアッパ21の回動が許容される。
【0053】
また、前記ブラケット26aには、ボルト26bの挿通部分にシートクロスメンバアッパ21の長さ方向(車幅方向)に延びる長孔26cが形成される。この長孔26cはボルト26bの取付け位置から車内方向、つまりシート1b方向に延長され、その先端部に行くに従って除々に開口幅wが小さくなる。そして、シートクロスメンバアッパ21の撓みに伴ってブラケット26a間から引き出される際に、長孔26cの開口幅wが小さくなった部分でボルト26bに移動抵抗を付与するようになっている。
【0054】
図10中、30はシートバックS1,S2に対応してそれぞれ設けられるシートクッションである。
【0055】
従って、この実施形態の車両用シート1bでは、シートバックS1,S2が2連式として構成されるが、前記実施形態と同様に、車両の後面衝突時に着座乗員Mの後方押力によって屈曲部20は、図18に示すように、サイドフレームアッパ3aとサイドフレームロア3bとが伸展される方向に変形される。すると、サイドフレームアッパ3aのアッパピボットバー7には、クロスメンバアッパ21を中心にヘッドレスト8が前傾する方向に回動しつつ上方への押上げ力が作用する。
【0056】
このとき、クロスメンバアッパ21は、鉛直軸まわりの断面2次モーメントIxが大きいため後方への変形が阻止されつつ、水平軸まわりの断面2次モーメントIyが小さいため上方への変形が許容される。このため、シートクロスメンバアッパ21は、車両後方への変形が抑制されつつ、アッパピボットバー7に入力される上方への押上げ力により、ジョイント部26の回動機能および引き出し機能によりシートクロスメンバアッパ21の中間部分が上方に弓形に変形される。
【0057】
これによって、ヘッドレスト8は後面衝突によって上方に迫り上がりつつ前方に移動し、シートバックS1,S2の両方またはいずれか一方に着座した乗員Mの頭部を支持することができる。
【0058】
従って、この実施形態では、シートバックフレーム3の変形に伴うヘッドレスト8の上方かつ前方への迫り上がり案内を、円管状に形成されたシートクロスメンバアッパ21によって達成することができるため、構造の簡素化を達成できる。また、大きな衝撃を受けた場合にも、摺動箇所などの複雑な機構が存在しないことから、作動不良を生ずることなく確実にヘッドレストを上方かつ前方に移動させることができる。
【0059】
ところで、本発明の車両用シートは、前記各実施形態に示した車両用シート1,1a,1bを例にとって示したが、勿論、これに限ることなく本発明の主旨を逸脱しない範囲で各種実施形態を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示すシートバック部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す図1中A−A線からの拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す図1中B−B線からの拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示す図1中C−C線からの要部拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示す通常状態における車両用シートの作用説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示す後面衝突時における車両用シートの作用説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示すシートバックの要部斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示す通常状態における車両用シートの作用説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す後面衝突時における車両用シートの作用説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示す車両用シートの取付け状態の斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態を示す車両用シートの取付け状態の側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態を示す図10中D−D線からの拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態を示す図10中E−E線からの拡大断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態を示す車両用シートの基本構造の説明図である。
【図15】本発明の第3実施形態を示す車両用シートのサイドメンバアッパの車体側支持構造の説明図である。
【図16】本発明の第3実施形態を示すサイドメンバアッパの車体側への支持点部分の詳細な斜視図である。
【図17】本発明の第3実施形態を示す通常状態における車両用シートの作用説明図である。
【図18】本発明の第3実施形態を示す後面衝突時における車両用シートの作用説明図である。
【図19】本発明の第3実施形態を示すシートバックフレームの上端部を支持するシートクロスメンバアッパの基本構造の説明図である。
【符号の説明】
1,1a,1b 車両用シート
2 シートバック
3 シートバックフレーム
4 布状部材
3a サイドフレームアッパ
3b サイドフレームロア
3c ロアフレーム(車体側への下方支持点)
6 センタージョイント(屈曲部)
7 アッパピボットバー(車体側への上方支持点)
8 ヘッドレスト
9 スライドガイド
9a 可動レール
9b 固定レール
10 車体
20 屈曲部
21 シートクロスメンバアッパ
22 ロックピラー(車体側)
24 シートクロスメンバロア(車体側)
M 着座乗員

Claims (4)

  1. シートバックフレームの幅方向両側間に布状部材を張設した車両用シートにおいて、
    前記シートバックフレームを、上端部が車体側に上下動可能かつ前後回動可能に支持されるとともに、ヘッドレストを一体に形成したサイドフレームアッパと、
    下端部が車体側に回動可能に支持されるサイドフレームロアと、で構成し、
    これらサイドフレームアッパとサイドフレームロアとを、これら両者の車体側に対する上,下方支持点を結ぶ直線よりも車両前方に配置される屈曲部を境にして連設したことを特徴とする車両用シート。
  2. 前記屈曲部は、前記サイドフレームアッパと前記サイドフレームロアとを車両前後方向に相対回動可能に連結するジョイント部分であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  3. 前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点には、このサイドフレームアッパに設けられる可動レールと、この可動レールを上下方向に案内する固定レールとからなるスライドガイドを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。
  4. 前記サイドフレームアッパの車体側への上方支持点には、鉛直軸まわりの断面2次モーメントよりも水平軸まわりの断面2次モーメントが小さく形成されて車体側に結合されるシートクロスメンバを設け、このシートクロスメンバにサイドフレームアッパを前後回動可能に取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。
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