JP3964744B2 - 伝達比可変操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵ハンドルの操舵角と転舵系の転舵角との間の伝達比を変化させる伝達比可変操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図8に示すように、特開2000−211541号公報記載の伝達比可変操舵装置が知られている。この伝達比可変操舵装置は、金属製のハウジング90と、このハウジング90と一体回転可能に設けられる入力軸91と、ハウジング90に回転可能に支承された出力軸92と、ハウジング90内に固定され、モータ軸93aを回転可能なモータ93と、ハウジング90内に設けられた波動歯車機構からなるギヤ機構94と、ハウジング90内に設けられたロック機構95と、ハウジング90外で入力軸91と同軸に設けられたスパイラルケーブル装置96とを備えている。
【0003】
入力軸91は図示しない等速ジョイントを介して図示しない操舵ハンドルに連結されており、操舵ハンドルの操舵角が入力軸91に伝達されるようになっている。また、出力軸92は図示しない等速ジョイントを介して図示しないピニオンに連結されており、ピニオンの回転が図示しないラックバーを平行移動するようになっている。こうして、出力軸92は転舵系に転舵角を伝達する。
【0004】
モータ93はハウジング90内に固定されるモータハウジング97を有している。モータハウジング97は、金属製のモータハウジング本体97aと、モータハウジング本体97aの開口部を隠蔽する樹脂製のモータエンドプレート97bとからなる。モータハウジング本体97a内にはステータ93cが固定されており、ステータ93c内にはステータ93cによって回転駆動されるロータ93dが設けられている。モータ軸93aは、ロータ93dに固定され、ロータ93dの両端で軸方向に突出されている。このモータ軸93aのスパイラルケーブル装置96側の一端は、モータエンドプレート97bにボール軸受90aを介して回転可能に支承されているとともに、ロック機構95によりハウジング90に固定可能になっている。他方、モータ軸93aの他端はギヤ機構94に接続されている。
【0005】
ギヤ機構94は、モータ軸93aの他端が嵌入されてモータ軸93aと一体回転可能なウェーブジェネレータ94aを有している。このウェーブジェネレータ94aは、軸直角断面が楕円形状のカム941aと、このカム941aの外周に設けられたボール軸受942aとからなる。ボール軸受942aの内輪はカム941aの外周に固定されており、ボール軸受942aの外輪はボールを介して弾性変形可能である。ウェーブジェネレータ94aの外周にはボール軸受942aの外輪と一体的に弾性変形可能な環状のフレクスプライン94bが設けられている。フレクスプライン94bの外周には外歯が形成されている。また、ハウジング90内のモータ93側には環状のステイサーキュラスプライン94cが形成されている。ステイサーキュラスプライン94cの内周にはフレクスプライン94bの外歯と同数の内歯が形成され、これによりステイサーキュラスプライン94cはフレクスプライン94bと噛合している。さらに、ハウジング90内の外側にはステイサーキュラスプライン94cと隣接して環状のドライブサーキュラスプライン94dが軸受メタル90bを介して回転可能に支承されている。ドライブサーキュラスプライン94dの内周にはフレクスプライン94bの外歯より少ない歯数の内歯が形成され、これによりドライブサーキュラスプライン94dもフレクスプライン94bと噛合している。ドライブサーキュラスプライン94dは可動フランジ94eに固定され、可動フランジ94eは出力軸92に固定されている。
【0006】
ロック機構95は、モータ軸93aのスパイラルケーブル装置95側の一端の外周に固定されたロックホルダ95aと、ハウジング90に対して軸心と平行な枢軸回りで揺動可能に軸支され、駆動装置により駆動されるロックバー95bとを有している。ロックホルダ95aの外周には複数のロック溝が凹設されており、ロックバー95bの一端にはロック溝に係合可能な係合爪部が形成されている。
【0007】
また、スパイラルケーブル装置96は、図示しない車体に保持される筒状の筐体96aと、この筐体96aの内側に筐体96aに対して相対回転可能に設けられ、ハウジング90外でハウジング90に固定された内筒96bとを有している。また、筐体96aと内筒96bとの間には複数のリード線を絶縁被覆してなるフレキシブルフラットケーブル96cが設けられており、このフレキシブルフラットケーブル96cは、一端が内筒96bに接続されて内筒96bの周囲に巻回され、他端が筐体96aに接続されている。フレキシブルフラットケーブル96cと接続されて内筒96bから延出するリード線はモータ93のステータ93c等に接続され、フレキシブルフラットケーブル96cと接続されて筐体96aから延出するリード線は車体の図示しないバッテリ及びECU(電子制御装置)にコネクタにより接続される。
【0008】
この伝達比可変操舵装置では、ロックバー95bの係合爪部がロックホルダ95aのロック溝と係合していない状態において、運転手が操舵ハンドルを操舵すると、入力軸91を介してハウジング90に操舵角が伝達される。この際、その操舵角に応じてモータ93がロータ93dを回転駆動する。ロータ93dの回転はモータ軸93aを介してギヤ機構94に伝達され、ここで減速されて出力軸92が回転駆動される。
【0009】
また、ロックバー95bの係合爪部がロックホルダ95aのロック溝と係合している状態では、運転手が操舵ハンドルを操舵すると、入力軸91を介してハウジング90に操舵角が伝達されるとともに、モータ軸93aにも操舵角が伝達される。モータ軸93aの回転はギヤ機構94も伝達され、出力軸92が回転駆動される。
【0010】
こうしてこの伝達比可変操舵装置では、非常時等に入力軸91とモータ軸93aとをロック可能な状態としつつ、操舵角と転舵角との伝達比が可変された状態で転舵系に転舵角が伝達される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の伝達比可変操舵装置では、ハウジング90とモータ93との詳細が明らかでなかった。このため、モータ93のモータエンドプレート97bの外周面に径外方向に突出する周方向で複数の凸部を設け、このモータエンドプレート97bをハウジング90内に圧入すると、モータエンドプレート97bが樹脂製であることから、締め代による締結強度が径方向、軸方向及び周方向の全てにおいて弱く、ハウジング90内にモータ93を強固に固定することができない。このため、モータ軸93aの回転に伴う軸ブレがギヤ機構94に変速以外の負荷となって受承される。このため、ギヤ機構94の歯に悪影響を生じ、その耐久性が危惧されるとともに、モータ軸93aが偏心回転して異音を生じるおそれもある。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、耐久性が向上し、かつ異音の生じ難い伝達比可変操舵装置を提供することを解決すべき課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の伝達比可変操舵装置は、軸方向に多分割されたハウジングを一体に結合してなる金属製のハウジング結合体と、該ハウジング結合体と一体回転可能に設けられ、操舵ハンドルの操舵角を伝達する入力軸と、該ハウジング結合体内に固定され、モータ軸を回転可能なモータと、該ハウジング結合体に回転可能に支承され、転舵系に転舵角を伝達する出力軸と、該ハウジング結合体内で該モータ軸と該出力軸との間に設けられ、該モータ軸の回転角を増減して該出力軸に出力するギヤ機構とを備え、該操舵角と該転舵角との伝達比を可変する伝達比可変操舵装置において、
【0014】
前記モータの反ギヤ機構側の端部は、該モータが固定されたハウジングと該ハウジングと隣り合うハウジングとの結合部に挟持されており、前記モータが固定されたハウジングの内周面又は前記モータの外周面に設けた凸部を圧嵌することにより前記ハウジングに該モータが圧入されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の伝達比可変操舵装置では、金属製のモータハウジング本体が金属製のハウジングに圧入されている。このため、締め代による締結強度が径方向、軸方向及び周方向の全てにおいて強くなり、ハウジング内にモータを強固に固定することができる。このため、モータ軸は軸ブレを起こし難く、ギヤ機構は変速以外の負荷を受承する必要がなくなる。このため、ギヤ機構の歯には悪影響を生じ難く、その耐久性が向上するとともに、モータ軸の偏心回転による異音も生じ難い。
【0016】
したがって、本発明の伝達比可変操舵装置によれば、耐久性が向上し、かつ異音を生じ難くすることができる。
【0017】
本発明の伝達比可変操舵装置では、前記凸部が、前記モータの前記ギヤ機構側の端部と対面する前記ハウジングの内周面に、径内方向に突出して形成され得る。モータハウジング本体の全周面に亘ってハウジングに圧入を行なうとすると、モータハウジング本体の外周の寸法のバラツキを圧入で要求される公差以内にしなければならず、コストアップを招くためである。これに対し、可及的に少ない位置でモータハウジング本体がハウジングに圧入されれば、コストアップを可及的に小さくしつつ、モータをハウジングに確実に固定することができる。ハウジングの内周面に凸部が形成されておれば、ハウジングに対するモータの位置ズレを確実に防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(実施形態1)
実施形態1の伝達比可変操舵装置は、図1に示すように、ステアリング装置に用いられる。このテアリング装置は、車両の操舵ハンドル70が入力軸としての上部ステアリングシャフト71の上端に図示しない等速ジョイントを介して接続されている。また、上部ステアリングシャフト71の下端と、出力軸としての下部ステアリングシャフト72の上端とが伝達比可変操舵装置1を介して接続されている。
【0020】
また、下部ステアリングシャフト72の下端には図示しない等速ジョイントを介して図示しないピニオンが設けられ、このピニオンがステアリングギヤボックス73内においてラック74に噛合されている。ラック74の両端にはそれぞれタイロッド75の一端が接続されるとともに、各タイロッド75の他端にはナックルアーム76を介して転舵輪77が接続されている。
【0021】
さらに、上部ステアリングシャフト71には操舵ハンドル70の操舵角を検出する舵角センサ78が設けられ、下部ステアリングシャフト72には転舵輪77の転舵角を検出する転舵角センサ79が設けられている。これら舵角センサ78及び転舵角センサ79により検出された操舵ハンドル70の操舵角及び転舵輪77の転舵角はECU80に入力されるようになっている。ECU80には、車両速度を検出する車速センサ81から出力される車両速度も入力されるようになっている。そして、ECU80は、伝達比可変操舵装置1に対して、この伝達比可変操舵装置1を制御するための制御信号を出力するようになっている。
【0022】
伝達比可変操舵装置1を図2に拡大して示す。この伝達比可変操舵装置1は、一体に結合されている金属製のハウジング結合体6〜8内に、ロック機構3、モータ4及びギヤ機構としての波動歯車機構5が設けられ、ハウジング6外にはスパイラルケーブル装置2が設けられている。そして、上部ステアリングシャフト71の下端71aと、下部ステアリングシャフト72の上端72aとが伝達比可変操舵装置1に接続されている。
【0023】
ハウジング6の上部ステアリングシャフト71側には筒状の嵌合部6aが形成されている。この嵌合部6aに上部ステアリングシャフト71の下端71aが板バネ6bを介して嵌合されており、これによりハウジング6と上部ステアリングシャフト71とが一体として回転するようになっている。
【0024】
モータ4はハウジング7内にモータハウジング10を有している。モータハウジング10は金属製のモータハウジング本体10aと金属製のモータエンドプレート10bとからなる。モータハウジング本体10aは、中央に軸孔10cをもつカップ状をなしており、このモータハウジング本体10aの外周面には、図3及び図4に示すように、径外方向に突出し、周方向で3つの凸部30が互いに軸直角断面でθ1(120°)の角度をなして形成されている。モータハウジング本体10aの上部ステアリングシャフト71側には、モータハウジング本体10aの開口部を塞ぐようにモータエンドプレート10bが固定されている。そして、ハウジング7が各凸部30を圧嵌することによりモータ4がハウジング7に圧入されている。この際、モータハウジング本体10aのフランジ及びモータエンドプレート10bのフランジがハウジング7の軸直角の端面に当接され、モータ4の軸方向の傾きが矯正される。
【0025】
図2に示すように、モータハウジング本体10aの内周面にはステータ12が固定され、ステータ12内にはステータ12によって回転駆動されるロータ14が設けられている。ロータ14にはモータ軸13が固定され、モータ軸13はロータ14の両端で軸方向に突出されている。また、モータ軸13の一端13aはモータエンドプレート10bとの間に設けたボール軸受15により支承されており、モータ軸13の他端13bはモータハウジング本体10aの軸孔10cとの間に設けたボール軸受16により支承されている。これにより、モータ軸13はモータハウジング本体10a、ハウジング結合体6〜8に対して同軸で回転可能になっている。このモータ軸13のスパイラルケーブル装置2側の一端13aは、ロック機構3によりハウジング結合体6〜8に固定可能になっている。他方、モータ軸13の他端13bは波動歯車機構5に接続されている。
【0026】
波動歯車機構5は、モータ軸13の他端13bが嵌入されてモータ軸13と一体回転可能なウェーブジェネレータ17を有している。このウェーブジェネレータ17は、軸直角断面が楕円形状のカム17aと、このカム17aの外周に設けられたボール軸受17bとからなる。ボール軸受17bの内輪はカム17aの外周に固定されており、ボール軸受17bの外輪はボールを介して弾性変形可能である。ウェーブジェネレータ17の外周にはボール軸受17bの外輪と一体的に弾性変形可能な環状のフレクスプライン19が設けられている。このフレクスプライン19の外周には外歯19aが形成されている。また、ハウジング7内のモータ4側には環状のステイサーキュラスプライン20が固定されている。ステイサーキュラスプライン20の内周にはフレクスプライン19の外歯19aと同数の内歯20aが形成され、これによりステイサーキュラスプライン20はフレクスプライン19と噛合している。さらに、ハウジング7内の下部ステアリングシャフト72側にはステイサーキュラスプライン20と隣接して環状のドライブサーキュラスプライン21が軸受メタル7aを介して回転可能に支承されている。ドライブサーキュラスプライン21の内周にはフレクスプライン19の外歯19aより少ない歯数の内歯21aが形成され、これによりドライブサーキュラスプライン21もフレクスプライン19と噛合している。モータハウジング本体10aと波動歯車機構5との間には保護プレート9が設けられている。そして、ドライブサーキュラスプライン21には下部ステアリングシャフト72の上端72aが固定されている。
【0027】
ロック機構3は、モータ軸13のスパイラルケーブル装置2側の一端13aの外周に固定されたロックホルダ24と、ハウジング6に対して軸心と平行な枢軸回りで揺動可能に軸支され、駆動装置により駆動されるロックバー25とを有している。ロックホルダ24の外周には複数のロック溝が凹設されており、ロックバー25の一端にはロック溝に係合可能な係合爪部が形成されている。
【0028】
また、スパイラルケーブル装置2は、図示しない車体に保持される筒状の筐体26と、この筐体26の内側に筐体26に対して相対回転可能に設けられ、ハウジング6外でハウジング6に固定された内筒27とを有している。また、筐体26と内筒27との間には複数のリード線を絶縁被覆してなるフレキシブルフラットケーブル28が設けられており、このフレキシブルフラットケーブル28は、一端が内筒27に接続されて内筒27の周囲に巻回され、他端が筐体26に接続されている。フレキシブルフラットケーブル28と接続されて内筒27から延出するリード線はモータ4のステータ12等に接続され、フレキシブルフラットケーブル28と接続されて筐体26から延出するリード線は車体の図示しないバッテリ及びECU80にコネクタにより接続される。
【0029】
以上のように構成された伝達比可変操舵装置1では、ロックバー25の係合爪部がロックホルダ24のロック溝と係合していない状態において、運転手が操舵ハンドル70を操舵すると、上部ステアリングシャフト71を介してハウジング結合体6〜8に操舵角が伝達される。ECU80は、この操舵角を舵角センサ78より入力するとともに、車両速度を車速センサ81より入力する。そして、ECU80は車両速度及び操舵角に基づき目標舵角の演算を行う。この目標舵角に基づいて、モータ4を制御する制御信号がECU80より伝達比可変操舵装置1に出力される。
【0030】
ECU80より伝達比可変操舵装置1に出力された制御信号は、スパイラルケーブル装置2のスパイラルケーブル28を介して、モータ4に送られる。そして、この制御信号に基づきステータ12に通電され、これによりロータ14が回転駆動される。この際、ステータ12はモータハウジング本体10a及びハウジング7に固定され、ロータ14はモータ軸13に固定されているため、モータ軸13はハウジング結合体6〜8に対して相対回転することとなる。
【0031】
また、モータ軸13の他端13bはウェーブジェネレータ17のカム17aに固定されているため、モータ軸13とカム17aとは一体として回転する。カム17aは楕円状をなしており、カム17aが回転すると、ボール軸受17bを介してフレクスプライン19が楕円状に弾性変形する。この際、カム17aの長軸の両端部分では、フレクスプライン19の外歯19aとステイサーキュラスプライン20及びドライブサーキュラスプライン21の内歯20a、21aとは噛合し、短軸の両端部分では、外歯19aと内歯20a、21aとは完全に離れた状態となっている。そして、フレクスプライン19の外歯19aとステイサーキュラスプライン20及びドライブサーキュラスプライン21の内歯20a、21aとの噛合する位置が周方向に順次移動していく。ここで、ステイサーキュラスプライン20の内歯20aの歯数とフレクスプライン19の外歯19aの歯数とは同数にされているため、両者間に相対回転は発生しない。これに対し、ドライブサーキュラスプライン21の内歯21aはフレクスプライン19の外歯19aより少ない歯数にされているため、両者間に相対回転が発生する。つまり、カム17aが一回転すると、ドライブサーキュラスプライン21の内歯21aとフレクスプライン19の外歯19aとの歯数の差の分だけ、両者間に相対回転が発生することとなる。また、ステイサーキュラスプライン20はハウジング7内に固定されている。この結果、ドライブサーキュラスプライン21はハウジング7に対して相対的に回転駆動されることとなる。
【0032】
そして、波動歯車機構5のドライブサーキュラスプライン21の回転により、下部ステアリングシャフト72が回転する。こうして、上部ステアリングシャフト71と下部ステアリングシャフト72とを相対回転させ、操舵ハンドル70の操舵角と転舵輪77の転舵角とを変化させることができる。
【0033】
また、転舵角センサ79により検出された転舵輪77の転舵角がECU80にフィードバックされ、確実に目標舵角に対応した転舵角を転舵輪77に与えることができるようにしている。
【0034】
また、ロックバー25の係合爪部がロックホルダ24のロック溝と係合している状態では、運転手が操舵ハンドル70を操舵すると、上部ステアリングシャフト71を介してハウジング結合体6〜8に操舵角が伝達されるとともに、モータ軸13にも操舵角が伝達される。モータ軸13の回転は波動歯車機構5に伝達され、ここで減速されて下部ステアリングシャフト72が回転駆動される。
【0035】
こうして、この伝達比可変操舵装置1では、非常時等に上部ステアリングシャフト71とモータ軸13とをロック可能な状態としつつ、操舵角と転舵角との伝達比が可変された状態で転舵系に転舵角が伝達される。
【0036】
また、この伝達比可変操舵装置1では、外周面に3つの凸部30が形成された金属製のモータハウジング本体10aが金属製のハウジング7に圧入されている。このため、各凸部30とハウジング7とが金属同士の圧入となり、締め代による締結強度が径方向、軸方向及び周方向の全てにおいて強く、モータ4がハウジング7内に強固に固定される。このため、モータ軸13は軸ブレを起こし難く、波動歯車機構5は変速以外の負荷を受承する必要がなくなる。このため、波動歯車機構5の歯には悪影響を生じ難く、その耐久性が向上するとともに、モータ軸13の偏心回転による異音も生じ難い。また、モータハウジング本体10aの全周面にわたってハウジング7に圧入を行なう場合に比べ、モータハウジング本体10aの外周の公差をさほど厳密にする必要がなく、コストアップをほとんど生じない。
【0037】
したがって、実施形態1の伝達比可変操舵装置1によれば、耐久性が向上し、かつ異音を生じ難くすることができる。
【0038】
また、この伝達比可変操舵装置1では、ギヤ機構として波動歯車機構5を採用しているため、部品数を少なくでき、小型・軽量化を図ることができる。さらに、波動歯車機構5は歯19a、20a、21a同士の接触面積が大きいため、高減速比・高効率・高精度・高トルクを得ることができるのみならず、バックラッシュを非常に小さくできる。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2の伝達比可変操舵装置も、図1に示すように、ステアリング装置に用いられる。実施形態2の伝達比可変操舵装置では、図5に示すように、モータハウジング本体10aの一の軸直角断面上に径外方向に突出する周方向で3つの凸部31aが設けられ、他の軸直角断面上にも径外方向に突出する周方向で3つの凸部31bが設けられている。図6に示すように、凸部31aと凸部31bとは軸直角断面でθ2(60°)の角度をなしている。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0040】
実施形態2の伝達比可変操舵装置では、モータハウジング本体10aに合計6個の凸部31a、31bがバランスよく配置されて設けられているため、モータ4がハウジング7内により強固に固定され、モータ軸13がより一層軸ブレを起こし難い。その他の作用、効果は実施形態1と同様である。
【0041】
(実施形態3)
実施形態3の伝達比可変操舵装置も、図1に示すように、ステアリング装置に用いられる。実施形態3の伝達比可変操舵装置では、図7に示すように、ハウジング7の小径部7aの内周面に径内方向に突出する周方向で3つの凸部32が形成されている。ハウジング7の小径部7aは、モータ4の波動歯車機構5側に位置するモータハウジング本体10aの小径部10dと対面する部分である。モータハウジング本体10aには凸部は設けられていない。そして、小径部10dが各凸部32を圧嵌することによりモータ4がハウジング7に圧入されている。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0042】
実施形態3の伝達比可変操舵装置では、ハウジング7の製造時に各凸部32を形成することができる。そのため、モータハウジング本体10aに凸部を形成する工程を設ける必要がなく、製造工程の簡略化を図ることができる。また、モータハウジング本体10aの小径部10dと対面するハウジング7の小径部7aに各凸部32を設けているため、モータ4の挿入当初が容易であるという作用効果も奏する。その他の作用、効果は実施形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1〜3の伝達比可変操舵装置に係るステアリング装置の構成図である。
【図2】実施形態1の伝達比可変操舵装置の断面図である。
【図3】実施形態1の伝達比可変操舵装置の一部拡大断面図である。
【図4】実施形態1の伝達比可変操舵装置に係り、図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】実施形態2の伝達比可変操舵装置の一部拡大断面図である。
【図6】実施形態2の伝達比可変操舵装置に係り、図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】実施形態3の伝達比可変操舵装置の一部拡大断面図である。
【図8】従来の伝達比可変操舵装置の断面図である。
【符号の説明】
1…伝達比可変操舵装置
6、7、8…ハウジング
70…操舵ハンドル
71…入力軸(上部ステアリングシャフト)
72…出力軸(下部ステアリングシャフト)
4…モータ
10…モータハウジング
10a…モータハウジング本体
10b…モータエンドプレート
30、31a、31b、32…凸部
12…ステータ
13…モータ軸
14…ロータ
5…ギヤ機構(波動歯車機構)
Claims (2)
- 軸方向に多分割されたハウジング(6、7、8)を一体に結合してなる金属製のハウジング結合体(6〜8)と、該ハウジング結合体(6〜8)と一体回転可能に設けられ、操舵ハンドル(70)の操舵角を伝達する入力軸(71)と、該ハウジング結合体(6〜8)内に固定され、モータ軸(13)を回転可能なモータ(4)と、該ハウジング結合体(6〜8)に回転可能に支承され、転舵系に転舵角を伝達する出力軸(72)と、該ハウジング結合体(6〜8)内で該モータ軸(13)と該出力軸(72)との間に設けられ、該モータ軸(13)の回転角を増減して該出力軸(72)に出力するギヤ機構(5)とを備え、該操舵角と該転舵角との伝達比を可変する伝達比可変操舵装置(1)において、
前記モータ(4)の反ギヤ機構(5)側の端部は、該モータ(4)が固定されたハウジング(7)と該ハウジング(7)と隣り合うハウジング(6)との結合部に挟持されており、前記モータ(4)が固定されたハウジング(7)の内周面又は前記モータ(4)の外周面に設けた凸部(30、31a、31b、32)を圧嵌することにより前記ハウジング(7)に該モータ(4)が圧入されていることを特徴とする伝達比可変操舵装置(1)。 - 前記凸部(32)が、前記モータ(4)の前記ギヤ機構(5)側の端部と対面する前記ハウジング(7)の内周面に、径内方向に突出して形成されていることを特徴とする請求項1記載の伝達比可変操舵装置(1)。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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